IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-防火戸 図1
  • 特許-防火戸 図2
  • 特許-防火戸 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】防火戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241021BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20241021BHJP
【FI】
E06B5/16
E05F15/643
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020071315
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167535
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長津 伸二
(72)【発明者】
【氏名】四國 康則
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-149004(JP,U)
【文献】特開平06-026265(JP,A)
【文献】特表昭62-501589(JP,A)
【文献】特開2017-072002(JP,A)
【文献】実開平02-098183(JP,U)
【文献】特開2003-307079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記駆動部及び前記制御部を収容し開口を有するケースとを備え、
前記駆動部と前記制御部とは、高さ方向において上下に離れて配置され、
前記制御部と前記駆動部とは、配線によって接続されており、
前記制御部は、前記開口の位置を基準としたとき、前記駆動部よりも遠い位置に配置されるとともに、前記配線が通っている孔部を下方に有する収容部材に収容されている
防火戸。
【請求項2】
前記制御部と前記駆動部との間には、断熱材が配置されている
請求項1に記載の防火戸。
【請求項3】
前記制御部と前記ケースのうち前記ドアの開閉方向に沿った側壁との間には、断熱材が配置されている
請求項2に記載の防火戸。
【請求項4】
前記制御部の一部は、断熱材で覆われている
請求項1に記載の防火戸。
【請求項5】
前記孔部の周囲には、熱によって発泡する発泡材が設置されている
請求項1に記載の防火戸。
【請求項6】
前記収容部材は、前記配線が通り、基端が前記収容部材の前記孔部に接続されて、先端が前記駆動部よりも下方に位置する筒部を備える
請求項5に記載の防火戸。
【請求項7】
前記駆動部に電力を供給するバッテリを備え、
前記バッテリは、前記ケースに収容され、前記開口の位置を基準としたとき、前記駆動部よりも遠い位置に配置される
請求項1~6のいずれか一項に記載の防火戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設及び病院等の建物に設置される防火戸が知られている。例えば、特許文献1に記載の防火戸は、間口を移動するドア、ドアを駆動する駆動部、駆動部を制御する制御部、駆動部及び制御部を収容している横枠を備える。
【0003】
そして、特許文献1の防火戸では、駆動部と制御部とを個別に鉄板により形成された筐体に密封状に覆われている。筐体の周囲は、熱膨張性の不燃シール材にて巻かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-26265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の防火戸では、火災時に熱によって制御部が発火したときの火炎が横枠から噴出するおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱によって制御部が発火したときの火炎が噴出するまでの時間を延ばした防火戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する防火戸は、ドアを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記駆動部及び前記制御部を収容し開口を有するケースとを備え、前記制御部は、前記開口の位置を基準としたとき、前記駆動部よりも遠い位置に配置される。
【0007】
上記構成によれば、加熱により発火が予想される制御部を駆動部よりもケースの上方に配置して、駆動部が制御部よりもケースの下方に位置する。このため、開口が設けられるケースの下部から制御部までの距離を長くすることができ、加熱によって制御部が発火したときの火炎がケースの開口から噴出するまでの時間を延ばすことができる。
【0008】
上記防火戸について、前記制御部と前記駆動部との間には、断熱材が配置されていることが好ましい。
上記防火戸について、前記制御部と前記ケースのうち前記ドアの開閉方向に沿った側壁との間には、断熱材が配置されていることが好ましい。
【0009】
上記防火戸について、前記制御部の一部は、断熱材で覆われていることが好ましい。
上記防火戸について、前記制御部と前記駆動部とは、配線によって接続されており、前記制御部は、前記配線が通っている孔部を有する収容部材に収納されており、前記孔部の周囲には、熱によって発泡する発泡材が設置されていることが好ましい。
【0010】
上記防火戸について、前記収容部材は、前記配線が通り、基端が前記収容部材の前記孔部に接続されて、先端が前記駆動部よりも下方に位置する筒部を備えることが好ましい。
上記防火戸について、前記駆動部に電力を供給するバッテリを備え、前記バッテリは、前記ケースに収容され、前記開口の位置を基準としたとき、前記駆動部よりも遠い位置に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱によって制御部が発火したときの火炎が噴出するまでの時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】防火戸の概略構成を示す正面図。
図2】防火戸のケースの内部構成を示す図1の2-2断面図。
図3】防火戸のケースの内部構成の変形例を示す図1の2-2断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1及び図2を参照して、防火戸の一実施形態について説明する。なお、図2において、便宜上、発泡材を網掛けにより示している。防火戸1は、図1に示されるように、引分け式の防火戸である。
【0014】
図1に示すように、防火戸1は、建物に形成された長方形状の間口200に設けられている。防火戸1は、間口200の長手方向において間隔をあけて配置された一対の縦枠3を備える。防火戸1は、一対の縦枠3の上方に配置され、一対の縦枠3により支持されているケース40を備える。縦枠3は、中空形状であり、防火戸1の高さ方向に延びている。ケース40の内部には、収容空間41が形成されている。防火戸1は、ステンレスから形成されている。このため、防火戸1は、錆びにくい。
【0015】
一対の縦枠3の間には、それぞれの縦枠3に接続する2つの固定部10が設けられている。2つの固定部10は、互いに離間して配置されることにより、2つの固定部10の間に出入口を形成している。2つの固定部10の間には、2つの固定部10が並べられている方向に沿って移動する第1引戸20A及び第2引戸20Bが設けられている。図2に示すように、第1引戸20A及び第2引戸20Bは、防火戸1の前後方向において、固定部10よりも正面側に配置されている。第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動することにより2つの固定部10の間の出入口を開閉する。なお、第1引戸20A及び第2引戸20Bのような引戸は、ドアの一例であり、防火戸1は、引戸に代えて、開戸又は折戸を備えていてもよい。
【0016】
固定部10は、高さ方向に延びる中空形状の中方立11と、巾木12と、耐熱ガラス13とを備える。巾木12は、中方立11と縦枠3との間に配置され、第1引戸20A及び第2引戸20Bの開閉方向に延びる。耐熱ガラス13は、巾木12と、縦枠3、中方立11、及び、巾木12に支持されている。
【0017】
第1引戸20Aは、耐熱ガラス21と、耐熱ガラス21の一方の側部を支持している戸先側縦框22と、耐熱ガラス21の他方の側部を支持している戸尻側縦框23と、耐熱ガラス21の上部を支持している上框24と、耐熱ガラス21の下部を支持している下框25とを備える。第1引戸20Aは、戸車を有する第1ドアハンガ110を介してケース40の収容空間41に配置された走行レール100(図2参照)に吊り下げられ、第1ドアハンガ110により駆動方向にスライド自在に支持されている。なお、第2引戸20Bも同様の構成である。また、第2引戸20Bが吊り下げられるドアハンガを第2ドアハンガ120と称する。
【0018】
ケース40の収容空間41には、第1引戸20A及び第2引戸20Bを駆動する駆動部30と、駆動部30を制御する制御部35とが配置されている。駆動部30が第1引戸20A及び第2引戸20Bを駆動方向に移動させて第1引戸20A及び第2引戸20Bが接近及び離間することにより2つの固定部10の間の出入口を開閉する。なお、ケース40が駆動部30を収容するケースに相当する。
【0019】
ケース40の収容空間41には、防火戸1に設けられた各種センサを制御するセンサ制御器36、開操作を行うタッチスイッチ(図示略)からの信号を受信するタッチスイッチ受信機37、及び電源を供給するバッテリ38等が配置されている。
【0020】
駆動部30は、電気モータ31、電気モータ31の出力軸と減速機(図示略)を介して連結されている駆動スプロケット32、及び、駆動方向において駆動スプロケット32と間隔を置いて配置されている従動スプロケット33を備える。駆動部30は、駆動スプロケット32と従動スプロケット33とに巻き掛けられているチェーン34を備える。制御部35は、電気モータ31を制御する。
【0021】
チェーン34は、互いに移動方向が異なる第1部分34A及び第2部分34Bを備える。第1部分34Aと第1引戸20Aの上框24とは、第1ドアハンガ110を介して接続されている。第2部分34Bと第2引戸20Bの上框24とは、第2ドアハンガ120を介して接続されている。電気モータ31の駆動力がチェーン34を介して第1ドアハンガ110及び第2ドアハンガ120に伝達されることにより、第1引戸20A及び第2引戸20Bが開閉する。なお、ケース40の内部には、駆動部30の他に、防火戸1が設置されている建物内で火災が発生したことが検出されたときに、第1引戸20A及び第2引戸20Bを閉じ方向に移動させるための自動閉鎖装置(図示略)が配置されている。
【0022】
図2を参照して、ケース40の内部構造について説明する。
図2に示すように、ケース40は、正面側が開口するような箱状に形成されている。詳細には、ケース40は、ケース40の背面を構成する背面壁42、ケース40の下面を構成する底壁43、ケース40の上面を構成する上壁44、及びケース40の長手方向の端面を構成する側壁45を有する。底壁43と背面壁42とは連続しており、背面壁42と上壁44とは連続している。底壁43は、第2引戸20B(第1引戸20A)まで延びている。底壁43の正面側端部は、上方に向かって折り曲げられている。上壁44は、第2引戸20Bよりも正面側まで延びている。上壁44の正面側端部には、下方に延びる上側固定壁44Aが形成されている。上壁44は、天井(図示略)に接触している。なお、背面壁42がドアの開閉方向に沿った側壁に相当する。上側固定壁44Aと点検カバー48との間は、ヒンジ47がない部分は第2空間S2となっている。このため、上側固定壁44Aと点検カバー48との間は、ケース40の内部と外部との連通部に相当する。
【0023】
ケース40の上側固定壁44Aには、ヒンジ47を介して点検カバー48がケース40の開口部40Aを開閉可能に取り付けられている。点検カバー48は、正面壁に相当し、ドアの開閉方向に沿った側壁に相当する。また、底壁43の正面側端部と点検カバー48との間は、第1引戸20Aの上端及び第2引戸20Bの上端が位置する下面開口40Bを構成する。
【0024】
ケース40の収容空間41における背面側には、駆動部30及び制御部35を取り付けるためのフラットバー60が設けられている。フラットバー60は、上壁44と底壁43との間に溶接によって固定されている。収容空間41内には、正面側より見て所定の間隔をあけて複数のフラットバー60が配置されている。フラットバー60には、駆動部30を取り付ける第1取付ベース49、及び制御部35を取り付ける第2取付ベース61が正面側から取付ボルトによって固定されている。
【0025】
第1取付ベース49及び第2取付ベース61は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向に延出する長尺物である。第1取付ベース49及び第2取付ベース61は、部品の取り付け及び取り外しを容易とするために例えばアルミニウムの押し出し材で形成されている。第1取付ベース49は、駆動部30が取り付けられる支持部49Aと、走行レール100が形成されたレール部49Cと、支持部49Aとレール部49Cとを連結する連結部49Bとを備える。第2取付ベース61は、制御部35が取り付けられる支持部61Aを備える。制御部35は、下面開口40Bの位置を基準としたとき、駆動部30よりも遠い位置に配置されている。
【0026】
第1取付ベース49の支持部49Aには、駆動部30の電気モータ31が取り付けられている。電気モータ31には、減速機(図示略)を介して駆動スプロケット32が連結されている。すなわち、ケース40の収容空間41には、第2引戸20Bの第2ドアハンガ120を懸架する走行レール100が設けられ、走行レール100の上方に駆動部30が位置している。
【0027】
また、第2取付ベース61の背面には断熱材としての第1断熱板62が配置され、フラットバー60と第2取付ベース61との間に挟まれている。第1断熱板62は、例えばケイカル板が用いられる。よって、第1断熱板62は、背面壁42から伝わった熱が第2取付ベース61に伝わることを遮断して、制御部35へ熱が伝わることを抑制することができる、例えば、第2取付ベース61がアルミニウムの押し出し材で形成される場合には伝熱効率が高くなるが、第1断熱板62が第2取付ベースへの熱の伝達を遅らせるため、制御部35へ熱が伝わることを抑制することができる。また、制御部35は、カバー64によって第2取付ベース61及び第1断熱板62を含めて覆われている。カバー64の正面側である点検カバー48側には、蓋部64Aがねじ止めされている。なお、カバー64が制御部35を収容する収容部材に相当する。
【0028】
カバー64の下方には、駆動部30が位置している。言い換えれば、駆動部30の上方に制御部35が位置している。すなわち、制御部35は、下面開口40Bの位置を基準としたとき、駆動部30よりも遠い位置に配置されている。
【0029】
図1に示すセンサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38は、制御部35とともに第2取付ベース61に取り付けられ、これら加熱により発火が予想される機器がカバー64に収容されている。すなわち、基板、電子部品等の樹脂量の多い制御部35、センサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38は、下面開口40Bの位置を基準としたとき、駆動部30よりも遠い位置に配置されている。
【0030】
制御部35と駆動部30との間には、断熱材としての第2断熱板65が設けられている。第2断熱板65は、例えばケイカル板が用いられる。第2断熱板65は、カバー64の下部内壁に設けられている。よって、駆動部30が発火したときに駆動部30からの熱を遮断して、制御部35へ熱が伝わることを抑制することができる。なお、第2断熱板65は、センサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38の下部のカバー64の長手方向に亘って配置されており、収容空間41の熱が各機器に伝わることを同時に抑制している。
【0031】
カバー64の下壁64Bには、配線35Aが通っている孔部66Aが設けられている。孔部66Aは、カバー64の下壁64B及び第2断熱板65を貫通している。制御部35と駆動部30とは、配線35Aによって接続されている。配線35Aには、給電線及び信号線を含む。カバー64の下壁64Bには、配線35Aが通る筒部66が取り付けられている。筒部66の基端は、カバー64の孔部66Aに接続されている。筒部66の先端は、駆動部30の下面よりも下方に位置している。このため、駆動部30から上方へ延びる火炎が筒部66に侵入することを防ぐことができる。
【0032】
孔部66Aの周囲には、熱によって発泡する第5発泡材55が設置されている。第5発泡材55は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第5発泡材55は、カバー64の下壁64Bの内壁の孔部66Aの周囲に貼り付けられている。
【0033】
第5発泡材55は、背面壁42が炎によって加熱されてカバー64の内側まで熱が伝達すると発泡する。第5発泡材55が発泡すると、孔部66Aの周囲及び孔部66Aを埋める。このため、孔部66Aからカバー64の内部へ火炎が侵入することを抑制することができる。よって、カバー64に収容された制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0034】
防火戸1のケース40は、火災が発生したときに、耐火性能の認定に必要な所定時間未満で駆動部30が発火しないように、ケース40の収容空間41の空気をケース40の外部に追い出すように熱によって発泡する発泡材が設けられている。
【0035】
底壁43には、底壁43から収容空間41側へ突出する突条部43Aに取り付けられている。突条部43Aは、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向に延出している。底壁43の突条部43Aには、熱によって発泡する第1発泡材51が設けられている。第1発泡材51は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第1発泡材51は、底壁43の突条部43Aの第2引戸20B(第1引戸20A)と対向する面に貼り付けられている。第1発泡材51は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において制御部35を含む駆動部30がある範囲に亘って貼り付けられている。
【0036】
第1発泡材51は、背面壁42又は底壁43が炎によって加熱されると、背面壁42から底壁43又は底壁43を介して熱が伝達されて発泡する。第1発泡材51が発泡すると、突条部43Aと第2引戸20B(第1引戸20A)との間の第1空間S1を埋める。よって、背面側からケース40の収容空間41の内部への熱の侵入を抑えることができ、駆動部30の各機器の発火を抑制する。また、正面側で火災が発生した場合には、ケース40の収容空間41の内部が加熱されて、第1発泡材51が内部空間の熱によって発泡し、第1空間S1を埋めて、発火した駆動部30の各機器の火炎が第1空間S1から背面側に噴出することを抑えることができる。
【0037】
ケース40の上側固定壁44Aには、熱によって発泡する第2発泡材52が設けられている。第2発泡材52は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第2発泡材52は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において全範囲、言い換えれば点検カバー48がある範囲に亘って貼り付けられている。なお、第2発泡材52は、ケース40の内部の下面開口40B以外に設けられている。
【0038】
第2発泡材52は、背面壁42又は底壁43が炎によって加熱され続け、収容空間41内の熱が伝達されて発泡する。第2発泡材52が発泡すると、上側固定壁44Aと点検カバー48との間の第2空間S2を埋める。よって、ケース40の収容空間41の内部への熱の侵入を抑えることができ、駆動部30の各機器の発火を抑制する。また、ケース40の収容空間41の内部で発火した機器の火炎が第2空間S2から正面側の空間に噴出することを抑えることができる。
【0039】
第1取付ベース49の連結部49Bには、熱によって発泡する第3発泡材53が設けられている。第3発泡材53は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第3発泡材53は、第1取付ベース49の連結部49Bの背面壁42と接触する面と反対側の面に貼り付けられている。第3発泡材53は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において制御部35を含む駆動部30がある範囲に亘って貼り付けられている。なお、第3発泡材53は、ケース40の内部の下面開口40B以外に設けられている。
【0040】
第3発泡材53は、背面壁42が炎によって加熱されると、背面壁42及び連結部49Bを介して熱が伝達されて発泡する。第3発泡材53が発泡すると、ケース40の収容空間41の駆動部30の下方の第3空間S3を埋めるとともに、配線を覆う。よって、配線の発火、ひいては駆動部30の各機器の発火を抑制する。
【0041】
点検カバー48の内面には、熱によって発泡する第4発泡材54が設けられている。第4発泡材54は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第4発泡材54は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において全範囲、言い換えれば点検カバー48がある範囲に亘って貼り付けられている。なお、第4発泡材54は、ケース40の内部の下面開口40B以外に設けられている。
【0042】
第4発泡材54は、正面壁である点検カバー48が炎によって加熱されると、正面壁である点検カバー48を介して熱が伝達されて発泡する。第4発泡材54が発泡すると、制御部35のカバー64と点検カバー48との間の第4空間S4及び駆動部30と点検カバー48との間の第5空間S5を少なくとも埋めるとともに、第1ドアハンガ110及び第2ドアハンガ120と点検カバー48との間の第6空間S6までを埋める。よって、ケース40の収容空間41の温度上昇を抑えて、駆動部30の各機器の発火を抑制する。また、ケース40の収容空間41の空気(酸素)量を減らして駆動部30の各機器の発火を抑制する。
【0043】
次に図2を参照して、防火戸1の作用について説明する。
図2に示すように、建物内に設置されている防火戸1の背面側の空間で火災が発生すると、火炎及び熱風により防火戸1の背面壁42及び底壁43が加熱される。
【0044】
背面壁42が加熱されると、駆動部30を取り付ける第1取付ベース49に熱が伝わり、駆動部30が加熱される。制御部35、センサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38を取り付ける第2取付ベース61の背面側が加熱されるが、第1断熱板62によって熱が伝わることを抑制しているため、各機器が発火するまでの時間を遅らせることができる。なお、フラットバー60が加熱されて取付ボルトから第2取付ベース61に熱が伝わるが、接触面積が少ないため伝熱量が少なく、第2取付ベース61への伝熱は抑制されている。また、底壁43が炎によって加熱されることで、第1発泡材51が発泡し第1空間S1を埋めて、背面側からケース40の収容空間41の内部への熱の侵入を抑える。
【0045】
さらに背面壁42が加熱され続けると、駆動部30が発火する。駆動部30からの熱は、カバー64の下壁64Bに設けた第2断熱板65によって遮断されるので、制御部35へ熱が伝わることが抑制される。また、駆動部30の配線35Aが通る筒部66を介して侵入しようとする火炎は第5発泡材55が発泡して筒部66の上端を塞ぎ、火炎がカバー64内に侵入しようとすることを防ぐ。よって制御部35の発火を遅らせることができる。
【0046】
火災が進み、さらに過熱され続けると、制御部35が発火する。下面開口40Bの位置を基準としたとき、制御部35は、駆動部30よりも遠い位置に配置されているため、制御部35の火炎がケース40の下面開口40Bから噴出するまでの時間を延ばすことができる。また、第2発泡材52が収容空間41内の熱により発泡して第2空間S2を埋めるので、制御部35の火炎が第2空間S2から正面側に噴出することを抑制する。
【0047】
制御部35と同様に、センサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38の各機器も発火するが、各機器はケース40の下面開口40Bを基準としたとき、遠い位置に配置されており、また下面開口40Bは、閉じ位置にある第2引戸20Bによって塞がれているため、各機器の火炎が下面開口40Bから噴出することが抑制される。
【0048】
底壁43が加熱されると、底壁43を介して第1発泡材51に熱が伝わり、第1発泡材51が発泡して、突条部43Aと第2引戸20B及び第1引戸20Aとの間の第1空間S1を埋める。
【0049】
さらに、ケース40の収容空間41を介して第2発泡材52及び第4発泡材54に熱が伝わると、第2発泡材52及び第4発泡材54が発泡して、ケース40の収容空間41に広がる。すなわち、第4発泡材54は、カバー64と点検カバー48との間の第4空間S4を埋めるとともに、駆動部30と点検カバー48との間の第5空間S5を埋めるとともに、第1ドアハンガ110及び第2ドアハンガ120と点検カバー48との間の第6空間S6を埋める。また、第2発泡材52は、上側固定壁44Aと点検カバー48との間の第2空間S2を埋める。
【0050】
よって、ケース40の収容空間41を発泡材が埋めることで、ケース40の収容空間41の空気(酸素)量を減らすとともに、ケース40の収容空間41の温度上昇を抑えて、駆動部30の各機器の発火を抑制することができる。
【0051】
次に、建物内に設置されている防火戸1の正面側の空間で火災が発生すると、火炎及び熱風により防火戸1の正面壁である点検カバー48及び上側固定壁44Aが加熱される。
上側固定壁44Aが加熱されると、第2発泡材52に熱が伝わり、第2発泡材52が発泡して、ケース40の収容空間41に広がる。すなわち、第2発泡材52は、上側固定壁44Aと点検カバー48との間の第2空間S2を埋める。
【0052】
点検カバー48が加熱されて、第4発泡材54に熱が伝わると、第4発泡材54が発泡して、ケース40の収容空間41に広がる。すなわち、第4発泡材54は、カバー64と点検カバー48との間の第4空間S4を埋めるとともに、駆動部30と点検カバー48との間の第5空間S5を埋めるとともに、第1ドアハンガ110及び第2ドアハンガ120と点検カバー48との間の第6空間S6を埋める。また、第4発泡材54は、ケース40の点検カバー48に設置される起動用センサ(図示略)からケース40の内部に配線を引き込む連通部としての配線孔(図示略)を塞ぐこともできる。このため、ケース40の外部から配線孔を介して炎がケース40の内部に侵入することを抑制することができ、配線孔を塞ぐための発泡材を別途設ける必要がない。
【0053】
さらに、ケース40の収容空間41を介して第1発泡材51及び第3発泡材53に熱が伝わると、第1発泡材51及び第3発泡材53が発泡して、ケース40の収容空間41を埋める。すなわち、第1発泡材51は、突条部43Aと第2引戸20B及び第1引戸20Aとの間の第1空間S1を埋める。第3発泡材53は、ケース40の収容空間41の駆動部30の下方の第3空間S3を埋める。
【0054】
よって、ケース40の収容空間41を発泡材が埋めることで、ケース40の収容空間41の空気(酸素)量を減らすとともに、ケース40の収容空間41の温度上昇を抑えて、駆動部30の各機器の発火を抑制することができる。
【0055】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)加熱により発火が予想される制御部35を駆動部30よりもケース40の上方に配置して、駆動部30が制御部35よりもケース40の下方に位置する。このため、第1引戸20A及び第2引戸20Bの下面開口40Bが設けられるケース40の下部から制御部35までの距離を長くすることができ、加熱によって制御部35が発火したときの火炎がケース40の下面開口40Bから噴出するまでの時間を延ばすことができる。
【0056】
(2)制御部35と駆動部30との間には、第2断熱板65が配置されている。このため、駆動部30から制御部35への熱の伝達を抑制することができ、火災時に制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0057】
(3)第1引戸20A及び第2引戸20Bの開閉方向に沿った第2取付ベース61とフラットバー60との間には、第1断熱板62が配置されている。このため、ケース40が加熱されても、制御部35の背面への熱の伝達を抑制することができ、制御部35の周囲の温度が上昇するのを抑えることができる。
【0058】
(4)制御部35の一部は、第1断熱板62及び第2断熱板65で覆われている。このため、制御部35の周囲から制御部35への熱の伝達を抑制することができ、火災時に制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0059】
(5)駆動部30よりも樹脂量の多い制御部35、センサ制御器36、タッチスイッチ受信機37、及びバッテリ38の各機器をケース40の下面開口40Bより遠い位置に配置している。このため、加熱によって各機器が発火したときの火炎がケース40の下面開口40Bから噴出するまでの時間を延ばすことができる。
【0060】
(6)制御部35と接続される配線35Aがカバー64に挿入されることで、カバー64の外側から熱や火炎が配線35Aに直接伝わることを抑制することができる。また、防火戸1の周囲で火災が発生して加熱されたとき、第5発泡材55が加熱されて膨張するため、第5発泡材55の膨張によってカバー64の孔部66Aが埋められて、孔部66Aからカバー64の内部へ火炎が侵入することを抑制することができる。よって、ケース40に収容された制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0061】
(7)制御部35と接続される配線35Aが筒部66に挿入されることで、筒部66の外側から熱や火炎が配線35Aに直接伝わることを抑制することができ、且つ駆動部30が発火したときに火炎が筒部66に入り込むことを抑制して、筒部66からカバー64の内部へ火炎が侵入することを抑制することができる。よって、ケース40に収容された制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0062】
(8)加熱により発火が予想されるバッテリ38を駆動部30よりもケース40の内部の上方に配置して、駆動部30がバッテリ38よりもケース40の内部の下方に位置する。このため、第1引戸20A及び第2引戸20Bの下面開口40Bが設けられるケース40の下部からのバッテリ38までの距離を長くすることができ、加熱によってバッテリ38が発火したときの火炎がケース40の下面開口40Bから噴出するまでの時間を延ばすことができる。
【0063】
(9)駆動部30を収容するケース40が炎にさらされた際に、当該炎の熱によって発泡材が発泡することによって、ケース40の内部の空気をケース40の外部に追い出すことで、駆動部30の燃焼に使用される酸素を減らすことができる。よって、火災時に駆動部30が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0064】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・上記実施形態では、下面開口40Bを基準として駆動部30よりも遠い位置に制御部35を配置する例として、正面から見て右側に位置する第2引戸20Bと固定部10の上方の第2取付ベース61に制御部35を配置した。しかしながら、正面から見て左側に位置する第1引戸20Aと固定部10の上方の第2取付ベース61に第1断熱板62及び第2断熱板65を含むカバー64を設けて、カバー64内に制御部35を配置してもよい。このようにすれば、制御部35が駆動部30の火炎に直接晒されることがなく、制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0066】
・上記実施形態では、駆動部30を取り付ける第1取付ベース49と制御部35を取り付ける第2取付ベース61とを二段に配置した。しかしながら、第2取付ベース61の上方に新たな取付ベースを設置し、この取付ベースの第2引戸20Bの上方に位置する部分に制御部35を配置してもよい。このようにすれば、制御部35が駆動部30の火炎に直接晒される心配がなく、制御部35が発火するまでの時間を延ばすことができる。
【0067】
・上記実施形態において、ケース40の内部に起動用センサの配線を引き込む配線孔を連通部としたが、起動用センサ以外の機器の配線を引き込む配線孔を連通部としてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、筒部66の先端を駆動部30の下面よりも下方に位置させたが、筒部66の先端を駆動部30の上面よりも下方に位置させてもよい。このようにすれば、駆動部30の上面から上方へ延びる火炎が筒部66に侵入することを防ぐことができる。
【0069】
・上記構成において、筒部66を省略してもよい。
・上記実施形態では、バッテリ38をカバー64に収容したが、バッテリ38を収容しなくてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、第1断熱板62及び第2断熱板65にケイカル板を用いたが、第1断熱板62及び第2断熱板65に石膏ボード等の他の断熱材を用いてもよい。
【0071】
・上記構成において、制御部35の背面に設けられた第1断熱板62を省略してもよい。
・上記構成において、制御部35と駆動部30との間に設けられた第2断熱板65を省略してもよい。
【0072】
・上記構成において、図3に示すように、背面壁42とフラットバー60との間の空間である第6空間S6に熱によって発泡する第7発泡材57を設けてもよい。第7発泡材57は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第7発泡材57は、第6空間S6の背面壁42側の面に貼り付けられている。第7発泡材57は、第2引戸20Bが移動する方向において第2引戸20Bの移動範囲に亘って貼り付けられている。第7発泡材57は、背面壁42が炎によって加熱されると、背面壁42を介して熱が伝達されて発泡する。第7発泡材57が発泡すると、第7空間S7を埋めるとともに第7空間S7から溢れ出して、ケース40の収容空間41を埋める。よって、ケース40の収容空間41の温度上昇を抑えて、駆動部30の各機器の発火を抑制する。また、ケース40の収容空間41の空気(酸素)量を減らして駆動部30の各機器の発火を抑制する。なお、第7発泡材57を第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において全範囲に亘って貼り付けてもよい。
【0073】
・上記構成において、図3に示すように、駆動部30は、第1取付ベース49の支持部49Aと駆動部30との間に形成された第8空間S8によって熱が支持部49Aから駆動部30に伝達されることを抑制している。第7空間S7には、熱によって発泡する第8発泡材58が設けてもよい。第8発泡材58は、グラファイト系発泡材が用いられている。すなわち、第8発泡材58は、第1取付ベース49の支持部49Aの背面壁42と接触する面と反対側の面に貼り付けられている。第8発泡材58は、第1引戸20A及び第2引戸20Bが移動する方向において制御部35を含む駆動部30がある範囲に亘って貼り付けられている。第8発泡材58は、背面壁42が炎によって加熱されると、背面壁42及び支持部49Aを介して熱が伝達されて発泡する。第8発泡材58が発泡すると、第8空間S8を埋めるとともに第1取付ベース49の支持部49Aから溢れ出して、駆動部30の周囲を埋めるとともに、ケース40の収容空間41を埋める。よって、ケース40の収容空間41の温度上昇を抑えて、駆動部30の各機器の発火を抑制する。また、ケース40の収容空間41の空気(酸素)量を減らして駆動部30の各機器の発火を抑制する。
【0074】
・上記実施形態では、底壁43の突条部43Aに第1発泡材51を設けたが、底壁43の内側に発泡材を設けてもよい。
・上記構成において、上壁44に発泡材を設けてもよい。上壁44に設けられた発泡材は、背面壁42又は正面壁から伝わった熱によって発泡して、ケース40の収容空間41の空気を下面開口40Bに向かって押し出すことができる。
【0075】
・上記構成において、第5発泡材55を省略してもよい。
・上記構成において、第4発泡材54を省略してもよい。
・上記構成において、第3発泡材53を省略してもよい。
【0076】
・上記構成において、第2発泡材52を省略してもよい。
・上記構成において、第1発泡材51を省略してもよい。
・上記構成において、発泡材をグラファイト系発泡材としたが、エポキシ系発泡材やブチル系発泡材等の他の発泡材を用いてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、第1引戸20A及び第2引戸20Bの上端の全てが下面開口40Bに位置したが、第1引戸20A及び第2引戸20Bの上端の少なくとも一部が下面開口40Bに位置してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、防火戸1をステンレスやアルミニウムから形成したが、防火戸1をスチール等の他の材料から形成してもよい。
・上記実施形態では、引き分け式の防火戸1としたが、片引き式の防火戸としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…防火戸、3…縦枠、10…固定壁、11…中方立、12…巾木、13…耐熱ガラス、20A…第1引戸、20B…第2引戸、21…耐熱ガラス、22…戸先側縦框、23…戸尻側縦框、24…上框、25…下框、30…駆動部、31…電気モータ、32…駆動スプロケット、33…従動スプロケット、34…チェーン、34A…第1部分、34B…第2部分、35…制御部、35A…配線、36…センサ制御器、37…タッチスイッチ受信機、38…バッテリ、40…ケース、40A…正面開口部、40B…下面開口、41…収容空間、42…背面壁、43…底壁、43A…突条部、44…上壁、44A…上側固定壁、45…側壁、47…ヒンジ、48…点検カバー、49…第1取付ベース、49A…支持部、49B…連結部、49C…レール部、51…第1発泡材、52…第2発泡材、53…第3発泡材、54…第4発泡材、55…第5発泡材、57…第7発泡材、58…第8発泡材、60…フラットバー、61…第2取付ベース、62…第1断熱板、64…カバー、64A…蓋部、64B…下壁、65…第2断熱板、66…筒部、66A…孔部、100…走行レール、110…第1ドアハンガ、120…第2ドアハンガ、200…間口、S1…第1空間、S2…第2空間、S3…第3空間、S4…第4空間、S5…第5空間、S6…第6空間、S7…第7空間、S8…第8空間。
図1
図2
図3