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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ヘッドセット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20241021BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H04R1/10 104E
H04R1/10 104Z
G10K15/00 L
A61B5/01 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020164729
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056790
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 陽
(72)【発明者】
【氏名】川名 康夫
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523581(JP,A)
【文献】特開2015-023495(JP,A)
【文献】特開2014-187679(JP,A)
【文献】特開2012-047628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0003176(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0256106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
G10K 15/00
A61B 5/01
H04R 25/00
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とが同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項2】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とを加算又は減算したものが最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項3】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記マイクロフォンは、前記第2中空部に伝播する信号を収集するように離れた位置に設けられた複数のマイクロフォンであって、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号が同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項4】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記マイクロフォンは、前記第2中空部に伝播する信号を収集するように離れた位置に設けられた複数のマイクロフォンであって、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号を加算又は減算したものが最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項5】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記マイクロフォンは、前記第2中空部に伝播する信号と、前記第1中空部及び前記第2中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第3中空部に伝播する信号とを収集するように設けられ、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記マイクロフォンによって収集された集音信号が最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項6】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の中部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とが同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項7】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の中部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とを加算又は減算したものが最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【請求項8】
使用者の耳に装着される中空のハウジングと、
前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、
前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、
前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の中部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、
前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、
を含み、
前記マイクロフォンは、前記中空部に伝播する信号を収集するように離れた位置に設けられた複数のマイクロフォンであって、
前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、
前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号が同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測するヘッドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーモパイル、サーミスタ式センサ、赤外線式センサを用いた耳栓式体温計が知られている。
【0003】
例えば、音響信号を拡声出力する音響スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをケースに収めて一体化したことを特徴とするイヤホン装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-136556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イヤフォン式の温度検出の方法では、鼓膜、皮膚、空気の3つの温度を検出することが考えられるが、接触式等はイヤフォンドライバの前方を塞いでしまう。また、外耳道が曲がっているため、鼓膜の温度をとれる位置へのセンサの配置が困難であり、イヤフォンとの両立が物理的に難しい。
【0006】
また、温度を検出するサーモパイル、サーミスタ等の温度センサはコストが高い。上記特許文献1に記載の技術では、イヤフォンに赤外線センサを追加する必要があり、コストに関して懸念がある。
【0007】
また、上記の温度センサ等は絶対温度を検出するため、センサ自体が温度特性を持つ。温度を電気信号に変換するため、個人差によるバラツキが生じる。
【0008】
本発明は上記事実を考慮して、簡易な構成で、精度よく温度を計測することができるヘッドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヘッドセットは、使用者の耳に装着される中空のハウジングと、前記ハウジングの一部分であって、前記ハウジングの外耳道側の部分に設けられた筒状の外耳道挿入部と、前記ハウジング内部に設けられた信号出力用のドライバと、前記ドライバから出力された信号が伝播する前記外耳道挿入部内の第1中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォンと、前記ドライバから計測用信号が出力されたときに前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明によれば、ドライバから計測用信号を出力し、マイクロフォンによって、外耳道挿入部内から延びる第2中空部に伝播する信号を収集する。そして、演算部によって、ドライバから計測用信号が出力されたときにマイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測する。
【0011】
このように、ドライバから計測用信号が出力されたときにマイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測することにより、簡易な構成で、精度よく温度を計測することができる。
【0012】
本発明に係る演算部は、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された前記集音信号とに基づいて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【0013】
また、上記の発明に係る前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とが同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測することができる。あるいは、上記の発明に係る前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記ドライバから出力された前記計測用信号と、前記マイクロフォンによって収集された集音信号とを加算又は減算したものが最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【0014】
本発明に係る前記マイクロフォンは、前記第2中空部に伝播する信号を収集するように離れた位置に設けられた複数のマイクロフォンであって、前記演算部は、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【0015】
上記の発明に係る前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号が同位相又は逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測することができる。あるいは、上記の発明に係る前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記複数のマイクロフォンの各々によって収集された集音信号を加算又は減算したものが最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【0016】
本発明に係る前記マイクロフォンは、前記第2中空部に伝播する信号と、前記第1中空部及び前記第2中空部とは異なる中空部であって、前記外耳道挿入部内から延びる第3中空部に伝播する信号とを収集するように設けられ、前記演算部は、前記マイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【0017】
また、上記の発明に係る前記ドライバは、予め定められた複数の周波数の各々について、前記周波数で変化する前記計測用信号を順次出力し、前記演算部は、前記複数の周波数のうち、前記マイクロフォンによって収集された集音信号が最大又は最小となる周波数を特定し、前記特定された周波数から、前記周波数と前記温度との予め求められた対応関係を用いて、前記外耳道内の温度を計測することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のヘッドセットによれば、ドライバから計測用信号が出力されたときにマイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測することにより、簡易な構成で、精度よく温度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドセットの全体構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドセットの演算部を示すブロック図である。
図3】サイン波を用いた計測用信号及び集音信号の例を示す図である。
図4】矩形波を用いた計測用信号及び集音信号の例を示す図である。
図5】単発的なサイン波を用いた計測用信号及び集音信号の例を示す図である。
図6】ゼロクロスタイミングを推定する方法を説明するための図である。
図7】温度と特定された周波数との対応関係の例を示すグラフである。
図8】本発明の第1の実施の形態に係るヘッドセットによる温度計測処理の内容を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施の形態の他の例に係るヘッドセットによる温度計測処理の内容を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るヘッドセットの全体構成を示す断面図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係るヘッドセットの演算部を示すブロック図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係るヘッドセットによる温度計測処理の内容を示すフローチャートである。
図13】本発明の第2の実施の形態の他の例に係るヘッドセットによる温度計測処理の内容を示すフローチャートである。
図14】本発明の第3の実施の形態に係るヘッドセットの全体構成を示す断面図である。
図15】本発明の第3の実施の形態に係るヘッドセットの演算部を示すブロック図である。
図16】本発明の第3の実施の形態に係るヘッドセットによる温度計測処理の内容を示すフローチャートである。
図17】実施例に係るヘッドセットの全体構成を示す断面図である。
図18】実施例におけるドライバ、マイクロフォン及びフロントハウジング部分の分解斜視図である。
図19】実施例における外耳道挿入部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、発音部(イヤフォンドライバ)で発音した音が、外耳道に繋がった空間を通過する際に発生する遅延時間から、外耳道空間の温度を計測する。
【0022】
例えば、音が通過する経路の長さlを6mmとし、外耳道空間の温度が25℃である場合、発音部から集音センサまでの間に17.34μsecの遅延が発生する。また、この遅延時間は温度に依存する。
【0023】
音が通過する経路の長さlが6mmの場合、温度がt℃の時の音速Vは、V=331+0.6t[m/s]なので、1℃の温度上昇で遅延時間がおよそ0.03μsec短くなる。すわなち、遅延時間を正確に測定できれば温度が判明する。
【0024】
ただし、これらの微小な遅延時間の差はデジタル処理後では判別できない。音が通過する経路の長さlが6mmの場合、体温計に要求される精度(0.1℃)を判別するために必要な分解能が、0.003μsecであるのに対し、デジタル処理後に扱える最小単位が、1サンプル周期(96kHzで10.4μsec)であるためである。
【0025】
そこで、本実施の形態では、再生した音が、外耳道に繋がった長さl[mm]の空間を経由し、マイクロフォンで拾われるまでの時間をナノ秒単位で正確に計測するために、2つの経路で集音された音響信号を比較し、遅延時間を算出する。なお、この「2つの経路」の違いには、「外耳道に繋がった長さl[mm]の空間」を余計に経由するか否かも含まれる。
【0026】
また、遅延時間の算出方法として、以下の3つの方式を用いる。
【0027】
第1の方式では、特定の周波数で変化する信号(例えばサイン波)を用いて、2つの系統で集音された音響信号の位相を比較する。このとき、「外耳道に繋がった長さl[mm]の空間」により半波長以上の遅れが同位相、または逆位相となる周波数を特定する。そして、予め類似したシステムにおいて測定またはシミュレートした周波数と温度の対応関係を格納したテーブルまたは数式を用いて温度への変換を行う。
【0028】
第2の方式では、特定の周波数で変化する信号を用いて、集音された2つの系統の音響信号を加算または減算し、打ち消される周波数帯域を判別する。このとき、観測された音響信号のうち2つの音響信号を加算または減算し最小または最大となる周波数、または最小または最大になると推定される周波数を特定する。そして、予め類似したシステムにおいて測定またはシミュレートした周波数と温度との対応関係を格納したテーブルまたは数式を用いて、温度への変換を行う。
【0029】
第3の方式では、集音された2つの系統の音響信号を加算または減算し、周波数解析を用いて、打ち消される周波数帯域を判別する。そして、予め類似したシステムにおいて測定またはシミュレートした周波数と温度との対応関係を格納したテーブルまたは数式を用いて、温度への変換を行う。
【0030】
<本発明の第1の実施の形態のヘッドセットの構成>
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るヘッドセット100は、内部に各種の機能部品を収容する、使用者の耳に装着される中空のハウジング10を有する。また、ヘッドセット100は、ハウジング10の一部分であって、使用者の耳に装着されたときのハウジング10の外耳道側の部分に設けられた、第1中空部12Aを有する筒状の外耳道挿入部12を有する。
【0031】
また、ヘッドセット100は、ハウジング10内部に設けられた信号出力用のドライバ14を有する。
【0032】
また、ハウジング10は、外耳道挿入部12内を伝播する第1中空部12Aとは異なる中空部であって、外耳道挿入部12内から延びる第2中空部16Aを有する。
【0033】
また、ヘッドセット100は、第2中空部16Aに伝播する信号を収集するように設けられたマイクロフォン18と、ドライバ14から計測用信号を出力させる再生部20と、ドライバ14から計測用信号が出力されたときにマイクロフォン18によって収集された信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する演算部22と、演算部22による計測結果を出力する出力部23とを備えている。本実施形態では、第1中空部12Aを有する外耳道挿入部12内から延びる第2中空部16Aに伝播する信号を収集するようにマイクロフォン18を設けており、マイクロフォン18は、ドライバ14の後方に配置される。
【0034】
再生部20、演算部22、及び出力部23は、ハウジング10内に配置されたプリント配線基板(図示省略)上に実装されている。
【0035】
演算部22は、ドライバ14から出力された計測用信号と、マイクロフォン18によって収集された信号とに基づいて、外耳道内の温度を計測する。
【0036】
具体的には、演算部22は、機能的に、図2に示すように、再生制御部30、フィードバック取得部32、集音信号取得部34、周波数特定部36、及び温度変換部38を備えている。
【0037】
再生制御部30は、予め定められた複数の周波数の各々について、当該周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から順次出力させるように再生部20を制御する。例えば、再生制御部30は、図3に示すようなサイン波を用いた計測用信号を、ドライバ14から出力させる。あるいは、再生制御部30は、図4に示すような矩形波を用いた計測用信号を、ドライバ14から出力させる。なお、図3図4では、単一の周波数の計測用信号を用いた例を示しているが、周波数がスイープする計測用信号を用いてもよい。
【0038】
なお、外耳道での反射音が大きい場合に、再生制御部30は、図5に示すような単発的な波、例えば2周期のサイン波を用いた計測用信号を、ドライバ14から出力させる。ヘッドセット100の構造によっては外耳道での音の反射がマイクロフォン18に戻ってくることがあるため、このように単発的な計測用信号を用いることにより、外耳道で反射した音の影響を受けずに後述するゼロクロスタイミングの比較を行うことができる。
【0039】
また、複数の周波数として、例えば、10.2kHz~10.6kHzの間の2Hz間隔で定められる各周波数を用いればよい。すなわち、10.2kHz~10.6kHzを計測用信号として使用するレンジとした場合、0.1℃の分解能で計測するためには2Hz毎に周波数を変化させることが必要であるから、2Hz毎に計測用信号の周波数を変化させる。
【0040】
フィードバック取得部32は、再生部20からドライバ14へ出力された計測用信号を取得する。具体的には、フィードバック取得部32は、再生部20、ドライバ14、マイクロフォン18、及び集音信号取得部34において信号が通る伝送系と同じ伝送系(例えばDA変換回路及びAD変換回路)を通して、再生部20からドライバ14へ出力された計測用信号を取得する。
【0041】
集音信号取得部34は、マイクロフォン18によって収集された集音信号を取得する。
【0042】
周波数特定部36は、予め定められた複数の周波数のうち、フィードバック取得部32によって取得した計測用信号と、集音信号取得部34によって取得した集音信号とが同位相に対応する関係となる周波数を特定する。
【0043】
例えば、上記図3に示すように、経路の違いによる遅延が生じている計測用信号及び集音信号の各々について、任意の箇所でのゼロクロスが発生するゼロクロスタイミング(例えば、立ち下がりのゼロクロスタイミング)を比較する。
【0044】
なお、計測用信号と集音信号とで音量差があることが想定されるため、ゼロクロスタイミングを検出できない場合は、図6に示すように、ゼロを通過した前後のサンプルを用いて、ゼロクロスタイミングを推定する。
【0045】
例えば、計測用信号において推定されるゼロクロスタイミングTzcは、以下の近似式で表される。
【0046】
Tzc=a1/(a2-a1)
【0047】
ただし、a1は、ゼロクロスタイミング直前のサンプルの音声レベルであり、a2は、ゼロクロスタイミング直後のサンプルの音声レベルである。
【0048】
なお、集音信号についてに推定されるゼロクロスタイミングも、同様の近似式(b1/(b2-b1))で算出される。
計測用信号と集音信号とのゼロクロスタイミングの差の絶対値が、閾値以下である場合に、同位相であると判断する。
【0049】
温度変換部38は、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測する。例えば、図7に示すように、実験的に予め求められた温度と周波数との対応関係から、特定された周波数に対応する温度を、外耳道内の温度の計測結果とする。なお、温度と周波数との対応関係は、温度が既知の状態で各周波数の計測用信号を再生し、計測用信号と集音信号とでゼロクロスポイントの発生するタイミングの差を温度毎にプロットすることにより予め得られる。
【0050】
温度変換部38は、出力部23により、温度の計測結果を出力する。例えば、無線通信により、他の端末へ温度の計測結果を送信する。
【0051】
<本発明の第1の実施の形態のヘッドセットの動作>
ヘッドセット100のハウジング10が、使用者の耳に装着されているときであって、使用者の端末(図示省略)から、温度計測の指示が無線通信により受信されたときに、図8に示すような温度計測処理が、演算部22によって実行される。
【0052】
まず、ステップS100において、予め定められた複数の周波数のうちのいずれか1つの周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から出力させるように再生部20を制御する。本実施の形態では、初回のステップS100では、複数の周波数のうち一番下の周波数を選択する。
【0053】
ステップS102において、フィードバック取得部32は、再生部20からドライバ14へ出力された計測用信号を取得する。
【0054】
ステップS104において、集音信号取得部34は、マイクロフォン18によって収集された集音信号を取得する。
【0055】
ステップS106において、周波数特定部36は、フィードバック取得部32によって取得した計測用信号と、集音信号取得部34によって取得した集音信号との各々について、任意の箇所でのゼロクロスタイミングを検出する。
【0056】
ステップS108において、周波数特定部36は、上記ステップS106で検出された測定用信号と集音信号とのゼロクロスタイミングの差の絶対値が、閾値以下である場合に、同位相であると判断し、閾値より大きい場合には、同位相でないと判断する。
【0057】
ステップS110において、周波数特定部36は、同位相であると判断されたか否かを判定し、同位相であると判断された場合には、ステップS114へ移行し、一方、同位相でないと判断された場合には、ステップS112へ移行する。
【0058】
ステップS112において、複数の周波数のうち、1つ上の周波数を、計測用信号の周波数とする。そして、ステップS100からS110までを繰り返す。
【0059】
ステップS114において、温度変換部38は、上記ステップS108で同位相と判断された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測する。
【0060】
温度変換部38は、出力部23により、温度の計測結果を出力し、温度計測処理を終了する。
【0061】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るヘッドセットによれば、ドライバから計測用信号が出力されたときにマイクロフォンによって収集された集音信号と、当該計測用信号とに基づいて、外耳道内の温度を計測することにより、簡易な構成で、精度よく外耳道内の温度を計測することができる。
【0062】
また、マイクロフォンをドライバの後方に配置することにより、鼓膜からの反射音の影響を小さくすることができ、ドライバからの音と外耳道からの反射音とを分離しやすいため、精度よく外耳道内の温度を計測することができる。
【0063】
なお、上記の実施の形態において、フィードバック取得部32によって取得した計測用信号と、集音信号取得部34によって取得した集音信号とが、逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。例えば、フィードバック取得部32によって取得した計測用信号と、集音信号取得部34によって取得した集音信号とにおけるゼロクロスタイミングの差と、当該周波数に対応する周期の1/2との差の絶対値が、閾値以下である場合に、逆位相であると判断すればよい。
【0064】
また、周波数特定部36は、複数の周波数のうち、ドライバ14から出力された計測用信号と、マイクロフォン18によって収集された信号とを減算したものが最小となる周波数を特定し、温度変換部38は、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。
【0065】
この場合、図9に示す温度計測処理が、演算部22によって実行される。なお、上記図8に示す温度計測処理と同様の処理について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
まず、ステップS100において、予め定められた複数の周波数のうちのいずれか1つの周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から出力させるように再生部20を制御する。
【0067】
ステップS102において、フィードバック取得部32は、再生部20からドライバ14へ出力された計測用信号を取得する。
【0068】
ステップS104において、集音信号取得部34は、マイクロフォン18によって収集された集音信号を取得する。
【0069】
ステップS150において、周波数特定部36は、フィードバック取得部32によって取得した計測用信号から、集音信号取得部34によって取得した集音信号を減算した信号を算出する。
【0070】
ステップS152において、周波数特定部36は、複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S102、S104、S150の各処理を実行したか否かを判定する。複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S102、S104、S150の各処理を実行した場合には、ステップS154へ移行する。一方、複数の周波数のうち、上記ステップS100、S102、S104、S150の各処理を実行していない周波数が存在する場合には、ステップS112へ移行する。
【0071】
ステップS112において、複数の周波数のうち、1つ上の周波数を、計測用信号の周波数とする。
【0072】
ステップS154では、周波数特定部36は、上記ステップS150で算出した減算結果の信号に基づいて、複数の周波数のうち、減算結果の信号が最小となる周波数を特定する。
【0073】
ステップS114において、温度変換部38は、上記ステップS154で特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測し、出力部23により、温度の計測結果を出力し、温度計測処理を終了する。
【0074】
また、周波数特定部36は、複数の周波数のうち、ドライバ14から出力された計測用信号と、マイクロフォン18によって収集された集音信号とを加算したものが最大となる周波数を特定し、温度変換部38は、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。
【0075】
<本発明の第2の実施の形態のヘッドセットの構成>
次に、第2の実施の形態のヘッドセットについて説明する。第1の実施の形態と同様の構成となる部分につては、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2の実施の形態では、複数のマイクロフォンで集音された集音信号を用いて、外耳道内の温度を計測する点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0077】
図10に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るヘッドセット200は、第2中空部16Aに伝播する信号を収集するように異なる位置に設けられた2つのマイクロフォン218A、218Bと、ドライバ14から計測用信号が出力されたときにマイクロフォン218A、218Bによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測する演算部222と、を備えている。
【0078】
演算部222は、マイクロフォン218A、218Bによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測する。
【0079】
具体的には、演算部222は、機能的に、図11に示すように、再生制御部30、第1集音信号取得部232、第2集音信号取得部234、周波数特定部236、及び温度変換部38を備えている。
【0080】
第1集音信号取得部232は、マイクロフォン218Aによって収集された集音信号を取得する。
【0081】
第2集音信号取得部234は、マイクロフォン218Bによって収集された集音信号を取得する。
【0082】
周波数特定部236は、予め定められた複数の周波数のうち、第1集音信号取得部232によって取得した集音信号と、第2集音信号取得部234によって取得した集音信号とが同位相に対応する関係となる周波数を特定する。
【0083】
例えば、上記図3と同様に、経路の長さの違いによる遅延が生じている2つの集音信号の各々について、任意の箇所でのゼロクロスタイミング(例えば、立ち下がりのゼロクロスタイミング)を比較する。ゼロクロスタイミングの差の絶対値が、閾値以下である場合に、同位相であると判断する。
【0084】
<本発明の第2の実施の形態のヘッドセットの動作>
ヘッドセット200のハウジング10が、使用者の耳に装着されているときであって、使用者の端末(図示省略)から、温度計測の指示が無線通信により受信されたときに、図12に示すような温度計測処理が、演算部222によって実行される。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
まず、ステップS100において、予め定められた複数の周波数のうちのいずれか1つの周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から出力させるように再生部20を制御する。
【0086】
ステップS200において、第1集音信号取得部232は、マイクロフォン218Aによって収集された集音信号を取得する。第2集音信号取得部234は、マイクロフォン218Bによって収集された集音信号を取得する。
【0087】
ステップS202において、周波数特定部236は、第1集音信号取得部232、第2集音信号取得部234によって取得した集音信号の各々について、任意の箇所でのゼロクロスタイミングを検出する。
【0088】
ステップS204において、周波数特定部236は、上記ステップS202で検出されたゼロクロスタイミングの差の絶対値が、閾値以下である場合に、同位相であると判断し、閾値より大きい場合には、同位相でないと判断する。
【0089】
ステップS110において、周波数特定部236は、同位相であると判断されたか否かを判定し、同位相であると判断された場合には、ステップS114へ移行し、一方、同位相でないと判断された場合には、ステップS112へ移行する。
【0090】
ステップS112において、複数の周波数のうち、1つ上の周波数を、計測用信号の周波数とする。
【0091】
ステップS114において、温度変換部38は、上記ステップS204で同位相と判断された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測する。温度変換部38は、出力部23により、温度の計測結果を出力し、温度計測処理を終了する。
【0092】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係るヘッドセットによれば、ドライバから計測用信号が出力されたときに複数のマイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測することにより、簡易な構成で、精度よく外耳道内の温度を計測することができる。
【0093】
なお、上記の実施の形態において、第1集音信号取得部232、第2集音信号取得部234によって取得した集音信号が、逆位相に対応する関係となる周波数を特定し、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。例えば、第1集音信号取得部232、第2集音信号取得部234によって取得した集音信号におけるゼロクロスタイミングの差と、当該周波数に対応する周期の1/2との差の絶対値が、閾値以下である場合に、逆位相であると判断すればよい。
【0094】
また、周波数特定部236は、複数の周波数のうち、マイクロフォン218A、218Bによって収集された集音信号を減算したものが最小となる周波数を特定し、温度変換部38は、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。
【0095】
この場合、図13に示す温度計測処理が、演算部222によって実行される。なお、上記図12に示す温度計測処理と同様の処理について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
まず、ステップS100において、予め定められた複数の周波数のうちのいずれか1つの周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から出力させるように再生部20を制御する。
【0097】
ステップS200において、第1集音信号取得部232は、マイクロフォン218Aによって収集された集音信号を取得する。第2集音信号取得部234は、マイクロフォン218Bによって収集された集音信号を取得する。
【0098】
ステップS250において、周波数特定部236は、第1集音信号取得部232によって取得した集音信号から、第2集音信号取得部234によって取得した集音信号を減算した信号を算出する。
【0099】
ステップS252において、周波数特定部236は、複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S200、S250の各処理を実行したか否かを判定する。複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S200、S250の各処理を実行した場合には、ステップS254へ移行する。一方、複数の周波数のうち、上記ステップS100、S200、S250の各処理を実行していない周波数が存在する場合には、ステップS112へ移行する。
【0100】
ステップS112において、複数の周波数のうち、1つ上の周波数を、計測用信号の周波数とする。
【0101】
ステップS254では、周波数特定部236は、上記ステップS250で算出した減算結果の信号に基づいて、複数の周波数のうち、減算結果の信号が最小となる周波数を特定する。
【0102】
ステップS114において、温度変換部38は、上記ステップS254で特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測し、出力部23により、温度の計測結果を出力し、温度計測処理を終了する。
【0103】
<本発明の第3の実施の形態のヘッドセットの構成>
次に、第3の実施の形態のヘッドセットについて説明する。第1の実施の形態と同様の構成となる部分につては、同一符号を付して説明を省略する。
【0104】
第3の実施の形態では、マイクロフォンが、異なる経路を伝播した信号を同時に集音し、集音された集音信号を用いて、外耳道内の温度を計測する点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0105】
図14に示すように、本発明の第3の実施の形態に係るヘッドセット300のハウジング310は、外耳道挿入部12内を伝播する第1中空部12Aとは異なる中空部であって、外耳道挿入部12内から延びる第2中空部216A、第3中空部216Bを有する。第2中空部216A、第3中空部216Bは、それぞれ、外耳道挿入部12からマイクロフォン18までの長さが異なっている。
【0106】
マイクロフォン18は、第2中空部216A、第3中空部216Bに伝播する信号を同時に収集するように設けられている。
【0107】
演算部322は、ドライバ14から計測用信号が出力されたときにマイクロフォン18によって収集された集音信号に基づいて、前記外耳道内の温度を計測する。
【0108】
具体的には、演算部322は、機能的に、図15に示すように、再生制御部30、集音信号取得部334、周波数特定部336、及び温度変換部38を備えている。
【0109】
集音信号取得部334は、マイクロフォン18によって収集された集音信号を取得する。
【0110】
周波数特定部336は、予め定められた複数の周波数のうち、集音信号取得部334によって取得した集音信号が最小となる周波数を特定する。
【0111】
温度変換部38は、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測する。温度変換部38は、出力部23により、温度の計測結果を出力する。
【0112】
<本発明の第3の実施の形態のヘッドセットの動作>
ヘッドセット300のハウジング310が、使用者の耳に装着されているときであって、使用者の端末(図示省略)から、温度計測の指示が無線通信により受信されたときに、図16に示すような温度計測処理が、演算部322によって実行される。
【0113】
まず、ステップS100において、予め定められた複数の周波数のうちのいずれか1つの周波数で変化する計測用信号を、ドライバ14から出力させるように再生部20を制御する。
【0114】
ステップS300において、集音信号取得部334は、マイクロフォン18によって収集された集音信号を取得する。
【0115】
ステップS302において、周波数特定部336は、複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S300の各処理を実行したか否かを判定する。複数の周波数の全てを、計測用信号の周波数として、上記ステップS100、S300の各処理を実行した場合には、ステップS304へ移行する。一方、複数の周波数のうち、上記ステップS100、S300の各処理を実行していない周波数が存在する場合には、ステップS112へ移行する。
【0116】
ステップS112において、複数の周波数のうち、1つ上の周波数を、計測用信号の周波数とする。
【0117】
ステップS304では、周波数特定部336は、上記ステップS300で取得した集音信号に基づいて、複数の周波数のうち、集音信号が最小となる周波数を特定する。
【0118】
ステップS114において、温度変換部38は、上記ステップS304で特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測する。
【0119】
温度変換部38は、出力部23により、温度の計測結果を出力し、温度計測処理を終了する。
【0120】
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係るヘッドセットによれば、ドライバから計測用信号が出力されたときにマイクロフォンによって収集された集音信号に基づいて、外耳道内の温度を計測することにより、簡易な構成で、精度よく外耳道内の温度を計測することができる。
【0121】
なお、上記の実施の形態において、集音信号取得部334によって取得した集音信号が最大となる周波数を特定し、特定された周波数から、周波数と温度との予め求められた対応関係を用いて、外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。
【0122】
<実施例>
上記第1の実施の形態のヘッドセットの実施例について説明する。図17に示すように、本実施例のヘッドセットのハウジング10は、メインハウジング1aとフロントハウジング1bが嵌合して形成される。
【0123】
メインハウジング1aは、全体として円筒形をした中空状の部材であり、後方の開口部はカバー2によって塞がれている。メインハウジング1aの内部には、その開口部に対向してプリント配線基板3が配置される。プリント配線基板3は、再生部20、演算部22、及び出力部23として機能する電子部品を実装した基板である。
【0124】
プリント配線基板3の前方には、電池6が電池クッション7及び電池キャップ8を介して配置される。
【0125】
図17に示すように、メインハウジング1aの外周には、ハウジングラバー9が設けられる。ハウジングラバー9は、メインハウジング1aの外周に嵌め込まれた円筒状の弾性部材であり、耳との接触を緩和するとともに、ハウジング10内への水の進入を防止する。
【0126】
図17及び図18に示すように、フロントハウジング1bは、円筒状をしたメインハウジング1aの前方の開口部を塞ぐように配置される。フロントハウジング1bは、全体として斜円錐台の形状をしており、周縁の一部が鼓膜側に向かってやや盛り上がっている。
【0127】
フロントハウジング1bの前方には、斜円錐台の頂部から鼓膜側に向かって突出した外耳道挿入部12が設けられる。外耳道挿入部12は、フロントハウジング1bの一部に設けられた円筒状の形状であり、前方及び後方とも開口し、フロントハウジング1bの内外を連通させている。外耳道挿入部12の内部には、円筒状のケースを備えたドライバ14が設置される。そのため、外耳道挿入部12の前方開口部に近接して、ドライバ14の位置決め部11が設けられ、ドライバ14の前端部がこの位置決め部11に係合することにより、ドライバ14は外耳道挿入部12の内側面に固定される。ドライバ14の後端部は、フロントハウジング1bの前端部付近に来るよう配置される。ドライバ14は、円筒状のケース内に出力信号を生成するための磁気回路、振動板などを備え、適宜の周知構造のものが用いられる。
【0128】
図18に示すように、ドライバ14の後方からリード線414が配線される。リード線414は、プリント配線基板3に接続される。
【0129】
本実施例のヘッドセットは、マイクロフォン18を有する。マイクロフォン18は、フロントハウジング1b内の外耳道挿入部12の近傍、すなわちドライバ14の後方に設けられる。
【0130】
図17及び図18に示すように、マイクロフォン18は、マイクロフォン用基板15に実装される。マイクロフォン用基板15は、ブロック416に固定される。ブロック416は、マイクロフォン18とマイクロフォン用基板15を支持するブロック状の部材である。マイクロフォン用基板15及びブロック416には、マイクロフォン18に外耳道内の音響信号が到達することができるように開口部15a,16aが設けられている。
【0131】
図17では図示を省略するが、感圧接着剤17が、マイクロフォン18とブロック416、ブロック416とフロントハウジング1bの間にそれぞれ設けられて、両者を固定する。感圧接着剤17には、第2中空部16Aやマイクロフォン用基板15の開口部15aを塞ぐことがないように、開口部17aが設けられている。
【0132】
図17及び図19に示すように、外耳道挿入部12の内面には、外耳道挿入部12の軸方向に沿って形成された溝である第2中空部16Aが設けられる。なお、図19は、イヤピース取付溝412において外耳道挿入部12を断面にした図である。第2中空部16Aは、ドライバ14の側面との間に形成された角溝型の空間であって、外耳道挿入部12の前端部からフロントハウジング1bに固定されたブロック416の開口部16aにまで連通している。
【0133】
図17及び図18に示すように、外耳道挿入部12の外周には、イヤピース13が固定される。イヤピース13は、イヤチップ、イヤパッド、イヤキャップとも呼ばれており、例えばシリコーンゴムなどの弾性部材からなる。イヤピース13は、外耳道挿入部12の外周に嵌め込まれる円筒部13bの先端に、半球に形成された外耳道壁面への密着部13aを有する。図18及び図19に示すように、外耳道挿入部12の外周には、イヤピース取付溝412が設けられ、一方、図17に示すように、イヤピース13の円筒部13bの内周に嵌合部13cが設けられており、嵌合部13cがイヤピース取付溝412に噛み合うことにより、イヤピース13が外耳道挿入部12に固定される。
【0134】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0135】
例えば、上記の第1、第2の実施の形態では、複数の周波数で変化する計測用信号を同時に出力したときに、2つの系統で取得した信号を加算または減算し、周波数解析を用いて、打ち消される周波数帯域を判別するようにしてもよい。そして、予め類似したシステムにおいて測定またはシミュレートした周波数と温度との対応関係を格納したテーブルまたは数式を用いて、温度への変換を行うようにしてもよい。また、計測用信号として、ホワイトノイズを用いてもよい。
【0136】
また、ドライバが、外耳道挿入部内に配置されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。外耳道挿入部内に計測用信号を出力できる位置であれば、他の位置にドライバを配置してもよい。
【0137】
また、計測用信号の周波数として、非可聴帯域を用いてもよい。この場合、ユーザが聴いている音楽等に計測用信号を加算して外耳道内の温度を計測するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0138】
10、310 ハウジング
12 外耳道挿入部
12A 第1中空部
14 ドライバ
16A 第2中空部
18、218A、218B マイクロフォン
20 再生部
22、222、322 演算部
23 出力部
30 再生制御部
32 フィードバック取得部
34、334 集音信号取得部
36、236、336 周波数特定部
38 温度変換部
100、200、300 ヘッドセット
216A 第2中空部
216B 第3中空部
232 第1集音信号取得部
234 第2集音信号取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19