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特許7574033生体パラメータ演算装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】生体パラメータ演算装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20241021BHJP
   A61B 5/318 20210101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/318
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166154
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057749
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 徳宣
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹男
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0253151(US,A1)
【文献】特開平10-085205(JP,A)
【文献】米国特許第04577693(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00182197(EP,A1)
【文献】特開昭61-115537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/06-5/22
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサに備わる複数の発光素子であって、被検者の生体組織を透過または反射可能な光を出射する前記複数の発光素子を用いて取得された前記被検者の生体情報に対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の発光素子の障害を検知する障害検知部と、
前記取得部によって取得された前記複数の信号と、第1のアルゴリズムまたは第2のアルゴリズムと、に基づいて生体パラメータを演算する演算部と、を備える生体パラメータ演算装置であって
前記演算部は、前記障害検知部が前記複数の発光素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子の障害を検知しないとき、前記第1のアルゴリズムに基づいて前記生体パラメータを演算し、前記障害検知部が前記複数の発光素子のうち前記第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子に障害が発生したことを検知したとき、前記第2のアルゴリズムに基づいて前記生体パラメータを演算し、
前記障害検知部は、前記生体パラメータ演算装置から前記複数の発光素子に送信された電流情報および電流信号と電圧信号の対応関係を示す相関情報に基づく想定値と、前記複数の発光素子の電圧値を示す電圧情報と、を比較することで、前記複数の発光素子の障害を検知する、生体パラメータ演算装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子は、少なくとも、
前記生体組織を透過または反射可能な第一波長を有する第一の光を前記生体組織に向けて出射可能な第一発光素子と、
前記生体組織を透過または反射可能な第二波長を有する第二の光を前記生体組織に向けて出射可能な第二発光素子と、
前記生体組織を透過または反射可能な第三波長を有する第三の光を前記生体組織に向けて出射可能な第三発光素子と、を含み、
前記演算部は、前記障害検知部が前記第一発光素子の障害を検知すると、前記生体組織を透過または反射した前記第二の光の強度に対応して前記センサから出力される第二信号と、前記生体組織を透過または反射した前記第三の光の強度に対応して前記センサから出力される第三信号と、前記第2のアルゴリズムと、に基づいて前記生体パラメータを演算する、請求項1に記載の生体パラメータ演算装置。
【請求項3】
センサに備わる複数の発光素子であって、被検者の生体組織を透過または反射可能な光を出射する前記複数の発光素子を用いて取得された前記被検者の生体情報に対応する複数の信号を取得する機能と、
前記複数の発光素子の障害を検知する機能と、
前記複数の発光素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子の障害が検知されないとき、取得された前記複数の信号と、第1のアルゴリズムと、に基づいて生体パラメータを演算し、前記複数の発光素子のうち前記第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子に障害が発生したことが検知されたとき、取得された前記複数の信号と、第2のアルゴリズムと、に基づいて前記生体パラメータを演算する機能と、
生体パラメータ演算装置から前記複数の発光素子に送信された電流情報および電流信号と電圧信号の対応関係を示す相関情報に基づく想定値と、前記複数の発光素子の電圧値を示す電圧情報と、を比較することで、前記複数の発光素子の障害を検知する機能と、をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のコンピュータプログラムが記録された非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体パラメータ演算装置、コンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO:以下、単に動脈血酸素飽和度と表記する)を演算する装置として、パルスオキシメータが知られている。パルスオキシメータに電気的に接続されているプローブは、赤色光を出射可能な少なくとも一つの発光素子と、赤外光を出射可能な少なくとも一つの発光素子と、を備えている(特許文献1参照)。また、標準12誘導心電図を用いた心電図検査装置も知られている。このような心電図検査装置には複数の電極が電気的に接続されている。当該心電図検査装置により心電図検査を行う場合、四肢に4つ、胸部に6つの電極が被検者に装着される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-095581号公報
【文献】特表2004-505658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、従来のパルスオキシメータ(生体パラメータ演算装置の一例)は、プローブに備わる複数の発光素子の一部に障害が発生すると、動脈血酸素飽和度(生体パラメータの一例)を演算することができないことがある。また、従来の心電図検査装置(生体パラメータ演算装置の一例)は、当該心電図検査装置に接続された複数の電極の一部に障害が発生すると、心電図情報(生体パラメータの一例)を取得することができないことがある。この点において、従来の生体パラメータ演算装置には改善の余地があった。
【0005】
本発明は、プローブに備わる発光素子等の障害に対し、耐障害性のある生体パラメータ演算装置、ならびに当該生体パラメータ演算装置に用いられるコンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係る生体パラメータ演算装置は、
センサに備わる複数の素子を用いて取得された被検者の生体情報に対応する複数の信号を取得する取得部と、
前記複数の素子の障害を検知する障害検知部と、
前記取得部によって取得された前記複数の信号と、第1のアルゴリズムまたは第2のアルゴリズムと、に基づいて生体パラメータを演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、前記障害検知部が前記複数の素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子の障害を検知しないとき、前記第1のアルゴリズムに基づいて前記生体パラメータを演算し、前記障害検知部が前記複数の素子のうち前記第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子に障害が発生したことを検知したとき、前記第2のアルゴリズムに基づいて前記生体パラメータを演算する。
【0007】
また、上記の目的を達成するための一態様に係るコンピュータプログラムは、
センサに備わる複数の素子を用いて取得された被検者の生体情報に対応する複数の信号を取得する機能と、
前記複数の素子の障害を検知する機能と、
前記複数の素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子の障害が検知されないとき、取得された前記複数の信号と、第1のアルゴリズムと、に基づいて生体パラメータを演算し、前記複数の素子のうち前記第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子に障害が発生したことが検知されたとき、取得された前記複数の信号と、第2のアルゴリズムと、に基づいて前記生体パラメータを演算する機能と、をコンピュータに実現させる。
【0008】
また、上記の目的を達成するための一態様に係る非一時的コンピュータ可読媒体には、
上記コンピュータプログラムが記憶されている。
【0009】
上記構成によれば、被検者の生体情報を取得する複数の素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子に障害が発生していないとき、演算部は第1のアルゴリズムに基づいて生体パラメータを演算する。一方、被検者の生体情報を取得する複数の素子のうち第1のアルゴリズムに用いられる信号を取得するための素子に障害が発生したとき、演算部は、第2のアルゴリズムに基づいて生体パラメータを演算する。したがって、複数の素子の一部に障害が発生したとしても、演算部は、生体パラメータを演算することができる。
このように、上記構成によれば、被検者の生体情報を取得するセンサに備わる素子の障害に対し、耐障害性のある生体パラメータ演算装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プローブに備わる発光素子センサ等の障害に対し、耐障害性のある生体パラメータ演算装置、ならびに当該生体パラメータ演算装置に用いられるコンピュータプログラム、および非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る生体パラメータ演算システムの機能的構成を例示する図である。
図2図2は、第一実施形態において制御部が実行する処理内容のフローチャート図である。
図3図3は、第二実施形態において制御部が実行する処理内容のフローチャート図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る生体パラメータ演算システムの機能的構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態に係る生体パラメータ演算システム1の機能的構成を例示する図である。図1に例示するように、生体パラメータ演算システム1は、パルスオキシメータ10(生体パラメータ演算装置の一例)と、プローブ20(センサの一例)と、を含む。
【0014】
パルスオキシメータ10は、被検者のSpO(生体パラメータの一例)を演算する装置である。SpOは、酸素の運搬が可能なヘモグロビン量に対する酸化ヘモグロビンの割合を示す。図1に例示するように、パルスオキシメータ10は、入出力インターフェース11と、障害検知部12と、制御部13と、表示部14と、報知部15と、を備えている。これらはバス16を介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
入出力インターフェース11は、取得部11aを含む。入出力インターフェース11は、例えば、信号の通過を許容するコネクタである。パルスオキシメータ10は、入出力インターフェース11を介して、有線または無線によりプローブ20と接続可能である。
【0016】
プローブ20は、被検者の生体組織30(指先や耳朶等)に装着されうる。図1に例示するように、プローブ20は、第一発光素子21と、第二発光素子22と、第三発光素子23と、検出素子25と、を備えている。なお、プローブ20は、検出素子25以外の検出素子を備えていてもよい。つまり、プローブ20は複数の検出素子を備えていてもよい。
【0017】
第一発光素子21は、第一波長λ1を含む第一の光を出射可能な半導体発光素子である。第二発光素子22は、第二波長λ2を含む第二の光を出射可能な半導体発光素子である。第三発光素子23は、第三波長λ3を含む第三の光を出射可能な半導体発光素子である。第一の光、第二の光および第三の光は、被検者の生体組織30を透過または反射可能である。半導体発光素子は、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、有機EL素子等である。また、第一波長λ1および第二波長λ2は、例えば、660nmや700nmである。したがって、第一の光および第二の光は赤色光である。一方、第三波長λ3は、例えば、880nmや940nmである。したがって、第三の光は赤外光である。
【0018】
プローブ20がパルスオキシメータ10に接続されているとき、第一発光素子21には、パルスオキシメータ10からの電気が流れる。このとき、パルスオキシメータ10は当該電気の電流値を示す電流情報(電気信号)を第一発光素子21に送信する。第一発光素子21は、当該電流情報に基づいて、第一発光素子21の電圧値を示す電圧情報(電圧信号)を生成するように構成されている。具体的には、第一発光素子21は、第一発光素子21に備わる光電変換素子(図示せず)が電気エネルギーを光エネルギーに変換する際に生じる電圧に基づいて、第一発光素子21の電圧情報を生成する。また、第二発光素子22および第三発光素子23も、第一発光素子21と同様の原理により、電流情報に基づいて、第二発光素子22および第三発光素子23の電圧値を示す電圧情報をそれぞれ生成するように構成されている。なお、生成された各発光素子の電圧情報は、プローブ20に備わる各発光素子からパルスオキシメータ10の取得部11aに送信される。
【0019】
検出素子25は、第一波長λ1、第二波長λ2および第三波長λ3に感度を有する光センサである。光センサとしては、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ等である。
【0020】
検出素子25は、被検者の生体組織30を透過または反射した光を受光し、当該受光した光の強度(生体情報の一例)に対応する信号を出力するように構成されている。本実施形態において、検出素子25は、被検者の生体組織30を透過または反射した第一の光、第二の光および第三の光を受光する。また本実施形態では、第一の光の強度I1に対応する信号を第一信号S1、第二の光の強度I2に対応する信号を第二信号S2、第三の光の強度I3に対応する信号を第三信号S3とする。
【0021】
次に、パルスオキシメータ10の取得部11aについて説明する。取得部11aは、入出力インターフェース11のうち入力インターフェースに対応する。取得部11aは、プローブ20に備わる複数の発光素子(第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23)を用いて取得された光の強度(第一の光の強度I1、第二の光の強度I2および第三の光の強度I3)に対応する複数の信号(第一信号S1、第二信号S2および第三信号S3)を検出素子25から取得するように構成されている。取得された第一信号S1、第二信号S2および第三信号S3は、制御部13に送信される。また、取得部11aは、第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23の各々から受信した各発光素子の電圧情報を障害検知部12に送信する。
【0022】
障害検知部12は、少なくともプロセッサを含む。障害検知部12は、複数の発光素子(第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23)の障害を検知するように構成されている。障害検知部12は、第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23から受信した各発光素子の電圧情報に基づいて、各発光素子の障害を検知する。具体的には、障害検知部12は、各発光素子の原材料の配分により予め決められた電流信号と電圧信号の対応関係を示す情報(相関情報)と、各発光素子から受信した各発光素子の電圧情報と、に基づいて各発光素子の障害を検知する。なお、本実施形態においては、光電変換素子の故障、配線基板の障害、パルスオキシメータ10と各発光素子をつなぐ電気ケーブルの断線等により発光素子が有する機能が発揮できない状態であるとき、当該発光素子に障害が発生したとする。したがって、第一発光素子21の電圧値が相関情報に基づく想定値(想定範囲)を下回っている場合、例えば第一発光素子21が電気エネルギーを光エネルギーに変換できていない場合、障害検知部12は第一発光素子21の障害を検知する。また、第一発光素子21の電圧値が相関情報に基づく想定値(想定範囲)を上回っている場合、例えば第一発光素子21がパルスオキシメータ10からの電流情報を受信できていない場合、障害検知部12は第一発光素子21の障害を検知する。なお、本実施形態において障害検知部12は、このような障害のみならず、センサが所定の位置から外れることにより生じる障害等も検知可能である。障害検知部12は、各発光素子の障害発生状況を示す障害検知結果を制御部13に送信する。
【0023】
制御部13は、ハードウェア構成として、メモリ131と、プロセッサ132と、を備えている。メモリ131は、例えば、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサ132により実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサ132は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、ROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。プロセッサ132は演算部132aを含む。プロセッサ132は、例えば、RAMとの協働でプログラムを実行することにより、演算部132aの処理を実現する。
【0024】
ここでプログラムは、様々なタイプの非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的コンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的コンピュータ可読媒体としては、例えば、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM)である。
【0025】
演算部132aは、メモリ131に記録されたメインアルゴリズム(第1のアルゴリズムの一例)またはサブアルゴリズム(第2のアルゴリズムの一例)に基づいて、SpOを演算するように構成されている。メインアルゴリズムは、当該メインアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子に障害が発生していないときに用いられるアルゴリズムである。サブアルゴリズムは、メインアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子に障害が発生したときに用いられるアルゴリズムである。なお、SpOを演算するには、少なくとも一つの赤色光に対応する信号と、少なくとも一つの赤外光に対応する信号と、が必要である。したがって、例えば第三発光素子23に障害が発生したとき、SpOは演算されない。つまり、本実施形態において、サブアルゴリズムは、第一発光素子21と第二発光素子22のうちメインアルゴリズムに用いられる信号を取得するための発光素子にのみ障害が発生したときに用いられる。
【0026】
第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23のいずれにも障害が発生していないとき、演算部132aは、例えば、第一信号S1と、第三信号S3と、メインアルゴリズムと、に基づいて、SpOを演算する。具体的には、まずはじめに、演算部132aは、以下の式(1)または式(2)に基づいて、第一の光の減光度変化量(以下、第一変化量という。)ΔA1と第三の光の減光度変化量(以下、第三変化量という。)ΔA3を演算する。

ΔA1=ln[I1/(I1-ΔI1)]≒ΔI1/I1 (1)
ΔA3=ln[I3/(I3-ΔI3)]≒ΔI3/I3 (2)

なお、I1は第一の光の強度を、ΔI1は被検者の血液の脈動に伴う第一の光の強度I1の変化量を、I3は第三の光の強度を、ΔI3は被検者の血液の脈動に伴う第三の光の強度I3の変化量を、それぞれ表している。
【0027】
第一変化量ΔA1と第三変化量ΔA3が演算されると、演算部132aは、第一変化量ΔA1と第三変化量ΔA3に基づいて、SpOの値S(小数表記)を演算する。なお、具体的な演算内容については以下で説明する。
【0028】
第一変化量ΔA1と第三変化量ΔA3は、以下の式(3)および式(4)で表わされうる。

ΔA1=ΔAb1+ΔAt1=Eb1HbΔDb+Σt1ΔDt (3)
ΔA3=ΔAb3+ΔAt3=Eb3HbΔDb+Σt3ΔDt (4)

ここで、Eは、吸光係数(dl g-1cm-1)を表している。Hbは、血中ヘモグロビン濃度(g dl-1)を表している。Σは、減光率(cm-1)を表している。ΔDは、血液の脈動に伴う厚み変化(cm)を表している。添字bは、血液を表している。添字tは、血液以外の組織を表している。添字1は、第一の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0029】
式(3)と式(4)は、以下のように変形されうる。

ΔA1=Eb1HbΔDb+Σt1ΔDt
=[Eb1+(Σt1ΔDt)/(HbΔDb)](HbΔDb)
=(Eb1+Ex1)(HbΔDb) (5)

ΔA3=Eb3HbΔDb+Σt3ΔDt
=[Eb3+(Σt3ΔDt)/(HbΔDb)](HbΔDb)
=(Eb3+Ex3)(HbΔDb) (6)

ここで、Exは(ΣtΔDt)/(HbΔDb)を置き換えた変数である。添字1は、第一の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0030】
式(5)と式(6)は、以下のように変形されうる。

Eb1+Ex1-ΔA1/(HbΔDb)=0 (7)
Eb3+Ex3-ΔA3/(HbΔDb)=0 (8)
【0031】
式(7)に関し、第一の光の血液の吸光係数Eb1は、第三の光の血液の吸光係数Eb3により、以下のように近似されうる。

Eb1=a1Eb3+b1 (9)

ここで、aとbは定数である。添字1は、第一の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0032】
また、第一の光のEx1は、第三の光のEx3により、以下のように近似されうる。

Ex1=α1Ex3+β1 (10)

ここで、αとβは定数である。添字1は、第一の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0033】
式(9)と式(10)を用いて式(7)および式(8)を書き換えると、以下の式(11)および式(12)が得られる。
Eb3+Ex3-ΔA3/(HbΔDb)=0
Eb3-ΔA3/(HbΔDb)=-Ex3 (11)

(a1Eb3+b1)+(α1Ex3+β1)-ΔA1/(HbΔDb)=0
a1Eb3-ΔA1/(HbΔDb)=-α1Ex3-β1-b1 (12)
【0034】
Ex3として統計的に得られる定数値を用いると、次の行列式(13)を計算することにより、変数であるEb3とHbΔDbの値が得られる。
【数1】
【0035】
百分率表記であるSpOを、小数表記であるSに単位換算すると、第三の光の吸光係数Eb3は、次式(14)で表わされる。

Eb3=Eo3S+Er3(1-S) (14)

ここで、Eoは、酸化ヘモグロビンの吸光係数を表している。Erは、脱酸化ヘモグロビンの吸光係数を表している。添字3は、第三の光を表している。したがって、演算部132aは、次式(15)によりSpO2の値Sを演算する。

S=(Eb3-Er3)/(Eo3-Er3) (15)
【0036】
一方で、例えば、障害検知部12が第一発光素子21の障害を検知したとき、演算部132aは、第二信号S2と、第三信号S3と、サブアルゴリズムと、に基づいて、小数表記であるSpOの値Sを演算する。具体的には、まずはじめに、演算部132aは、以下の式(16)または上記の式(2)に基づいて、第二の光の減光度変化量(以下、第二変化量という。)ΔA1と第三変化量ΔA3を演算する。

ΔA2=ln[I2/(I2-ΔI2)]≒ΔI2/I2 (16)

なお、I2は第二の光の強度を、ΔI2は被検者の血液の脈動に伴う第二の光の強度I2の変化量を、それぞれ表している。
【0037】
第二変化量ΔA2と第三変化量ΔA3が演算されると、演算部132aは、第二変化量ΔA2と第三変化量ΔA3に基づいて、SpOの値S(小数表記)を演算する。なお、具体的な演算内容については以下で説明する。また、当該演算内容の説明において、第一信号S1と、第三信号S3と、メインアルゴリズムと、に基づいて、SpOが演算される例と説明が重複する部分については適宜説明を省略する。
【0038】
第二変化量ΔA2は、次式(17)で表わされうる。

ΔA2=ΔAb2+ΔAt2=Eb2HbΔDb+Σt2ΔDt (17)

ここで、添字2は、第二の光を表している。
【0039】
式(17)は、以下のように変形されうる。

ΔA2=Eb2HbΔDb+Σt2ΔDt
=[Eb2+(Σt2ΔDt)/(HbΔDb)](HbΔDb)
=(Eb2+Ex2)(HbΔDb) (18)

ここで、Exは(ΣtΔDt)/(HbΔDb)を置き換えた変数である。添字2は、第二の光を表している。
【0040】
式(18)は、以下のように変形されうる。

Eb2+Ex2-ΔA2/(HbΔDb)=0 (19)
【0041】
式(19)に関し、第二の光の血液の吸光係数Eb2は、第三の光の血液の吸光係数Eb3により、以下のように近似されうる。

Eb2=a2Eb3+b2 (20)

ここで、aとbは定数である。添字2は、第二の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0042】
また、第二の光のEx2は、第三の光のEx3により、以下のように近似されうる。

Ex2=α2Ex3+β2 (21)

ここで、αとβは定数である。添字2は、第一の光を表している。添字3は、第三の光を表している。
【0043】
式(20)と式(21)を用いて式(19)を書き換えると、次式(22)が得られる。

(a2Eb3+b2)+(α2Ex3+β2)-ΔA2/(HbΔDb)=0
a2Eb3-ΔA2/(HbΔDb)=-α2Ex3-β2-b2 (22)
【0044】
Ex3として統計的に得られる定数値を用いると、次の行列式(23)を計算することにより、変数であるEb3とHbΔDbの値が得られる。
【数2】
【0045】
百分率表記であるSpOを、小数表記であるSに単位換算すると、第三の光の吸光係数Eb3は、上記の式(14)で表わされる。したがって、演算部132aは、上記の式(15)によりSpOの値Sを演算する。
【0046】
制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、各発光素子の障害の有無を判断するように構成されている。制御部13は、当該判断に基づき、演算部132aがSpOを演算するのに用いるアルゴリズムを決定する。制御部13は、当該決定に基づき、演算部132aにSpOを演算させる。したがって、SpOの演算に用いられるアルゴリズムは、各発光素子の状態に応じて適宜選択される。例えば、メインアルゴリズムに用いられる信号が第一信号S1と第三信号S3である場合において、障害検知部12がいずれの発光素子の障害も検知しないとき、または第二発光素子22の障害のみを検知したとき、制御部13はメインアルゴリズムに基づいてSpOを演算するよう演算部132aを制御する。一方、障害検知部12が第一発光素子21の障害を検知したとき、制御部13はサブアルゴリズムに基づいてSpOを演算するよう演算部132aを制御する。なお、これら以外のとき、制御部13は演算部132aにSpOの演算をさせない。
【0047】
制御部13は、演算部132aがSpOを演算すると、SpOを表示部14に表示するための表示信号を生成し、当該表示信号を表示部14に送信する。
【0048】
制御部13は、障害検知部12が第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23の少なくとも一つに障害が発生したことを検知したとき、障害信号を生成する。生成された障害信号は報知部15に送信される。
【0049】
表示部14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を備えている。表示部14は、制御部13から受信した表示信号に基づいて、所定の情報を表示する。所定の情報としては、例えば、SpO、脈拍数、電池残量、日時等である。
【0050】
報知部15は、制御部13から受信した障害信号に基づいて、第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23の少なくとも一つに障害が発生したことを報知するように構成されている。報知部15による報知は、視覚的報知、聴覚的報知、および触覚的報知の少なくとも一つにより行われうる。医療従事者は、報知部15による報知を通じて、少なくとも一つの発光素子に障害が発生したこと、サブアルゴリズムに基づいてSpOの演算が行われたこと等を認識することができる。なお、第一発光素子21または第二発光素子22に障害が発生したときの報知の態様は、第一発光素子21および第二発光素子22、または第三発光素子23に障害が発生したときの報知の態様と異なっていてもよい。この場合、医療従事者は、SpOの演算が実行されているのか否かを容易に判別することができる。
【0051】
次に、図2を参照しつつ、第一実施形態において制御部13が実行する処理内容について詳細に説明する。図2は、第一実施形態において制御部13が実行する処理内容のフローチャート図である。なお、本実施形態において、第一波長λ1は660nmであり、第二波長λ2は700nmであるとして説明する。
【0052】
ところで、660nmの波長を有する赤色光は、通常、主にSpOの測定に用いられるのに対し、700nmの波長を有する赤色光は主に一酸化炭素濃度の測定に用いられる。これは、660nmの波長を有する赤色光を用いてSpOを測定する方が、700nmの波長を有する赤色光を用いてSpOを測定するよりも、精度よくSpOを測定することができるからである。このため、本実施形態では、メインアルゴリズムに用いられる信号は第一信号S1と第三信号S3である。つまり、本実施形態において、メインアルゴリズムに用いられる発光素子は第一発光素子21と第三発光素子23であり、サブアルゴリズムに用いられる発光素子は第二発光素子22と第三発光素子23である。
【0053】
図2に例示するように、STEP01において、取得部11aは、検出素子25から複数の信号(第一信号S1、第二信号S2および第三信号S3)を取得する。取得された第一信号S1、第二信号S2および第三信号S3は、制御部13に送信される。
【0054】
STEP02において、取得部11aは、パルスオキシメータ10から複数の発光素子(第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23)に送信された電流情報に基づいて生成された電圧情報を各発光素子からそれぞれ取得する。当該取得された電圧情報は障害検知部12に送信される。障害検知部12は、取得した電圧情報に基づいて、複数の発光素子の障害を検知し、障害検知結果を制御部13に送信する。
【0055】
STEP03において、制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、メインアルゴリズムに用いる発光素子、すなわち第一発光素子21と第三発光素子23に障害があるかどうかを判断する。制御部13が第一発光素子21と第三発光素子23に障害は発生していないと判断した場合(STEP03においてNO)、演算部132aは、第一信号S1と、第三信号S3と、メインアルゴリズムと、に基づいて、SpO2を演算する(STEP04)。一方、制御部13が第一発光素子21および第三発光素子23の少なくとも一方に障害が発生したと判断した場合(STEP03においてYES)、STEP05に進む。
【0056】
STEP05において、制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、サブアルゴリズムに用いられる発光素子、すなわち第二発光素子22と第三発光素子23に障害があるかどうかを判断する。制御部13が第二発光素子22と第三発光素子23に障害は発生していないと判断した場合(STEP05においてNO)、演算部132aは、第二信号S2と、第三信号S3と、サブアルゴリズムと、に基づいて、SpOを演算する(STEP06)。一方、制御部13が第二発光素子22および第三発光素子23の少なくとも一方に障害が発生したと判断した場合(STEP05においてYES)、制御部13は、演算部132aにSpOの演算を実行させることなく、本処理を終了させる。
【0057】
ところで、従来のパルスオキシメータは、プローブに備わる複数の発光素子の一部に障害が発生すると、動脈血酸素飽和度を演算することができないことがある。したがって、複数の発光素子の一部に障害が発生すると、医療従事者は障害が解消されるまでの間、当該パルスオキシメータを用いて動脈血酸素飽和度を計測することができない虞がある。また例えば、被検者の動脈血酸素飽和度が90%以下の場合、当該被検者は呼吸不全の状態である可能性があるため、早急な対応が必要となる。したがって、医療従事者が被検者の容態変化にすぐに気付けるよう、パルスオキシメータが動脈血酸素飽和度を演算することができない状態は発生させないことが望ましい。このような事情から、プローブに備わる複数の発光素子の一部に障害が発生したとしても、継続して動脈血酸素飽和度を演算することができる、すなわちプローブに備わる発光素子の障害に対して耐障害性があるパルスオキシメータが望まれている。
【0058】
本実施形態に係るパルスオキシメータ10によれば、第一発光素子21と第三発光素子23に障害が発生していないとき、演算部132aは、メインアルゴリズムに基づいて、SpOを演算する。一方、例えば、第一発光素子21に障害が発生した場合、演算部132aは、サブアルゴリズムに基づいて、SpOを演算する。具体的には、第一発光素子21に障害が発生した場合、演算部132aは、第二信号S2と、第三信号S3と、サブアルゴリズムと、に基づいてSpOを演算する。このように、プローブ20に備わる複数の発光素子の一部に障害が発生したとしても、演算部132aは、SpOを演算することができる。したがって、パルスオキシメータ10は、プローブ20に備わる発光素子の障害に対し、耐障害性がある。
【0059】
また、本実施形態に係るパルスオキシメータ10によれば、障害検知部12は、複数の発光素子(第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23)の電圧値を示す電圧情報に基づいて、当該複数の発光素子の障害を検知することができる。具体的には、障害検知部12は、パルスオキシメータ10から複数の発光素子に送信された電流情報および相関情報に基づく想定値と、当該複数の発光素子から受信した電圧情報と、を比較することで、当該複数の発光素子の障害を検知することができる。このように、パルスオキシメータ10は、比較的簡易な構成で各発光素子の障害を検知することができる。
【0060】
(第二実施形態)
次に、図1および図3を参照しつつ、第二実施形態において制御部13が実行する処理内容について詳細に説明する。なお、第二実施形態の説明において、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。第二実施形態は、図1において破線で示すように、プローブ20が第四発光素子24をさらに備えている点で第一実施形態と異なる。なお、本実施形態において、第三波長λ3は940nmであるものとして説明する。さらに、本実施形態においても、メインアルゴリズムに用いられる発光素子は第一発光素子21と第三発光素子23であるものとして説明する。
【0061】
本実施形態において、サブアルゴリズムは、第1のサブアルゴリズム、第2のサブアルゴリズムおよび第3のサブアルゴリズムを含む。なお、第1のサブアルゴリズムに用いられる発光素子は、第一発光素子21と第四発光素子24である。第2のサブアルゴリズムに用いられる発光素子は、第二発光素子22と第三発光素子23である。第3のサブアルゴリズムに用いられる発光素子は、第二発光素子22と第四発光素子24である。
【0062】
第四発光素子24は、例えば、第四波長λ4を含む第四の光を出射可能な半導体発光素子である。半導体発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、有機EL素子等である。また、第四波長λ4は、例えば、880nmである。したがって、第四の光は赤外光である。
【0063】
第四発光素子24は、他の発光素子(第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23)と同様に、パルスオキシメータ10から送信された電流情報に基づいて電圧情報を生成するように構成されている。生成された電圧情報は、パルスオキシメータ10の取得部11aに送信される。
【0064】
本実施形態において、検出素子25は第四波長λ4にも感度を有する。検出素子25は、被検者の生体組織30を透過または反射した第四の光を受光し、当該受光した第四の光の強度I4(生体情報の一例)に対応する信号(第四信号S4)を出力するようにも構成されている。
【0065】
次に、図3を参照しつつ、第二実施形態において制御部13が実行する処理内容について詳細に説明する。図3は、第二実施形態において制御部13が実行する処理内容のフローチャート図である。
【0066】
STEP11~14は図2のSTEP01~STEP04と同様である。ただし、取得部11aは、検出素子25から第四信号S4も取得する(STEP11)。また、取得部11aは、パルスオキシメータ10から第四発光素子24に送信された電流情報に基づいて生成された第四発光素子24の電圧情報を第四発光素子24から取得する(STEP12)。このとき、障害検知部12は、取得部11aによって取得された第四発光素子24の電圧情報に基づいて、第四発光素子24の障害も検知し、障害検知結果を制御部13に送信する。
【0067】
STEP13において、制御部13が第一発光素子21および第三発光素子23の少なくとも一方に障害が発生したと判断した場合(STEP13においてYES)、STEP15に進む。STEP15において、制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、第1のサブアルゴリズムに用いる発光素子、すなわち第一発光素子21と第四発光素子24に障害があるかどうかを判断する。制御部13が、第一発光素子21と第四発光素子24に障害が発生していないと判断した場合(STEP15においてNO)、演算部132aは、第一信号S1と、第四信号S4と、第1のサブアルゴリズムと、に基づいて、SpOを演算する(STEP16)。一方、制御部13が、第一発光素子21と第四発光素子24の少なくとも一方に障害があると判断した場合(STEP15においてYES)、STEP17に進む。
【0068】
STEP17において、制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、第2のサブアルゴリズムに用いる発光素子、すなわち第二発光素子22と第三発光素子23に障害があるかどうかを判断する。制御部13が、第二発光素子22と第三発光素子23に障害が発生していないと判断した場合(STEP17においてNO)、演算部132aは、第二信号S2と、第三信号S3と、第2のサブアルゴリズムと、に基づいて、SpOを演算する(STEP18)。一方、制御部13が、第二発光素子22と第三発光素子23の少なくとも一方に障害があると判断した場合(STEP17においてYES)、STEP19に進む。
【0069】
STEP19において、制御部13は、障害検知部12から受信した障害検知結果に基づいて、第3のサブアルゴリズムに用いる発光素子、すなわち第二発光素子22と第四発光素子24に障害があるかどうかを判断する。制御部13が、第二発光素子22と第四発光素子24に障害が発生していないと判断した場合(STEP19においてNO)、演算部132aは、第二信号S2と、第四信号S4と、第3のサブアルゴリズムと、に基づいて、SpOを演算する(STEP20)。一方、制御部13が、第二発光素子22と第四発光素子24の少なくとも一方に障害があると判断した場合(STEP19においてYES)、制御部13は、演算部132aにSpOの演算を実行させることなく、本処理を終了させる。
【0070】
本実施形態に係るパルスオキシメータ10によれば、例えば、第三発光素子23のみに障害が発生した場合、制御部13は、第1のサブアルゴリズムを用いることを決定し、第1のサブアルゴリズムを用いてSpOを演算するよう、演算部132aを制御する。したがって、本実施形態では、第三発光素子23に障害が発生しても、パルスオキシメータ10の演算部132aはSpOを演算することができるので、プローブ20に備わる複数の発光素子の障害に対する耐障害性がさらに高まる。
【0071】
(第三実施形態)
次に、図4を参照しつつ、第三実施形態に係る生体パラメータ演算システム201について説明する。なお、第三実施形態の説明において、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。図4は、本実施形態に係る生体パラメータ演算システム201の機能的構成を例示する図である。
【0072】
図4に例示するように、生体パラメータ演算システム201は、心電図検査装置210(生体パラメータ演算装置の一例)と、電極群220(センサの一例)と、を含む。
【0073】
心電図検査装置210は、標準12誘導心電図を用いて、被検者の心電図データ(生体パラメータの一例)を演算する装置である。図4に例示するように、心電図検査装置210は、入出力インターフェース211と、障害検知部212と、制御部213と、表示部214と、報知部215と、を備えている。これらはバス216を介して互いに通信可能に接続されている。なお、心電図検査装置210は、図示しない電源、デジタル/アナログ回路等も有している。
【0074】
入出力インターフェース211は、入出力インターフェース11と同様の構成であってもよく、取得部211aを含む。心電図検査装置210は、入出力インターフェース211を介して、有線または無線により電極群220と接続可能である。
【0075】
ここで、電極群220について説明する。電極群220は、第一電極220A、第二電極220B、第三電極220Cを含む複数の電極(例えば、10個の電極)から構成されている。各電極は、被検者の生体組織230(四肢や胸部等)に装着される。各電極は、被検者の測定部位に接触し、測定部位の電位変化を導出するためのセンサとして機能する。各電極は測定部位の電位差を導出するように構成されている。また、心電図検査装置210は、図示しない不関電極も備えており、当該不関電極は、電極群220に同相で誘導される外来雑音を除去するように構成されている。さらに、各電極は検出素子を備えている。例えば、第一電極220Aは第一検出素子221を、第二電極220Bは第二検出素子222を、第三電極220Cは第三検出素子223を、それぞれ備えている。
【0076】
第一検出素子221は、第一電極220Aが有する装着ゲルから伝えられた起電力(生体情報の一例)に対応する心電図信号(第一信号S11)を検出し、第一信号S11を、リード線を介して、取得部211aに送信するように構成されている。
【0077】
第一検出素子221以外の他の検出素子(例えば、第二検出素子222や第三検出素子223)は、第一検出素子221と同様の構成であるので、説明を省略する。当該他の検出素子を備える電極のそれぞれは、生体組織230のうち、第一検出素子221を備える第一電極220Aが装着された部位とは異なる部位に装着される。なお、本実施形態においては、第二検出素子222を用いて取得された起電力に対応する心電図信号を第二信号S12、第三検出素子223を用いて取得された起電力に対応する心電図信号を第三信号S13とする。
【0078】
各検出素子は、第一実施形態と同様の原理により、各検出素子の電圧値を示す電圧情報を生成するように構成されている。なお、生成された各検出素子に関する電圧情報は、各検出素子から心電図検査装置210の取得部211aに送信される。
【0079】
次に、心電図検査装置210の取得部211aについて説明する。取得部211aは、電極群220に備わる複数の検出素子を用いて取得された起電力に対応する複数の心電図信号を電極群220から取得するように構成されている。取得された複数の心電図信号(第一信号S11、第二信号S12および第三信号S13)は、制御部213に送信される。また、取得部211aは、各検出素子から受信した電圧情報を障害検知部212に送信する。
【0080】
障害検知部212は、第一実施形態における障害検知部12と同様の構成であるので、説明を省略する。なお、本実施形態においては、光電変換素子の故障、心電図検査装置210と各検出素子をつなぐ電気ケーブルの断線、電極外れ等により検出素子が有する機能が発揮できない状態であるとき、当該検出素子に障害が発生したとする。
【0081】
制御部213は、ハードウェア構成として、メモリ2131と、プロセッサ2132と、を備えている。なお、メモリ2131およびプロセッサ2132は、第一実施形態におけるメモリ131およびプロセッサ132と同様の構成であるので、説明を省略する。プロセッサ2132は、演算部2132aを含む。
【0082】
演算部2132aは、メモリ2131に記録されたメインアルゴリズム(第1のアルゴリズムの一例)またはサブアルゴリズム(第2のアルゴリズムの一例)に基づいて、心電図データを演算するように構成されている。メインアルゴリズムは、当該メインアルゴリズムに用いられる信号を取得するための検出素子に障害が発生していないときに用いられるアルゴリズムである。サブアルゴリズムは、メインアルゴリズムに用いられる信号を取得するための検出素子に障害が発生したときに用いられるアルゴリズムである。なお、標準12誘導法を用いて心電図データを演算する場合、10個の電極が用いられ、そのうち4つの電極は四肢に、残り6つの電極は胸部にそれぞれ装着される。本実施形態において、第一電極220Aおよび第二電極220Bは、被検者の胸部において隣接して装着されており、第三電極220Cは被検者の左脚に装着されているものとして説明する。したがって、本実施形態では、第一電極220Aまたは第二電極220Bに障害が発生しても心電図データは演算されうるが、第三検出素子223に障害が発生すると、心電図データは演算されない。
【0083】
第一検出素子221、第二検出素子222および第三検出素子223のいずれにも障害が発生していないとき、演算部2132aは、例えば、第一信号S11と、第二信号S12と、第三信号S13と、メインアルゴリズムと、に基づいて、心電図データを演算する。具体的には、所定の2つの電極間における電位差がそれぞれ誘導されると、演算部2132aは、各誘導の電位変化を総合し、心電図データを演算する。
【0084】
一方で、例えば、第一検出素子221に障害が発生し、かつ第一検出素子221の代わりに第二検出素子222を用いることで心電図データを演算することができるとき、演算部2132aは、第二信号S22と、第三信号S23と、サブアルゴリズムと、に基づいて、心電図データを演算する。
【0085】
制御部213は、第一実施形態と同様の原理により、各検出素子の障害の有無を判断し、演算部2132aが心電図データを演算するのに用いるアルゴリズムを決定する。制御部213は、当該決定に基づき、演算部2132aに心電図データを演算させる。
【0086】
制御部213は、第一実施形態と同様の原理により、心電図データを表示部214に表示するための表示信号を生成し、当該表示信号を表示部214に送信する。
【0087】
制御部213は、障害検知部212が第一検出素子221、第二検出素子222および第三検出素子223の少なくとも一つに障害が発生したことを検知したとき、障害信号を生成する。生成された障害信号は報知部215に送信される。
【0088】
表示部214は、第一実施形態における表示部14と同様の構成であってもよい。
【0089】
報知部215は、制御部213から受信した障害信号に基づいて、第一検出素子221、第二検出素子222および第三検出素子223の少なくとも一つに障害が発生したことを報知するように構成されている。なお、報知部215による報知は、第一実施形態に係る報知部15による報知と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
次に、図2を参照しつつ、第三実施形態において制御部213が実行する処理内容について詳細に説明する。なお、本実施形態では、いずれの検出素子にも障害が発生していないとき、メインアルゴリズムが用いられ、第一検出素子221または第二検出素子222のどちらか一方にのみ障害が発生したとき、サブアルゴリズムが用いられるものとして説明する。また、本実施形態において、第一電極220A、第二電極220Bおよび第三電極220C以外の電極に備わる検出素子には障害が発生していないものとする。
【0091】
制御部213は、図2のSTEP01~STEP03を実行する。いずれの検出素子にも障害が発生していないとき(STEP03においてNO)、演算部2132aは、第一信号S11と、第二信号S12と、第三信号S13と、メインアルゴリズムと、に基づいて、心電図データを演算する(STEP04)。一方、制御部213がいずれかの検出素子に障害が発生したと判断した場合(STEP03においてYES)、STEP05に進む。
【0092】
STEP05において、制御部213は、第一検出素子221および第二検出素子222、または第三検出素子223に障害があるかどうかを判断する。制御部13が、第一検出素子221および第二検出素子222、または第三検出素子223に障害は発生していないと判断した場合(STEP05においてNO)、演算部2132aは、第一信号S11または第二信号S12と、第三信号S13と、サブアルゴリズムと、に基づいて、心電図データを演算する(STEP06)。一方、制御部213が、第一検出素子221および第二検出素子222、または第三検出素子223に障害が発生したと判断した場合(STEP05においてYES)、制御部213は、演算部2132aに心電図データの演算を実行させることなく、本処理を終了させる。
【0093】
本実施形態に係る心電図検査装置210によれば、いずれの検出素子にも障害が発生していないとき、演算部2132aは、メインアルゴリズムに基づいて、心電図データを演算する。一方、例えば、第一検出素子221に障害が発生した場合、演算部2132aは、サブアルゴリズムに基づいて、心電図データを演算する。このように、複数の検出素子の一部に障害が発生したとしても、演算部2132aは、心電図データを演算することができる。したがって、心電図検査装置210は、検出素子の障害に対し、耐障害性がある。
【0094】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得る。
【0095】
第一実施形態において、第一の光および第二の光は赤色光であり、第三の光は赤外光であるが、この例に限られない。例えば、第二の光は赤色光であり、第一の光および第三の光は赤外光であってもよい。
【0096】
第一実施形態および第二実施形態において、第一波長λ1は660nmであり、第二波長λ2は700nmであるが、第一波長λ1が700nmであり、第二波長λ2が660nmであってもよい。
【0097】
第二実施形態において、第一の光および第二の光は赤色光であり、第三の光および第四の光は赤外光であるが、この例に限られない。例えば、第一の光および第二の光が赤外光であり、第三の光および第四の光が赤色光であってもよい。
【0098】
第二実施形態において、第三波長λ3は940nmであり、第四波長λ4は880nmであるが、第三波長λ3が880nmであり、第四波長λ4が940nmであってもよい。
【0099】
第一実施形態および第二実施形態において、演算部132aは、小数表記でSpOを演算しているが、百分率表記でSpOを演算してもよい。
【0100】
第一実施形態および第二実施形態において、SpOの演算に用いられなかった信号は、SpO以外の生体パラメータの演算に用いられてもよい。例えば、第一実施形態において、いずれの発光素子にも障害が発生していない場合、第一信号S1と第三信号S3はSpOの演算に用いられ、第二信号S2は一酸化炭素濃度の値の演算に用いられてもよい。
【0101】
上述した実施形態において、生体パラメータ演算装置(パルスオキシメータ10および心電図検査装置210)は、表示部と報知部を備えているが、表示部と報知部を備えていなくてもよい。なお、この場合、生体パラメータ演算装置は、表示部や報知部を備える外部装置(例えば、ベッドサイドモニタ)と有線または無線で接続されていてもよい。
【0102】
上述した実施形態において、障害検知部12,212は、電圧情報に基づいて、各素子の障害を検知しているが、電流情報に基づいて、各素子の障害を検知してもよい。この場合、生体パラメータ演算装置は、電流信号を電圧信号に変換して電圧情報を生成し、当該電圧情報を各素子に送信する。各素子は、電気エネルギーを光エネルギーに変換する際に生じる電流に基づいて生成される電流情報を生体パラメータ演算装置の取得部11a,211aに送信する。障害検知部12,212は、受信した電流情報と相関情報と、に基づいて各素子の障害を検知する。
【0103】
上述した実施形態において、制御部13,213は、障害検知部12が第一発光素子21、第二発光素子22および第三発光素子23の少なくとも一つに障害が発生したことを検知したとき、または障害検知部212が第一検出素子221、第二検出素子222および第三検出素子223の少なくとも一つに障害が発生したことを検知したとき、障害信号を生成するが、この例に限られない。例えば、制御部13は、生体パラメータの演算ができないときに限り、障害信号を生成するように構成されていてもよい。この場合、医療従事者は、報知部15による報知を通じて、生体パラメータ演算装置が生体パラメータを演算できない状態であることを認識することができる。
【0104】
上述した実施形態においては、制御部13,213に備わるプロセッサ132,2132等によって、障害検知部12,212の機能が実現されてもよい。
【0105】
第一実施形態および第三実施形態において、STEP02はSTEP01の後に実行されているが、STEP01と同時、またはSTEP01より前に実行されてもよい。
【0106】
第二実施形態において、STEP12はSTEP11の後に実行されているが、STEP11と同時、またはSTEP11より前に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1,201:生体パラメータ演算システム、10:パルスオキシメータ、11,211:入出力インターフェース、11a,211a:取得部、12,212:障害検知部、13,213:制御部、14,214:表示部、15,215:報知部、16,216:バス、20:プローブ、21:第一発光素子、22:第二発光素子、23:第三発光素子、24:第四発光素子、25:検出素子、30,230:生体組織、131,2131:メモリ、132,2132:プロセッサ、132a,2132a:演算部、210:心電図検査装置、220:電極群、220A:第一電極、220B:第二電極、220C:第三電極、221:第一検出素子、222:第二検出素子、223:第三検出素子
図1
図2
図3
図4