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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】抗菌消臭性布帛及びその製法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/503 20060101AFI20241021BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20241021BHJP
【FI】
D06M13/503
D06M101:32
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020162219
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054936
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】花村 葵
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106521927(CN,A)
【文献】特開2015-190071(JP,A)
【文献】特開2015-190069(JP,A)
【文献】特開2000-290874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子が付着した抗菌消臭性布帛であって、該布帛は、塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含み、該布帛は、表面積1250μm2あたり、粒子径が20μm以上である金属キレート微粒子を含まないか又は2個以下で含むことを特徴とする抗菌消臭性布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性能と消臭性能の洗濯耐久性に優れる抗菌消臭性布帛に関する。より詳しくは、本発明は、抗菌消臭性能を有する金属キレート微粒子水分散液で、塩基性染料可染型繊維を所定の混率で含む布帛を、所定の条件で処理し、金属キレート微粒子を布帛表面に付着させることによる、抗菌性能と消臭性能に対する洗濯耐久性に優れる布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣服着用時の快適性、特に夏場における日常生活の中での快適性を満足させるための機能として、抗菌性能や消臭性能が求められている。特に夏のシーズンにおいて長期に渡る気温25℃以上の夏日や真夏日での環境下において、快適性と着心地を持続させるには抗菌性能と消臭性能の耐久性を有することが、着心地のよさを実感する上で重要である。
抗菌消臭性能を発現させるために亜鉛等の金属微粒子を付与した繊維製品が提案されているが、その多くは夏のシーズンに頻繁に洗濯される環境下での耐久性が低かったり、風合が悪く、着用時の着心地が悪いという問題がある。
【0003】
以下の特許文献1には、紡糸時のポリマー浴中に微粒子酸化亜鉛を添加してポリアミド繊維を製糸し、得られた繊維から布帛を形成した後に、キトサンを付与することでアンモニア消臭性能と抗菌性能に優れた布帛が得られることが開示されている。しかしながら、酸性臭に対する消臭効果が悪いとともに、洗濯後の耐久性に問題がある。
【0004】
また、以下の特許文献2には、亜鉛化合物微粒子とジルコニウム化合物微粒子を水可溶性バインダー樹脂と共に繊維表面に付与することにより、抗菌消臭性能を有する繊維が得られることが開示されている。しかしながら、金属微粒子をバインダーとともに繊維表面に直接付与していることから、しなやかさがなく、その結果、着心地が悪く、さらに洗濯30回以上の抗菌消臭性能がないという問題がある。
【0005】
また、以下の特許文献3には、キトサンとカルボン酸ポリマーと酸化亜鉛とバインダー樹脂を含む処理液で繊維を処理することで消臭性能が得られることが開示されている。しかしながら、バインダー樹脂を使用しているため、しなやかさがなく、着心地の悪いものであり、抗菌効果がないという問題がある。
【0006】
また、以下の特許文献4には、プラチナナノコロイドの水溶液或いはこの水溶液と抗菌防臭剤又は抗菌消臭剤との混合液を布帛に付与することで抗菌、消臭および吸水・速乾性能に優れる布帛が得られることが開示されている。しかしながら、綿繊維からなる布帛に対する抗菌消臭効果は良好なものの、セルロース繊維と合成繊維との混用布帛、特に長繊維複合布帛に加工した場合は、洗濯後の消臭効果が悪いという問題がある。
【0007】
また、以下の特許文献5には、平均粒子径が50nm以下の金属キレート微粒子分散体を布帛に付着させた布帛で、消臭性と洗濯耐久性に優れた抗菌消臭性布帛が提案されている。しかしながら、当該特許文献5に記載された抗菌消臭性布帛では、消臭効果は汗臭の原因といわれるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸のみに限られており、加齢臭の原因といわれているノネナールについては効果が無いという問題がある。
【0008】
このように、現状では、バインダー樹脂を使用しないで仕上げた染色布帛において、抗菌性能と汗臭と加齢臭の消臭性能に優れ、かつ、これらの性能の洗濯耐久性に優れ、しなやかな風合を有し着心地がよい、優れた染色製品は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3550816号公報
【文献】特許第3568613号公報
【文献】特許第3787675号公報
【文献】国際公開第2012/086204号
【文献】特開2015-190069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、抗菌消臭性能に優れた金属キレート微粒子の水分散液中の金属キレート微粒子を布帛表面に樹脂バインダーを使用せずに直接強固に付着させることによる、抗菌性能と消臭性能の洗濯耐久性に優れた抗菌消臭性布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねたところ、キレート剤と金属化合物をある所定の硬度を有する水中で超音波照射処理すると、抗菌消臭性能に優れた金属キレート微粒子の粒径を操作することが可能となり、この微粒子を布帛に樹脂バインダーを使用せずに付与することで抗菌性能と消臭性能の洗濯耐久性が優れるとともに、これまでにアンモニア、酢酸、イソ吉草酸に挙げられる汗臭と同時に消臭が困難であったノネナール臭気の吸着効果が得られることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち本発明は、以下のとおりのものである。
[1]平均粒子径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子が付着した抗菌消臭性布帛であって、該布帛は、塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含み、該布帛は、表面積1250μm2あたり、粒子径が20μm以上である金属キレート微粒子を含まないか又は2個以下で含むことを特徴とする抗菌消臭性布帛。
[2]以下の工程:
塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含む布帛を、水、及び塩基性染料を用いて染色し、その後、還元洗浄して、染色された布帛を得る染色工程;
水に金属キレート微粒子を添加し、超音波処理により分散させて、金属キレート微粒子水分散液を得る工程;
得られた水分散液に、水、及び酸を添加し、希釈して、金属キレート微粒子の濃度0.01~2.0重量%、pH3.5~5.0の酸性溶液を得る工程;
得られた酸性溶液に、上記染色工程で得た布帛を浸漬させ、100~135℃の温度で15~45分間処理する抗菌消臭加工工程;
湯洗及び/又は水洗を含む仕上げ工程;
を含み、上記各工程で使用する水が全て、硬度0~20ppmの水であることを特徴とする、前記[1]に記載の抗菌消臭性布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る抗菌消臭性布帛は、優れた抗菌消臭性能の洗濯耐久性に優れるとともに、しなやかな風合を有し、吸水拡散性に優れ、着心地のよい布帛である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、平均粒子径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子が付着した抗菌消臭性布帛であって、該布帛は、塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含み、該布帛は、表面積1250μm2あたり、粒子径が20μm以上である金属キレート微粒子を含まないか又は2個以下で含むことを特徴とする抗菌消臭性布帛である。
また、本発明の他の実施形態は、以下の工程:
塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含む布帛を、水、及び塩基性染料を用いて染色し、その後、還元洗浄して、染色された布帛を得る染色工程;
水に金属キレート微粒子を添加し、超音波処理により分散させて、金属キレート微粒子水分散液を得る工程;
得られた水分散液に、水、及び酸を添加し、希釈して、金属キレート微粒子の濃度0.01~2.0重量%、pH3.5~5.0の酸性溶液を得る工程;
得られた酸性溶液に、上記染色工程で得た布帛を浸漬させ、100~135℃の温度で15~45分間処理する抗菌消臭加工工程;
湯洗及び/又は水洗を含む仕上げ工程;
を含み、上記各工程で使用する水が全て、硬度0~20ppmの水であることを特徴とする、前記抗菌消臭性布帛の製造方法である。
【0015】
金属キレート微粒子水分散液は、金属がキレート剤にてキレート化された構造を有する金属キレート微粒子の水分散体(分散液)である。かかる金属キレート微粒子水分散液は、金属化合物とキレート剤と水を、アルコールに溶解させた溶液に超音波照射を行い、金属をキレート化させるとともに微粒子化させた後、水に分散させることにより得ることができる。例えば、水に乳酸を溶解した溶液を、メタノール中に添加して均一に混合し、得られた溶液中に酢酸亜鉛(2水塩)を攪拌しながら少しずつ溶解させ、この溶液を加温しながら、密閉状態で超音波処理することにより、亜鉛キレート微粒子の水分散液を得ることができる。
【0016】
一般に金属化合物の粒子径が小さくなると粒子同士の相互作用が発現し、粒子は凝集しやすくなるという問題があるが、本実施形態においては、金属化合物をキレート剤と水の存在下で超音波照射することで金属がキレート化されるとともに微粒子化されるため、さらに水に分散させたときに凝集することなく、分散性の優れた金属キレート微粒子の水分散液体を得ることができる。
【0017】
キレート剤とは、2,4-ペンタンジオール、アセト酢酸エチル等のジケトン系;1,2-プロパンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコール系;N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン系;グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸系;ものをいい、それぞれ単独で又は複数組み合わせて使用することができ、なかでもオキシカルボン酸系を使用することは、金属キレート微粒子の粒子サイズのバラツキを小さくすることができ、水に分散させたときに凝集のない分散体を得やすく、ノンバインダーにて布帛へ吸着させ易い点で好ましい。また、キレート剤は、予め水に溶解させた後に、アルコールに添加し、溶解させることが好ましい。
【0018】
金属キレート微粒子を構成する金属は、銀、銅、亜鉛、金、白金のうち少なくとも1種であることができる。また、金属化合物は、金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩等の無機塩、又は酢酸塩、クエン酸塩等の親水性有機酸塩等より選べばよく、中でも、酢酸塩がアルコールに易溶であり、キレート化後の金属キレート微粒子を水に分散させるとき、凝集のない分散体を得やすい点で好ましい。
【0019】
アルコールは、エタノールやメタノール等の脂肪族アルコール系より選べばよいが、なかでもメタノールを使用するのが超音波処理により得られる金属キレート微粒子の粒子サイズのバラツキが小さく、平均粒子径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子が得やすい点で好ましい。
【0020】
本実施形態においては、水に溶解させたキレート剤を、アルコールに添加し溶解させ、さらに金属化合物を溶解させた溶液に、超音波照射することで、平均粒子径が0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子を得ることができる。このとき、水に溶解させるキレート剤と水の比率は、モル比率で約1:1であることが好ましい。また、水に溶解させたキレート剤を、アルコールに添加し、溶解させるときは、凡そ10~50倍の容量のアルコールに添加し、溶解させることが好ましい。このキレート剤を溶解させたアルコール溶液に溶解させる金属化合物の濃度は0.001mol/L以上が好ましい。
【0021】
バインダー樹脂を使用せずに布帛表面に金属キレート微粒子を直接付着させるためには、金属キレート微粒子の平均粒子径を0.5μm以上20μm未満とすることが必要であり、平均粒子径1μm以上10μm以下まで微粒子化することが好ましく、かかる微粒子化は、超音波処理により達成することができる。
【0022】
超音波処理における超音波の周波数は、10~200kHzの範囲であることが好ましく、このとき水硬度0~20ppmの範囲の水を用いれば、金属キレート微粒子の平均粒子径を0.5μm以上20μm未満とすることができる。周波数が10kHz未満では、キャビテーション強度が強すぎて粒子サイズのバラツキが大きくなるので好ましくなく、他方、周波数が200kHzを超えると、キャビテーション効果が小さくなるので金属のキレート化が不十分とあるとともに、金属キレート微粒子の平均粒子径が20μm以上となるため好ましくない。超音波処理は、超音波ホモジナイザー、超音波分散機、超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0023】
また、超音波処理における金属のキレート化の程度、金属キレート微粒子の粒径等を制御する手段としては、アルコール濃度、アルコールに溶解させるキレート剤と金属化合物の比率、処理温度、時間等が挙げられる。例えば、アルコール濃度は金属化合物の重量に対し約5~20倍程度とし、キレート剤と金属化合物の比率はモル濃度比率で約1:1から約1:4とし、処理温度は約35~65℃とし、処理時間は30分~300分間とすることができる。
また、超音波処理を行うときは、密閉系で処理することで、平均粒子径20μm未満の金属キレート微粒子を安定して得ることができる点で好ましい。
【0024】
金属が超音波処理にてキレート化されているか否かは、超音波処理後の溶液をFT-IRにて分析することで確認することができる。キレート化は、キレート剤に使用した化合物に応じIRチャートのピークが移動しているかで判断することができ、例えば、金属化合物として酢酸亜鉛を用い、キレート剤に乳酸を使用した場合、1420cm-1、1580cm-1におけるカルボキシルイオンのOHの面外変角振動にてピークが移動していれば、キレート化されていると判断することができ、この際のピークの移動距離が5cm-1以上であればキレート化されていると判断する。
【0025】
次に、得られた水分散液に、水、及び酸を添加し、希釈して、pH3.5~5.0の酸性溶液を得る工程を施す。超音波処理された溶液を水に希釈し金属キレート微粒子の水分散液を得るが、この際の金属キレート微粒子の濃度としては0.01~2.0重量%が好ましく、0.05~1.5重量%がより好ましい。金属キレート微粒子の濃度が0.01重量%未満では、布帛を処理した場合、抗菌消臭性能が不十分である。他方、金属キレート微粒子の濃度が2.0重量%を超えると、分散安定性が悪く、凝集を起こし平均粒子径20μm未満のものが得られない。水への分散のやり方は、マグネチックスターラ等で水を攪拌しながら、この水の中に金属キレート微粒子を投入し、10~20分ほど攪拌すれば、凝集のない透明な金属キレート微粒子水分散液を得ることができる。この際、水溶液のpHが3.5~5.0の範囲にあれば、金属キレート微粒子が凝集することなく分散性が良好となり安定した分散体(液)が得られる。
【0026】
本発明の他の実施形態である抗菌消臭性布帛の製造方法は、以下の工程:
塩基性染料可染型繊維を30~100重量%の混率で含む布帛を、水、及び塩基性染料を用いて染色し、その後、還元洗浄して、染色された布帛を得る染色工程;
水に金属キレート微粒子を添加し、超音波処理により分散させて、金属キレート微粒子水分散液を得る工程;
得られた水分散液に、水、及び酸を添加し、希釈して、金属キレート微粒子の濃度0.01~2.0重量%、pH3.5~5.0の酸性溶液を得る工程;
得られた酸性溶液に、上記染色工程で得た布帛を浸漬させ、100~135℃の温度で15~45分間処理する抗菌消臭加工工程;
湯洗及び/又は水洗を含む仕上げ工程;
を含むが、上記各工程で使用する水は全て、硬度0~20ppmの水であることが必要である。
【0027】
例えば、金属微粒子の超音波処理に用いる水、水分散液を調整する希釈水、染色工程に使用する用水は全て、硬度が0~20ppmであることが必要であり、好ましくは硬度10ppm以下である。本願発明者は、驚くべきことに、水硬度が0~20ppmの範囲内にあれば、金属キレート微粒子の平均粒子径を0.5μm以上20μm未満に調整することができることを予想外に発見した。その理由は、明らかでないが、本発明者は以下のようなものであると推定している。
用いる水の硬度が20ppmを超えると、金属キレート微粒子、例えば、亜鉛キレート微粒子(例えば、乳酸と亜鉛とから構成されるもの)の亜鉛と、例えば、カルシウムイオンの対イオンである炭酸水素イオンとが結合し、亜鉛キレートと炭酸水素イオンとの複合体を形成し、該複合体がカルシウムイオンを介して、3次元構造体を形成することにより、平均粒子径20μm以上の金属キレート微粒子が形成される。
以下、実施例に示すように、本願発明者は、平均粒径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子が布帛全体に均等に付着させることで、臭気との反応が促され消臭効果が高まることも、予想外に発見した。金属キレート微粒子の平均粒子径が20μm以上であると、微粒子の重量当たりの表面積が減少してしまうため、臭気との吸着反応が妨げられ、消臭性能が低下してしまうと思われる。
【0028】
本実施形態においては、金属がキレート化されているので金属キレート微粒子同士の凝集は抑制され、平均粒子径0.5μm以上20μm未満の金属キレート微粒子の水分散液を得ることができ、キレート剤としてオキシカルボン酸を使用した場合、凝集のない無色透明な水分散体を得やすく、金属キレート微粒子水分散液のゼータ電位を-5~-70mVの範囲に制御しやすく、布帛への吸着性が高まる。このようにして得られた金属キレート微粒子水分散体(液)は、布帛の抗菌消臭加工剤として使用することができる。
【0029】
本実施形態において、金属キレート微粒子を布帛に付着させるための方法に特に制限はなく、浸漬加工、パディング加工、スプレー加工、インクジェット加工等いかなる方法でも構わないが、工業生産において、効率よく吸着させ易い点で、浸漬加工が好ましい。
【0030】
布帛を構成する繊維は、特に制限はないが、金属キレート微粒子の吸着性が高く、洗濯耐久性が優れている、ポリエステル繊維を酸性基にて改質した塩基性染料可染型繊維であることができる。本実施形態の抗菌消臭性布帛は、塩基性染料可染型繊維を30重量%~100重量%の混率で含む布帛を抗菌消臭加工することにより製造することができる。塩基性染料可染型繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリピロピレンテレフタレート単位を主たる構成成分とし、塩基性染料染着座席成分を共重合したポリエステルからなる繊維である。
【0031】
塩基性染料染着座席成分としては、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩、及びこれらから誘導されるエステル形成性誘導体を挙げることができる。具体的には、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸等のスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5-(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、及びこれらから誘導されるエステル形成性誘導体等が挙げられる。中でも消臭性能の点から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-(テトラブチル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、5-(テトラエチル)ホスホニウムスルホイソフタル酸が好ましい。
【0032】
また、塩基性染料染着座席成分の共重合量は、消臭性能の観点から、全酸成分に対して0.1~5モル%が好ましく、より好ましくは0.5~3.5モル%である。塩基性染料染着座席成分の共重合量が0.1モル%未満では、消臭性能が得られず、他方、塩基性染料染着座席成分の共重合量が5モル%を超えると、原糸強度や耐光性の低下が顕在化するため好ましくない。
【0033】
塩基性染料可染型繊維は、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤、酸化チタン、アルカリ金属等を含有していてもよく、従来公知の方法にて製造することができる。
【0034】
塩基性染料可染型繊維は、特に制限はないが、総繊度20~200デシテックス、単糸繊度0.6~1.8デシテックスが好ましい。塩基性染料可染型繊維の断面形状は、丸型以外に、扁平、くびれ付扁平、三角形、四角形、3以上の多葉形、C型、H型、W型、X型、中空断面のいずれであってもよいが、しなやかな風合と消臭性能の点から、異形断面が好ましい。
【0035】
また、塩基性染料可染型繊維を30重量%~100重量%の混率で含む限り、布帛は、他の合成繊維、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリル繊維を含むことができる。
また、塩基性染料可染型繊維、他の合成繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維が加工された糸条の形態の例としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸~強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が挙げられる。
【0036】
また、塩基性染料可染型繊維と他の繊維を混用する形態は、糸状の段階で複合して混用糸状とする形態と、塩基性染料可染型繊維と他の繊維を用いて製編織し、布帛にする時に混用布帛とする形態に大別される。
【0037】
塩基性染料可染型繊維と他の繊維を混用する場合の糸条の形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後に後混繊、2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
【0038】
布帛の形態としては、編物、織物、不織布、これらの複合布帛(例えば、積層布等)が挙げられる。具体例としては、いわゆる機上混用品があり、製編織時に塩基性染料可染型繊維と他の繊維を引き揃えて又は合糸して混用した編織物が挙げられる。
【0039】
本発明の他の実施形態である抗菌消臭性布帛の製造方法は、金属キレート微粒子の濃度0.01~2.0重量%、pH3.5~5.0の酸性溶液に、染色工程で得た布帛を浸漬させ、100~135℃の温度で15~45分間処理する抗菌消臭加工工程を含む。
前記したように、布帛へ金属キレート微粒子を付着させる方法は、工業生産において効率よく吸着させやすい浸漬法での加工が好ましい。浸漬加工は、布帛の染色と同時に、又は、染色した後に、実施することができ、加工液のpHを3.5~5.0の酸性に調整した浴に、金属キレート微粒子水分散液を添加し、浴比は約1:10~約1:30で、処理温度は約100℃~約135℃で、処理時間は約15分間~約45分間で加工するのが金属キレート微粒子を安定して吸着させ易く、洗濯耐久性が高いので好ましい。このとき、処理温度が100℃未満であると、金属キレート微粒子の吸着性が悪く、洗濯耐久性も悪い。他方、処理温度が135℃を超えると、設備が大掛かりになりコスト高となり好ましくない。加工液のpHが3.5未満又は5.0超であると、金属キレート微粒子の吸着性が悪くなり好ましくない。布帛の染色と同時に、抗菌消臭加工を実施する場合は、金属キレート微粒子水分散液を添加した浴に、染料を加えて、単独で抗菌消臭加工を行う工程と同じpH、処理温度、浴比、処理温度で行えばよい。
【0040】
本発明の他の実施形態である抗菌消臭性布帛の製造方法においては、布帛表面に金属キレート微粒子が直接吸着するので、バインダー樹脂を使用しなくても洗濯耐久性は高まる。特に、酸性基で改質した塩基性染料可染型繊維を用いているため、金属キレート微粒子が布帛により強固に吸着し、吸着率も高いことから洗濯30回以上の耐久性に優れるものとなる。また、金属キレート微粒子を、バインダー樹脂を使用せずに付着させているため、布帛の風合いがしなやかである。
【0041】
本実施形態の抗菌消臭性布帛においては、例えば、金属化合物として酢酸亜鉛を用い、乳酸にてキレート化させた亜鉛キレート微粒子を布帛表面に吸着させたときの微粒子の粒径は、電子顕微鏡で観察され、布帛表面積1250μm2(縦25μm×横50μmの範囲)当たり、粒子径が20μm以上のものは2個を超えて付着していないことが観察できる。本実施形態の抗菌消臭性布帛は、塩基性染料可染型繊維を用いているため、粒子径0.5μm以上20μm未満の亜鉛キレート微粒子にて布帛表面が被覆されていることが観察できる。洗濯30回を繰り返し行ってもこの状態は同じであるため、耐久性の高いものである。
【0042】
また、本実施形態の抗菌消臭性布帛においては、金属キレート微粒子が実際に付着していることを、蛍光X線を用いた元素分析によって確認することができる。
【0043】
布帛の染色については、特に制限はない。
また、塩基性染料可染型繊維からなる布帛のカチオン染料による染色と同時に、金属キレート微粒子を布帛に付着させる場合、金属キレート微粒子の吸着効率が高く、洗濯耐久性の高いものが得られる。染色加工条件と抗菌消臭加工の処理温度、浴比は基本同一であることができる。布帛の染色と同時に抗菌消臭加工をする方法は、抗菌消臭加工液に染料を追加で入れているような形であることができる。塩基性染料可染型繊維以外の合成繊維を複合したなどの都合上、染色条件が抗菌消臭加工の条件から外れる場合は、それぞれの工程を分けて加工することができる。
【0044】
また、布帛の仕上加工には、通常実施されている条件であればいずれも適用することができ、布帛の特性に応じ適宜設定すればよい。また、仕上布帛の生地pHが弱酸性にあると消臭性能が安定して得られるので、仕上剤浴中に不揮発性の有機酸を添加し、調整することが好ましい。例えば、布帛の仕上げ加工は、湯洗及び/又は水洗を含む仕上げ工程を含むことができるが、この工程で使用する水も、硬度0~20ppmの水であることが必要である。
【0045】
以上のようにして得られた布帛は、繊維製品衛生加工評議会(SEK)が定める認証基準に規定されている抗菌性能に優れるものである。具体的には後述する黄色ブドウ球菌、肺炎かん菌、MRSAにおける抗菌活性値は、いずれも、2.2以上、好ましくは2.5以上である。
【0046】
また、以上のようにして得られた布帛は、社団法人繊維評価技術協議会が定める消臭加工繊維製品認証基準(2020年4月1日版)に規定されている汗臭および加齢臭に対する消臭性能にも優れるものである。具体的には後述する、JTETC消臭性区分「汗臭」消臭試験における、JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準によるアンモニアの減少率は、70%以上、好ましくは75%以上、酢酸の減少率は、70%以上、好ましくは75%以上、イソ吉草酸の減少率は、85%以上、好ましくは90%以上、ノネナールの減少率は75%以上、好ましくは80%以上であることができる。
【実施例
【0047】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例等で用いた特性値の測定法を示す。
【0048】
(1)金属キレート微粒子のキレート化の確認
FT-IR装置(Nicolet製,Magna760)を用い、下記の測定条件にて、超音波処理前後の溶液の測定を行ない、ピークトップの変動度合いを確認し、5cm-1以上変動している場合、キレート化していると判断した。
測定手法:1回反射ATR法(S.T.Japan社製 DuraScope ダイヤモンドATR結晶)
測定領域:700~4000cm-1
分解能:4cm-1
積算回数:32回
【0049】
(2)JTETC消臭性区分消臭試験
臭気成分としてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの4成分を用いて消臭試験を行い、下記の評価方法により消臭性能を評価した。
<消臭性能評価方法>
機器分析試験:JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準に従い、上記4成分について機器分析を行った。即ち、容器に臭気成分とサンプルを入れ、2時間放置後の臭気成分の残留濃度(2時間後の試料試験濃度)を測定した。臭気成分のみを入れた容器の残留濃度を空試験濃度として、下記式により、臭気成分の減少率を計算した。
減少率(%)=(2時間後の空試験濃度-2時間後の試料試験濃度)/(2時間後の空試験濃度)×100
尚、アンモニアと酢酸は、検知管法により、イソ吉草酸とノネナールは、ガスクロマトグラフィー法により測定した。
【0050】
(3)抗菌性評価
繊維製品衛生加工評議会(SEK)の統一試験法に順じて行った。減菌後クリーンベンチ内で乾燥した検体(1辺が約18mmの正方形の試験片0.4g)に、予め高圧蒸気減菌した後水冷した1/20濃度のニュートリエントプロスで、生菌数を(1±0.3)×105個/mLに調整した試験菌懸濁液0.2mlを検体全体に均一に浸みるように接種し、減菌したキャップを締め付ける。これを37±1℃で18時間培養し、培養後の生菌数を測定した。
検体は、標準布(抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに規定された布)と試験布の2種類であり、試験菌としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aurcus ATCC 6538P)を用い、下記式により抗菌性の指標である静菌活性値を算出し、静菌活性値が2.2以上のものを抗菌性ありと判断した。但し、(LogB-LogA)>1.5を満たすことを試験成立条件とした。
静菌活性値=LogB-LogC
ここで、Aは、標準布の接種直後に回収した菌数平均値であり、Bは、標準布の18時間培養後の菌数平均値であり、そしてCは、試験布の18時間培養後の菌数平均値である。
【0051】
(4)洗濯条件
JIS L-0217 103法に従って、30回行った。尚、洗剤は、「JAFET標準配合洗剤」(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)を用いた。
【0052】
(5)布帛表面上の金属キレート微粒子の粒子径
キーエンス社製顕微鏡VE-9800リアルサーフェイスビューを用いて、サンプル布帛を2000倍で観察した写真から金属キレート微粒子の投影面積を算出し、それと等しい面積を持つ円の直径を求め、金属キレート微粒子の粒子径とした。サンプル布帛の任意の5箇所について表面積1250μm2中に存在する全ての金属キレート微粒子の粒子径を測定し、平均した。
【0053】
(6)蛍光X線による金属元素の定性
島津社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置EDX-8000で、5cm四方に切ったサンプルを4つ折りにして測定部に固定し、当該金属元素の存在を確認した。
【0054】
[実施例1]
<金属キレート微粒子水分散液の作製>
水硬度が0ppmの純水0.16gに乳酸0.81g溶解した溶液を、メタノール12g中に添加して均一に混合し、得られた溶液中に酢酸亜鉛(2水塩)2gを攪拌しながら少しずつ溶解させた。
次に、この溶液を50℃に加温しながら、超音波装置を用い、高周波出力80W、発信周波数40kHzにて2時間、密閉状態で超音波照射して亜鉛キレート微粒子の水分散液を得た。
【0055】
次に水硬度0ppmの純水985gに乳酸を滴下し、pHを4.3に調整した。その後、得られた亜鉛キレート微粒子の分散液を添加して10分間攪拌し、亜鉛キレート微粒子0.2重量%の亜鉛キレート微粒子の水分散液を得た。
【0056】
<金属キレート微粒子の布帛への付与>
ポリエステル加工糸85dtex/36fと塩基性染料可染型ポリエステル加工糸84dtex/36f、を用い、スムース丸編地を作製した。次いで、拡布状で80℃の浴中で精練を行った後、170℃でプレセットを行ない、分散型カチオン染料カヤクリルブルー 2RL-ED:1.5%оwfにて染色加工し、還元洗浄を行った。次いで、下記に示す条件にて亜鉛キレート微粒子の水分散液による処理を行なった。浴比とは、生地重量対比の水溶液量である。例えば、生地が1kgであれば、浴比が1:20なので、抗菌消臭加工や染色加工の水溶液量は20kgになる。
【0057】
<抗菌消臭加工条件>
pH:4.3(乳酸にて調整)
亜鉛キレート微粒子濃度:0.059wt%(亜鉛換算)
浴比:1:20
温度:120℃
時間:40分
抗菌消臭加工後は、80℃で湯洗及び水洗をこの順序で2回繰り返した後、水の浴に可縫製向上剤と柔軟剤を添加し、布帛にパディング法にて付与した後、140℃の熱処理にて仕上げした。
以上の各工程でした水は全て、硬度0ppmであった。
【0058】
得られた染色編地の糸混率は、ポリエステル70重量%、塩基性染料可染型ポリエステル30重量%であり、目付は200g/m2であった。得られた染色編地を電子顕微鏡にて観察したとき、編地表面は亜鉛キレート微粒子で覆われており、微粒子の平均粒子径は1.25μm、蛍光X線分析により亜鉛の存在を確認し、生地pHは5.5、粒子径が20μmをこえる粒子は1個も存在していないことが確認された。この状態は洗濯30回後も同じであった。
【0059】
[実施例2]
ポリエステル短繊維60重量%と塩基性染料可染型ポリエステル短繊維40重量%を混紡した40/-スパン糸と、塩基性染料可染型ポリエステル仮撚加工糸84dtex/36f、ポリエステル仮撚加工糸84dtex/72fを用いて丸編地を作製し、全ての工程において使用した水の硬度が5ppmであったこと以外は、実施例1と同様の方法で染色加工、及び抗菌消臭加工による処理を行なった。
【0060】
得られた染色編地の糸混率はポリエステル56.2重量%、塩基性染料可染型ポリエステル43.8重量%であり、目付は184g/m2であった。得られた染色編地を電子顕微鏡にて観察したとき、編地表面は亜鉛キレート微粒子で覆われており、微粒子の平均粒径は1.8μm、蛍光X線分析により亜鉛の存在を確認し、生地pHは5.9、粒径が20μm以上の粒子は1個も存在していないことが確認された。この状態は洗濯30回後も同じであった。
【0061】
[実施例3]
ポリエステル加工糸56dtex/36fと、塩基性染料可染型ポリエステルと通常のポリエステルを混繊して得た加工糸55dtex/48fと、塩基性染料可染型ポリエステル110dtex/36fを用い、丸編地を作製し、全ての工程において使用した水硬度が10ppmであったこと以外は、実施例1と同様の方法で染色加工及び抗菌消臭加工による処理を行なった。得られた染色編地の糸混率は、ポリエステル57.0重量%、塩基性染料可染型ポリエステル43.0重量%、目付は189g/m2であった。得られた染色布帛を電子顕微鏡にて観察したとき、編地表面は亜鉛キレート微粒子で覆われており、微粒子の平均粒子径は3.0μm、蛍光X線分析により亜鉛の存在を確認し、生地pHは6.1、平均粒径が20μm以上の粒子は1個も存在していないことが確認された。この状態は洗濯30回後も同じであった。
【0062】
[比較例1]
全ての工程において硬度50ppmの水を使用したこと以外は、実施例2と同様に染色布帛を得た。
得られた染色布帛の糸混率はポリエステル56.2重量%、塩基性染料可染型ポリエステル43.8重量%、生地pHは6.0、目付は190g/m2であった。得られた染色編地を電子顕微鏡にて観察したとき、粒径20μm以上の亜鉛キレート微粒子で覆われていることが確認され、それ以下の亜鉛キレート微粒子はほとんど存在していないことが確認できた。蛍光X線分析により亜鉛の存在を確認した。この状態は洗濯30回後も同じであった。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から、実施例1~3で得られた抗菌消臭性の染色布帛は、比較例1で得られた布帛に比べ、抗菌性能、消臭性能、及び洗濯耐久性に優れ、商品価値の高い染色布帛であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る抗菌消臭性布帛は、優れた抗菌消臭性能の洗濯耐久性に優れるとともに、しなやかな風合を有し、吸水拡散性に優れ、着心地のよい染色布帛である。