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特許7573969防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置
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  • 特許-防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241021BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20241021BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20241021BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241021BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241021BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241021BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G02B5/02 B
B05D5/06 D
B05D7/04
B05D7/24 303A
B32B7/023
G02B1/14
G02F1/1335
G02F1/1335 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020018382
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124616
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】島谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】波多野 良知
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 美恵
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】橿本 英吾
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175725(JP,A)
【文献】特開2016-50950(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021388(WO,A1)
【文献】特開2006-330705(JP,A)
【文献】特開2010-102291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 5/02, 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有し、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記第1粒子および前記第2粒子の材質が、それぞれ有機粒子であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1)を満たし、
前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2)を満たし、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。

3.0<d1≦8.5[μm] (1)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)

前記数式(1)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【請求項2】
前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し1質量%以上である請求項1記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記凹凸に起因する外部ヘイズ値が5%以上である請求項1または2記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記第1粒子の質量の合計が、前記第2粒子の質量の合計に対し2/3以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を、前記数式(1)~(4)を満たすように形成する防眩性ハードコート層(B)形成工程を含み、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗工工程において、前記塗工液を、1000mm以上の幅で500m以上連続塗工する請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含む請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムを含む光学部材。
【請求項9】
偏光板である請求項8記載の光学部材。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム、または請求項8もしくは9記載の光学部材を含む画像表示装置。
【請求項11】
パブリックインフォメーションディスプレイである請求項10記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の、様々な画像表示装置には、前記画像表示装置表面における蛍光灯や太陽光等の外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するための防眩(アンチグレア)処理が施され、特に、画像表示装置の大画面化が進むのに伴い、防眩性のフィルムを装着した画像表示装置が増大している。
【0003】
防眩性のフィルムについて記載された文献は多数あるが、例えば、特許文献1等がある。また、防眩性フィルムとしては、防眩層がハードコート層を兼ねている防眩性ハードコートフィルムも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-110461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩性ハードコートフィルムは、視認性の観点から、外光の反射による映り込みが抑制されている必要がある。
【0006】
例えば、近年、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)の需要が増えてきている。PIDは、屋外で使用される場合も多い。屋外でディスプレイ(画像表示装置)を使用した場合、屋内での使用よりも、外光の反射による映り込みが起こりやすい。映り込みが起こった場合、映像が視認しづらくなるおそれがある。
【0007】
また、防眩性ハードコートフィルムは、長尺状の基材を搬送しながら、前記基材上に塗工液(防眩性ハードコート層形成材料)を連続的に塗工して製造されることが多い。しかし、そのようにして製造した防眩性ハードコートフィルムを画像表示装置に使用した場合、表示ムラが生じるおそれがある。前記表示ムラには、例えば、前記基材の搬送方向(前記基材の長手方向、以下「MD方向」ということがある。)の縞模様(以下「スジ」ということがある。)、および、MD方向に垂直な方向(以下「TD方向」ということがある。)の縞模様(以下「横ダン」ということがある。)がある。このような表示ムラは、防眩性ハードコート層形成材料を連続的に塗工する距離が長いと、いっそう起こりやすくなる。
【0008】
そこで、本発明は、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止された防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1)を満たし、
前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2)を満たし、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする。

3.0<d1≦8.5[μm] (1)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)

前記数式(1)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【0010】
本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を、前記数式(1)~(4)を満たすように形成する防眩性ハードコート層(B)形成工程を含み、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法である。
【0011】
本発明の光学部材は、本発明の防眩性ハードコートフィルムを含む光学部材である。
【0012】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性ハードコートフィルム、または本発明の光学部材を含む画像表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止された防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の防眩性ハードコートフィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0016】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し1質量%以上であってもよい。なお、本発明において、「重量」と「質量」とは、特に断らない限り、互いに読み替えてもよいものとする。例えば、「質量部」は「重量部」と読み替えてもよく、「重量部」は「質量部」と読み替えてもよく、「質量%」は「重量%」と読み替えてもよく、「重量%」は「質量%」と読み替えてもよいものとする。
【0017】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記凹凸に起因する外部ヘイズ値が5%以上であってもよい。
【0018】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記第1粒子の質量の合計が、前記第2粒子の質量の合計に対し2/3以上であってもよい。
【0019】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)における前記光透過性基材(A)と反対側の面上に、さらに、他の層が積層されていてもよい。
【0020】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)上に前記防眩性ハードコート層(B)および前記他の層が前記順序で積層され、前記他の層の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸が、前記数式(1)~(4)を満たしてもよい。
【0021】
本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、例えば、前記塗工工程において、前記塗工液を、1000mm以上の幅で500m以上連続塗工してもよい。
【0022】
本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の光学部材は、例えば、偏光板であってもよい。
【0024】
本発明の画像表示装置は、例えば、パブリックインフォメーションディスプレイであってもよい。
【0025】
[1.防眩性ハードコートフィルム]
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述のとおり、
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1)を満たし、
前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2)を満たし、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする。

3.0<d1≦8.5[μm] (1)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)

前記数式(1)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【0026】
図1の断面図に、本発明の防眩性ハードコートフィルムの構成の一例を示す。図示のとおり、この防眩性ハードコートフィルム10は、光透過性基材(A)11の一方の面上に、防眩性ハードコート層(B)12が積層されている。防眩性ハードコート層(B)12は、樹脂層12a中に第1粒子12b1および第2粒子12b2が含まれている。防眩性ハードコートフィルム10における防眩性ハードコート層(B)12側の最表面(防眩性ハードコート層(B)12の、光透過性基材(A)11と反対側の表面)には、凹凸が形成されている。前記凹凸の凸部の最大高さRyは、1.0μm以上7.0μm以下である。前記凹凸の平均傾斜角θaは、1.0°以上7.5°以下である。第1粒子12b1の重量平均粒子径d1は、3.0μmを越え8.5μm以下である。第2粒子12b2の重量平均粒子径d2は、1.0μm以上3.0μm以下である。
【0027】
なお、図1は例示であって、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、樹脂層12a中に、第1粒子12b1および第2粒子12b2以外の他のフィラー(充填材)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他のフィラーとしては、特に限定されないが、例えば、チキソトロピー付与剤(thixotropic agent)、屈折率調整、アンチブロッキング性付与を目的とした各種金属酸化物粒子等が挙げられる。また、防眩性ハードコート層(B)12は、図1のように他の層を介さずに光透過性基材(A)11上に直接積層されていてもよいが、一層または二層以上の他の層を介して光透過性基材(A)11上に積層されていてもよい。また、防眩性ハードコート層(B)12における光透過性基材(A)11と反対側の面上には、図1のように他の層が存在しなくてもよいが、さらに一層または二層以上の他の層が積層されていてもよい。
【0028】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、「防眩性ハードコート層(B)側の最表面」は、前記防眩性ハードコート層(B)側の最も外側の表面である。具体的には、「防眩性ハードコート層(B)側の最表面」は、防眩性ハードコート層(B)12における光透過性基材(A)11と反対側の面上に前記他の層が存在しない場合(例えば図1)は、前記防眩性ハードコート層(B)における前記光透過性基材(A)と反対側の表面である。また、「防眩性ハードコート層(B)側の最表面」は、防眩性ハードコート層(B)12における光透過性基材(A)11と反対側の面上に前記他の層が存在する場合は、前記他の層における前記光透過性基材(A)と反対側の最も外側の表面である。
【0029】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述のとおり、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止されている。具体的には、例えば、本発明の防眩性ハードコートフィルムによれば、屋外等での外光の映り込みも防止できる。また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、スジおよび横ダンが抑制または防止されていることにより、高品質な表示性能を有する。また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、長尺状の前記光透過性基材(A)上に塗工液(防眩性ハードコート層(B)形成材料)を連続的に塗工して製造することも可能である。すなわち、そのような製造方法でも、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止された本発明の防眩性ハードコートフィルムを製造できる。
【0030】
以下、前記光透過性基材(A)、前記防眩性ハードコート層(B)および前記他の層のそれぞれについて、さらに例を挙げて説明する。
【0031】
前記光透過性基材(A)は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008-90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板もしくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、前記防眩性ハードコート層(B)および前記反射防止層(C)が、保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、防眩性ハードコートフィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0032】
本発明において、前記光透過性基材(A)の厚みは、特に制限されないが、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、例えば、10~500μm、20~300μm、または30~200μmの範囲である。前記光透過性基材(A)の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0033】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂が、アクリル樹脂を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)が、アクリルフィルムであってもよい。
【0035】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述のとおり、前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸の最大高さRyが、1.0μm以上7.0μm以下である。前記最大高さRyは、例えば、1.5μm以上、2.0μm以上、2.5μm以上、または3.0μm以上であってもよく、例えば、6.5μm以下、6.0μm以下、5.5μm以下、または5.0μm以下であってもよい。映り込み抑制の観点からは、Ryが大きいことが好ましい。一方、ヘイズ値が大きくなりすぎて表示が不鮮明になることを防止する観点からは、Ryが大きすぎないことが好ましい。本発明において、前記最大高さRyは、JIS B 0601(1994年版)に基づく数値とする。Ryの測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述する実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0036】
なお、Ryの数値は、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)の厚み、前記第1粒子の重量平均粒子径、および、前記防眩性ハードコート層(B)中における前記第1粒子の含有率等により制御することができる。例えば、前記防眩性ハードコート層(B)の厚みが同じであれば、前記第1粒子の重量平均粒子径が大きいほど、Ryが大きくなる傾向がある。また、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)の厚みおよび前記第1粒子の重量平均粒子径が同じであれば、前記防眩性ハードコート層(B)中における前記第1粒子の含有率が小さいほど(すなわち、前記第1粒子同士の間の平均距離が大きいほど)、Ryが大きくなる傾向がある。
【0037】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述のとおり、前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面の凹凸形状において、平均傾斜角θaが、1.0°以上7.5°以下である。前記平均傾斜角θaは、例えば、1.5°以上、2.0°以上、2.5°以上、または3.0°以上であってもよく、例えば、6.5°以下、6.0°以下、5.5°以下、または5.0°以下であってもよい。映り込み抑制の観点からは、θaが大きいことが好ましい。一方、ヘイズ値が大きくなりすぎて表示が不鮮明になることを防止する観点からは、θaが大きすぎないことが好ましい。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(5)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。

平均傾斜角θa=tan-1Δa (5)
【0038】
前記数式(5)において、Δaは、下記数式(6)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。

Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (6)
【0039】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前述のとおり、前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面の前記凹凸に起因する外部ヘイズ値が5%以上であってもよい。高防眩のフィルムにおいては、全体の外観が白ボケし、白黒の濃淡模様(例えば、前述のスジ、横ダン等)が発生しやすくなるおそれがある。これを抑制または防止する観点から、および、映り込みを抑制する観点から、前記外部ヘイズ値がなるべく大きいことが好ましい。一方、表示特性の低下(例えば、画像が不鮮明になる、暗所でのコントラストが低下する等)を抑制または防止する観点からは、前記外部ヘイズ値が大きすぎないことが好ましい。前記外部ヘイズ値は、特に限定されないが、例えば、5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上であってもよく、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、または35%以下であってもよい。本発明において、前記外部ヘイズ値の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記(1)~(3)の測定方法により測定することができる。

(1) 本発明の防眩性ハードコートフィルムの全ヘイズ値を、JIS K 7136に準拠した方法に基づいて測定する。

(2) 前記(1)の防眩性ハードコートフィルムの防眩性ハードコート層(B)における光透過性基材(A)と逆側の面に透光性粘着剤を積層し、さらにその上に、COPフィルム(日本ゼオン社製、商品名ZEONORフィルム)を貼付して積層体を作製する。この積層体に対し、JIS K 7136に準拠した全ヘイズ値の測定方法(すなわち、前記(1)の測定方法)と同じ測定方法で測定すると、前記(1)の防眩性ハードコートフィルムの内部ヘイズ値を得ることができる。この内部ヘイズ値は、前記(1)の全ヘイズ値から、前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面の前記凹凸の影響を排除したヘイズ値である。

(3) 前記(1)で測定した全ヘイズ値から前記(2)で測定した内部ヘイズ値を減算して得られた数値を、前記(1)の防眩性ハードコートフィルムの外部ヘイズ値とする。
【0040】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)に含まれる前記樹脂が、アクリレート樹脂(アクリル樹脂ともいう)を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)に含まれる前記樹脂が、ウレタンアクリレート樹脂を含んでいてもよい。
【0042】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)に含まれる前記樹脂が、硬化型ウレタンアクリレート樹脂および多官能アクリレートの共重合物であってもよい。
【0043】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)が、樹脂およびフィラーを含む防眩性ハードコート層形成材料を用いて形成されており、前記防眩性ハードコート層(B)が、前記フィラーが凝集することによって、前記防眩性ハードコート層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有していてもよい。また、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記防眩性ハードコート層(B)の面方向における一方向に複数集まった状態で存在していてもよい。本発明の画像表示装置は、例えば、前記フィラーが複数集まった一方向と、前記ブラックマトリックスパターンの長辺方向とが一致するように、前記本発明の防眩性ハードコートフィルムが配置されていてもよい。前記フィラーとしては、例えば、前記第1粒子、前記第2粒子、前記チキソトロピー付与剤等が挙げられる。
【0044】
前記防眩性ハードコート層(B)は、前述のとおり、前記第1粒子および前記第2粒子を含む。前記第1粒子および前記第2粒子は、例えば、防眩性ハードコート層(B)表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、さらに、前記防眩性ハードコート層(B)の前記外部ヘイズ値を制御する働きをする。前述のとおり、前記第1粒子は、前記第2粒子よりも重量平均粒子径が大きい。このように、前記第1粒子および前記第2粒子の両方を用いることでスジおよび横ダンを抑制または防止できる理由は、例えば、以下のように考えられる。まず、前記第1粒子によれば、高い防眩性を発現できる。しかし、前記第1粒子のみを用いた場合、前記第1粒子の分布の不均一により、表示の白黒の濃淡ムラ(例えば、前述のスジ、横ダン等)を生じるおそれがある。ここで、さらに前記第2粒子を加えることで、表示の欠点の原因となる白黒の「黒」部に相当する低散乱部の散乱度を上げることができる。これにより、前記「黒」部と正常部との散乱差を小さくし、前記塗工液(防眩性ハードコート層(B)形成材料)の連続塗工をしても外観品質を維持することが出来る。または、前記第2粒子を加えることで、前記第1粒子の分布自体が均一に近くなりやすく、このためスジおよび横ダンを抑制または防止できると考えられる。ただし、これらは、推測可能なメカニズムの一例であり、本発明をなんら限定しない。
【0045】
本発明において、前記第1粒子の重量平均粒子径d1は、前述のとおり、3.0μmを越え8.5μm以下である。前記第1粒子の重量平均粒子径d1は、例えば、3.5μm以上、4.0μm以上、4.5μm以上、または5.0μm以上であってもよく、例えば、8.0μm以下、7.5μm以下、7.0μm以下、または6.5μm以下であってもよい。
【0046】
本発明において、前記第2粒子の重量平均粒子径d2は、前述のとおり、1.0μm以上3.0μm以下である。前記第2粒子の重量平均粒子径d2は、例えば、1.2μm以上、1.4μm以上、1.6μm以上、または1.8μm以上であってもよく、例えば、2.8μm以下、2.5μm以下、2.2μm以下、または2.0μm以下であってもよい。
【0047】
なお、本発明において、前記第1粒子、前記第2粒子等の粒子の重量平均粒子径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、前記粒子が前記細孔を通過する際の前記粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒子径を算出する。
【0048】
前記第1および前記第2粒子の形状は、特に制限されず、それぞれ、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましい。前記第1および前記第2粒子の形状は、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形であり、最も好ましくは球形である。
【0049】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記第1粒子の含有率は、前記防眩性ハードコート層(B)の前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し、例えば、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、または2.5質量%以上であってもよく、例えば、20.0質量%以下、18.0質量%以下、16.0質量%以下、または14.0質量%以下であってもよい。前記第1粒子の含有率は、例えば、前述したRyおよびθaの調整の観点から、または、その他の表面形状パラメータを所望の範囲に調整する観点から、適宜設定すればよい。防眩性が不足しないようにするという観点からは、前記第1粒子の含有率が低すぎないことが好ましく、過度な白ボケを防止するという観点からは、前記第1粒子の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0050】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記第2粒子の含有率は、前記防眩性ハードコート層(B)の前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し、例えば、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、または2.5質量%以上であってもよく、例えば、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、または7.0質量%以下であってもよい。MDスジ・横ダンの発生リスク回避の観点からは、前記第2粒子の含有率が低すぎないことが好ましく、過度な白ボケ防止及び過凝集による点欠点発生リスク回避の観点からは、前記第2粒子の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0051】
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計は、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し、例えば、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、5.5質量%以上、6.0質量%以上、または6.5質量%以上であってもよく、例えば、25.0質量%以下、23.0質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、20質量%以下、18.0質量%以下、16.0質量%以下、14.0質量%以下、または12.0質量%以下であってもよい。防眩性が不足しないようにするという観点からは、前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計(含有率)が低すぎないことが好ましい。一方、過度な白ボケ防止及び過凝集による点欠点発生リスク回避の観点からは、前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計(含有率)が高すぎないことが好ましい。
【0052】
また、ある大きさ以上の粒子によって所望のRyおよびθaを設計しやすくするという理由により、前述のとおり、前記第1粒子の質量の合計が、前記第2粒子の質量の合計に対し2/3以上であることが好ましい。一方、形成される凹凸が第2粒子の粒径に依存してしまうことを回避するという理由により、前記第1粒子の質量の合計が、前記第2粒子の質量の合計に対し10倍以下であることが好ましい。前記第1粒子の質量の合計は、前記第2粒子の質量の合計に対し、例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、または4倍以上であってもよく、例えば、9倍以下、8倍以下、7倍以下、または6倍以下であってもよい。
【0053】
前記第1粒子および前記第2粒子の材質は、特に限定されず、それぞれ、例えば、無機粒子でも有機粒子でもよいし、無機粒子および有機粒子を併用してもよい。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記第1粒子は、一種類の粒子を単独で使用してもよいし、二種類以上の粒子を併用してもよい。前記第2粒子は、一種類の粒子を単独で使用してもよいし、二種類以上の粒子を併用してもよい。
【0054】
前記第1粒子及び第2粒子の屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.3以上、1.4以上、1.5以上、または1.6以上であってもよく、例えば、2.0以下、1.9以下、1.8以下、または1.7以下であってもよい。
【0055】
前記防眩性ハードコート層(B)は、例えば、後述するように、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含む塗工液を、前記光透過性基材(A)の面上に塗工して塗膜を形成し、次いで、前記塗膜から前記溶媒を除去することで形成される。前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0056】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、防眩性ハードコート層(B)の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記防眩性ハードコート層(B)は、前述のとおり、チキソトロピー付与剤を含んでいても含んでいなくてもよい。前記チキソトロピー付与剤を含むことで、例えば、前記第1粒子および前記第2粒子の凝集状態の制御を容易に行うことができる。前記チキソトロピー付与剤は、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。また、前記チキソトロピー付与剤は、例えば、増粘剤であってもよい。
【0059】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した層状粘土であることが好ましい。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME-100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル株式会社製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN-400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも株式会社ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業株式会社製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0060】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200-20(商品名、楠本化成株式会社製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学株式会社製)等があげられる。
【0061】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0062】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記防眩性ハードコート層(B)の前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し、例えば、前記チキソトロピー付与剤が0.2~5質量%または0.4~4質量%含まれていてもよい。
【0064】
前記防眩性ハードコート層(B)の最大厚み(D)は、特に制限されないが、例えば、2μm以上、3μm以上、4μm以上、または5μm以上であってもよく、例えば、20μm以下、18μm以下、16μm以下、または14μm以下であってもよい。
【0065】
前記防眩性ハードコート層(B)の最大厚み(D)と前記第1粒子の重量平均粒子径(d1)との比d1/Dは、特に限定されないが、例えば、0.2以上、0.4以上、0.6以上、または0.8以上であってもよく、例えば、2.0以下、1.8以下、1.6以下、または1.4以下であってもよい。例えば、d1/Dが大きいと、前述のとおり、Ryおよびθaが大きくなりやすい傾向がある。
【0066】
本発明における防眩性ハードコートフィルムでは、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)は、前記フィラーが凝集することによって、前記防眩性ハードコート層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記防眩性ハードコート層(B)の面方向における一方向に、複数集まった状態で存在してもよい。これにより、例えば、蛍光灯の映り込み等を防止することができる。ただし、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、これに限定されない。
【0067】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有していてもよい。この中間層の厚みの制御により、前記防眩性ハードコート層(B)の表面形状を制御することができる。例えば、前記中間層の厚みを大きくすると、前記Ryおよびθaが大きくなりやすく、前記中間層の厚みを小さくすると、前記Ryおよびθaが小さくなりやすい。
【0068】
本発明において、前記中間層(浸透層、相溶層ともいう)が形成されるメカニズムは、特に限定されないが、例えば、本発明者の防眩性ハードコートフィルムの製造方法における前記乾燥工程で形成される。具体的には、例えば、前記乾燥工程において、前記防眩性ハードコート層(B)形成用の塗工液が前記光透過性基材(A)に浸透し、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む前記中間層が形成される。前記中間層に含まれる樹脂は、特に限定されず、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂と前記防眩性ハードコート層(B)に含まれる樹脂とが単に混合(相溶)されたものでもよい。また、前記中間層に含まれる樹脂は、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂と前記防眩性ハードコート層(B)に含まれる樹脂との、少なくとも一方が、加熱、光照射等により化学変化していてもよい。
【0069】
下記数式(7)で定義される前記中間層の厚み比率Rは、特に限定されないが、例えば、0.10~0.80であり、例えば、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.40以上、または0.45以上であってもよく、例えば、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.45以下、または0.30以下であってもよい。前記中間層の厚み比率Rは、例えば、0.15~0.75、0.20~0.70、0.25~0.65、0.30~0.60、0.40~0.50、0.45~0.50、0.15~0.45、0.15~0.40、0.15~0.30、または0.20~0.30であってもよい。前記中間層は、例えば、防眩性ハードコートフィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。

R=[D/(D+D)] (7)

前記数式(7)において、Dは、前記防眩性ハードコート層(B)の厚み[μm]であり、Dは、前記中間層の厚み[μm]である。
【0070】
また、防眩性ハードコート層(B)の表面形状は、防眩性ハードコート層形成材料に含まれるフィラーの凝集状態を制御することによっても設計することができる。前記フィラーの凝集状態は、例えば、前記フィラーの材質(例えば、微粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。また、前記チキソトロピー付与剤により、前記微粒子の凝集状態を精密にコントロールすることができる。
【0071】
なお、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前記凸状部が、なだらかな形状となり、外観欠点となる防眩性ハードコート層(B)表面の突起状物の発生を防止できるものであってもよいが、これに限定されない。また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、防眩性ハードコート層(B)の厚み方向に直接または間接的に重なる位置で、前記微粒子が多少存在していてもよい。
【0072】
前記他の層は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等であってもよい。また、前記他の層は、一層でも複数の層でもよく、複数の場合は、一種類でも複数種類でもよい。例えば、前記他の層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜もしくは前記光学薄膜を二層以上積層したものであってもよい。
【0073】
[2.防眩性ハードコートフィルムの製造方法]
本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、特に制限されず、どのような方法で製造されてもよいが、前記本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法により製造することが好ましい。
【0074】
前記防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0075】
まず、前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を、前記数式(1)~(4)を満たすように形成する(防眩性ハードコート層(B)形成工程)。これにより、前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との積層体を製造する。前記防眩性ハードコート層(B)形成工程は、前述のとおり、前記光透過性基材(A)上に塗工液(防眩性ハードコート層(B)形成材料)を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含む。また、例えば、前述のとおり、前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。
【0076】
前記塗工液は、前述のとおり、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含む。前記塗工液は、例えば、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、前記チキソトロピー付与剤と、前記溶媒とを含む防眩性ハードコート層形成材料(塗工液)であってもよい。
【0077】
前記塗工液は、チキソ性を示していることが好ましく、下記式で規定されるTi値が、1.3~3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.4~3.2の範囲であり、さらに好ましくは1.5~3の範囲である。

Ti値=β1/β2

上記式中、β1はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0078】
Ti値が、1.3以上であれば、外観欠点が生じたり、防眩性、白ボケについての特性が悪化したりする問題が起こりにくい。また、Ti値が、3.5以下であれば、前記粒子が凝集せずに分散状態となる等の問題が起こりにくい。
【0079】
また、前記塗工液は、チキソトロピー付与剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、チキソトロピー付与剤を含む方が、チキソ性を示しやすいため好ましい。また、前述のように、前記塗工液が前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の沈降を防止する効果(チキソトロピー効果)が得られる。さらに、前記チキソトロピー付与剤自体のせん断凝集により、防眩性ハードコートフィルムの表面形状を、さらに広い範囲で自在に制御することも可能である。
【0080】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の防眩性ハードコートフィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率を適宜選択してもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、チキソトロピー付与剤(例えば増粘剤)を溶解させるために、前記炭化水素溶媒(例えばトルエン)を含むことが好ましい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。また、前記溶媒は、例えば、トルエンを含むとともに、さらに、酢酸エチル、酢酸ブチル、IPA、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、およびTBAからなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0081】
光透過性基材(A)として、例えば、アクリルフィルムを採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、アクリルフィルム(アクリル樹脂)に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、前述のとおり、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含む溶媒でもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、およびアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。
【0082】
光透過性基材(A)として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
【0083】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤を含有する場合において防眩性ハードコート層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0084】
前記防眩性ハードコート層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、防眩性ハードコート層(B)表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が防眩性ハードコート層(B)上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。この場合、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0085】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01~5重量部の範囲である。
【0086】
前記防眩性ハードコート層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0087】
前記防眩性ハードコート層形成材料には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0088】
前記塗工液を前記光透過性基材(A)上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0089】
つぎに、前述のとおり、前記塗膜を乾燥および硬化させ、防眩性ハードコート層(B)を形成する。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0090】
前記防眩性ハードコート層(B)形成用の塗工液の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0091】
前記塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される防眩性ハードコート層(B)の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm以下であれば、形成される防眩性ハードコート層(B)の着色を防止することができる。
【0092】
以上のようにして、前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との積層体を製造できる。この積層体を、そのまま本発明の防眩性ハードコートフィルムとしてもよいし、例えば、前記防眩性ハードコート層(B)上に前記他の層を形成して本発明の防眩性ハードコートフィルムともよい。前記他の層の形成方法は特に限定されず、例えば、一般的な低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等の形成方法と同様またはそれに準じた方法で行うことができる。
【0093】
[3.光学部材および画像表示装置]
本発明の光学部材は、特に限定されないが、例えば、偏光板であってもよい。前記偏光板も、特に限定されないが、例えば、本発明の防眩性ハードコートフィルムおよび偏光子を含んでいてもよいし、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。前記偏光板の各構成要素は、例えば、接着剤または粘着剤等により貼り合わせられていてもよい。
【0094】
本発明の画像表示装置も特に限定されず、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等があげられる。
【0095】
本発明の画像表示装置は、例えば、本発明の防眩性ハードコートフィルムを視認側表面に有する画像表示装置であって、前記画像表示装置がブラックマトリックスパターンを有していてもよい。
【0096】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記光透過性基材(A)表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。前述のとおり、本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法によれば、防眩性ハードコートフィルムの表面形状を広い範囲で自在に制御可能である。このため、前記防眩性ハードコートフィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて他の光学部材と積層することによって得ることができる光学特性は、前記防眩性ハードコートフィルムの表面形状に対応した広い範囲にわたる。
【0097】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0098】
前記防眩性ハードコートフィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性ハードコートフィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性ハードコートフィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0099】
本発明の画像表示装置は、前記防眩性ハードコートフィルムを特定の方向で配置する以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0100】
本発明の防眩性ハードコートフィルムによれば、例えば、強い外光を散乱させ、反射を抑制することができるため、屋外でも映り込みを抑制できる。このため、本発明の画像表示装置は、例えば、屋外用のパブリックインフォメーションディスプレイ等として好適に使用できる。ただし、本発明の画像表示装置は、この用途に限定されず、他の任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等があげられる。
【実施例
【0101】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。
【0102】
なお、以下の実施例および比較例において、物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0103】
[実施例1]
以下のようにして、防眩性ハードコートフィルムを製造した。
【0104】
(防眩性ハードコート層形成材料の調製)
防眩性ハードコート層形成材料に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(新中村化学(株)製、商品名「UA53Hー80MB」、固形分80%)40重量部、およびペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)60重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記第1粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.0μm、屈折率1.515)を5重量部、第2粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を1重量部の合計6重量部、チキソトロピー付与剤として有機粘度である合成スメクタイト(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分10%)を1.0重量部混合した。この混合物を固形分濃度が30%となるように、トルエン/酢酸エチル混合溶媒(重量比50/50)で希釈して、防眩性ハードコート層形成材料(塗工液)を調製した。
【0105】
(透光性基材(A))
透光性基材(A)として、透明プラスチックフィルム基材(アクリルフィルム、東洋鋼鈑(株)製、商品名「HX40UC」、厚さ:40μm、フィルムハバ:1330mm、屈折率:1.49)を準備した。
【0106】
(防眩性ハードコートフィルムの製造)
前記透明プラスチックフィルム基材(透光性基材(A))の片面に、前記防眩性ハードコート層(B)形成材料(塗工液)を、ダイコータを用いて500m連続塗布(塗工)して未乾燥の塗膜を形成した(塗工工程)。そして、この未乾燥の塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、次の乾燥工程(塗膜形成工程)へと搬送した。乾燥工程(塗膜形成工程)においては、100℃で1分間加熱することにより前記未乾燥の塗膜を乾燥させて塗膜を形成した。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み(最大厚み)3.0μmの防眩性ハードコート層(B)を形成し、実施例1の防眩性ハードコートフィルムを得た。得られた防眩性ハードコートフィルムの幅方向中央部について、接触式表面形状測定器を用いて、表面の形状プロファイルを測定し、表面形状パラメータRy、θaを測定した。その結果、Ry=6.62μm、θa=4.46°であった。なお、Ryおよびθaは、下記の測定方法により測定した。以下の各実施例および比較例においても同じである。また、上記厚み(最大厚み)および表面形状パラメータは、いずれも、500m以上連続塗工を行った際の500m地点のフィルムにおいて、幅方向中央部を切り出し、測定した値である。以下の各実施例および比較例においても同じである。
【0107】
<Ryおよびθaの測定方法>
防眩性ハードコートフィルムの、防眩性ハードコート層(B)が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩性ハードコート層(B)の表面形状を測定し、最大高さおよび平均傾斜角を算出した。さらに、前記最大高さおよび平均傾斜角を任意の10点で測定した平均値を、それぞれ最大高さRyおよび平均傾斜角θaとした。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記最大高さRy、および前記平均傾斜角θaを自動算出する。また、前記最大高さRyおよび前記平均傾斜角θaの測定方法および算出方法は、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。
【0108】
[実施例2]
防眩性ハードコート層(B)の厚み(最大厚み)が7.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、実施例2の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.45μm、θa=1.15°であった。
【0109】
[実施例3]
前記第1粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.0μm、屈折率1.515)を8重量部用いたことと、防眩性ハードコート層(B)の厚み(最大厚み)が5.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、実施例3の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=2.97μm、θa=3.12°であった。
【0110】
[実施例4]
前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を6重量部用いたこと以外は、実施例3と同様の製造方法で、実施例4の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.03μm、θa=3.33°であった。
【0111】
[実施例5]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.0μm、屈折率1.515)を12重量部、前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を8重量部用いたこと以外は実施例4と同様の製造方法で、実施例5の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.23μm、θa=4.03°であった。
【0112】
[実施例6]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.0μm、屈折率1.515)を8重量部、前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX145AA」、重量平均粒子径:1.5μm、屈折率1.495)を1重量部用いたこと以外は実施例5と同様の製造方法で、実施例6の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.29μm、θa=3.61°であった。
【0113】
[実施例7]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が9.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例6と同様の製造方法で、実施例7の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.57μm、θa=1.36°であった。
【0114】
[実施例8]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX140AA」、重量平均粒子径:3.5μm、屈折率1.535)を10重量部、前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX145AA」、重量平均粒子径:1.5μm、屈折率1.495)を2重量部用いたことと、防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が3.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、実施例8の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.81μm、θa=4.81°であった。
【0115】
[実施例9]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が5.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例8と同様の製造方法で、実施例9の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.59μm、θa=1.61°であった。
【0116】
[実施例10]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX42AA」、重量平均粒子径:8.0μm、屈折率1.515)を2重量部、前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を3重量部用いたこと以外は実施例9と同様の製造方法で、実施例10の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=4.40μm、θa=2.28°であった。
【0117】
[実施例11]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が9.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例10と同様の製造方法で、実施例11の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.70μm、θa=1.18°であった。
【0118】
[比較例1]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が14.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例1の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.40μm、θa=0.88°であった。
【0119】
[比較例2]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.5μm、屈折率1.515)を8重量部用いたことと、防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が3.0μmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例2の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=7.41μm、θa=5.90°であった。
【0120】
[比較例3]
前記第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を6重量部用いたこと以外は、比較例2と同様の製造方法で、比較例3の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=7.68μm、θa=7.83°であった。
【0121】
[比較例4]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーXX140AA」、重量平均粒子径:3.5μm、屈折率1.535)を1.5重量部用い、第2粒子を未添加としたこと以外は、比較例3と同様の製造方法で、比較例4の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=2.32μm、θa=1.44°であった。
【0122】
[比較例5]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.5μm、屈折率1.515)を8.0重量部用いたことと、第2粒子を未添加としたことと、防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が5.0μmとなるように形成したこと以外は、比較例4と同様の製造方法で、比較例5の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.58μm、θa=3.59°であった。
【0123】
[比較例6]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が9.0μmとなるように形成したこと以外は、比較例5と同様の製造方法で、比較例6の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.74μm、θa=1.42°であった。
【0124】
[比較例7]
前記第1粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX1055QXE」、重量平均粒子径:5.5μm、屈折率1.515)を12.0重量部用いたこと以外は、比較例5と同様の製造方法で、比較例7の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.74μm、θa=4.38°であった。
【0125】
[比較例8]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が9.0μmとなるように形成したこと以外は、比較例7と同様の製造方法で、比較例8の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=1.96μm、θa=1.62°であった。
【0126】
[比較例9]
前記第1粒子を未添加としたことと、第2粒子として、アクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX103DXE」、重量平均粒子径:3.0μm、屈折率1.525)を6重量部用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、比較例9の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=2.94μm、θa=2.63°であった。
【0127】
[比較例10]
防眩性ハードコート層(B)を、厚み(最大厚み)が9.0μmとなるように形成したこと以外は、比較例9と同様の製造方法で、比較例10の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=0.92μm、θa=0.70°であった。
【0128】
[比較例11]
前記第2粒子として、シリカ粒子(日産化学(株)製、商品名「MIBK-ST」、平均粒子径10nm、固形分30%)を10重量部用いたこと以外は、実施例3と同様の製造方法で、比較例11の防眩性ハードコートフィルムを製造した。表面形状パラメータはRy=3.21μm、θa=2.67°であった。
【0129】
以上のようにして製造した各実施例および比較例の防眩性ハードコートフィルムについて、外部ヘイズ値を前述の測定方法によって測定するとともに、下記の方法により、500m地点でのスジ・横ダンの評価と、防眩性の判定とを行った。
【0130】
[500m地点でのスジ・横ダンの評価方法]
500m塗工後のフィルムロール(防眩性ハードコートフィルム)において、500m以降の任意の地点の幅方向1330mmハバ、フィルム走行方向に1000mmのシートを前記ロールから切り出した。つぎに、切り出した前記シート(防眩性ハードコートフィルム)の防眩性ハードコート層(B)と逆側の面に、粘着剤付き黒色PETフィルムを貼りつけた。その後、暗室環境下で防眩性ハードコート層(B)にLED光源を写し込み、映り込んだLED光と映り込んでいない境目の部分を目視で判定し、白ボケた部分と黒く締まりのある外観のムラ発生の有無を下記基準により評価した。

・白黒の濃淡のコントラスト差がはっきりしているもの : ×
・若干の濃淡があるが、許容範囲以上 : 〇
【0131】
[防眩性の判定方法]
500m塗工後のフィルムロール(防眩性ハードコートフィルム)において、500m以降の任意の地点の幅方向1330mmハバ、フィルム走行方向に1000mmのシートを前記ロールから切り出した。つぎに、切り出した前記シート(防眩性ハードコートフィルム)の防眩性ハードコート層(B)と逆側の面に、粘着剤付き黒色PETフィルムを貼りつけた。その後、暗室環境下で防眩性ハードコート層(B)にLED光源を写し込み、映り込んだLED光のぼやけ具合の程度を目視により判定し、下記基準により評価した。

・蛍光灯が適度にぼやける(黒の締まりと両立) : 〇
・白ボケが強すぎる、または、光源が映り込みすぎる : ×
【0132】
前記各実施例および比較例の防眩性ハードコートフィルムについて、前述した前記第1粒子の重量平均粒子径d1、前記第2粒子の重量平均粒子径d2、前記第1粒子および前記第2粒子の含有率(部数)、外部ヘイズ値、Ry、θa、500m地点でのスジ・横ダンの評価結果、および、防眩性の判定結果とを、下記表1および表2にまとめて示す。なお、下記表1および表2において、「部数」は、前記防眩性ハードコート層(B)において、前記樹脂層を形成する樹脂100重量部(質量部)に対する前記第1粒子または前記第2粒子の重量部(質量部)数を表す。すなわち、この「部数」は、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対する前記第1粒子または前記第2粒子の含有率(質量%)に等しい。また、下記表1および表2において、「合計重量部数」は、前記防眩性ハードコート層(B)において、前記樹脂層を形成する樹脂100重量部(質量部)に対する前記第1粒子および前記第2粒子の合計重量部(質量部)数を表す。すなわち、この「合計重量部数」は、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対する前記第1粒子および前記第2粒子の合計の含有率(質量%)に等しい。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
前記表1および表2に示したとおり、本発明の要件を全て満たす実施例の防眩性ハードコートフィルムは、防眩性が良好であるとともに、スジ・横ダンの発生が見られなかった。すなわち、これら実施例の防眩性ハードコートフィルムは、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止されていた。これに対し、本発明の要件のいずれかを満たさない比較例の防眩性ハードコートフィルムは、防眩性が良好でないか、または、スジ・横ダンの発生が見られた。すなわち、これら比較例の防眩性ハードコートフィルムは、映り込みの抑制と、スジおよび横ダンの抑制とを両立できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上、説明したとおり、本発明によれば、映り込みが抑制され、かつ、スジおよび横ダンが抑制または防止された防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置を提供することができる。本発明の防眩性フィルムによれば、例えば、強い外光を散乱させ、反射を抑制することができるため、屋外でも映り込みを抑制できる。このため、本発明は、例えば、屋外用のパブリックインフォメーションディスプレイ等の画像表示装置に好適に使用できる。ただし、本発明は、この用途に限定されず、広範な用途に使用可能である。
【符号の説明】
【0137】
10 防眩性フィルム
11 光透過性基材(A)
12 防眩層(B)
12a 樹脂層
12b1 第1粒子
12b2 第2粒子
Ry 最表面の凹凸の凸部の最大高さ
θa 最表面の凹凸の平均傾斜角
図1