(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】二価核酸塩基化合物およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20241021BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20241021BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241021BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20241021BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C07D471/04 116
C07D487/04 148
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6876 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2019515961
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 US2017053395
(87)【国際公開番号】W WO2018058091
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504337958
【氏名又は名称】カーネギー メロン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニス、エイチ.エルワイ
(72)【発明者】
【氏名】シバジ、タトケ
(72)【発明者】
【氏名】アリ、ナキ
(72)【発明者】
【氏名】ディニチ、ペレラ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0083434(US,A1)
【文献】Organic Letters,2000年,Vol.2,No.18,p.2825-2828
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸骨格または核酸類似体骨格に結合した複数の核酸塩基部分を含んでなる、2本の核酸鎖と特異的に結合する遺伝子認識試薬であって、前記2本の核酸鎖が完全相補的、部分的相補的または非相補的二本鎖核酸であり、前記複数の核酸塩基部分のうちの少なくとも1つが
【化1】
から選択される環系であって、式中、R1は、Hまたはアミンの保護基であり、前記保護基がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから選択されるものであり、かつ、Rは、遺伝子認識試薬中の核酸骨格の残基または核酸類似体骨格の残基である、遺伝子認識試薬。
【請求項2】
前記環系が
【化2】
である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項3】
前記核酸骨格または核酸類似体骨格がDNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート、ロックド核酸、非ロックド核酸、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸、トレオース核酸、もしくはグリコール核酸骨格、またはそれらの任意の組合せから1つ選択される、請求項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項4】
前記核酸類似体骨格が、ペプチド核酸(PNA)骨格である、請求項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項5】
構造:
【化3】
を有し、Mは核酸骨格の残基または核酸類似体骨格の残基であり、かつ、Bは独立に前記複数の核酸塩基部分のうちの1つであり、Bの少なくとも1つは前記環系であり、Eは独立に末端基であり、前記末端基がNH
2、C(O)OH、CONH
2およびヒドロキシル基から選択されるものであり、かつ、「n」は0または1~48の正の整数である、請求項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項6】
R1の総てがHである、請求項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項7】
核酸塩基部分とRを含んでなる化合物であって、前記化合物は:
【化4】
であって、R1はHまたはアミンの保護基であり、前記保護基がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから1以上選択されるものであり、かつ、Rは
、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、シアナート、チオール、エポキシド、ビニル、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アジド、アルキニル、マレイミド、ヒドラジド、テトラジン、ホスホラミダイト、シクロアルキン、ニトリル、(CH
2)
nCO
2H(ここで、n=1~5);固相基板;核酸骨格モノマー;核酸類似体骨格モノマー;核酸ポリマーの残基;または核酸類似体ポリマーの残基である、化合物。
【請求項8】
核酸塩基部分とRを含んでなる化合物であって、前記化合物は:
【化5】
であって、式中、R1はHまたはアミンの保護基であり、前記保護基がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから1以上選択されるものであり、かつ、Rは:カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、シアナート、チオール、エポキシド、ビニル、アリル、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アジド、アルキニル、マレイミド、ヒドラジド、テトラジン、ホスホラミダイト、シクロアルキン、ニトリル、(CH
2)
nCO
2H(ここで、n=1~5);固相基板;核酸骨格モノマー;核酸類似体骨格モノマー;核酸ポリマーの残基;または核酸類似体ポリマーの残基である、化合物。
【請求項9】
Rが前記核酸骨格モノマーまたは前記核酸類似体骨格モノマーである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項10】
Rが固相基板であり、前記固相基板がシリコンウエハー、マルチウェルディッシュ、またはポリマービーズまたはアレイである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項11】
Rが核酸類似体骨格モノマーであり、前記核酸類似体骨格モノマーがペプチド核酸骨格モノマーである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項12】
Rが核酸類似体骨格モノマーであり、前記核酸類似体骨格モノマーが:ホスホロチオエート骨格モノマー、ロックド核酸骨格モノマー、非ロックド核酸骨格モノマー、2’-O-メチル置換RNA骨格モノマー、モルホリノ核酸骨格モノマー、トレオース核酸骨格モノマー、またはグリコール核酸骨格モノマーから選択されるものである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項13】
Rが核酸骨格モノマーであり、前記核酸骨格モノマーが:リボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸である、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる組成物。
【請求項15】
容器内に請求項1~6のいずれか一項の遺伝子認識試薬を含んでなり、Rが核酸骨格の残基または核酸類似体骨格の残基である、キット。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を含んでなるアレイ。
【請求項17】
請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を、核酸を含んでなるサンプルと接触させること、および前記遺伝子認識試薬と前記核酸との結合を検出することを含んでなる、核酸内の標的配列の検出方法。
【請求項18】
核酸サンプルを請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させること、前記遺伝子認識試薬から前記核酸サンプルを分離すること、前記遺伝子認識試薬に結合したいずれの核酸も残すこと、および前記遺伝子認識試薬に結合した任意の核酸から前記遺伝子認識試薬を分離することを含んでなる、標的配列を含む核酸の単離および精製方法。
【請求項19】
前記PNA骨格がガンマペプチド核酸(γPNA)骨格である、請求項4に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項20】
前記核酸類似体骨格がペプチド核酸(PNA)骨格であって、Rが
【化6】
であり、ここで、R
2、R
3およびR
4は独立に、メチル、エチル、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
3-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
1-C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレン、(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2-CH
2-)残基を含んでなるPEG化されたアミノ酸側鎖または有機基のPEG化部分、H、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
l、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり;ここで、P
1は、H、(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレンおよび(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレンからなる群から選択され;qは0~10の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50の整数であり;R
2およびR
3は異なり、R
2またはR
3の一方はHであり、かつ、Baseは複数の核酸塩基部分のうちの1つの核酸塩基部分である、請求項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項21】
R3がHであり、かつ、R2が、1~12個の(-O-CH
2-CH
2-)残基の1以上のPEG部分でPEG化されたアミノ酸側鎖である、請求項20に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項22】
Rが核酸類似体骨格モノマーであり、前記核酸類似体骨格モノマーがガンマペプチド核酸(γPNA)骨格モノマーである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項23】
前記ペプチド核酸骨格モノマーが
【化7】
の構造を有するものであり、ここで、R
2、R
3およびR
4は独立に、メチル、エチル、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
3-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
1-C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレン、(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2-CH
2-)残基を含んでなるPEG化されたアミノ酸側鎖または有機基のPEG化部分、H、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
l、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1、-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり;ここで、P
1は、H、(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレンおよび(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレンからなる群から選択され;qは0~10の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50の整数であり;R
2およびR
3は異なり、R
2またはR
3の一方はHであり、R
5はHまたはアミンの保護基であり、前記保護基がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから1以上選択されるものであり、かつ、Baseは核酸塩基部分である、請求項
11に記載の化合物。
【請求項24】
請求項7~13のいずれか一項に記載の化合物と、薬学上許容可能な賦形剤を含んでなる、組成物。
【請求項25】
容器内に請求項7~9または請求項11~13のいずれか一項に記載の化合物を含んでなるキットであって、Rは核酸骨格モノマーまたは核酸類似体骨格モノマーである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の補助金に関する陳述
本発明は全米科学財団CHE-1012467の下、政府の支援でなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる2016年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/495,843号の利益を主張するものである。
【0003】
背景
本明細書には、核酸塩基、核酸塩基を含んでなるポリマーモノマー、ならびに前記核酸塩基を含んでなる核酸およびそれらの類似体が記載される。また、本明細書には、前記核酸塩基、前記核酸塩基を含んでなるポリマーモノマー、ならびに前記核酸塩基を含んでなる核酸およびそれらの類似体の使用方法も記載される。
【背景技術】
【0004】
ほとんどの生物で、遺伝情報は、アデニン(A)はチミン(T)と、シトシン(C)はグアニン(G)と対合するワトソン・クリック塩基対合の形態で二本鎖DNAにコードされている。この遺伝情報のどのセットが転写および翻訳を介して解読されるかによって、発生プログラムおよび生理学的状態が決定される。この遺伝子生体高分子(DNAまたはRNA)のいずれかの部分に配列特異的に結合し、それにより、遺伝情報の流れの制御ならびにゲノムの構造および機能の評価および操作を可能とするようにテーラー設計することができる分子の開発は、生物学の基礎研究の分子ツールを含め、生命の分子基盤を解明するための努力の一環として生物学的および生物医学的研究に重要である。この努力はまた、遺伝病の治療および検出のための医学適用および治療適用にも重要である。
【0005】
タンパク質に比べ、RNA分子は、たった4つの構成ブロック(A、C、G、U)から構成されるので、より容易に標的化され、これらの構成ブロックの相互作用は十分に確立されたワトソン・クリック塩基対合の規則によって定義される。標準的な二本鎖DNA(またはRNA)に比べ、RNAの二次構造は一般に熱力学的に安定性が低く、従って、カノニカル(完全マッチ)塩基対がある他、それらの多くは非カノニカル(ミスマッチ)であり、一本鎖ループ、バルジ、およびジャンクションを含むので、エネルギー的に結合要求が低い。これらの局部的相互作用ドメインの存在は、「三次」相互作用および二次構造の稠密な三次元形状への組み立てに不可欠である。従って、これらの領域内の相互作用パターンまたは結合強度のわずかな変動がRNAの全体的な三次元折り畳みパターンに顕著な影響を持つ。よって、RNA相互作用を調節し、それにより、RNAの折り畳み挙動に干渉させるために使用可能な分子は、RNA機能を評価するための分子ツール、ならびに治療薬および診断試薬として重要である。
【0006】
RNA-RNAおよびRNA-タンパク質相互作用は、複製、翻訳、折り畳みおよびパッケージングを含む遺伝子調節において重要な役割を果たす。RNAの二次構造内の領域に選択的に結合する能力は、それらの生理学的機能を変調することが多い。
【0007】
概要
本明細書では、二本鎖核酸配列を標的とし、ミスマッチ配列を結びつけるために使用することができる試薬が提供される。試薬はサイズが比較的小さく、液相法を用いて多量にかつより安価に製造することができ、細胞によって容易に取り込まれる。これらの試薬は、記載の認識スキームは本来モジュール式であり、新たに出現する配列とマッチするように随意に容易に改変することができるので、癌、細菌およびウイルス感染の病理に関連するものなどの急速に進化する部位の標的化に特に魅力がある。従って、二価核酸塩基が本明細書に記載される。二価核酸塩基は、ミスマッチが存在してもしなくても、DNAおよび/またはRNAの2つの鎖と有向性の水素結合相互作用を形成することができる。このプラットフォームは、生物学およびバイオテクノロジー、診断薬、および治療薬における基礎研究に適用を持つ。記載の分子認識プラットフォームは、核酸構造および機能の操作のための分子ツールの開発、ならびに遺伝病および感染性疾患を治療するための分子療法の開発につながると期待される。
【0008】
本発明の一態様によれば、遺伝子認識試薬が提供される。この遺伝子認識試薬は、核酸または核酸類似体骨格に結合した複数の核酸塩基部分を含んでなり、ここで、少なくとも1つの核酸塩基部分は、
【化1】
から選択され、式中、R1は、Hまたは保護基であり、かつ、Rは、遺伝子認識試薬中の核酸または核酸類似体骨格モノマーの残基である。一態様によれば、遺伝子認識試薬を含んでなるアレイが提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、構造:
【化2】
を有する化合物が提供され、式中、R1は、Hまたは保護基であり、かつ、Rは、H;保護基;反応性基;固相基板;または核酸もしくは核酸類似体骨格モノマーまたは核酸もしくは核酸類似体ポリマー中のそれらの残基である。また、その化合物を含んでなる医薬組成物などの組成物も提供される。 さらに別の態様によれば、カートリッジなどの容器内に化合物を含んでなるキットが提供される。一態様では、Rは、核酸または核酸類似体骨格モノマーである。
【0010】
態様によれば、核酸中の標的配列の検出方法もまた提供される。この方法は、遺伝子認識試薬を、核酸を含んでなるサンプルと接触させること、および前記遺伝子認識試薬と核酸との結合を検出することを含んでなる。
【0011】
別の態様によれば、核酸サンプルを遺伝子認識試薬と接触させること、前記遺伝子認識試薬から前記核酸サンプルを分離すること、前記遺伝子認識試薬に結合したいずれの核酸も残すこと、および前記遺伝子認識試薬に結合した任意の核酸から前記遺伝子認識試薬を分離することを含んでなる、標的配列を含有する核酸の単離および精製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、本明細書に開示される第二世代核酸塩基の構造を提供する。
【
図2】
図2Aは、天然の塩基対間の水素結合相互作用を示す。
図2Bは、米国特許公開第20160083434 A1号に記載されているような第一世代二価核酸塩基の構造を示す(R1およびRは以下に定義される通り)。
図2Cは、水素結合相互作用JB1~JB4(表示1~4)および完全マッチDNAまたはRNA標的を示す。
図2Dおよび2Eは、JB5~JB16(表示5~16)間の水素結合相互作用およびミスマッチDNAまたはRNA標的を示す。
【
図4】
図4(A~F)は、核酸類似体の例示的構造を示す。
【
図6】
図6Aは、化合物JB1bの合成スキームを示す。
図6Bは、JB1b-6生成物のNMRスペクトルを提供する。
【
図7】
図7Aは、化合物JB3bの合成スキームを示す。
図7Bは、JB3b-8生成物のNMRスペクトルを示す。
【
図8】
図8Aは、化合物JB4cの合成スキームを示す。
図8Bは、JB4c-9生成物のNMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本願に明示される様々な範囲の数値の使用は、そうではないことが明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値および最大値の両方には「約」という語が前に付くかのうように近似値として示される。このように、記載の範囲の上下のわずかな変動は、この範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために使用可能である。また、そうではないことが示されない限り、範囲の開示は、最小値と最大値の間の総ての値を含む連続的範囲として意図される。本明細書で使用する場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」は1以上を指す。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「を含んでなる」は、包含を示し(open-ended)、「を含む(including)」、「を含有する(containing)」、または「を特徴とする」と同義であり得る。本明細書で使用する場合、1以上の記載の要素または工程「を含んでなる」実施形態はまた、限定されるものではないが、これらの記載の要素または工程「から本質的になる」および「からなる」実施形態も含む。
【0015】
用語「ポリマー組成物」は、1以上のポリマーを含んでなる組成物である。クラスとして「ポリマー」は、限定されるものではないが、ホモポリマー、ヘテロポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、ブロックコポリマーを含み、天然および合成の両方であり得る。ホモポリマーは、1種類の構成ブロック、またはモノマーを含み、コポリマーは2種類以上のモノマーを含む。「オリゴマー」は、例えば、3~100個のモノマー残基などの小数のモノマーを含んでなるポリマーである。従って、用語「ポリマー」は、オリゴマーを含む。用語「核酸」および「核酸類似体」は、核酸および核酸ポリマーおよびオリゴマーを含む。
【0016】
ポリマーは、そのモノマーがポリマー中に組み込まれている場合には記載のモノマー「を含んでなる」または「に由来する」。よって、ポリマーが含んでなる、組み込まれたモノマーは、少なくとも、ある種の架橋基がポリマー骨格に組み込まれる、またはある種の基が重合過程で除去されるという点で、ポリマーに組み込まれる前のモノマーと同じではない。ポリマーは、特定の種類の架橋がポリマー中に存在する場合に、その架橋を含んでなると言われる。組み込まれたモノマーは「残基」である。核酸または核酸類似体に典型的なモノマーは、ヌクレオチドと呼ばれる。
【0017】
「部分」は、化学化合物の一部であり、官能基などの基を含む。従って、治療薬部分として、ポリマーモノマー、例えば、本明細書に記載の核酸または核酸類似体モノマー、またはポリマー、例えば、本明細書に記載の核酸または核酸類似体などの別の化合物部分との結合によって修飾された治療薬または化合物がある。
【0018】
「アルキル」は、1~約20個の炭素原子、例えば、限定されるものではないが、C1-3、C1-6、C1-10基を含む直鎖、分岐鎖、または環式炭化水素基、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルなどの直鎖、分岐鎖アルキル基を指す。「置換アルキル」は、1か所以上、例えば、1、2、3、4、5、またはさらには6か所で置換されたアルキルを指し、これらの置換基は、本明細書に記載されるような置換を伴って、安定な化合物を生成するために利用可能な任意の原子に結合される。「場合により置換されていてもよいアルキル」は、アルキルまたは置換アルキルを指す。「ハロゲン」、「ハリド」および「ハロ」は、-F、-CI、-Br、および/または-Iを指す。「アルキレン」および「置換アルキレン」は、それぞれ二価アルキルおよび二価置換アルキルを指し、限定されるものではないが、エチレン(-CH2-CH2-)が含まれる。「場合により置換されていてもよいアルキレン」は、アルキレンまたは置換アルキレンを指す。
【0019】
「アルケンまたはアルケニル」は、1以上の、例えば、1、2、3、4、または5個の炭素-炭素二重結合を有する、限定されるものではないが、C1-3、C1-6、C1-10などの2~約20個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、または環式ヒドロカルビル基を指す。「置換アルケン」は、1か所以上、例えば、1、2、3、4、または5か所で置換されたアルケンを指し、これらの置換基は、明細書に記載されるような置換を伴って、安定な化合物を生成するために利用可能な任意の原子に結合される。「場合により置換されていてもよいアルケン」は、アルケンまたは置換アルケンを指す。同様に、「アルケニレン」は、二価アルケンを指す。アルケニレンの例としては、限定されるものではないが、エテニレン(-CH=CH-)およびそれらのあらゆる立体異性形および配座異性形が含まれる。「置換アルケニレン」は、二価置換アルケンを指す。「場合により置換されていてもよいアルケニレン」は、アルケニレンまたは置換アルケニレンを指す。
【0020】
「アルキン」または「アルキニル」は、示された数の炭素原子と少なくとも1つの三重結合を有する直鎖または分岐鎖不飽和炭化水素を指す。(C2-C8)アルキニル基の例としては、限定されるものではないが、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、3-ヘプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチンおよび4-オクチンが含まれる。アルキニル基は、非置換型であっても、または本明細書の以下に記載されるような1以上の置換基で場合により置換されていてもよい。用語「アルキニレン」は、二価アルキンを指す。アルキニレンの例としては、限定されるものではないが、エチニレン、プロピニレンが含まれる。「置換アルキニレン」は、二価置換アルキンを指す。
【0021】
用語「アルコキシ」は、示された数の炭素原子を有する-O-アルキル基を指す。例えば、(C1-C6)アルコキシ基としては、-O-メチル(メトキシ)、-O-エチル(エトキシ)、-O-プロピル(プロポキシ)、-O-イソプロピル(イソプロポキシ)、-O-ブチル(ブトキシ)、-O-sec-ブチル(sec-ブトキシ)、-O-tert-ブチル (tert-ブトキシ)、-O-ペンチル(ペントキシ)、-O-イソペンチル(イソペントキシ)、-O-ネオペンチル(ネオペントキシ)、-O-ヘキシル(ヘキシルオキシ)、-O-イソヘキシル(イソヘキシルオキシ)、および-O-ネオヘキシル(ネオヘキシルオキシ)が含まれる。「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基の水素原子のうち1以上が-OH基で置換されている(C1-C10)アルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例としては、限定されるものではないが、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、およびそれらの分岐型が含まれる。用語「エーテル」または「酸素エーテル」は、アルキル基の炭素原子のうち1以上が-O-基で置換されている(C1-C10)アルキル基を指す。エーテルという用語は、-CH2-(OCH2-CH2)qOP1化合物を含み、ここで、P1は保護基、-H、または(C1-C10)アルキルである。例示的エーテルとしては、ポリエチレングリコール、ジエチルエーテル、およびメチルヘキシルエーテルが含まれる。
【0022】
用語「チオエーテル」は、アルキル基の炭素原子のうち1以上が-S-基で置換されている(C1-C10)アルキル基を指す。チオエーテルという用語は、-CH2-(SCH2-CH2)q-SP1化合物を含み、ここで、P1は保護基、-H、または(C1-C10)アルキルである。例示的チオエーテルとしては、ジメチルチオエーテル、エチルメチルチオエーテルが挙げられる。保護基は当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンズヒドリルオキシカルボニル(Bhoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、O-ニトロベラトリルオキシカルボニル(Nvoc)、ベンジル(Bn)、アリルオキシカルボニル(alloc)、トリチル(Trt)、ジメトキシトリチル(DMT)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキサシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、ジアチアスクシノイル(Dts)、ベンゾチアゾール-2-スルホニル(Bts)およびモノメトキシトリチル(MMT)基が含まれる。
【0023】
「アリール」は単独でまたは組み合わせて、フェニルまたはナフチルなどの芳香族単環式または二環式環系を指す。「アリール」はまた、シクロアルキル環と場合により縮合した芳香族環系も含む。「置換アリール」は、安定な化合物を生成するために利用可能な任意の原子に結合された1以上の置換基で独立に置換されたアリールであり、ここで、置換基は本明細書に記載される通りである。「場合により置換されていてもよいアリール」は、アリールまたは置換アリールを指す。「アリーレン」は、二価アリールを表し、「置換アリーレン」は、二価置換アリールを指す。「場合により置換されていてもよいアリーレン」は、アリーレンまたは置換アリーレンを指す。
【0024】
「ヘテロ原子」は、N、O、PおよびSを指す。NまたはS原子を含有する化合物は、対応するN-オキシド、スルホキシドまたはスルホン化合物へと場合により酸化することができる。「ヘテロ置換」は、本明細書に記載のいずれの実施形態においても、1以上の炭素原子がN、O、PまたはSで置換された有機化合物を指す。
【0025】
「シクロアルキル」は、単環式、二環式、三環式、または多環式、3~14員環系を指し、それらは飽和、不飽和または芳香族のいずれかである。シクロアルキル基は、いずれの原子を介して結合されてもよい。シクロアルキルはまた、シクロアルキルがアリールまたはヘテロアリール環と縮合されている縮合環も企図する。シクロアルキルの代表例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれる。シクロアルキル基は、非置換型であっても、または本明細書の以下に記載されるような1以上の置換基で場合により置換されていてもよい。「シクロアルキレン」は、二価シクロアルキルを指す。用語「場合により置換されていてもよいシクロアルキレン」は、安定な化合物を生成するために利用可能な任意の原子に結合された1、2または3個の置換基で置換されたシクロアルキレンを指し、ここで、置換基は本明細書に記載される通りである。
【0026】
「カルボキシル(Carboxyl or carboxylic)」は、示された数の炭素原子を有し、かつ、-C(O)OH基で終わる、従って、構造-R-C(O)OH(ここで、Rは、直鎖、分岐鎖、または環式炭化水素を含む二価有機基である)を有する基を指す。これらの限定されない例としては、エタン酸基、プロパン酸基、2-メチルプロパン酸基、ブタン酸基、2,2-ジメチルプロパン酸基、ペンタン酸基などのC1-8カルボキシル基が含まれる。
【0027】
「(C3-C8)アリール-(C1-C6)アルキレン」は、C1-C6アルキレン基内の1以上の水素原子が(C3-C8)アリール基で置換されている二価アルキレンを指す。(C3-C8)アリール-(C1-C6)アルキレン基の例としては、限定されるものではないが、1-フェニルブチレン、フェニル-2-ブチレン、1-フェニル-2-メチルプロピレン、フェニルメチレン、フェニルプロピレン、およびナフチルエチレンが含まれる。用語「(C3-C8)シクロアルキル-(C1-C6)アルキレン」は、C1-C6アルキレン基内の1以上の水素原子が(C3-C8)シクロアルキル基で置換されている二価アルキレンを指す。(C3-C8)シクロアルキル-(C1-C6)アルキレン基の例としては、限定されるものではないが、1-シクロプロピルブチレン、シクロプロピル-2-ブチレン、シクロペンチル-1-フェニル-2-メチルプロピレン、シクロブチルメチレンおよびシクロヘキシルプロピレンが含まれる。
【0028】
本明細書では、2本の核酸鎖と特異的に結合する核酸およびそれらの類似体、総称して「遺伝子認識試薬」が提供され、これらの2本の鎖は独立した鎖、単一鎖の2つの部分(例えば、ヘアピンの場合)であってもなくてもよく、または遺伝子認識試薬との結合部位において、2本の鎖内の1以上の部位で、塩基が従来のワトソン・クリック塩基対形成(A-T/U、T/U-A、G-CまたはC-G)に従って塩基対を形成できないという意味でミスマッチを含む。遺伝子認識試薬は、それぞれ核酸または核酸類似体骨格モノマー残基に結合され、かつ、少なくとも2個の核酸または核酸モノマー残基、従って、少なくとも2個の核酸塩基(核酸塩基部分)を含んでなるより大きな遺伝子認識試薬の一部を形成する複数の核酸塩基部分を含んでなる。一態様において、遺伝子認識試薬と結合しているこれらの2本の鎖は非相補的であり、これはそれらが生理学的条件下でハイブリダイズしないことを意味し、また一般に50%未満の相補性を含み、これは遺伝子認識試薬の核酸塩基とアラインした場合に、これらの2本の鎖の塩基の50%未満がミスマッチであることを意味する。よって、配列における核酸塩基の選択に応じて、本明細書に記載の遺伝子認識試薬は、完全相補的、部分的相補的または非相補的二本鎖核酸の2本の鎖に侵入またはそうでなければハイブリダイズすることができる。
【0029】
一態様において、本明細書に記載の遺伝子認識試薬は、あらゆる二価核酸塩基を含んでなる。別の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子認識試薬は、少なくとも1つの二価核酸塩基を含んでなり、他の核酸塩基は一価である。本明細書で使用する場合、一価核酸塩基は単一の核酸鎖上で1個の核酸塩基と結合するが、二価核酸塩基は、1つは第1の核酸鎖上、もう1つは第2の核酸上の、2つの核酸塩基と結合する。
【0030】
よって、一態様において、二価核酸塩基が提供される。このような核酸塩基は遺伝子認識試薬モノマーに組み込むことができ、次にこれを、所望の核酸塩基配列を有するモノマーのオリゴマーに組み込むことができる。表1は、本明細書で提供される二価核酸塩基の結合特異性を示し、
図1Aおよび1Bにそれらの核酸塩基の構造を示す。
【0031】
【0032】
図1Aおよび1Bの構造について、Rは、共有結合基または核酸塩基部分に結合した部分、例えば、
例えば、限定されるものではないが、モノマーの合成の際に骨格モノマーと反応する反応性基、その限定されない例としては、カルボキシル(例えば、-C(O)OH)、ヒドロキシル(例えば、-C-OH)、アミン、シアナート(例えば、-C-C≡N)、チオール(例えば、-C-SH)、エポキシド(オキシラン)、ビニル、アリル、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アジド、アルキニル、マレイミド、ヒドラジド、テトラジン、ホスホラミダイト、シクロアルキン、ニトリル、-(CH
2)
nCO
2Hまたは-(CH
2)
nCO
2Y(n=1~5、Y=Cl、アルキル、アリールなどの任意の脱離基)が含まれる;
本明細書に記載されるような骨格モノマー部分、例えば、限定されるものではないが、本明細書にさらに詳細に記載されるような、リボース、デオキシリボース、核酸類似体骨格モノマー、またはペプチド核酸骨格モノマー;
本明細書にさらに詳細に記載されるような核酸または核酸類似体;
保護基;あるいは
任意の共有結合基,部分、組成物、基板、または装置、例えば、限定されるものではないが、H、ハロ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ポリマー、基板(例えば、シリコンチップまたは移植用装置)、タンパク質またはペプチド、リガンド、結合試薬、例えば、抗体、抗体フラグメント、もしくは他のパラトープ含有部分、またはアプタマー、親和性タグ(例えば、エピトープまたはリガンド、例えば、ビオチン)、または受容体もしくはそのフラグメント、または受容体結合部分を指す。
【0033】
R1はHまたは保護基である。R1の例はHである場合、それらの化合物または部分のアミンは脱保護されていると言われる。モノマーまたはモノマーを含んでなるポリマーを製造するために使用する化学法によって、必要に応じて1以上のアミンが、保護基であるR1で保護される。アミンの保護基としては、例えば、限定されるものではないが、メチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルが含まれる。
【0034】
本開示に関して、「ヌクレオチド」は、少なくとも1つの核酸塩基と骨格要素(RNAまたはDNAなどの核酸においてはリボースまたはデオキシリボースである)を含んでなるモノマーを指す。「ヌクレオチド」はまた、一般に、特定の条件下で重合を可能とする反応性基を含んでなる。天然のDNAおよびRNAでは、これらの反応性基は5’リン酸基および3’ヒドロキシル基である。核酸およびそれらの類似体の化学合成については、塩基および骨格モノマーは、当技術分野で公知のようにブロックアミンなどのある種の修飾基を含み得る。「ヌクレオチド残基」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに組み込まれた単一のヌクレオチドを指す。同様に、「核酸塩基残基」は、ヌクレオチドまたは核酸もしくはその類似体に組み込まれた核酸塩基を指す。「遺伝子認識試薬」は、一般に、協調的塩基対形成、例えば、ワトソン・クリック塩基対形成またはワトソン・クリック様塩基対形成により核酸上の相補的核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸塩基の配列を含んでなる核酸または核酸類似体を指す(
図2A参照)。米国特許公開第20160083434 A1号には、本明細書に記載の二価核酸塩基の第一世代対応物が記載されている(JB1~JB16の構造を示す
図2B、および本明細書で提供される二価核酸塩基の水素結合の例示としてこれらの化合物の水素結合を示す
図2C~2E参照)。その公報に記載されているように、第一世代核酸塩基JB1~JB4は、本来のように相補的塩基と結合するが(例えば、C-G、G-C、A-TおよびT-A)、JB5~JB16はミスマッチと結合し、従って、マッチ塩基および/またはミスマッチ塩基の2本の鎖と結合するために使用できる。
【0035】
本明細書に記載の二価核酸塩基は、それらの対応第一世代化合物と同じ塩基対合を有する。第一世代JB1~JB16核酸塩基と同じ核酸塩基結合親和性を有する本明細書に記載の核酸塩基は「JB#系核酸塩基」と呼ばれ、ここで、#は、同じ核酸塩基結合親和性を有する第一世代核酸塩基の番号(それぞれJB1、JB2、JB3、JB4、JB5、JB6、JB7、JB8、JB9、JB9b、JB10、JB11、JB12、JB13、JB14、JB15、JB16核酸塩基)を指す。JB#系の核酸塩基という場合には、第一世代および第二世代核酸塩基の両方を含む。例えば、JB1b、JB1c、およびJB1dは、JB1と同程度でAおよびT/Uの両方に結合するので、JB1を含めJB1系核酸塩基と呼ばれ;JB4b~eは、JB4と同程度でGおよびCと結合するので、JB4を含めJB4系核酸塩基と呼ばれ;また、JB13b~iは、JB13と同程度でGおよびAに結合するので、JB13を含めJB13系核酸塩基と呼ばれる。
【0036】
図1Aおよび1Bの化合物は、化学合成技術および有機合成技術で公知の方法に従って合成される。例示的合成スキームおよびスペクトルは以下の実施例に示され、さらなる合成スキームは、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許公開第20160083434 A1号に示されている。
【0037】
図1Aおよび1Bの核酸塩基は、上記に示されるように二価結合親和性を有する。注目すべきは、JB1系、JB2系、JB3系およびJB4系化合物はマッチ(相補的)配列からなるが、残りの化合物はミスマッチ配列と結合する。
【0038】
複数の態様において、本発明では、二価核酸塩基が提供される。核酸塩基は、例えば、水素結合によるワトソン・クリックまたはワトソン・クリック様塩基対形成によって、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、およびウラシルのうち1以上に特異的に結合する認識部分である。「核酸塩基」としては、主要(天然)核酸塩基:アデニン、グアニン、チミン、シトシン、およびウラシル、ならびに修飾プリンおよびピリミジン塩基、例えば、限定されるものではないが、ヒポキサンチン、キサンテン、7-メチルグアニン、5、6、ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、および5-ヒドロキシメチルシトシンが含まれる。
図3はまた、一価核酸塩基(例えば、核酸または核酸類似体の1つの鎖に結合するアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシル)、および増強された強度で相補的核酸塩基と結合する「クランプ」核酸塩基、例えば、「Gクランプ」を含む核酸塩基の限定されない例を示す。さらなるプリン、プリン様、ピリミジンおよびピリミジン様核酸塩基は、例えば、米国特許第8,053,212号、同第8,389,703号、および同第8,653,254号に開示されているように、当技術分野で公知である。本明細書に記載されるような二価核酸塩基は、1つではなく2つの核酸塩基と結合するので、マッチ核酸またはミスマッチ核酸を有するトリマー構造を形成することができる。
【0039】
本明細書ではまた、上記のようにAが骨格モノマー部分であり、Bが二価核酸塩基である構造A-Bを有するヌクレオチドが提供される。骨格モノマーは、リボース三リン酸またはデオキシリボース三リン酸、またはペプチド核酸(PNA)、例えば、ガンマPNA(γPNA)などの核酸類似体のモノマーといったいずれの好適な核酸骨格モノマーであってもよい。一例において、骨格モノマーは、リボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸、またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸、例えば、リボースまたはデオキシリボースの5’一リン酸、二リン酸、または三リン酸である。骨格モノマーは、RNA中のリボースなどの構造的「残基」成分と、架橋モノマーにおいて一緒に修飾され任意の活性基、例えば、RNAへと重合された際にホスホジエステル結合を残すように修飾された、リボヌクレオチドの5’三リン酸および3’ヒドロキシル基の両方を含む。PNAの場合と同様に、N-(2-アミノエチル)グリシン骨格モノマーのC末端カルボキシル活性基およびN末端アミン活性基は、重合の際にペプチド(アミド)結合を残すように縮合される。別の態様では、活性基は、当技術分野で広く知られているように、ホスホラミダイトオリゴマー合成に有用なホスホラミダイト基である。ヌクレオチドはまた、本明細書に記載されるように、当技術分野で公知のような1以上の保護基、例えば、4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)を場合により含んでなる。合成遺伝子認識試薬を作製するいくつかのさらなる方法が知られ、それらの方法は骨格構造および塩基付加過程における特定の化学法に依存する。ヌクレオチドモノマーを連結するのにどの活性基を利用するか、また、塩基においてどの基を保護するかの決定、およびオリゴマーの作製において必要とされる工程は、化学分野ならびに核酸および核酸類似体オリゴマー合成の特定の分野の熟練者の、十分に能力の範囲内である。
【0040】
一般的な核酸類似体の限定されない例としては、γPNA、ホスホロチオエート(例えば、
図4(A))、ロックド核酸(2’-O-4’-C-メチレンブリッジ、それらのオキシ、チオまたはアミノ型を含む、例えば、
図4(B))、非ロックド核酸(C2’-C3’結合が切断される、例えば、
図4(C))、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸(例えば、
図4(D))、トレオース核酸(例えば、
図4(E))、グリコール核酸(例えば、
図4(F)、R型およびS型を示す)などのペプチド核酸が含まれる。
図4(A~F)は、 核酸類似体の様々な例についてのモノマー構造を示す。
図4(A~F)はそれぞれ、波線で示される、より長い鎖に組み込まれる2つのモノマー残基を示す。組み込まれたモノマーは、本明細書では「残基」と呼ばれ、核酸塩基を除いた核酸または核酸類似体の部分は、核酸または核酸類似体の「骨格」と呼ばれる。RNAに関して、一例として、例示的核酸塩基はアデニンであり、対応するモノマーはアデノシン三リン酸であり、組み込まれている残基はアデノシン一リン酸残基である。RNAに関して、「骨格」は、リン酸基により連結されたリボースサブユニットからなり、従って、骨格モノマーは、組み込み前にはリボース三リン酸であり、組み込み後にはリボース一リン酸残基である。
【0041】
一態様によれば、立体配座的に予め構成されたγPNA(Bahal, R., et al. “Sequence‐unrestricted, Watson‐Crick recognition of double helical B‐DNA by (R)‐MiniPEG‐ γPNAs (2012) ChemBioChem 13:56-60)の出現で、γPNAは、十分に確立されたワトソン・クリック塩基対合の規則に基づいて二重らせんB-DNAの任意の配列に結合するように設計することができる。しかしながら、天然の核酸塩基のみを認識要素として備えている場合には、γPNAによるDNAのストランド侵入は、生理学的イオン強度未満に限られる(Rapireddy, S., R. et al. “Strand invasion of mixed‐sequence, double‐helical B‐DNA by γ‐peptide nucleic acids containing G‐clamp nucleobases under physiological conditions,” (2011) Biochemistry 50:3913‐3918)。高いイオン強度での生産的なγPNA結合の効率の低下は、塩基対の接近性の不足によるものではなく、むしろ結合自由エネルギーの不足によるものである。生理学的条件下で、DNA二重らせんは、必要とされる結合自由エネルギーが見合う限り、ストランド侵入を可能とするに十分動的である。このような系の結合自由エネルギーを改善するための一つの方法は、認識要素の塩基スタッキング能およびH結合能を高めることであると思われ、これは本発明により満たされる。一態様において、DNAまたはRNA二重らせんの両鎖と有向性の水素結合相互作用を形成することができる特殊な二価核酸塩基セットを含有するγPNAモノマーおよびオリゴマーが提供される。二価核酸塩基の化学構造の例を
図1Aおよび1Bに示す。例えばキラルγ炭素にアミノ酸側鎖、またはPEG化(ポリエチレングリコール、もしくはPEG)基を有するγPNAモノマーおよびオリゴマーの限定されない例を以下に示す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を指す。核酸類似体としては、例えば、限定されるものではないが、場合により、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド残基を含む、2’-O-メチル置換RNA、ロックド核酸、非ロックド核酸、トリアゾール結合DNA、ペプチド核酸、モルホリノオリゴマー、ジデオキシヌクレオチドオリゴマー、グリコール核酸、トレオース核酸およびそれらの組合せが含まれる。ここで、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドから構成される短い一本鎖構造であり、互換的に使用される。オリゴヌクレオチドは、鎖の長さ(すなわち、ヌクレオチドの数)により、名称「-マー」(-mer)で呼ぶことができる。例えば、22ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドは22マーと呼ばれる。
【0043】
「ペプチド核酸」は、DNAまたはRNAの糖ホスホジエステル骨格がN-(2-アミノエチル)グリシン単位で置換されたDNAまたはRNA類似体または模倣体を指す。ガンマPNA(γPNA)は、以下の構造:
【化3】
のガンマ修飾N-(2-アミノエチル)グリシンモノマーのオリゴマーまたはポリマーであり、ここで、ガンマ炭素に結合したR
2またはR
3の少なくとも1つは水素でなく、またはR
2およびR
3は異なり、従って、ガンマ炭素はキラル中心である。「Base」は、本明細書に記載のいずれかの態様に従う二価核酸塩基などの核酸塩基を指す。R
2およびR
3は水素(N-(2-アミノエチル)-グリシン骨格)であるか、または同じ場合、ガンマ炭素に関するこのようなキラル性はない。R
2またはR
3の一方がHであって、他方がそうでない場合など、R
2およびR
3が異なる場合は、ガンマ炭素に関するキラル性が存在する。一般に、γPNAsおよびγPNAモノマーに関して、R
2またはR
3のいずれかがHであって、他方が、例えば、(C
1-C
10)有機基または炭化水素であり、場合により1~50個のオキシエチレン残基、すなわち[-O-CH
2-CH
2-]
n(ここで、nは1~50(含む)である)でPEG化されたアミノ酸側鎖または有機基である。R
4は、H、または有機基であり、例えば、(C
1-C
10)有機基または炭化水素であり、場合により1~50個のオキシエチレン残基でPEG化された有機基であり得る。例えば、限定されるものではないが、R
2、R
3およびR
4は独立に、H、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
1-C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレン、(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2-CH
2-)残基を含んでなる前記のもののPEG化部分、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
l、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1
、および-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレンおよび(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレンからなる群から選択され;qは、0~10(含む)の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50(含む)の整数であり;R
2およびR
3は異なり、場合によりR
2またはR
3の一方はHである。R
5は、Hまたは保護基である。
【0044】
「アミノ酸側鎖」は、アミノ酸の側鎖である。アミノ酸は、構造:
【化4】
を有し、ここで、「Side」は、アミノ酸側鎖である。アミノ酸側鎖の限定されない例は、
図5に示される。この実施形態には側鎖は存在しない(Side=H)ので、グリシンは表されない。
【0045】
γPNAオリゴマーまたはポリマーに組み込まれるγPNAモノマー
【化5】
(式中、R
2、R
4、R
4、およびBaseは上記で定義される通り)は、本明細書では「γPNAモノマー残基」と呼ばれ、各残基は、その核酸塩基として、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシル塩基、または本明細書に記載の一価および二価の塩基などのその他の核酸塩基などの同じまたは異なるBase基を有し、従って、γPNA上の塩基の順序は、DNAまたはRNAと同様にその「配列」である。描写されるγPNA残基構造は、核酸塩基(Base)に結合した骨格モノマー残基を示す。核酸または核酸類似体オリゴマーまたはポリマー、例えば、γPNAオリゴマーまたはポリマー中の核酸塩基の配列は、二本鎖DNAまたはRNAにおける相補的塩基のワトソン・クリック結合と本質的に同様に、協調的結合によって核酸鎖のアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよび/またはウラシル残基の相補配列に結合する。「ワトソン・クリック様」結合は、本明細書でG、A、T、C、Uまたは他の核酸塩基とともに示される二価塩基の結合などの、G、A、T、CまたはU以外の核酸塩基の水素結合を指す。
【0046】
特に断りのない限り、本明細書に記載の核酸および核酸類似体は、いずれかの特定の塩基配列に関して記載されるものではない。本開示は、二価核酸塩基、二価核酸塩基を含んでなる組成物、および二価核酸塩基およびそれらの核酸塩基を含有する化合物の使用方法、ならびに本明細書に記載のいずれかの特定の実施形態の有用性を対象とするが、どの場合も具体的配列に応じて一般に適用可能である。核酸、核酸類似体およびPNA(例えば、γPNA)を用いた公開済みの豊富な研究に基づけば、記載のγPNAオリゴマーの骨格に結合したいずれの核酸塩基配列も、ワトソン・クリックまたはワトソン・クリック様水素結合によって標的核酸または核酸類似体の相補的核酸塩基配列と、予測された特定の様式でハイブリダイズすると思われる。当業者ならば、本明細書に記載の組成物および方法は配列非依存的であり、二価核酸塩基を含んでなる新規な、一般化された組成物および関連の方法を記載することを理解するであろう。
【0047】
別の態様において、少なくとも1つの二価核酸塩基を含んでなる遺伝子認識試薬オリゴマーが提供される。遺伝子認識試薬は骨格と少なくとも2個の核酸塩基を含んでなり、その核酸塩基のうち少なくとも1つは、本明細書に記載されるような二価核酸塩基である。例示的構造は、
【化6】
であり、ここで、Mの各例が骨格モノマー残基であり、Bの各例は独立に任意の配列中の核酸塩基であり、Bの少なくとも1つの例は、本明細書に記載されるいずれかの態様による二価核酸塩基であり、例えば、JB1b、JB1c、JB1d、JB2b、JB3b、JB4b、JB4c、JB4d、JB4e、JB5b、JB5c、JB5d、JB6b、JB7e、JB7f、JB8b、JB9c、JB10b、JB10c、JB11b、JB11c、JB11d、JB11e、JB12b、JB13b、JB13c、JB13d、JB13e、JB13f、JB13g、JB13h、およびJB13iから選択される。Eは独立に、末端モノマー残基の一部である末端(end (terminal))基であり、かつ、「n」は、任意の正の整数または0、例えば、48以下、28以下、23以下、ならびに0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18を含め18以下である。一般に、Mの総ての例は、例えば、限定されるものではないが、PNAでは各N末端およびC末端のNH
2およびC(O)OHまたはCONH
2、ならびに核酸の5’および3’末端のヒドロキシル基など、内部モノマーとは異なる末端基Eを一般に有する末端モノマー残基を除いて同じである。
【0048】
遺伝子認識試薬は、小オリゴヌクレオチドとして作製することができ、例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許出願公開第20160083433 A1号に記載されるように、イン・サイチュ(in situ)、イン・ビボ(in vivo)、エクス・ビボ(ex vivo)、またはイン・ビトロ(in vitro)で組み立てることができる。その方法により、トリマーなどのより長い配列に比べて高い細胞または組織浸透性の小オリゴマーが細胞に移入でき、これらのオリゴマーはひと度、鋳型核酸とハイブリダイズされれば、連続的なより長い配列として組み立てることができる。同じことが、例えば、標的核酸とハイブリダイズさせる際に使用するためのより長い配列を迅速に組み立てるためにイン・ビトロまたはエクス・ビボで達成可能である。
【0049】
一態様において、遺伝子認識試薬は、アレイ上に提供される。アレイは、遺伝子検出アッセイなどのハイスループットアッセイの実施に特に有用である。本明細書で使用する場合、用語「アレイ」は、基板上の、2以上の分離した識別可能かつ/またはアドレス可能な位置に配置または結合された試薬、例えば、本明細書に記載の遺伝子認識試薬を指す。一態様において、アレイは、識別された成分を含んでなる反応が実施される2以上の分離した識別可能な反応チャンバー、例えば、限定されるものではないが、96ウェルディッシュを備えた装置である。一態様において、本明細書に記載されるような1以上の二価核酸塩基を含んでなる2以上の遺伝子認識試薬は、空間的にアドレス可能な様式で、従って、各個のプライマーまたはプローブが基板上の異なる(アドレス可能な)識別可能な位置に配置されるように、基板上に固定化されている。1以上の遺伝子認識試薬は、基板上に共有結合されるか、またはそうでなければアレイ上のアドレス可能な位置に結合もしくは配置される。基板としては、限定されるものではないが、マルチウェルプレート、シリコンチップおよびビーズが含まれる。一態様において、アレイは、2以上のビーズセットを含んでなり、各ビーズセットは量子ドットまたは蛍光タグなどの識別可能なマーカーを有し、従って、これらのビーズは、例えば、限定されるものではないが、フローサイトメーターを用いて個々に識別可能である。一態様において、アレイは、結合特異的配列のための記載の遺伝子認識試薬を含む2以上のウェルを含むマルチウェルプレートである。従って、プローブおよびプライマーなどの試薬は、アレイ上の特定の位置に結合、またはそうでなければその上もしくはその内部に付着されるか、またはそうでなければ配置されてよい。試薬は、限定されるものではないが、溶液、乾燥、凍結乾燥、またはガラス化を含む、いずれの好適な形態であってもよい。アガロースビーズまたはシリコンチップなどの基板に共有結合させる場合、このような基板に遺伝子認識試薬などの化学部分を結合させるための多様な結合技術が知られている。核酸、ペプチド核酸および他の核酸類似体を連結する際に使用するためのリンカーおよびスペーサーは化学分野およびアレイ分野で広く知られており、その理由については本明細書で記載していない。限定されない例として、γPNA遺伝子認識試薬は、例えば、Thermo Fisher Scientific(Pierce Protein Biology Products)、Rockford、Illinois、および様々な他の供給者から入手可能なカルボキシル-、シアノゲンブロミド-、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル-、カルボニルジイミダゾール-、またはアルデヒド-官能性アガロースビーズと反応させることができる反応性アミンを含有する。本明細書に記載の遺伝子認識試薬は、リンカーを用いてまたは用いずに、いずれの様式で基板に結合させることもできる。反応の実施およびアレイの読み取りに使用するための装置は広く知られ、利用可能であり、アレイデータを分析し、および/または患者サンプルから得られたデータから遺伝的リスク因子を特定するための情報科学的および/または統計学的ソフトウエアまたはその他のコンピューターにより実施されるプロセスは当技術分野で公知である。
【0050】
JB1、JB2およびJB3など、記載の二価組成物のある種のものは、それらの環構造のために蛍光を呈し、JB7e、JB7f、およびJB8bなどの三環化合物は最大の蛍光を示し、二環構造もまた蛍光を示す。これらの組成物は蛍光色素として使用することができ、または自家蛍光は、例えば、イン・サイチュアッセイまたはゲルもしくはブロットにおいて標的配列と結合させることによってプローブとして使用することができ、従って、標的配列を可視化することができる。
【0051】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載されるような遺伝子認識試薬を、核酸を含んでなるサンプルと接触させること、および遺伝子認識試薬と核酸との結合を検出することを含んでなる、核酸における標的配列の検出方法が提供される。一態様では、遺伝子認識試薬は、基板上に、例えば、アレイとして固定化され、標識(例えば、蛍光標識または放射性標識された)された核酸サンプルがその固定化された遺伝子認識試薬と接触され、遺伝子認識試薬と特異的に結合された標識核酸の量が測定される。ある変形形態では、遺伝子認識試薬または遺伝子認識試薬の標的配列を含んでなる核酸は基板に結合され、標識された、遺伝子認識試薬の標的配列を含んでなる核酸または標識された遺伝子認識試薬がそれぞれ固定化された遺伝子認識試薬または核酸に結合されて複合体が形成される。一態様では、複合体の核酸は、部分的標的配列を含んでなり、従って、全長標的配列を含んでなる核酸は、遺伝子認識試薬に関して複合体を形成する核酸に打ち勝つ。次に、この複合体を核酸サンプルに曝し、結合した、複合体由来の標識の減少を検出し、核酸サンプル中の核酸マーカーの定量を助ける標準法に従って定量することができる。これらは、核酸サンプル中の特定の核酸の存在を検出または定量するために使用することができる多数の潜在的分析アッセイのうちの2つに過ぎない。
【0052】
本明細書に記載されるような核酸または遺伝子認識試薬などの組成物に関して「固定化された」とは、任意の物理的構造または化学組成の基板に結合させることを意味する。固定化組成物は、最終的な使用に関して有用ないずれかの方法によって固定化される。この組成物は、アミン基のリンカーまたはスペーサーへの共有結合、またはファンデルワールス結合および/または水素結合を含む非共有結合的結合によるなどの、共有結合的または非共有結合的方法によって固定化される。「標識」は、標識を含んでなる分子または組成物の検出または精製に有用な化学的部分である。標識は、例えば、限定されるものではないが、14C、32P、35Sなどの放射性部分、フルオレセインイソチオシアネートもしくはシアニン色素などの蛍光色素、酵素、またはストレプトアビジンと結合させるためのビオチンなどの、他の化合物と結合させるためのリガンド、または抗体と結合させるためのエピトープであり得る。多数のこのような標識およびそれらの使用方法は、免疫学および分子生物学分野の熟練者に知られている。従って、本明細書に記載のある特定の二価核酸塩基には強い蛍光があるので、このような塩基を核酸もしくは核酸類似体のヌクレオチド残基に組み込むか、または二価核酸塩基を核酸、核酸類似体、結合試薬、リガンドもしくはその他の検出試薬に共有結合させると、サンプル、反応混合物、アレイなどの中の試薬の検出および/または定量が可能となる。
【0053】
本発明のさらに別の態様では、標的配列を含有する核酸の単離および精製の方法が提供される。一つの非限定的態様では、本明細書に記載されるような遺伝子認識試薬は、ビーズ(例えば、限定されるものではないが、アガロースビーズ、ソーティング用の蛍光マーカーを含有するビーズ、または磁性ビーズ)、多孔質マトリックス、表面、チューブなどの基板上に固定化されている。核酸サンプルは固定化された遺伝子認識試薬と接触され、標的配列を含有する核酸が遺伝子認識試薬と結合する。結合した核酸は次に、結合していない核酸を除去するために洗浄され、その後、結合した核酸は溶出され、分子生物学分野で広く知られているように、いずれの有用な方法によって沈澱またはそうでなければ濃縮されてもよい。
【0054】
さらなる態様において、キットが提供される。キットは、自動核酸、核酸類似体、またはPNA合成用のカートリッジを含む任意の形態の容器を最小限含んでなり、それらは、例えば、核酸および/または核酸類似体を作製するための自動配列作製装置で使用するための、個々の、独立した、場合により独立にアドレス可能なコンパートメントの形態で1以上の容器を含んでなり得る。容器は単回使用であっても、または複数回使用のために十分な内容物を含有してもよい。キットはまた、アレイを含んでなってもよい。キットは、本明細書に記載の任意の実施形態において、遺伝子認識試薬を作製または使用する際に使用するための1以上の付加的試薬を場合により含んでなってもよい。キットは、本明細書に記載される任意の形態の任意の二価核酸塩基、または本明細書に記載の任意の態様によるモノマーもしくは遺伝子認識試薬を含有する容器を含んでなる。異なる核酸塩基、モノマーまたは遺伝子認識試薬は一般に別の容器に封入され、これらはカートリッジ内の別のコンパートメントであり得る。
【0055】
複数の態様において、化合物および遺伝子認識試薬は治療目的で使用され、従って、それらの化合物および遺伝子認識試薬は、治療上有効な量の化合物または遺伝子認識試薬および賦形剤、例えば、治療薬の送達、例えば、限定されるものではないが、経口、局所、静脈内、筋肉内、または皮下投与のためのビヒクルまたは希釈剤を含む、ヒトおよび獣医学的使用のための組成物を含む、医薬品、医薬組成物、または投与形で処方される。この組成物は、所望の投与様式に適当な固形ビヒクルまたは液体ビヒクル、希釈剤および添加剤を用いて従来の様式で処方することができる。経口的には、これらの化合物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの形態で投与することができる。これらの組成物は、薬学、医学、獣医学または生物学分野で広く知られているように、1以上の付加的活性薬剤を場合により含んでなる。本明細書に記載の化合物は、いずれの有効な様式で投与してもよい。送達経路のさらなる例としては、限定されるものではないが、局所的、例えば、経皮送達、吸入、浣腸、眼への送達、耳への送達および鼻腔内送達;腸内、例えば、経口、胃栄養管または嚥下、および直腸;および非経口、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内、皮内、くも膜下腔内、腹腔内、経皮的、イオン導入、経粘膜、硬膜外および硝子体内が含まれる。治療薬/医薬組成物は、広く知られているように、許容可能な製薬手順に従って製造される。
【0056】
本明細書に記載の化合物はいずれも、当該化合物または遺伝子認識試薬が有効成分である医薬剤型または医薬品などの、使用に好適な組成物へと配合またはそうでなければ製造することができる。一例によれば、本明細書に記載の医薬品は、経口錠剤、カプセル剤、カプレット剤、液体充填またはゲル充填カプセル剤などである。組成物は、薬学上許容される担体、または賦形剤を含んでなってよい。「賦形剤」は、薬物の有効成分のための担体として使用される不活性物質である。「不活性」賦形剤は、医薬品中の有効成分の送達、安定性またはバイオアベイラビリティを助長し、それらの向上を助ける。有用な賦形剤の限定されない例としては、製薬/配合分野で利用可能であるような、固結防止剤、結合剤、レオロジー改質剤、コーティング剤、崩壊剤、乳化剤、油、バッファー、塩、酸、塩基、増量剤、希釈剤、溶媒、香味剤、着色剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、吸着剤、ビタミン、甘味剤などが含まれる。
【0057】
本発明は以下の通りである。
[1]核酸または核酸類似体骨格に結合した複数の核酸塩基部分を含んでなる遺伝子認識試薬であって、少なくとも1つの核酸塩基部分が前記[化1]から選択され、式中、R1は、Hまたは保護基であり、かつ、Rは、遺伝子認識試薬中の核酸または核酸類似体骨格モノマーの残基である、遺伝子認識試薬。
[2]R1の1以上の例がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから場合により選択される保護基である、上記[1]に記載の遺伝子認識試薬。
[3]前記骨格がDNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート、ロックド核酸、非ロックド核酸、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸、トレオース核酸、もしくはグリコール核酸骨格、またはそれらの任意の組合せから1つ選択される、上記[1]に記載の遺伝子認識試薬。
[4]前記骨格が、ガンマペプチド核酸(γPNA)骨格などのペプチド核酸(PNA)骨格、場合により、Rが前記[化5]であり、式中、R
2
、R
3
およびR
4
は独立に、H、アミノ酸側鎖、直鎖もしくは分岐(C
1
-C
8
)アルキル、(C
2
-C
8
)アルケニル、(C
2
-C
8
)アルキニル、(C
1
-C
8
)ヒドロキシアルキル、(C
3
-C
8
)アリール、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
3
-C
8
)アリール(C
1
-C
6
)アルキレン、(C
3
-C
8
)シクロアルキル(C
1
-C
6
)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2
-CH
2
-)残基を含んでなる前記のもののPEG化部分、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
q
OP
l
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
q
-NHP
1
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
-0)
q
-SP
1
および-CH
2
-(SCH
2
-CH
2
)
q
-SP
1
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-OH、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-NH
2
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-NHC(NH)NH
2
、または-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-S-S[CH
2
CH
2
]
s
NHC(NH)NH
2
であり、ここで、P
1
は、H、(C
1
-C
8
)アルキル、(C
2
-C
8
)アルケニル、(C
2
-C
8
)アルキニル、(C
3
-C
8
)アリール、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
3
-C
8
)アリール(C
1
-C
6
)アルキレンおよび(C
3
-C
8
)シクロアルキル(C
1
-C
6
)アルキレンからなる群から選択され;qは、0~10(含む)の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50(含む)の整数であり;R
2
およびR
3
は異なり、R
2
またはR
3
の一方はHであり、かつ、Baseは核酸塩基部分であるγPNA骨格である、上記[1]に記載の遺伝子認識試薬。
[5]R
3
がHであり、R
2
が、1~12個の(-O-CH
2
-CH
2
-)残基の1以上のPEG部分で場合によりPEG化されていてもよいアミノ酸側鎖である、上記[4]に記載の遺伝子認識試薬。
[6]構造:前記[化6]を有し、Mの各例は骨格モノマー残基であり、かつ、Bの各例は核酸塩基部分であり、Bの少なくとも1つの例は二価核酸塩基部分であり、Eは独立に末端基であり、かつ場合により、「n」は0または1~48の正の整数である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
[7]R1の総てがHである、上記[1]に記載の遺伝子認識試薬。
[8]構造:前記[化1]を有し、R1はHまたは保護基であり、かつ、Rは、H;保護基;反応性基;固相基板;または核酸もしくは核酸類似体骨格モノマーまたは核酸もしくは核酸類似体ポリマー中のそれらの残基である、化合物。
[9]Rがカルボキシル、ヒドロキシル、アミン、シアナート、チオール、エポキシド、ビニル、アリル、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アジド、アルキニル、マレイミド、ヒドラジド、テトラジン、ホスホラミダイト、シクロアルキン、ニトリル、または(CH
2
)
n
CO
2
Hまたは(CH
2
)
n
CO
2
Y(ここで、n=1~5かつY=脱離基)などの反応性基である、上記[8]に記載の化合物。
[10]Rが核酸または核酸類似体骨格モノマーである、上記[8]に記載の化合物。
[11]Rがシリコンウエハー、マルチウェルディッシュ、またはポリマービーズ、および場合によりアレイなどの固相基板である、上記[8]に記載の化合物。
[12]R1が、保護基、例えば、メチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから1以上選択される保護基である、上記[8]に記載の化合物。
[13]Rがペプチド核酸骨格モノマー、例えば、ガンマペプチド核酸(γPNA)骨格モノマー、および場合により、構造:前記[化3]を有するγPNA骨格モノマーであり、ここで、R
2
、R
3
およびR
4
は独立に、H、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
1
-C
8
)アルキル、(C
2
-C
8
)アルケニル、(C
2
-C
8
)アルキニル、(C
1
-C
8
)ヒドロキシアルキル、(C
3
-C
8
)アリール、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
3
-C
8
)アリール(C
1
-C
6
)アルキレン、(C
3
-C
8
)シクロアルキル(C
1
-C
6
)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2
-CH
2
-)残基を含んでなる前記のもののPEG化部分、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
q
OP
l
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
q
-NHP
1
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
-0)
q
-SP
1
および-CH
2
-(SCH
2
-CH
2
)
q
-SP
1
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-OH、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-NH
2
、-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-NHC(NH)NH
2
、または-CH
2
-(OCH
2
-CH
2
)
r
-S-S[CH
2
CH
2
]
s
NHC(NH)NH
2
であり、ここで、P
1
は、H、(C
1
-C
8
)アルキル、(C
2
-C
8
)アルケニル、(C
2
-C
8
)アルキニル、(C
3
-C
8
)アリール、(C
3
-C
8
)シクロアルキル、(C
3
-C
8
)アリール(C
1
-C
6
)アルキレンおよび(C
3
-C
8
)シクロアルキル(C
1
-C
6
)アルキレンからなる群から選択され;qは、0~10(含む)の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50(含む)の整数であり;R
2
およびR
3
は異なり、R
2
またはR
3
の一方はHであり、R
5
はHまたは保護基であり、かつ、Baseは核酸塩基部分である、上記[8]に記載の化合物。
[14]Rが、ホスホロチオエート骨格モノマー、ロックド核酸骨格モノマー、非ロックド核酸骨格モノマー、2’-O-メチル置換RNA骨格モノマー、モルホリノ核酸骨格モノマー、トレオース核酸骨格モノマー、またはグリコール核酸骨格モノマーから選択される核酸類似体骨格モノマーである、上記[8]に記載の化合物。
[15]Rがリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸、例えば、リボースまたはデオキシリボースの5’一リン酸、二リン酸、または三リン酸である、上記[8]に記載の化合物。
[16]上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬または化合物と薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる組成物。
[17]カートリッジなどの容器内に上記[1]~[15]のいずれか一項の遺伝子認識試薬または化合物を含んでなり、Rが核酸または核酸類似体骨格モノマーである、キット。
[18]上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を含んでなるアレイ。
[19]上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を、核酸を含んでなるサンプルと接触させること、および遺伝子認識試薬と核酸との結合を検出することを含んでなる、核酸内の標的配列の検出方法。
[20]核酸サンプルを上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させること、前記遺伝子認識試薬から前記核酸サンプルを分離すること、前記遺伝子認識試薬に結合した前記遺伝子認識試薬に結合したいずれの核酸も残すこと、および前記遺伝子認識試薬に結合した任意の核酸から前記遺伝子認識試薬を分離することを含んでなる、標的配列を含む核酸の単離および精製方法。
以下の実施例で本発明の様々な態様を例示する。
【実施例】
【0058】
上記に示すように、米国特許公開第20160083434 A1号には、本明細書に記載の二価核酸塩基の第一世代対応物およびそのような化合物の合成方法が記載されている。以下に、選択された第二世代核酸塩基の例示的合成方法、および関連のNMRデータを示す。本明細書に記載のさらなる化合物は、標準的な化学合成法を用いて合成することができる。
【0059】
実施例1-第二世代二価核酸塩基の合成
図6Aおよび6Bは、核酸塩基JB1bのそれぞれ合成スキームおよびNMRスペクトルを示す。
【0060】
図7Aおよび7Bは、核酸塩基JB3bのそれぞれ合成スキームおよびNMRスペクトルを示す。
【0061】
図8Aおよび8Bは、核酸塩基JB4cのそれぞれ合成スキームおよびスペクトルを示す。
【0062】
以下の符番された項は、本発明の様々な態様を例示する。
【0063】
1.核酸または核酸類似体骨格に結合した複数の核酸塩基部分を含んでなる遺伝子認識試薬であって、少なくとも1つの核酸塩基部分が
【化7】
から選択され、式中、R1は、Hまたは保護基であり、かつ、Rは、遺伝子認識試薬中の核酸または核酸類似体骨格モノマーの残基である、遺伝子認識試薬。
【0064】
2.R1の1以上の例がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから場合により選択される保護基である、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0065】
3.前記骨格がDNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート、ロックド核酸、非ロックド核酸、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸、トレオース核酸、もしくはグリコール核酸骨格、またはそれらの任意の組合せから1つ選択される、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0066】
4.前記骨格がペプチド核酸(PNA)骨格である、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0067】
5.前記骨格がガンマペプチド核酸(γPNA)骨格である、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0068】
6.前記骨格が、2~50個の(-O-CH2-CH2-)残基の1以上のPEG部分でPEG化されている、第5項に記載の遺伝子認識試薬。
【0069】
7.前記骨格が、Rが
【化8】
であり、ここで、R
2、R
3およびR
4は独立に、H、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
1-C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレン、(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2-CH
2-)残基を含んでなる前記のもののPEG化部分、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
l、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1
、および-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレンおよび(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレンからなる群から選択され;qは、0~10(含む)の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50(含む)の整数であり;R
2およびR
3は異なり、R
2またはR
3の一方はHであり、かつ、Baseは核酸塩基部分である、γPNA骨格である、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0070】
8.R3がHであり、R2が、1~12個の(-O-CH2-CH2-)残基の1以上のPEG部分で場合によりPEG化されていてもよいアミノ酸側鎖である、第7項に記載の遺伝子認識試薬。
【0071】
9.前記核酸塩基が核酸の標的配列に相補的な配列で配置される、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0072】
10.3~25個の核酸塩基を有する、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0073】
11.構造:
【化9】
を有し、Mの各例は骨格モノマー残基であり、かつ、Bの各例は核酸塩基部分であり、Bの少なくとも1つの例は二価核酸塩基部分であり、Eは独立に末端基であり、かつ場合により、「n」は0または1~48の正の整数である、第1項に記載の遺伝子認識試薬。
【0074】
12.R1の総てがHである、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0075】
13.JB1b、JB1c、およびJB1dから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0076】
14.核酸塩基JB2bを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0077】
15.核酸塩基JB3bを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0078】
16.JB4b、JB4c、JB4d、およびJB4eから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0079】
17.JB5b、JB5c、およびJB5dから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0080】
18.核酸塩基JB6bを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0081】
19.JB7eおよびJB7fから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0082】
20.核酸塩基JB8bを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0083】
21.核酸塩基JB9cを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0084】
22.JB10bおよびJB10cから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0085】
23.JB11b、JB11c、JB11d、およびJB11eから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0086】
24.核酸塩基JB12bを含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0087】
25.JB13b、JB13c、JB13d、JB13e、JB13f、JB13g、JB13h、およびJB13iから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0088】
26.JB1b、JB1c、JB1d、JB2b、JB3b、B4b、JB4c、JB4d、およびJB4eから選択される二価核酸塩基を含んでなる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【0089】
27.構造:
【化10】
を有し、R1はHまたは保護基であり、かつ、Rは、H;保護基;反応性基;固相基板;または核酸もしくは核酸類似体骨格モノマーまたは核酸もしくは核酸類似体ポリマー中のそれらの残基である、化合物。
【0090】
28.Rがカルボキシル、ヒドロキシル、アミン、シアナート、チオール、エポキシド、ビニル、アリル、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、アジド、アルキニル、マレイミド、ヒドラジド、テトラジン、ホスホラミダイト、シクロアルキン、ニトリル、または(CH2)nCO2Hまたは(CH2)nCO2Y(ここで、n=1~5かつY=脱離基)などの反応性基である、第27項に記載の化合物。
【0091】
29.Rが核酸または核酸類似体骨格モノマーである、第27項に記載の化合物。
【0092】
30.Rが核酸または核酸類似体ポリマー中の核酸または核酸類似体骨格モノマーの残基である、第27項に記載の化合物。
【0093】
31.Rがシリコンウエハー、マルチウェルディッシュ、またはポリマービーズ、および場合によりアレイなどの固相基板である、第27項に記載の化合物。
【0094】
32.JB1b、JB1c、およびJB1dから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0095】
33.JB2bの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0096】
34.JB3bの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0097】
35.JB4b、JB4c、JB4d、およびJB4eから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0098】
36.JB5b、JB5c、およびJB5dから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0099】
37.JB6bの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0100】
38.JB7eおよびJB7fから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0101】
39.JB8bの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0102】
40.JB9cの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0103】
41.JB10bおよびJB10cから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0104】
42.JB11b、JB11c、JB11d、およびJB11eから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0105】
43.JB12bの構造を有する、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0106】
44.JB13b、JB13c、JB13d、JB13e、JB13f、JB13g、JB13h、およびJB13iから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0107】
45.JB1b、JB1c、JB1d、JB2b、JB3b、B4b、JB4c、JB4d、およびJB4eから選択される、第27項~第31項のいずれか一項に記載の化合物。
【0108】
46.R1が保護基である、第27項~第45項のいずれか一項に記載の化合物。
【0109】
47.前記保護基がメチル、ホルミル、エチル、アセチル、アニシル、ベンジル、ベンゾイル、カルバメート、トリフルオロアセチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、t-Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、4-メチルベンジル、4-ニトロフェニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、チオアニジル、チオクレシル、cbz(カルボベンジルオキシ)、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、4-トルエンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホナート、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2-ニトロフェニルスルフェニル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル、およびp-ブロモベンゼンスルホニルから1以上選択される、第46項に記載の化合物。
【0110】
48.Rがペプチド核酸ポリマー中のペプチド核酸骨格モノマーまたはその残基である、第27項に記載の化合物。
【0111】
49.前記ペプチド核酸骨格モノマーがガンマペプチド核酸(γPNA)骨格モノマーである、第48項に記載の化合物。
【0112】
50.前記ペプチド核酸骨格モノマーは、2~50個の(-O-CH2-CH2-)残基の1以上のPEG部分でPEG化されている、第48項または第49項に記載の化合物。
【0113】
51.ガンマペプチド核酸(γPNA)骨格モノマーが
【化11】
であり、ここで、R
2、R
3およびR
4は独立に、H、アミノ酸側鎖、直鎖または分岐(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
1-C
8)ヒドロキシアルキル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレン、(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレン、1~50個の(-O-CH
2-CH
2-)残基を含んでなる前記のもののPEG化部分、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
qOP
l、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
q-NHP
1
、および-CH
2-(SCH
2-CH
2)
q-SP
1、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-OH、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NH
2、-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-NHC(NH)NH
2、または-CH
2-(OCH
2-CH
2)
r-S-S[CH
2CH
2]
sNHC(NH)NH
2であり、ここで、P
1は、H、(C
1-C
8)アルキル、(C
2-C
8)アルケニル、(C
2-C
8)アルキニル、(C
3-C
8)アリール、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
3-C
8)アリール(C
1-C
6)アルキレンおよび(C
3-C
8)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキレンからなる群から選択され;qは、0~10(含む)の整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に、1~50(含む)の整数であり;R
2およびR
3は異なり、R
2またはR
3の一方はHであり、R
5はHまたは保護基であり、かつ、Baseは核酸塩基部分である、第49項に記載の化合物。
【0114】
52.Rが、ホスホロチオエート骨格モノマー、ロックド核酸骨格モノマー、非ロックド核酸骨格モノマー、2’-O-メチル置換RNA骨格モノマー、モルホリノ核酸骨格モノマー、トレオース核酸骨格モノマー、またはグリコール核酸骨格モノマーから選択される核酸類似体骨格モノマーである、第27項に記載の化合物。
【0115】
53.Rがリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸、例えば、リボースまたはデオキシリボースの5’一リン酸、二リン酸、または三リン酸である、第27項に記載の化合物。
【0116】
54.容器内に第27項~第53項のいずれか一項に記載の化合物を含んでなり、Rが核酸または核酸類似体骨格モノマーである、キット。
【0117】
55.JB1系核酸塩基、JB2系核酸塩基、JB3系核酸塩基、およびJB4系核酸塩基のそれぞれのうち少なくとも1つ、および場合によりJB5系核酸塩基、JB6系核酸塩基、JB7系核酸塩基、JB8系核酸塩基、JB9系核酸塩基、JB10系核酸塩基、JB11系核酸塩基、JB12系核酸塩基、JB13系核酸塩基、JB14、JB15、およびJB16のうち1以上、または場合により総てを含んでなるモノマーをそれぞれ別の容器にさらに含んでなる、第54項に記載のキット。
【0118】
56.第1項~第26項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を含んでなるアレイ。
【0119】
57.第1項~第26項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬を、核酸を含んでなるサンプルと接触させること、および遺伝子認識試薬と核酸との結合を検出することを含んでなる、核酸内の標的配列の検出方法。
【0120】
58.核酸サンプルを第1項~第26項のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬と接触させること、前記遺伝子認識試薬から前記核酸サンプルを分離すること、前記遺伝子認識試薬に結合した前記遺伝子認識試薬に結合したいずれの核酸も残すこと、および前記遺伝子認識試薬に結合した任意の核酸から前記遺伝子認識試薬を分離することを含んでなる、標的配列を含む核酸の単離および精製方法。
【0121】
59.前記遺伝子認識試薬が基板上に固定化され、核酸を前記基板と接触させること、前記基板を洗浄して結合していない核酸を前記基板から除去すること、前記基板に結合された結合核酸を残すこと、および結合した核酸を前記基板から溶出させることを含んでなる、第58項に記載の方法。
【0122】
60.第1項~第53項のいずれか一項による遺伝子認識試薬または化合物と薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる組成物。
【0123】
本発明をある特定の例示的実施形態、分散性の組成物およびそれらの使用に関して記載してきた。しかしながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくこれらの例示的実施形態のいずれかの様々な置換、修飾または組合せを行えることが当業者には認識されるであろう。よって、本発明は、これらの例示的実施形態の記載に限定されず、出願当初の添付の特許請求の範囲により限定される。