(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】地盤の表層処理方法、および地盤の表層処理構造
(51)【国際特許分類】
E02D 3/02 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
E02D3/02 101
(21)【出願番号】P 2020170695
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岡村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇介
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137996(JP,A)
【文献】特開平09-228373(JP,A)
【文献】実開平02-082791(JP,U)
【文献】特開平10-131163(JP,A)
【文献】特開2019-112862(JP,A)
【文献】特開2002-030645(JP,A)
【文献】特開平10-237871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性固化材が充填される複数の袋体を、地盤上に格子状に敷設する袋体敷設工程と、
格子状に敷設された前記袋体の内部に流動性固化材を充填し、固化させる固化材充填固化工程と、
を備える地盤の表層処理方法において、
前記袋体は、第1方向に延在する第1袋体と、第1方向に対して交差する第2方向に延在する第2袋体とを備え、
前記袋体敷設工程において、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても
前記第1袋体と前記第2袋体との重なり順序が交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とを編むようにして、前記第1袋体と前記第2袋体とが重なり合って交差した格子状に敷設する、地盤の表層処理方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の地盤の表層処理方法において、
前記袋体敷設工程において、前記重なり順序が前記袋体1つ毎、交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とを格子状に敷設する、地盤の表層処理方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の地盤の表層処理方法において、
前記袋体敷設工程において、地盤上に敷設した面状部材の上に前記袋体を格子状に敷設する、地盤の表層処理方法。
【請求項4】
地盤上に格子状に敷設される複数の袋体と、前記袋体の内部に充填固化される流動性固化材とからなる格子状の剛性補強体を備える、地盤の表層処理構造において、
前記袋体は、第1方向に延在する第1袋体と、第1方向に対して交差する第2方向に延在する第2袋体とを備え、
前記袋体は、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても
前記第1袋体と前記第2袋体との重なり順序が交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とを編むようにして、前記第1袋体と前記第2袋体とが重なり合って交差した格子状に敷設されてなる、地盤の表層処理構造。
【請求項5】
請求項
4に記載の地盤の表層処理構造において、
前記重なり順序が前記袋体1つ毎、交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とが格子状に敷設されてなる、地盤の表層処理構造。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の地盤の表層処理構造において、
前記袋体の下に敷設される面状部材をさらに備える、地盤の表層処理構造。
【請求項7】
請求項
4~6のいずれかに記載の地盤の表層処理構造において、
前記格子状に形成された
前記剛性補強体の上に敷設される砕石層をさらに備える、地盤の表層処理構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の表層処理方法、および地盤の表層処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人等は、軟弱な粘性土等の地盤を補強するための地盤の表層処理方法として、例えば特許文献1、2に記載のような技術を開発している。地盤上に面状部材を敷設するとともに、面状部材の上に袋体を格子状に配設し、袋体の内部にモルタル等の流動性固化材を充填して固化させることで格子状の剛性補強体を形成する。この表層処理方法によると、剛性補強体が有する剛性によって覆土荷重を分散させることができ、軟弱な地盤を不同沈下しにくい十分な支持力を有する地盤とすることができる。また、面状部材の存在により、粘性土と、覆土(土砂や砕石)とが混合しないので、地盤補強前の状態に地盤を戻す場合はその工事を行いやすい。
【0003】
なお、特許文献1では、基端側袋体と、当該基端側袋体に対して直角方向に2列以上に並んで配置された分岐側袋体とで櫛状の袋体(表層処理用袋体)が構成される。この櫛状の表層処理用袋体が1組準備され、一方の表層処理用袋体を構成する複数列の分岐側袋体の上に、他方の表層処理用袋体を構成する複数列の分岐側袋体が、両分岐側袋体で格子状となるように重ねられる。その後、基端側袋体から分岐側袋体へと流動性固化材が充填され、流動性固化材が固化することで格子状の剛性補強体が形成される。
【0004】
特許文献1に記載の方法によると、櫛状の袋体(表層処理用袋体)としたことで、袋体への流動性固化材の注入圧力を極端に高めることなく、流動性固化材を袋体の内部に充填することができ、地盤の表層処理工事の作業効率を向上させることができる。
【0005】
特許文献2では、熱媒体を循環させるようにしたチューブ部材からなる温度調整部材が袋体とともに敷設される。この温度調整部材に温水または冷水を流すことで、袋体の内部に充填された流動性固化材の固化温度を調整することができ、施工期間の短期化と、剛性補強体の品質の確保とを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-348481号公報
【文献】特開2012-31596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載のような従来の表層処理方法には、次のような解決すべき課題が残されていた。
【0008】
袋体の内部にモルタル等の流動性固化材を充填すると、その時に加わる内部圧力によって袋体に伸び縮みが生じる。ここで、従来の袋体の敷設は、縦方向の複数列の袋体の上に横方向の複数列の袋体が重ねられて格子状とされるか、横方向の複数列の袋体の上に縦方向の複数列の袋体が重ねられて格子状とされるかのいずれかである。また、特許文献2の
図1に示されているように、流動性固化材が充填された上側の袋体は、流動性固化材が充填された下側の袋体を格子点部分において乗り越えるような山形状となるので、上側の袋体は、その分の長さ(余剰長さ)を見込んだ長さとされる。
【0009】
ここで、例えば、100m×100mの規模の面積の地盤を表層処理する場合、流動性固化材の充填による内部圧力によって袋体に伸びが生じ、その袋体の末端側の余剰長さが過大となって敷設範囲から袋体がはみ出てしまうことがある。このとき、はみ出てしまった袋体部分を処理する必要があるところ、はみ出た袋体部分を切断処理することは、切断により流動性固化材が流出するので好ましくない。また、はみ出た袋体部分を折り曲げ、その折り曲げた状態で袋体を固定するのも簡単なことではない。
【0010】
また、流動性固化材の充填による内部圧力の大きさには大小があり、正確に余剰長さを見込むことは難しいので、袋体の長さが逆に不足することもある。袋体の長さが不足すると、敷設範囲全体にわたって格子状の剛性補強体を形成することができなくなり敷設範囲における末端側の強度が低下する場合がある。
【0011】
このように、特許文献1、2に記載のような従来の表層処理方法には、袋体の長さ管理を行い難いという問題がある。
【0012】
また、従来の袋体の敷設は、前記のとおり、縦方向の複数列の袋体の上に横方向の複数列の袋体が重ねられて格子状とされるか、横方向の複数列の袋体の上に縦方向の複数列の袋体が重ねられて格子状とされるかのいずれかである。すなわち、ある一方向に延在する複数列の袋体の上に、別の方向に延在する複数列の全ての袋体が重ねられて格子状とされるというものである。この重ね合わせ方法によると、下側の袋体は、流動性固化材が充填された上側の袋体で上方から押さえられるが、上側の袋体は、その上に何も無いので土砂や砕石による覆土前において特にその動きは拘束されない。そのため、覆土の際に落下してくる土砂や砕石で上側の袋体がずれて格子点がずれることがあり得る。格子点がずれると、剛性補強体の剛性の均一性が損なわれて、地盤の支持力に悪影響がおよぶことがある。なお、特許文献1には、格子点等においてベルト等により袋体を結合してもよいと記載されている。しかしながら、この方法では、袋体の膨張代を見込んだベルト長さとされるところ、流動性固化材が充填された後の上下の袋体同士を格子点できっちりと結合された状態とすることは難しい。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、袋体の長さ管理を行いやすく、且つ袋体の格子点がずれにくい、地盤の表層処理方法および地盤の表層処理構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、流動性固化材が充填される複数の袋体を、地盤上に格子状に敷設する袋体敷設工程と、格子状に敷設された前記袋体の内部に流動性固化材を充填し、固化させる固化材充填固化工程と、を備える地盤の表層処理方法において、前記袋体は、第1方向に延在する第1袋体と、第1方向に対して交差する第2方向に延在する第2袋体とを備え、前記袋体敷設工程において、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても前記第1袋体と前記第2袋体とを編むようにして、前記第1袋体と前記第2袋体とが重なり合って交差した格子状に敷設することを特徴とする。
【0015】
本発明の地盤の表層処理方法は、次のような作用効果を奏する。
【0016】
袋体同士が重なり合う格子点において下側に位置する袋体部分は、流動性固化材が充填されても、上側の袋体部分のように山形状とはならないので、格子点において上側の袋体部分ほどの余剰長さを見込む必要はない。本発明のように、袋体同士を編むようにして袋体を格子状に敷設すると、袋体同士が重なり合う格子点に関し、第1方向に延在する第1袋体の上側に第2方向に延在する第2袋体が位置したり、第1方向に延在する第1袋体の下側に第2方向に延在する第2袋体が位置したりする。そのため、本発明によると、例えば、第1方向に並ぶ格子点において、第1方向に延在する第1袋体の常に上側に第2方向に延在する第2袋体が位置する従来の袋体配置に比べて、不確定要素が大きい(=正確に見込むことが難しい)袋体(第2袋体)の余剰長さを長く見込んでおく必要がない。その結果、袋体(第2袋体)を従来よりも短くすることができ、工事業者等は、袋体の長さ管理を行いやすくなる。
【0017】
また、袋体同士が重なり合う格子点に関し、第1方向に延在する第1袋体の上側に第2方向に延在する第2袋体が位置したり、第1方向に延在する第1袋体の下側に第2方向に延在する第2袋体が位置したりすると、第1方向および第2方向のいずれの方向の袋体においても、いくつかの格子点において上側から他方の袋体で押圧されることとなるので袋体はずれにくくなる。袋体がずれにくいと格子点もずれにくくなるという拘束効果が高まる。
【0018】
本発明において、前記袋体敷設工程において、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても前記第1袋体と前記第2袋体との重なり順序が交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とを格子状に敷設することが好ましい。
【0019】
この構成によると、袋体の長さ管理を行いやすい、および袋体の格子点がずれにくい、という拘束効果がより高まる。
【0020】
また本発明において、前記袋体敷設工程において、前記重なり順序が前記袋体1つ毎、交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とを格子状に敷設することが好ましい。
【0021】
この構成によると、袋体の格子点がずれにくい、という拘束効果がさらに高まる。
【0022】
また本発明において、前記袋体敷設工程において、地盤上に敷設した面状部材の上に前記袋体を格子状に敷設することが好ましい。
【0023】
この構成によると、地盤の土と、覆土等とが混合することを面状部材で防止することができるので、表層処理前の状態に地盤を戻す場合に、その工事を行いやすい。
【0024】
本発明は、地盤の表層処理構造に関するものでもある。本発明の地盤の表層処理構造は、地盤上に格子状に敷設される複数の袋体と、前記袋体の内部に充填固化される流動性固化材とからなる格子状の剛性補強体を備えるものであって、前記袋体は、第1方向に延在する第1袋体と、第1方向に対して交差する第2方向に延在する第2袋体とを備え、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても前記第1袋体と前記第2袋体とを編むようにして、前記第1袋体と前記第2袋体とが重なり合って交差した格子状に敷設されてなることを特徴とする。
【0025】
この構成によると、本発明の地盤の表層処理方法と同様に、袋体の長さ管理を行いやすく、且つ袋体の格子点がずれにくい、という拘束効果を表層処理構造は奏する。
【0026】
本発明の表層処理構造において、前記第1方向および前記第2方向のいずれの方向においても前記第1袋体と前記第2袋体との重なり順序が交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とが格子状に敷設されてなることが好ましい。
【0027】
この構成によると、袋体の長さ管理を行いやすい、および袋体の格子点がずれにくい、という拘束効果がより高まる。
【0028】
また本発明の表層処理構造において、前記重なり順序が前記袋体1つ毎、交互に上下逆となるように前記第1袋体と前記第2袋体とが格子状に敷設されてなることが好ましい。
【0029】
この構成によると、袋体の格子点がずれにくい、という拘束効果がさらに高まる。
【0030】
また本発明の表層処理構造において、前記袋体の下に敷設される面状部材をさらに備えることが好ましい。
【0031】
この構成によると、地盤の土と、覆土等とが混合することを面状部材で防止することができるので、表層処理前の状態に地盤を戻す場合に、その工事を行いやすい。
【0032】
また本発明の表層処理構造において、前記格子状に形成された剛性補強体の上に敷設される砕石層をさらに備えることが好ましい。
【0033】
この構成によると、その内部に流動性固化材が充填固化された前記袋体からなる格子状に形成された剛性補強体と砕石層が一体となった表層処理層が形成され、前記格子状の剛性補強体の拘束効果により、砕石を単独で用いる場合よりも高い締固め効果が得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、袋体の長さ管理を行いやすく、且つ袋体の格子点がずれにくい、地盤の表層処理方法および地盤の表層処理構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る地盤の表層処理構造を示す平面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る地盤の表層処理構造を示す平面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る地盤の表層処理構造を示す平面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る地盤の表層処理構造を示す平面図である。
【
図5】
図1に示す地盤の表層処理構造の一実施例を示す写真である。
【
図6】従来の地盤の表層処理構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1、
図5を参照しつつ本発明の第1実施形態に係る地盤の表層処理構造101について説明する。
【0038】
表層処理構造101は、地盤上に敷設される面状部材1と、面状部材1の上に格子状に敷設される袋体2とを備える。袋体2は、面状部材1を介して、地盤上に格子状に敷設される。
【0039】
面状部材1は、地盤の土と、覆土等とが混合することを防止するためのシート部材であって、例えば、合成繊維製織布からなる。面状部材1の厚さは、例えば、0.38mm、引張強度は、例えば、70kN/mである。なお、面状部材1は、後述する格子状の剛性補強体とともに覆土荷重を分散させる機能も有する。格子状の剛性補強体だけでも荷重を分散させることができるので、地盤の土と覆土等とが混合してもよい場合などは、面状部材1を省略してもよい。すなわち、地盤上に直接、袋体2を格子状に敷設してもよい。
【0040】
袋体2は、内部にモルタル等の流動性固化材が充填されるものであり、ジャケットと呼ばれる。充填された流動性固化材が固化することで、格子状の剛性補強体が形成される。この剛性補強体が有する剛性によって覆土荷重を分散させることができ、不同沈下しにくい十分な支持力を有する地盤とすることができる。袋体2は、例えば、合成繊維製の筒状織布からなる。袋体2の直径は、例えば、100mm、引張強度は、例えば、130kN/mである。表層処理構造101は、地盤上に格子状に敷設される袋体2と、袋体2の内部に充填固化される流動性固化材とからなる格子状の上記剛性補強体を備える。
【0041】
袋体2は、第1方向Xに延在する第1袋体3と、第1方向Xに対して交差する第2方向Yに延在する第2袋体4とを備える。本実施形態において、第2方向Y(第2袋体4)は第1方向X(第1袋体3)に対して直交するが、第1方向X(第1袋体3)と第2方向Y(第2袋体4)とが正確に直交しない場合もある。
【0042】
複数の第1袋体3と複数の第2袋体4とで形成される格子の形状は正方形であり、格子間隔は、1m×1m、1.5m×1.5m、2m×2mなどである。
【0043】
図1に示すように、本実施形態では、袋体2の内部にモルタル等の流動性固化材が充填され固化してなる格子状の剛性補強体の一体性をより高めるべく、第1方向Xの第1袋体3と第2方向Yの第2袋体4とが重なり合って交差する格子点Pに関し、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向においても第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体1つ毎、交互に上下逆となるように、第1袋体3と第2袋体4とを編むようにして第1袋体3と第2袋体4とが格子状に敷設されている。
【0044】
図5に示すように、複数の第1袋体3の内部に効率よく流動性固化材を充填するために、本実施形態では、複数の第1袋体3の端部は基端側袋体5の側面に連通され、基端側袋体5から複数の第1袋体3へと流動性固化材が充填される構成とされている。同様に、複数の第2袋体4の内部に効率よく流動性固化材を充填するために、複数の第2袋体4の端部は、もう一つの基端側袋体6の側面に連通され、基端側袋体6から複数の第2袋体4へと流動性固化材が充填される構成とされている。
【0045】
基端側袋体5と基端側袋体6とが互いに連結され、モルタル等の流動性固化材を供給するための供給口金具10が基端側袋体6の端に取り付けられている。
【0046】
次に、面状部材1、および袋体2を用いた地盤の表層処理方法の一例について説明する。なお、以下の説明では、田を一時的に道路(仮設道路)にする場合を例にして説明する。
【0047】
(袋体敷設工程)
田を掘削し、掘削後の地盤を整形するとともに締固める。そして締固めた地盤上に面状部材1を敷設する。その後、
図1に示すように、面状部材1の上に、第1袋体3と第2袋体4とが重なり合って交差する格子点Pに関し、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向においても第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体1つ毎、交互に上下逆となるように、第1袋体3と第2袋体4とを編むようにして第1袋体3と第2袋体4とが重なり合って交差した格子状に敷設する。なお、
図1では図示が省略されている基端側袋体5および基端側袋体6(
図5参照)も同じく面状部材1の上に敷設される。
【0048】
(固化材充填固化工程)
次に、格子状に敷設された袋体2の内部にモルタル(流動性固化材)を充填し、固化させる。供給口金具10から基端側袋体6の内部にモルタルを供給する。供給されたモルタルは、基端側袋体6から複数の第2袋体4へと充填されていくとともに、基端側袋体5から複数の第1袋体3へと充填されていく。袋体2(第1袋体3、第2袋体4、基端側袋体5、および基端側袋体6)の内部に充填されたモルタルが固化すると、面状部材1の上に格子状の剛性補強体が形成される。
【0049】
(覆土工程)
モルタルが充填され固化した袋体2からなる格子状の剛性補強体が形成されると、剛性補強体および面状部材1の上に砕石を投入し所定の仕上がり厚さが得られるよう砕石を均一に敷均す。その後、転圧機械により締固める。次いで、加熱されたアスファルト混合物を敷均し、締固める。この場合、本実施形態の表層処理構造101は、格子状に形成された剛性補強体の上に敷設される砕石層をさらに備える。
【0050】
上記工程を経て、仮設道路が完成する。
【0051】
仮設道路を元の田に戻すときは、アスファルト、および砕石(砕石層)を備える表層処理構造101(砕石(砕石層)、内部にモルタルが充填固化された袋体2(=格子状の剛性補強体)、および面状部材1)を撤去する。面状部材1により、田の土と砕石とが分離されているため、砕石の撤去を行いやすい。
【0052】
図2は、本発明の第2実施形態に係る地盤の表層処理構造102を示す平面図である。第2実施形態と第1実施形態との相違点は次のとおりである。なお、第2実施形態の表層処理構造102に関し、第1実施形態の表層処理構造101を構成する部材と同様の部材について同一の符号を付している(後述する他の実施形態についても同様)。
【0053】
第1実施形態の表層処理構造101では、複数の第1袋体3と複数の第2袋体4とで形成される格子の形状は正方形とされている。これに対して、第2実施形態の表層処理構造102では、複数の第1袋体3と複数の第2袋体4とで形成される格子の形状は長方形とされている。格子間隔は、1m×1.5m、1m×2mなどである。
【0054】
図3は、本発明の第3実施形態に係る地盤の表層処理構造103を示す平面図である。第3実施形態と第1実施形態との相違点は次のとおりである。
【0055】
第1実施形態の表層処理構造101では、第1方向Xの第1袋体3と第2方向Yの第2袋体4とが重なり合って交差する格子点Pに関し、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向においても第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体1つ毎、交互に上下逆となるように、第1袋体3と第2袋体4とが格子状に敷設されている。これに対して、第3実施形態の表層処理構造103では、第1方向Xの第1袋体3と第2方向Yの第2袋体4とが重なり合って交差する格子点Pに関し、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向においても第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体2つ毎、交互に上下逆となるように、第1袋体3と第2袋体4とが格子状に敷設されている。
【0056】
なお、第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体3つ毎、袋体4つ毎、・・・交互に上下逆となるように、第1袋体3と第2袋体4とが格子状に敷設されてもよい。
【0057】
図4は、本発明の第4実施形態に係る地盤の表層処理構造104を示す平面図である。第4実施形態と第1実施形態との相違点は次のとおりである。
【0058】
第4実施形態の表層処理構造104では、複数の格子点Pのうち図中左上の最も端の格子点Pでは、第1袋体3の上に第2袋体4が重ねられている。第1方向Xにおいてこの格子点Pの1つ隣(右)の格子点P、および2つ隣(右)の格子点Pでは、第2袋体4の上に第1袋体3が重ねられている。そして、第1方向Xにおいて3つ隣(右)の格子点Pでは、第1袋体3の上に第2袋体4が重ねられている。同様に、第2方向Yにおいて図中左上の最も端の格子点Pの1つ隣(下)の格子点P、および2つ隣(下)の格子点Pでは、第2袋体4の上に第1袋体3が重ねられている。そして、第2方向Yにおいて3つ隣(下)の格子点Pでは、第1袋体3の上に第2袋体4が重ねられている。
【0059】
このように、第1袋体3と第2袋体4とを編むようにして、第1袋体3と第2袋体4とを格子状に敷設してもよい。なお、図示を省略するが、第1袋体3と第2袋体4とを編むようにして、第1袋体3と第2袋体4とを格子状に敷設するときの、第1袋体3と第2袋体4との格子点Pにおける重ね合わせの順序は、
図1~
図4に示すものに限定されるものではなく様々な順序がある。
【0060】
図6は、従来の地盤の表層処理構造50を示す平面図である。
【0061】
従来の表層処理構造50では、第1方向Xに並ぶ格子点Pにおいて、第1方向Xに延在する第1袋体3の常に上側に第2方向Yに延在する第2袋体4が重ねられている。
【0062】
第1袋体3と第2袋体4とが重なり合う格子点Pにおいて下側に位置する袋体部分は、モルタル等の流動性固化材が充填されても、上側の袋体部分のように山形状とはならないので(
図5参照)、格子点Pにおいて上側の袋体部分ほどの余剰長さを見込む必要はない。
図1~
図4に示す実施形態のように、第1袋体3と第2袋体4とを編むようにして袋体2を格子状に敷設すると、袋体同士が重なり合う格子点Pに関し、第1方向Xに延在する第1袋体3の上側に第2方向Yに延在する第2袋体4が位置したり、第1方向Xに延在する第1袋体3の下側に第2方向Yに延在する第2袋体4が位置したりする。そのため、本実施形態によると、例えば、第1方向Xに並ぶ格子点Pにおいて、第1方向Xに延在する第1袋体3の常に上側に第2方向Yに延在する第2袋体4が位置する
図6に示す従来の表層処理構造50に比べて、不確定要素が大きい(=正確に見込むことが難しい)袋体(第2袋体4)の余剰長さを長く見込んでおく必要がない。その結果、袋体(第2袋体4)を従来よりも短くすることができ、工事業者等は、現場施工時に袋体の長さ管理を行いやすくなる。
【0063】
また、袋体同士が重なり合う格子点Pに関し、第1方向Xに延在する第1袋体3の上側に第2方向Yに延在する第2袋体4が位置したり、第1方向Xに延在する第1袋体3の下側に第2方向Yに延在する第2袋体4が位置したりすると、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向の袋体2(第1袋体3、第2袋体4)においても、いくつかの格子点Pにおいて上側から他方の袋体で押圧されることとなるので袋体2(第1袋体3、第2袋体4)はずれにくくなる。袋体がずれにくいと格子点Pもずれにくい。
【0064】
また、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向の袋体2(第1袋体3、第2袋体4)においても、いくつかの格子点Pにおいて上側から袋体で押圧されると、モルタル等の流動性固化材が充填されて形成された格子状の剛性補強体は従来よりも一体的となり、たわみにくくなる。なお、
図6に示す従来の表層処理構造50では、第1袋体3の上に第2袋体4が置かれているだけであるので一体性に乏しい。
【0065】
図1~
図3に示す実施形態のように、第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向においても第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が交互に上下逆となるように第1袋体3と第2袋体4とを格子状に敷設すると、袋体の長さ管理を行いやすい、および袋体の格子点Pがずれにくい、という効果がより高まる。
【0066】
図1、
図2に示す実施形態のように、第1袋体3と第2袋体4との重なり順序が袋体1つ毎、交互に上下逆となるように第1袋体3と第2袋体4とを格子状に敷設すると、袋体の格子点Pがずれにくい、という効果がさらに高まる。また、モルタル等の流動性固化材が充填されて形成された格子状の剛性補強体の一体性がより高まり、たわみにくくなる。
【0067】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0068】
図5に示すような基端側袋体5、6を設けて、基端側袋体5から複数の第1袋体3へと流動性固化材を充填したり、基端側袋体6から複数の第2袋体4へと流動性固化材を充填したりすることに代えて、複数の第1袋体3や複数の第2袋体4へ1本ずつ流動性固化材を充填するようにしてもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:面状部材
2:袋体
3:第1袋体
4:第2袋体
101~104:表層処理構造
P:格子点
X:第1方向
Y:第2方向