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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コンピュータシステムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20241021BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/005
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020074668
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021173541
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】廣尾 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】桐木 佑薫
(72)【発明者】
【氏名】濱▲崎▼ 一晟
(72)【発明者】
【氏名】新 豊明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 友貴
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046174(JP,A)
【文献】特開2004-061298(JP,A)
【文献】特開2006-194795(JP,A)
【文献】特開2009-216500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサが、複数の構成施設を含む交通結節点での該構成施設間の移動方向を示す地図データを参照して、前記交通結節点での移動手段の変更に関する検索を実行するコンピュータシステムであって、
前記地図データが、前記構成施設に関する情報を示す構成施設データと、前記交通結節点での乗換に関する情報を示す乗換データと、を含み、前記構成施設データは、前記構成施設データに含まれるレコードが参照される条件を示す有効条件を含み
前記プロセッサが、第1移動手段の終点の構成施設である第1構成施設が複数の前記交通結節点に属していない場合、前記第1構成施設の前記構成施設データにおける、入力された検索条件を満たす前記有効条件が設定されたレコードを参照して前記交通結節点を特定し、前記第1構成施設が複数の前記交通結節点に属している場合、第2移動手段に対応する前記第1構成施設の前記構成施設データにおける前記レコードを参照して前記交通結節点を特定し、前記特定された前記交通結節点と前記第2移動手段との双方に対応する構成施設の前記構成施設データにおける前記レコードを参照して、該構成施設を第2構成施設として特定し、前記乗換データにおける、前記第1構成施設から前記第2構成施設へと向かう前記移動方向を参照して、前記検索を実行する、
コンピュータシステム。
【請求項2】
前記地図データが、前記移動方向に対応する、始点の構成施設から終点の構成施設に至る道筋である変更経路をさらに示し、
前記プロセッサが前記検索において、前記交通結節点での前記移動手段の変更に関する前記変更経路を抽出する、
請求項1に記載のコンピュータシステム。
【請求項3】
前記地図データが、前記変更経路のそれぞれについて、該変更経路が抽出される条件である経路条件をさらに示し、
前記プロセッサが前記検索において、前記検索条件を満たす前記経路条件に関連付けられた前記変更経路を抽出する、
請求項2に記載のコンピュータシステム。
【請求項4】
前記経路条件が、時間幅と、前記交通結節点における環境と、前記交通結節点の周辺の地理的位置における環境と、ユーザ属性とのうちの少なくとも一つにより表される、
請求項3に記載のコンピュータシステム。
【請求項5】
第1制御部からの指示に応答して、記憶部に記憶された地図データを参照する参照ステップを第2制御部に実行させるプログラムであって、
前記地図データが、複数の構成施設を含む交通結節点での該構成施設間の移動方向を示し、
前記第1制御部が、前記交通結節点での移動手段の変更に関する検索を実行し、
前記地図データが、前記構成施設に関する情報を示す構成施設データと、前記交通結節点での乗換に関する情報を示す乗換データと、を含み、前記構成施設データは、前記構成施設データに含まれるレコードが参照される条件を示す有効条件を含み
前記第1制御部が、第1移動手段の終点の構成施設である第1構成施設が複数の前記交通結節点に属していない場合、前記第1構成施設の前記構成施設データにおける、入力された検索条件を満たす前記有効条件が設定されたレコードを前記第2制御部に参照させて前記交通結節点を特定し、前記第1構成施設が複数の前記交通結節点に属している場合、第2移動手段に対応する前記第1構成施設の前記構成施設データにおける前記レコードを前記第2制御部に参照させて前記交通結節点を特定し、前記第2制御部に前記特定された前記交通結節点と前記第2移動手段との双方に対応する構成施設の前記構成施設データにおける前記レコードを参照させて、該構成施設を第2構成施設として特定し、前記乗換データにおける、前記第1構成施設から前記第2構成施設へと向かう前記移動方向を前記第2制御部に参照させて、前記検索を実行する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はコンピュータシステム、処理方法、プログラム、および/またはデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、公共交通機関のリンク情報及びノード情報に基づいて該公共交通機関を用いた経路を所定のアルゴリズムで探索する経路探索装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-106076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動手段の変更に関する検索を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、プロセッサを備える。プロセッサは、複数の構成施設を含む交通結節点での該構成施設間の移動方向を示す地図データを参照して、交通結節点での移動手段の変更に関する検索を実行する。地図データは、構成施設に関する情報を示す構成施設データと、交通結節点での乗換に関する情報を示す乗換データと、を含み、構成施設データは、構成施設データに含まれるレコードが参照される条件を示す有効条件を含む。プロセッサは、第1移動手段の終点の構成施設である第1構成施設が複数の交通結節点に属していない場合、第1構成施設の構成施設データにおける、入力された検索条件を満たす有効条件が設定されたレコードを参照して交通結節点を特定し、第1構成施設が複数の交通結節点に属している場合、第2移動手段に対応する第1構成施設の構成施設データにおけるレコードを参照して交通結節点を特定し、特定された交通結節点と第2移動手段との双方に対応する構成施設の構成施設データにおけるレコードを参照して、該構成施設を第2構成施設として特定し、乗換データにおける、第1構成施設から第2構成施設へと向かう移動方向を参照して、検索を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る経路検索システムの一例を示す図である。
図2】サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】交通結節点の一例を示す図である。
図4】地図データの一例を示す図である。
図5】交通結節点の別の例を示す図である。
図6】地図データの別の例を示す図である。
図7】実施形態に係る経路検索システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図8】移動手段の変更に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0008】
[システムの概要]
本実施形態では、一例として、本開示に係るコンピュータシステムを経路検索システム1に適用する。実施形態に係る経路検索システム1は、ユーザにより指定された出発地から目的地までの移動経路を検索してユーザにその移動経路を提供するコンピュータシステムである。ユーザとは、経路検索システム1などのような、本開示に係るコンピュータシステムを利用して情報を入手する人をいう。出発地とは、移動経路を検索するための始点として設定される場所のことをいい、目的地とはその検索のための終点として設定される場所をいう。出発地および目的地はいずれも経路検索の基準点である。移動経路とは、或る地点から別の地点までの移動に関する情報をいい、少なくとも、該或る地点から該別の地点までの経路を示す。一例では、移動経路は、出発地から目的地までの経路だけでなく、その経路の属性(以下では「経路属性」という)も示すことができる。経路属性とは、経路の性質、特徴、または状況を表す任意の情報である。例えば、経路属性は、交通機関などの移動手段と、経路を移動するための所要時間または費用と、経路の状況(例えば交通情報)と、経路に関連する地物(すなわち地物情報)と、経路に関連する事業者(すなわち事業者情報)と、経路に関連するサービス情報(例えば広告情報、クーポン情報など)とのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0009】
地物とは、地上に存在する任意の有体物または無体物をいう。地物は自然物でも人工物でもよい。例えば、地物は、山地、農地、住宅地、更地、河川、湖、海、観光地、道路、鉄道、建物、公園、塔、信号機、踏切、横断歩道、歩道橋、浮標などを含み得る。無体物である地物の例として、任意の目的で設定された区域(例えば、撮影禁止区域、一時的な進入禁止区域など)、イベントが開催される区域、集合場所、撮影スポットなどが挙げられる。当然ながら、地物の種類はこれらに限定されない。
【0010】
一例では、経路検索システム1は様々な交通機関または交通手段を含む選択肢から適切な1以上の移動経路を検索してその移動経路をユーザに提供する。この経路検索において、経路検索システム1は移動手段の変更に関する検索を実行し得る。移動手段とは、移動するための方法をいう。移動手段は移動体に限定されず、移動体を用いない方法も含む概念である。移動手段は公共交通機関でもよいし、ユーザが自分で操作する移動体でもよい。移動手段は、地上または地下の移動体でもよいし、空中の移動体でもよいし、水上または水中の移動体でもよい。移動手段の例として徒歩、自転車、バイク、自家用車、バス、タクシー、在来線、高速鉄道、航空機、およびフェリーが挙げられるが、当然ながら移動手段はこれらに限定されるものではない。「移動手段の変更」とは或る移動手段から別の移動手段に変えることをいう。移動手段が限定されないことに対応して、移動手段の変更も限定されない。或る移動手段から別の移動手段への乗換は、移動手段の変更の一例である。移動手段の変更の例として、タクシーから在来線への乗換、或る路線(鉄道路線、バス路線など)から別の路線(鉄道路線、バス路線など)への乗換、自家用車から徒歩への変更、徒歩から在来線への変更などが挙げられる。「移動手段の変更に関する検索」とは、移動手段の変更に関係する情報を探し出す処理をいう。乗換方法の検索は移動手段の変更に関する検索の一例である。
【0011】
移動手段の変更に関連して、経路検索システム1は交通結節点に関する処理を実行する。交通結節点とは移動手段の変更が実施される場所(要するに、移動手段が変わる場所)をいう。より具体的には、交通結節点は、複数の同種あるいは異種の移動手段の接続が行われる場所をいう。交通結節点は少なくとも一つの構成施設を含む。構成施設とは、移動手段を変更するためにユーザに利用される施設をいう。構成施設は、交通結節点を構成する要素として経路検索システム1により処理される。構成施設の例として、駅、バス停、タクシー乗り場、港、空港、駐車場、および駐輪場が挙げられるが、構成施設はこれらに限定されない。一つの構成施設が複数の交通結節点と関連付けられてもよい。したがって、交通結節点および構成施設は多対多の関係(言い換えるとM:Nの関係)にある。
【0012】
[システムの構成]
図1は経路検索システム1の一例を示す図である。経路検索システム1は、移動経路をユーザに提供するコンピュータであるサーバ10を備える。一例では、サーバ10は通信ネットワークを介して地図データベース20、および1以上のユーザ端末30と接続する。
【0013】
サーバ10は経路検索システム1の主要な機能を実行するコンピュータである。サーバ10はユーザ端末30からの要求に従って経路検索を実行し、検索された移動経路をユーザ端末30に提供する。この経路検索において、サーバ10は移動手段の変更に関する検索を実行する。
【0014】
図1はサーバ10の機能構成の一例も示す。サーバ10は機能モジュールとして通信部11および検索部12を備える。通信部11はユーザ端末30との間でデータを送受信する機能モジュールである。具体的には、通信部11は経路検索の要求をユーザ端末30から受信し、検索された移動経路を検索結果としてそのユーザ端末30に送信する。検索部12は移動経路を検索する機能モジュールである。
【0015】
サーバ10として機能するコンピュータは限定されない。一例では、サーバ10は業務用サーバなどの大型のコンピュータによって構成される。図2は、サーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、サーバ10は制御回路100を有する。一例では、制御回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、または取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、またはプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。一例では、プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、サーバ10の各機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0016】
ストレージ103は、コンピュータをサーバ10として機能させるためのプログラム120を記憶する。プログラム120は、コンピュータを通信部11および検索部12として機能させるためのプログラムコードを含む。プログラム120は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラム120は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0017】
サーバ10は一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで論理的に一つのサーバ10が構成される。
【0018】
地図データベース20は、経路検索に必要な地図データ21を永続的に記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。地図データベース20は経路検索システム1の一部として構築されてもよいし、経路検索システム1とは別のコンピュータシステムに設けられてもよい。
【0019】
地図データ21は、地図を構成する地図要素を示す。地図要素の種類および表現方法は限定されず、任意の方針で設計されてよい。地図要素の例としてノードおよびリンクが挙げられる。ノードとは、経路を特徴づける位置をいい、より具体的には、移動体の移動方法(例えば方向、速度など)を変えることができる位置、または該移動方法が変わる位置をいう。交通結節点および構成施設はいずれもノードの一種であり得る。リンクとは、経路を示すために設定される仮想的な線のことをいい、隣接するノード間を結ぶ。リンクの形状は直線でも曲線でもよく、あるいは、直線と曲線との組合せでもよい。地上においては、リンクの形状は道路の形状に依存し得る。ノードおよびリンクが設定される位置は限定されず、例えば、ノードおよびリンクは地上、地下、空中、水上、または水中に設定され得る。
【0020】
一例では、サーバ10または地図データベース20は、地図データ21を第1制御部(より具体的には、検索部12)からの指示に応答して参照する参照ステップを、該第1制御部とは異なる第2制御部に実行させるプログラムを実行する。例えば、このプログラムはアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)として実装される。第1制御部および第2制御部はいずれも機能モジュールであり、プロセッサ上で実現される。第1制御部が実行されるプロセッサと第2制御部が実行されるプロセッサとが同じでもよいし異なってもよい。例えば、第1制御部および第2制御部の少なくとも一つはプロセッサ101上で実現される。
【0021】
ユーザ端末30はユーザによって操作されるコンピュータ(クライアント端末)である。ユーザ端末30は固定端末でもよいし携帯端末でもよい。ユーザ端末30の例として、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、またはパーソナルコンピュータが挙げられるが、端末の種類はこれらに限定されない。図1では一つのユーザ端末30のみを示すが、経路検索システム1にアクセスするユーザ端末30の台数は限定されない。
【0022】
[地図データ]
地図データ21は経路検索のために用いられ、一例では、移動手段の変更を含む経路を検索するために用いられる。地図データ21は、交通結節点と、該交通結節点を構成する少なくとも一つの構成施設との関連付けとを表現し、その交通結節点での構成施設間の移動方向をさらに表現する。交通結節点および構成施設の関係と移動方向とを定義するための具体的なデータ構造は限定されず、任意の手法で実装されてよい。図3図6を参照しながら、地図データ21のデータ構造の様々な例を説明する。
【0023】
図3および図4を参照しながら地図データ21の一例を説明する。図3は交通結節点の一例である交通結節点200を示す図である。図4はその交通結節点200を示す地図データ21の一例を地図データ21Aとして示す図である。
【0024】
交通結節点200は、A駅と、降車専用のバス停Baと、乗車専用のバス停Bbという三つの構成施設によって構成される。これらの構成施設間での想定される乗換(移動手段の変更)は、バス停Baでバスを降りてA駅から電車に乗ること、A駅で電車を降りてバス停Bbからバスに乗ること、および、バス停Baでバスを降りてバス停Baから別のバスに乗ることである。すなわち、交通結節点200では、乗換の方向(移動手段の変更に関する移動方向)として、バス停BaからA駅への移動方向201と、A駅からバス停Bbへの移動方向202と、バス停Baからバス停Bbへの移動方向203とが存在する。見方を変えると、A駅からバス停Baの移動方向と、バス停BbからA駅への移動方向と、バス停Bbからバス停Baへの移動方向とは、乗換の方向とは見做されない。ここで、移動方向とは、或る地点から別の地点への移動の大凡の向きをいい、例えば、該或る地点を始点とし該別の地点を終点とする矢印で表され得る。移動方向は移動経路によってさらに具体的に表現され得る。言い換えると、移動経路は、移動方向に加えて具体的な道筋を示す情報であるといえる。本開示では、交通結節点での構成施設間の移動方向に対応する移動経路、すなわち、移動手段の変更に関する移動経路のことを「変更経路」ともいう。変更経路は、出発地から目的地までの移動経路の一部である。
【0025】
地図データ21Aは、交通結節点と、構成施設と、交通結節点での構成施設間の移動方向とに関するデータ構造を有する。具体的には、地図データ21Aは交通結節点テーブル22、構成施設テーブル23、および乗換テーブル24を含む。
【0026】
交通結節点テーブル22は、交通結節点に関する情報を示す交通結節点データを記憶するデータテーブルである。一例では、交通結節点データの各レコードは、個々の交通結節点を一意に特定する交通結節点IDと、交通結節点の名称(交通結節点名)とを含む。
【0027】
構成施設テーブル23は、構成施設に関する情報を示す構成施設データを記憶するデータテーブルである。一例では、構成施設データの各レコードは、個々の構成施設を一意に特定する構成施設IDと、その構成施設に対応する交通結節点IDと、構成施設の名称(施設名)と、代表フラグと、有効条件とを含む。代表フラグは、その構成施設が一つの交通結節点における1以上の構成施設を代表するか否かを示す情報であり、二値で示される。一例では、代表フラグは、構成施設が代表であることを示す「1」と、構成施設が代表でないことを示す「0」とのいずれか一方を示す。本開示では、代表の構成施設を「代表施設」ともいう。代表施設は任意に設定されてよい。例えば、代表施設は、交通結節点の中で最も中心的な役割を果たす施設、最も利用者が多い構成施設、あるいはランドマークの役割を持つ構成施設でもよい。有効条件は、レコードが有効である条件、すなわち、経路検索においてレコードが参照される条件を示す情報である。図4の例では有効条件に時間幅が設定されているが、有効条件を規定する情報の種類はこれに限定されない。本開示において「時間幅」とは、或る時点から別の時点までの間の時間の区間をいう。時間幅の表現方法は限定されず、例えば、時間幅は時間帯(1日の中での或る時刻から別の時刻までの時間の区間)、日付、曜日、週、月、年などの任意の単位を用いて表現されてよい。当然ながら、時間幅の長さも何ら限定されない。
【0028】
乗換テーブル24は、交通結節点での乗換に関する情報を示す乗換データを記憶するデータテーブルである。一例では、乗換データの各レコードは、個々の乗換方法を一意に特定する乗換IDと、乗換に用いられる二つの構成施設のID(第1構成施設IDおよび第2構成施設ID)と、移動方向と、移動手段と、移動コストと、移動経路(変更経路)とを含む。移動方向は始点の構成施設から終点の構成施設への方向によって表される。移動コストは移動に掛かる負荷であり、例えば移動時間で表される。移動経路(変更経路)は、始点の構成施設から終点の構成施設に至る道筋を示し、例えば、その道筋を構成する一群のリンクを始点から終点へと向かう順に沿って並べることで表される。
【0029】
構成施設テーブル23は交通結節点IDによって交通結節点テーブル22と関連付けられ、この関係によって、交通結節点に属する構成施設が定義される。乗換テーブル24は二つの構成施設IDによって構成施設テーブル23と関連付けられ、この関係によって、交通結節点で可能な乗換方法が表される。地図データ21Aはこれらのようなデータテーブル間の関係を示すので、経路検索システム1は地図データ21Aを参照することで交通結節点および構成施設に関する詳細な情報を得ることができる。
【0030】
地図データ21Aは交通結節点200の名称が「ハブHa」であることを示す。地図データ21Aで示されるように、ハブHaでは、5時~24時ではA駅が代表施設であり、残りの時間帯(0時~5時)ではバス停Baが代表施設である。A駅およびバス停Baは常に有効な構成施設である。一方、バス停Bbは平日にのみ有効な構成施設であり、これは、バス停Bbからは平日のみバスが出発することを意味する。したがって、経路検索の条件として休日が指定された場合には、経路検索システム1は、バス停Bbを含む移動経路を抽出しない。乗換テーブル24において、乗換ID「T10030」のレコードは移動方向201を示し、乗換ID「T10031」のレコードは移動方向202を示し、乗換ID「T10032」のレコードは移動方向203を示す。これらのレコードはさらに、その移動方向201~203のそれぞれについての具体的な移動経路(変更経路)を示す。
【0031】
図5および図6を参照しながら地図データ21の別の例を説明する。図5は交通結節点の別の例である交通結節点210を示す図である。図6はその交通結節点210を示す地図データ21の一例を地図データ21Bとして示す図である。
【0032】
交通結節点210はC駅およびバス停Bcという二つの構成施設によって構成される。これらの構成施設間での想定される乗換(移動手段の変更)は、C駅で電車を降りてバス停Bcからバスに乗ること、および、バス停Bcでバスを降りてC駅から電車に乗ることである。すなわち、交通結節点210では、乗換の方向(移動手段の変更に関する移動方向)として、C駅からバス停Bcへの移動方向211と、バス停BcからC駅への移動方向212とが存在する。
【0033】
C駅とバス停Bcとの間には三つの道R1,R2,R3が存在し、したがって、交通結節点210では移動方向211,212のそれぞれについて三つの変更経路が存在する。具体的には、移動方向211に対応して、道R1に沿った変更経路221と、道R2に沿った変更経路222と、および道R3に沿った変更経路223とが存在する。また、移動方向212に対応して、道R1に沿った変更経路231と、道R2に沿った変更経路232と、および道R3に沿った変更経路233とが存在する。一つの移動方向に対応して複数の変更経路が存在する場合には、それぞれの変更経路は特定の条件下で主たる経路になり得る。主たる経路とは最も典型的な変更経路をいい、例えば、交通量が最も多い変更経路でもよい。一例では、或る交通結節点では、通常は、最も距離が短い変更経路が主たる経路であり、雨天時には、屋根または庇に覆われた変更経路が主たる経路であり、特定の時間幅では特定の変更経路が主たる経路であり得る。特定の通行者にとっての主たる経路が存在してもよく、この例として、車椅子利用者のためのバリアフリーの変更経路、視覚障碍者のための点字ブロックを有する変更経路などが挙げられる。
【0034】
地図データ21Aと同様に地図データ21Bも、交通結節点と、構成施設と、交通結節点での構成施設間の移動方向とに関するデータ構造を有する。具体的には、地図データ21Bは、交通結節点テーブル22、構成施設テーブル23、および乗換テーブル24Bを含む。交通結節点テーブル22および構成施設テーブル23のデータ構造は地図データ21Aと同じである。これに対して、乗換テーブル24Bは一つの乗換方向について複数の移動経路(変更経路)を含み得る。
【0035】
一例では、乗換テーブル24Bは移動コスト、移動経路(変更経路)、および経路条件の組合せを複数含み得る。経路条件は、移動方向に対応する移動経路(変更経路)が抽出される条件、すなわち、経路検索においてその移動経路(変更経路)が参照される条件を示す情報である。図6の例では経路条件が天候または時間幅により示されている。「標準」という経路条件は、他の経路条件に該当しない場合に選択される初期値(デフォルト値)である。経路条件を規定する情報の種類はこれに限定されない。例えば、経路条件は天候以外の環境(例えば、イベントの有無)により表されてもよいし、ユーザの特徴または性質を示すユーザ属性(例えば、性別、年齢、車椅子利用者、視覚障碍者など)により表されてもよい。経路条件により示される環境は、交通結節点における環境(例えば天候など)でもよいし、交通結節点の周辺の地理的位置における環境(例えば、イベントの開催、天候など)でもよい。
【0036】
地図データ21Aと同様に地図データ21Bにおいても、構成施設テーブル23は交通結節点IDによって交通結節点テーブル22と関連付けられ、この関係によって、交通結節点に属する構成施設が定義される。乗換テーブル24Bは二つの構成施設IDによって構成施設テーブル23と関連付けられ、この関係によって、交通結節点で可能な乗換方法が表される。地図データ21Bを用いる場合でも、経路検索システム1は交通結節点および構成施設に関する詳細な情報を得ることができる。
【0037】
地図データ21Bは交通結節点210の名称が「ハブHc」であることを示す。地図データ21Bで示されるように、ハブHcでは、C駅およびバス停Bcは常に有効であり、C駅が代表施設である。乗換テーブル24Bにおいて、乗換ID「T10140」のレコードは移動方向211を示し、乗換ID「T10141」のレコードは移動方向212を示す。これらのレコードはさらに、その移動方向211,212のそれぞれについて複数の具体的な変更経路を示す。乗換ID「T10140」のレコードでは、変更経路221は移動経路[1]として、変更経路222は移動経路[2]として、変更経路223は移動経路[3]として、それぞれ定義されている。乗換ID「T10141」のレコードでは、変更経路231は移動経路[1]として、変更経路232は移動経路[2]として、変更経路233は移動経路[3]として、それぞれ定義されている。変更経路221,231は標準の道筋であり、変更経路222,232は雨天時の経路であり、変更経路223,233は朝に利用される経路であるといえる。
【0038】
図4および図6はいずれも一つの交通結節点についての情報を示すが、当然ながら交通結節点は複数存在し、これに伴って、地図データ21は複数の交通結節点についての情報を示すことに留意されたい。
【0039】
個々のデータテーブルの構造は上記の例に限定されず、任意の方針でデータ構造が設計されてよい。例えば、上述した各種データテーブルの少なくとも一つが任意の方針で正規化または非正規化されて一または複数のデータテーブル上に記憶されてもよい。一例では、正規化によって、移動コスト、移動経路(変更経路)、および経路条件を乗換テーブル24,24Bとは別のデータテーブルで規定してもよい。構成施設データは代表フラグおよび有効条件のうちの少なくとも一つのデータ項目を有さなくてもよい。乗換データは、移動手段、移動コスト、移動経路、および経路条件のうちの少なくとも一つのデータ項目を有さなくてもよい。
【0040】
一例では、地図データ21は、通行の状況を把握するために用いられる情報であるプローブ情報を用いて生成されてよい。プローブ情報の例として、通路に設けられたセンサから得られる通行人の情報と、多数の通行者の携帯端末から得られる位置情報とが挙げられるが、プローブ情報はこれらに限定されない。地図データ21を生成するコンピュータシステム(本開示ではこれを「生成システム」ともいう。)は限定されず、例えば、経路検索システム1でもよいし、他のコンピュータシステムでもよい。
【0041】
一例では、生成システムは、収集されたプローブ情報に対する統計処理を実行することで構成施設を特定する。例えば、生成システムはプローブ情報から移動速度の履歴を算出し、その速度に変化が生じた地点に対応する施設を構成施設として特定する。速度に変化が生じた地点は、例えば、移動体に乗っていた人がその移動体から降りて歩き始めたり、歩いていた人が移動体に乗ったりした地点であると考えられるので、構成施設として見做すことができる。一例では、生成システムは、隣接する二つの速度変化の間の時間が所与の閾値Ta以下である場合に、あるいは、該二つの速度変化に対応する地理的位置間の距離が所与の閾値Tb以下である場合に、対応する二つの構成施設を共通の一つの交通結節点に所属させる。
【0042】
生成システムは、交通結節点内の構成施設間の動きに対応するプローブ情報に対する統計処理を実行することで移動手段を特定し、さらに、移動手段の変更に関する情報(例えば、移動方向、移動経路(変更経路)、移動コスト、経路条件など)を推定してもよい。生成システムはその統計処理から得られる情報(例えば、個々の時間帯での通行者数など)を所与のルールに当てはめて構成施設の代表フラグおよび有効条件を決定してもよい。生成システムは、気象システムなどの他のコンピュータシステムから気象情報などの必要な情報を取得し、その情報をさらに所与のルールに当てはめて代表フラグおよび有効条件を決定してもよい。
【0043】
個々のデータの個々のデータ項目は静的に設定されてもよいし動的に設定されてもよい。「静的に設定される」とは、値が予め設定され、人手の介入がない限りはその設定が変更されないことをいう。一方、「動的に設定される」とは、値が任意の事象に応じて人手の介入無しに変更され得ることをいう。動的な設定は、所与のデータ項目を制御するプログラムが所定のコンピュータ上で実行されることで実現される。例えば、生成システムは交通事故、工事による通行止め、イベントの開催、臨時改札口の設置などのような事象を示す情報に応答して、所定のデータまたはデータ項目を動的に設定してもよい。
【0044】
[システムでの処理手順]
図7を参照しながら、経路検索システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る経路検索方法を説明する。図7は経路検索システム1の動作の一例を示すフローチャートであり、より具体的には、経路検索の全体の流れを処理フローS1として示す。
【0045】
ステップS11では、通信部11がユーザ端末30から検索要求を受信する。検索要求は移動経路の検索条件を示すデータ信号である。ユーザ端末30は経路検索に必要な情報と、その情報の送信の指示とに関するユーザ入力を受け付ける。ユーザ端末30はその入力に応答して検索条件を生成し、この検索条件を示す検索要求をサーバ10に向けて送信する。通信部11はその検索要求を受信する。検索条件は、ユーザにより指定された出発地および目的地を少なくとも示す。検索条件は出発日時および到着日時のうちの少なくとも一つ、少なくとも一つの経由地などの、他のデータ項目をさらに含んでもよい。
【0046】
ステップS12では、検索部12がその検索条件を満たす1以上の移動経路を検索する。検索部12は複数の移動経路を検索してもよく、例えば、道筋が互いに異なる複数の移動経路、道筋は同じだが交通手段または移動日時が互いに異なる複数の移動経路、あるいはこれらの移動経路の双方を検索してもよい。検索部12は検索条件に従って地図データベース20内の地図データ21を参照して移動経路を検索する。個々の移動経路の具体的な検索方法は限定されず、検索部12は任意のアルゴリズムを用いて移動経路を検索してよい。この検索処理の中で、検索部12は移動手段の変更に関する検索を実行し得る。例えば、検索部12は乗換方法の検索を実行する。移動手段の変更に関する処理の例は処理フローS2として後述する。
【0047】
ステップS13では、通信部11が検索結果をユーザ端末30に向けて送信する。検索結果は、検索された1以上の移動経路を示すデータ信号である。一例では、ユーザ端末30はその検索結果を受信および表示し、これによりユーザはその検索結果を確認することができる。ユーザ端末30は検索結果を音声によって出力してもよい。移動経路が移動手段の変更を含む場合には、ユーザはその変更箇所(すなわち、交通結節点)と、その場所での移動方向および具体的な変更経路を知ることができる。
【0048】
図8を参照しながら、移動手段の変更に関する処理について説明する。図8はその処理の一例を示すフローチャートであり、より具体的には、或る交通結節点における第1移動手段から第2移動手段への変更に関する検索の一例を処理フローS2として示す。処理フローS2はステップS12において少なくとも一回実行され得る。
【0049】
ステップS21では、検索部12が、第1移動手段の終点である構成施設を第1構成施設として特定する。上述したように移動経路の検索方法は限定されないので、検索部12は任意のアルゴリズムを用いて第1構成施設を特定してよい。
【0050】
ステップS22では、検索部12がその第1構成施設に対応する交通結節点、すなわち、その第1構成施設が属する交通結節点を特定する。一例では、検索部12はまず第1構成施設の構成施設データを参照して交通結節点IDを特定する。構成施設テーブル23が第1構成施設について複数のレコードを記憶する場合には、検索部12は、第1構成施設が代表として設定されているレコードを参照して交通結節点IDを特定してもよい。上述したように、一つの構成施設が複数の交通結節点に属する場合がある。この場合には、検索部12は次の第2移動手段を任意のアルゴリズムによって決定し、その第2移動手段に対応する第1構成施設の構成施設データを参照して交通結節点IDを特定する。続いて、検索部12はその交通結節点IDを有する交通結節点データを参照する。このように、一例では検索部12は、第1構成施設の構成施設データに対応する交通結節点データを参照することで交通結節点を特定する。
【0051】
ステップS23では、検索部12が、特定された交通結節点と第2移動手段との双方に対応する構成施設を第2構成施設として特定する。一例では、検索部12は、特定された交通結節点IDを有し、且つ第2移動手段に対応する構成施設を示す構成施設データを参照し、これにより第2構成施設を特定する。この第2構成施設は第2移動手段の始点である。
【0052】
ステップS24では、検索部12が、第1構成施設から第2構成施設への移動方向に対応する変更経路を抽出する。一例では、検索部12は、第1構成施設および第2構成施設の双方の構成施設IDを第1構成施設IDおよび第2構成施設IDとして有し、且つ第1構成施設から第2構成施設へと向かう移動方向を示す乗換データを参照して、その変更経路を抽出する。移動方向に対応する変更経路が複数存在する場合には、検索部12は経路条件が検索条件に対応する少なくとも一つの変更経路を選択する。例えば、検索部12は天候、日時などの検索条件に対応する変更経路を選択する。検索部12は、抽出された変更経路に対応する移動手段および移動コストもその乗換データから取得できる。このように、検索部12は第1移動手段から第2移動手段への変更に関する具体的な情報をその乗換データから得ることができる。
【0053】
ステップS25では、検索部12が第2移動手段による経路を検索する。上述したように、検索部12は任意のアルゴリズムを用いてその経路を検索してよい。
【0054】
処理フローS2の具体例として、地図データ21Aを前提とする、鉄道からバスへの乗換に関する検索を説明する。ステップS21では、検索部12は第1移動手段の終点であるA駅を第1構成施設として特定する。ステップS22では、検索部12はA駅が代表として設定されている構成施設データを参照して交通結節点ID「H00001」を特定する。そして、検索部12はその交通結節点IDを有する交通結節点データ、すなわちハブHaの交通結節点データを参照する。ステップS23では、検索部12は交通結節点ID「H00001」を有し、且つ第2移動手段に対応するバス停Bbの構成施設データを参照することで、そのバス停Bbを第2構成施設として特定する。ステップS24では、検索部12はA駅からバス停Bbへの移動方向202に対応する変更経路を抽出する。具体的には、検索部12は乗換ID「T10031」のレコードで示される移動経路「L30012,L30013,…」を変更経路として抽出する。検索部12はそのレコードで示される移動手段および移動コストも取得できる。ステップS25では、検索部12が第2移動手段による経路を検索する。
【0055】
処理フローS2の別の具体例として、地図データ21Bを前提とする、バスから鉄道への乗換に関する検索を説明する。ステップS21では、検索部12は第1移動手段の終点であるバス停Bcを第1構成施設として特定する。ステップS22では、検索部12はバス停Bcを示す構成施設データを参照して交通結節点ID「H00002」を特定する。そして、検索部12はその交通結節点IDを有する交通結節点データ、すなわちハブHcの交通結節点データを参照する。ステップS23では、検索部12は交通結節点ID「H00002」を有し、且つ第2移動手段に対応するC駅の構成施設データを参照することで、そのC駅を第2構成施設として特定する。ステップS24では、検索部12はバス停BcからC駅への移動方向212に対応する変更経路を抽出する。具体的には、検索部12は乗換ID「T10141」のレコードで示される三つの移動経路のうち、検索条件に対応する少なくとも一つを変更経路として選択する。ステップS25では、検索部12が第2移動手段による経路を検索する。
【0056】
地図データ21Bを用いる場合には、ステップS24において抽出される変更経路は検索条件によって変わり得る。例えば、検索条件で示される出発日時から到着日時の間の任意の日時を「移動日時」というとして、検索部12はその移動日時と、該移動日時における天候とに対応する変更経路を抽出する。ハブHcの通過時刻が11時であり、その時刻の予報が晴であれば、検索部12は移動経路[1](L30017,L30016,…)のみを変更経路として抽出する。ハブHcの通過時刻が11時であり、その時刻の予報が雨であれば、検索部12は移動経路[2](L30029,L30028,…)のみを変更経路として抽出してもよい。あるいは、検索部12はその場合に、移動経路[2](L30029,L30028,…)を最も優先度の高い変更経路として特定し、移動経路[1](L30017,L30016,…)を次に優先度の高い変更経路として抽出してもよい。
【0057】
移動手段の変更では、交通結節点200のように移動方向が重要になる場合もあれば、交通結節点210のように変更経路が重要になる場合もある。一例では、経路検索システム1はその移動方向または変更経路も考慮して経路検索を実行する。したがって、経路検索システム1は実状に沿った移動手段の変更のみをユーザに提示することができる。言い換えると、経路検索システム1は、物理的に移動できない経路、意味の無い乗換などのような、不可能なまたは意味の無い移動手段の変更をユーザに提示しない。
【0058】
経路検索システム1はコンピュータシステムのハードウェア資源の使用量を低減する効果も奏し得る。経路検索システム1は、実際には不可能であるかまたは意味の無い移動手段の変更をユーザに提示しないので、ユーザは或る交通結節点について1回の検索で、有効な移動手段の変更を知ることができる。したがって、ユーザは再検索をする必要がなく、したがって検索の回数が減る。その結果、検索の実行回数および検索のための通信回数が削減されるので、プロセッサの処理負荷、ネットワークトラフィックなどのようなハードウェア資源の使用量を低減することができる。
【0059】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、プロセッサを備える。プロセッサは、複数の構成施設を含む交通結節点での該構成施設間の移動方向を示す地図データを参照して、交通結節点での移動手段の変更に関する検索を実行する。
【0060】
本開示の一側面に係るプログラムは、第1制御部からの指示に応答して、記憶部に記憶された地図データを参照する参照ステップを第2制御部に実行させる。地図データは、複数の構成施設を含む交通結節点での該構成施設間の移動方向を示す。第1制御部は、交通結節点での移動手段の変更に関する検索を実行する。
【0061】
このような側面においては、交通結節点での構成施設間の移動方向を示す地図データが用いられるので、移動手段の変更に関する検索を支援することができる。例えば、その交通結節点において移動手段を変更する際の具体的な移動方向を検索することが可能になる。
【0062】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、地図データが、移動方向に対応する少なくとも一つの変更経路をさらに示してもよい。プロセッサは検索において、交通結節点での移動手段の変更に関する変更経路を抽出してもよい。地図データが交通結節点での移動経路を示すことで、移動手段を変更する際の具体的な道筋を提示することが可能になる。
【0063】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、地図データが、少なくとも一つの変更経路のそれぞれについて、該変更経路が抽出される条件である経路条件をさらに示してもよい。プロセッサは検索において、検索条件に対応する経路条件に関連付けられた変更経路を抽出してもよい。それぞれの変更経路について経路条件が関連付けられるので、交通結節点での状況に即した検索が可能になる。加えて、検索条件に対応する変更経路のみが抽出されるので、抽出される移動経路の個数が抑制され、その結果、経路検索の高速化が期待できる。
【0064】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、経路条件が、時間幅と、交通結節点における環境と、交通結節点の周辺の地理的位置における環境と、ユーザ属性とのうちの少なくとも一つにより表されてもよい。この場合には、これらのような具体的な情報に応じて、移動手段の変更を柔軟に検索することができる。
【0065】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0066】
上記実施形態では本開示に係るコンピュータシステムをクライアントサーバシステムに適用するが、本開示に係るコンピュータシステムはスタンドアロンのコンピュータに適用されてもよい。
【0067】
本開示に係るコンピュータシステム、方法、およびプログラムは経路検索以外の用途に適用されてもよく、例えば、乗換場所での乗換方法をユーザに提供する技術に適用されてもよい。
【0068】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【0069】
コンピュータシステム内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0070】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0071】
以上の実施形態の全部または一部に記載された態様は、適切な移動手段の変更、適切な経路検索、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上または適切な機能の提供その他の機能向上または適切な機能の提供、データおよび/またはプログラムの容量の削減、装置および/またはシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置またはシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0072】
1…経路検索システム、10…サーバ、11…通信部、12…検索部、20…地図データベース、21,21A,21B…地図データ、22…交通結節点テーブル、23…構成施設テーブル、24,24B…乗換テーブル、30…ユーザ端末、120…プログラム、200,210…交通結節点、201~203,211,212…移動方向、221~223,231~233…変更経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8