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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】固体微生物燃料電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20241021BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241021BHJP
   C02F 3/34 20230101ALN20241021BHJP
【FI】
H01M8/16
C12N1/20 A
C02F3/34 101D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024075108
(22)【出願日】2024-05-07
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523436126
【氏名又は名称】株式会社Cell-En
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口貞春
(72)【発明者】
【氏名】山口直美
(72)【発明者】
【氏名】盧梦雪
(72)【発明者】
【氏名】前田理久
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178534(JP,A)
【文献】特開2012-147697(JP,A)
【文献】特開2021-118159(JP,A)
【文献】特開2020-009659(JP,A)
【文献】特表2022-545580(JP,A)
【文献】特開平03-147269(JP,A)
【文献】特開2019-053909(JP,A)
【文献】特開2023-165357(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073284(WO,A1)
【文献】特開2010-113831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/16
C02F 3/34
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤及び吸水ポリマーからなる群から選択されるゲル形成材料を用意する工程と、
燃料電池容器内において、前記ゲル形成材料と、発電菌類と、培養液を含む培地とを混合させ、菌類含有ゲル状培地を得る工程と、
前記燃料電池容器内に、アノード及びカソードを配置する工程とを含む、固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項2】
前記ゲル形成材料が、アルギン酸塩、ポリ塩化ビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナトリウムアクリレート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、カラギーナン、寒天、ゲランガム、コラーゲンおよびゼラチン等からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項3】
前記菌類含有ゲル状培地に、多孔質材料をさらに含有させる工程を含む、請求項1に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質材料が軽石である、請求項3に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項5】
燃料電池容器内にさらにゲル状電解液を配置する工程と、
前記アノードは前記菌類含有ゲル状培地に接触するように配置する工程と、
前記カソードは前記ゲル状電解液に接触するように配置する工程とを含む、請求項1に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項6】
前記アノードを前記菌類含有ゲル状培地に接触するように配置するための電極支持体を配置する工程を含む、請求項5に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
【請求項7】
燃料電池容器と、
前記燃料電池容器内の発電菌類を含む菌類含有ゲル状培地と、
前記菌類含有ゲル状培地の中に配置されるアノードと、
前記菌類含有ゲル状培地の表面に配置されるカソードと、
前記菌類含有ゲル状培地の上に配置されるゲル状電解液を備える固体微生物燃料電池。
【請求項8】
前記菌類含有ゲル状培地は多孔質材料を含む、請求項7に記載の固体微生物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌類含有ゲル状培地を備える固体微生物燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物燃料電池(Microbial fuel cell,MFC)とは、微生物が有機物を酸化分解(代謝)する際に発生する還元力(電子)を電流として取り出すことにより発電する微生物燃料電池である。
MFCはアノード(マイナス極)とカソード(プラス極)から成り、アノードでは、有機物が微生物により分解されて発生する電子を回収する。回収された電子は外部回路を経てカソードにわたり、カソードではOと電子、H(アノードで有機物の分解の際に発生した)が反応してHOになる。MFCではこのアノード反応とカソード反応の電位差により電流が生じて電気エネルギーを得ることができる。
【0003】
このような微生物燃料電池として廃水中の有機物を微生物によって分解する浄化処理と組合せ浄化処理を行いつつ発電を行う発電システム(特許文献1参照)や廃棄物バイオマスからエネルギー回収を可能にする発電システム(特許文献2参照)、水田などに生息している生物を利用した発電システムが試みられている。また、特許文献3にはエコロジー意識の啓発を図ることができる、微生物発電応用装置が開示されている。
【0004】
特許文献1,2に記載の微生物燃料電池は、廃水浄化処理や廃棄物バイオマス活用を前提としており、発電微生物の供給源は、廃棄物等からなる有機物を含む液体である。また、有機物の成分の特定や標準化はなされていない。特許文献3に記載の微生物燃料電池や水田などに生息している生物を利用した発電システムでは、発電微生物の供給源は土や泥であり、泥や土を必要とする。泥や土を必要とするため活用が限定されてしまう。微生物発電は地球環境に配慮した発電方法であるため、より広く活用されるよう、簡便な微生物燃料電池の開発が期待されている。簡便な微生物燃料電池であるためには取り扱いが容易であることが求められ、液体を使用していると液漏れをおこすなど安全性が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-81963号公報
【文献】特開2023-41694号公報
【文献】特開2018-181581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液漏れが実質的に抑制され、安全性に配慮した簡便な微生物燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、発電菌を含むゲル状培地を含む微生物燃料電池が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] ゲル化剤及び吸水ポリマーからなる群から選択されるゲル形成材料を用意する工程と、
燃料電池容器内において、前記ゲル形成材料と、発電菌類と、培養液を含む培地とを混合させ、菌類含有ゲル状培地を得る工程と、
前記燃料電池容器内に、アノード及びカソードを配置する工程とを含む、固体微生物燃料電池の製造方法。
[2] 前記ゲル形成材料が、アルギン酸塩、ポリ塩化ビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナトリウムアクリレート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース及びポリアクリル酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
[3] 前記菌類含有ゲル状培地に、多孔質材料をさらに含有させる工程を含む、[1]に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
[4] 前記多孔質材料が軽石である、[3]に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
[5] 燃料電池容器内にさらにゲル状電解液を配置する工程と、
前記アノードは前記菌類含有ゲル状培地に接触するように配置する工程と、
前記カソードは前記ゲル状電解液に接触するように配置する工程とを含む、[1]に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
[6] 前記アノードを前記菌類含有ゲル状培地内に配置するための電極支持体を配置する工程を含む、[5]に記載の固体微生物燃料電池の製造方法。
[7] 燃料電池容器と、
前記燃料電池容器内の発電菌類を含む菌類含有ゲル状培地と、
前記菌類含有ゲル状培地の中に配置されるアノードと、
前記菌類含有ゲル状培地の表面に配置されるカソードとを備える固体微生物燃料電池。
[8] 前記菌類含有ゲル状培地の上に配置されるゲル状電解液をさらに含む、[7]に記載の固体微生物燃料電池。
[9] 前記菌類含有ゲル状培地は多孔質材料をさらに含む、[8]に記載の固体微生物燃料電池。
【発明の効果】
【0009】
固体微生物燃料電池は簡便でかつ安全であるため、地球環境に配慮した発電方法である微生物発電をより広く活用することが出来る。
さらには、固体化している燃料電池であるため、液漏れの心配がなく、さらには、液体ではないので、ひずみ・ゆがみが少なく(変形が少なく)、安定性が高い。
さらには、液体の微生物燃料電池に比べて、高い基質濃度の維持することができ、さらには、微生物を固定化、すなわち、微生物が固体表面に付着し、生物膜を形成することが可能になり、安定化につながる。
そして、操作が比較的容易であるため、装置や設備の複雑さが少なくなり、生産性が向上する。
固体微生物燃料電池は液体微生物電池よりも耐久性が高くなり、微生物燃料電池の長期間の安定性や持続性が向上が期待できる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、固体微生物燃料電池の概略図である。
図2図2は、固体微生物燃料電池1Aの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、発明を実施するための形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を損なわない範囲で当業者が種々修正等できるものである。
【0012】
[固体微生物燃料電池の製造方法]
固体微生物燃料電池1の製造方法について説明する。
固体微生物燃料電池1の製造方法は、ゲル化剤及び吸水ポリマーからなる群から選択されるゲル形成材料を用意する工程と、燃料電池容器6内において、前記ゲル形成材料と、発電菌類と、培養液を含む培地とを混合させ、菌類含有ゲル状培地8を得る工程と、燃料電池容器6内に、アノード3A及びカソード3Cを配置する工程とを含む。
【0013】
(ゲル形成材料)
本明細書では、ゲル形成材料は、概念として、ゲル化剤あるいは吸水ポリマーあるいはその両方を含むものとする。ゲル化剤とは、液体に添加すると、相互作用により全体として網目構造をつくり,溶媒あるいは分散媒である液体を多量に含んだまま流動性を失った状態とする、高分子物質またはコロイド粒子からなる添加剤をいう。
ゲル化剤としては、液体をゲル化できるものであれば特に限定されないが、アルギン酸塩、ポリ塩化ビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナトリウムアクリレート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、カラギーナン、寒天、ゲランガム、コラーゲンおよびゼラチン等が挙げられる。
また、吸水ポリマーとは、自重の10倍~1000倍の水を吸水できる高い水分保持性能を有するように設計された高分子である。吸水ポリマーとしては、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。
ゲル形成材料の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、培養液全体に対して1.0重量%以上30.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以上、6.0重量%以下がより好ましい。1.0重量%未満だと液状であり、10.0重量%を超えると菌に対して水分保持が不足状態となる。
ゲル形成材料と、発電菌類と培養液を含む培地とを混合させ、菌類含有培地をゲル化し、すなわち固体化しているため液漏れしづらく、液体培地を使用する微生物燃料電池より安全性が高く、取り扱いが容易である。
【0014】
(燃料電池容器)
燃料電池容器6の材料は一般的に通電せず、形状を保つことができる材料であれば特に限定されないが、プラスチック又はシリコーン等が挙げられる。
燃料電池容器6の形状は特に限定されないが、四角柱状等の多角柱状、円柱状等が挙げられ、空間効率の最大化のため四角柱状が好ましい。
燃料電池容器6は、上部に開口部を有し(図示しない)、開口部には燃料電池容器6内を密閉可能にするフタを有する。開口部より菌類含有ゲル状培地8及びゲル状電解液7の取り出し交換が可能である。
【0015】
(発電菌類)
本発明において、仕様することができる発電菌類としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、Saccharomyces、Hansenula、Candida、Micrococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Leuconostoa、Lactobacillus、Corynebacterium、Arthrobacter、Bacillus、Clostridium、Neisseria、Escherichia、Enterobacter、Serratia、Achromobacter、Alcaligenes、Flavobacterium、Acetobacter、Moraxella、Nitrosomonas、Nitorobacter、Thiobacillus、Gluconobacter、Pseudomonas、Xanthomonas、Vibrio、Comamonas、Proteus(Proteus vulgaris)及びShewanella、Geobacterの各属に属する細菌、糸状菌、酵母などを挙げることができる。シュワネラ属細菌及びジオバクター属細菌の少なくとも一種類を含むことがさらに好ましい。
【0016】
固体微生物燃料電池1の発電菌類は発電菌類を含有する所定の泥から、段階希釈法により発電菌類をコロニー化し単離し、専用培地にて培養する。そうすることにより、多くの発電菌類を得ることができる。発電効率を高くするため、含有する全微生物に対する発電菌類の割合は好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。発電菌類の割合(含有率)の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば微生物叢解析方法によって、発電菌の割合を測定することができる。
【0017】
(培地)
培地は、発電菌を成長させ及び生育できる人工的なものであり、本発明では、発電菌が自然界で存在する泥などは含まないことが好ましい。
培地の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブイヨン希釈液、合成培地などが挙げられる。
培地中の培地成分の含有量は、0.1重量%~10重量%程度が好ましい。ブイヨン等の培地成分を水に溶解して培地を製作する。培地成分及び水は、使用前は滅菌されていることが望ましい。調製した培地の例は、下記のとおりである。
・1%ブイヨン(マギーブイヨン(日本ネスレ))、1%グルコース、1.2%NaCl培地
・1%ブイヨン、1%グルコース、1.2%NaCl、1.5%寒天培地
【0018】
上記のような培地に対して、所定量のゲル形成材料を混合することにより、ゲル状培地を形成することができる。ゲル状培地に発電菌を含有している場合、本発明では、菌類含有ゲル状培地8を形成する前に、発電菌と培地とゲル形成材料を混合し菌類含有ゲル状培地8を形成してもよいし、ゲル状培地を形成した後で、ゲル状培地に発電菌を加えることで、菌類含有ゲル状培地8を形成してもよい。
【0019】
(無機塩)
培地は必要に応じて、無機塩を含むことができる。無機塩は、培地の電気伝導性を向上させるため、イオン結合を有する微量な金属化合物、例えば、金属塩が好ましく、金属塩としては、塩化物、リン酸化物、硫酸化物、酢酸化物、硝酸化物、酸化物およびそのイオン、そして電導性ポリマーが挙げられる。
培地のpHは特に限定されるものではないが、5.5~7.5が好ましい。前記のpHの範囲であることにより、発電菌は効率的に、下記有機物を分解し電子を発生させることができる。
【0020】
(有機物)
培地は必要に応じて有機物を含むことができる。有機物は、発電菌の代謝の基質となるものであり、発電菌の増加量、生存量を維持できる量が好ましい。有機物は、発電菌の代謝の基質として使用することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、糖類、アミノ酸、複合有機抽出物などを挙げることができる。
糖類としてはガラクトース、グルコース等が挙げられ、グルコースが好ましい。アミノ酸は用途に応じて、いかなるアミノ酸を使用することができる。複合有機抽出物としてはペプトン、トリプトンや酵母エキスなどが好ましい。
【0021】
(触媒)
培地は、発電菌から発生する電子の伝達を促進するための触媒を含むことができる。電子の伝達を促進するとは、具体的には、発電効率の向上という効果を有するものである。
ここでいう触媒とは、無機化合物や有機化合物に加えて、酵素も含むものとする。
【0022】
(界面活性剤)
培地は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤が含まれることで、界面活性剤と電極(アノード及びカソード)との相互作用により発電菌から電極への電子の受け渡しを高めることができる。この効果は、親水性の低い電極材料に効果的であり、例えば、電極材料として、グラファイトを用いる場合は、グラファイトの親水性を向上させ、培養液中の発電菌のグラファイト表面への付着性を高めることができる。
界面活性剤はアルキルポリグルコシド(APG)、ココグルコシドなどの非イオン性界面活性剤、コカミドプロピルベタイン、ステアロイルグルタミン酸などのアミノ酸系界面活性剤が望ましい。これらの界面活性剤は、発電菌の不活性化に大きく影響を与えにくい。
【0023】
(遷移金属イオン)
培地は、遷移金属イオンを含むことができる。遷移金属イオンは鉄イオン(Fe2+およびFe3+)、バナジウムイオン(V2+およびV3+)、マンガンイオン(Mn2+およびMn4+)などの低環境負荷の遷移金属イオンが好ましく、より好ましくは鉄イオン(Fe2+およびFe3+)である。このような遷移金属イオンは、発電菌の細胞外電子伝達を促進するため、好ましい。遷移金属イオンを加える場合は、遷移金属塩を加えることができ、例えば、上記遷移金属イオンの塩化物化合物、硝酸化合物、硫酸化合物が挙げられるが、上記pHを満たすことが好ましい。
【0024】
(アノード及びカソード)
半固形生物燃料電池1のアノード3Aは、嫌気的又は好気的環境において有機物を分解する発電菌から電子を受取る。アノード3Aは、菌類含有ゲル状培地8内に配置する。アノード3Aで回収され導線(カソード接続導線5及びアノード接続導線4)を経てわたってきた電子は、カソード3CでOと反応してHOになるため、カソード3Cの一部又は全部はゲル状電解液7に接する。カソード3Cの一部が空気と接していて空気中の酸素を利用する方式のカソードは、エアカソードと呼ばれている。エアカソードでは、エアカソードに空気を流通させるだけでよく、菌類含有ゲル状培地8又はゲル状電解液7のばっ気の必要がないという利点がある。
【0025】
アノード3A及びカソード3Cは、導電性材料で被覆された基材からなる。導電性材料としては、グラファイト、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素電極または金属等を用いて形成されたものが挙げられる。一例としては、アノード3Aとして平板グラファイトを用い、カソード3Cとしてアルミニウムからなる金属平板を用いることができる。
【0026】
固体微生物燃料電池アノード3A及びカソード3Cの形状は、実施態様のような平板状にすることもでき、その他には、中実または中空の筒状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。
【0027】
固体微生物燃料電池1の製造方法は、菌類含有ゲル状培地8に多孔質材料を含有させる工程をさらに含んでもよい。多孔質材料を菌類含有ゲル状培地8に加えることにより、装置の軽量化の点や安定培養の点で優位である。
多孔質材料としては、多孔質であれば特に限定されないが、活性炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、スポンジ、多孔質セラミック、多孔質プラスチック、軽石等が挙げられ、さらには、シリカ、有機ポリマー、カーボン、アルミナ、チタニア等から構成されるエアロゲルも多孔質材料に含まれるものとする。みかけ比重がよい低く装置の軽量化が期待される。特に軽石(例えば水に浮く軽石)や活性炭が好ましい。
また、多孔質材料を含有させることにより、培地が細孔に入りこみ、乾燥に強い微生物燃料電池を製造することができる。
【0028】
アノード3A及びカソード3Cを配置する工程は、アノード3Aは前記菌類含有ゲル状培地8に接触するように配置する工程と、カソード3Cはゲル状電解液7に接触するように配置する工程とを含む。
【0029】
(ゲル状電解液)
ゲル状電解液7に含まれる電解質は溶媒中に溶解した際に陰イオン及び陽イオンに電解する物質であれば特に限定されず、塩基、酸、塩が挙げられる。電解液に含有されるものとしては塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、電導性ポリマー等が挙げられる。
ゲル状電解液7は水分を含むゲルで構成される電解液である。
ゲル状電解液7に含まれるゲル形成材料は、菌類含有ゲル状培地8を得る工程で用いられるゲル形成材料を用いることが出来、同じゲル形成材料を用いても別のゲル形成材料を用いてもよい。
【0030】
ゲル状電解液7と、菌類含有ゲル状培地8の境界に、陽イオン交換膜等のイオン交換膜又は貫通する穴を複数形成したプラスチック等からなるしきり膜9を設けてもよい。なお、このしきり膜9は、イオンを通過させる性質があれば特に制限されるものではない。このようなしきり膜9を設けることにより、ゲル状電解液7と、菌類含有ゲル状培地8が混ざりあってしまうことを防止することができる。
【0031】
固体微生物燃料電池1の製造方法は、アノード3Aを菌類含有ゲル状培地8内に配置するための電極支持体10を配置する工程を含んでもよい。
電極支持体10は、アノード3Aを菌類含有ゲル状培地8内に配置することが出来る限り、特に限定されないが、非導電性不織布、スポンジ、多孔質板等が挙げられ、菌類と電極との接触面積の増加が考えられることからスポンジが好ましい。
【0032】
別の態様である固体微生物燃料電池1Aを図2に示す。固体微生物燃料電池1Aは、構成材料は、固体微生物燃料電池1と同じであるが、菌類含有ゲル状培地8と、ゲル状電解液7とを図2において横方向に隣り合うように配置し、菌類含有ゲル状培地8と、ゲル状電解液7の間にしきり膜9を備える。アノード3A及びカソード3Cは、菌類含有ゲル状培地8と、ゲル状電解液7にそれぞれ差し込んでいる。板状のアノード3A及びカソード3Cを、しきり膜9と略平行になるように、挿入する。このような構成にすることにより、菌類含有ゲル状培地と、ゲル状電解液は、それぞれ筐体の上面から管理しやすくなる。すなわち、発電菌の追加投入、ゲル状形成材料、培地、水等の投入が可能になる。
【0033】
固体微生物燃料電池1の電力密度は20W/m以上である。好ましくは40W/m以上である。
【実施例
【0034】
図2に記載の構成を有する固体微生物燃料電池を製作した。構成材料は以下のとおりである。
カソード:亜鉛・導電性炭素繊維
アノード:グラファイト
発電菌:Shewanella属細菌
培地の処方:1%ブイヨン、1%グルコース、1.2% NaCl
ゲル系材料:アクリル酸ナトリウム(ゲル化剤)
軽石の種類:園芸用焼軽石(これを顆粒状にしたものを使用、主成分として、SiO及びAlを含む)
しきり膜:プラスティック板
【0035】
上記構成を備えた燃料電池を発電させたところ、数日にわたり安定して発電できたことが確認された。
【0036】
[符号の説明]
1 固体微生物燃料電池
2 発電部
3A アノード
3C カソード
4 アノード接続導線
5 カソード接続導線
6 燃料電池容器
7 ゲル状電解液
8 菌類含有ゲル状培地
9 しきり膜
10 電極支持体

【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、液漏れが実質的に抑制され、安全性に配慮した簡便な微生物燃料電池を提供することである。
【解決手段】ゲル化剤及び吸水ポリマーからなる群から選択されるゲル形成材料を用意する工程と、燃料電池容器内において、前記ゲル形成材料と、発電菌類と、培養液を含む培地とを混合させ、菌類含有ゲル状培地を得る工程と、前記燃料電池容器内に、アノード及びカソードを配置する工程とを含む、固体微生物燃料電池の製造方法及びその製造方法から得られる固体微生物燃料電池を提供する。
【選択図】図1
図1
図2