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特許7573928車両近接報知装置および車両近接報知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】車両近接報知装置および車両近接報知方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20241021BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20241021BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20241021BHJP
   H04R 29/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 660B
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 640C
B60Q5/00 660A
H04R3/00 310
G10K15/00 L
H04R29/00 310
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021125775
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020418
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今野 文靖
(72)【発明者】
【氏名】中垣 俊也
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/085925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00
H04R 3/00
G10K 15/00
H04R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報音をスピーカに出力させることで車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、
音圧における所定の閾値を記憶している記憶部と、
(i)前記車両の外側に配置されたマイクにより取得された所定の周波数帯域の音を前記警報音として抽出し、前記警報音の音圧が前記所定の閾値以下の場合、前記車両の車速に応じて決定した第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)前記マイクにより取得された前記所定の周波数帯域の前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値になるようにフィードバック制御することで、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させる制御部を備える
車両近接報知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記警報音の音圧が前記所定の閾値になるように前記警報音の音圧を低下させる
請求項1に記載の車両近接報知装置。
【請求項3】
前記所定の閾値は、前記マイクにより取得される前記音の音圧が当該所定の閾値を超えている場合、前記車両の外部の規定の位置において規定の音圧以上の音が計測されるような音圧の警報音を前記スピーカから出力させていることを保証する閾値である
請求項1または2に記載の車両近接報知装置。
【請求項4】
警報音をスピーカに出力させることで車両の近接を報知する車両近接報知装置による車両近接報知方法であって、
前記車両の外側に配置されたマイクから音を取得し、
(i)前記マイクにより取得された所定の周波数帯域の音を前記警報音として抽出し、前記警報音の音圧が所定の閾値以下の場合、前記車両の車速に応じて決定した第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)前記マイクにより取得された前記所定の周波数帯域の前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値になるようにフィードバック制御することで、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させる
車両近接報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載され、車両の接近を外部に報知する警報音を出力する車両近接報知装置および車両近接報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及びハイブリッド自動車は低騒音であるため、自車ロードノイズが小さい低速走行時には歩行者等が車両の接近に気づき難いという問題がある。このため、特許文献1及び2のように、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車には、走行時に車両の走行状態を想起させる連続音である警報音を発生させることで車両の接近を歩行者等に警告する車両近接報知装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-208636号公報
【文献】特開平11-285093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両近接報知装置では、車外に対して警報音を放射すると、警報音が反響しやすい環境において、想定よりも大きな音になるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、車外に対して放射した警報音が想定よりも大きな音になることを低減することができる車両近接報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置は、警報音をスピーカに出力させることで車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、音圧における所定の閾値を記憶している記憶部と、(i)前記車両の外側に配置されたマイクにより取得された所定の周波数帯域の音を前記警報音として抽出し、前記警報音の音圧が前記所定の閾値以下の場合、前記車両の車速に応じて決定した第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)前記マイクにより取得された前記所定の周波数帯域の前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値になるようにフィードバック制御することで、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させる制御部を備える。
【0007】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、必要な音圧を確保しつつ、簡便に、搭乗者へ与える不快感を低減した警報音を出力することができる車両近接報知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る車両近接報知装置を備える車両の模式図である。
図2図2は、車両近接報知装置の機能ブロック図である。
図3図3は、車両近接報知装置の動作のフローチャートである。
図4図4は、調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置は、警報音をスピーカに出力させることで車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、音圧における所定の閾値を記憶している記憶部と、(i)前記車両の外側に配置されたマイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値以下の場合、前記車両の車速に応じて決定した第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させる制御部を備える。
【0011】
これによれば、マイクにより取得された警報音の音圧を用いることで、スピーカから警報音を車両の車速に応じて決定した第1の音圧より小さい音圧に設定しても車両から十分な音圧の警報音が発生していると判定できる。このため、車両から放射される警報音の音圧が十分である場合に、必要な音圧を確保しつつ、スピーカから出力させる警報音の音圧を小さくすることができる。このため、警報音を出力するのに要する消費電力を低減することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記マイクにより取得された音から、所定の周波数帯域の音を前記警報音として抽出し、(i)抽出した前記警報音の音圧が前記所定の閾値以下の場合、前記第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)抽出した前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させてもよい。
【0013】
このため、マイクにより取得された音から警報音を抽出することができ、抽出した警報音の音圧に基づいて、スピーカから出力させる警報音の音圧を小さく調整するか否かを判定することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記警報音の音圧が前記所定の閾値になるように前記警報音の音圧を低下させてもよい。
【0015】
このため、車両から放射される警報音の音圧が十分である場合にスピーカから出力させる警報音の音圧を小さくしても、必要な音圧を確保することができる。
【0016】
また、前記所定の閾値は、前記マイクにより取得される前記音の音圧が当該所定の閾値を超えている場合、前記車両の外部の規定の位置において規定の音圧以上の音が計測されるような音圧の警報音を前記スピーカから出力させていることを保証する閾値であってもよい。
【0017】
このため、車両から放射される警報音の音圧が十分である場合にスピーカから出力させる警報音の音圧を小さくしても、規定の音圧を確保することができる。
【0018】
また、本開示の一態様に係る車両近接報知方法は、警報音をスピーカに出力させることで車両の近接を報知する車両近接報知装置による車両近接報知方法であって、前記車両の外側に配置されたマイクから音を取得し、(i)前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が所定の閾値以下の場合、前記車両の車速に応じて決定した第1の音圧で前記警報音を車両の車室外に配置されたスピーカに出力させ、(ii)前記マイクにより取得された前記警報音の音圧が前記所定の閾値を超えた場合、前記第1の音圧よりも小さい音圧で前記警報音を前記スピーカに出力させる。
【0019】
これによれば、マイクにより取得された警報音の音圧を用いることで、スピーカから警報音を車両の車速に応じて決定した第1の音圧より小さい音圧に設定しても車両から十分な音圧の警報音が発生していると判定できる。このため、車両から放射される警報音の音圧が十分である場合に、必要な音圧を確保しつつ、スピーカから出力させる警報音の音圧を小さくすることができる。このため、警報音を出力するのに要する消費電力を低減することができる。
【0020】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
(実施の形態)
実施の形態では、車両に搭載される車両近接報知装置について説明する。
【0023】
図1は、実施の形態に係る車両近接報知装置を備える車両の模式図である。
【0024】
車両40は、移動体装置の一例であって、車両近接報知装置10と、マイク20と、スピーカ30とを備える。車両40は、具体的には、自動車であるが、特に限定されない。
【0025】
マイク20は、車両40の車室41外に配置され、車両40の周囲の音を取得する。マイク20は、車室41外での音を取得する。マイク20は、取得した音に応じた音声信号を出力する。
【0026】
スピーカ30は、車両近接報知装置10から出力された音声信号に応じて音を出力する。スピーカ30は、車両40の車室外、例えばエンジンルームなどに配置されている。よって、スピーカ30は、車両40の近接を報知する警報音を、車両40の外部に出力する。スピーカ30は、音声信号である電気信号を機械振動に変換する機能を有し、電気信号に基づいた音圧の警報音を出力する。
【0027】
なお、車両40が有する車室41は、車両40の乗員が入る空間である。つまり、車室41は、車両40の乗員が存在する空間である。
【0028】
[1.構成]
次に、車両近接報知装置10の構成について図1に加えて図2を参照しながら説明する。図2は、車両近接報知装置10の機能ブロック図である。
【0029】
車両近接報知装置10は、スピーカ30から警報音を出力させることで車両40の近接を車両40の周囲の人に報知する装置である。
【0030】
車両近接報知装置10は、図1および図2に示すように、制御部11と記憶部12とを備える。制御部11は、マイク20により取得された音の音圧が所定の閾値を超えた場合、当該音の音圧が所定の閾値を超えていない場合よりも、スピーカ30に出力させる音の音圧を小さくする。制御部11は、例えば、DSP等のプロセッサによって実現されるが、マイクロコンピュータまたは専用回路によって実現されてもよいし、プロセッサ、マイクロコンピュータ、及び専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。
【0031】
制御部11は、図2に示すように、取得部111と、フィルタ処理部112と、比較部113と、調整部114と、出力部118とを備える。以下、各構成要素について、引き続き図1図3を参照しながら説明する。
【0032】
取得部111は、マイク20から音声信号を取得する。取得部111は、具体的には、マイク20から取得した音声信号を増幅する増幅回路などによって構成される回路である。なお、取得部111の具体的態様は上記に限定されない。
【0033】
フィルタ処理部112は、取得部111により取得された音声信号に対して所定のフィルタ処理を行う。フィルタ処理部112は、具体的には、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタの組合せを用いて、所定の周波数帯域の周波数特性を有する音声信号を抽出する。フィルタ処理部112は、バンドパスフィルタを用いて、所定の周波数帯域の周波数特性を有する音声信号を抽出してもよい。フィルタ処理部112により抽出される周波数の範囲は、例えば、160Hz~500Hzである。このように、フィルタ処理部112は、マイク20により取得された音をフィルタ処理することにより、車両40から発生する音において所定の周波数帯域の音を警報音として抽出してもよい。
【0034】
比較部113は、フィルタ処理部112により抽出された所定の周波数帯域の音の音圧と、記憶部12に記憶されている音量情報121で示される所定の閾値とを比較する。つまり、比較部113は、所定の周波数帯域の音の音圧が所定の閾値を超えているか否かを判定し、判定結果を調整部114に出力する。所定の閾値は、車両40の周囲の規定の位置において、事前に車両40から発生している音を計測することで決定された閾値であって、計測された音の音圧が規定の音圧を超える値に設定されている。
【0035】
ところで、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車から出力される警報音に関しては、北米NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)において、最小音圧値の規定が検討されている。例えば、1/3オクターブの8周波数バンドに対して最小音圧値が規定され、所定の計測方法で計測した場合に最小音圧値以上の警報音が出力される必要がある。したがって、警報音の音圧を最小音圧値よりも小さくすることはできない。そこで、最小音圧値以上の警報音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減する技術が求められる。
【0036】
比較部113は、所定域音の所定の周波数帯域のうち互いに異なる複数の周波数の各々について以下の処理を実行してもよい。比較部113は、具体的には、所定域音を分析することにより、160Hz、200Hz、250Hz、315Hz、400Hz、および500Hzでの音圧について以下の処理を開始する。なお、比較部113の判定の対象となる複数の周波数は、所定の周波数帯域に含まれていればよく、所定の周波数帯域を外れた周波数帯域に含まれていてもよい。また、複数の周波数は、周波数帯域が1/3オクターブ間隔で区切られることで決定される周波数である。複数の周波数は、少なくとも、所定の周波数帯域の最低周波数から1/3オクターブの周波数帯域内の周波数と、所定の周波数帯域の最高周波数から1/3オクターブの周波数帯域内の周波数とを含む。つまり、複数の周波数は、所定の周波数帯域において、1/3オクターブ間隔でまんべんなく区切られることで特定できる周波数である。
【0037】
比較部113は、複数の周波数のうちの一の周波数での音圧が所定の閾値を超えているか否かを判定する。比較部113は、一の周波数での音圧が所定の閾値を超えていると判定した場合、当該一の周波数での音圧が「大」であることを示す情報を記憶する。つまり、比較部113は、この場合、一の周波数での音圧が「大」であることを示す情報として、当該音圧が所定の閾値を超えていることを示す情報を記憶する。
【0038】
一方で、比較部113は、一の周波数での音圧が所定の閾値を超えていないと判定した場合、当該一の周波数での音圧が「小」であることを示す情報を記憶する。つまり、比較部113は、この場合、一の周波数での音圧が「小」であることを示す情報として、当該音圧が所定の閾値を超えていないことを示す情報を記憶する。
【0039】
比較部113は、複数の周波数の音圧のうち判定処理がまだ行われていない次の周波数の音圧に対して上記の処理を繰り返す。比較部113は、全ての周波数の音圧について上記の処理が行われた場合、処理を終了し比較処理を終了する。
【0040】
このように、比較部113は、所定の周波数帯域において、第3の音が所定の閾値Th1を超えているか否かを判定する。例えば、第3の音は、図5に示すような、周波数特性を有している場合、比較部113は、第3の音の所定の周波数帯域において第3の音の音圧が所定の閾値Th1を超えていると判定する。なお、図5は、第3の音の周波数特性の一例を示す図である。
【0041】
なお、比較部113は、複数の周波数の音圧の各々について、上記の処理を繰り返すとしたが、これに限らずに、所定の周波数帯域での音圧の最大値が所定の閾値Th1を超えているか否かを判定してもよい。
【0042】
調整部114は、比較部113の比較結果に応じて、スピーカ30から出力する警報音の音圧及び音程を調整する。調整部114は、第1音量調整部115と、ピッチ調整部116と、第2音量調整部117とを有する。
【0043】
第1音量調整部115は、車両40の車速に応じてスピーカ30から出力する警報音の音圧を第1の音圧に決定する。第1音量調整部115は、車両40の車速が大きいほど小さい音圧になるように第1の音圧を決定してもよい。車両40の車速は、車両40から取得される。
【0044】
ピッチ調整部116は、車両40の車速に応じてスピーカ30から出力する警報音の音程を調整する。第1音量調整部115は、車両40の車速が大きいほど高い音程になるように音程を調整してもよい。車両40の車速は、車両40から取得される。
【0045】
第2音量調整部117は、比較部113による判定結果が所定の周波数帯域の音の音圧が所定の閾値を超えたことを示す場合、スピーカ30から出力する警報音の音圧を、第1音量調整部115で決定した第1の音圧よりも小さい音圧に調整する。なお、第2音量調整部117は、マイク20により取得された警報音の音圧が所定の閾値を超えた場合、マイク20により取得された警報音の音圧が所定の閾値になるようにフィードバック制御することで、スピーカ30から出力する警報音の音圧を第1の音圧よりも低下させる。第2音量調整部117は、比較部113による判定結果が所定の周波数帯域の音の音圧が所定の閾値を超えていないことを示す場合、スピーカ30から出力する警報音の音圧を調整せずに、第1音量調整部115で決定した第1の音圧のままとする。
【0046】
出力部118は、調整部114により調整された音圧及び音程で、警報音をスピーカ30に出力させる。出力部118は、例えば、調整部114により調整された音圧になるように増幅してスピーカ30に出力してもよい。出力部118は、例えば、増幅回路によって実現されていてもよい。
【0047】
記憶部12は、音量情報121と、音源122とを記憶している。
【0048】
音量情報121は、所定の閾値を含む。所定の閾値は、マイクにより取得される音の音圧が当該所定の閾値を超えている場合、車両40の外部の規定の位置において規定の音圧以上の警報音をスピーカ30から出力させていることを保証する閾値である。所定の閾値は、複数の周波数帯域のそれぞれ毎に定められた異なる閾値を含んでいてもよい。つまり、比較部113は、フィルタ処理部112により抽出された所定の周波数帯域に含まれる複数の周波数帯域のそれぞれについて、当該周波数帯域の音圧と、当該周波数帯域で定められた閾値とを比較してもよい。
【0049】
音源122は、車両40の近接を外部に報知する1つの警報音に対応する音声信号である。警報音は、例えば、エンジン音である。音源122には、疑似エンジン音または電子音が用いられ、例えば、300Hz~800Hzの低音部と1kHz~5kHzの高音部との周波数成分で構成されていてもよい。なお、音源122から出力される警報音は、単純な正弦波信号音などであってもよい。
【0050】
[2.動作]
次に、車両近接報知装置10の動作について説明する。
【0051】
図3は、車両近接報知装置の動作のフローチャートである。
【0052】
車両近接報知装置10は、マイク20から音声信号を取得する(S11)。ステップS11は、取得部111による処理である。
【0053】
次に、車両近接報知装置10は、取得された音声信号に対して所定のフィルタ処理を行う(S12)。ステップS12は、フィルタ処理部112による処理である。
【0054】
次に、車両近接報知装置10は、抽出された所定の周波数帯域の音の音圧と、記憶部12に記憶されている音量情報121で示される所定の閾値とを比較する(S13)。ステップS13は、比較部113による処理である。
【0055】
次に、車両近接報知装置10は、ステップS13の比較結果(判定結果)に応じて、スピーカ30から出力する警報音の音圧及び音程を調整する(S14)。ステップS14は、調整部114による処理である。
【0056】
次に、車両近接報知装置10は、調整された音圧及び音程で、警報音をスピーカ30から出力させる(S15)。ステップS15は、出力部118による処理である。
【0057】
図4は、ステップS14の調整処理のフローチャートである。
【0058】
車両近接報知装置10は、車両40から車速を取得する(S21)。
【0059】
次に、車両近接報知装置10は、取得した車速に応じてスピーカ30から出力する警報音の音圧を第1の音圧に決定する(S22)。ステップS22は、第1音量調整部115による処理である。
【0060】
次に、車両近接報知装置10は、車両40の車速に応じてスピーカ30から出力する警報音の音程を調整する(S23)。ステップS23は、ピッチ調整部116による処理である。
【0061】
次に、車両近接報知装置10は、判定結果が、所定の周波数帯域の音の音圧が所定の閾値を超えたことを示す場合(S24でYes)、スピーカ30から出力する警報音の音圧を、第1音量調整部115で決定した第1の音圧よりも小さい音圧に調整する(S25)。
【0062】
一方で、車両近接報知装置10は、判定結果が、所定の周波数帯域の音の音圧が所定の閾値を超えていないことを示す場合(S25でYes)、何もせずに処理を終了する。つまり、車両近接報知装置10は、この場合、スピーカ30から出力する警報音の音圧を調整せずに、第1音量調整部115で決定した第1の音圧のままとする。
【0063】
ステップS24及びS25は、第2音量調整部117による処理である。
【0064】
[3.効果など]
本実施の形態に係る車両近接報知装置10は、警報音をスピーカ30に出力させることで車両40の近接を報知する。車両近接報知装置10は、記憶部12と、制御部11とを備える。記憶部12は、音圧における所定の閾値を記憶している。制御部11は、車両40の外側に配置されたマイク20により取得された警報音の音圧が所定の閾値以下の場合、車両40の車速に応じて決定した第1の音圧で警報音を車両40の車室41外に配置されたスピーカに出力させる。制御部11は、マイク20により取得された音の音圧が所定の閾値を超えた場合、第1の音圧よりも小さい音圧で警報音をスピーカ30に出力させる。
【0065】
これによれば、マイク20により取得された警報音の音圧を用いることで、スピーカ30から警報音を車両40の車速に応じて決定した第1の音圧より小さい音圧に設定しても車両40から十分な音圧の警報音が発生していると判定できる。このため、車両40から放射される警報音の音圧が十分である場合に、必要な音圧を確保しつつ、スピーカ30から出力させる警報音の音圧を小さくすることができる。このため、警報音を出力するのに要する消費電力を低減することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る車両近接報知装置10において、制御部11は、マイク20により取得された音から、所定の周波数帯域の音を警報音として抽出する。制御部11は、抽出した警報音の音圧が所定の閾値以下の場合、第1の音圧で警報音を車両40の車室41外に配置されたスピーカ30に出力させる。制御部11は、抽出した警報音の音圧が所定の閾値を超えた場合、第1の音圧よりも小さい音圧で警報音をスピーカ30に出力させる。
【0067】
このため、マイク20により取得された音から警報音を抽出することができ、抽出した警報音の音圧に基づいて、スピーカ30から出力させる警報音の音圧を小さく調整するか否かを判定することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る車両近接報知装置10において、制御部11は、マイク20により取得された警報音の音圧が所定の閾値を超えた場合、警報音の音圧が所定の閾値になるように警報音の音圧を低下させる。このため、車両40から放射される警報音の音圧が十分である場合にスピーカ30から出力させる警報音の音圧を小さくしても、必要な音圧を確保することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る車両近接報知装置10において、所定の閾値は、マイク20により取得される警報音の音圧が当該所定の閾値を超えている場合、車両40の外部の規定の位置において規定の音圧以上の音が計測されるような音圧の警報音をスピーカ30から出力させていることを保証する閾値である。このため、車両40から放射される警報音の音圧が十分である場合にスピーカ30から出力させる警報音の音圧を小さくしても、規定の音圧を確保することができる。
【0070】
[1-4.その他]
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0071】
また、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0072】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0073】
例えば、本開示は、車両近接報知装置(コンピュータまたはDSP)が実行する車両近接報知方法として実現されてもよいし、上記車両近接報知方法をコンピュータまたはDSPに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、上記実施の形態において説明された車両近接報知装置の動作における複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。
【0075】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車等に搭載される車両近接報知装置に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
10 車両近接報知装置
11 制御部
12 記憶部
20 マイク
30 スピーカ
40 車両
41 車室
111 取得部
112 フィルタ処理部
113 比較部
114 調整部
115 第1音量調整部
116 ピッチ調整部
117 第2音量調整部
118 出力部
121 音量情報
122 音源
図1
図2
図3
図4