(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】吹き付け装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20241021BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20241021BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20241021BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
E04G21/16
B05B13/04
B05B12/00 A
E04B1/94 E
(21)【出願番号】P 2020165821
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516262549
【氏名又は名称】エス.ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】野村 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅一
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】柚山 精一
(72)【発明者】
【氏名】釜井 正太郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-170290(JP,A)
【文献】特開平10-077741(JP,A)
【文献】特開2013-170051(JP,A)
【文献】特開昭59-046161(JP,A)
【文献】特表2016-526121(JP,A)
【文献】特開昭61-270499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14 -21/22
B05B 12/00,13/04
E04B 1/94
E04F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、
前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、
前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、
前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、
前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、
前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され
、
前記車輪軸又は転輪軸は、前記吹き付け装置の長さ方向に延びており、
前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体の長さ方向の一端部に取り付けられ、
前記ロボットアームの基端部が、前記吹き付け装置の長さ方向の外側に向かって突出していることを特徴とする吹き付け装置。
【請求項2】
建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、
前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、
前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、
前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、
前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、
前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され
、
前記ロボットアームの振動を抑制するための振動抑制装置をさらに備え、
前記振動抑制装置は、前記吹き付け装置の前記長さ方向又は幅方向において前記ロボットアームとは異なる位置に配置されていることを特徴とする吹き付け装置。
【請求項3】
前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体の長さ方向の一端部に取り付けられ、
前記振動抑制装置は、
前記ロボットアームと略同じ高さ位置に配置され、
前記吹き付け装置の本体の前記長さ方向の他端部に取り付けられていることを特徴とする請求項
2に記載の吹き付け装置。
【請求項4】
建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、
前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、
前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、
前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、
前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、
前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され
、
前記ロボットアームを上下方向に移動させる昇降装置をさらに備え、
前記昇降装置は、前記ロボットアームを上下方向に移動させるために上下方向に駆動する駆動ユニットを有し、
前記駆動ユニットが、前記吹き付け装置の長さ方向において前記ロボットアームとは異なる位置に配置されていることを特徴とする吹き付け装置。
【請求項5】
前記ロボットアームの振動を抑制するための振動抑制装置をさらに備え、
前記駆動ユニットは、前記ロボットアームと前記振動抑制装置の間に挟まれて配置されていることを特徴とする請求項
4に記載の吹き付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き付け装置に係り、特に、建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の被施工体(例えば、柱や梁)に吹き付け材(例えば、耐火被覆材)を吹き付ける作業をする際には、作業者が、吹き付け材を噴射する噴射口を手に取って、被施工体の周りを移動しながら吹き付け作業をすることが一般的である。
しかしながら、上記吹き付け作業は重労働であってその作業環境も悪いことから、ロボットアームを備えた吹き付けロボットを利用することが提案されている(例えば、特許文献、1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の吹き付けロボットでは、噴射装置の噴射口を保持し、当該噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、ロボットアームを吹き付けロボットの長さ方向に移動させる横行装置と、ロボットアーム及び横行装置を昇降させる昇降装置と、ロボットアーム、横行装置及び昇降装置を下方から支持しながら水平方向に移動させる走行装置(移動装置)と、から主に構成されている。
また、被施工体に吹き付け材を連続的に吹き付けるべく、ロボットアーム、横行装置、昇降装置及び走行装置を制御する制御部(演算処理装置)を備えている。
【0004】
特許文献2に記載の吹き付けロボットも同様であって、噴射装置と、ロボットアームと、制御装置とを備えており、当該制御装置が、噴射装置による耐火被覆材の噴射と、ロボットアームによる噴射口の位置とを制御することで、被施工体の表面に耐火被覆材を吹き付ける作業を自動化している。
また、吹き付けロボットによる吹き付けパターンを工夫することで、耐火被覆材の付着が不十分な箇所が生じることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-20206号公報
【文献】特開2019-63689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吹き付けロボットによる吹き付け作業においては、ロボットアームによる噴射口の高さ方向の可動範囲をできる限り広くし、例えば、被施工体となる柱の上端から下端まで耐火被覆材を好適に吹き付けられることが好ましい。
しかしながら、特許文献1のような吹き付けロボットでは、ロボットアームが、吹き付けロボット本体から上方に向かって突出しているため、ロボットアームの高さ方向の可動範囲が狭くなってしまう虞があった。特に、ロボットアームの下方向への可動範囲が制限されてしまうため、被施工体の下端部に吹き付け作業を行うことが困難となっていた。
【0007】
また、吹き付けロボットによる吹き付け作業においては、吹き付け装置が建物の柱や壁に接触しないように、当該装置の長さ方向及び幅方向について極力大型化しないように配慮することが好ましい。
さらには、吹き付け作業を好適に行うべく、ロボットアームが被施工体となる柱に近接できるように、当該ロボットアームの配置、構成を工夫することが好ましい。
しかしながら、特許文献1のような吹き付けロボットでは、ロボットアームが吹き付けロボットの中央部に配置されているため、当該ロボットアームが柱に接近したときに、吹き付けロボットの外周部分が柱や壁に接触してしまう虞があった。あるいは、ロボットアームを長さ方向に移動させる横行装置を取り付けて対処することはできるものの、より複雑な機構となってしまい、吹き付け装置の大型化につながる虞があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ロボットアームの配置、構成を工夫して、吹き付け作業を好適に行うことが可能な吹き付け装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ロボットアームによる噴射口の高さ方向の可動範囲をできる限り広くし、被施工体の上端から下端まで耐火被覆材を好適に吹き付けることが可能な吹き付け装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、本装置の長さ方向及び幅方向の大型化を抑えながらも、吹き付け作業を好適に行うことが可能な吹き付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の吹き付け装置によれば、建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、前記移動装置は、前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され、前記車輪軸又は転輪軸は、前記吹き付け装置の長さ方向に延びており、前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体の長さ方向の一端部に取り付けられ、前記ロボットアームの基端部が、前記吹き付け装置の長さ方向の外側に向かって突出していると良い。
【0010】
上記構成により、ロボットアームの配置、構成を工夫して、吹き付け作業を好適に行うことが可能な吹き付け装置を実現することができる。
詳しく述べると、移動装置は、車輪(転輪)と、当該車輪(転輪)の回動軸を構成し、吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸(転輪軸)とを有し、ロボットアームは、吹き付け装置の本体から車輪軸(転輪軸)の延出方向の外側に向かって突出するように配置されている。
すなわち、ロボットアームが、吹き付け装置の本体から当該装置の長さ方向又は幅方向の外側に向かって突出しているため、従来のようにロボットアームが吹き付け装置の上方に向かって突出する場合と比較して、ロボットアームの高さ方向の可動範囲をより広くすることができる。特にロボットアームの下方向への可動範囲を大きくすることができる。その結果、被施工体(例えば、柱)の上端から下端まで耐火被覆材を好適に吹き付けることが可能な吹き付け装置を実現できる。
また、ロボットアームが、車輪軸(転輪軸)の延出方向に沿って配置されており、車輪(転輪)の前進又は後進方向に対して垂直の方向に突出して配置されることになる。そのため、吹き付け装置(ロボットアーム)が、被施工体(例えば、梁)の長尺方向に沿って前進又は後進移動することができ、吹き付け作業を効率良く、安定して行うことができる。
なお、移動装置は、車輪及び車輪軸からなるタイヤ式の移動装置であっても良いし、転輪及び転輪軸からなる無限軌道式の移動装置等であっても良い。
また上記のように、ロボットアームが、吹き付け装置の本体の長さ方向の一端部に取り付けられているため、従来のようにロボットアームが吹き付け装置の中央部に配置されている場合と比較して、シンプルな構成でロボットアームの高さ方向の可動範囲をより広くすることができる。
また、車輪軸(転輪軸)が、吹き付け装置の長さ方向に延びており、ロボットアームが、吹き付け装置の長さ方向の外側に向かって突出しているため、吹き付け装置が、当該装置の長さ方向ではなく幅方向に沿って前進又は後進移動することになる。その結果、吹き付け装置が、被施工体(例えば、梁)の長尺方向に沿って前進又は後進移動したときに、吹き付け装置やロボットアームが建物の柱や壁に接触してしまうことを避け易くなる。
【0011】
また前記課題は、本発明の吹き付け装置によれば、建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、前記移動装置は、前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され、前記ロボットアームの振動を抑制するための振動抑制装置をさらに備え、前記振動抑制装置は、前記吹き付け装置の前記長さ方向又は幅方向において前記ロボットアームとは異なる位置に配置されていると良い。
上記のように、吹き付け装置が振動抑制装置を備えているため、ロボットアームによる吹き付け作業を安定して行うことができる。
また上記のように、振動抑制装置が、吹き付け装置の長さ方向又は幅方向においてロボットアームとは異なる位置に配置されているため、各構成部品が動作した場合であっても互いに干渉してしまうことを抑制できる。
【0012】
このとき、前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体の長さ方向の一端部に取り付けられ、前記振動抑制装置は、前記ロボットアームと略同じ高さ位置に配置され、前記吹き付け装置の本体の前記長さ方向の他端部に取り付けられていると良い。
上記構成により、振動抑制装置がロボットアームの振動をより精度良く抑制することができる。
また、ロボットアーム及び振動抑制装置をバランス良くコンパクトに配置することができ、吹き付け装置の大型化を抑えられる。特に、吹き付け装置の幅方向の大型化を抑えることができる。
【0013】
また前記課題は、本発明の吹き付け装置によれば、建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、前記吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、前記噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、前記ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置と、を備え、前記移動装置は、前記ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪又は転輪と、前記車輪又は転輪の回動軸を構成し、前記吹き付け装置の長さ方向又は幅方向に延びている車輪軸又は転輪軸と、を有し、前記ロボットアームは、前記吹き付け装置の本体から前記車輪軸又は転輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置され、前記ロボットアームを上下方向に移動させる昇降装置をさらに備え、前記昇降装置は、前記ロボットアームを上下方向に移動させるために上下方向に駆動する駆動ユニットと、を有し、前記駆動ユニットが、前記吹き付け装置の長さ方向において前記ロボットアームとは異なる位置に配置されていると良い。
上記構成により、ロボットアーム及び駆動ユニットをバランス良く、コンパクトに配置することができる。また、吹き付け装置の幅方向の大型化を抑えられる。
【0014】
このとき、前記ロボットアームの振動を抑制するための振動抑制装置をさらに備え、前記駆動ユニットは、前記ロボットアームと前記振動抑制装置の間に挟まれて配置されていると良い。
上記構成により、ロボットアーム、振動抑制装置及び駆動ユニットをバランス良く、コンパクトに配置することができる。また、吹き付け装置の幅方向の大型化をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吹き付け装置によれば、ロボットアームの配置、構成を工夫して、吹き付け作業を好適に行うことが可能となる。
また、ロボットアームによる噴射口の高さ方向の可動範囲をできる限り広くし、被施工体の上端から下端まで耐火被覆材を好適に吹き付けることが可能となる。
また、吹き付け装置の長さ方向及び幅方向の大型化を抑えながらも、吹き付け作業を好適に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の吹き付けシステム全体の構成図である。
【
図2】吹き付け装置の斜視図であって、ロボットアームが下方位置にいる状態を示す図である。
【
図3】吹き付け装置の斜視図であって、ロボットアームが上方位置にいる状態を示す図である。
【
図4】吹き付け装置のカバーを取り外した状態の斜視図であって、昇降装置、駆動ユニット及び振動抑制装置を示す図である。
【
図5】ロボットアーム、ホース保持具及び噴射口接続具を示す斜視図である。
【
図6B】ホース保持具が開いた状態を示す図である。
【
図7A】昇降装置を駆動する駆動ユニットの駆動動作を説明する図である。
【
図7B】駆動ユニットの駆動動作を説明する図である。
【
図8B】第2実施形態のホース取り回し治具を示す斜視図である。
【
図8C】第3実施形態のホース取り回し治具を示す斜視図である。
【
図11】建物の一区画内における吹き付け経路を説明する図である。
【
図12】一ブロック内における吹き付けパターンを説明する図である。
【
図13】第2実施形態の吹き付け装置の斜視図であって、レール式の昇降装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について
図1-
図13を参照して説明する。
本実施形態は、建物の被施工体に吹き付け材を吹き付けるための吹き付け装置であって、吹き付け材を噴射する噴射口を保持し、噴射口の位置及び角度を変更するロボットアームと、ロボットアームを水平方向に移動させる移動装置とを備えており、当該移動装置は、ロボットアームを水平方向に移動させるために回転する車輪と、車輪の回動軸を構成し、吹き付け装置の長さ方向に延びている車輪軸とを有し、上記ロボットアームは、吹き付け装置の本体から車輪軸の延出方向の外側に向かって突出するように配置されていることを主な特徴とする発明に関するものである。
【0018】
本実施形態の吹き付け装置1を含む吹き付けシステムS全体の構成を
図1に示す。
吹き付けシステムSは、
図1に示すように、建物Bの被施工体(柱B1や梁B2)に吹き付け材(耐火被覆材)を吹き付ける吹き付け装置1と、吹き付け装置1に取り付けられ、耐火被覆材を噴射する噴射装置100と、建物内の床上に設置され、噴射装置100のホース140、170を取り回すホース取り回し治具200と、から主に構成されている。
また、吹き付けシステムSは、建物内の床上に設置され、吹き付け装置1との距離及び角度を測量する測量機300と、吹き付け装置1及び測量機300とネットワークを通じて接続され、測量機300から受信した測量データから吹き付け装置1の位置情報(位置及び向き)を演算し、吹き付け装置1へ位置情報や所定の吹き付け作業を実行させるためのプログラムやデータを送信するオペレーター端末400と、をさらに備えている。
【0019】
<吹き付けシステムのハード構成>
吹き付け装置1は、
図2-
図4に示すように、多関節型のロボットアームを搭載した無人搬送車(AGV)であって、詳しく述べると、装置本体10と、装置本体10上に取り付けられ、吹き付け材を噴射する噴射口110を保持し、噴射口110の位置及び角度を変更するロボットアーム20と、ロボットアーム20の振動を抑制するための振動抑制装置30と、ロボットアーム20及び振動抑制装置30を上下方向に移動させる昇降装置40と、装置本体10の下方に取り付けられ、これら構成部品を水平方向(2次元方向)に移動させる移動装置50と、から主に構成されている。
また、吹き付け装置1は、装置本体10の内部に取り付けられ、耐火被覆材の噴射を調整するためのエアコンプレッサ60と、装置本体10の外側面の四隅に取り付けられ、測量機300の検出対象となるプリズム70と、装置本体10の外周面にわたって取り付けられ、建物内の接触対象物と接触したときに作動する安全装置80と、をさらに備えている。
さらに、吹き付け装置1は、装置本体10の内部に取り付けられ、ロボットアーム20、昇降装置40、移動装置50、エアコンプレッサ60及び安全装置80の各種動作を制御する制御装置90をさらに備えている。
【0020】
噴射装置100は、
図1に示すように、ロックウール(第1材料)とモルタル(第2材料)を混合した耐火被覆材を噴射する装置であって、詳しく述べると、噴射口110と、ロックウールをほぐす解綿機120と、ほぐされたロックウールを噴射口110へ運ぶブロア130と、噴射口110、解綿機120及びブロア130を接続する第1ホース140と、モルタルを混錬するミキサー150と、混錬したモルタルを噴射口110へ運ぶポンプ160と、噴射口110、ミキサー150及びポンプ160を接続する第2ホース170と、から主に構成されている。
詳しく述べると、ホース140、170の先端部分は、
図1、2に示すように、吹き付け装置1のエアコンプレッサ60と接続されており、エアコンプレッサ60を介してロボットアーム20の位置まで延びている。
上記構成により、噴射装置100は、エアコンプレッサ60によって調整しながら、ロックウール及びモルタルを混合した耐火被覆材を噴射口110から噴射することができる。
【0021】
ホース取り回し治具200は、
図1、8A-
図8Cに示すように、建物内の床上に設置され、噴射装置100のホース140、170を保持する可動式の治具である。
ホース取り回し治具200は、ホース140、170を下方から支持する治具本体210と、治具本体210の下端に取り付けられた複数のキャスター220と、治具本体210から所定の間隔を空けて立設し、ホース140、170を挟むように設けられた左右の立設体230と、から主に構成されている。
上記構成により、吹き付け装置1がホース140、170を踏んでしまうことや、ホース140、170同士が絡まってしまうことを防止することができる。また、吹き付け装置1が水平方向に移動したときに、ホース140、170を円滑に追従させることができる。
【0022】
以下、吹き付け装置1のハード構成について詳しく説明する。
ロボットアーム20は、
図4、
図5に示すように、昇降装置40上に取り付けられ、吹き付け装置1の長さ方向の一端部に配置されている。
また、ロボットアーム20は、吹き付け装置1の長さ方向の外側に向かって突出するように配置されている。詳しく述べると、ロボットアーム20の基端部20aが、吹き付け装置1の長さ方向の外側に向かって突出している。
なお、ロボットアーム20は、不図示の袋状のカバーによって覆われている。
【0023】
ロボットアーム20は、6軸機構のマニピュレータからなるアーム本体21と、アーム本体21の先端部に取り付けられ、噴射口110に接続される噴射口接続具22と、アーム本体21の外側面に間隔を空けて取り付けられ、ホース140、170を保持するホース保持具23と、から主に構成されている。
【0024】
噴射口接続具22は、
図5に示すように、噴射口110をワンタッチで接続可能とし、耐火被覆材を吹き付けるための噴射ヘッド22aと、噴射ヘッド22a及びアーム本体21を連結する連結プレート22bと、を有している。
上記構成により、吹き付け装置1が、ロボットアーム20(噴射口接続具22)を利用して好適に吹き付け材を吹き付けることができる。
また、連結プレート22bを利用してアーム本体21に対して噴射ヘッド22aを容易に取り付けることができる。
【0025】
ホース保持具23は、
図5、
図6A、Bに示すように、ホース140、170を着脱可能に保持し、ホース140、170の動きに応じて受動的に回動可能な治具である。
詳しく述べると、ホース保持具23は、アーム本体21の外側面に取り付けられる取り付けプレート23aと、取り付けプレート23aに対して回動軸23bを介して取り付けられ、ホース140、170を挿通可能な中空状のホース保持体23cと、を有している。
また、ホース保持体23cには、ホース保持体23cを開閉可能とするヒンジ23dと、ホース保持体23cを閉じた状態で留めるスナップ錠23eとが取り付けられている。
上記構成により、ホース保持具23が、ロボットアーム20の動作に対応して動くホース140、170に対して受動的に回動することができる。そのため、ロボットアーム20の動作を円滑にすることができ、またホース140、170同士が絡まることを防止できる。
【0026】
振動抑制装置30は、
図2、
図4に示すように、ロボットアーム20の揺動時における振動を抑制するための装置であって、具体的には、パッシブ式(振り子式)の制振装置である。
振動抑制装置30は、昇降装置40上に取り付けられ、吹き付け装置1の長さ方向の他端部に配置されている。また、ロボットアーム20と略同じ高さ位置に配置されている。
なお、振動抑制装置30は、屋根状のカバー30Aによって覆われている。
【0027】
振動抑制装置30は、昇降装置40の上面に取り付けられ、吹き付け装置1の幅方向に沿って延びているガイドレール31と、ガイドレール31に沿って摺動可能に取り付けられる可動レール32と、可動レール32上に取り付けられる振り子状の錘33と、から主に構成されている。
錘33付きの可動レール32が、吹き付け装置1の幅方向においてロボットアーム20の動作側とは反対側に動作することで、吹き付け装置1の揺れを抑えることができる。
【0028】
上記構成において、
図4に示すように、ロボットアーム20は、可動レール32と同じ高さ位置に配置され、かつ、吹き付け装置1の幅方向において可動レール32の可動範囲内に収まるように配置されている。
そのため、ロボットアーム20の揺動に対して振動抑制装置30を精度良く機能させることができる。
【0029】
昇降装置40は、
図2、
図4に示すように、パンタグラフ機構41からなる昇降装置であって、装置本体10の上面に取り付けられ、当該装置本体10に対してロボットアーム20及び振動抑制装置30を昇降させるものであって、蛇腹状のカバー40Aによって覆われている。
昇降装置40は、パンタグラフ機構41と、パンタグラフ機構の41の上面及び下面にそれぞれ取り付けられる上部プレート44及び下部プレート45と、上部プレート44上に取り付けられ、ロボットアーム20(基端部20a)を保持するアーム保持部材46と、パンタグラフ機構41を上下方向に伸縮させるために駆動する駆動ユニット47と、から主に構成されている。
上記構成において、昇降装置40は、ロボットアーム20(アーム保持部材46)を
図2に示す下方位置と、
図3に示す上方位置の間で移動させることができる。
【0030】
パンタグラフ機構41は、
図4に示すように、上下方向に多段となるように組まれている複数のリンク42と、互いに重なり合うリンク42同士を連結する複数の回動軸43と、を有している。
リンク42は、吹き付け装置1の幅方向に間隔を空けて一対に配置されており、吹き付け装置1の長さ方向に長尺となるように延びている。
回動軸43は、吹き付け装置1の長さ方向に間隔を空けて複数配置されており、吹き付け装置1の幅方向に長尺となるように延びている。
回動軸43は、リンク42の長さ方向の中央部分に配置された中央回動軸43aと、リンク42の長さ方向の両端部分に配置された端部回動軸43b、43cと、を有している。
【0031】
アーム保持部材46は、吹き付け装置1の長さ方向の一端部に配置され、当該長さ方向において駆動ユニット47及び振動抑制装置30とは異なる位置に配置されている。
また、アーム保持部材46は、吹き付け装置1の幅方向の中央部に配置され、当該幅方向において駆動ユニット47及び振動抑制装置30と同じ位置又は重なる位置に配置されている。
【0032】
駆動ユニット47は、
図7A、Bに示すように、モーターを用いた駆動ユニットであって、具体的には、リニアモーター(ACリニアサーボモータ)を用いたテーブル式の駆動ユニットである。
駆動ユニット47は、アーム保持部材46を上下方向に移動させるために、言い換えれば、パンタグラフ機構41を上下方向に伸縮させるために鉛直方向に駆動する。
駆動ユニット47は、吹き付け装置1の長さ方向及び幅方向における中央部分に配置されており、ロボットアーム20と振動抑制装置30の間に挟まれて配置されている。
駆動ユニット47(固定レール47a)は、アーム保持部材46が
図2、
図7Aに示す下方位置に位置しているときに、アーム保持部材46よりも上方に一部突出している。
【0033】
駆動ユニット47は、下部プレート45上に固定され、鉛直方向に長尺に延びている固定レール47aと、回動軸43(中央回動軸43a)を保持しながら固定レール47aに沿って鉛直方向に動作することで、パンタグラフ機構41を駆動する駆動部材47bと、固定レール47a及び駆動部材47bの間に組み込まれ、駆動部材47bの動力源となるモーター47cと、を有している。
駆動部材47bは、固定レール47aに沿って可動する可動部としての機能と、回動軸43を保持する保持部としての機能とを兼ね備えた部材である。
なお、駆動部材47bとモーター47cを一体化させた部材を駆動部材としても良い。
【0034】
上記構成において、
図7A、Bに示すように、駆動部材47bが、回動軸43を保持しながら固定レール47aに沿って鉛直方向に駆動する。
そのため、駆動ユニット47が、パンタグラフ機構41を効率良く駆動することができ、また吹き付け装置1の長さ方向及び幅方向の大型化を抑制できる。なお、吹き付け装置1が高さ方向において幾分大型化するものの、吹き付け作業への影響はない。
【0035】
また上記構成において、
図7A、Bに示すように、駆動部材47bは、複数の回動軸43a、43b、43cのうち、中央回動軸43aを保持している。詳しく述べると、最も下方に位置する中央回動軸43aを保持している。
そのため、駆動ユニット47(駆動部材47b)が、パンタグラフ機構41をより安定させて駆動することができる。
【0036】
移動装置50は、
図2、
図4に示すように、吹き付け装置1を2次元方向に走行させるための装置であって、具体的には、タイヤ式の移動装置である。
移動装置50は、装置本体10の下端部の四隅にそれぞれ取り付けられ、ロボットアーム20らを水平方向に移動させるために回転する複数の車輪51と、各車輪51の回転軸を構成し、吹き付け装置の長さ方向に延びている車輪軸52と、各車輪51及び車輪軸52を回転させるモーター53と、を有している。
【0037】
車輪51は、例えば、メカナムホイールであって、車輪51の表面が車輪軸52に対して45度傾けたバレルによって覆われている。
移動装置50は、4つのモーター53によって車輪51(車輪軸52)の回転方向と速度制御を調整することで、吹き付け装置1を2次元方向に自由に移動させることができる。すなわち、吹き付け装置1を前後移動、横移動、旋回移動及び斜め移動させることができる。
なお、移動装置50は、吹き付け装置1を2次元方向に移動させるにあたって、前進移動又は後進移動させるときに最も精度良く吹き付け装置1を移動させることができる。
【0038】
上記構成において、
図2に示すように、ロボットアーム20が、車輪軸52の延出方向に沿って配置されており、車輪51の前進又は後進方向に対して垂直の方向に突出して配置されている。
そのため、吹き付け装置1(ロボットアーム20)が、被施工体(例えば、梁)の長尺方向に沿って精度良く前進又は後進移動することができる。その結果、吹き付け作業をより精度良く行うことができる。
【0039】
エアコンプレッサ60は、
図2に示すように、耐火被覆材の噴射を調整する装置であって、装置本体10の内部に取り付けられ、装置本体10の外側面に一部突出している。
なお、エアコンプレッサ60が、移動装置50(車輪51)やプリズム70等の表面に付着した耐火被覆材等の異物を空圧で取り除くために、移動装置50やプリズム70に近接した位置に別途吹き出し口を有していると良い。
特に、移動装置50やプリズム70には保護カバーを取り付けることが困難であるため、エアコンプレッサ60によって定期的に掃除することが好ましい。
【0040】
プリズム70は、
図2に示すように、測量機300の検出対象となる反射プリズムであって、装置本体10の外側面の四隅に取り付けられ、それぞれ異なる高さ位置に配置されている。
そのため、測量機300が、建物内において4つのプリズム70のうち、少なくとも2カ所のプリズム70を検出し易くなる。そして、測量機300が2カ所のプリズム70を検出することで、オペレーター端末400が、吹き付け装置1の位置情報(位置及び向き)を判別(推定)することができる。
【0041】
安全装置80は、
図2、
図4に示すように、建物内の接触対象物と接触したときに作動するセンサ型の装置であって、装置本体10の外周面にわたって取り付けられている。
詳しく述べると、安全装置80は、装置本体の外周面に所定の間隔を空けて取り付けられる複数の接触センサ81と、装置本体10の外周面全体にわたって取り付けられ、接触センサ81を覆うように配置される弾性部材82(弾性ゴム)と、を有している。
安全装置80が作動すると、制御装置90が、ロボットアーム20、昇降装置40、移動装置50及びエアコンプレッサ60の各種動作を停止するように制御する。
【0042】
上記構成において、安全装置80は、吹き付け装置1の長さ方向及び幅方向において最も外側に配置されており、プリズム70よりも外側に配置されている。
そのため、吹き付け装置1が、柱や壁、噴射装置100、ホース取り回し治具200、測量機300等に接触した場合であっても、プリズム70を傷つけることがない。
【0043】
制御装置90は、
図9に示すように、データの演算・制御処理を実行するプロセッサー91と、ROM、RAM、及びHDDからなる記憶装置92と、ホームネットワーク又はインターネットを通じて情報データの送受信を行う通信用インタフェース93と、を主に備えている。
【0044】
プロセッサー91は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアである。そして、記憶装置92に記憶されるプログラムやデータに基づいて各種の演算・制御処理を実行する。
記憶装置92は、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、吹き付けプログラムを記憶している。これらプログラムがプロセッサー91によって実行されることで、吹き付け装置1の機能が発揮されることになる。
通信用インタフェース93は、例えばネットワークインターフェースカードを含み、各構成部品と通信する。
【0045】
上記構成において、制御装置90は、プロセッサー91が生成する制御信号を、通信用インタフェース93を介してロボットアーム20、昇降装置40、移動装置50、エアコンプレッサ60に送信することにより、ロボットアーム20、昇降装置40、移動装置50、エアコンプレッサ60のそれぞれの動作を制御する。
【0046】
<吹き付け装置のソフト構成>
吹き付け装置1(制御装置90)は、
図10に示すように、機能面から説明すると、開始位置設定部94と、停止位置設定部95と、三次元移動制御部96と、吹き付け制御部97と、を有している。
上記の機能は、制御装置90のプロセッサー91が、記憶装置92に記憶されるプログラム及びデータに基づいて、制御装置90の各部を制御することにより実現されるものである。
以下、上記の機能の詳細について説明する。
【0047】
開始位置設定部94は、被施工体の対象面に耐火被覆材を吹き付ける「吹き付け開始位置」を設定するものである。なお、当該対象面から所定の距離だけ外側に設定する。
開始位置設定部94による処理が、吹き付け方法において「開始位置設定工程」となる。
【0048】
停止位置設定部95は、被施工体の対象面への耐火被覆材の吹き付けを停止する「吹き付け停止位置」を設定するものである。なお、当該対象面から所定の距離だけ外側に設定する。
停止位置設定部95による処理が、吹き付け方法において「停止位置設定工程」となる。
【0049】
開始位置設定部94、停止位置設定部95は、主に制御装置90のプロセッサー91、記憶装置92及び通信用インタフェース93により以下のように実現される。
具体的には、プロセッサー91は、建物の3次元データと、建設現場の噴射口110の位置合わせを実行し、被施工体の座標に基づいて建設現場における「吹き付け開始位置」、「吹き付け停止位置」の座標を設定する。
【0050】
三次元移動制御部96は、吹き付け開始位置から吹き付け停止位置まで噴射口110を三次元的に移動させるものである。
なお、三次元移動制御部96による処理が、吹き付け方法において「三次元移動制御工程」となる。
【0051】
三次元移動制御部96は、主に制御装置90のプロセッサー91、記憶装置92及び通信用インタフェース93によって以下のように実現される。
具体的には、プロセッサー91は、いずれの「吹き付けパターン」を実行するかを設定パラメータに基づいて決定し、決定した「吹き付けパターン」に基づいて吹き付け開始位置から吹き付け停止位置までの噴射口110の移動経路を決定する。
そして、プロセッサー91は、決定した移動経路に従って噴射口110を移動させる。
【0052】
吹き付け制御部97は、噴射口110が移動している間に、噴射口110から耐火被覆材を被施工体に向けて噴射させるものである。
なお、吹き付け制御部97による処理が、吹き付け方法において「吹き付け制御工程」となる。
【0053】
吹き付け制御部97は、噴射口110から耐火被覆材を噴射するように制御する。噴射量は、単位時間あたり同じ量としても良いし、噴射口110の速度、噴射口110の位置、角度に応じて適宜変更しても良い。
【0054】
吹き付け制御部97は、主に制御装置90のプロセッサー91、記憶装置92及び通信用インタフェース93によって以下のように実現される。
具体的には、プロセッサー91は、エアコンプレッサを動作させて耐火被覆材を噴射口110から所定の噴射量だけ噴射させる。これにより、噴射口110から噴射した耐火被覆材が被施工体に所定の吹き付け量だけ吹き付けられ、被施工体の側面に付着する。
【0055】
上記構成において、制御装置90は、被施工体の対象面に対し開始位置設定部94、停止位置設定部95、三次元移動制御部96及び吹き付け制御部97による処理を順次実行して、被施工体の対象面に対し耐火被覆材を所定の吹き付けパターンによって吹き付けることができる。
【0056】
<吹き付け装置の吹き付けパターン>
次に、吹き付け装置1による吹き付けパターンについて、
図11、
図12に基づいて説明する。
以下に説明する例において、吹き付け装置1の制御装置90は、柱B1及び梁B2を含む建物Bの三次元データを記憶装置92に記憶し、当該三次元データに基づいて噴射口110の位置を制御することとする。
【0057】
まず、制御装置90は、
図12に示すように、建物内の4本の柱B1に囲まれた領域を1区画と決定し、また当該1区画の中で4本の梁B2に囲まれた領域を1ブロックと決定する。
そして、制御装置90は、ブロック単位で時計回りに1週するようにロボットアーム20、昇降装置40、移動装置50を制御し、噴射口110を移動させる。
また、制御装置90は、エアコンプレッサ60を制御し、所定のタイミングで所定の噴射量だけ耐火被覆材を噴射口110から噴射させる。
【0058】
次に、制御装置90は、
図13に示すように、建物内の被施工体となる柱B1及び梁B2を、「柱下部B1a」、「柱中間部B1b」、「柱上部B1c」、「柱・梁接合部B2a」、「梁中間部B2b」及び「梁・梁接合部B2c」の6種類に分割し、これら対象部位に対して耐火被覆材を所定の順番で吹き付けるように制御する。
詳しく述べると、制御装置90は、「柱下部B1a」、「柱中間部B1b」、「柱上部B1c」、「柱・梁接合部B2a(左端)」、「梁中間部B2b」、「梁・梁接合部B2c(両端)」、「梁中間部B2b」、「梁・梁接合部B2c(両端)」、「梁中間部B2b」、「梁・梁接合部B2c(両端)」、「梁中間部B2b」、「柱・梁接合部B2a(右端)」の順番となるように耐火被覆材を吹き付けるように制御する。
【0059】
上記吹き付けパターンによって、吹き付け装置1が、動作パターン数、吹き付け時間、吹き付け品質、及びロボットアームの可操作度を最適化して吹き付け作業を行うことができる。
なお、制御装置90が「柱中間部」に対し耐火被覆材を吹き付ける制御を行うときには、ロボットアーム20を水平に動かす動作と、昇降装置40を上下に動かす動作とを同時に実行すると良い。
そうすることで、吹き付け装置1が「柱中間部」に耐火被覆材を高速に吹き付けることが可能となる。
【0060】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図4に示すように、吹き付け装置1が、パンタグラフ式(伸縮式)の昇降装置40を備えているが、特に限定されることなく変更可能であって、例えばレール式の昇降装置を備えていても良い。
具体的には、
図13に示す吹き付け装置1001であっても良い。
吹き付け装置1001は、装置本体1010と、ロボットアーム1020と、昇降装置1040と、移動装置1050と、を備えている。また、不図示のエアコンプレッサと、プリズムと、安全装置と、制御装置と、を備えている。さらに、装置本体1010の四隅の下端部に不図示のアウトリガーを備えていても良い。
昇降装置1040は、レール式の昇降装置であって、ロボットアーム1020を保持するアーム保持部材1046と、アーム保持部材1046を上下方向に移動させるために駆動する駆動ユニット1047と、を有している。
駆動ユニット1047は、スクリューモーターを用いた駆動ユニットであって、鉛直方向に長尺に延びている固定レール47aと、アーム保持部材1046を保持しながら固定レール1047aに沿って鉛直方向に動作する駆動部材1047bと、駆動部材1047bの動力源となるモーター47cと、を有している。
上記構成であっても、吹き付け作業を好適に行うことが可能な吹き付け装置を実現することができる。
【0061】
上記実施形態では、
図4、
図7A、Bに示すように、駆動ユニット47が、モーター(リニアモーター)を用いたテーブル式の駆動ユニットであるが、特に限定されることなく変更可能である。例えば、例えば、駆動シリンダー(油圧シリンダー)やスクリュー式の駆動モーター等を採用しても良い。
【0062】
上記実施形態では、
図4に示すように、駆動ユニット47(固定レール47a)が、アーム保持部材46よりも上方に一部突出しているが、特に限定されることなく、アーム保持部材46と略同じ高さ位置であっても良い。あるいは、アーム保持部材46よりも下方に位置していても良い。
【0063】
上記実施形態では、
図4、
図7Aに示すように、駆動部材47bが、中央回動軸43aを保持しながら上下方向に駆動するが、特に限定されることなく、端部回動軸43bや端部回動軸43cを保持しながら駆動しても良い。あるいは、回動軸43の代わりにリンク42を保持しながら駆動しても良い。
【0064】
上記実施形態では、
図2に示すように、ロボットアーム20(基端部20a)が、吹き付け装置1の長さ方向の外側に向かって突出しているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、ロボットアーム20が、吹き付け装置1の装置本体10から、吹き付け装置1の幅方向の外側に突出していても良い。あるいは、装置本体10から斜め上方に向かって突出していても良いし、上方に向かって突出していても良い。
【0065】
上記実施形態では、
図2に示すように、移動装置50が、車輪51及び車輪軸52からなるタイヤ式の移動装置であるが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、移動装置が、転輪及び転輪軸からなる無限軌道式の移動装置等であっても良い。
【0066】
上記実施形態では、
図2に示すように、吹き付け装置1が、制御装置90等を備えており、レーザー誘導方向式によって無人走行することが可能な無人搬送車であるが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、床面に磁気テープ(磁気式誘導型ガイドセンサー)等を設置し、磁気テープが発する磁気に誘導されて無人走行するものであっても良い。
【0067】
上記実施形態では、主として本発明に係る吹き付け装置に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
S 吹き付けシステム
1、1001 吹き付け装置
10、1010 装置本体
20、1020 ロボットアーム
20a 基端部
21 アーム本体
22 噴射口接続具
22a 噴射ヘッド
22b 連結プレート
23 ホース保持具
23a 取り付けプレート
23b 回動軸
23c ホース保持体
23d ヒンジ
23e スナップ錠
30 振動抑制装置
30A カバー
31 ガイドレール
32 可動レール
33 錘
40、1040 昇降装置
40A カバー
41 パンタグラフ機構
42 リンク
43 回動軸
43a 中央回動軸
43b、43c 端部回動軸
44 上部プレート
45 下部プレート
46、1046 アーム保持部材
47、1047 駆動ユニット
47a、1047a 固定レール
47b、1047b 駆動部材
47c、1047c モーター
50、1050 移動装置
51 車輪
52 車輪軸
53 モーター
60 エアコンプレッサ
70 プリズム
80 安全装置
81 接触センサ
82 弾性部材
90 制御装置
91 プロセッサー
92 記憶装置
93 通信用インタフェース
94 開始位置設定部
95 停止位置設定部
96 三次元移動制御部
97 吹き付け制御部
100 噴射装置
110 噴射口
120 解綿機
130 ブロア
140 第1ホース
150 ミキサー
160 ポンプ
170 第2ホース
200 ホース取り回し治具
210 治具本体
220 キャスター
230 立設体
300 測量機
400 オペレーター端末
B 建物
B1 柱
B1a 柱下部
B1b 柱中間部
B1c 柱上部
B2 梁
B2a 柱・梁接合部
B2b 梁中間部
B2c 梁・梁接合部