(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】無線伝送システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/18 20060101AFI20241021BHJP
H04B 5/72 20240101ALI20241021BHJP
【FI】
H01F38/18 C
H04B5/72
(21)【出願番号】P 2020168581
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 優
(72)【発明者】
【氏名】名合 秀忠
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012622(WO,A1)
【文献】特開2003-174398(JP,A)
【文献】特開2017-028489(JP,A)
【文献】特開2002-111750(JP,A)
【文献】特開2018-117293(JP,A)
【文献】実開平03-120142(JP,U)
【文献】米国特許第06501351(US,B1)
【文献】特開昭63-121327(JP,A)
【文献】特開昭63-220401(JP,A)
【文献】特開2007-216002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/18
H04B 5/00- 5/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線伝送システムであって、
差動信号を伝送する一対の信号線であり、環状に配置される第1のカプラと、
差動信号を伝送する一対の信号線であり、前記第1のカプラより短い第2のカプラと、
前記第1のカプラまたは、前記第2のカプラから信号を受信する受信部と、
を有し、
前記第1のカプラと前記第2のカプラは、非接触で対向することで電界および/または磁界結合を利用して電気信号を通信し、
前記第1のカプラと前記第2のカプラとの少なくとも一方が、前記第1のカプラの中心に垂直な回転軸を中心として回転した場合に、前記第2のカプラの一対の信号線の内、一方の信号線が前記第1のカプラの一方の信号線の端部間を跨ぐ場合には他方の信号線が前記第1のカプラの他方の信号線の端部間を跨がないよう前記第1のカプラと前記第2のカプラが配置され、
前記受信部は、前記第2のカプラの一対の信号線の配置ずれに基づく遅延量または、前記第1のカプラの一対の信号線の端部間ギャップの配置ずれに基づく遅延量を補償するための遅延補償部を有
し、
前記遅延補償部は、前記第2のカプラの一対の信号線間の前記第1のカプラの周方向における配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第1の部分と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第2の部分または、
前記第1のカプラの一対の信号線の、前記第1のカプラの周方向における前記端部間ギャップの配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第3の部分と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第4の部分とを有することを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
前記第2のカプラの一方の信号線が、前記回転軸の方向において、前記第2のカプラの他方の信号線と重複しないように配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
【請求項3】
前記第1のカプラの一方の信号線の前記端部間ギャップが、前記回転軸の方向において、前記第1のカプラの他方の信号線の前記端部間ギャップと重複しないように配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
【請求項4】
前記無線伝送システムはさらに、
前記遅延補償部が出力した前記遅延量を補償するための遅延信号と、前記第2のカプラで検出した信号とを入力されるコンパレータと、
前記コンパレータから波形整形された出力の論理和をとる論理合成部と、
前記論理合成部から出力された信号を入力し、復調する復調部と、を有することを特徴とする請求項
1または
2に記載の無線伝送システム。
【請求項5】
前記第1のカプラと前記第2のカプラの前記電界および/または磁界結合は、低い周波数では結合度が小さく、高い周波数では結合度が大きいことを特徴とする請求項1から
4の何れか1項に記載の無線伝送システム。
【請求項6】
無線伝送システムの制御方法であって、
差動信号を伝送する一対の信号線であり、環状に配置される第1のカプラと、
差動信号を伝送する一対の信号線であり、前記第1のカプラより短い第2のカプラと、
前記第1のカプラまたは、前記第2のカプラから信号を受信する受信部と、
を有する前記無線伝送システムにおいて、
前記第1のカプラの中心に垂直な回転軸を中心として回転した場合に、前記第2のカプラの一対の信号線の内、一方の信号線が前記第1のカプラの一方の信号線の端部間を跨ぐ場合には他方の信号線が前記第1のカプラの他方の信号線の端部間を跨がないよう前記第1のカプラと前記第2のカプラが配置されるように配置する配置工程と、
前記配置工程において配置された前記第1のカプラと前記第2のカプラとが非接触で対向することで電界および/または磁界結合を利用して電気信号を通信する通信工程と、
前記受信部において、前記第2のカプラの一対の信号線の配置ずれに基づく遅延量または、前記第1のカプラの一対の信号線の端部間ギャップの配置ずれに基づく遅延量を補償するための遅延補償工程と、
を有
し、
前記遅延補償工程は、前記第2のカプラの一対の信号線間の前記第1のカプラの周方向における配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第1の工程と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第2の工程または、
前記第1のカプラの一対の信号線の、前記第1のカプラの周方向における前記端部間ギャップの配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第3の工程と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第4の工程とを有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線で信号を伝送するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体を用いたデータ伝送方式の一つとしてスリップリングがある。特許文献1には、スリップリングをビデオテープヘッドに応用する例が開示されている。特許文献1に開示のシステムでは、リング状の第1の伝送路の一方の端から電気信号を入力し、他方の端を終端している。また、これに対向する第2の伝送路から信号を検出している。ここで、第1の伝送路を電気信号が伝送する場合、伝送遅延が生じる。よって第2の伝送路が第1の伝送路の信号入力端に近い場合、第2の伝送路に接続される可変遅延手段の遅延量を大きくし、終端に近い場合遅延量を少なくすることによって第1の伝送路を信号が伝送する際の伝送遅延を相殺し、遅延量を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
差動信号を伝送するためには特許文献1に開示の第1の伝送路、およびそれに対抗する第2の伝送路の組み合わせを二組用いることになる。
図5(a)および(b)には、第1の伝送路と第2の伝送路とをそれぞれ2つ有するシステムの構成を示す。2つの第1の伝送路の開放端(信号入力端及び終端)同士の距離が近く、かつ、開放端同士が同じ位置にあり、2つの第2の伝送路が揃って開放端を跨るように対向すると、第2の伝送路内で受信信号が合成されてしまう可能性がある(
図5(c))。第2の伝送路内で合成された信号は可変遅延手段の出力でも合成されたままであるので、誤ったデータを出力する虞がある。
【0005】
上記を鑑み、本発明は、ギャップを有する第1の伝送路カプラと、該第1の伝送路と非接触で対向する第2の伝送路カプラとを用いて差動信号を伝送する場合に、誤ったデータの出力を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に開示の無線伝送システムは、差動信号を伝送する一対の信号線であり、環状に配置される第1のカプラと、差動信号を伝送する一対の信号線であり、前記第1のカプラより短い第2のカプラと、前記第1のカプラまたは、前記第2のカプラから信号を受信する受信部と、を有し、前記第1のカプラと前記第2のカプラは、非接触で対向することで電界および/または磁界結合を利用して電気信号を通信し、前記第1のカプラと前記第2のカプラとの少なくとも一方が、前記第1のカプラの中心に垂直な回転軸を中心として回転した場合に、前記第2のカプラの一対の信号線の内、一方の信号線が前記第1のカプラの一方の信号線の端部間を跨ぐ場合には他方の信号線が前記第1のカプラの他方の信号線の端部間を跨がないよう前記第1のカプラと前記第2のカプラが配置され、前記受信部は、前記第2のカプラの一対の信号線の配置ずれに基づく遅延量または、前記第1のカプラの一対の信号線の端部間ギャップの配置ずれに基づく遅延量を補償するための遅延補償部を有し、
前記遅延補償部は、前記第2のカプラの一対の信号線間の前記第1のカプラの周方向における配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第1の部分と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第2の部分または、
前記第1のカプラの一対の信号線の、前記第1のカプラの周方向における前記端部間ギャップの配置ずれにおいて、広角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第3の部分と、挟角側の配置ずれに基づく遅延量を補償する第4の部分とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ギャップを有する第1の伝送路カプラと、該第1の伝送路と非接触で対向する第2の伝送路カプラとを用いて差動信号を伝送する場合に、誤ったデータの出力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態におけるシステム構成図を示した図である。
【
図2】第1の実施形態における受信部の構成を示した図である。
【
図3】第1の実施形態におけるタイミングチャートを示した図である。
【
図4】第2の実施形態におけるシステム構成図とタイミングチャートを示した図である。
【
図5】課題を説明するためのシステム構成図とタイミングチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
本実施形態にかかる無線伝送システムのシステム構成図を
図1(a)に示す。
図1(a)において、伝送路カプラ102および103は円状に配置された差動信号の送信側の伝送路カプラである。伝送路カプラ102および103のそれぞれ一方の端(A―A’)には信号源である送信部105が接続され、他方の端(B―B’)には終端抵抗104が接続されている。以後、差動信号の送信側の伝送路カプラ102および103を単に送信カプラと呼ぶ。なお、送信カプラ102および103の夫々の解放端(A-B,A‘-B’)には、間隙(ギャップ)が存在する。本実施形態にかかる無電伝送システムは、送信路カプラである信号線を一対と、受信路カプラである信号線を一対有する。
【0011】
伝送路カプラ106および107は、円周上に配置された差動信号の受信側の伝送路カプラである。伝送路カプラ106および107のそれぞれ一方の端(C―C’)には受信部109が接続され、他方の端(D―D’)には終端抵抗108が接続されている。以後、差動信号の受信側の伝送路カプラ106および107を単に受信カプラと呼ぶ。
【0012】
受信カプラ106および107は、送信カプラ102および103にそれぞれ対向するように配置され、送信カプラ102および103と、電界および磁界の少なくとも一方の効果で結合される。この時、送信カプラ102と受信カプラ106の結合、および送信カプラ103と受信カプラ107の結合において、低い周波数では結合度が小さく、高い周波数では結合度が大きくなる。そのため、送信部105に入力された信号が各々の電界および/または磁界結合を経て受信部109へ出力される際にはHPF(High Pass Filter)を通過したような信号になる。
【0013】
送信カプラ102および103と、受信カプラ106および107の少なくとも一方は、回転軸101を中心として回転可能である。なお、回転軸101は、送信カプラ102および103の中心に対して垂直な回転軸である。
【0014】
図1(b)には、
図1(a)に示した無線伝送システムを、回転軸101に垂直な基準方向の視点から見た場合のシステム構成図を示した。送信カプラ102の解放端(A-B)の間隙、および、送信カプラ103の解放端(A’-B’)の間隙は、受信カプラ106および107よりも狭く、回転軸101に沿って重複する位置に配置される。一方、受信カプラ106および107は、回転軸101に沿って重複しない位置に配置される。
【0015】
図1(b)では、受信カプラ106が送信カプラ102の解放端(A-B)の間隙を跨いでいる場合を示した。この場合に、受信カプラ106および107の広角側の位置ずれを角度α、狭角側の位置ずれを角度βと定義する。なお、本実施形態で示したシステムが回転軸101を中心として回転する際の速度は一定とし、回転中であっても角度αおよび角度βは変わることはなく一定であるものとする。
【0016】
図2に受信部109の構成を示した。受信カプラ106及び107の端部(C―C’)から出力された信号は、それぞれ4つに分かれた後、遅延補償部201およびコンパレータ202を通り、論理合成部203、復調部204へと流れる。
【0017】
遅延補償部201は角度αおよび/または角度βに基づく遅延時間を備えており、入力された信号を遅延時間分遅らせて出力する。
【0018】
コンパレータ202はヒステレシス特性を備えるコンパレータであって、閾値である電圧Vthを上回ることで入力信号の立ち上がり、電圧-Vthを下回ることで入力信号の立ち下がりを検出する。
【0019】
論理合成部203は、各コンパレータ202から波形整形された出力のOR(論理和)を取って復調部204に出力する。復調部204は、入力された信号を復調する。
【0020】
図3には、本実施形態にかかる無線伝送システムのタイミングチャートを示した。
図2で示した4つの遅延補償部201の各出力信号E、F、G、Hと、4つのコンパレータ202のそれぞれの内部信号I、J、K、Lと、論理合成部203の出力Mの信号波形を示す。
【0021】
信号源である送信部105は入力信号である“1”、“0”のランダムディジタル波形を差動増幅した後に、送信カプラ102に+の送信信号Aを、送信カプラ103に-の送信信号A’を入力する。
【0022】
送信カプラ102に入力された+の送信信号Aは、電界および/または磁界結合を介して受信カプラ106へと出力される。受信カプラ106で検出される信号Cは、+の送信信号の変化点における微分波形である。ここで、受信カプラ106の両端(DおよびC)が、それぞれ送信カプラ102の両端(AおよびB)と結合しており、信号Cは結合(A-D間)による微分波形と、結合(B-C間)による微分波形の合成波となる。結合(A-D間)による微分波形に対して、結合(B-C間)による微分波形は、回転軸101に沿って送信カプラ102の約一周分(角度α+β)に等しい遅延時間を持つ。
【0023】
同様に、送信カプラ103に入力された-の送信信号A’は、電界および/または磁界結合を介して受信カプラ107へと出力される。受信カプラ107で検出される信号C’は、-の送信信号の変化点における微分波形である。ここで、結合(A’-D’間)による微分波形は、結合(A-D間)による微分波形に対し、回転軸101に沿って送信カプラ103の角度αに等しい遅延時間を持つ。
【0024】
次に、受信カプラ106および107で検出した信号C、C’に対し、補償部201においてそれぞれ角度α、角度βに基づく遅延時間を与えた補償信号をE~Hに示す。これらの補償信号E~Hと、検出信号C、C’を、並列に接続したコンパレータ202に入力する。
【0025】
コンパレータ202における、補償信号Eと検出信号C’を入力した時の内部信号Iを、補償信号Fと検出信号C’を入力した時の内部信号Jをそれぞれ示した。また、検出信号Cと補償信号Gを入力した時の内部信号Kを、検出信号Cと補償信号Hを入力した時の内部信号Lをそれぞれ示した。この時、内部信号Iは立ち上がりと立ち下がり、計4つの変化点で閾値|Vth|を上回るが、その他の内部信号J~Lは閾値|Vth|を下回る。以上より、論理合成部203からは同じく4つの変化点を持つ出力信号Mのみが出力され、復調信号として送信カプラ102及び103に入力された信号と同等な信号が生成される。
【0026】
図1に示した無線伝送システムにおいて、受信カプラ106および107が時計回りに回転すると、受信カプラ106は送信カプラ102の解放端(A-B)の間隙を跨がなくなる。そのため、結合(B-C間)による微分波形がなくなり、結合(A-D間)による微分波形のみを検出することとなる。この場合は復調を不安定化させる合成波がなくなるため、受信部109において容易に復調可能となる。
【0027】
さらに受信カプラ106および107が時計回りに回転すると、受信カプラ107が送信カプラ103の解放端(A’-B’)の間隙を跨ぐため、受信カプラ107の両端(D’およびC’)がそれぞれ送信カプラ103の両端(A’およびB’)と結合する。この場合も、結合(A’-D’間)による微分波形と、結合(B’-C’間)による微分波形の合成波を検出することとなるが、受信部109において同様に処理を行うことで復調可能である。
【0028】
以上、第1の実施形態に示したように、回転軸101に垂直な基準視点からみて、受信カプラ106および107が重複しないように配置することで、受信カプラ106および107内で信号が合成されてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
なお、本実施形態において、伝送路カプラ102および103を送信カプラ、伝送路カプラ106および107と受信カプラと定義したが、これに限らず、伝送路カプラ102および103を受信カプラ、伝送路カプラ106および107を送信カプラとしても良い。この場合は、端部(C-C’)間に送信部105が接続され、端部(A-A’)に受信部109が接続される。
【0030】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、回転軸に垂直な基準視点からみて受信カプラ同士が重複しないようにしたが、第2の実施形態では基準視点からみて送信カプラの間隙同士が重複しないように配置される。なお、第2の実施形態では第1の実施形態と異なる点のみを詳細に説明する。
【0031】
本実施形態にかかる無線伝送システムのシステム構成図を
図4(a)に示す。
図4(a)において、伝送路カプラ402および403は環状に配置された差動信号の送信側の伝送路カプラである。伝送路カプラ102および103のそれぞれ一方の端(A―A’)には信号源である送信部405が接続され、他方の端(B―B’)には終端抵抗404が接続されている。以後、差動信号の送信側の伝送路カプラ402および403を単に送信カプラと呼ぶ。なお、送信カプラ402および403の夫々の解放端(A-B,A‘-B’)には、間隙(ギャップ)が存在する。本実施形態にかかる無電伝送システムは、送信路カプラである信号線を一対と、受信路カプラである信号線を一対有する。
【0032】
伝送路カプラ406および407は、円周上に配置された差動信号の受信側の伝送路カプラである。伝送路カプラ406および407のそれぞれ一方の端(C―C’)には受信部109が接続され、他方の端(D―D’)には終端抵抗408が接続されている。以後、差動信号の受信側の伝送路カプラ406および407を単に受信カプラと呼ぶ。
【0033】
受信カプラ406および407は、送信カプラ402および403にそれぞれ対向するように配置され、送信カプラ402および403と、電界および磁界の少なくとも一方の効果で結合される。この時、送信カプラ402と受信カプラ406の結合、および送信カプラ403と受信カプラ407の結合において、低い周波数では結合度が小さく、高い周波数では結合度が大きくなる。そのため、送信部405に入力された信号が各々の電界および/または磁界結合を経て受信部109へ出力される際にはHPF(High Pass Filter)を通過したような信号になる。なお、受信部109は、
図2と同様の構成を有するものとする。
【0034】
送信カプラ402および403と、受信カプラ406および407の少なくとも一方は、回転軸401を中心として回転可能である。なお、回転軸401は、送信カプラ402および403の中心に対して垂直な回転軸である。
【0035】
図4(b)には、
図4(a)に示した無線伝送システムを、回転軸401に垂直な基準方向の視点から見た場合のシステム構成図を示した。送信カプラ402の解放端(A-B)の間隙、および、送信カプラ403の解放端(A’-B’)の間隙は、受信カプラ406および407よりも狭く、回転軸101に沿って重複しない位置に配置される。一方、受信カプラ406および407は、回転軸401に沿って重複する位置に配置される。
【0036】
図4(b)では、受信カプラ406が送信カプラ402の解放端(A-B)の間隙を跨いでいる場合を示した。この場合に、送信カプラ402の間隙および403の間隙の広角側の位置ずれを角度α、狭角側の位置ずれを角度βと定義する。なお、本実施形態で示したシステムが回転軸101を中心として回転する際の速度は一定とし、回転中であっても角度αおよび角度βは変わることはなく一定であるものとする。
【0037】
図4(c)には、本実施形態にかかる無線伝送システムのタイミングチャートを示した。
図3と同様に、4つの遅延補償部201の各出力信号E、F、G、Hと、4つのコンパレータ202の各内部信号I、J、K、Lと、論理合成部203の出力Mの信号波形を示す。
【0038】
信号源である送信部405は入力信号である“1”、“0”のランダムディジタル波形を差動増幅した後に、送信カプラ402に+の送信信号Aを、送信カプラ403に-の送信信号A’を入力する。
【0039】
送信カプラ402に入力された+の送信信号Aは、電界および/または磁界結合を介して受信カプラ406へと出力される。受信カプラ406で検出される信号Cは、+の送信信号の変化点における微分波形である。この時、受信カプラ406の両端(DおよびC)がそれぞれ送信カプラ402の両端(AおよびB)と結合しており、信号Cは結合(A-D間)による微分波形と、結合(B-C間)による微分波形の合成波となる。結合(A-D間)による微分波形に対し、結合(B-C間)による微分波形は、回転軸401に沿って送信カプラ402の約一周分(角度α+β)に等しい遅延時間を持つ。
【0040】
送信カプラ403に入力された-の送信信号A’は、電界および/または磁界結合を介して受信カプラ407へと出力される。受信カプラ407で検出される信号C’は、-の送信信号の変化点における微分波形である。ここで、結合(A‘-D’間)による微分波形は、結合(A-D間)による微分波形に対し、回転軸401に沿って送信カプラ403の角度βに等しい遅延時間を持つ。
【0041】
次に、受信カプラ406および407で検出した信号CおよびC’に対し、補償部201においてそれぞれ角度α、角度βに等しい遅延時間を与えた補償信号をE~Hに示す。これらの補償信号E~Hと、検出信号CおよびC’を、並列に接続したコンパレータ202に入力する。
【0042】
コンパレータ202における、補償信号Eと検出信号C’を入力した時の内部信号Iを、補償信号Fと検出信号C’を入力した時の内部信号Jをそれぞれ示した。また、コンパレータ202における、検出信号Cと補償信号Gを入力した時の内部信号Kを、検出信号Cと補償信号Hを入力した時の内部信号Lをそれぞれ示した。この時、内部信号Jは立ち上がりと立ち下がり、計4つの変化点で閾値|Vth|を上回るが、その他の内部信号I、K、Lは閾値|Vth|を下回る。以上より、論理合成部203からは同じく4つの変化点を持つ出力信号Mのみが出力され、復調信号として送信カプラ402および403に入力された信号と同等な信号が生成される。
【0043】
図4(a)に示した無線伝送システムにおいて、受信カプラ406および407が時計回りに回転すると、受信カプラ406は送信カプラ402の解放端(A-B)の間隙を跨がなくなる。そのため、結合(B-C間)による微分波形がなくなり、結合(A-D間)による微分波形のみを検出することとなる。この場合は、復調を不安定化させる合成波がなくなるため、受信部109において容易に復調可能となる。
【0044】
さらに受信カプラ406および407が時計回りに回転すると、受信カプラ407が送信カプラ403の解放端(A’-B’)の間隙を跨ぐため、受信カプラ407の両端(D’およびC’)がそれぞれ送信カプラ403の両端(A’およびB’)と結合する。この場合も、結合(A’-D’間)による微分波形と、結合(B’-C’間)による微分波形の合成波を検出することとなるが、受信部109において同様に処理を行うことで復調可能である。
【0045】
以上、第2の実施形態に示したように、回転軸401に垂直な基準視点からみて、送信カプラ402の間隙と送信カプラ403の間隙が重複しないように配置することで、受信カプラ406および407内で信号が合成されてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
なお、本実施形態において、伝送路カプラ402および403を送信カプラ、伝送路カプラ406および407と受信カプラと定義したが、これに限らず、伝送路カプラ402および403を受信カプラ、伝送路カプラ406および407を送信カプラとしても良い。この場合は、端部(C-C’)間に送信部405が接続され、端部(A-A’)に受信部109が接続される。
【0047】
また、第1の実施形態および第2の実施形態の何れに開示の無線伝送システムも、無線信号の通信に加えて、電力も伝送することができてもよい。
【0048】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC等)によっても実現可能である。また、そのプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。
【符号の説明】
【0049】
101 回転軸
102、103、106、107 伝送路カプラ
104、108 終端抵抗
105 送信部
109 受信部