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  • 特許-減圧弁及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】減圧弁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/16 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
G05D16/16 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020175761
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067189
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根岸 功
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 勝之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 郁裕
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-330171(JP,A)
【文献】特開2017-215025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部又は前記環状部の少なくとも一方の弁体側に配置され、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、
前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結しており、
前記弁座は、前記環状部の前記弁体から離隔する側を閉塞する閉塞板部を備え、
前記内周部は、前記閉塞板部と一体に成形され、
前記連結部は、前記閉塞板部前記環状部の前記弁体から離隔する側で溶着により固着されることで構成されていることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部又は前記環状部の少なくとも一方の弁体側に配置され、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記環状部には、前記弁体から離隔する側を閉塞する天部が一体に形成されており、
前記環状部の前記弁体側の端部には、前記環状部とは別部材で構成された前記脱落防止部が配置されていることを特徴とする減圧弁。
【請求項3】
請求項2記載の減圧弁であって、
前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、
前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結していることを特徴とする減圧弁。
【請求項4】
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒形状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁の製造方法であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な弾性体からなる環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部の弁体側に設けられ、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、
前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結しており、
前記弁座は、前記環状部の前記弁体から離隔する側を閉塞する閉塞板部を備え、
前記内周部は、前記閉塞板部と一体に成形され、
前記連結部は、前記閉塞板部が前記環状部の前記弁体から離隔する側で溶着により固着されることで構成されており、
前記環状部と前記内周部とを前記連結部で連結させる連結工程を有することを特徴とする減圧弁の製造方法。
【請求項5】
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒形状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁の製造方法であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な弾性体からなる環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部の弁体側に設けられ、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記環状部には、前記弁体から離隔する側を閉塞する天部が一体に形成されており、
前記環状部の前記弁体側の端部には、前記環状部とは別部材で構成された前記脱落防止部が配置されており、
前記環状部と前記内周部とを前記連結部で連結させる連結工程を有することを特徴とする減圧弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下流側の圧力を調整可能な減圧弁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下流側の圧力が上昇すると開度を減少させて下流側の圧力を減少させる減圧弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-320723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、弁座は支持金具で支持されている。特許文献1のものでは、弁座部分がゴム製で、支持金具がプレス加工により形成された金属製の板状部材であり、ゴム部分が板状部材に焼付けにより一体化されている。しかしながら、弁座部材をゴム焼付品にすると、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かり、製造コストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、従来よりも低廉に製造することができる減圧弁及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の減圧弁(例えば、実施形態の減圧弁1。以下同一。)は、
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジング(例えば、実施形態のハウジング2。以下同一。)と、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒状の弁体(例えば、実施形態の弁体3。以下同一。)と、
前記ハウジング内に固定された弁座(例えば、実施形態の弁座4。以下同一。)と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材(例えば、実施形態の付勢部材5。以下同一。)と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な弾性体からなる環状の弾性部材(例えば、実施形態のOリング42。以下同一。)と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部(例えば、実施形態の内環部41b。以下同一。)と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部(例えば、実施形態の内周部43b。以下同一。)と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部(例えば、実施形態の内環部41bに超音波溶着される閉塞板部43a、図3の内環部41bの天部41eで内周部43bの挿通部をCリング43dで固定する構造部分。以下同一。)と、
前記内周部の弁体側に設けられ、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部(例えば、実施形態の第1脱落防止部43c、内環部41bの第2脱落防止部41f、環状支持部73。以下同一。)と、
を備え、
前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結しており、
前記弁座は、前記環状部の前記弁体から離隔する側を閉塞する閉塞板部(例えば、実施形態の閉塞板部43a。以下同一。)を備え、
前記内周部は、前記閉塞板部と一体に成形され、
前記連結部は、前記閉塞板部が前記環状部の前記弁体から離隔する側で溶着により固着されることで構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、環状の弾性部材を別体で構成された環状部と内周部とで挟み、且つ環状部と内周部とが連結部によって連結されているため、弁座をゴム焼付品にする必要がなく、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かることもなく、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結している。
【0009】
ここで、比較例として、環状部と内周部を接続部材(例えば、実施形態の閉塞板部。以下同一。)を介して一体成型し、内周部の下端に脱落防止部を超音波溶着した場合、超音波溶着による脱落防止部や内周部の弁体側の歪みの影響が弾性部材の弁体3の当接部分に出易くなってしまい、最悪の場合、弁体による流体の流れを阻止することができなくなってしまう虞がある。
【0010】
この場合、上述した本発明のように、脱落防止部を一体に備える内周部と環状部とが弁体と離隔する側で固定されていれば、溶着による歪みの影響が弾性部材の弁体との当接部分に出ることがなく、下流側の圧力が所定値以上に上昇した場合に、弁体が弾性部材に適切に当接して、ハウジング内を流れる流体の流れを適切に遮断することができる。
【0011】
また、本発明においては、
前記弁座は、前記環状部の前記弁体から離隔する側を閉塞する閉塞板部(例えば、実施形態の閉塞板部43a。以下同一。)を備え、
前記内周部は、前記閉塞板部と一体に成形され、
前記連結部は、前記閉塞板部前記環状部の前記弁体から離隔する側で溶着により固着されることで構成されている
【0012】
また、本発明の減圧弁は、
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部又は前記環状部の少なくとも一方の弁体側に配置され、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記環状部には、前記弁体から離隔する側を閉塞する天部が一体に形成されており、
前記環状部の前記弁体側の端部には、前記環状部とは別部材で構成された脱落防止部(例えば、実施形態の第2脱落防止部。以下同一。)が配置されていることを特徴とする
【0013】
本発明によれば、環状部側の脱落防止部が邪魔することなく、弾性部材を環状部の中に弁体側から容易に挿入することができ、減圧弁を組立て易くすることができる。
【0014】
また、本発明の減圧弁の製造方法は、
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒形状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁の製造方法であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な弾性体からなる環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部の弁体側に設けられ、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記脱落防止部は少なくとも前記内周部に一体形成されており、
前記連結部は、前記環状部と前記内周部とを、前記弁体から離隔する側で連結しており、
前記弁座は、前記環状部の前記弁体から離隔する側を閉塞する閉塞板部を備え、
前記内周部は、前記閉塞板部と一体に成形され、
前記閉塞板部は前記環状部の前記弁体から離隔する側で溶着により固着されており、
前記環状部と前記内周部とを前記連結部で連結させる連結工程を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、環状の弾性部材を別体で構成された環状部と内周部とで挟み、且つ環状部と内周部とが連結部によって連結されているため、弁座をゴム焼付品にする必要がなく、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かることもなく、製造コストを低廉に抑えることができる。
また、本発明の減圧弁の製造方法は、
流入口と流出口とを有して、前記流入口から流入した流体が内部を通って前記流出口から流出可能なハウジングと、
前記ハウジング内に移動自在に収容された筒状の弁体と、
前記ハウジング内に固定された弁座と、
前記弁体を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流出口の流体の圧力が高まることにより前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁座に当接して前記ハウジング内の流体の流れを遮断可能な減圧弁であって、
前記弁座は、
前記弁体と当接可能な環状の弾性部材と、
前記弾性部材の外周を覆う環状部と、
前記環状部とは別体で構成され、前記弾性部材の内周に配置される内周部と、
前記環状部と前記内周部とを連結させる連結部と、
前記内周部又は前記環状部の少なくとも一方の弁体側に配置され、前記環状部から前記弾性部材が脱落することを阻止する脱落防止部と、
を備え、
前記環状部には、前記弁体から離隔する側を閉塞する天部が一体に形成されており、
前記環状部の前記弁体側の端部には、前記環状部とは別部材で構成された脱落防止部が配置されており、
前記環状部と前記内周部とを前記連結部で連結させる連結工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、環状の弾性部材を別体で構成された環状部と内周部とで挟み、且つ環状部と内周部とが連結部によって連結されているため、弁座をゴム焼付品にする必要がなく、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かることもなく、製造コストを低廉に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の減圧弁の実施形態を示す説明図。
図2】本実施形態の減圧弁の閉弁状態を示す説明図。
図3】本発明の減圧弁の他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態の減圧弁1は、合成樹脂製で円筒形状のハウジング2と、ハウジング2内に中心軸線方向に摺動自在に配置された合成樹脂製で円筒形状の弁体3と、弁体3が接触することで弁体3との間を液密に閉塞可能な弁座4と、弁体3を弁座4から離隔する方向に付勢する付勢部材5(例えば、コイルばね。)と、を備える。
【0018】
ハウジング2は、天部が開口し底部に貫通孔21aを有する有底筒状のハウジング本体21と、ハウジング本体21の天部の開口に取り付けられて、この開口からハウジング2内に収容された弁座4が脱落するのを防ぐキャップ22とで構成されている。キャップ22には、開口が形成されていて、この開口を通じて流体がキャップ22の図中上下に自由に移動できる。ハウジング本体21の内周面には、底部側から小径部21bと、大経部21cと、が形成され、小径部21bと大経部21cとの間には、段部21dが形成されている。キャップ22は、ハウジング本体21に超音波溶着されている。
【0019】
段部21dには、付勢部材5の一端が当接するバネ座6が当接されている。バネ座6の図面上方にはドーナツ形状のホルダ7が配置されている。
【0020】
弁体3は、断面円形状の筒状部31と、筒状部31の中央部分から径方向外側に向かって張り出す張出部32と、張出部32の外周縁に設けられた嵌合溝に嵌め込まれ、且つハウジング2の小径部21bと張出部32との間を液密に閉塞する弾性体で環状の封止部材32aと、で構成されている。
【0021】
弁座4は、合成樹脂製の弁座枠体41と、弾性部材としてのOリング42と、合成樹脂製の固定部材43と、で構成される。弁座枠体41は、環状の外環部41aと、外環部41aの内側に間隔を存して配置された内環部41bと、外環部41aと内環部41bとを間隔を存して接続するブリッジ部41cと、で構成されている。
【0022】
段部21dとキャップ22との間には、段部21d側からバネ座6、ホルダ7、外環部41aの順に配置され、段部21dとキャップ22との間に挟まれて固定されている。
【0023】
固定部材43は、内環部41bの上縁を閉塞する閉塞板部43aと、閉塞板部43aの中心から垂下し、Oリング42の中心の孔を通過して伸びる内周部43bと、内周部43bの下端に設けられ、Oリング42の内環部41bからの脱落を阻止するように内周部43bよりも拡径された第1脱落防止部43cと、を備える。第1脱落防止部43cは、Oリング42を内周部43に装着し易くすべく図面下方側に向かって先細り形状となっている。
【0024】
閉塞板部43aは、内環部41bの上縁に超音波溶着されている(連結工程)。この閉塞板部43a及び閉塞板部43aが内環部41bに超音波溶着されている構成が本実施形態における連結部に相当する。なお、閉塞板部43aと内環部41bとを連結する連結工程では超音波溶着に限らず、例えばレーザ溶着や振動溶着でもよい。また、溶着以外の他の連結方法、例えば、溶接、接着、螺合、挟み込みであってもよい。
【0025】
Oリング42は、内環部41bの内周面に接触して沿うように配置されている。内環部41bの下端には、Oリング42の脱落を阻止すべく径方向内側に向かって突出した第2脱落防止部41fが設けられている。
【0026】
次に、本実施形態の減圧弁1の作動について説明する。本実施形態の減圧弁1は、図1に一点鎖線で示すように図面上方から下方に向かって減圧弁1内を流体(例えば、冷却水やオイルなど)が通過する。弁体3には下流側の圧力によって図面上方へ押し上げられる力が作用する。そして、図面下方の下流側の圧力が高まると、弁体3が付勢部材5の付勢力に抗して図面上方へ移動し、弁体3と弁座4との間の大きさに応じた圧力損失が生じ、図面下方側の圧力が低下して、減圧弁1内を流れる流体の流量が減少する。弁体3は、図面下方の下流側の圧力によって押し上げられる力と、付勢部材5の押し下げる力とが釣り合う位置で静止する。なお、図面下方の圧力が所定値を超えると、図2に示すように、弁体3の上端縁がOリング42に当接して、減圧弁1内の流体の流れが阻止される。
【0027】
本実施形態の減圧弁1によれば、環状の弾性部材としてのOリング42を別体で構成された環状部としての内環部41bと内周部43bとで挟み、且つ内環部41bと内周部43bとが閉塞板部43aを介して連結されているため、弁座4をゴム焼付品にする必要がなく、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かることもなく、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0028】
また、第1脱落防止部43cを備える閉塞板部43aと内環部41bの上縁とが溶着されている。このため、溶着による内環部41bや閉塞板部43aの歪みの影響が弾性部材としてのOリング42の弁体3との当接部分に出難くすることができる。比較例として、内環部41bと閉塞板部43aと内周部43bを一体に成形し、内周部43bの下端に第1脱落防止部43cを溶着した場合、超音波溶着による第1脱落防止部43cや内周部43bの弁体3側の歪みの影響が弾性部材としてのOリング42の弁体3との当接部分に出易くなってしまい、弁体3による流体の流れを阻止することができなくなってしまう虞がある。ここで、一体に成形とは、樹脂を型に流して一緒に成形されることと定義する。
【0029】
なお、本実施形態においては、ハウジング2、弁体3、弁座枠体41、固定部材43、バネ座6、ホルダ7、が合成樹脂製のものを説明しているが、本発明の減圧弁は合成樹脂製に限らず、他の材料、例えば金属や鋳物などを用いても同様に本発明の作用効果を奏することができる。
【0030】
また、本実施形態においては、脱落防止部として、内周部43bに設けられた第1脱落防止部43cと内環部41bに設けられた第2脱落防止部41fとの両者を備えるものを説明した。本実施形態のように、弾性部材が断面円形のOリング42の場合には、内周側と外周側の両方に脱落防止(43c、41f)を設けることで弁体3がOリング42に当接した時のシール性を確保しつつ、Oリング42の確実な脱落防止が可能となる。また、両脱落防止(43c、41f)のOリング42を押さえる面がテーパ形状となっている。このため、Oリング42の一層確実な脱落防止が可能となる。しかしながら、本発明の脱落防止部は、弾性部材は必ずしも断面円形でなくてもよく、例えば断面四角形上であってもよい。この場合には、第1脱落防止部43cと第2脱落防止部41fの少なくとも一方が設けられていればよい。これによっても、製造コストを低廉に抑えることができるという本発明の作用効果を奏することができる。
【0031】
図3は、本発明の他の実施形態の減圧弁1を示している。図3の実施形態の減圧弁1は、図1のものと比較して、弁座4の構成が異なる以外は同一の構成であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
図3の減圧弁1の弁座4には、内環部41bの図中上部を閉塞するように天部41eが設けられており、その天部41eには、貫通孔が設けられている。図3の内周部43bは、内環部41bの天部41eの貫通孔に挿通される挿通部を備え、天部41eよりも上方に突き出した挿通部の上端部分に設けられた環状溝にCリング43dを嵌合させて、内周部43bを内環部41bの天部に連結している(連結工程)。図3の実施形態においては、内環部41bの天部41e、内周部43bの挿通部、Cリング43dが、本発明の連結部に相当する。
【0033】
ホルダ7は、バネ座6と外環部41aとに挟まれて固定される環状板部71と、環状板部71から弁体3の図面上下方向の移動を妨げることのないようにOリング42に向かって延びる複数の脚部72と、脚部72の先端に連接し、Oリング42の外周縁を押さえてOリング42が内環部41bから脱落することを阻止する環状支持部73と、が設けられている。この環状支持部73が図1の実施形態の内環部41bの下端に設けられた第2脱落防止部41fの役割を果たしている。図3の実施形態の減圧弁1においては、弁座4とホルダ7とで本発明の弁座を構成している。
【0034】
図3の他の実施形態の減圧弁1によっても、図1の減圧弁1と同様に、環状の弾性部材としてのOリング42を別体で構成された環状部としての内環部41bと内周部43bとで挟み、且つ内環部41bと内周部43bとが閉塞板部43aを介して連結されているため、弁座4をゴム焼付品にする必要がなく、接着剤の塗布、ゴム焼付け、バリ処理と多大な工数が掛かることもなく、製造コストを低廉に抑えることができる。
【0035】
ここで、比較例として、内環部41bと閉塞板部43aと内周部43bを一体成形し、内周部43bの下端に第1脱落防止部43cを超音波溶着した場合、超音波溶着による第1脱落防止部43cや内周部43bの弁体3側の歪みの影響が弾性部材としてのOリング42の弁体3との当接部分に出易くなってしまい、最悪の場合、弁体3による流体の流れを阻止することができなくなってしまう虞がある。しかしながら、図3の他の実施形態においては、第1脱落防止部43cを備える内周部43bと閉塞板部43aとがCリング43dで固定されている。このため、超音波溶着による歪みの影響が弾性部材としてのOリング42の弁体3との当接部分に出ることがなく、弁体3がOリング42に適切に当接して、流体の流れを遮断することもできる。
【0036】
ここで、内環部41bと天部41eとを一体成形する場合、内環部41bに第2脱落防止部41fも一体成形してしまうと、内環部41b内に弾性部材としてのOリング42を挿入し難くなってしまう。そこで、図3の実施形態においては、ホルダ7の環状板部71からOリング42に向かって延びる脚部72を介して環状支持部73で第2脱落防止部41fの機能を果たしている。これにより、内環部41bと脱落防止部としての環状支持部73とは別部材となり、Oリング42を容易に内環部41b内に挿入することができる。
【0037】
なお、図3の実施形態の説明においては、閉塞板部43aと内周部43bとをCリングで固定したものを説明したが、本発明の減圧弁においては、閉塞板部43aと内周部43bとを溶着によって固定させてもよい。これによっても、同様に、製造コストを抑え、弁体3と弾性部材としてのOリング42とを適切に当接させて閉弁できるという本発明の作用効果を得ることができる。
【0038】
また、図3の実施形態においては、ハウジング2、弁体3、弁座枠体41、固定部材43、バネ座6、ホルダ7、が合成樹脂製のものを説明しているが、本発明の減圧弁は合成樹脂製に限らず、他の材料、例えば金属や鋳物などを用いても同様に本発明の作用効果を奏することができる。
【0039】
また、図3の実施形態においては、脱落防止部として、内周部43bに設けられた第1脱落防止部43cと環状支持部73との両者を備えるものを説明した。しかしながら、本発明の脱落防止部は、第1脱落防止部43cと環状支持部73の少なくとも一方が設けられていればよい。これによっても、製造コストを低廉に抑えることができるという本発明の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 減圧弁
2 ハウジング
21 ハウジング本体
21a 貫通孔
21b 小径部
21c 大経部
21d 段部
22 キャップ
3 弁体
31 筒状部
32 張出部
32a 封止部材
4 弁座
41 弁座枠体
41a 外環部
41b 内環部
41c ブリッジ部
41e 天部
41f 第2脱落防止部
42 Oリング
43 固定部材
43a 閉塞板部
43b 内周部
43c 第1脱落防止部
43d Cリング
5 付勢部材
6 バネ座
7 ホルダ
71 環状板部
72 脚部
73 環状支持部
図1
図2
図3