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特許7573925リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241021BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241021BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241021BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241021BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241021BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M10/052
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024523282
(86)(22)【出願日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2023044741
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤木 聡
(72)【発明者】
【氏名】三宅 実
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛輔
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022481(JP,A)
【文献】特開2006-139919(JP,A)
【文献】特開平11-102711(JP,A)
【文献】特開平09-283149(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157263(WO,A1)
【文献】特開2014-102897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
10/36-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/64- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、
前記正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、
前記第1の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、
前記第2の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なり、
前記第1の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記第2の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極の前記一端は、平面視において前記第1の部分の前記一端と前記第1の部分の前記他端との間に配置され、かつ、平面視において前記第2の部分の前記一端と前記第2の部分の前記他端との間に配置され、
前記第1の部分は、第1の幅寸法を有する第1の矩形領域と、前記第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する第2の矩形領域とを備え、
前記第1の幅寸法は、前記第1の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分の幅寸法と同一であり、
前記第2の部分は、前記第2の矩形領域と同一形状の矩形領域を備える、リチウム2次電池。
【請求項2】
記第1の部分の前記一端は、平面視において前記負極と重なり、前記第1の部分の前記他端は、平面視において前記負極と重ならず、
記第2の部分の前記一端は平面視において前記負極と重なり、前記第2の部分の前記他端は、平面視において前記負極と重ならない、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記第1の部分の前記一端と前記第2の部分の前記一端とが、異なる幅寸法を有する、請求項2に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記第1の部分の前記他端と前記第2の部分の前記他端とが、同一の幅寸法を有する、請求項3に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
前記第1の部分の前記一端は、前記第1の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分と同一の幅寸法を有する、請求項2に記載のリチウム2次電池。
【請求項6】
前記第2の部分の前記一端は、前記第2の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分よりも小さい幅寸法を有する、請求項5に記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
前記第1の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、前記第2の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離よりも長い、
請求項に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記第1の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、3mm以下である、請求項に記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記第2の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、0.25mm以上である、請求項に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられる負極活物質層と、を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項11】
前記負極は、樹脂層を一対の金属層で挟んで構成される負極集電体を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項12】
前記正極、前記セパレータ及び前記負極のセットが複数セット積層される積層体を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項13】
セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池の製造方法であって、
正極材料を準備する工程であって、前記正極材料は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層とを含む、工程と、
前記正極材料を切り抜いて、正極を形成する工程であって、前記正極は、前記第1の金属層が前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、前記第2の金属層が前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、かつ、前記第1の部分と前記第2の部分とが幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる工程と、を含み、
前記第1の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記第2の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極の前記一端は、平面視において前記第1の部分の前記一端と前記第1の部分の前記他端との間に配置され、かつ、平面視において前記第2の部分の前記一端と前記第2の部分の前記他端との間に配置され、
前記第1の部分は、第1の幅寸法を有する第1の矩形領域と、前記第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する第2の矩形領域とを備え、
前記第1の幅寸法は、前記第1の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分の幅寸法と同一であり、
前記第2の部分は、前記第2の矩形領域と同一形状の矩形領域を備える、リチウム2次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、リチウム2次電池及びリチウム2次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極に絶縁塗膜を設けて、正極と負極との間の短絡を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/057762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、リチウム2次電池において、正極と負極との短絡を抑制しつつ、セル容量低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、第1の金属層は、正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、第2の金属層は、正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、第1の部分と第2の部分とは、幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる、リチウム2次電池が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、正極と負極との短絡を抑制しつつ、セル容量低下を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかるリチウム2次電池の構成例を説明するための斜視図である。
図2A】負極の一例を説明するための図である。
図2B】負極の他の例を説明するための図である。
図2C】負極の他の例を説明するための図である。
図2D】負極の他の例を説明するための図である。
図3】正極30の一例を説明するための図である。
図4A】第1の金属層312aを説明するための図である。
図4B】第2の金属層312bを説明するための図である。
図5A】正極と負極との配置例を説明するための図である。
図5B】正極と負極との配置例を説明するための図である。
図6A】第1の部分33の他の例を説明するための図である。
図6B】第1の部分33の他の例を説明するための図である。
図7】2次電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8A】2次電池1の正極を形成する工程を説明するための図である。
図8B】2次電池1の正極を形成する工程を説明するための図である。
図8C】2次電池1の正極を形成する工程を説明するための図である。
図9A】正極材料の他の切り抜き例を説明するための図である。
図9B】正極材料の他の切り抜き例を説明するための図である。
図10】切り抜き線L1を採用する効果の一例を説明するための図である。
図11】実施例及び比較例の構成及び結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、第1の金属層は、正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、第2の金属層は、正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、第1の部分と第2の部分とは、幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる、リチウム2次電池が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、第1の部分は、長さ方向に一端と他端とを備え、第1の部分の一端は、平面視において負極と重なり、第1の部分の他端は、平面視において負極と重ならず、第2の部分は、長さ方向に一端と他端とを備え、第2の部分の一端は平面視において負極と重なり、第2の部分の他端は、平面視において負極と重ならない。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第1の部分の一端と第2の部分の一端とが、異なる幅寸法を有する。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第1の部分の他端と第2の部分の他端とが、同一の幅寸法を有する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1の部分の一端は、第1の金属層において正極活物質層が設けられる部分と同一の幅寸法を有する。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第2の部分の一端は、第2の金属層において正極活物質層が設けられる部分よりも小さい幅寸法を有する。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第1の部分は、第1の幅寸法を有する第1の矩形領域と、第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する第2の矩形領域とを備える。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第1の幅寸法は、第1の金属層において正極活物質層が設けられる部分の幅寸法と同一である。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第2の部分は、第2の矩形領域と同一形状の矩形領域を備える。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第1の部分は、長さ方向に一端と他端とを備え、第2の部分は、長さ方向に一端と他端とを備え、負極は、長さ方向に一端と他端とを備え、負極の一端は、平面視において第1の部分の一端と第1の部分の他端との間に配置され、かつ、平面視において第2の部分の一端と第2の部分の他端との間に配置される。
【0019】
一つの例示的実施形態において、第1の部分の一端から負極の一端までの平面視における距離は、第2の部分の一端から負極の一端までの平面視における距離よりも長い。
【0020】
一つの例示的実施形態において、第1の部分の一端から負極の一端までの平面視における距離は、3mm以下である。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第2の部分の一端から負極の一端までの平面視における距離は、0.25mm以上である。
【0022】
一つの例示的実施形態において、セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、第1の金属層は、正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、第1の部分は、第1の領域と第2の領域とを備え、第1の領域は、長さ方向に一端と他端とを有し且つ第1の幅寸法を有し、第2の領域は、第1の領域の他端の一部から長さ方向に延び、第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する、リチウム2次電池が提供される。
【0023】
一つの例示的実施形態において、第1の領域は、平面視において負極とすべて重なり、第2の領域は、平面視において負極と一部が重なり一部が重ならない。
【0024】
一つの例示的実施形態において、第2の金属層は、正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、第2の部分は、第2の領域と同一形状の領域を備える。
【0025】
一つの例示的実施形態において、負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられる負極活物質層と、を備える。
【0026】
一つの例示的実施形態において、負極は、樹脂層を一対の金属層で挟んで構成される負極集電体を備える。
【0027】
一つの例示的実施形態において、正極、セパレータ及び負極のセットが複数セット積層される積層体を備える。
【0028】
一つの例示的実施形態において、リチウム2次電池の製造方法であって、正極材料を準備する工程であって、正極材料は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、正極集電体上に設けられる正極活物質層とを含む、工程と、正極材料を切り抜いて、正極を形成する工程であって、正極は、第1の金属層が正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、第2の金属層が正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、かつ、第1の部分と第2の部分とが幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる工程と、を含む、リチウム2次電池の製造方法が提供される。
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<2次電池の構成例>
図1は、一実施形態にかかるリチウム2次電池1(以下、「2次電池1」ともいう。)の構成例を説明するための斜視図である。図1に示すように、一実施形態において、2次電池1は、負極10、セパレータ20、正極30を含んで構成される。負極10、セパレータ20及び正極30は、図1のz方向(以下「積層方向」ともいう。また積層方向から2次電池1を視ることを「平面視」ともいう。)に沿ってこの順で配置される。すなわち、負極10と正極30とは、セパレータ20を挟んで互いに対向する。負極10、セパレータ20及び正極30は、それぞれ、長さ方向(y方向)及び幅方向(x方向)にわたって延在する主面を有する。
【0031】
一実施形態において、2次電池1は負極10、セパレータ20、正極30のセットが複数セット積層方向に積層されて構成されてよい。積層数は、10以上30以下であってよく、15以上25以下であってよい。一実施形態において、2次電池1に含まれる負極30の総数は、5以上、10以上、又は、20以上でよい。一実施形態において、2次電池1に含まれる正極30の総数は、5以上、10以上、又は、20以上でよい。一実施形態において、2次電池1に含まれる負極10の総数は、50以下、40以下又は30以下でよい。一実施形態において、2次電池1に含まれる正極30の総数は、50以下、40以下又は30以下でよい。一実施形態において、2次電池1のエネルギー密度は、300Wh/kg以上であってよい。一実施形態において、2次電池1の定格容量は、1.5Ah以上、又は、5Ah以上でよい。以下、2次電池1の各構成の詳細を説明する。
【0032】
1.負極
図1に示すように、負極10は、負極端部13を有する。負極端部13は、負極10の主面に平行な方向に沿って長さ方向(y方向)に延出する。負極10は、負極端部13を介して、外部回路と電気的に接続される。2次電池1が複数の負極10を備える場合、各負極端部13は、互いに電気的に接続される。各負極端部13は、例えば、溶接により互いに接合されてよい。
【0033】
図2Aは、負極の一例を説明するための図である。図2Aに示すように、一実施形態において、負極10は、負極集電体11と負極集電体11上に配置される負極活物質層12と含んで構成される。一実施形態において、負極集電体11は、負極樹脂層111と負極樹脂層111を挟むように配置される一対の負極金属層112とで構成されてよい。一実施形態において、負極樹脂層111は、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。一実施液体において、負極金属層112は、Cu、Ni、Ti、Fe及びLiと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも1種から形成される。負極金属層112は、一例ではCuである。負極10は、負極樹脂層111を含むことで、負極10として必要な厚み(剛性)を担保しつつ、負極10を負極金属層112のみで構成する場合に比べて軽量化され得る。なお、一実施形態において、負極集電体11は、負極樹脂層111を含まず、負極金属層112のみで構成されてもよい。
【0034】
負極活物質層12は、負極活物質を含む。負極活物質は、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。負極活物質は、例えば、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等でよい。上記炭素系物質は、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、カーボンナノチューブ等でよい。上記金属酸化物は、例えば、酸化チタン系化合物、酸化コバルト系化合物等でよい。上記リチウムと合金化する金属は、例えば、ケイ素、酸化ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウム、及びこれらにリチウムがプレドープされたものでよい。
【0035】
負極活物質の含有量は、負極活物質層12の総量に対して、60.0質量%以上100質量%以下であってよい。
【0036】
負極活物質層12は、負極活物質以外に、バインダー、導電助剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0037】
バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリテトラフルオロエチレンに水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、メチル基等の官能基を導入した変性ポリテトラフルオロエチレン;テトラフルオロエチレンを構成単位として有するブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体;スチレンブタジエンゴム;カルボキシメチルセルロース;アクリル樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。バインダーは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
バインダーの含有量は、負極活物質層12の総量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下であってよい。
【0039】
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラックが挙げられる。導電助剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0040】
導電助剤の含有量は、負極活物質層12の総量に対して、0.0質量%以上30.0質量%以下であってよい。
【0041】
一実施形態において、負極10の厚さは、3.0μm以上300.0μm以下であってよい。
【0042】
一実施形態において、負極活物質層12の厚さは、3.0μm以上150.0μm以下であってよい。
【0043】
図2Aに示すように、負極端部13には、負極活物質層12は形成されない。負極端部13は、負極集電体11と同一部材で構成される。なお、一実施形態において、負極端部13は、負極集電体11とは別部材として構成されてよい。
【0044】
図2B図2Dは、負極の他の例を説明するための図である。一実施形態において、図2Bに示すように、負極10は、負極樹脂層111と負極樹脂層111を挟むように配置される一対の負極金属層112とで構成される負極集電体11で構成されてよい。一実施形態において、図2Cに示すように、負極10は、負極樹脂層111を含まず、負極金属層112のみで構成される負極集電体11で構成されてもよい。一実施形態において、図2Dに示すように、負極10は、負極樹脂層111を含まず、負極金属層112のみで構成される負極集電体11と、該負極集電体11上に配置される負極活物質層12とを含んで構成されてもよい。
【0045】
一実施形態において、図2B及び図2Cに示すように、負極10は、負極金属層112から構成されるか、又は、負極樹脂層111及び負極金属層112から構成されてよい。この場合、負極金属層112は、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種から構成されてよい。「Liと反応しない金属」は、2次電池1の作動状態においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属でよい。
【0046】
一実施形態において、図2B及び図2Cに示すように、負極10は負極活物質層12を実質的に有しない。例えば、放電終了時(例えば電池の開回路電圧が2.5V以上3.6V以下である状態)に負極10に析出する負極活物質層12の層厚が、25μm以下であってよい。一実施形態において、放電終了時の負極活物質層12の層厚は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は、5μm以下であってよく、また0μmであってもよい。負極10が負極活物質層12を実質的に有しないことにより、重量エネルギー密度に加え、体積当たりのエネルギー密度が向上し得る。なお、この場合2次電池1は、「アノードフリーリチウム電池」、「ゼロアノードリチウム電池」、又は「アノードレスリチウム電池」ということもできる。なお、一実施形態において、図2A及び図2Dに示すように、負極10は負極活物質層12を有してもよい。
【0047】
一実施形態において、図2B及び図2Cに示すように、負極10は、電池の初期充電前(電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態)に負極活物質層12を有しない。すなわち、2次電池1は、初期充電後に、リチウム金属が負極上に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することにより充放電が行われてよい。この場合、負極活物質が占める体積及び質量が抑制され、電池全体の体積及び質量が小さくなり、エネルギー密度が原理的に高くなる。なお、「リチウム金属が負極上に析出」することは、負極の表面にリチウム金属が析出することだけでなく、固体電解質界面(SEI)層の表面や緩衝機能層の表面又は内部にリチウム金属が析出することも包む。なお、緩衝機能層は、イオン伝導性及び電気伝導性を有する固体部分(ゲル状の部分を含む)と、この固体部分の隙間により構成される空孔部分とを有する。この場合、リチウム金属は、負極10の表面(負極10と緩衝機能層との界面)及び/又は緩衝機能層の内部(緩衝機能層の固体部分の表面)に析出しうる。
【0048】
一実施形態において、負極10が負極活物質層12を有しない場合、電圧が4.2Vの状態において負極上に析出しているリチウム金属の質量をM4.2とし、電圧が3.0Vの同質量をM3.0とした場合、M3.0/M4.2は、40%以下又は35%以下であってよい。一実施形態において、比M3.0/M4.2は、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、又は、4.0%以上であってよい。
【0049】
一実施形態において、負極活物質層12を有しない負極10の厚さは、1.0μm以上30μm以下でよい。これにより、2次電池1において負極10の占める体積を減少させ、エネルギー密度を向上させ得る。負極10の厚さは、2.0μm以上20μm以下、2.0μm以上18μm以下、又は、3.0μm以上15μm以下でもよい。
【0050】
2.セパレータ
図1に示すとおり、セパレータ20は、負極10と正極30との間に配置される。セパレータ20は、負極10と正極30とを物理的及び/又は電気的に隔離するとともに、リチウムイオンのイオン伝導性を確保する。一実施形態において、セパレータ20は、絶縁性の多孔質部材、ポリマー電解質、ゲル電解質、及び、無機固体電解質からなる群より選択される少なくとも1種でよい。セパレータ20は、1種の部材を単独で用いてよく、2種以上の部材を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
セパレータ20が絶縁性の多孔質部材を含む場合、多孔質部材の細孔にイオン伝導性を有する物質(電解液、ポリマー電解質、及び/又はゲル電解質等)が充填される。これによりセパレータ20はイオン伝導性を発揮する。絶縁性の多孔質部材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば絶縁性高分子材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。すなわち、セパレータ20は、多孔質のポリエチレン(PE)膜、多孔質のポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造であってよい。
【0052】
一実施形態において、セパレータ20は、一面又は両面がセパレータ被覆層によりコーティングされてよい。これにより、2次電池1のサイクル特性が向上し得る。一実施形態において、セパレータ被覆層は、セパレータ20の表面の50%以上の面積において均一の厚みで連続する膜でよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、及びポリアクリル酸(PAA)のようなバインダーを含むものでよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア又は水酸化マグネシウム等の無機粒子が添加されて構成されてよい。
【0053】
一実施形態において、セパレータ20の厚さ(セパレータ20が被覆層を含む場合当該被覆層を含む)は、3.0μm以上40μm以下でよい。これにより、負極10と正極積層体30とを隔離しつつ、セパレータ20の占める体積を減少させ得る。一実施形態において、セパレータ20の厚さは、5.0μm以上、7.0μm以上、10μm以上であってよい。一実施形態において、セパレータ20の厚さは、30μm以下、20μm以下、10μm以下であってよい。
【0054】
3.電解液
一実施形態において、2次電池1は電解液を含んでよい。電解液は、溶媒及び電解質を含む液体であり、イオン伝導性を有する。電解液は、液体電解質と換言してもよく、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、2次電池1が電解液を有する場合、内部抵抗が低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が向上し得る。
【0055】
電解液は、例えば、2次電池1を収容する筐体(図1には示していない)を充填する溶液であってよい。また例えば、電解液は、セパレータ20に浸潤されてよく、また高分子に保持されることでポリマー電解質又はゲル電解質を構成していてもよい。
【0056】
電解液に含まれる電解質は、例えば、例えばリチウム塩でよい。リチウム塩は、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiB(O、LiB(C、LiB(O)F、LiB(OCOCF、LiNO、及びLiSOからなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0057】
電解液に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート、鎖状エーテル、及びこれらの溶媒以外のその他の溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0058】
鎖状カーボネートとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有さないカーボネートである。鎖状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びこれらのカーボネートの水素の一部又は全てがフッ素に置換した化合物が挙げられる。
【0059】
環状カーボネートとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有するカーボネートである。環状カーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、及びこれらのカーボネートの水素の一部又は全てがフッ素に置換した化合物が挙げられる。
【0060】
鎖状エーテルとは、芳香環、脂環、単素環、複素環等の環状構造を有さないエーテルである。鎖状エーテルとしては、特に限定されないが、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0061】
その他の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、12-クラウン-4、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルの誘導体、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルの誘導体、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルの誘導体が挙げられる。
【0062】
鎖状カーボネート及び環状カーボネートの総量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、40体積%以上100体積%以下であり、60体積%以上100体積%以下であり、80体積%以上100体積%以下である。
【0063】
鎖状エーテルの含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、5体積%以上40体積%以下であり、10体積%以上30体積%以下である。また、溶媒は、鎖状エーテルを含まなくてもよい。
【0064】
その他の溶媒の含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、1体積%以上10体積%以下である。また、溶媒は、その他の溶媒を含まなくてもよい。
【0065】
本実施形態の電解液は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が挙げられる。
【0066】
添加剤の含有量は、溶媒の総量に対して、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上5.0質量%以下である。
【0067】
4.正極
図1に示すように、正極30は、正極集電体31と正極活物質層32とを備える。また正極30は、正極端部35を有する。正極端部35は、正極30の主面に平行な方向に沿って長さ方向(y方向)に延出する。正極30は、正極端部35を介して、外部回路と電気的に接続される。2次電池1が複数の正極30を備える場合、各正極端部35は、互いに電気的に接続される。各正極端部35は、例えば、溶接により互いに接合されてよい。
【0068】
図3は、正極30の一例を説明するための図である。図3は、図1のA‐A’断面図である。一実施形態において、図3に示すように、正極30は、正極集電体31と、正極集電体31の両面に形成される正極活物質層32とを備える。
【0069】
正極集電体31は、樹脂層311と、第1の金属層312a及び第2の金属層312bを有する。第1の金属層312a及び第2の金属層312bは、樹脂層311を挟むように配置される。以下、第1の金属層312a及び第2の金属層312bをあわせて、「金属層312」ともいう。
【0070】
正極集電体31の樹脂層311は、例えば、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリアミド等の熱可塑性樹脂の少なくとも1つであってよい。樹脂層311は、当該樹脂の少なくとも1つ以上が複数積層されて構成されてもよい。一実施形態において、樹脂層311は、融点が150℃以上300℃以下の材料から形成される。一実施形態において、樹脂層311の厚さは、3μm以上10μm以下でよく、また4μm以上8μm以下でもよい。
【0071】
樹脂層311は、過充電状態や高温状態で異常発熱が発生した場合等に溶融し、正極30を破損させ、電池内部の短絡電流を遮断するように機能し得る。これにより、2次電池1内部の急激な温度上昇を抑制し、電池の発火を抑制し得る。すなわち、樹脂層311は2次電池1の安全性向上に寄与し得る。
【0072】
正極集電体31の金属層312は、正極活物質層32に物理的及び/又は電気的に接触し、正極活物質層32に対して電子を授受するように機能する。金属層312は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体から構成される。一実施形態において、金属層312は、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも一種の材料から構成される。一例では、金属層312は、アルミニウム又はアルミニウム合金である。一実施形態において、金属層312は、上記材料を樹脂層311の両側の表面に、蒸着、スパッタリング、電解めっき又は貼り合わせすることで形成される。一実施形態において、各々の導電層322の厚さは、0.5μm以上5μm以下、0.7μm以上3μm以下、0.8μm以上2.0μm以下でよい。
【0073】
正極活物質層32は、正極集電体31の第1の金属層312a側の面に設けられる第1正極活物質層32Aと、正極集電体31の第2の金属層312b側の面とに設けられる第1正極活物質層32Bとを備える。なお、一実施形態において、正極活物質層32は、正極集電体31の一面にのみ設けられてもよい。すなわち、正極活物質層32は、正極集電体31の第1の金属層312a側の面又は第2の金属層312b側の面のみに設けられてよい。正極活物質層32の厚さは、所望する電池の容量やレート特性に応じて適宜調整してよい。一実施形態において、各々の正極活物質層32の厚さは、例えば、20μm以上150μm以下である。
【0074】
正極活物質層32は、正極活物質を有する。正極活物質は、キャリア金属を正極活物質層32に保持するための物質であり、キャリア金属のホスト物質ということもできる。正極活物質は、リチウムイオンを正極活物質層32に保持するための物質でよく、この場合、電池の充放電により正極活物質にリチウムイオンが充填及び脱離される。これにより、電池の安定性及び出力電圧が向上され得る。
【0075】
一実施形態において、正極活物質は、金属酸化物又は金属リン酸塩である。金属酸化物は、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、又は、酸化ニッケル系化合物でよい。金属リン酸塩は、例えば、リン酸鉄系化合物、又はリン酸コバルト系化合物でよい。一実施形態において、正極活物質は、LiCoO、LiNiCoMnO(x+y+z=1)、LiNiCoAlO(x+y+z=1)、LiNiMnO(x+y=1)、LiNiO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びLiTiSからなる群から選択される少なくとも1つでよい。正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。一実施形態において、正極活物質層32における正極活物質の含有量は、正極活物質層32全体に対して50質量%以上100質量%以下でよい。
【0076】
一実施形態において、正極活物質層32は、正極活物質以外の成分を1つ以上含んでよい。
【0077】
一実施形態において、正極活物質層32は犠牲正極材を含んでよい。犠牲正極材は、正極活物質の充放電電位範囲において酸化反応を生じ、かつ、還元反応を実質的に生じないリチウム含有化合物である。
【0078】
一実施形態において、正極活物質層32はゲル電解質を含んでよい。ゲル電解質は、正極活物質層32と正極集電体31との接着力を向上させうる。一例では、ゲル電解質は、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含む。ゲル電解質における高分子は、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等でよい。
【0079】
一実施形態において、正極活物質層32は導電助剤及び/又はバインダーを含んでよい。一例では、導電助剤は、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)等である。一例では、バインダーは、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等である。一実施形態において、導電助剤の含有量は、正極34全体に対して0.5質量%30質量%以下である。一実施形態において、バインダーの含有量は、正極34全体に対して0.5質量%30質量%以下でよい。
【0080】
一実施形態において、正極活物質層32はポリマー電解質を含んでよい。一例では、ポリマー電解質は、高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質である。一実施形態において、ポリマー電解質の含有量の合計は、正極活物質層32全体に対して、0.5質量%30質量%以下でよい。
【0081】
図4Aは、第1の金属層312aを説明するための図である。図4Aは、正極30を図1及び図3の矢印sd方向(第1の金属層312a側)からみた平面図である。図4Bは、第2の金属層312bを説明するための図である。図4Bは、正極30を図1及び図3の矢印bd方向(第2の金属層312b側)からみた平面図である。
【0082】
図4Aに示すように、一実施形態において、第1の金属層312aは、正極活物質層が設けられない第1の部分33を有する。第1の部分33は、長さ方向に一端33aと他端33bとを備える。一端33aは、正極活物質層32Aとの境界を構成する。第1の部分33の一端33aの幅寸法W2aは、他端33bの幅寸法W3aより大きい。一実施形態において、一端33aの幅寸法W2aは、正極活物質層32Aの幅寸法W1aと同一であってよい。なお、正極活物質層32Aは、長さ方向にわたって同一の幅寸法W1aを有してよい。
【0083】
第1の部分33は、第1の領域331と、第2の領域332とで構成される。第1の領域331は、正極活物質層32Aに隣接する領域である。第1の領域331は、上述した第1の部分の一端33aを含む領域である。第1の領域331は、長手方向に一端33aと他端331aとを備える。一実施形態において、他端331aは、一端33aと同一の幅寸法W2aを有する。一実施形態において、第1の領域331は、矩形状であってよい。
【0084】
第2の領域332は、第1の領域331に隣接する領域である。第2の領域332は、上述した第1の部分の他端33bを含む領域である。第2の領域332は、長手方向に沿って一端332aと他端33bとを備える。一実施形態において、一端332aは、他端33bと同一の幅寸法W3a(<W2a)を有してよい。一端332aは、第1の領域331の他端331aの一部を構成する。第2の領域332は、第1の領域331の他端331aの一部から長さ方向に延出する。一実施形態において、第2領域332は、矩形状であってよい。一実施形態において、第2の領域332は、矩形状ではなく、種々の形状(例えば三角形状、台形状等)であってよい。
【0085】
図4Bに示すように、一実施形態において、第2の金属層312bは、正極活物質層が設けられない第2の部分34を有する。第2の部分34は、長さ方向に一端34aと他端34bとを備える。一端34aは、正極活物質層32Bとの境界を構成する。第2の部分34の一端34aは、他端34bと同一の幅寸法W2bを有してよい。一実施形態において、一端34aの幅寸法W2bは、正極活物質層32Bの幅寸法W1bより小さい。なお、正極活物質層32Bは、長さ方向にわたって同一の幅寸法W1bを有してよい。一実施形態において、第2の部分34は、矩形状であってよい。一実施形態において、第2の部分34は、矩形状ではなく、種々の形状(例えば三角形状、台形状等)であってよい。
【0086】
図4A及び図4Bに示すように、一実施形態において、第2の領域332と第2の部分34は同一形状であってよい。また、一実施形態において、第2の領域332と第2の部分34とは、異なる形状であってもよい。
【0087】
図4A及び図4Bに示すように、一実施形態において、第1の部分33と第2の部分34とは、幅寸法及び長さ寸法がいずれも異なる。一実施形態において、第1の部分33の一端33aの幅寸法W2aは、第2の部分の一端34aの幅寸法W2bよりも大きい。一実施形態において、第1の部分の他端33bの幅寸法W3aは、第2の部分の他端34bの幅寸法W2bと同一である。一実施形態において、第1の部分の長さ寸法T1a(一端33aから他端33bまでの距離)は、第2の部分34の長さ寸法T1b(一端34aから他端34bまでの距離)よりも大きい。一実施形態において、正極活物質層32Aの幅寸法W1aと正極活物質層32Bの幅寸法W1bとは同一である。
【0088】
図5A及び図5Bは、それぞれ、正極と負極との配置例を説明するための図である。図5Aは、負極10及び正極30を、図1及び図3の矢印sd方向(第1の金属層312a側の面)からみた場合の両者の位置関係を示す。図5Bは、負極10及び正極30を、図1及び図3の矢印bd方向(第2の金属層312b側の面)からみた場合の両者の位置関係を示す。図5A及び図5Bにおいて、負極10は破線で示し、正極30は実線で示す。
【0089】
図5A及び図5Bに示すように、負極10は、長さ方向(y方向)に一端10aと他端10bとを備える。負極10が負極活物質層12を備える場合(図2A図2D参照)、負極活物質層12は、一端10aと他端10bとの間に設けられる。一実施形態において、負極10は、一端10aから他端10bにわたって一定の幅寸法Wを有する。負極端部13は、一端10aから長さ方向に延出する。負極端部13の幅寸法は、幅寸法Wより小さくてよい。
【0090】
図5Aに示すように、第1の部分33の第1の領域331は、平面視において負極10とすべて重なる。第1の部分33の第2の領域332は、平面視において負極10と一部が重なり一部が重ならない。一実施形態において、第1の部分33の一端33aは、平面視において負極10と重なり、第1の部分の他端33bは、平面視において負極10と重ならない。一実施形態において、負極10の一端10aは、平面視において第1の部分33の一端33aと第1の部分33の他端33bとの間に配置される。
【0091】
図5Bに示すように、一実施形態において、第2の部分34は、平面視において負極10と一部が重なり一部が重ならない。一実施形態において、第2の部分34は、一端34aは平面視において負極10と重なり、他端34bは、平面視において負極10と重ならない。一実施形態において、負極10の一端10aは、平面視において第2の部分34の一端34aと他端34bとの間に配置される。
【0092】
図5A及び図5Bに示すように、負極10は、平面視において、正極30の正極活物質層32A、32Bを覆うように配置される。正極活物質層32A、32Bとセパレータ20を介して対向する箇所に負極10が設けられていないと、充電時に、当該箇所に金属リチウムが析出してしまい、電池性能が劣化する可能性があるためである。一実施形態において、負極10と正極30とは、平面視における負極10の一端10aから正極活物質層32までの距離が所定距離(以下「最低離間距離」ともいう。)以上になるように配置される。
【0093】
一実施形態において、第1の部分33の一端33aから負極10の一端10aまでの平面視における距離D1は、3mm以下であってよく、0.25mm以上3mm以下であってよく、0.5mm以上2.75mm以下であってよく、0.75mm以上2.5mm以下であってよい。
【0094】
一実施形態において、第2の部分34の一端34aから負極10の一端10aまでの平面視における距離D2は、0.25mm以上であってよく、0.25mm以上2mm以下であってよく、0.5mm以上1.75mm以下であってよく、0.75mm以上1.5mm以下であってよい。距離D2は、最低離間距離である。
【0095】
一実施形態において、第1の部分33の一端33aから負極10の一端10aまでの平面視における距離D1は、第2の部分34の一端34aから負極10の一端10aまでの平面視における距離D2よりも長い。距離D1と距離D2との差は、0.25mm以上2.5mm以下であってよく、0.5mm以上2mm以下であってよく、0.75mm以上1.75mm以下であってよい。
【0096】
ところで、セパレータ20の破損等により負極10と正極集電体31とが短絡する可能性がある。しかし、2次電池1は、上述したとおり、正極集電体31において、第1の金属層312aと第2の金属層312bとは、樹脂層311を挟んで構成される(図3参照)。そのため、2次電池1は、このような短絡が生じても、正極集電体31の樹脂層311が溶融し、異常発熱や発火が防止され得る。なお、一実施形態において、正極集電体31の金属面が露出する箇所のうち、負極10と対向する箇所に、絶縁部材を更に設けてもよい。絶縁部材は、セパレータ20の破損等による上記の短絡を抑制し得る。
【0097】
図6A及び図6Bは、それぞれ、第1の部分33の他の例を示す図である。一実施形態において第1の部分33は、外縁の一部又は全部が曲面で構成されてよい。例えば、図6Aに示すように、第1の領域331及び第2の領域332は、角が丸まった矩形状(本開示において「矩形状」は、角などの外縁の一部が曲面で構成された態様を含み得る)であってよい。また一実施形態において、第1の部分33の第1領域331及び第2領域332は、それぞれ、矩形状以外の形状を有してよい。例えば、図6Bに示すように、第1の領域331が矩形状で、第2の領域332が台形状であってよい。また例えば、第1の領域331が矩形状又は台形状で、第2の領域332が三角形状又は台形状であってもよい。
【0098】
<2次電池の製造方法>
図7は、2次電池1の製造方法の一例を示すフローチャートである。この方法は、正極材料を準備する工程ST1と、正極30を形成する工程ST2と、負極10を形成する工程ST3と、正極30と負極10とセパレータ20と、必要に応じて電解液を密閉容器に封入する工程ST4とを含む。
【0099】
1.正極材料を準備する工程
工程ST1において、正極材料が準備される。まず正極集電体31を準備する。正極集電体31は、樹脂層311を第1の金属層312a及び第2の金属層312bとで挟んで構成される。
【0100】
正極集電体31は、市販されている製品を使用してもよく、種々の材料から作製してもよい。正極集電体31を作製する場合、一実施形態において、金属を樹脂層311の両側の表面に、蒸着、スパッタリング、電解めっき又は貼り合わせする。これにより、金属層312a及び金属層312bが樹脂層311上に形成された正極集電体31となる。
【0101】
次に正極集電体31上に正極活物質層32を形成する。例えば、正極活物質及び正極活物質以外の1つ以上の成分を混合して正極活物質組成物を得る。正極活物質組成物を、正極集電体31の両面に塗布する。正極活物質組成物が塗布された正極集電体31をプレス成形して、正極集電体31の両面に正極活物質層32A、32Bを形成する。以上により、正極材料が形成される。
【0102】
2.正極を形成する工程
次に、工程ST2において、上記正極材料を切り抜いて、正極30が形成される。
【0103】
正極材料を切り抜く方法は、特に限定されず、ハサミやカッター等で切り抜いてもよく、あらかじめ用意しておいた型を用いて切り抜いてもよい。
【0104】
図8A図8Cは、2次電池1の正極を形成する工程を説明するための図である。図8Aは、正極材料の一方の面の平面図の一例を示す。図8Bは、正極材料の断面図の一例を示す。図8Cは、正極材料の他方の面の平面図の一例を示す。
【0105】
正極集電体31の両面に正極活物質層32を形成する場合、例えば塗布装置の精度等に起因して、長さ方向に形成面のずれが生じ得る。図8Bに示す例では、第2の金属層312b上の正極活物質層32Bは、第1の金属層312a上の正極活物質層32Aに比べて、正極端部35が形成される側に向かってTdpずれて形成されている。このような場合、工程ST2においては、図8A及び図8Cに示す切り抜き線L1で正極材料を切り抜く。切り抜き線L1は、図8Aに示す正極活物質層32Bの塗布領域に合わせて設定される。これにより、第1の金属層312aには、第1の領域331及び第2の領域332から構成される第1の部分33が形成される(図8C)。また第2の金属層312bには、第2の部分34が形成される。
【0106】
3.負極を形成する工程
次に、工程ST3において、負極10が形成される。負極10は、図2A図2Dに示すいずれかの態様であってよい。なお、負極集電体11は、市販されている製品を使用してもよく、種々の材料から作製してもよい。負極集電体11を作製する場合、正極集電体31と同様に作製してもよい。
【0107】
負極10が負極活物質層12を有する場合、以下のようにして、負極集電体11上に負極活物質層12を形成する。
例えば、負極活物質及び負極活物質以外の1つ以上の成分を混合して負極活物質組成物を得る。負極活物質組成物を、負極集電体11の両面に塗布する。負極活物質組成物が塗布された負極集電体11をプレス成形して、負極集電体11の両面に負極活物質層12を形成する。以上により負極材料が形成される。この負極材料を切り抜いて、負極10が形成される。負極材料を切り抜く方法は、特に限定されず、ハサミやカッター等で切り抜いてもよく、あらかじめ用意しておいた型を用いて切り抜いてもよい。
【0108】
4.密閉容器に封入する工程
次に、セパレータ20を準備する。セパレータ20は、上述の材料からなるものを所定の形状に打ち抜いたものであってよい。
そして、セパレータ20を介して、工程ST3で形成した負極10と工程ST2で形成した正極30とが互いに対向するように、負極10、セパレータ20、及び正極30とを1又は複数セット配置して積層体を形成し、密閉容器へ封入する。このとき、電解液を密閉容器に封入してもよい。また、積層体は、密閉容器内で各構成の位置がずれないように、溶接等によって固定されてもよい。
【0109】
本実施形態においては、正極材料の切り抜きは、切り抜き線L1で行う。これは、次のような理由による。
【0110】
図9A図9Bは、正極材料の他の切り抜き例を説明するための図である。図9A及び図9Bは、図8Bに示す塗布面のずれが生じた場合に、正極材料を切り抜き線L2で切り抜いた場合の例である。切り抜き線L2は、図9Bに示す正極活物質層32Aの塗布領域に合わせて設定される。これにより、図9Aに示すように、切り抜き線L2で切り抜かれた後の第2の金属層312b上の正極活物質層32Bは、幅Wかつ長さTの矩形領域32Bと、正極端部35Bと同一の幅かつ長さTdpの矩形領域32Bとを備える。切り抜き線L2で切り抜かれた後の第1の金属層312a上の正極活物質層32Aは、幅Wかつ長さTの矩形領域32Aを備える。第2の金属層312bの正極端部35Bの長さは、第1の金属層312aの正極端部35の長さよりもTdpだけ短い。
【0111】
図10は、切り抜き線L1を採用する効果の一例を説明するための図である。図10の(A)及び(B)は、それぞれ、切り抜き線L2で切り抜いた正極30を用いた場合の、一方の面及び他方の面からみた正極30と負極10との位置関係を示す。図10の(C)及び(D)は、それぞれ、切り抜き線L1で切り抜いた正極30を用いた場合の、第1の金属層312a側の面及び第2の金属層312b側の面からみた正極30と負極10との位置関係を示す。
【0112】
上述したとおり、負極10と正極30とは、平面視における負極10の一端10aから正極活物質層32(32A、32B)までの距離が最低離間距離以上になるように配置される(図10に示す例では、最低離間距離はD2である)。これにより、切り抜き線L2で正極30を作成した場合と、切り抜き線L1で正極30を作成した場合において、正極活物質層32A及び32Bの総面積が異なってくる。具体的には、図10に示すとおり、切り抜き線L1による正極活物質層32B(図10(D))の面積(長さTと幅Wとの積)は、切り抜き線L2による正極活物質層32B(図10(A))の面積(領域32Bの面積と領域32Bの面積の和)よりも大きい。そして、切り抜き線L1による正極活物質層32A(図10(C))の面積(長さTと幅Wとの積)と、切り抜き線L2による正極活物質層32A(図10(B))の面積(長さTと幅Wとの積)とは同一である。したがって、正極材料を切り抜き線L1(図8A図8C)で切り抜いたほうが、切り抜き線L2(図9A図9B)で切り抜くより、正極活物質層32A及び32Bの総面積を大きくし得る。これにより2次電池1のセル容量が大きくなり得る。
【0113】
<2次電池の使用方法>
2次電池1は、正極30を外部回路の一端に接続し、負極10を外部回路の他端に接続することで充放電される。外部回路は、例えば抵抗、電源、装置、デバイス、別の電池、又はポテンショスタット等でよい。
【0114】
正極30と負極10との間に、負極10から外部回路を通り正極30への電流が流れるような電圧を印加すると、2次電池1が充電され、負極10の表面にリチウム金属が析出する。充電後の2次電池1について、所望の外部回路を介して正極30及び負極10を接続すると、2次電池1が放電され、負極10の表面に生じたリチウム金属の析出が電解溶出する。
【0115】
一実施形態において、2次電池1は、電池の組み立て後の第1回目の充電(初期充電)により、負極10の表面又はセパレータ20の表面(すなわち、負極10とセパレータ20との界面)に固体電解質界面層(SEI層)が形成されてよい。SEI層は、例えば、リチウムを含む無機化合物、又はリチウムを含む有機化合物等を含んでよい。一実施形態において、SEI層の厚さは、1.0nm以上10μm以下である。2次電池1にSEI層が形成されている場合、充放電により、負極10及び/又はセパレータ20とSEI層との界面においてリチウム金属が析出又は溶解する。
【0116】
以上説明した2次電池1は、高い安全性及び良好なセル容量を有し得る。
【実施例
【0117】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本開示は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。また、特に記載がない限り、以下の実施例は、室温(25℃)、1気圧で行われた。
【0118】
1.リチウム2次電池の作製
実施例1として、図1に示す構造の2次電池1を図7に示す方法を用いて作製した。まず負極10を準備した。具体的には、まず、負極集電体11として、8μm厚のCu箔を準備した。次に、溶剤としての水に、負極活物質としてグラファイトを97質量部、導電助剤としてカーボンブラックを0.5質量部、およびバインダーとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5質量部、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1.0質量部混合した混合材料を準備した。この混合材料を負極集電体11の両面又は片面にそれぞれ目付が15mg/cmとなるように塗布し、押圧して負極活物質層12を形成した。その後、負極活物質層12を形成した負極集電体11を、所定のサイズ(図10(C)及び(D)におけるT×Wが42mm×42mm)に切り抜いた。
【0119】
次に、セパレータ20として、ポリビニリデンフロライド(PVDF)及びAlの混合物で表面がコーティングされたシート(積層方向の厚さ:15μm、幅方向及び長さ方向のサイズ:45mm×45mm)を準備した。
【0120】
次に、正極30を準備した。具体的には、まず、正極集電体31として、6μm厚のフィルム状のポリエチレンテレフタレート(PET)の両面にAlを1.0μm蒸着したものを準備した。次に、溶剤としてのN-メチル-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合した混合材料を準備した。そして、目付が23mg/cmとなるように、この混合材料を正極集電体の両面に塗布し、押圧して正極活物質層32を形成した。その後、図10における切り抜き線L1の場合(図10(C)及び図10(D))における、Tが40mm、Tが39mm、Wが40mm、Tdpが1mmとなるように、正極活物質層32を形成した正極集電体31を切り抜いた。
【0121】
次に、セパレータ20を介して正極30と負極10とが互いに対向するように、セパレータ20、正極30及び負極10を配置して積層体を形成した。この積層体は、正極30が10積層していて、積層方向において、積層体の両端がいずれも負極10であった。上記両端の負極10は、セパレータ20を介して正極30と対向する側の面のみに負極活物質層12を備え、上記両端以外の負極10は、両面に負極活物質層12を備えていた。また、図10(C)及び図10(D)における、D1が2mm、D2が1mmとなるように正極30と負極10とを配置した。そして、この積層体をラミネート外装体に挿入し、電解液とともに封止してリチウム2次電池を得た。電解液は、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)を30:35:35質量部で混合した溶媒に1Mとなるように、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解した電解液に炭酸ビニレン(VC)を2質量部添加したものを用いた。
【0122】
正極集電体の種類、負極集電体の種類及び正極の形状を図10及び図11に基づいて変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2~4の2次電池1を作製した。
【0123】
正極集電体の種類、負極集電体の種類及び正極の形状を図10及び図11に基づいて変更したこと以外は、実施例1と同様に、比較例1~5のリチウム2次電池を作製した。
【0124】
なお、図11中、Cu蒸着樹脂フィルムは、6μm厚のフィルム状のポリエチレンテレフタレート(PET)の両面にCuを1.0μm蒸着したものである。また、Al箔は、8μm厚のAl箔である。
【0125】
2.評価
2.1.強制内部短絡試験
各実施例及び比較例のリチウム2次電池を、温度25℃の環境において、0.1Cの電流で、電圧が4.2VになるまでCC充電した後、0.1Cの電流で、電圧が3.0VになるまでCC放電した。次いで、温度25℃の環境において、各実施例及び比較例のリチウム2次電池を、0.1Cの電流で、電圧が4.2VになるまでCC充電した。なお、CC充電とは、一定の電流値で行う充電であり、CC放電とは、一定の電流値で行う放電である。また、1Cの電流とは、電池の理論容量に基づいて算出された、その電池を1時間で完全に充電することができる電流である。2Cの電流は、1Cの電流の2倍の大きさである。
【0126】
次に、JIS C8714:2007に記載の強制内部短絡試験の方法に準じて、充電済の各実施例及び比較例のリチウム2次電池に対して強制内部短絡試験を行い、その評価結果を、図10に示す。強制内部短絡試験を行った結果、変化がなかった例については、変化無しと記載し、発火が生じた例については、発火と記載する。
【0127】
2.2.セル容量及び容量維持率
各実施例及び比較例のリチウム2次電池を、温度25℃の環境において、0.1Cの電流で、電圧が4.2VになるまでCC充電した後、0.1Cの電流で、電圧が3.0VになるまでCC放電した。次いで、温度25℃の環境において、50kPaの外圧を印加しながら、各実施例及び比較例のリチウム2次電池を、0.3Cの電流で、電圧が4.2VになるまでCC充電した後、0.3Cの電流で、電圧が3.0VになるまでCC放電するサイクルを実施した(1サイクル目)。このサイクルを100サイクル実施した。100サイクル目から得られる容量(Ah)を、1サイクル目から得られる容量(Ah)で除して、100サイクル目の容量維持率(%)を求めた。図10のセル容量の欄に1サイクル目から得られる容量を記載し、容量維持率の欄に100サイクル目の容量維持率を記載する。
【0128】
3.評価結果
図10は、実施例及び比較例の構成及び結果を示す図である。実施例のリチウム2次電池は、発火が生じず、セル容量が大きく、容量維持率が高いことがわかった。一方で、比較例1~3のリチウム2次電池は、容量維持率が高いが、発火を生じ、セル容量が小さいことがわかった。また、比較例4のリチウム2次電池は、発火が生じず、セル容量が大きいが、容量維持率が低いことがわかった。また、比較例5のリチウム2次電池は、セル容量が大きく、容量維持率が高いが、発火を生じることがわかった。すなわち、実施例1~4のリチウム2次電池は、高い安全性及び良好なセル容量に加えて、良好なサイクル特性を有することがわかった。
【0129】
比較例1~3のリチウム2次電池は、良好なサイクル特性を有するが、安全性が低く、セル容量が比較的小さいことがわかった。安全性が低い要因は、特に限定されるものではないが、以下のように考えられる。樹脂層を金属層で挟んで構成される正極集電体ではなく、金属層のみからなる正極集電体を用いたため、正極と負極とが短絡した際に、異常発熱が生じたと推測される。また、セル容量が低い要因は、特に限定されるものではないが、正極活物質層の表面積が小さいためと考えられる。
【0130】
比較例4のリチウム2次電池は、安全性が高く、セル容量が良好だが、サイクル特性が低いことがわかった。その要因は、特に限定されるものではないが、以下のように考えられる。比較例4のリチウム2次電池の平面視において、一方の面における正極活物質層と負極活物質層との距離D2が0mmであるため、サイクル評価中に正極活物質層と負極活物質層との間で微小な短絡が生じたと推測される。
【0131】
比較例5のリチウム2次電池は、セル容量が良好で、良好なサイクル特性を有するが、安全性が低いことがわかった。その要因は、特に限定されるものではないが、以下のように考えられる。樹脂層を金属層で挟んで構成される正極集電体ではなく、金属層のみからなる正極集電体を用いたため、正極集電体と負極活物質層とが短絡した際に、異常発熱が生じたと推測される。
【0132】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0133】
(付記1)
セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、
前記正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、
前記第1の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、
前記第2の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる、リチウム2次電池。
【0134】
(付記2)
前記第1の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、前記第1の部分の前記一端は、平面視において前記負極と重なり、前記第1の部分の前記他端は、平面視において前記負極と重ならず、
前記第2の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、前記第2の部分の前記一端は平面視において前記負極と重なり、前記第2の部分の前記他端は、平面視において前記負極と重ならない、付記1に記載のリチウム2次電池。
【0135】
(付記3)
前記第1の部分の前記一端と前記第2の部分の前記一端とが、異なる幅寸法を有する、付記1又は付記2に記載のリチウム2次電池。
【0136】
(付記4)
前記第1の部分の前記他端と前記第2の部分の前記他端とが、同一の幅寸法を有する、付記1から付記3のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0137】
(付記5)
前記第1の部分の前記一端は、前記第1の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分と同一の幅寸法を有する、付記1から付記4のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0138】
(付記6)
前記第2の部分の前記一端は、前記第2の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分よりも小さい幅寸法を有する、付記1から付記5のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0139】
(付記7)
前記第1の部分は、第1の幅寸法を有する第1の矩形領域と、前記第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する第2の矩形領域とを備える、付記1から付記6のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0140】
(付記8)
前記第1の幅寸法は、前記第1の金属層において前記正極活物質層が設けられる部分の幅寸法と同一である、付記1から付記7のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0141】
(付記9)
前記第2の部分は、前記第2の矩形領域と同一形状の矩形領域を備える、付記1から付記8のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0142】
(付記10)
前記第1の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記第2の部分は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極は、前記長さ方向に一端と他端とを備え、
前記負極の前記一端は、平面視において前記第1の部分の前記一端と前記第1の部分の前記他端との間に配置され、かつ、平面視において前記第2の部分の前記一端と前記第2の部分の前記他端との間に配置される、付記1から付記9のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0143】
(付記11)
前記第1の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、前記第2の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離よりも長い、
付記1から付記10のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0144】
(付記12)
前記第1の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、3mm以下である、付記1から付記11のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0145】
(付記13)
前記第2の部分の前記一端から前記負極の前記一端までの平面視における距離は、0.25mm以上である、付記1から付記12のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0146】
(付記14)
セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、
前記正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、
前記第1の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、前記第1の部分は、第1の領域と第2の領域とを備え、前記第1の領域は、長さ方向に一端と他端とを有し且つ第1の幅寸法を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域の前記他端の一部から長さ方向に延び、前記第1の幅寸法より小さい第2の幅寸法を有する、リチウム2次電池。
【0147】
(付記15)
前記第1の領域は、平面視において前記負極とすべて重なり、前記第2の領域は、平面視において前記負極と一部が重なり一部が重ならない、付記14に記載のリチウム2次電池。
【0148】
(付記16)
前記第2の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、前記第2の部分は、前記第2の領域と同一形状の領域を備える、付記14又は付記15に記載のリチウム2次電池。
【0149】
(付記17)
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられる負極活物質層と、を備える、付記1から付記16のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0150】
(付記18)
前記負極は、樹脂層を一対の金属層で挟んで構成される負極集電体を備える、付記1から付記17のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0151】
(付記19)
前記正極、前記セパレータ及び前記負極のセットが複数セット積層される積層体を備える、付記1から付記18のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0152】
(付記20)
リチウム2次電池の製造方法であって、
正極材料を準備する工程であって、前記正極材料は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層とを含む、工程と、
前記正極材料を切り抜いて、正極を形成する工程であって、前記正極は、前記第1の金属層が前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、前記第2の金属層が前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、かつ、前記第1の部分と前記第2の部分とが幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる工程と、を含む、
リチウム2次電池の製造方法。
【0153】
以上の各実施形態は、説明の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以上の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0154】
1…2次電池、10…負極、10a…負極の一端、10b…負極の他端、11…負極集電体、111…負極樹脂層、112…負極金属層、12…負極活物質層、13…負極端部、20…セパレータ、30…正極、31…正極集電体、311…樹脂層、312a…第1の金属層、312b…第2の金属層、32…正極活物質層、33…第1の部分、33a…第1の部分の一端、33b…第1の部分の他端、331…第1の領域、332…第2の領域、34…第2の部分、34a…第2の部分の一端、34b…第2の部分の他端、35…正極端部、x…幅方向、y…長さ方向、z…積層方向、L1…切り抜き線、L2…切り抜き線
【要約】
正極と負極との短絡を抑制しつつ、セル容量低下を抑制する技術を提供する。本発明は、セパレータを介して互いに対向する正極と負極とを備えるリチウム2次電池であって、前記正極は、樹脂層を第1の金属層及び第2の金属層で挟んで構成される正極集電体と、前記正極集電体上に設けられる正極活物質層と、を備え、前記第1の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第1の部分を備え、前記第2の金属層は、前記正極活物質層が設けられない第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分とは、幅方向及び長さ方向の寸法がいずれも異なる、リチウム2次電池に関する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11