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特許7573973回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
G01D5/245 M
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041859
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2020153980
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】1902522
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ ユロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドュレ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フラミエール セシル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダム エチエンヌ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-97971(JP,A)
【文献】特開平2-307011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定する決定システムであって、
コーダ(1)と、センサと、を備え、
前記コーダは、前記回転部材と共に動作することによって、当該回転部材と回転するように構成されており、
前記コーダは、回転軸(X)を中心とした半径aを有する円筒状周縁部を有する本体を備え、
前記周縁部は移行部(3)によって分離された、幅lを有する交互的なN極(2n)およびS極(2s)を有し、
前記移行部の各々は、ピッチpおよび角度αのヘリックスに沿って延在し、前記コーダの回転を示す周期的な磁界を出力することができる多極磁気トラック(2)を形成し、
前記トラックは、N極(2n)とS極(2s)とのNpp対と、法線(N)に沿って測定された移行部(3)までの極幅Lを有し、Npp=πa/lおよびL=p.cosαであり、
前記センサは、少なくとも2つの感知磁性素子(4、5;4、4;5、5)によって、前記コーダによって出力される周期的な磁界を検出することができ、
前記感知磁性素子は磁気トラック(2)からの半径方向読取距離に配置されており、さらに、直角位相の信号を送出するような相互位置関係となるように配置されており、
前記センサは2つの感知素子(4 、4 ;5 、5 )の少なくとも2つのグループを含み、
一方のグループの感知素子(4 、4 ;5 、5 )の重心は、法線(N)に沿って測定された移行部(3)までの距離dだけ、他方のグループの感知素子(5 、5 ;4 、4 )の重心から離れており、
前記距離dはL /2 modulo L と等しい、決定システム。
【請求項2】
前記センサは、2つの感知素子(4、4;5、5)の各グループによって送出される信号(V、V)を減算する装置をさらに備える、請求項に記載の決定システム。
【請求項3】
グループの前記感知素子(4、4;5、5)が、法線(N)に沿って測定された移行部(3)までの距離eだけ離間されており、
e=L modulo 2Lである、請求項またはに記載の決定システム。
【請求項4】
グループの前記感知素子(4、4;5、5)が、法線(N)に沿って測定された移行部(3)までの距離eだけ離間し、
前記距離eは下記式の関係を有する、請求項またはに記載の決定システム:
0.55L<e<0.82L、modulo 2L;または、
1.18L<e<1.45L、modulo 2L
【請求項5】
前記距離eが2/3Lまたは4/3L modulo 2Lと実質的に等しい、請求項に記載の決定システム。
【請求項6】
前記感知素子(4、4;5、5)が整列されている、請求項のいずれか1項に記載の決定システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するシステムに関する。前記システムは、周期的な磁界を出力するコーダと、前記磁界を検出可能なセンサとを備える。
【0002】
多くの用途において、回転部材の少なくとも1つの回転パラメータ(例えば、回転部材の位置、速度、加速度、または移動方向)を、リアルタイムで最適な品質で識別することが望ましい。
【0003】
これを行うために、文献WO2006/064169は、可動部材と一体化するように意図(構成)されたコーダの使用を提案している。当該コーダ上に、いくつかの感知素子を含むセンサからの読取距離(リーディング距離)において、擬似正弦波磁界を出力することができる磁気トラックが形成されている。
【0004】
有利には、例えば文献WO2004/083881に記載されているように、それぞれの感知素子は、検出された磁界に応じて抵抗が変化するトンネル磁気抵抗(TMR;Tunnel Magneto Resistance)基材を有する少なくとも1つのパターンを含み得る。
【0005】
検出された磁界の変化に応じて可動部材の移動パラメータを決定するために、文献WO2006/064169は、それぞれの感知素子の抵抗を表す信号の組み合わせを提供する。これにより、直角位相であり、かつ、同じ振幅を有する2つの信号を送出できる。当該2つの信号は、前記パラメータを計算するために使用され得る。
【0006】
文献WO2018/051011は、移行(遷移)によって分離(区分)された交互的な(交互に入れ替わる)N極およびS極をコーダのトラックが有し、各磁極がアルキメデススパイラル(螺旋)に沿って延在している、決定システムを提案している。コーダによって送出される磁界の軸方向の読取に関して、この実施形態は、磁極の数、磁極の幅、およびコーダの径を分離(区分)することができる。したがって、良好な正弦波性を有する磁気信号を依然として有しながら、磁極をほとんど有さないことが可能である。
【0007】
さらに、いくつかの用途において、特に利用可能な空間に関する制約のために、コーダによって送出される磁界の半径方向の読取が必要である。これを行うために、磁気トラックが形成される円筒状周縁部を有する本体を備えるコーダが知られており、前記トラックは、回転軸と位置合わせされた磁気遷移部(磁気移行部)を有する。
【0008】
この実施形態において、磁極の幅は磁極の数に対する円周の比率である。磁極の幅が実質的になるため(具体的には約10ミリメートルとなるため)、典型的には6未満である、小さい極対数(磁極ペア数、ポールペア数)を有するコーダは、問題が生じる。
【0009】
これらの幅広い極は、小さい読取エアギャップでは正弦波性が悪い磁気信号を送出する。奇数次高調波が豊富であり、正確な角度測定には不適切である。それゆえ、感知素子を磁気トラックから離間させる必要がある。このことは、信号の振幅増加に相反するため、感知素子による良好な検出がなされない。
【0010】
さらに、磁気信号の正弦波性および振幅を十分に維持するために、幅広い極はコーダの厚さもより実質的であることを必要とする。このことは、低減された寸法においてエンコーダを統合(一体化)するには好ましくない。また、このことは、より大きい厚さを磁気的に飽和させなければならないため、磁化方法を複雑にする。
【0011】
本発明はコーダによって送出される磁界の半径方向読取による決定システムを特に提案することによって、従来技術の完成を目指す。検出される磁界の周期性と振幅との間の妥協点はコーダの任意の特定のサイズ制約を誘導することなく、特に、磁極ペア数が小さい磁気コーダに関して満足させることができる。
【0012】
特に、本発明による半径方向読取を有するコーダは、各磁極の磁極幅が磁極ペア数とは無関係である。したがって、磁極ペア数が少ないことを、検出される磁界の正弦波性および振幅に関連する感知素子の適切な位置決めと調和させることができる。
【0013】
この効果のために、本発明は、回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するシステムを提案する。当該システムは、コーダと、センサと、を備え、前記コーダは、前記回転部材と共に動作することによって、当該回転部材と回転するように構成されており、前記コーダは、回転軸を中心とした半径aを有する円筒状周縁部を有する本体を備え、前記周縁部は移行部によって分離された、幅lを有する交互的なN極およびS極を有し、前記移行部の各々は、ピッチpおよび角度αのヘリックスに沿って延在し、前記コーダの回転を示す周期的な磁界を出力することができる多極磁気トラックを形成し、前記トラックは、N極とS極とのNpp対と、法線Nに沿って測定された移行部までの極幅Lを有し、Npp=πa/lおよびL=p.cosαであり、前記センサは、少なくとも2つの感知磁性素子によって、前記コーダによって出力される周期的な磁界を検出することができ、前記感知磁性素子は磁気トラック2からの半径方向読取距離に配置されており、さらに、直角位相の信号を送出するような相互位置関係となるように配置されている。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる以下の説明において明らかになるのであろう。[図1a](斜視図)および[図1b](側面図)はそれぞれ、本発明の決定システムのコーダを概略的に示す。[図2]は、図1aおよび図1bのコーダの円筒状周縁部の平面図である。[図3a]および[図3b]はそれぞれ、本発明のコーダに対する感知素子の半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。[図4a]および[図4b]はそれぞれ、本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。[図5a]、[図5b]および[図5c]はそれぞれ、本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。[図6]は、感知素子のグループ間の距離に応じた3次高調波のフィルタリングを示す曲線である。
【0015】
これらの図に関連して、固定構造(固定された構造体)に対する回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するシステムを説明する。特に、回転部材のパラメータは、当該回転部材の位置、速度、回転方向、加速度または移動方向(特に軸方向)から選択され得る。
【0016】
特定の用途において、本システムはブラシレス直流電気モータの制御に関連して使用し得る。この場合、特に、固定子(ステータ)に対する回転子(ロータ)の一対のモータの極上の絶対的な角度位置を識別することが可能とする。
【0017】
決定システムは、回転部材と一緒に動くように回転部材と一体化されるように意図(構成)されたコーダ1を備える。前記コーダは、磁気トラック2が形成された、回転軸Xを中心として半径aを有する円筒状周縁部を有する本体を備える。磁気トラック2は、前記コーダの回転を示す周期的な磁界を出力することが可能である。特に、出力される磁界は正弦波または擬正弦波であり得る。すなわち、当該磁界は、正弦波によって正確(適切)に近似され得る少なくとも1つの部分を有する。
【0018】
トラック2は移行部(遷移部)3によって分離(区分)された、幅lである交互的な(交互に入れ替わる)N極2nおよびS極2sを有する。前記移行部の各々は、ピッチpおよび角度αのへリックスに沿って延在している。
【0019】
したがって、磁気トラックはN極とS極とのNpp対と、法線Nに沿って測定された移行部3までの極幅Lを有する。Npp=πa/lであり、L=p.cosαである。磁気トラック2は、λ=2.Lに等しい空間周期の擬似正弦波磁気信号を送出する。空間周期は、法線Nに沿っている。
【0020】
特に、一対の磁極2n、2s上のコーダ1によって生成された磁界は、パラメータを決定するために測定されることが求められる完全な基本正弦波成分と、いくつかの奇数次高調波(3次、5次等)との組み合わせである。
【0021】
コーダ1が一定の回転速度ωで回転すると仮定すると、磁界は以下の式のように記載され得る。
【0022】
【数1】
【0023】
3次高調波の振幅Hは、通常、基本波の振幅Hの5%を表し得る。センサの位置および読取距離に応じて、3次高調波の振幅Hのこの比率は、はるかに大きくなり得る。
【0024】
磁気トラック2のヘリカル形状によれば、特に、磁極2n,2sの対の数Nppおよび極幅Lを、磁気トラック2の半径Rとは無関係に選択することが可能となる。図1aおよび図1bに関して、コーダ1は、磁極2n、2sの対を4つ備え、4つの磁極対による電気モータの制御に特に適する。本システムは、一対のモータ磁極上の絶対的な角度(すなわち、90°の機械的位置)を提供する。
【0025】
一実施形態によれば、コーダ1は、多極磁気トラック2がその円筒状周縁部に実行される磁石から形成されている。特に、磁石は、磁性粒子(特に、フェライトまたはNdFeB等の希土類の粒子)が分散された、プラスティックまたはエラストマ材の基材から作製された環状マトリックスによって形成されてよい。
【0026】
決定システムは、センサを備える。当該センサは、固定構造に一体に取り付けられるように構成されている。当該センサは、コーダ1によって出力される周期的な磁界を検出できる。これを行うために、センサは、少なくとも2つの磁気感知素子4、5を備える。当該磁気感知素子はそれぞれ、コーダ1の回転を示す信号を送出することを目的として、磁気トラック2からの半径方向読取距離に配置されている。感知素子は直角位相の信号を送出するような相互位置関係となるように配置されている。
【0027】
感知素子4、5の各々は、特に、磁気感知センサの内から選択されてよい。例えば、ホール効果、トンネル磁気抵抗(TMR)、異方性磁気抵抗(anistropic magneto resistance,AMR)、または巨大磁気抵抗(giant magneto resistance,GMR)に基づくプローブは、(コーダ1に対して法線方向(垂直)または接線方向の)磁界の2つの成分のそれぞれ1つを測定することができる。
【0028】
特に、例えば文献WO2004/083881に記載されているように、各素子4、5は、基準(レファレンス)磁気層と、絶縁分離層と、検出されるべき磁界に対して感度を有する磁気層と、のスタック(積層構造)を有することにより、トンネル接合(ジャンクション)を形成する。当該スタックの抵抗は、磁気層の相対的な磁化方向の関数である。
【0029】
有利には、各感知素子4、5は、磁界に応じて抵抗が変化する(特に、トンネル効果を有する)磁気抵抗材料をベースとする少なくとも1つのパターンを含んでいてよい。感知素子4、5は、単一のモチーフまたは直列もしくは平行に接続されたモチーフのグループを含んでいてよい。
【0030】
あるいは、例えば、ホール効果素子を利用して、コーダ1によって送出される磁界の法線方向成分のみを測定してもよい。法線方向の磁界は、接線方向の磁界よりも高い正弦波性を有する。このため、法線方向の磁界のみを使用することが好ましい。
【0031】
回転部材の回転パラメータを決定することを可能とするために、感知素子4、5によって送出される信号は、直角位相である必要がある。すなわち、90°分のNpp(90°/Npp)だけ幾何学的にずれていなければならない。特に、センサまたは関連するコンピュータにおいて、このような直角位相の信号を使用することによって、例えば、「ルックアップテーブル」(Look-up Table,LUT)によるアークタンジェント関数の直接演算、またはCORDICタイプの方法により、コーダ1の角度位置を決定できることが知られている。
【0032】
これを行うために、図3aおよび図3bに関して、センサは、少なくとも2つの感知素子4、5を備える。当該感知素子は、法線Nに沿って測定された移行部3まで距離d(L/2 modulo Lに等しい)だけ離間されている。換言すれば、感知素子4が移行部3に面して配置しているとき、他方の感知素子5は、前記移行部に並列するヘリックス上に配置され、法線Nに沿って測定された距離dだけ前記移行部から離間されている。
【0033】
したがって、検出された信号の正弦波性と振幅との間に良好な妥協点が得られる。特に、この最適な位置決めは、2~6mmの磁極の幅Lを用いて得られる。また、コーダ1の磁極2n,2sの対の数Nppを用いても得られる。Nppは6より小さい。
【0034】
電気モータを制御するシステムの用途に関連して、制御計算機に送出される信号の良好な正弦波性は特に、以下のことを可能にする:
特に始動時における、より良好な性能(例:設定速度または設定位置に到達するまでの時間);
安定状態においてトルク痙動(ジャーキング)が生じない「より滑らかな(スムーズな)」動作;
より低い消費エネルギー;
より低い動作温度;
より実質的な最大トルク。
【0035】
特に図3aは、法線Nに沿って移行部3まで整列している2つの感知素子4、5を示す。図3bにおいて、コーダ1の縁部からできるだけ離れるように、特にコーダの周縁部の中央位置において、当該素子は円周方向に整列されている。あるいは、2つの感知素子4、5を回転軸Xに沿って整列させてもよい。
【0036】
図4a~5cに関して、センサは2つの感知素子4、4;5、5の少なくとも2つのグループを含む。一方のグループの感知素子4、4;5、5の重心は、法線Nに沿って測定された移行部3までの距離d(L/2 modulo Lに等しい)だけ、他方のグループの感知素子4、4;5、5の重心から離れている。
【0037】
したがって、図3aおよび図3bの実施形態の感知素子4、5のこのような重複に関連して、2つのグループは、外部から(例えば、モータまたは隣接する相互接続から)来るノイズのフィルタリングを可能にする。
【0038】
実際、2つの感知素子4、4;5、5の各グループによって送出される信号(V、V)を減算する装置をセンサがさらに備えることによって、磁界が異なる感知素子4、4;5、5上に同一のノイズ成分を含むとき、後者は出力信号から減算される。
【0039】
法線Nに沿って測定された前記移行部までの距離e(距離eは下記の式によって示すことができる)だけ感知素子4、4;5、5を離間し、感知素子のグループをそれぞれ磁気相φおよびφ(φおよびφの関係は以下のように示される)に配置することにより、各感知素子4、4、5、5から送出される信号V、Vを、下記の式によって示すことができる。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
Gは、感知素子4、4;5、5の仮定される同一のゲインである。ωは回転速度である。Hは、i=1に対応する基本波の振幅、および、i=3、5等に対応するi次高調波の振幅である。
【0043】
減算器回路は下記式に示される差(V(t)-V(t))を計算する。
【0044】
【数4】
【0045】
図4aおよび図4bに関して、e=L modulo 2Lであり(すなわち、感知素子4、4;5、5のグループは、オフセット180° modulo 360°であり)、差(V(t)-V(t))は以下のように示される。
【0046】
【数5】
【0047】
3次および5次の高調波は保持され、減算操作後の基本波と同じゲイン2を有することがわかる。
【0048】
回転パラメータを正確に決定するために、少なくとも3次高調波がフィルタリングされた信号を測定することが望ましい。しかし、高調波によって生じた誤差に対して任意の固定的な補償(補正)を行うことは困難である。当該誤差は、特に測定条件(エアギャップ、センサの位置)に依存するためである。さらに、大量かつ低コストの用途においては、キャリブレーションを予期することも困難である。
【0049】
図6は、下記式のオフセットの数値に応じた3次高調波のフィルタリングを示す。
【0050】
【数6】
【0051】
図5a~5cに関して、距離eが2/3Lまたは4/3L modulo 2Lと実質的に等しく、差(V(t)-V(t))は以下のように示される。
【0052】
【数7】
【0053】
上記場合において、3次高調波はキャンセルされ、減算操作後の基本波および5次高調波のゲインは1.73である。次に、基本波の86.5%を依然として保持しながら、3次高調波の空間フィルタを実施した。
【0054】
図6に関して、一般的に、3次高調波のフィルタが、基本波の振幅に対してフィルタリングを行うことなく、3次高調波から少なくとも3dBを除去する役割を果たす場合を考える。そうすると、下記式に示される関係が必要となる。
【0055】
【数8】
【0056】
したがって、距離で表すと、3次高調波のフィルタリングを得るためには、グループの感知素子4、4;5、5は法線Nに沿って測定された移行部3までの距離eだけ離間される必要がある。すなわち、下記式に示される関係が必要となる。
0.55L<e<0.82L、modulo 2L、または、
1.18L<e<1.45L、modulo 2L
【0057】
特に、グループの感知素子4、4;5、5の間の距離eは結合フィルタリング-ゲインを最適化するために、上述の範囲内で変化させてもよい。さらに、利用可能な空間に応じて、グループの感知素子4、4;5、5は、法線Nに沿って移行部3に(図4aおよび5b)または円周方向に(図5c)整列させてもよい。あるいは一方のグループの感知素子4、4;5、5は他のグループの素子に対して周方向にオフセットしてもよい。(図4bおよび図5a)。
【0058】
回転パラメータを決定するための、処理された信号における3次高調波の抑制または少なくとも減衰は、上記決定の精度向上に有益である。また、以下をもたらす信号処理アルゴリズムに関しても有益である:
上記信号のオフセットの除去;
上記信号の振幅の均等化;
信号間の位相補正。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1a】本発明の決定システムのコーダを概略的に示す斜視図である。
図1b】本発明の決定システムのコーダを概略的に示す側面図である。
図2図1aおよび図1bのコーダの円筒状周縁部の平面図である。
図3a】本発明のコーダに対する感知素子の半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図3b】本発明のコーダに対する感知素子の半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図4a】本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図4b】本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図5a】本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図5b】本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図5c】本発明のコーダに対する感知素子のグループの半径方向読取距離における代替実施形態の配置を概略的に示す。
図6】グループの感知素子の間の距離に応じた3次高調波のフィルタリングを示す曲線である。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6