(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】インプラント、生体監視システムおよび生体管理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1459 20060101AFI20241021BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20241021BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B5/1459
G01N21/65
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2023514535
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012498
(87)【国際公開番号】W WO2022220012
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021067980
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509339821
【氏名又は名称】アトナープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ムルティ プラカッシ スリダラ
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0050542(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0269575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0117416(US,A1)
【文献】米国特許第06216022(US,B1)
【文献】特表2011-519635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455 - 5/1459
G01N 21/65
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚上に装着される分析装置と、
前記生体の皮膚下に埋設されるインプラントとを有する生体監視システムであって、
前記分析装置は、前記生体の皮膚下のターゲットにレーザーを照射する照射装置と、
前記ターゲットからの散乱光を検出する検出器とを含み、
前記インプラントは前記ターゲットの下側に位置するように埋設され、前記ターゲットからの光を前記皮膚外に向けて導く反射機能を備えた凹面を含む光学部を含み、
前記照射装置は、少なくとも2つのレーザー光を、前記ターゲットの共通のスポットに集光する集光装置を含み、
前記検出器は、前記生体の皮膚下に埋設された前記インプラントの前記光学部を介して前記ターゲットからの散乱光を検出する、生体監視システム。
【請求項2】
生体の皮膚上に装着される分析装置と、
前記生体の皮膚下に埋設されるインプラントとを有する生体監視システムであって、
前記分析装置は、前記生体の皮膚下のターゲットにレーザーを照射する照射装置と、
前記ターゲットからの散乱光を検出する検出器とを含み、
前記インプラントは前記ターゲットの下側に位置するように埋設され、皮膚外から照射された光を皮膚下の前記ターゲットに向けて導く反射機能を備えた凹面を含む光学部を含み、
前記照射装置は、少なくとも2つのレーザー光を、前記生体の皮膚下に埋設された前記インプラントの前記光学部を介して前記ターゲットの共通のスポットに集光する集光装置を含む、生体監視システム。
【請求項3】
請求項
1または2において、
前記集光装置は、波面を制御するマイクロミラーアレーを含む、生体監視システム。
【請求項4】
請求項
1または2において、
前記インプラントは、前記光学部の前記生体内における位置を生体外から非接触で検知可能にするためのマーカーを含み、
前記分析装置は、前記生体の皮膚下に埋設された前記インプラントの位置を検出する装置をさらに有する、生体監視システム。
【請求項5】
請求項
1または2において、
前記ターゲットは血管を流れる血液であり、
当該インプラントは、前記光学部が、前記皮膚外から照射された光を前記血管に向けて、および/または前記血管中の血液からの光を前記皮膚外に向けて導くように埋設される、生体監視システム。
【請求項6】
請求項
1または2において、
前記インプラントは、前記光学部の前記生体内における位置を維持するために前記光学部の周囲から部分的に突き出た少なくとも1つの支持部をさらに有する、
生体監視システム。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記光学部の
前記凹面は、赤色から近赤外の波長の光の反射機能を備えた第1の面を含む、生体監視システム。
【請求項8】
請求項
7において、
前記第1の面は、金属薄膜、透明導電膜、誘電体多層膜、多層干渉膜の少なくともいずれかが形成された面を含む、
生体監視システム。
【請求項9】
請求項
1または2において、
前記光学部は直径が100μm~10mmの円形状、楕円形状、または多角形状である、
生体監視システム。
【請求項10】
請求項
1または2に記載の生体監視システムと、
前記分析装置により得られる前記生体の状態に基づいて、前記皮膚を介して前記生体に薬剤を注入する注入装置とを有する、生体管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間などの生体に埋設するインプラント、およびそれを用いて生体を監視および管理するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2014/178199号公報には、生体表面から生体内部の状態を監視するモニターを提供することが記載されている。モニターは、生体表面に装着される観察窓を含むプローブと、観察窓を介してアクセスされる生体表面の観察領域の少なくとも一部にレーザーを照射するユニットと、観察領域に2次元に分散する複数の観測スポットのそれぞれから、レーザー照射に起因する散乱光を検出するユニットと、複数の観測スポットから得られる散乱光に基づき、複数の観測スポットの中から生体内部のターゲット部分の情報を含む散乱光が得られると判断される第1の観測スポットを限定するドップラー解析ユニットおよびSORS解析ユニットと、第1の観測スポットまたはその周りの観測スポットから、少なくとも1つの成分の分光スペクトルを取得し、その強度に基づき生体内部の状態を示す第1の情報を出力するCARS解析ユニットとを有する。
【発明の開示】
【0003】
生体外、例えば皮膚外から光、例えばレーザー光を用いて、測定や治療等のために生体内のターゲットにアクセスする場合、ターゲットに対して十分に高い強度で集光しようとすると、皮膚を通過する際の面積当たりの強度(照度、照射強度)が高くなりすぎて皮膚や生体(人体)に悪影響を与える可能性がある。一方、ターゲットに対して十分に高い強度で光を集光できないと所望の測定や治療が難しくなる。
【0004】
例えば、レーザー光をターゲットに照射して得られる散乱光を用いて非侵襲で生体内部の情報、典型的には血管中を流れる血液に含まれる様々な情報を精度よく取得しようとすると、ターゲットから十分な強度の散乱光を取得できることが望ましい。そのためには、照射するレーザー光の強度を高くする必要があるが、皮膚や人体に影響を考慮すると照射するレーザー光の強度を抑制できることが要望されている。
【0005】
本発明の一態様は、生体の皮膚下に埋設されるインプラントである。このインプラントは、皮膚外から照射された光を皮膚下のターゲットに向けて、および/またはターゲットからの光を皮膚外に向けて導く光学部を有する。このインプラントにより、皮膚下(生体内)における光の進行方向を制御することも可能であり、生体内でターゲットに向けて光を集光したり、ターゲットからの光を皮膚外に向けて導いたりすることができる。ターゲットは、皮膚下、例えば、表皮下の毛細血管などの組織であってもよく、真皮あるいは真皮下の皮下組織中の血管などの組織であってもよく、さらに深部の血管または組織であってもよい。
【0006】
インプラントは、反射機能、例えば、反射面を含む光学部を有し、皮膚下のターゲットの下側(皮膚上と反対側)に位置するように埋設されるものであってもよい。ターゲットは血管を流れる血液であれば、インプラントを、光学部が、皮膚外から照射された光を血管に向けて、および/または血管中の血液からの光を皮膚外に向けて導くように埋設してもよい。このインプラントにより、皮膚下のターゲットから放射される光(散乱光)の方向を生体内において制御することが可能となり、非侵襲の分析装置により採取される散乱光の強度を向上できる。また、このインプラントにより、散乱光を得るために皮膚外から照射された光(レーザー)の方向を生体内で制御してターゲットに集光してもよい。このインプラントにより、ターゲットにおいて生じる散乱光の方向を皮膚外に主に向けるようにレーザーを導いてもよい。このため、光を介して生体中のターゲットの情報、例えば血管中を流れる血液に含まれる様々な情報を精度よく取得できる。
【0007】
このインプラントは、生体の皮膚下のターゲットにレーザーを照射する照射装置と、ターゲットからの散乱光を、埋設されたインプラントの光学部を介して検出する検出器とを有する分析装置と組み合わせて使用してもよい。生体の皮膚上に装着される分析装置であっても、皮膚下のターゲットから様々な方向に放出される散乱光を生体内のターゲット下に埋設されたインプラントの光学部により皮膚方向へ反射することにより、皮膚外で効率よく検出し、ターゲットの分析に用いられる散乱光の強度を向上できる。また、散乱強度の高い前方方向の散乱光をインプラントにより反射して皮膚外に導くことが可能となり、分析に用いられる散乱光の強度を向上できる。
【0008】
このインプラントは、生体の皮膚下に埋設されたインプラントの光学部を介してターゲットにレーザーを照射する照射装置と、ターゲットからの散乱光を検出する検出器とを有する分析装置と組み合わせて使用してもよい。生体の皮膚上に装着される分析装置であっても、生体内のインプラントを介してターゲットにレーザーを集光することにより皮膚に照射されるレーザーの強度を抑制でき、皮膚に対するレーザーの影響を抑制できる。さらに、皮膚下のターゲットに対し、下方に配置されたインプラントを介して下方からレーザーを照射でき、ターゲットの散乱光の強度が高い前方を皮膚上方向に設定できる。したがって、皮膚外に配置される分析装置において、散乱強度の高い前方方向の散乱光を用いた測定が可能となる。
【0009】
インプラントは、光学部の生体内における位置を維持するために光学部の周囲から部分的に突き出た少なくとも1つの支持部をさらに有してもよい。インプラントは、光学部の生体内における位置を生体外から非接触で検知可能にするためのマーカー(マーカー物質)を有していてもよい。マーカーの一例は磁性体である。インプラントを設置するための典型的なターゲットは血管中の血液であり、インプラントは血管中を流れる血液の成分を検出および分析するために好適である。ターゲットはリンパ管などの他の組織または臓器であってもよい。光学部は、反射機能を備えた凹面を含んでもよく、集光機能を備えていてもよい。光学部は、赤色から近赤外の波長の光の反射機能を備えた第1の面を含んでもよい。反射機能を含む第1の面は、金属薄膜、透明導電膜、誘電体多層膜、多層干渉膜などを用いて構成できる。光学部の典型的なサイズは直径が10mm~100μmの円形状、楕円形状、多角形状などである。
【0010】
非侵襲で血液中の成分の検出する方法としては、赤外線吸光など様々な方法を採用できるが、ラマン分光法は最適な方法の1つである。インプラントは、ラマン散乱光を反射するように、赤色から近赤外の波長の光の反射率の高い光学部を備えていてもよい。インプラントは反射機能を備えたガラスなどの透明な部材であってもよく、樹脂製のフレキシブルな部材、例えば、シリコン系樹脂、バイオマテリアルなどで形成されていてもよい。インプラントは、所定の時間または期間が経過した後に溶解する生体内溶解性の樹脂または金属などであってもよい。
【0011】
インプラントと組み合わせで用いられる分析装置の照射装置は、少なくとも2つのレーザー光、例えば、ラマン散乱光を生成するためのストークス光とポンプ光を直にまたはインプラントの光学部を介してターゲットの共通のスポットに集光する集光装置(集光ユニット)を含んでもよい。集光装置は、波面を制御するマイクロミラーアレーを含んでもよい。分析装置は、検査対象のターゲット内に光トラップを形成する光ピンセット装置をさらに含んでもよい。分析装置は、ターゲット内の流体の微小流体制御を行う電磁場生成装置をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載のインプラントと分析装置とを有する生体監視装置キット(装置セット、組立用キット、生体監視システム)である。生体に埋設されたインプラントにより散乱光を効率よく皮膚外で採取することにより、非侵襲で血液中の諸成分などのターゲットあるいはターゲット内を流れる諸成分を精度よく検出できる。このため、レーザー強度を大幅に高くするなどの生体に負担をかける方法を選択せずに、生体の情報を精度よく、そして連続してモニタリングできる生体監視システムを提供できる。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載の生体監視装置キットと、分析装置により得られる生体の状態に基づいて、皮膚を介して生体に薬剤を注入する注入装置とを有する生体管理装置キットである。インプラントを生体に埋設し、分析装置を生体の表面(皮膚表面)に装着し、さらに、注入装置を皮膚に取り付けることにより、非侵襲で血液中の諸成分を介して、生体に負担をかけずに、生体の情報を精度よく、そして連続してモニタリングでき、それに基づいて所望の薬剤を、必要な時期に必要な量だけ生体に注入できる生体管理システムを提供できる。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記した生体の状態を監視する方法である。この方法は、皮膚外から照射された光を皮膚下のターゲットに向けて、および/またはターゲットからの光を皮膚外に向けて導くように生体の皮膚下に埋設することと、皮膚外に設置された分析装置により、ターゲットにレーザーを照射することによるターゲットからの散乱光を検出することとを有する。検出することは、レーザー光の少なくとも一部、および/または散乱光の少なくとも一部がインプラントにより導かれることを含む。この方法は、分析装置により得られる生体の状態に基づいて、注入装置により皮膚を介して生体に薬剤を注入することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】皮膚に装着された生体管理システムの一例を示す図。
【
図2】皮膚に装着された生体管理システムの他の例を示す図。
【
図4】生体管理システムの概略動作を示すフローチャート。
【発明の実施の形態】
【0016】
図1に、生体、例えば人体1の健康状態を管理する生体管理システム(健康管理システム)10の一例を示す。この生体管理システム10は、生体1の状態を監視(モニタリング)する生体監視システム20と、生体1の健康を維持するための薬剤を注入する投薬システム80とを含む。生体監視システム20は、生体1に埋設されるインプラント50と、インプラント50との組み合わせにより生体1の状態をモニタリングする分析装置30とを含む生体監視装置キット25により提供される。分析装置30の一例はスマートウォッチなどの通信機能およびユーザーインターフェイスを内蔵したウェアラブルな携帯端末40である。投薬システム80は、生体1の皮膚5を介して薬剤を注入するインジェクタ81と、インジェクタ81に所定の薬剤を供給する供給装置(供給ユニット)83とを含む投薬キット(注入キット)85により提供される。生体管理システム10は、生体監視装置キット25および投薬キット(注入キット)85を含む生体管理装置キット15により提供される。
【0017】
インプラント50の一例は、生体1の皮膚5の下に埋設されるインプラントであって、皮膚下のターゲット、典型的にはターゲットである血液を含む血管7の下側に位置するように埋設される反射機能を備えた光学部51を有するインプラントである。測定対象は血管中の血液であるが、以下では、測定のための照射対象として血管7をターゲットに集光することを含めて説明する。
【0018】
インプラント50は、皮膚外(表皮3の外側)9から照射された光61を皮膚下のターゲット(例えば、血管)7に向けて、および/またはターゲット7からの光65を皮膚外9に向けて導く光学部51を有する。このインプラント50により、皮膚下(生体内)8における光の進行方向を制御することも可能であり、生体内8でターゲット(例えば、血管)7に向けて光を集光したり、ターゲット7からの光を皮膚外9に向けて導いたりすることができる。ターゲットは、皮膚下、例えば、表皮3の下の毛細血管7などの組織であってもよく、真皮あるいは真皮下の皮下組織中の血管などの組織であってもよく、さらに深部の血管または組織であってもよい。
【0019】
インプラント50は、さらに、光学部51の生体内8における位置を維持するための支持部55を有してもよい。光学部51の一例は、直径が100μm~10mmの円形状、楕円形状、または、多角形状の凹面52を備えたものであってもよい。凹面52は反射機能を有して、入射光61または散乱光65を凹面52で反射することにより、それらの光61および65を集光したり、コリメートしたりすることができる。
【0020】
光学部51を支持する支持部55の一例は、凹面52がターゲットである血管7の方向を向いて生体内8に維持されるように、光学部51の周囲から部分的に突き出た部分である。支持部55は、S字またはJ字などに湾曲するように延びた1または複数のアーム状の部材であってもよい。光学部51の凹面52は反射機能を備えた面(第1の面)を含み、金属薄膜、透明導電膜、誘電体多層膜、多層干渉膜の少なくともいずれかにより反射性能が付与された面であってもよい。透明導電膜、誘電体多層膜、多層干渉膜は、赤色から近赤外の波長の光の反射機能(反射率)が高くなるように設計してもよい。
【0021】
光学部51は、それ自身が金属などの反射機能を備えた素材により形成されていてもよい。インプラント50は、シリコン樹脂またはその他の生体1と親和性が高く、MRIなどの検査において障害とならない、またはなりにくい樹脂、チタンなどの金属、または適当なバイオマテリアルにより形成されていてもよい。インプラントは、生体1の観察に要する所定の時間または期間が経過した後に、生体内8で溶解する生体内溶解性の樹脂または金属などであってもよい。
【0022】
インプラント50は簡易な手術により生体1に埋設されてもよく、柔軟性の高い素材からなるインプラント50は、適当な注入機器により、または、点滴用の針またはカテーテルにより生体表面から生体内の適当な位置に挿入されてもよい。インプラント50は、皮下の血管7に光61を照射したり、血管7からの散乱光65を制御できる位置に埋設されればよく、生体1の埋設される箇所に特に制限はない。分析装置30がスマートウォッチなどの携帯端末40に搭載されている場合は、その携帯端末40が装着される場所、例えば手首のスマートウォッチが装着される皮膚にインプラント50を埋設してもよい。
【0023】
インプラント50は、さらに、光学部51の生体内における位置を生体外から非接触で検知可能にするためのマーカー57を備えていてもよい。マーカー57の一例は、皮膚外から磁場を用いて検出できる金属または磁性体を含むセラミックまたは樹脂などであり、光学部51の全体あるいは一部にマーカー57が含まれていてもよい。支持部55の一部または全体がマーカー57であってもよく、光学部51の周囲にマーカー57を含む部分が独立して形成されていてもよい。
【0024】
分析装置30の一例は、レーザーを用いた非侵襲の分析装置であり、インプラント50の光学部51と協働してターゲット、本例では血管7を流れる血液に含まれる様々な情報を精度よく取得する。分析装置30としては、赤外線吸光など様々な方法を採用できるが、本例の分析装置30は、インプラント50と協働して、または直に血管7に照射するレーザー61を生成するレーザー光源(レーザー装置、レーザーユニット)31と、血管7からの散乱光65をインプラント50と協働して、または直に検出する検出器(検出ユニット)32とを有する。レーザー装置31は、少なくとも2つのレーザー光、本例では、ラマン散乱光(CARS光)を生成するためのストークス光とポンプ光を含むレーザー光61を出射する。レーザー装置31は、レーザー光61としてストークス光およびポンプ光に加えプローブ光を照射する装置であってもよい。
【0025】
分析装置30は、さらに、これらのレーザー光61をインプラント50と協働して、また直に、血管7の共通のスポットに照射する照射装置70を含む。照射装置70は、出射されるレーザー光61をコリメートしたり、ターゲットからの散乱光65を集光する集光装置(集光ユニット)としての機能を含む。集光装置70は、対物レンズ73と、レーザー光61の波面を制御するマイクロミラーアレー(マイクロミラーデバイス)71と、マイクロミラーアレー71を制御するドライバー75とを含む。集光装置70は、血管中の血液の組成を検出(測定)するために、皮膚下(生体内)8に埋設されたインプラント50の位置にレーザー光61を導くように制御する装置(照射位置制御装置、照射位置制御光学系)74を備えていてもよい。この照射位置制御装置74は、レーザー光61の照射により得られる散乱光65を、インプラント50を介して皮膚外9に導けるようにレーザー光61の照射方向を制御する機能を備えていてもよい。照射位置制御装置74は、対物レンズ73の位置や向きを制御する装置であってもよく、デジタルミラーデバイスなどの反射装置を用いてレーザーの照射方向や角度を制御する装置などであってもよい。
【0026】
図3(a)に示すように、表皮3は、散乱体であり、平坦な波面を備えた光束が通過すると、ランダムな媒質によってレーザー光が散乱される。このため,その散乱光中にスペックルと呼ばれるきらきら輝く明暗の斑点模様が観察される。これに対し、空間光変調器(SLM、Spatial light modulator)、例えば、マイクロミラーアレイデバイス71により波面を散乱体による散乱をキャンセルするように制御することが可能である。その結果、
図3(b)に示すように、対物レンズ73あるいは対物レンズ73とインプラント50の凹面状の光学部51との協働により諸収差を抑制した状態で効率よくターゲットである血管7の所定のスポットにレーザー光61を集光させることができる。マイクロミラーアレイデバイス71の制御は、例えば、検出される散乱光の強度が最大になるように、コントローラ35がドライバー75を介して行ってもよい。あるいは、コントローラ35がドライバー75を介してマイクロミラーアレイデバイス71を所定のパターンあるいはランダムパターンにより動かして、得られる散乱光の強度が最大になるパターンを探索してもよい。
【0027】
分析装置30のコントローラ35は、さらに、皮膚下の生体内8に埋設されたインプラント50の具体的(詳細)な位置を探索し、レーザー光61の照射先を制御する探索装置(探索機能)35aを備えていてもよい。探索装置35aの一例は、電磁場生成装置38を用いて、インプラント50のマーカー57を、電磁場を用いて検出する機能である。探索装置35aは生体内8のインプラント50の位置を検出するOCTなどの画像処理機能を備えていてもよい。探索装置35aは、レーザー光61でインプラント50の埋設予定位置およびその周囲をスキャンして散乱光65に血液成分、例えばグルコースが含まれているか否かによりインプラント50の位置を判断する装置であってもよい。探索装置35aは、インプラント50の位置を判断して、レーザー光61の照射位置を決定する処理(前処理)を測定開始前、測定中に断続して、または測定と並列して実施してもよい。
【0028】
分光分析型の分析モジュール(分析装置)30の一例はラマン分析装置であり、特に、微量分析に適したCARS(コヒーレント反ストークスラマン散乱、Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)分析装置、SRS(誘導ラマン散乱、Stimulated Raman Scattering)分析装置、時間分解型CARS分析装置などを採用してもよい。
【0029】
分析装置30は、照射装置70を制御したり、検出器32により得られた散乱光65による測定結果を解析する機能35b、また、探索装置として照射装置70および検出器32を制御する機能35aなどを備えたコントローラ(制御装置、制御ユニット)35を含む。コントローラ35は、さらに、測定結果を外部、たとえばクラウド上の健康管理サーバーなどの外部システムに提供する機能(通信機能)や、投薬システム80と協調する機能などを含んでいてもよい。コントローラ35はメモリ、CPUなどのコンピュータ資源を備えており、プログラム(プラグラム製品)により分析装置30および分析装置30を含む生体監視システム20および/または生体管理システム10を制御してもよい。
【0030】
分析装置30は、ターゲットの血管7内に光トラップを形成する光ピンセット装置37をさらに含んでもよい。光ピンセットは、高い開口数の対物レンズを用いてレーザー光を極限まで集光すると、光子の散乱による運動量の伝達により、マイクロメートル程度の大きさの粒子をトラップする力が生じさせるものであり、血管7を流れる血液から所定の大きさの粒子あるいは分子をトラップして、ラマン分光分析の対象とすることができる。
【0031】
分析装置30は、血管7内の流体の微小流体制御を行う電磁場生成装置38をさらに含んでもよい。電磁場生成装置38の微小流体制御および/または光ピンセット(光トラップ)により、あるいはこれらを制御装置35により制御して協働させることにより、血管7にナノサイズの分子篩、ナノペンチェンバーなどの血液中の分子あるいは粒子を捕獲および/またはフィルタリングする構造を動的に形成することができる。
【0032】
インプラント50を介して分析装置30により捕捉可能な分子の例としては、赤血球、白血球、リンパ球、血小板等の血球に限らず、抗体、抗体断片、遺伝子組み替え抗体、一本鎖抗体、受容体タンパク質、結合性タンパク質、酵素、インヒビタータンパク質、レクチン、細胞接着タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、およびアプタマーなど、血中に存在する可能性がある全ての分子を挙げることができる。インプラント50および分析装置30を備えた監視システム20による、検出および/または同定の対象は、任意の原子、化学物質、分子、化合物、組成物、微生物または凝集物であってよく、例えば、血球、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、炭水化物、オリゴ糖、多糖、脂肪酸、脂質、ホルモン、代謝産物、サイトカイン、ケモカイン、受容体、神経伝達物質、抗原、アレルゲン、抗体、基質、代謝産物、補助因子、阻害物質、薬剤、製剤、栄養分、プリオン、トキシン、毒物、爆発物、農薬、化学兵器物質、生物学的有害物質、放射線同位体、ビタミン、複素環式芳香族化合物、発癌物質、変異誘発物質、麻薬、アンフェタミン、バルビツール酸塩、幻覚発現物質、廃棄物、および/または汚染物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。微生物としては、ウィルス、細菌、細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
図1に示す生体監視システム20においては、皮膚上9に装着された分析装置30のレーザーユニット31から出力されるラマン分光用のレーザー光(ストークス光、ポンプ光およびプローブ光)61および光ピンセット装置37のレーザー光62が、ミラーなどの光学素子64aおよび64bにより集められ、照射装置(集光装置)70によりターゲットである皮膚下8の血管7に照射される。照射装置70においては、レーザー光61は、マイクロミラーデバイス71により波面が制御された後に、対物レンズ73を介して皮膚下の血管7の所定の位置(スポット)7aに集光される。血管7を流れる血液の情報を含む散乱光(CARS光)65はスポット7aから様々な方向に出力される。最も強度の高い前方、すなわちレーザー光61の入射方向の前方に出力されるCRAS光(フロントCARS光)65は、血管7のスポット7aの下側に予め埋設されているインプラント50の光学部51の凹面(反射面)52により皮膚上9の方向に反射され、分析装置30の対物レンズ73を通って集光される。CARS光65は、適当な光学素子66および64cを経て検出器(スペクトロメータ)32に導かれる。また、スポット7aのレーザー光61の入射方向の後方に出力されるCARS光(エピCARS光)は、皮膚方向に出力されるので、分析装置30の対物レンズ73を通って集光され、検出器32に導かれる。
【0034】
このため、この生体監視システム20においては、インプラント50により体内に散乱するCARS光65を、分析装置30の方向に集めることが可能となり、より効率よくCARS光65を検出することができる。したがって、分析装置30をレーザー61がインプラント50の上部の血管7のスポット7aに照射されるように生体1の表面に装着することにより、非侵襲で血液中の諸成分を精度よく検出する生体監視システム20を提供できる。また、生体監視装置キット25を用いることにより、生体に負担をかけずに、生体の情報を精度よく、そして連続してモニタリングできる生体監視システム20を提供できる。
【0035】
投薬システム80は、分析装置30の測定結果に基づいて、生体1の健康を所定の状態に維持するために必要な量の薬剤を必要なタイミングで供給(注入)する薬剤注入装置(供給装置)83と、皮膚5に装着された薬剤注入用のインジェクタ81とを含む。インジェクタ81は、微小針を用いたものであってもよく、針を使用せず薬液を噴射により皮膚より投入する無針タイプであってもよい。
【0036】
生体監視装置キット(生体監視キット)25と、分析装置30により得られる生体1の状態に基づいて、皮膚5を介して生体1に薬剤を注入する投薬キット85とを有する生体管理装置キット(生体管理装置組み立て用セット)15を提供できる。この生体管理装置キット15によれば、インプラント50を生体1に埋設し、分析装置30をレーザー61によるCARS光65がインプラント50を介して効率よく取得できるように生体1の表面(皮膚表面、皮膚上)9に装着し、さらに、投薬システム80のインジェクタ81を皮膚5、特に表皮3に取り付けることにより生体管理システム10を生体1に装着できる。生体管理システム10により、非侵襲で血液中の諸成分を介して、生体1に負担をかけずに、生体1の情報を精度よく、そして連続してモニタリングでき、それに基づいて所望の薬剤を、必要な時期に必要な量だけ生体に注入できる。
【0037】
生体管理システム(健康管理システム)10においては、分析システム(モニター)20により、連続して、リアルタイムに血中のグルコースを精度よく測定できる。したがって、連続して測定されるグルコース濃度に対して、投薬システム80によりインスリンの投薬量を細やかに制御できる。さらに、生体管理システム10は、イベント認識モジュールなどの生体(人体)の行動あるいは生活様式などを予測あるいは把握できる機能を備えていてもよい。生体管理システム10は、運動や、食事といったイベント(患者の活動)の発生を含む様々な行動を検出し、さらに、日常のスケジュールや、さまざまなセンサーの出力を用いて患者の活動を予測し、予測された状態に対応できるように、投与する薬剤およびその量、例えば、インスリンの種類および量を決定してもよい。このため、例えば、血中のグルコース濃度を、健康に影響の少ない細い幅の範囲に制御することができる。したがって、生体管理システム10を装着することにより、糖尿病の患者であっても健常人と同様にスポーツを行ったり、食事をとったりすることが可能となる。
【0038】
注入システム(投薬システム、ドラッグデリバリシステム)80から注入される生理活性物質は、インスリンに限定されず、その他のホルモン、処方薬、ミネラル、栄養素などであってもよく、生体管理システム10は、それらの種類と量とを決定および制御する機能(投薬量推定機能)とを含んでもよい。また、生体管理システム10は、このシステム10で得られた生体のリアルタイムの情報および投薬の情報を随時、または連続して、外部の監視システム、例えば医療または保険システムと共有するシステムを備えていてもよい。
【0039】
図2に、生体監視システム20の異なる例を示している。分析装置30の一例は、生体管理システム10を提供するための専用端末45である。専用端末45は、分析装置30としての機能に加えて、投薬システム80としての機能を内蔵していてもよく、密着用のパット49などを用いて皮膚5に装着できるものであってもよい。端末45の装着方法は限定されず、皮膚5の所定の位置に端末45を固定できる方法であればよい。
【0040】
この例においては、皮膚上9に装着された分析装置30のレーザーユニット31から出力されるラマン分光用のレーザー光(ストークス光、ポンプ光およびプローブ光)61がミラーなどの光学素子64を介して照射装置70に導かれ、照射装置(集光装置)70のマイクロミラーデバイス71により波面が制御された後に、対物レンズ73を介して皮膚下の生体内8に向けて照射される。生体内8においては皮膚(例えば、真皮)5の血管7の下に埋設されたインプラント50の光学部51の凹面52によりレーザー光61が反射され血管7のスポット7aに集光される。
【0041】
したがって、分析装置30をレーザー61がインプラント50に照射されるように生体1の表面に装着することにより、非侵襲で血液中の諸成分を精度よく検出することにより、生体1に負担をかけずに、生体の情報を精度よく、そして連続してモニタリングできる生体監視システム20を提供できる。すなわち、レーザー61を生体内で、インプラント50により集光できるので、皮膚3また5、さらにインプラント50に達するまでのレーザー61のスポットを大きくすることができる。このため、生体内8を通過するレーザー61の強度(照度、単位面積当たりの強度)を低くすることができ、皮膚3を含めた生体1への負荷を低減できる。その一方、生体内8のインプラント50で、ターゲットである血管7に近いところからレーザー61を所定のスポット7aに向けて集光できる。このため、生体1への影響を最小限に抑えて、ターゲットである血管7に対して十分に強度の高いレーザー61を照射でき、その結果として、十分に高い強度のCARS光65を生成および検出することが可能となる。
【0042】
血管7を流れる血液の情報を含む散乱光(CARS光)65はスポット7aから様々な方向に出力される。本例においては、血管7の下側に埋設されたインプラント50により、血管7に対し、その下側から皮膚上9の方向にレーザー光61が照射される。このため、CARS光65の最も強度の高い前方、すなわちレーザー光61の入射方向の前方に出力されるCRAS光(フロントCARS光)65は、皮膚方向(皮膚上9の方向)に出力される。したがって、この強度の高いCARS光65を、分析装置30の対物レンズ73を通って集光することが可能となり、検出器(スペクトルメータ)32により効率よく解析できる。また、スポット7aのレーザー光61の入射方向の後方に出力されるCARS光(エピCARS光)は、インプラント50の光学部51の凹面52により皮膚方向に反射されるので、分析装置30の対物レンズ73を通って集光できる。このため、後方に散乱されたCARS光65を含めて検出器32により検出できる。
【0043】
分析装置30は、生体1の皮膚下8に埋設されたインプラント50の位置を検出する装置として、光学的に生体内の物質および位置を画像化できるOCT34を含んでもよい。インプラント50が生体内8の他の組織と異なる物質として識別できる形状あるいは素材から形成されていれば、探索機能35aがOCT34を用いて事前に、あるいはその都度、インプラント50の位置を確認し、精度よくレーザー61を照射でき、効率よくCARS光65を得ることができる。
【0044】
図4に、上述したシステム10または20により生体1の状態を監視するプロセス(方法)の概要を示している。まず、ステップ91において、生体1の皮膚下(生体中)8にインプラント50を埋設する。具体的には、皮膚外9から照射された光61を皮膚下のターゲット(血管7、さらに具体的には血管中の血液)に向けて、および/またはターゲットからの光(散乱光、CARS光)65を皮膚外9に向けて導くように生体1の皮膚下8に埋設する。インプラント50は、事前に簡易な手術により埋設してもよく、インプラント50を埋設するための治具を用いて患者自身が設置してもよい。インプラント50は生体1に溶解あるいは吸収される材質であってもよく、定期的にインプラント50を埋設する処理を行ってもよい。
【0045】
ステップ94において、生体表面、例えば皮膚外9に装着された分析装置30により、生体内8にレーザー61を照射し、ターゲット(血管中の血液)から得られた散乱光(CARS光)65を検出(取得)する。CARS光65は、レーザー光61の少なくとも一部、および/またはCARS光(散乱光)65の少なくとも一部がインプラント50により導かれ、結果としてCARS光65が分析装置30により効率よく検出される。
【0046】
例えば、
図1に示した例では、監視するプロセスは、生体1の皮膚下8に、血管7の下側になるようにインプラント50を埋設し、生体表面9に装着された分析装置30により、血管7にレーザー61を照射し、血管7から得られた散乱光(CARS光)65を、インプラント50を介して検出することを含む。
図2に示した例では、監視するプロセスは、生体1の皮膚下(生体中)8に、血管7の下側になるようにインプラント50を埋設し、生体表面9に装着された分析装置30により、インプラント50を介して血管7にレーザー61を照射し、血管7から得られた散乱光(CARS光)65を分析装置30により検出することを含む。
【0047】
ステップ94の処理に先立って、ステップ92において、インプラント50の位置を探索して照射位置の調整が必要か否かを、例えば、散乱光65を事前解析することにより判断してもよい。照射位置調整が必要であれば、ステップ93において、探索装置35aを用いてインプラント50の詳細な位置を探索する。
【0048】
ステップ94において、CARS光65を検出するとともに、ステップ95において、ターゲットの血管7に光トラップを形成することが要求されると、ステップ96において、光ピンセット装置37により光トラップを形成する。ステップ97において、インプラント50を介して検出されたCARS光65を解析し、血液中のターゲットとしている成分に関する情報を取得する。さらに、生体管理システム10は、ステップ98において、搭載されたウェアラブル端末の他の機能、例えば、加速度計などの情報から、あるいは、他のウェアラブル端末からの情報、さらには、インターネット(クラウド)のサーバーなどから得られる情報に基づき、生体(ユーザー)1の行動を監視または観察してもよい。
【0049】
ステップ99において、分析装置30により得られた情報、さらに、行動観察により得られた情報に基づき、投薬の必要性を判断し、ステップ100において投薬システム80により薬剤を注入することができる。投薬システム80は、分析装置30により得られる生体1の状態に基づいて、注入装置(インジェクタ)81により皮膚を介して生体1に薬剤を注入してもよい。
【0050】
上述したプロセスを含む、生体の状態を監視する方法は、分析装置30を含む監視システム20を制御するプログラム(プログラム製品)として、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に格納して提供してもよい。また、生体の状態を監視する方法は、インターネットなどを介してダウンロード可能なプログラムとして提供してもよく、インターネットを介したサービスとして提供してもよい。
【0051】
上記には、生体の皮膚下に埋設されるインプラントであって、皮膚下のターゲットの下側に埋設される反射機能を備えた光学部を有するインプラントが開示されている。インプラントは、前記光学部の生体内における位置を維持するための支持部をさらに有してもよい。インプラントは、前記光学部の生体内における位置を生体外から非接触で検知可能にするためのマーカー部をさらに有してもよい。前記ターゲットは血管を含んでもよい。前記光学部は、反射機能を備えた凹面を含んでもよく、前記光学部は、赤色から近赤外の波長の光の反射機能を備えた第1の面を含んでもよい。前記第1の面は、金属薄膜、透明導電膜、誘電体多層膜、多層干渉膜の少なくともいずれかが形成された面を含んでもよい。前記光学部は直径が10mm~100μmの円形であってもよい。
【0052】
上記には、さらに、生体の皮膚下の前記ターゲットにレーザーを照射する照射装置と、前記ターゲットからの散乱光を、埋設されたインプラントの前記光学部を介して検出する検出器とを有する分析装置が開示されている。前記照射装置は、少なくとも2つのレーザー光を、前記ターゲットの共通のスポットに集光する集光装置を含んでもよい。また、上記には、生体の皮膚下に埋設されたインプラントの前記光学部を介して前記ターゲットにレーザーを照射する照射装置と、前記ターゲットからの散乱光を検出する検出器とを有する分析装置が開示されている。前記照射装置は、少なくとも2つのレーザー光を、インプラントの前記光学部を介して前記ターゲットの共通のスポットに集光する集光装置を含んでもよい。前記集光装置は、波面を制御するマイクロミラーアレーを含んでもよい。分析装置は、生体の皮膚下に埋設された前記インプラントの位置を検出する装置をさらに有してもよい。
【0053】
上記には、さらに、上記のインプラントと、上記の分析装置とを有する生体監視装置キットが開示されている。また、上記には、前記分析装置により得られる生体の状態に基づいて、皮膚を介して生体に薬剤を注入する注入装置とを有する生体管理装置キットが開示されている。
【0054】
上記には、さらに、生体の状態を監視する方法が開示されている。この方法は、前記生体の皮膚下のターゲットの下側に反射機能を備えたインプラントを埋設することと、分析装置により、前記ターゲットにレーザーを照射し、ターゲットから得られた散乱光を前記インプラントからの反射光を含めて検出することとを有する。また、この方法は、前記生体の皮膚下のターゲットの下側に反射機能を備えたインプラントを埋設することと、分析装置により、前記インプラントを介して前記ターゲットにレーザーを照射し、ターゲットから得られた散乱光を検出することとを有してもよい。また、この方法は、前記分析装置により得られる生体の状態に基づいて、注入装置により皮膚を介して生体に薬剤を注入することを含んでもよい。
【0055】
なお、上記においては、本発明の特定の実施形態を説明したが、様々な他の実施形態および変形例は本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者が想到し得ることであり、そのような他の実施形態および変形は以下の請求の範囲の対象となり、本発明は以下の請求の範囲により規定されるものである。