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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】走行音生成装置、及び、走行音生成方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20241021BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241021BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G10K15/04 302J
B60R11/02 S
G10K15/04 303E
G10K11/175
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021055504
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152655
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-213726(JP,A)
【文献】特開2018-097092(JP,A)
【文献】特開2019-124931(JP,A)
【文献】特開2012-003134(JP,A)
【文献】特開平07-182587(JP,A)
【文献】特許第4794699(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
B60R 11/02
G10K 11/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に関する車両情報を取得する取得部と、
前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを記憶している記憶部と、
前記車両情報に応じて前記複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更部と、
前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更部と、
前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成部と、
生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力部と、を備える
走行音生成装置。
【請求項2】
前記第2変更部は、前記第1変更後のマスク音源データに対して、前記第2変更を行わない
請求項1に記載の走行音生成装置。
【請求項3】
前記複数の音源データは、さらに、前記車両の疑似的な走行音を生成するための走行音源データを含み、
前記第1変更部は、前記走行音源データに対して前記第1変更を行い、
前記第2変更部は、前記第1変更後の走行音原データに対して前記第2変更を行う
請求項1または2に記載の走行音生成装置。
【請求項4】
車両の走行に関する車両情報を取得する取得ステップと、
前記車両情報に応じて記憶装置に記憶されている複数の音源データであって、前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更ステップと、
前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更ステップと、
前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成ステップと、
生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力ステップと、を含む
走行音生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車室内に擬似的な走行音を生成する走行音生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、擬似的な走行音を生成し、生成した走行音を車室内に出力する技術が開示されている。特許文献1では、定常走行状態が所定時間以上継続しているときに疑似的な走行音の音量を低下させることで、略同一の疑似的な走行音が出力されることによる乗員の煩わしさや疲労感を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-171657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、擬似的な走行音によって乗員に車両の走行状態を知覚させ、かつ、擬似的な走行音の特性の定常的な継続による不快感を低減すると共に、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる走行音生成装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る走行音生成装置は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得部と、前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを記憶している記憶部と、前記車両情報に応じて前記複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更部と、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更部と、前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成部と、生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力部と、を備える。
【0006】
また、本開示の一態様に係る走行音生成方法は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得ステップと、前記車両情報に応じて記憶装置に記憶されている複数の音源データであって、前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更ステップと、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップが、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更ステップと、前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成ステップと、生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の走行音生成装置は、擬似的な走行音によって乗員に車両の走行状態を知覚させ、かつ、擬似的な走行音の特性の定常的な継続による不快感を低減すると共に、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る走行音生成装置を備える車両の模式図である。
図2図2は、実施の形態に係る走行音生成装置の機能ブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る車両情報が走行速度の場合の判定部の動作を説明する図である。
図4図4は、実施の形態に係る第1変更部による第1変更について説明するための図である。
図5A図5Aは、第1走行状態における第1変更部による第1変更後の信号の状態を説明するための図である。
図5B図5Bは、第2走行状態における第1変更部による第1変更後の信号の状態を説明するための図である。
図5C図5Cは、第3走行状態における第1変更部による第1変更後の信号の状態を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態に係る第1変更部の構成図である。
図7図7は、実施の形態に係る第2変更部の構成図である。
図8図8は、変更対象として決定された、第1変更後の音源データに対する処理の第1の例について説明するための図である。
図9図9は、変更対象として決定された、第1変更後の音源データに対する処理の第2の例について説明するための図である。
図10図10は、変更対象として決定された、第1変更後の音源データに対する処理の他の例について説明するための図である。
図11図11は、変更対象として決定された、第1変更後の音源データに対する処理の他の例について説明するための図である。
図12図12は、変更対象として決定された、音源データに対する処理の他の例について説明するための図である。
図13図13は、走行音生成装置による動作(走行音生成方法)の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、第1走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
図15図15は、第2走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
図16図16は、第3走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
従来、特許文献1のように、エンジンを備えておらず走行しているときの走行音が発生しにくい車両において、擬似的な走行音を車室内に出力する技術が知られている。この技術では、車速又はアクセル開度などの車両情報に応じて、音源データの音量又は音程(ピッチ)を変更して、変更後の音を擬似的な走行音として車室内に出力することによって、音で乗員に車両の走行状態を知覚させることができる。つまり、乗員は、擬似的な走行音を聞くことでドライブ感を感じることができる。
【0010】
一方、定常走行時のように同一の走行状態が連続したときは、擬似的な走行音の音色、音量はその間略一定になり、これが乗員に煩わしさや疲労感を感じさせる可能性がある。
【0011】
特許文献1の技術では、同一の走行状態が連続したときに擬似的な走行音の音量を低下することで、乗員の煩わしさや疲労感を低減している。
【0012】
しかしながら、擬似的な走行音の音量を低下させると、擬似的な走行音で乗員に車両の走行状態を知覚させることが難しい。つまり、特許文献1では、同一の走行状態が連続したときに、乗員に疑似的な走行音による車両の走行状態を知覚させながら、擬似的な走行音の煩わしさを低減させることが難しいという課題がある。
【0013】
また、車両内では、車両情報の変化に応じて音量または音程が変化する騒音が発生し、車両の乗員に不快感を与えることが知られている。このような騒音による不快感を低減するために、騒音の音量及び音程に応じてマスカー音を生成し、車室内に出力して騒音をマスクする技術が知られている。
【0014】
例えば、この騒音の一例として、EV(Electric Vehicle)、HV(Hybrid Vehicle)などのような走行時の動力としてのモータを備える車両におけるモータ電磁騒音がある。モータ電磁騒音は、車両情報のモータ回転数を実数倍することで得られる数値に関連して音程および音量の少なくとも一方が変化する。このため、この数値でマスカー音の音源の音程および音量の少なくとも一方を変更し、また、車両内の所定位置でマスクできるよう信号処理を施した後のマスカー音を出力することで、対象騒音をマスクすることができる。
【0015】
このため、定常走行時のように同一の走行状態が連続したときは、生成されるマスカー音も略一定になり、車両の乗員に煩わしさや疲労感を感じさせる可能性がある。
【0016】
しかしながら、煩わしさを低減させるためにマスカー音の音量を低減させると、マスカーの音量が騒音の音量を下回って騒音が乗員に聞こえるようになり、騒音による不快感が増大することになる。
【0017】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る走行音生成装置は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得部と、前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを記憶している記憶部と、前記車両情報に応じて前記複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更部と、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更部と、前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成部と、生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力部と、を備える。
【0018】
これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、走行音として生成した第1変更後の複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データを変更することで、疑似的な走行音に変化を与えることができる。また、マスカー音には第2変更を行わないため、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。よって、疑似的な走行音で運転手に車両の走行状態を知覚させ、かつ、疑似的な走行音が運転手に擬似的な走行音を運転手にとって煩わしい音に聞こえることを効果的に低減すると共に、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。
【0019】
また、前記第2変更部は、前記第1変更後のマスク音源データに対して、前記第2変更を行わなくてもよい。
【0020】
また、前記複数の音源データは、さらに、前記車両の疑似的な走行音を生成するための走行音源データを含み、前記第1変更部は、前記走行音源データに対して前記第1変更を行い、前記第2変更部は、前記第1変更後の走行音原データに対して前記第2変更を行ってもよい。
【0021】
また、本開示の一態様に係る走行音生成方法は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得ステップと、前記車両情報に応じて記憶装置に記憶されている複数の音源データであって、前記車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更ステップと、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップが、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの、前記第1変更後のマスク音源データ以外の、少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更ステップと、前記第2変更後の複数の音源データと、前記第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで前記車両の車室内に出力するための疑似的な走行音を生成する合成ステップと、生成された前記疑似的な走行音を前記車両の車室内に出力する出力ステップと、を含む。
【0022】
これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、走行音として生成した第1変更後の複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データを変更することで、疑似的な走行音に変化を与えることができる。また、マスカー音には第2変更を行わないため、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。よって、疑似的な走行音で運転手に車両の走行状態を知覚させ、かつ、疑似的な走行音が運転手に擬似的な走行音を運転手にとって煩わしい音に聞こえることを効果的に低減すると共に、車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本開示の他の一態様に係る走行音生成装置は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得部と、複数の音源データを記憶している記憶部と、前記車両情報に応じて前記複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更部と、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更部と、前記第2変更後の複数の音源データを合成することで前記車両の車室内に出力するための走行音を生成する合成部と、生成された前記走行音を前記車両の車室内に出力する出力部と、を備える。
【0024】
これによれば、車両情報の変化に応じて音源データを変更し、乗員に走行状態を知覚させる擬似的な走行音として車室内に出力する際、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、走行音として生成した複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データ変更することで、疑似的な走行音に変化を与えることができる。よって、疑似的な走行音で乗員に車両の走行状態を知覚させ、かつ、車両情報の変化量の少なさによる略同一の音色、音量の擬似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0025】
また、前記第1変更部は、前記第1変更において、前記複数の音源データの音量および/または音程を変更してもよい。
【0026】
これによれば、第1変更において複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データの音程および/または音程を変更することで、車両情報の変化量の少なさによる略同一の音色、音量の擬似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0027】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記第1変更後の複数の音源データの少なくとも一つの音源データの音量および/または音程を変更してもよい。
【0028】
これによれば、第2変更において複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データの音程および/または音程を変更することで、車両情報の変化量の少なさによる略同一の音色、音量の擬似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0029】
また、前記第2変更部は、前記判定部で前記車両情報の変化量が前記所定の変化量を超えたと判定された場合、前記第1変更後の音源データを変更せずに、合成部へ出力してもよい。
【0030】
これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量を超えた場合、第1変更部の音源データをそのまま出力することで車両情報の変化を音源データに反映させることができ、乗員は擬似的な走行音からドライブ感を感じられる。
【0031】
また、前記複数の音源データは、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが互いに異なり、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記第1変更後の複数の音源データのうち、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが最大である音源データを変更しなくてもよい。
【0032】
これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合、生成された擬似的な走行音のうちで最も音量の大きな音源データの特性を変更しないため、音源データに反映された走行状態情報を維持させながら、他の音源データを変更させて定常走行時の煩わしさを低減することができる。
【0033】
また、前記複数の音源データは、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが互いに異なり、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記第1変更後の複数の音源データのうち、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが2番目に大きい音源データを変更してもよい。
【0034】
このため、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、第2変更における音の変化を乗員に効果的に知覚させることができ、擬似的な走行音の定常走行時の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0035】
また、前記複数の音源データは、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが互いに異なり、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記第1変更後の複数の音源データのうち、人の聴覚特性に基づいて特定される、最も人に知覚され易い音源データを変更しなくてもよい。
【0036】
これによれば、人が最も聞きとりやすい音源データの特性を変更しないため、音源データに反映される走行状況を乗員に効果的に知覚させることができる。
【0037】
また、前記複数の音源データは、音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが互いに異なり、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記第1変更後の複数の音源データのうち、人間の聴覚特性に基づいて特定される、2番目に人に知覚され易い音源データを変更してもよい。
【0038】
これによれば、人に2番目に聞きとりやすい音源データを変更するため、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、第2変更による音の変化を乗員に効果的に知覚させることができ、擬似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0039】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、少なくとも1つの前記第1変更後の音源データの音圧レベルを所定の音圧レベル幅で変化させてもよい。
【0040】
第1変更後の音源データの音圧レベルを変化させることで、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、乗員は擬似的な走行音の変化を知覚し、定常走行時の煩わしさを低減させることができる。
【0041】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、少なくとも1つの前記第1変更後の音源データの音圧レベルについて、前記所定の音圧レベル幅での変化を、所定の周期で行ってもよい。
【0042】
これによって、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、乗員は擬似的な走行音の変化を知覚し、定常走行時の煩わしさを低減させることができる。
【0043】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記所定の音圧レベル幅または前記所定の周期を前記車両情報に応じて変更してもよい。
【0044】
これによって、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、乗員は音源データの音圧レベル変化の周期で車速の大きさを知覚することができ、定常走行時の煩わしさを低減させつつ、効果的に走行状況を知覚することができる。
【0045】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間に応じて、前記所定の音圧レベル幅での増減を行う前記所定の周期および/または前記所定の音圧レベル幅を変更してもよい。
【0046】
これによって、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、乗員は音源データの音圧レベル変化の周期で車速の大きさを知覚することができ、定常走行時の煩わしさを低減させつつ、効果的に走行状況を知覚することができる。
【0047】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記所定の音圧レベル幅での増減を行う前記所定の周期を周期的に変更してもよい。
【0048】
音圧レベルの周期的変化を更に周期的に変えることで、定常走行時の擬似的な走行音の一定感を更に引き下げ、定常走行時の煩わしさを効果的に低減させることができる。
【0049】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、少なくとも1つの前記第1変更後の音源データの周波数帯域の最低周波数および最高周波数のうちの少なくとも一方を所定の周波数幅で変動させしてもよい。
【0050】
第1変更後の音源データの周波数帯域を変動させることで、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、乗員は擬似的な走行音の変化を知覚し、定常走行時の煩わしさを低減させることができる。
【0051】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記所定の周波数幅での周波数の変動を所定の周期で行ってもよい。
【0052】
これにより、乗員は擬似的な走行音の変化を知覚し、定常走行時の煩わしさを低減させることができる。
【0053】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記周波数の変動の前記所定の周期および/または前記所定の周波数幅を前記車両情報に応じて変更してもよい。
【0054】
第1変更後の音源データの周波数帯域を車速に応じて周期的に変動させることで、よりさまざまに擬似的な走行音の変化をつけることができ、定常走行時の煩わしさをより効果的に低減させることができる。
【0055】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間に応じて、前記周波数の変動の前記所定の周期および/または前記所定の周波数幅を変更してもよい。
【0056】
車両情報の変化量が所定の変化量以下である状態が長時間続いた場合に、第1変更後の音源データの変化を更に時間に応じて変化させることで、長時間の定常走行でも擬似的な走行音の変化を知覚させることができ、煩わしさを低減させることができる。
【0057】
また、前記第2変更部は、前記第2変更において、前記周波数の変動の前記所定の周期を周期的に変更してもよい。
【0058】
第1変更後の音源データの変化を更に周期的に変化させることで、定常走行時の擬似的な走行音の一定感を更に引き下げ、煩わしさを効果的に低減させることができる。
【0059】
また、前記第2変更部は、前記車両情報が所定値以下の場合、前記判定部が、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合でも、前記複数の音源データに前記第2変更を行わなくてもよい。
【0060】
これによれば、車両状態が一定になりにくい条件下において、第2変更を頻繁に実施/非実施することによる擬似的な走行音の変化を回避しつつ、第2変更処理の処理負荷を低減することができる。
【0061】
また、前記車両情報は、車速、アクセル開度、トルク、加速度のうちのいずれか、もしくはそれらの組合せ、もしくはそれらの全てであってもよい。
【0062】
また、上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る走行音生成方法は、車両の走行に関する車両情報を取得する取得ステップと、前記車両情報に応じて記憶装置に記憶されている複数の音源データを変更する第1変更を行う第1変更ステップと、前記車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップが、前記変化量が前記所定の変化量以下であると判定した場合に、前記第1変更後の前記複数の音源データに対して、前記第1変更後の前記複数の音源データのうちの少なくとも一つの音源データを変更する第2変更を行う第2変更ステップと、前記第2変更後の複数の音源データを合成することで前記車両の車室内に出力するための走行音を生成する合成ステップと、生成された前記走行音を前記車両の車室内に出力する出力ステップと、を含む。
【0063】
これによれば、車両情報の変化に応じて音源データを変更し、乗員に走行状態を知覚させる擬似的な走行音として車室内に出力する際、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、走行音として生成した複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データ変更することで、疑似的な走行音に変化を与えることができる。よって、疑似的な走行音で乗員に車両の走行状態を知覚させ、かつ、車両情報の変化量の少なさによる略同一の音色、音量の擬似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0064】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0065】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0066】
(実施の形態)
[走行音生成装置を備える車両の全体構成]
実施の形態では、車両に搭載される走行音生成装置について説明する。図1は、実施の形態に係る走行音生成装置を備える車両の模式図である。
【0067】
車両50は、走行音生成装置10と、センサ51と、車両制御部52と、スピーカ53と、車両本体54とを備える。車両50は、具体的には、自動車であるが、特に限定されない。
【0068】
センサ51は、車両50の各機構の動き検知し、その大きさを信号として出力する。本実施の形態では、センサ51は、例えば、走行速度に関連する情報として、車両50が電気自動車の場合は車両50が備えるモータ57に設置されてモータ回転数や電流値、トルク等の値を検知して出力し、車両50がエンジン車の場合は、エンジン回転数、エンジントルク等を出力する。また、アクセル開度の情報として、アクセルに付属しているセンサ51が、アクセルの踏み込みの大きさを検出して出力する。
【0069】
モータ57は、車両50の走行において、車両50を加速させる動力を発生させる。また、モータ57は、車両50を減速したときに生じる回生エネルギーを取得してもよい。車両50は、例えば、モータ57を備えるEV(Electric Vehicle)である。
【0070】
車両制御部52は、車両50の運転手の操作等に基づいて、車両50の駆動を制御し、センサ51からの信号501を取得する。車両制御部52は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)であり、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータまたは専用回路などによって実現される。車両制御部52は、プロセッサ、マイクロコンピュータ、及び専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。
【0071】
スピーカ53は、走行音生成装置10から出力された擬似的な走行音を出力する。スピーカ53は、例えば、車両50内の運転席側の壁(ドア)に配置され、運転席近傍の所定位置56において乗員に適切に聞こえるように調整された擬似的な走行音を出力する。所定位置56は、例えば、車両50内において乗員が着座する位置である。
【0072】
なお、図1の例では、スピーカ53は、運転席側の壁に配置されているが、これに限らずに、他の位置に配置されていてもよい。また、擬似的な走行音は、1つのスピーカ53に限らずに、複数のスピーカにより出力されてもよい。この複数のスピーカは、車両本体54のどの位置に配置されていてもよい。
【0073】
車両本体54は、車両50のシャーシ及びボディなどによって構成される構造体である。車両本体54は、スピーカ53が配置される車両50内の空間55(車室内空間)を形成する。
【0074】
[走行音生成装置の構成]
次に、走行音生成装置10の構成及び基本動作について図1に加えて図2を参照しながら説明する。図2は、走行音生成装置10の機能ブロック図である。
【0075】
走行音生成装置10は、運転手にドライブ感を感じさせるための擬似的な走行音を生成する装置である。擬似的な走行音とは、車両50の走行状態によって変化する車両情報の大きさに応じて音量や音程、音響効果等の特性が変化する音のことである。乗員は擬似的な走行音のこれらの特性の変化によって、車両50の走行状態を知覚することができる。走行音生成装置10は、車両制御部52から出力される車両の走行に関する車両情報に基づいて、擬似的な走行音を生成し、スピーカ53から出力することで、運転手に車両の走行状態を知覚させることができる。例えば、エンジン車を運転している時、加速するとエンジン音の音程を上がり、アクセルを踏み込むとエンジン音の音量が大きくなる。このような走行状態の変化による走行音の変化を、擬似的な走行音の生成時に音源データの特性に反映させることで、乗員は擬似的な走行音から車両の走行状態を知覚することができる。
【0076】
擬似的な走行音は、例えば、エンジン車のエンジン音を録音して音源データとして取得し、その音源データを再生装置でループ再生しながら、走行状態に応じて再生音の特性を変更して、実際に運転している状況のエンジン音を模した音である。電気自動車にエンジン音を音源とした擬似的な走行音を適用することで、エンジン車を運転している感覚を提供することができる。
【0077】
また、擬似的な走行音は、実際に自動車等の車両の走行音とは全く関連のない音源データを用いる場合もありうる。例えば、楽器の演奏音やシンセサイザー等で合成して生成した音源などもありうる。複数の音源データを組み合わせて再生し、走行状況に応じて再生音の特性を変更することで、通常の自動車の走行音とは異なる、その車両のイメージやコンセプトに合わせた擬似的な走行音を提供することができる。
【0078】
図2に示されるように、走行音生成装置10は、取得部11、判定部12と、再生部13と、記憶部14と、第1変更部15と、第2変更部16と、合成部17と、出力部18とを有する。
【0079】
[取得部11]
取得部11は、車両50内の走行に関する車両情報109を車両制御部52から取得する。取得部11は、車両情報109を車両制御部52から逐次的に取得する。取得部11は車両情報109から、必要な情報の選択、あるいは計算を実施して、擬似的な走行音を出力するために必要な車両情報101を出力する。本実施の形態では、具体的には、車両50の走行速度を示す情報、又は、車両50のアクセルの踏み込みの大きさ(アクセル開度)を示す情報である。車両制御部52から取得する車両情報109は、走行速度やアクセル開度そのものではなく、走行速度、アクセル開度が算出可能な、走行状態を表す他の情報でもよい。そのような場合、取得部11は関連する車両情報109を読み出して所定の演算を行うことで必要な走行速度情報やアクセル開度情報を得る。
【0080】
また、エンジン車であれば、エンジン回転数、エンジントルク、また、または、加速度を示す情報は、車速センサにより検出された車両50の走行速度で示されてもよいし、車両50のブレーキ油圧、ドライブシャフト回転数、およびトルクの少なくとも1つから算出されてもよい。車両情報は、例えば、連続的な数値により示される指標値であってもよいし、相関を有する他の指標との波形によって示されていてもよい。取得部11は、例えば、車両制御部52とCANの規格に準拠した通信によってパルス信号を車両制御部52から取得する通信モジュール(通信回路)であるが、他の通信規格に準拠した通信モジュールであってもよく、特に限定されない。
【0081】
[判定部12]
判定部12は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する。判定部12は、取得部11から出力された複数の車両情報101毎に、判定を行う。判定結果は判定情報102として出力される。
【0082】
図3は、本実施の形態における、車両情報が走行速度の場合の判定部12の動作を説明する図である。図3中の実線2001は取得部11から出力される車両の走行速度を示す。判定部12は時間Δt間隔で走行速度の大きさを確認する。例えば、時刻t1で判定部12は走行速度v1を取得し、時刻t1から時間Δt前の時刻t0での走行速度v0と比較する。予め決められた走行速度の変化量Δvu、Δvdを用いて、走行速度v1の大きさが走行速度v0+Δvu以下、かつ走行速度v0-Δvd以上の場合は走行速度v1の変化量が小と判定し、判定情報102を示す数値をゼロにして出力する。一方、走行速度v1の大きさが走行速度v0+Δvuより大きい、または走行速度v0-Δvdより小さい場合は変化量が大と判定し、判定情報102を1にして出力する。
【0083】
また、判定部12は、例えば、直近の過去の複数の走行速度を用いて算出した走行速度の移動平均を用いて上記判定を行ってもよい。
【0084】
また、判定部12は車両情報の大きさを確認し、所定値以下の場合には、車両情報の変化量が所定変化量より小さい場合でも、判定情報102をゼロにして出力する。
【0085】
例えば、車両50が自動車の場合、市街地等を走行する際には信号などの交通事情により加減速を頻繁に繰り返すため、擬似的な走行音が煩わしく思われるほど長い期間の定常走行状態が発生しにくい。このことから、例えば市街地での法定速度である40km/hを閾値にして、それより走行速度が低い場合は判定情報102をゼロとして出力する。
【0086】
[記憶部14]
記憶部14は、音源データを記憶している。具体的には、記憶部14は、複数の音源データを記憶している。複数の音源データは、それぞれ異なる周波数帯域の音源データである。本実施の形態では、複数の音源データは、例えば、後述する図4に示されるように、3つの音源データを含む。
【0087】
音源データとしては、通常の音楽、音声データでも良いし、特定の周波数の正弦波、矩形波等の信号、ホワイトノイズやピンクノイズ等のランダムノイズでも良い。また、車室内の騒音やエンジン音、排気音等を収録してデータ化したものでも良い。また、それらを組み合わせたものでも良い。また、それらをローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなので帯域制限したものでも良い。
【0088】
[再生部13]
再生部13は、記憶部14に記憶されている複数の音源データを同時に読み出して再生することで、再生信号103を出力する。再生部13は、有限のデータ長の音源データを先頭から読み出し、データの終端まで読み出すと先頭に戻って繰り返し読み出して再生することで、各音源データの再生時間長さよりも長い期間の再生信号103を生成する。
【0089】
[第1変更部15]
第1変更部15は、車両情報に応じて再生部13により生成された再生信号103の音量及び音程の少なくとも一方を変更する第1変更を行う。第1変更の具体的な処理について、図4図5A図5C、及び、図6を用いて説明する。
【0090】
再生部13から出力される複数の再生信号103の特性(本実施の形態では音量、音程)を、取得部11から出力される走行速度情報、アクセル開度情報の大きさに応じて、変更する。
【0091】
図6は第1変更部の構成図である。
【0092】
走行速度音量設定部2105は、予め決められた、走行速度に対する音源データの音量調整値を保持しておき、取得部11から出力される走行速度情報が入力されると、その大きさに対応する走行速度音量調整値を出力する。
【0093】
アクセル開度音量設定部2106は、予め決められた、アクセル開度値に対する音源データの音量調整値を保持しておき、取得部11から出力されるアクセル開度情報が入力されると、その大きさに対応するアクセル開度音量調整値を出力する。
【0094】
例えば、本実施の形態では、走行速度音量設定部2105は、横軸が走行速度、縦軸が音量調整値のテーブルであり、また、アクセル開度音量設定部2106は、横軸がアクセル開度、縦軸が音量調整値のテーブルであり、それぞれの情報値の大きさに対してテーブル引きで得られた音量調整値が出力される。ただ、この実施の形態はこれに限られるものではない。
【0095】
設定音量算出部2103は、走行速度音量設定部2105とアクセル開度音量設定部2106からそれぞれ出力される、走行速度音量調整値とアクセル開度音量調整値とを用いて、音源データの音量を調整する音量ゲイン値を算出、出力する。
【0096】
走行速度音程設定部2107は、予め決められた、走行速度に対する音源データの音程調整値を保持しておき、取得部11から出力される走行速度情報が入力されると、その大きさに対応する走行速度音程調整値を出力する。
【0097】
アクセル開度音程設定部2108は、予め決められた、アクセル開度値に対する音源データの音程調整値を保持しておき、取得部11から出力されるアクセル開度情報が入力されると、その大きさに対応するアクセル開度音程調整値を出力する。
【0098】
例えば、本実施の形態では走行速度音程設定部2107は、横軸が走行速度、縦軸が音程調整値のテーブルであり、また、アクセル開度音程設定部2108は、横軸がアクセル開度、縦軸が音程調整値のテーブルであり、それぞれの情報値の大きさに対してテーブル引きで得られた音程調整値が出力される。ただ、この実施の形態はこれに限られるものではない。
【0099】
設定音程算出部2104は、走行速度音程設定部2107とアクセル開度音程設定部2108からそれぞれ出力される、走行速度音程調整値とアクセル開度音程調整値とを用いて、音源データの音程を調整するための調整音程値を算出し、出力する。
【0100】
音量調整処理部2101は、再生部から出力される音源データの音量に、設定音量算出部2103が算出した音量ゲイン値を掛けることで、音源データの音量を変更する。
【0101】
音程調整処理部2102は、再生部から出力される音源データの音程を、設定音程算出部2104が算出した調整音程値に基づいて、音源データの音程を変更する。音程の変更方法については、ピッチシフトでも構わないし、中心周波数を制御したバンドパスフィルタを用いて帯域制限しても構わないし、その他の方法でも構わない。
【0102】
音量調整、音程調整が施された再生信号103は、第1変更処理データ105として出力される。
【0103】
図6の構成図は、1つの音源データ当たりの構成になる。音源データが複数存在する場合は、この構成が音源データの個数分存在することになる。その場合、走行速度音量設定部2105、アクセル開度音量設定部2106、走行速度音程設定部2107、アクセル開度音程設定部2108のテーブルの内容は、音源データ毎に個別に設定される。
【0104】
図4及び5A~図5Cは、本実施の形態における、第1変更部の処理前後の信号の状態を説明するための図である。
【0105】
再生部13から同時に出力される再生信号103_1、103_2、103_3はそれぞれ異なる周波数特性110、120、130を持つ。
【0106】
第1変更部15_1、15_2、15_3は、それぞれ再生信号103_1、103_2、103_3の第1変更処理用の走行速度音量設定部、走行速度音程設定部、アクセル開度音量設定部、アクセル開度音程設定部を具備しており、取得部11から出力される走行速度情報とアクセル開度情報に応じて、個別に音量ゲイン値と調整音程値とが算出され、それらの値に基づいて音量調整処理部と音程調整処理部によって、それぞれ音量と音程が変更される。
【0107】
第1変更部15_1、15_2、15_3はそれぞれ、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3が出力する。ある走行速度とアクセル開度値による第1走行状態における、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性をそれぞれ111、121、131に示す。同様に、別の走行速度とアクセル開度値による第2走行状態における、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性を112、122、132に、第3走行状態における第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性を113、123、133に示す。このように、ある走行状態において、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3周波数特性は互いに異なるように調整されている。
【0108】
本実施の形態において、第1変更部15は、走行速度やアクセル開度の車両情報に応じて再生信号を変更するが、例えば、複数の音源の内の、ある音源から生成された再生信号を走行速度のみに応じて変更し、他の音源から生成された再生信号をアクセル開度のみに応じて変更してもよい。また、第1変更部15は、再生信号の音量だけを変更してもよいし、音程だけを変更してもよい。
【0109】
[第2変更部16]
第2変更部16は、判定部12が車両情報の変化量が所定の変化量以下であると判定した場合に、第1変更後の複数の音源データに対して、第2変更を行う。第2変更は、第1変更後の複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データの音量及び音程の少なくとも一方を変更する処理である。
【0110】
図7は、第2変更部の構成を示す図である。第1変更部15_1、15_2、15_3の出力である、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3と判定部12の出力である判定情報102を入力としている。
【0111】
第2変更処理部221は、分析結果信号223_1、223_2、223_3を受けて、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の中で、第2変更処理を施す信号を選択し、処理を実施する。処理後の信号、第2変更処理データ106_1、106_2、106_3は合成部17へ出力される。
【0112】
分析部222は第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の音圧エネルギーやピークレベル等の物理量を測定、分析し、その大きさの順序を決定する。その結果を分析結果信号223_1、223_2、223_3を出力する。
【0113】
第2変更部16は、判定部12が車両情報の変化量が所定の変化量を超えたと判定した場合、第2変更を行わず、そのまま合成部17へ出力する。このため、車両情報の変化が大きい時は、その変化を反映した走行音データを、音量の変更なしに出力することができ、乗員は出力音から走行状態を知覚することができる。
【0114】
第2変更処理部221は、第1変更処理データのうちで、第1変更処理データの数よりも少ない数の第1変更処理データの音量及び音程の少なくとも一方を変更してもよい。つまり、第2変更処理部221は、音量及び音程の少なくとも一方を変更する対象となる第1変更処理データを複数の第1変更処理データの中から決定し、決定した変更対象の第1変更処理データに対してのみ音量及び音程の少なくとも一方の変更を行う。
【0115】
具体的には、第2変更処理部221は、分析部222が複数の第1変更処理データのうち音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが最大であると分析した第1変更処理データを変更対象から除外してもよい。また、第2変更処理部221は、分析部222が複数の第1変更処理データのうち音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが2番目に大きいと分析した第1変更処理データを変更対象として決定してもよい。
【0116】
例えば、図5Aの第1走行状態での第1変更処理データ105_1、105_2、105_3のそれぞれの周波数特性111、121、131のピークレベル値を分析部222が分析し、ピークレベルの大きさが大きい順に105_1、105_2、105_3と並ぶと分析する。その分析結果としての分析結果信号223_1、223_2、223_3はそれぞれ、周波数特性111、112、113のピークレベルの大きい順の順序である1、2、3として出力される。第2変更処理部221は、分析結果信号223_1、223_2、223_3を受けて、2番目にピークレベル値の大きな第1変更処理データ105_2を変更対象信号とする。
【0117】
同様に、図5B中の第2走行状態の場合は、周波数特性112、122、132を基に分析部222はピークレベルの大きさが大きい順に105_3、105_1、105_2と並ぶと分析する。その分析結果としての分析結果信号223_1、223_2、223_3はそれぞれ、周波数特性112、122、132のピークレベルの大きい順序である2,3,1として出力される。これを受けて、第2変更処理部221は、2番目にピークレベル値の大きな第1変更処理データ105_1を変更対象信号とする。
【0118】
同様に、図5C中の第3走行状態の場合は、周波数特性113、123、133を基に分析部222はピークレベルの大きさが大きい順に105_2、105_1、105_3と並ぶと分析する。その分析結果としての分析結果信号223_1、223_2、223_3はそれぞれ、周波数特性113、123、133のピークレベルの大きい順序である2、1、3として出力される。これを受けて、第2変更処理部221は、2番目にピークレベル値の大きな第1変更処理データ105_1を変更対象信号とする。
【0119】
なお、第2変更処理部221は、複数の第1変更処理データのうち音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルの大きさが3番目以降であると分析部222が判断した第1変更処理データを変更対象として決定してもよい。このように、第2変更の変更対象は、除外された第1変更処理データ以外の全ての第1変更処理データであってもよいし、一部の第1変更処理データであってもよい。
【0120】
また、第2変更部16は、変更対象の第1変更処理データを決定するときに、人の聴覚特性を考慮してもよい。つまり、第2変更処理部221は、分析部222が複数の第1変更処理データから、人の聴覚特性に基づいて最も人に知覚され易いと分析した第1変更処理データを変更対象から除外してもよい。また、第2変更処理部221は、分析部222が複数の第1変更処理データのうち人の聴覚特性に基づいて、2番目に人に知覚され易いと分析した第1変更処理データを変更対象として決定してもよい。また、第2変更処理部221は、分析部222が複数の第1変更処理データのうち人の聴覚特性に基づいて分析した、3番目以降で人に知覚され易い第1変更処理データを変更対象として決定してもよい。なお、人の聴覚特性は、例えば、等ラウドネス曲線で示される。
【0121】
例えば、分析部222は、複数の第1変更処理データのそれぞれに対し、1/3オクターブバンド分析を行うことで、1/3オクターブバンド毎の音圧レベルを算出する。次に、分析部222は、1/3オクターブバンド毎の音圧レベルに等ラウドネス曲線に基づく特性補正値を加算することで補正オクターブバンド値を算出する。次に、分析部222は、各第1変更処理データに対応する、複数の補正オクターブバンド値の最大値、又は、複数の補正オクターブバンド値の和を指標として、人に知覚され易い音源データの順番を決定する。
【0122】
次に、変更対象として決定された、第1変更処理データに対する処理の具体例について説明する。図8は、変更対象として決定された、第1変更処理データに対する処理の第1の例について説明するための図である。
【0123】
図8の121は、図5Aの走行状態1において第2変更処理対象となった第1変更処理データ105_2の周波数特性である。第1変更処理データ105_2に対し、第2変更処理部221は、時系列において、変更対象の第1変更処理データ105_2の音圧レベルを所定の音圧レベルの幅ΔL1で増減させてもよい。第2変更処理部221は、時系列において、上記音圧レベルの増減を所定の周期で行ってもよい。つまり、第2変更処理部221は、第1変更処理データ105_2の音圧レベルを時々刻々と増減させる。増減は、例えば、第2変更開始時(図8の(a))の音圧レベルから所定の音圧レベルの幅ΔL1の1/2を減じた音圧レベルを下限L1とし、変更対象の音源データの音圧レベルを下限L1まで徐々に低減させ、下限L1に達すると(図8の(b))、第2変更開始時の音圧レベルから所定の音圧レベルの幅ΔL1の1/2を加えた音圧レベルを上限L2とし、変更対象の音源データの音圧レベルを上限L2まで徐々に増加させ、上限L2に達すると(図8の(c))、下限L1まで低減させることを、所定の周期で繰り返し行う処理である。これにより、第2変更処理部221により出力される第2変更処理データ106_2の周波数特性は、周波数特性121a、121b、121cに変更される。
【0124】
なお、音圧レベルの下限は、第2変更開始時の音圧レベルより小さければ上記に限らない。また、音圧レベルの上限は、変更開始時の音圧レベル以上、かつ、下限よりも所定の音圧レベル幅の分だけ大きければ上記に限らない。
【0125】
また、第2変更処理部221は、音圧レベルの増減における所定の周期を変更してもよい。第2変更処理部221は、音圧レベルの増減における周期を車両情報に応じて変更してもよい。つまり、第2変更処理部221は、車両情報に応じた所定の周期で音圧レベルを増減させてもよい。例えば、第2変更処理部221は、走行速度が遅いほど、周期を小さく変更してもよい。第2変更処理部221は、車両情報が示すアクセル開度が小さいほど、周期を小さく変更してもよい。また、第2変更部16は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間に応じて、所定の音圧レベル幅での増減を行う所定の周期、及び、所定の音圧レベル幅の少なくとも一方を変更してもよい。
【0126】
また、第2変更部16は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間が所定時間よりも長くなった場合でも、所定の周期を変動させずに固定してもよい。このときに、周期は、上記のように所定の周期を変更している場合において、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間が所定時間よりも長くなったときの所定の周期で固定されてもよい。また、周期は、予め定められた周期で固定されてもよい。また、第2変更部16は、所定の音圧レベル幅での増減を行う所定の周期を周期的に変更してもよい。
【0127】
図9は、変更対象として決定された、第1変更後の音源データに対する処理の第2の例について説明するための図である。図9の周波数特性132は、図5Bの走行状態2において第2変更処理対象となった第1変更処理データ105_1の周波数特性である。第1変更処理データ105_1に対し、第2変更処理部221は、時系列において、変更対象の第1変更処理データの周波数帯域の最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方を所定の周波数幅で変動させてもよい。以下では、この変動を、周波数の変動と称する。第2変更部16は、時系列において、所定の周波数幅での周波数の変動を所定の周期で行ってもよい。つまり、第2変更処理部221は、変更対象の第1変更処理データ105_1の最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方を時々刻々と変動させる。変動は、例えば、第2変更開始時(図9の(a))の最低周波数から所定の周波数幅Δf1の1/2を減じた周波数を下限f11とし、変更対象の音源データの最低周波数を下限f11まで徐々に低減させ、下限f11に達すると(図9の(b))、第2変更開始時の最低周波数から所定の周波数幅の1/2を加えた周波数を上限f21とし、変更対象の音源データの最低周波数を上限f21まで徐々に増加させ、上限f21に達すると(図9の(c))、下限f11まで低減させることを、所定の周期で繰り返し行う処理である。また、変動は、例えば、第2変更開始時(図9の(a))の最高周波数から所定の周波数幅Δf2の1/2を減じた周波数を下限f12とし、変更対象の音源データの最高周波数を下限f12まで徐々に低減させ、下限f12に達すると(図9の(b))、第2変更開始時の最高周波数から所定の周波数幅の1/2を加えた周波数を上限f22とし、変更対象の音源データの最高周波数を上限f22まで徐々に増加させ、上限f22に達すると(図9の(c))、下限f12まで低減させることを、所定の周期で繰り返し行う処理である。これにより、第2変更処理部221により出力される第2変更処理データ106_3の周波数特性は、周波数特性131a、131b、131cに変更される。
【0128】
なお、最低周波数及び最高周波数の下限は、それぞれ、第2変更開始時の最低周波数及び最高周波数より小さければ上記に限らない。また、最低周波数及び最高周波数の上限は、それぞれ、変更開始時の最低周波数及び最高周波数より大きく、かつ、最低周波数及び最高周波数の下限よりも所定の周波数幅の分だけ大きければ上記に限らない。
【0129】
また、第2変更処理部221は、最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方の変動における所定の周期を変更してもよい。第2変更処理部221は、周波数の変動の所定の周期、及び、周波数の変動の所定の周波数幅の少なくとも一方を車両情報に応じて変更してもよい。つまり、第2変更処理部221は、車両情報に応じた所定の周期で、最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方を変動させてもよい。例えば、第2変更処理部221は、車両情報が示す走行速度が遅いほど、所定の周期を小さく変更してもよい。第2変更処理部221は、車両情報が示す加速度が小さいほど、所定の周期を小さく変更してもよい。また、第2変更処理部221は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間に応じて、周波数の変動の所定の周期、及び、周波数の変動の所定の周波数幅の少なくとも一方を変更してもよい。例えば、第2変更処理部221は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間が所定時間よりも長くなった場合、所定の周期を変動させずに固定してもよい。このときに、固定する周期は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であることが継続された時間が所定時間よりも長くなったときの所定の周期であってもよいし、予め定められた固定の周期であってもよい。また、第2変更処理部221は、周波数の変動の所定の周期を周期的に変更してもよい。
【0130】
また、第2変更部16は、周波数の変動における所定の周波数幅、つまり、変動の振幅を車両情報に応じて変更してもよい。つまり、第2変更部16は、車両情報に応じた周波数の変動を行ってもよい。例えば、第2変更処理部221は、車両情報が示す走行速度が遅いほど、周波数の変動の振幅を小さく変更してもよい。第2変更処理部221は、車両情報が示す加速度が小さいほど、周波数の変動上下動の振幅を小さく変更してもよい。
【0131】
なお、図9の例では、第2変更における周波数の変動について、最低周波数と最高周波数との両方の変動上下動を同じ方向に行う例について説明したが、これに限らない。例えば、第2変更処理部221は、図10に示すように、第1変更処理データ105_1の周波数特性132の最高周波数のみを変動上下動させてもよい。また、例えば、第2変更処理部221は、図11に示すように、第1変更処理データ105_1の周波数特性132の最低周波数のみを変動上下動させてもよい。また、例えば、第2変更処理部221は、図12に示すように、第1変更処理データ105_1の周波数特性132の最低周波数及び最高周波数を互いに異なる方向に変動上下動させてもよい。つまり、図12の場合、第2変更処理部221は、最低周波数を増加させるときに最高周波数を減少させ、最低周波数を減少させるときに最高周波数を増加させてもよい。
【0132】
このため、第2変更処理部221は、変更対象として決定した音源データの音量及び音程の少なくとも一方を効果的に変動させることができる。
【0133】
[合成部17]
合成部17は、第2変更部16の出力である第2変更処理データ106を合成し、車両50の車室内の空間55に出力するための走行音データ107を生成する。この走行音データ107は、擬似的な走行音である。出力部18が複数ある場合は、それぞれの出力部へ出力すべき信号を選択、合成して出力する。
【0134】
[出力部18]
出力部18は、合成部17により生成された擬似的な走行音データ107を走行音信号108に変換、増幅して車両50の車室内の空間55に出力する。出力部18は、擬似的な走行音をスピーカ53に出力する。
【0135】
走行音生成装置10が備える各処理部は、例えば、DSP等のプロセッサによって実現されるが、マイクロコンピュータまたは専用回路によって実現されてもよいし、プロセッサ、マイクロコンピュータ、及び専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。また、記憶部14は、不揮発性のメモリ、ストレージにより実現されてもよい。
【0136】
[走行音生成装置の動作]
図13は、走行音生成装置による動作(走行音生成方法)の一例を示すフローチャートである。
【0137】
まず、走行音生成装置10は、車両50内の走行に関する車両情報109を車両制御部52から取得する(S101)。ステップS101の処理は、取得部11による処理である。
【0138】
次に、走行音生成装置10は、車両情報に応じて再生部13の再生信号103の音量及び音程の少なくとも一方を変更する第1変更を行う(S102)。ステップS102の処理は、第1変更部15による処理である。
【0139】
次に、走行音生成装置10は、車両情報の変化量が所定の変化量以下であるか否かを判定する(S103)。ステップS103の処理は、判定部12による処理である。
【0140】
走行音生成装置10は、判定部12が車両情報の変化量が所定の変化量以下であると判定した場合(S103でYes)に、第1変更後の複数の音源データに対して、第2変更を行う(S104)。ステップS104の処理は、第2変更部16による処理である。
【0141】
なお、走行音生成装置10は、判定部12が車両情報の変化量が所定の変化量を超えたと判定した場合(S103でNo)、第2変更を行わず、そのまま合成部17へ出力する。
【0142】
そして、走行音生成装置10は、第2変更部16の出力である第2変更処理データ106を合成し、車両50の車室内の空間55に出力するための走行音データ107を生成する(S105)。ステップS105の処理は、合成部17による処理である。
【0143】
走行音生成装置10は、合成部17により生成された擬似的な走行音データ107を走行音信号108に変換、増幅して車両50の車室内の空間55に出力する(S106)。ステップS106の処理は、出力部18による処理である。
【0144】
なお、ステップS101~S107は、車両50の走行中に逐次的に行われる。
【0145】
上述したように、第1変更処理データ105は、車両情報に応じて音量及び音程の少なくとも一方が異なるように変更される。このため、例えば、第1走行状態と、第2走行状態と、第3走行状態とで、第2変更の対象となる音源データが変わりうる。第1~第3の場合のそれぞれにおける第2変更及び合成の具体例について説明する。
【0146】
図14は、第1走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
【0147】
第1走行状態では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性111、121、131のうちで、第1変更処理データ105_1の周波数特性111のピーク音圧レベルが最大である。このため、周波数特性111を有する第1変更処理データ105_1は、第2変更の変更対象から除外される。また、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3のうちで、第1変更処理データ105_2の周波数特性121のピーク音圧レベルが2番目に大きい。このため、周波数特性121を有する第1変更処理データ105_2が変更対象として決定される。このため、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量以下であると判定された場合、第1変更処理データ105_1、105_3である第2変更処理データ106_1、106_3と、周波数特性121が第2変更された周波数特性121aを有する第2変更処理データ106_2とが合成されて、走行音151が生成される。一方で、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量より大きいと判定された場合、第2変更されていない周波数特性111、121、131を有する第1変更処理データ105_1、105_2、105_3である第2変更処理データ106_1、106_2、106_3が合成されて、走行音141が生成される。なお、周波数特性121aは、図14では、音圧レベルが増減されることで生成される例を示しているが、最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方が変動されることで生成される例が適用されてもよい。
【0148】
なお、図14では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性111、121、131のピーク音圧レベルを比較して、第2変更の変更対象を決定しているが、これに限らずに、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の音圧エネルギーを比較して、第2変更の変更対象を決定してもよい。つまり、音圧エネルギーが最大の第1変更処理データを第2変更の変更対象から除外してもよい。また、音圧エネルギーが2番目に大きい第1変更処理データを第2変更の変更対象として決定してもよい。
【0149】
図15は、第2走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
【0150】
第2走行状態では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性112、122、132のうちで、第1変更処理データ105_3の周波数特性132のピーク音圧レベルが最大である。このため、周波数特性132を有する第1変更処理データ105_3は、第2変更の変更対象から除外される。また、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3のうちで、第1変更処理データ105_1の周波数特性112のピーク音圧レベルが2番目に大きい。このため、周波数特性112を有する第1変更処理データ105_1が変更対象として決定される。このため、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量以下であると判定された場合、第1変更処理データ105_2、105_3である第2変更処理データ106_2、106_3と、周波数特性112が第2変更された周波数特性112aを有する第2変更処理データ106_1とが合成されて、走行音152が生成される。一方で、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量より大きいと判定された場合、第2変更されていない周波数特性112、122、132を有する第1変更処理データ105_1、105_2、105_3である第2変更処理データ106_1、106_2、106_3が合成されて、走行音142が生成される。なお、周波数特性112aは、図15では、音圧レベルが増減されることで生成される例を示しているが、最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方が変動されることで生成される例が適用されてもよい。
【0151】
なお、図15では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性112、122、132のピーク音圧レベルを比較して、第2変更の変更対象を決定しているが、これに限らずに、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の音圧エネルギーを比較して、第2変更の変更対象を決定してもよい。つまり、音圧エネルギーが最大の第1変更処理データを第2変更の変更対象から除外してもよい。また、音圧エネルギーが2番目に大きい第1変更処理データを第2変更の変更対象として決定してもよい。
【0152】
図16は、第3走行状態における第2変更及び合成を説明するための図である。
【0153】
第3走行状態では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性113、123、133のうちで、第1変更処理データ105_2の周波数特性123のピーク音圧レベルが最大である。このため、周波数特性123を有する第1変更処理データ105_2は、第2変更の変更対象から除外される。また、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3のうちで、第1変更処理データ105_1の周波数特性113のピーク音圧レベルが2番目に大きい。このため、周波数特性113を有する第1変更処理データ105_1が変更対象として決定される。このため、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量以下であると判定された場合、第1変更処理データ105_2、105_3である第2変更処理データ106_2、106_3と、周波数特性113が第2変更された周波数特性113aを有する第2変更処理データ106_1とが合成されて、走行音153が生成される。一方で、判定部12により車両情報の変化量が所定の変化量より大きいと判定された場合、第2変更されていない周波数特性113、123、133を有する第1変更処理データ105_1、105_2、105_3である第2変更処理データ106_1、106_2、106_3が合成されて、走行音143が生成される。なお、周波数特性113aは、図16では、音圧レベルが増減されることで生成される例を示しているが、最低周波数及び最高周波数の少なくとも一方が変動上下動されることで生成される例が適用されてもよい。
【0154】
なお、図16では、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の周波数特性113、123、133のピーク音圧レベルを比較して、第2変更の変更対象を決定しているが、これに限らずに、第1変更処理データ105_1、105_2、105_3の音圧エネルギーを比較して、第2変更の変更対象を決定してもよい。つまり、音圧エネルギーが最大の第1変更処理データを第2変更の変更対象から除外してもよい。また、音圧エネルギーが2番目に大きい第1変更処理データを第2変更の変更対象として決定してもよい。
【0155】
[効果など]
本実施の形態に係る走行音生成装置10によれば、車両情報の変化に応じて音源データを変更し、乗員に走行状態を知覚させる擬似的な走行音として車室内に出力する際、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、走行音として生成した複数の音源データのうちの少なくとも1つの音源データを変更することで、疑似的な走行音に変化を与えることができる。よって、疑似的な走行音で乗員に車両の走行状態を知覚させ、かつ、車両情報の変化量の少なさによる略同一の音色、音量の疑似的な走行音の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0156】
また、本実施の形態に係る走行音生成装置10において、第2変更部16は、車両情報の変化量が所定の変化量を超えたと判定された場合、第1変更後の音源データを変更せずに、合成部17へ出力する。これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量を超えた場合、第1変更部の音源データをそのまま出力することで車両情報の変化を音源データに反映させることができ、乗員は擬似的な走行音からドライブ感を感じられる。
【0157】
また、本実施の形態に係る走行音生成装置10において、第2変更部16は、第2変更において、第1変更後の複数の音源データのうち音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが最大である音源データを変更しない。これによれば、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合、生成された疑似的な走行音のうちで最も音量の大きな音源データの特性を変更しないため、音源データに反映された走行状態情報を維持させながら、他の音源データを変更させて定常走行時の煩わしさを低減することができる。
【0158】
また、本実施の形態に係る走行音生成装置10において、第2変更部16は、第2変更において、第1変更後の複数の音源データのうち音圧エネルギー又は周波数特性のピーク音圧レベルが2番目に大きい音源データの周波数特性を変更する。このため、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、第2変更における音の変化を乗員に効果的に知覚させることができ、擬似的な走行音の定常走行時の煩わしさを効果的に低減することができる。
【0159】
また、本実施の形態に係る走行音生成装置10において、第2変更部16は、第2変更において、第1変更後の複数の音源データのうち人の聴覚特性に基づいて特定される、最も人に知覚されやすい音源データを変更しない。これによれば、人が最も聞きとりやすい音源データの特性を変更しないため、音源データに反映される走行状況を乗員に効果的に知覚させることができる。
【0160】
また、本実施の形態に係る走行音生成装置10において、第2変更部16は、第2変更において、第1変更後の複数の音源データのうち人の聴覚特性に基づいて特定される、2番目に人に知覚されやすい音源データを変更する。これによれば、人に2番目に聞きとりやすい音源データを変更するため、車両情報の変化量が所定の変化量以下である場合に、第2変更による音の変化を乗員に効果的に知覚させることができ、擬似的な走行音の煩わしさを 効果的に低減することができる。
【0161】
[変形例]
(1)
上記実施の形態では、走行音生成装置10は、複数の音源データを用いて、擬似的な走行音を生成するとしたが、これに限らない。走行音生成装置10は、車両50の擬似的な走行音を生成するための複数の音源データの他に、さらに、車両内の騒音をマスクするマスカー音を生成するためのマスク音源データを含む複数の音源データを用いて車室内のスピーカ53から出力する音を生成してもよい。記憶部14は、マスク音源データを含む複数の音源データを記憶している。
【0162】
モータ57には、電磁強制力による、数百Hz~数kHzの周波数帯域のモータ電磁騒音が発生しやすく、運転手を不快にさせる騒音となることが知られている。モータ電磁騒音は、車室内に発生する騒音の一例である。このため、変形例に係る走行音生成装置10は、車両50内のモータ電磁騒音をマスクするためのマスカー音と、擬似的な走行音とが合成された音を生成し、合成された音をスピーカ53から出力する。
【0163】
変形例に係る走行音生成装置10では、第1変更部15は、マスカー音用のマスク音源データを用いて、車両情報に応じたマスカー音を生成してもよい。第1変更部15は、車両情報に基づいて、モータ57から発生する騒音の周波数特性を特定し、特定した周波数特性に重畳させるように、マスカー音用の音源データの音圧レベル及び音程(ピッチ)を調整することで、マスカー音を生成する。これにより、発生している騒音をマスクするためにより適したマスカー音を生成することができるため、より効果的に車室内の騒音をマスクすることができる。
【0164】
第2変更部16は、マスカー音を第2変更の対象から除外する。つまり、第2変更部16は、第1変更後の複数の音源データのうち、マスク音源データに基づく音源データに対して、第2変更を行わない。合成部17は、第2変更後の複数の音源データと、第1変更後のマスク音源データに基づくマスカー音とを合成することで、擬似的な走行音を生成する。出力部18は、生成された擬似的な走行音を車両50の車室内に出力する。
【0165】
これにより、走行音生成装置10は、疑似的な走行音で運転手に車両の走行状態を知覚させ、かつ、擬似的な走行音が運転手にとって煩わしい音に聞こえることを効果的に低減すると共に、さらに、例えばモータ57の電磁騒音のような車室内の騒音の発生による不快感を低減することができる。
【0166】
なお、上記実施の形態において、車両50は、モータ57を備えるとしたが、モータ57を備えなくてもよい。車両50は、例えば、走行のための動力をエンジンのみから得るエンジン車であってもよい。
【0167】
また、騒音の一例としてモータ57によるモータ電磁騒音を挙げたが、モータ電磁騒音に限らずに、他の騒音であってもよい。他の騒音とは、車輪の駆動などを目的として車両50が備える回転体から発生する騒音である。つまり、回転体は、車両50内の空間55の騒音源となる。回転体は、例えば、空間とは別の空間内に配置される。回転体は、具体的には、車両本体54のボンネット内に形成された空間に設置される。回転体は、例えば、エンジン、ドライブシャフト、またはターボチャージャー(タービン)など、車輪の駆動に用いられる回転体である。また、回転体は、車両50が有するエアコンに用いられるモータなど、車輪の駆動以外に用いられる回転体であってもよい。このような回転体から発生する騒音の周波数は、回転体の回転数に関する情報に相関している。回転体の回転数に関する情報は、車両情報に含まれる。なお、回転体は、モータ57を含んでいてもよい。
【0168】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0169】
また、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0170】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0171】
例えば、本開示は、走行音生成装置(コンピュータまたはDSP)が実行する走行音生成方法として実現されてもよいし、上記走行音生成方法をコンピュータまたはDSPに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0172】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、上記実施の形態において説明された走行音生成装置の動作における複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。
【0173】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本開示の走行音生成装置は、例えば、擬似的な走行音を生成する装置として有用である。
【符号の説明】
【0175】
10 走行音生成装置
11 取得部
12 判定部
13 再生部
14 記憶部
15、15_1~15_3 第1変更部
16 第2変更部
17 合成部
18 出力部
50 車両
51 センサ
52 車両制御部
53 スピーカ
54 車両本体
55 空間
56 所定位置
57 モータ
101、109 車両情報
102 判定情報
103、103_1~103_3 再生信号
105、105_1~105_3 第1変更処理データ
106、106_1~106_3 第2変更処理データ
107 走行音データ
108 走行音信号
110、120、130、111~113、121~123、131~133、121a~121c、132a~132c 周波数特性
141~143、151~153 走行音
221 第2変更処理部
222 分析部
223_1~223_3 分析結果信号
501 信号
2101 音量調整処理部
2102 音程調整処理部
2103 設定音量算出部
2104 設定音程算出部
2105 走行速度音量設定部
2106 アクセル開度音量設定部
2107 走行速度音程設定部
2108 アクセル開度音程設定部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16