(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】フレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241021BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H05K1/02 J
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2020007725
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-198103(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093069(WO,A1)
【文献】特開2000-122039(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003998(WO,A1)
【文献】特開2017-113088(JP,A)
【文献】特開2017-118109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1保護部材と、
前記第1面上に位置する可撓性の絶縁基材と、前記絶縁基材上に配置された無機絶縁層と、前記無機絶縁層上に配置された第1配線層と、を備える線部と、
前記線部を覆う第2保護部材と、を備え、
前記第1保護部材は、前記第1面において、谷部及び山部を有し、
前記線部は、波状に形成され、前記谷部及び前記山部の上に位置し
、平面視において、第1方向に延出し前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置された複数の波状の第1線部と、前記第2方向に延出し前記第1方向に並んで配置された複数の波状の第2線部と、前記第1線部と前記第2線部の交差部に設けられた島状部と、を含み、
前記無機絶縁層は、前記島状部にのみ配置される、フレキシブル基板。
【請求項2】
さらに、前記線部は、前記第1配線層上に配置された有機絶縁層と、前記有機絶縁層上に配置された第2配線層と、を備え、
前記有機絶縁層は、前記島状部及び前記無機絶縁層と重畳する領域において複数の開口部を有し、
前記第1配線層と前記第2配線層とが複数の前記開口部を介して接続される、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記線部は、前記山部の頂部に位置する第1折り返し点を有する、請求項1又は2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記線部は、前記谷部の底部に位置する第2折り返し点を有する、請求項1又は2に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記島状部に位置する電気的素子を備え、
前記電気的素子は、前記谷部に位置する、請求項
3に記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記島状部に位置する電気的素子を備え、
前記電気的素子は、前記山部に位置する、請求項4に記載のフレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性及び伸縮性を有したフレキシブル基板の利用が種々の分野で検討されている。一例を挙げると、マトリクス状に電気的素子が配列されたフレキシブル基板を電子機器の筐体や人体等の曲面に貼り付ける利用形態が考えられる。電気的素子としては、例えばタッチセンサや温度センサ等の各種センサや表示素子が適用され得る。
【0003】
フレキシブル基板においては、屈曲や伸縮による応力で配線が損傷しないように対策を講じる必要がある。このような対策としては、例えば、配線を支持する基材にハニカム形状の開口を設けることや、配線を蛇行した形状(ミアンダ形状)とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-198101号公報
【文献】特開2015-198102号公報
【文献】特開2017-118109号公報
【文献】特開2017-113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、伸長率を向上することが可能、及び、クラックの発生を抑制することが可能なフレキシブル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、第1面を有する第1保護部材と、前記第1面上に位置する可撓性の絶縁基材と、前記絶縁基材上に配置された配線層と、を備える線部と、前記線部を覆う保護部材と、を備え、前記第1保護部材は、前記第1面において、谷部及び山部を有し、前記線部は、波状に形成され、前記谷部及び前記山部の上に位置する、フレキシブル基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るフレキシブル基板の概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板の一部を拡大した平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したフレキシブル基板の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図2においてE-Fで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るフレキシブル基板の概略的な平面図である。
【
図11】
図11は、
図10においてG-Hで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るフレキシブル基板100の概略的な平面図である。
本実施形態においては、図示したように第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3を定義する。第1方向D1及び第2方向D2は、フレキシブル基板100の主面と平行であり、互いに交わる方向である。第3方向D3は、第1方向D1、第2方向D2に対して垂直な方向であり、フレキシブル基板100の厚さ方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2は、本実施形態では垂直に交わるが、垂直以外の角度で交わってもよい。本明細書において、第3方向D3を示す矢印の先端に向かう方向を「上」と称し、矢印の先端から逆に向かう方向を「下」と称する。また、第3方向D3を示す矢印の先端側にフレキシブル基板100を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向D1及び第2方向D2で規定されるD1-D2平面に向かって見ることを平面視という。
【0010】
フレキシブル基板100は、複数の走査線1、複数の信号線2、複数の電気的素子3、第1保護部材7、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2を有している。走査線1、信号線2、電気的素子3、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2は、第1保護部材7の上に位置している。複数の走査線1は、それぞれ第1方向D1に延出し第2方向D2に並んでいる。複数の走査線1は、それぞれ走査線ドライバDR1に接続されている。複数の信号線2は、それぞれ第2方向D2に延出し第1方向D1に並んでいる。複数の信号線2は、それぞれ信号線ドライバDR2に接続されている。複数の電気的素子3は、それぞれ走査線1と信号線2との交差部に位置し、走査線1及び信号線2と電気的に接続されている。なお、電気的素子3の機能の詳細については後述する。
【0011】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板100の一部を拡大した平面図である。
フレキシブル基板100は、上記に加えて、走査線1及び信号線2を支持する絶縁基材4を備えている。第1保護部材7の絶縁基材4が配置されている面は、
図3に示すように複数の山部120、及び、複数の谷部110を有しているが、
図2においては、D1-D2平面での配置について説明する。
【0012】
絶縁基材4は、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の第1部分PT1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の第2部分PT2と、第1部分PT1と第2部分PT2との交差部に設けられた複数の島状部ILと、を有している。第1部分PT1及び第2部分PT2は、それぞれ波状に形成されている。島状部ILは、第1部分PT1と第2部分PT2に接続されている。絶縁基材4は、可撓性を有し、例えばポリイミドで形成することができるが、この例に限られない。
【0013】
走査線1は、第1部分PT1上に位置し、波状に配置されている。信号線2は、第2部分PT2上に位置し、波状に配置されている。走査線1及び信号線2は、フレキシブル基板100が備える配線の一例である。走査線1及び信号線2は、例えば金属材料や透明導電材料で形成することができ、単層構造であってもよいし積層構造であってもよい。フレキシブル基板100は、走査線1及び信号線2の他に、電気的素子3に給電する電源線などの他種の配線を備えてもよい。
【0014】
走査線1は、実線で示す第1部分11と、破線で示す第2部分12と、を有している。第2部分12は、電気的素子3と重畳している。第1部分11と第2部分12は、互いに異なる層に配置されており、コンタクトホールCH1、CH2を通じて電気的に接続されている。
【0015】
走査線1は、電気的素子3に走査信号を供給する。例えば電気的素子3がセンサのような信号の出力を伴うものである場合、信号線2には電気的素子3からの出力信号が供給される。また、例えば電気的素子3が発光素子やアクチュエータのように入力される信号に応じて作動するものである場合、信号線2には駆動信号が供給される。走査信号の供給源、駆動信号の供給源又は出力信号を処理するプロセッサなどを含むコントローラは、フレキシブル基板100に設けられてもよいし、フレキシブル基板100に接続される機器に設けられてもよい。
【0016】
電気的素子3は、島状部IL上に位置している。電気的素子3は島状部ILよりも小さく、
図2においては電気的素子3の全体が島状部IL内に位置している。例えば電気的素子3は、センサ、半導体素子、又はアクチュエータなどである。例えばセンサとしては、可視光や近赤外光を受光する光学センサ、温度センサ、圧力センサ、又はタッチセンサなどを適用できる。例えば半導体素子としては、発光素子、受光素子、ダイオード、又はトランジスタなどを適用できる。電気的素子3が発光素子である場合、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブルディスプレイを実現できる。発光素子としては、例えばミニLEDやマイクロLEDといった100μm前後の大きさを有する発光ダイオードや有機エレクトロルミネッセンス素子を適用することができる。電気的素子3がアクチュエータである場合、例えば圧電素子を適用できる。なお、電気的素子3は、ここで例示したものに限られず、その他にも種々の機能を有する素子を適用し得る。電気的素子3は、コンデンサや抵抗などであってもよい。また、電気的素子3の配置位置や形状は
図2に示した例に限らない。
【0017】
本実施形態においては、絶縁基材4、走査線1、信号線2、後述する第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6を総称して線部LPとする。線部LPは、第1保護部材7上に位置している。線部LPは、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の波状の第1線部LP1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の波状の第2線部LP2と、第1線部LP1と第2線部LP2の交差部に設けられた島状部LP3と、を含んでいる。第1線部LP1は、上記した絶縁基材4の第1部分PT1と、走査線1と、を含んでいる。第2線部LP2は、絶縁基材4の第2部分PT2と、信号線2と、を含んでいる。また、線部LPは、隣り合う2つの第1線部LP1と、隣り合う2つの第2線部LP2とによって囲まれた開口OPを形成している。開口OPは、第1方向D1及び第2方向D2にマトリクス状に並んでいる。電気的素子3は、島状部LP3に位置している。
【0018】
図3は、
図2に示したフレキシブル基板100の斜視図である。
第1保護部材7は、絶縁基材4が配置された第1面SF1を有している。第1保護部材7は、第1面SF1において、複数の谷部110、及び、複数の山部120を有している。谷部110及び山部120は、第1方向D1に交互に並び、また、第2方向D2に交互に並んでいる。このような谷部110及び山部120は、第1保護部材7を形成する伸縮樹脂に、段階的な厚さを有するマスクを用いてアッシングすることで形成される。
【0019】
線部LPは、波状に形成され、谷部110及び山部120の上に位置している。それぞれの谷部110は、最も低い位置である底部BPを有している。また、それぞれの山部120は、最も高い位置である頂部TPを有している。山部120は、頂部TPから底部BPに向かって傾斜した傾斜部40を有している。また、線部LPは、延出する方向が転換する折り返し点30を有している。線部LPは、山部120の頂部TPに位置する折り返し点(第1折り返し点)30Aと、傾斜部40に位置する折り返し点30Bと、を有している。図示した例では、折り返し点30Aは、2つの折り返し点30Bの間に位置している。電気的素子3は、谷部110に位置している。
【0020】
図4は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
フレキシブル基板100は、上述の要素の他に、第1有機絶縁膜5と、第2有機絶縁膜6と、第2保護部材8と、をさらに備えている。
【0021】
線部LP1は、第1保護部材7の第1面SF1に位置している。線部LP1は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。線部LP1は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、走査線1によって構成されている。
【0022】
絶縁基材4の第1部分PT1は、第1面SF1上に位置している。第1有機絶縁膜5は、絶縁基材4を覆っている。走査線1は、第1有機絶縁膜5の上に位置している。第2有機絶縁膜6は、第1有機絶縁膜5及び走査線1を覆っている。第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6は、何れも有機材料で形成されている。
【0023】
第2保護部材8は、線部LP1の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、第1保護部材7の第1面SF1に接している。すなわち、第2保護部材8は、走査線1、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6を覆っている。第2保護部材8は、線部LP1のうち、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6に接している。第2保護部材8は、ポリ-p-キシリレン(PPX: poly-para-xylylenes)構造体、例えばパリレン(登録商標)で形成されている。
【0024】
図4に示す断面において、折り返し点30Aは、山部120の頂部TPに位置している。また、谷部110の底部BPは、開口OPの略中央に位置している。第2保護部材8は、第1保護部材7と接する第2面SF2を有している。第2面SF2は、第1面SF1の谷部110と対向する位置において山部210を有し、山部120と対向する位置において谷部220を有している。
【0025】
図5は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
図6は、歪みの定義を示す図である。
線部LP2は、第1面SF1に位置している。線部LP2は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。線部LP2は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、信号線2によって構成されている。
【0026】
絶縁基材4の第2部分PT2は、第1面SF1上に位置している。第1有機絶縁膜5は、絶縁基材4を覆っている。第2有機絶縁膜6は、第1有機絶縁膜5を覆っている。信号線2は、第2有機絶縁膜6の上に位置している。第2保護部材8は、線部LP2の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、第1保護部材7の第1面SF1に接している。すなわち、第2保護部材8は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6、信号線2を覆い、それぞれに接している。
図5に示す断面において、折り返し点30Aは、山部120の頂部TPに位置している。また、谷部110の底部BPは、開口OPの略中央に位置している。
【0027】
フレキシブル基板100は、引張りや曲げによる伸長時に線部LPに歪みが生じるため、走査線1や信号線2が断線する恐れがある。ここで、本実施形態の歪みの定義について説明する。
図6に示すように、元の長さLの物体が力Fによって伸びΔL分だけ伸ばされた場合、歪みε=伸び/元の長さ=ΔL/Lで表される。歪みεは、最大主歪みである。
【0028】
本実施形態によれば、第1保護部材7は、谷部110及び山部120を有している。そのため、第1面SF1が平坦である場合と比較して、第3方向D3に線部LPの長さを拡大することができる。よって、フレキシブル基板100の伸長時に線部LPに生じる歪みを低減することができる。これにより、走査線1及び信号線2がクラックに至るまでのフレキシブル基板100の伸度を向上することができる。また、走査線1及び信号線2のクラックの発生を抑制することができる。さらに、配線に生じる歪みを低減することができるため、第1保護部材7及び第2保護部材8の厚さを薄くすることができる。
【0029】
図7は、
図2においてE-Fで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
図7は、電気的素子3を含む断面を示している。
電気的素子3は、第1保護部材7の第1面SF1に形成された谷部110に配置されている。絶縁基材4は、上面4A及び下面4Bを有している。下面4Bは、谷部110に沿って湾曲している。なお、上面4Aも下面4Bに沿って湾曲していても良い。
【0030】
電気的素子3の下方には、絶縁基材4の島状部ILが配置されている。これにより、電気的素子3を良好に支持できる。電気的素子3と島状部ILとの間には、無機絶縁層9(パッシベーション層)が形成されている。無機絶縁層9は、平面視においては電気的素子3と重畳する島状である。走査線1の第1部分11は、第1有機絶縁層5の上に配置され、第2有機絶縁膜6によって覆われている。走査線1の第2部分12は、無機絶縁層9の上(すなわち第1有機絶縁層5の下)に配置されている。第2部分12は、電気的素子3と電気的に接続されている。
図7の例においては、第2部分12の端部が第1有機絶縁層5に覆われている。
【0031】
上述のコンタクトホールCH1、CH2は、島状部IL及び無機絶縁層9と平面視で重畳する領域において、第1有機絶縁層5に設けられている。走査線1の第1部分11は、コンタクトホールCH1、CH2にそれぞれ配置された接続部材CM1、CM2を介して第2部分12と電気的に接続されている。接続部材CM1、CM2は、第1部分11の一部であってもよいし、第1部分11とは別途に設けられてもよい。
【0032】
上述したように、
図7に示した構成によれば、電気的素子3と絶縁基材4との間には島状の無機絶縁層9が配置されている。この無機絶縁層9により電気的素子3や走査線1の第2部分12が保護されるので、フレキシブル基板100の信頼性を高めることができる。一方、無機膜は有機膜に比べてクラックが生じやすいため、無機膜の上に配線を形成した場合にはクラックに伴う断線が生じ得る。しかしながら、
図7においては走査線1の第1部分11の下方には無機絶縁層9が設けられていない。したがって、走査線1の断線が生じにくい。図示しない信号線についても同様である。さらに、無機絶縁層9が仮にフレキシブル基板100の全体に設けられている場合にはフレキシブル基板100の伸縮性及び可撓性を阻害し得るが、島状に無機絶縁層9を形成すればこのような問題が生じない。
【0033】
また、異なる層に配置された走査線1の第1部分11と第2部分12をコンタクトホールCH1、CH2で接続する構成としたことにより、電気的素子3の近傍における設計の自由度が向上する。これらのコンタクトホールCH1、CH2は、無機絶縁層9の上方に設けられているため、第1部分11と第2部分12の接続位置での信頼性も高まる。
【0034】
図8は、第1実施形態の変形例を示す斜視図である。
図8に示す構成は、
図3に示した構成と比較して、山部120の頂部TPに電気的素子3が位置している点で相異している。
線部LPは、谷部110の底部BPに位置する折り返し点(第2折り返し点)30Cと、傾斜部40に位置する折り返し点30Dと、を有している。図示した例では、折り返し点30Cは、2つの折り返し点30Dの間に位置している。
このような変形例においても上記した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係るフレキシブル基板100の概略的な平面図である。
第1保護部材7の絶縁基材4が配置されている面は、
図10に示すように複数の山部120、及び、複数の谷部110を有しているが、
図9においては、D1-D2平面での配置について説明する。
【0036】
絶縁基材4は、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置されている。絶縁基材4は、それぞれ波状に形成されている。配線WR1及びWR2は、絶縁基材4上に位置し、波状に配置されている。配線WR1及びWR2は、例えば金属材料や透明導電材料で形成することができ、単層構造であってもよいし積層構造であってもよい。
【0037】
図9においては、絶縁基材4、配線WR1及びWR2、後述する第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6を総称して線部LP10とする。線部LP10は、第1保護部材7上に位置している。複数の波状の線部LP10は、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置されている。線部LP10は、折り返し点30から隣の折り返し点30までに幅Wを有している。幅Wは、例えば、約600μmである。折り返し点30における線部LP10の曲率Rは、約75mmである。
【0038】
図10は、
図9に示したフレキシブル基板100の斜視図である。
第1保護部材7は、絶縁基材4が配置された第1面SF1を有している。第1保護部材7は、第1面SF1において、複数の谷部110、及び、複数の山部120を有している。谷部110及び山部120は、第2方向D2に延出し、第1方向D1に交互に並んでいる。
【0039】
線部LP10は、波状に形成され、谷部110及び山部120の上に位置している。それぞれの谷部110は、最も低い位置である底部BPを有している。また、それぞれの山部120は、最も高い位置である頂部TPを有している。山部120は、頂部TPから底部BPに向かって傾斜した傾斜部40を有している。また、線部LP10は、延出する方向が転換する折り返し点30を有している。線部LP10は、山部120の頂部TPに位置する折り返し点30Eと、傾斜部40に位置する折り返し点30Fと、を有している。図示した例では、線部LP10の折り返し点30E及び30Fは、交互に並んでいる。隣合う2つの頂部TP間の距離Dは、例えば、約600μmである。また、傾斜部40に位置する折り返し点30Fに係る歪みは、第1面SF1が平面である場合と比較して、約25%低減される。
【0040】
図11は、
図10においてG-Hで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
線部LP10は、第1保護部材7の第1面SF1に位置している。線部LP10は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。線部LP10は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、配線WR1及びWR2によって構成されている。
【0041】
絶縁基材4は、第1面SF1上に位置している。配線WR1は、絶縁基材4の上に位置している。第1有機絶縁膜5は、配線WR1及び絶縁基材4を覆っている。配線WR2は、第1有機絶縁膜5の上に位置している。第2有機絶縁膜6は、第1有機絶縁膜5及び配線WR2を覆っている。
【0042】
第2保護部材8は、線部LP10の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、第1保護部材7の第1面SF1に接している。すなわち、第2保護部材8は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、配線WR1及びWR2を覆っている。第2保護部材8は、線部LP10のうち、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6に接している。
【0043】
第1保護部材7は、谷部110と山部120との間に斜面40を有している。断面において、それぞれの斜面40には、線部LP10の断面2つが位置している。配線WR1及びWR2に係る歪みは、第1保護部材7及び第2保護部材8の厚さを薄くすると小さくなり、厚くすると大きくなる。配線WR1及びWR2に係る歪みは、第1保護部材7及び第2保護部材8を厚くするほど飽和する。第2保護部材8は、第1保護部材7と接する第2面SF2を有している。第2面SF2は、第1面SF1の谷部110と対向する位置において山部210を有し、山部120と対向する位置において谷部220を有している。
【0044】
なお、第2実施形態は、第1保護部材7の第1面SF1が水平である場合に対して、配線の歪みが低減されるという効果がシミュレーションによって確認されている。その際には、1本の配線が用いられ、配線の幅は、15μm、30μmとし、配線の厚さは、10μmとして検証した。また、第1保護部材7及び第2保護部材8を合わせた膜厚は310μmである。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、伸長率を向上することが可能、及び、クラックの発生を抑制することが可能なフレキシブル基板を得ることができる。
【0046】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100…フレキシブル基板、7…第1保護部材、SF1…第1面、
4…絶縁基材、1…走査線、2…信号線、
LP、LP10…線部、LP1…第1線部、LP2…第2線部、LP3…島状部、
3…電気的素子、8…第2保護部材、
110…谷部、120…山部、TP…頂部、BP…底部、30…折り返し点。