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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20241021BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241021BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/37
A61Q5/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020097585
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187815
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真樹子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073467(JP,A)
【文献】特開2008-100937(JP,A)
【文献】特開2010-254583(JP,A)
【文献】特開2007-031378(JP,A)
【文献】特開2007-031379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルを5~15質量%、
(B)下記一般式(1)で表されるエステル化合物を3~20質量%、
O-(AO)-COR (1)
(式中、
はベンジル基を示し、
は炭素数1~25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、
AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、
nは1~50の整数であって、
nが2以上の場合、n個のAO基は同一でも異なっていてもよい。)、及び
(C)前記成分(B)と異なる20℃で液状のエステル油1種以上を10~30質量%含むことを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料組成物に関し、詳しくは、ダメージを受けた毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤといったトリートメント効果を付与しながらも子供の細い毛髪でも重くならず、べたつきが少ない毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪になめらかさやツヤを付与し、くし通りをよくするために、洗い流さないタイプのコンディショニング効果を持つ毛髪化粧料が用いられ、一般にヘアエッセンス、ヘアクリーム、ヘアオイル、ヘアリクイド等の名称のヘアトリートメントが市販されている。
【0003】
毛髪になめらかさやツヤを与える目的でシリコーン油、高分子のジメチルポリシロキサン、高分子のメチルフェニルポリシロキサン等の油分が、可溶化、乳化、溶解されて用いられている。特にシリコーン油は、表面張力が低く毛髪へのなじみに優れ、良好なツヤを与えられることから、シリコーン油を含有する毛髪化粧料が多く提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、ダメージを付けた毛髪の表面及び内部の状態を改善しながら、毛髪にハリ・コシ感や自然なツヤを与えるがべたつきがない軽い仕上がりを実現するために、二塩基酸のエステル化合物と、揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油及びシリコーン油からなる群から選択される1種又は2種以上の油剤を含有する毛髪化粧料が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-290820号公報
【文献】国際公開2010/087004号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような洗い流さないオイルタイプの毛髪化粧料では、子供の細い髪に使用すると毛髪がべたつき、重くなってしまうという課題があった。
【0007】
一方で、特許文献2に記載のようなべたつきの少ない、さらさらとした軽い手触りの毛髪化粧料では、大人のダメージを受けた毛髪へのコンディショニング効果が十分ではなく、毛髪へのなめらかさ、しっとり感、ツヤ付与効果が物足りないという問題があった。
【0008】
したがって本発明は、これらの問題を解決するために、ダメージを受けた毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤといったトリートメント効果を付与しながらも子供の細い毛髪でも重くならず、べたつきが少ない毛髪化粧料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、
(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、
(B)下記一般式(1)で表されるエステル化合物
O-(AO)-COR (1)
(式中、
はベンジル基を示し、
は炭素数1~25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、
AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、
nは1~50の整数であって、
nが2以上の場合、n個のAO基は同一でも異なっていてもよい。)及び、
(C)前記成分(B)と異なる20℃で液状のエステル油1種以上を含むことを特徴とする毛髪化粧料組成物により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
第一の発明は、
(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、
(B)下記一般式(1)で表されるエステル化合物、
O-(AO)-COR (1)
(式中、
はベンジル基を示し、
は炭素数1~25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、
nは1~50の整数であって、
nが2以上の場合、n個のAO基は同一でも異なっていてもよい。)、及び
(C)前記成分(B)と異なる20℃で液状のエステル油1種以上を含む、毛髪化粧料組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料組成物によれば、ダメージを受けた毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤといったトリートメント効果を付与しながらも子供の細い毛髪でも重くならず、べたつきが少ない状態を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
[毛髪化粧料組成物]
本発明において毛髪化粧料組成物とは、(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、(B)特定のエステル化合物、及び(C)前記成分(B)と異なる20℃で液状のエステル油を含むことを特徴とする、毛髪化粧料組成物である。これらの成分(A)~(C)を特定の割合で配合することにより、本発明による効果を発揮することができる。本発明の毛髪化粧料組成物は、本発明の効果を発揮できる限りにおいて洗い流さないタイプであっても洗い流すタイプであってもよいが、好ましくは洗い流さないタイプの毛髪化粧料である。ここで、「洗い流さないタイプの毛髪化粧料」とは、洗い流さず毛髪へ塗布したままにする、いわゆるアウトバスタイプの毛髪化粧料である。
【0014】
アウトバスタイプの毛髪化粧料としては以下に限定されるものではないが、例えば、ヘアフォームや、ヘアワックス、ポマード、ヘアジェル、ヘアエッセンス、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアウォーター、ヘアリキッド、ヘアオイル、ヘアカラースプレー、ヘアトニック、養毛剤等が挙げられる。
【0015】
本発明において毛髪化粧料の剤型は、公知の剤型の中から、その用途や使用目的等に応じて任意に選択することができる。例えば、液体状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、泡状等とすることができ、泡状の場合、エアゾール形態、ノンエアゾール形態のいずれでもよい。
【0016】
以下、本発明の毛髪化粧料組成物の各成分について詳細に説明する。
【0017】
[(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル]
本発明における(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルとは、イソステアリン酸に酸化エチレンを付加重合し、多価アルコールの一種であるグリセリンとエステル結合して得られるトリエステルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤である。一般的に(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルは、毛髪化粧料中にエモリエント剤、乳化剤の目的で配合される。本発明においては、(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルは市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えば、CITHROL 10GTIS(クローダジャパン株式会社製)、EMALEX GWIS-320(日本エマルジョン株式会社製)、EMALEX GWIS-320EX(日本エマルジョン株式会社製)、MファインオイルISG-20T(ミヨシ油脂株式会社製)、NIKKOL TGI-20(日光ケミカルズ株式会社製)、ハイパーオイルGW-32(交洋ファインケミカル株式会社製)、ユニオックスGT-20IS(日油株式会社製)、サラコス GE-318(日清オイリオグループ株式会社製)、等が挙げられる。このようなトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルは、それぞれ単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。
【0018】
本発明の毛髪化粧料組成物におけるA)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの含有量は、好ましくは5質量%~15質量%であり、より好ましくは7質量%~12質量%である。本発明の毛髪化粧料組成物における(A)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルの含有量が5質量%以上であれば、なめらかさ、しっとり感、ツヤやまとまり感といったトリートメント効果を毛髪へ付与することができ、15質量%以下であれば過度のぬるつきやべたつきを生じない。
【0019】
[(B)エステル化合物]
本発明における(B)エステル化合物は、下記一般式(1):
O-(AO)-COR (1)
(式中、
はベンジル基を示し、
は炭素数1~25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、
nは1~50の整数であって、
nが2以上の場合、n個のAO基は同一でも異なっていてもよい。)
で表される。
【0020】
一般式(1)のエステル化合物において、本発明の効果を発揮する観点から、Rはベンジル基である。Rがベンジル基であれば、成分(B)エステル化合物は相溶性が高く、低粘度であるため好ましい。
【0021】
本発明における(B)一般式(1)で表されるエステル化合物としては、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とミリスチン酸のエステル(ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル)、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体と2-エチルヘキシル酸のエステル(エチルヘキサン酸PPG-3ベンジルエーテル)が好ましい。これらの成分は一般的に毛髪化粧料中にエモリエント剤、滑沢剤、表面改質剤、褪色防止剤の目的で配合される。また、本発明においては、(B)一般式(1)で表されるエステル化合物は市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えば、クロダモルSTSやクロダモルSFX(いずれもクローダ社製)、等が挙げられ、クロダモルSTSが好ましい。
【0022】
本発明の毛髪化粧料組成物における(B)一般式(1)のエステル化合物の含有量は、好ましくは3質量%~20質量%であり、より好ましくは5質量%~15質量%である。本発明の毛髪化粧料組成物における(B)一般式(1)のエステル化合物の含有量が3質量%以上であれば、上記成分(A)のヌル付きやべたつきを軽減することができる。また、成分(B)の含有量が20質量%以下であればダメージを受けた毛髪がパサつくことはない。したがって、この範囲内であれば、子供の細い毛髪でもべたつかせず、かつ、ふわっと軽い状態を実現することができる。
【0023】
[(C)20℃で液状のエステル油]
本発明の毛髪化粧料にて用いられる(C)20℃で液状のエステル油は、脂肪酸とアルコールとのエステル体を主成分としたエステル油であって、一般的に化粧料中にはヘアコンディショニング剤、エモリエント剤、可溶化剤、加脂肪剤、感触改良剤、滑沢剤、表面改質剤、経皮吸収促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の目的で配合される。本発明における(C)20℃で液状のエステル油としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル等の直鎖高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、等の直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸オクチルドデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル等の直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル等の分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル;オクタン酸セチル、オクタン酸セトステアリル、オクタン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル等の分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル;ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸オクチル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル等の分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル等の乳酸エステル;クエン酸トリエチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリイソセチル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル等の二塩基酸のエステル;等が挙げられる。また、本発明においては、(C)20℃で液状のエステル油は市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えば、サラコス816T(日清オイリオグループ株式会社製)、CEH(高級アルコール工業株式会社製)、サラコス99(日清オイリオグループ株式会社製)、サラコスP-8(日清オイリオグループ株式会社製)、サラコス5408(日清オイリオグループ株式会社製)、ミリトール318(BASFジャパン株式会社製)、ユビナールMC-80(BASFジャパン株式会社製)、パラソルMCX-AS(DSMニュートリションジャパン株式会社製)等が挙げられる。このようなエステル油は、それぞれ単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。
【0024】
本発明の毛髪化粧料組成物における(C)成分の配合量は、好ましくは10質量%~30質量%であり、より好ましくは15質量%~25質量%である。本発明の毛髪化粧料組成物における(C)20℃で液状のエステル油の含有量が10質量%以上であれば、毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤやまとまり感といったトリートメント効果を毛髪へ付与
することができ、30質量%以下であれば過度のべたつきが生じない。
【0025】
また、本発明の毛髪化粧料組成物において、上記成分(B)と上記成分(C)の合計含有量は、好ましくは15質量%~40質量%であり、より好ましくは20質量%~35質量%である。本発明の毛髪化粧料組成物における上記成分(B)と(C)の合計含有量がこの範囲内であれば、子供の細い頭髪でも塗布時に毛髪が重くなり過ぎることなく仕上げることができ、かつ、べたつきが少ない状態を実現することができる。
【0026】
[(D)その他の成分]
本発明の毛髪化粧料組成物は、上記成分(A)~(C)を必須成分とし、溶剤などを加えた液にこれらを含有させることによって調製されるが、これらの必須成分以外にも本発明の効果を損なわない範囲において、通常毛髪化粧料に配合される(D)その他の成分を目的に応じて配合することができる。
【0027】
上記のような他の成分としては、水、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリコシルトレハロース等の湿潤剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、2-エチルヘキサン酸などの高級脂肪酸;流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ成分;エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;l-メントール、ハッカ油等の冷感剤;アーモンド油、アボカド油、アマニ油、アルガニアスピノサ核油、アンズ核油、イチゴ種子油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、カニナバラ油、キョウニン油、クランベアビシニカ種子油 、グレープシード油、ゴマ種子油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シア脂、セイヨウハッカ油、ダイズ油、チャ実油、チャ種子油、ツバキ種子油、ナタネ油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、モモ核油、ヤシ油、ユチャ油、レモン油、ローズヒップ油、ローズマリー油等の植物油;L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-アルギニン、グリシン、L-グルタミン酸、L-システイン、Lスレオニン等のアミノ酸;グリチルレチン酸及び/又はその誘導体、グリチルリチン酸及び/又はその塩等の抗炎症剤;液化石油ガス、ジメチルエーテル等の噴射ガス;12-ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸誘導体等の低分子化合物、あるいはポリエチレン、ポリアクリル酸誘導体、デキストリン誘導体等のオイルゲル化剤;その他、紫外線吸収剤、防腐剤、糖類、植物由来エキス、動物由来エキス、香料、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、各種薬剤、等が挙げられる。
【0028】
本発明の毛髪化粧料組成物は、ヘアローション、ヘアリキッド、ヘアミスト、ヘアウォーター、ヘアオイル等の液状毛髪化粧料、ヘアクリーム、ヘアトリートメント、ヘアミルク、ヘアジェル等の乳液・クリーム状毛髪化粧料、ヘアフォーム、ヘアスプレー等のエアゾール状毛髪化粧料等に用いることができ、特に好ましくはヘアオイル、ヘアオイルゲル、ヘアオイルミスト、ヘアスプレーなどのリーブオンタイプの毛髪化粧料に用いることができる。また本発明の毛髪化粧料組成物は、常法により製造することができる。
【実施例
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
[試料の調製]
以下の試料を下表1~2に記載の成分・配合量で、常法により調製した。その他成分については、水添ポリイソブテン、水、ブチレングリコール(BG)及び香料等を適宜配合した。比較例7は成分(A)の代わりにジメチコンを含む現行品のヘアオイルの比較例である。
【0031】
[毛髪サンプルの調製]
本発明の毛髪化粧料組成物の有用性を評価するために、まず、次の方法で毛髪を処理した。市販の毛髪(10g、30cm、ビューラックス社製)を濃度10質量%のポリオキシエチレン(2E.O.)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液2gでシャンプー洗浄し、お湯で充分に洗い流した後、タオルドライを行い、ドライヤーで毛髪を乾燥させた。次に、下表1~2に示した実施例及び比較例の毛髪化粧料組成物をヘアオイルとして0.5gを均一に塗布し、自然乾燥させた後、なめらかさ、ツヤなど毛髪へのトリートメント効果を評価した。また、毛髪化粧料組成物を大人の頭髪及び、子供の頭髪に塗布した後の毛髪の状態を評価した。
【0032】
[毛髪サンプルの評価]
上記のように調製した毛髪サンプルを用いて、以下の指標について評価した。
【0033】
(1)なめらかさ
動摩擦係数を測定することにより毛髪のなめらかさを評価した。毛髪の動摩擦係数は、摩擦感テスター(KES-SE型、カトーテック株式会社製)を使用し、摩擦子としてシリコンシートを取り付け、荷重50g、移動スピード1mm/secの条件で動摩擦係数(MIU値)の測定を行い、20本の毛束の平均値を求めた。尚、動摩擦係数が低いほど、なめらかであることを示すものである。尚、評価基準は以下の通りである。
◎ :極めて良好 0.2未満
○ :良好 0.2以上0.3未満
△ :やや悪い 0.3以上0.4未満
× :悪い 0.4以上
【0034】
(2)ツヤ
SAMBA Hair System(Bossa Nova Vision社製)を使用し、20本の毛束についてツヤ値(Luster Value)の測定を行い、平均値を求めた。尚、ツヤ値(Luster Value)が高いほどツヤがあることを示すものである。尚、評価基準は以下の通りである。
◎ :極めて良好 60以上
○ :良好 50以上60未満
△ :やや悪い 40以上50未満
× :悪い 40未満
【0035】
(3)大人の毛髪の状態
20名の訓練された専門パネラーにより大人の頭髪に毛髪化粧料組成物をつけた後の毛髪の状態を評価した。大人の毛髪の状態は20名の評価結果の平均値で示した。尚、評価基準は以下の通りである。
1:塗布後の毛髪がバサバサしており乾燥している状態である。
2:塗布後の毛髪にややしっとり感は足りないがバサバサしておらず良好な状態である。3:塗布後の毛髪がしっとりしており理想の状態である。
4:塗布後の毛髪にややしっとり感は強いが重くなく良好な状態である。
5:塗布後の毛髪がべたつきすぎて重い状態である。
【0036】
(4)子供の毛髪の状態
20名の訓練された専門パネラーにより12歳以下の子供の頭髪に毛髪化粧料組成物をつけた後の毛髪の状態を評価した。子供の毛髪の状態は20名の評価結果の平均値で示した。尚、評価基準は以下の通りである。
1:塗布後の毛髪がバサバサしており乾燥している状態である。
2:塗布後の毛髪にややしっとり感は足りないがバサバサしておらず良好な状態である。3:塗布後の毛髪がしっとりしており理想の状態である。
4:塗布後の毛髪にややしっとり感は強いが重くなく良好な状態である。
5:塗布後の毛髪がべたつきすぎて重い状態である。
【0037】
実施例1~8及び比較例1~7の配合及び評価結果を、下表1及び2に記載する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1~2から明らかなように、本発明の毛髪化粧料組成物に関する実施例1~8は、比較例1~7の組成物に比べていずれも優れた性能を示した。比較例7は、成分(A)の代わりにジメチコンを含む市販品の例であるが、これらと比較してもなめらかさ、しっとり感、ツヤについては同等以上であり、子供の頭髪に塗布したのちの毛髪の状態は優れた結
果を示した。したがって、本発明の毛髪化粧料組成物は、ダメージを受けた毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤといったトリートメント効果を付与しながら、子供の細い毛髪でも重さやべたつきが少ないという優れた性能を示すことが分かった。
【0041】
以下、本発明の毛髪化粧料組成物の処方例を挙げる。なお、これらの処方例の毛髪化粧料組成物についても、上記のなめらかさ、しっとり感、ツヤなど毛髪へのトリートメント効果、官能試験(大人の頭髪に塗布した後の毛髪の状態、子供の頭髪に塗布した後の毛髪の状態)について各項目を検討したところ、いずれの処方例においても、優れた特性を有しており良好であった。
【0042】
処方例1(ヘアオイル) (%)
(1)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル 10.0
(2)ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル 10.0
(3)パルミチン酸エチルヘキシル 20.0
(4)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 1.0
(5)水添ポリイソブテン 55.0
(6)BG 1.0
(7)シア脂 0.5
(8)ラクトフェリン 0.5
(9)ヨーグルト液 0.5
(10)グリチルリチン酸2K 0.1
(11)香料 0.3
(12)水 残 余
【0043】
(製法)(5)に(2)、(3)、(4)、(7)及び(11)を均一に分散し、別槽にて調製した(1)、(6)、(8)、(9)、(10)及び(12)を均一混合溶解したものを加えて均一に混合し、ディスペンサーポンプつき容器に充填してヘアオイルを調製した。
【0044】
処方例2(ヘアオイルゲル) (%)
(1)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル 12.0
(2)ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル 12.0
(3)エチルヘキサン酸セチル 20.0
(4)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 5.0
(5)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 1.0
(6)イソドデカン 35.0
(7)パルミチン酸デキストリン 7.0
(8)BG 6.0
(9)シア脂 0.5
(10)ラクトフェリン 0.5
(11)ヨーグルト液 0.5
(12)グリチルリチン酸2K 0.1
(13)香料 0.3
(14)水 残 余
【0045】
(製法)(3)に(2)、(4)及び(5)を均一に分散し、加温した後(7)を加えて均一混合溶解した後、(6)、(9)及び(13)を加えて均一混合した。(1)、(8)、(10)、(11)、(12)及び(14)を別槽にて均一に分散し、上記加温させたとものに混合、冷却し、ディスペンサーポンプつき容器に充填してヘアオイルゲルを調製した。