(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、および移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20241021BHJP
H04N 25/621 20230101ALI20241021BHJP
H04N 25/703 20230101ALI20241021BHJP
H04N 25/77 20230101ALI20241021BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N25/621
H04N25/703
H04N25/77
(21)【出願番号】P 2020180629
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 大地
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-028105(JP,A)
【文献】特表2020-517102(JP,A)
【文献】特開2019-165136(JP,A)
【文献】特開2008-015215(JP,A)
【文献】特開2010-272666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/621
H04N 25/703
H04N 25/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、
浮遊拡散領域を備え、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低
く、
前記第2半導体領域で生成された信号電荷は前記第3半導体領域を介して前記浮遊拡散領域に転送されることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備え、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低く、
前記第1転送ゲートおよび前記第2転送ゲートは縦型転送ゲートであることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備え、
平面視で、前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に重なるように配置されており、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域で共有されることを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2の深さに配置され、前記第3半導体領域と分離された前記第1導電型の第4半導体領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備え、
平面視で、前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域に重なるように配置され、
平面視で、前記第4半導体領域は、前記第2半導体領域に重なるように配置され
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備え、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低く、
前記第1半導体領域で生成された信号電荷に基づく信号および前記第2半導体領域で生成された信号電荷に基づく信号を用いて像面位相差式の焦点検出が行われることを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
浮遊拡散領域を含み、
前記第2半導体領域で生成された信号電荷は前記第3半導体領域を介して前記浮遊拡散領域に転送されることを特徴とする請求項
2乃至6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1半導体領域と前記第3半導体領域とは平面視で重なって配置されており、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の間に第2導電型の半導体領域が配され、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間に前記第1導電型の半導体領域が配されることを特徴とする請求項
7に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第1半導体領域と前記第3半導体領域とは平面視で重なって配置されており、
前記第1導電型のキャリアに対する前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の間のポテンシャルバリアの高さは、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間のポテンシャルバリアよりも高いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第3転送ゲートは、平面型転送ゲートであることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間には、前記第1半導体領域および前記第3半導体領域よりも不純物濃度の低い、前記第1導電型の第5半導体領域が配置されていることを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記第2面が光入射面であることを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第1転送ゲートを制御することにより、前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷を前記第3半導体領域に転送することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さに配置された、前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、
浮遊拡散領域と、
前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、
前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、
前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、
通過した光が前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備える光電変換装置の駆動方法であって、
前記第1半導体領域で生成された信号電荷は前記第3半導体領域を介して前記浮遊拡散領域に転送され、
前記第1半導体領域に蓄積された信号電荷および前記第2半導体領域に蓄積された信号電荷が所定の値以下の場合に、第3転送ゲートをオンして前記第3半導体領域から前記浮遊拡散領域に信号電荷を転送した後に、前記第1半導体領域の信号電荷と前記第2半導体領域の信号電荷とをそれぞれ転送することを特徴とする駆動方法。
【請求項15】
前記第1転送ゲートをオンする期間と、前記第3転送ゲートをオンする期間とを一部重ねることを特徴とする請求項14に記載の駆動方法。
【請求項16】
前記第1半導体領域に蓄積された信号電荷および前記第2半導体領域に蓄積された信号電荷の少なくとも一方が前記所定の値を超える場合に、前記第1転送ゲートをオンし、前記第2転送ゲートをオンしてリセットし、その後、前記第3転送ゲートをオンすることを特徴とする請求項14に記載の駆動方法。
【請求項17】
前記第1転送ゲートおよび前記第2転送ゲートは、縦型転送ゲートであることを特徴とする請求項14乃至
16のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項18】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を処理する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項19】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づき、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて移動体を制御する制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換システム、および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等におけるAF(Auto Focus)方式の一手法として、位相差方式によるAFを行う光電変換装置が知られている。特許文献1には、位相差方式によるAFを行う光電変換装置として、1つのマイクロレンズに対して複数の光電変換を配置する構成が開示されている。また、特許文献1には、半導体基板の浅部に1つの撮像用電荷蓄積層を配置し、半導体基板の深部に撮像用電荷蓄積層と重なるように複数の焦点検出用電荷蓄積層を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、撮像用の電荷蓄積層と焦点検出用の電荷蓄積層とを完全に分離している。したがって、焦点検出用の電荷蓄積層において飽和電荷量を超える電荷が生成された場合に、画素間でクロストークが発生し、焦点検出精度が低下する可能性がある。また、焦点検出用電荷蓄積層で蓄積される信号電荷が飽和電荷量を超えると飽和電荷量を超えた分に関しては信号として検出できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一形態に係る光電変換装置は、第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、前記半導体基板において、前記第1の深さに配置され、前記第1半導体領域と分離された前記第1導電型の第2半導体領域と、前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、通過した光が前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、および前記第3半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備え、前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷は前記第3半導体領域を介して読み出され、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第3半導体領域の不純物濃度よりも低い。
【0006】
一形態に係る光電変換装置の駆動方法は、第1面と前記第1面に対向する第2面とを有する半導体基板と、前記半導体基板において、前記第1面から第1の深さに配置され、信号電荷と同じキャリアを多数キャリアとする第1導電型の第1半導体領域と、前記半導体基板において、前記第1の深さに配置された、前記第1導電型の第2半導体領域と、前記半導体基板において、前記第1の深さよりも前記第1面からの深さが浅い第2の深さに配置された、前記第1導電型の第3半導体領域と、浮遊拡散領域と、前記第1半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第1転送ゲートと、前記第2半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第2転送ゲートと、前記第3半導体領域で蓄積された信号電荷の転送を制御する第3転送ゲートと、通過した光が前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に入射するように配置されたマイクロレンズと、を備える光電変換装置の駆動方法であって、前記第1半導体領域に蓄積された信号電荷および前記第2半導体領域に蓄積された信号電荷が所定の値以下の場合に、第3転送ゲートをオンして前記第3半導体領域から前記浮遊拡散領域に信号電荷を転送した後に、前記第1半導体領域の信号電荷と前記第2半導体領域の信号電荷とをそれぞれ転送する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る光電変換装置によれば、画素間のクロストークを低減しながら、飽和電荷量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に関わる光電変換装置の概略構成を示すブロック図
【
図2】実施形態1に関わる光電変換装置の単位セルの等価回路図
【
図3】実施形態1に関わる光電変換装置の単位セルの平面図
【
図4】実施形態1に関わる光電変換装置を示す断面図
【
図5】実施形態1に関わる光電変換装置を示す断面図
【
図6】実施形態1に関わる光電変換装置の読出し動作時のクロックタイミングチャート
【
図7】実施形態1に関わる光電変換装置のポテンシャル図
【
図8】実施形態1に関わる光電変換装置のポテンシャル図
【
図9】実施形態1に関わる光電変換装置の読出し動作時のクロックタイミングチャート
【
図10】実施形態1に関わる光電変換装置のポテンシャル図
【
図11】実施形態1に関わる光電変換装置のポテンシャル図
【
図12】実施形態1に関わる他の例における光電変換装置を示す断面図
【
図13】実施形態2に関わる光電変換装置の単位セルの平面図
【
図14】実施形態2に関わる光電変換装置を示す断面図
【
図15】実施形態2に関わる光電変換装置の単位セルの等価回路図
【
図16】実施形態3に関わる光電変換装置の単位セルの平面図
【
図17】実施形態3に関わる光電変換装置を示す断面図
【
図18】実施形態4に関わる光電変換装置を示す断面図
【
図19】実施形態5に関わる光電変換システムのブロック図
【
図20】実施形態6に関わる実施形態の光電変換システムのブロック図
【
図21】実施形態6に関わる実施形態の光電変換システムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。以下の説明において、同一の構成については同一の番号を付して説明を省略することがある。
【0010】
以下の説明において、信号電荷と同じ導電型のキャリアを多数キャリアとする第1導電型の半導体領域とはN型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはP型半導体領域である。なお、信号電荷がホールである場合でも本発明は成立する。この場合は、信号電荷と同じ導電型のキャリアを多数キャリアとする第1導電型の半導体領域はP型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはN型半導体領域である。
【0011】
本明細書において、単に「不純物濃度」という用語が使われた場合、逆導電型の不純物によって補償された正味の不純物濃度を意味している。つまり、「不純物濃度」とは、NET濃度を指す。P型の添加不純物濃度がN型の添加不純物濃度より高い領域はP型半導体領域である。反対に、N型の添加不純物濃度がP型の添加不純物濃度より高い領域はN型半導体領域である。
【0012】
本明細書において、「平面視」とは、後述する半導体基板の光入射面に対して垂直な方向から視ることを指す。また、断面とは、半導体基板の光入射面と垂直な方向における面を指す。なお、微視的に見て半導体基板の光入射面が粗面である場合は、巨視的に見たときの半導体基板の光入射面を基準として平面視を定義する。
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る光電変換装置について
図1から
図11を用いて説明する。
図1は、本実施形態の光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態の光電変換装置が有する画素の等価回路図である。
図3は、本実施形態の光電変換装置が有する1つの画素を拡大して示す概略平面図である。
図4は、
図3のA-A′線における概略断面図である。
図5は、
図3のB-B′線における概略断面図である。
図6は、読み出し動作時のタイミングチャートである。
図6は、生成される信号電荷が所定の値以下の場合の図である。所定の値とは、例えば、光電変換素子132a、132bの飽和電荷量である。
図7および
図8は、
図6における光電変換装置の信号電荷の蓄積時及び信号電荷の転送時の各構成におけるポテンシャル図である。
図9は、所定の値を超える場合での読み出し動作時のタイミングチャートである。
図9は、例えば、高照度下での信号の読み出しである。
図10および
図11は、
図9における光電変換装置の信号電荷の蓄積時及び信号電荷の転送時の各構成におけるポテンシャル図である。
【0014】
本実施形態に係る光電変換装置100は、
図1に示すように、画素領域10と、垂直走査回路20と、読み出し回路30と、水平走査回路40と、制御回路50と、出力回路60とを有している。
【0015】
画素領域10には、複数行及び複数列に渡ってマトリクス状に配された複数の画素12が設けられている。画素領域10の画素アレイの各行には、行方向(
図1において横方向)に延在して、制御信号線14が配されている。制御信号線14は、行方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。また、画素領域10の画素アレイの各列には、列方向(
図1において縦方向)に延在して、垂直出力線16が配されている。垂直出力線16は、列方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。
【0016】
各行の制御信号線14は、垂直走査回路20に接続されている。垂直走査回路20は、画素12から画素信号を読み出す際に画素12内の読み出し回路を駆動するための制御信号を、制御信号線14を介して画素12に供給する回路部である。各列の垂直出力線16の一端は、読み出し回路30に接続されている。画素12から読み出された画素信号は、垂直出力線16を介して読み出し回路30に入力される。読み出し回路30は、画素12から読み出された画素信号に対して所定の信号処理、例えば増幅処理やAD変換処理等の信号処理を実施する回路部である。読み出し回路30は、差動増幅回路、サンプル・ホールド回路、AD変換回路等を含み得る。
【0017】
水平走査回路40は、読み出し回路30において処理された画素信号を列毎に順次、出力回路60に転送するための制御信号を、読み出し回路30に供給する回路部である。制御回路50は、垂直走査回路20、読み出し回路30及び水平走査回路40の動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。出力回路60は、バッファアンプ、差動増幅器などから構成され、読み出し回路30から読み出された画素信号を光電変換装置100の外部の信号処理部に出力するための回路部である。
【0018】
画素領域10や周辺回路領域の各構成は、積層された複数の半導体基板に分けて配されてもよい。例えば、第1の半導体基板と第2半導体基板とが積層されており、第1半導体基板には画素領域10が配され、第2の半導体基板には、垂直走査回路20、制御回路50、読み出し回路30、水平走査回路40、及び出力回路60が配されていてもよい。
【0019】
図2に、本実施形態に係る光電変換装置の画素12の等価回路図を示す。画素12は、光電変換素子121と転送トランジスタTxと、光電変換素子132a、132bと、転送トランジスタTx-A、Tx-Bと、リセットトランジスタRESと、増幅トランジスタSFと、選択トランジスタSELとを含む。光電変換素子121、132a、132bは、例えばフォトダイオードであり、アノードが接地電圧線に接続され、カソードがそれぞれ転送トランジスタTx、Tx-A、Tx-Bのソースに接続されている。転送トランジスタTxのドレインは、リセットトランジスタRESのソース及び増幅トランジスタSFのゲートに接続されている。転送トランジスタTxのドレイン、リセットトランジスタRESのソース及び増幅トランジスタSFのゲートの接続ノードは、いわゆるフローティングディフュージョン(FD)であり、このノードが含む容量成分からなる電荷電圧変換部を構成する。転送トランジスタTx-A、Tx-Bのドレインは、光電変換素子121のカソードに接続されている。リセットトランジスタRESのドレイン及び増幅トランジスタSFのドレインは、電源電圧線(Vdd)に接続されている。増幅トランジスタSFのソースは、選択トランジスタSELドレインに接続されている。選択トランジスタSELのソースは、垂直出力線16に接続されている。垂直出力線16の他端には、電流源18が接続されている。なお、画素12は、選択トランジスタSELを含まなくともよい。この場合は、増幅トランジスタSFから垂直出力線16に直接信号が出力される。
【0020】
図3は、画素12のアクトおよびポリの平面レイアウトを示す概略図である。なお、
図3には1つの画素12の平面レイアウトのみを示しているが、実際には左右方向及び上下方向に所定の単位画素ピッチで
図2の平面レイアウトが周期的に配されている。また、
図3では示していないが、画素12は、前述の各トランジスタを含む。1つの画素12に対応して、1つのマイクロレンズが配される。
【0021】
半導体基板110としては、例えば、シリコンなどの半導体基板が用いられうる。例えば、不純物濃度の低いN型の半導体基板を用いる。半導体基板110の表面部には、活性領域112を画定する素子分離114が設けられている。
図3では、素子分離114として、絶縁領域であるSTIが設けられているが、DTIやP型半導体領域を素子分離として用いてもよい。
【0022】
図3に示すように、活性領域112は、光電変換素子121、132a、132bおよびFD(浮遊拡散領域)120を含む。例えば、光電変換素子121を撮像用の光電変換素子として用い、光電変換素子132a、132bを焦点検出用の光電変換素子として用いる。平面視で活性領域112内には、光電変換素子121とFD120との間に配され、転送ゲート124(第3転送ゲート)を含む電荷転送部124が配される。また、活性領域112には、光電変換素子121と光電変換素子132aとの間、および、光電変換素子121と光電変換素子132bとの間に、N型半導体領域127が配される。また、平面視で活性領域112内には、光電変換素子132aで蓄積された信号電荷の転送を制御する転送ゲート125(第1転送ゲート)と、光電変換素子132bで蓄積された信号電荷の転送を制御する転送ゲート126(第2転送ゲート)とを含む。光電変換素子121は、光電変換素子132aおよび光電変換素子132bで共有されている。
【0023】
転送トランジスタのゲートである転送ゲート124は、光電変換素子121で発生した信号電荷のFD120への転送を制御する。転送ゲート125は、光電変換素子132aで蓄積された信号電荷の光電変換素子121への転送を制御する。転送ゲート126は、光電変換素子132bで蓄積された信号電荷の光電変換素子121への転送を制御する。
【0024】
図3では説明のため1つの光電変換ユニットを図示したが、このような画素12を更に多数行列状に配置することで画素領域10を構成する。
【0025】
図4は
図3のA-A′線における概略断面図である。
図5は、B-B′線における概略断面図である。
図3において、Tx-Aを通るB-B’の構成とTx-Bを通るB-B’構成とは配置位置が異なるのみで実質的には同様である。したがって、
図5では1つの図を用いて両者を説明する。
図5では、Tx-Aを通るB-B’の構成を主に示し、Tx-Bを通るB-B’の構成はかっこ書きで示している。両者に共通に配される構成については、かっこ書きをつけずに示している。
【0026】
図4では、さらに、平面視で半導体基板110に重なる位置に配される、カラーフィルタ101、マイクロレンズ102、配線層103を示す。
図4では、異なる高さに配された3つの配線層を図示している。配線層103は、配線Mと絶縁材料とを含む。光電変換素子132a、132bに入射する光が同色のカラーフィルタを通過した光となるようにカラーフィルタ101を配置することが好ましい。なお、カラーフィルタを配さず、モノクロの光電変換装置として本実施形態の光電変換装置を用いてもよい。
【0027】
図4に示すように、半導体基板110は、第1面と第1面に対向する第2面とを有する。以下では、第1面を表面ともいい、第2面を裏面ともいう。本実施形態では、第1面から光が入射する表面入射型の光電変換装置について説明するが、後述する実施形態のように第2面から光が入射する裏面照射型の光電変換装置であってもよい。
【0028】
図4に示すように、表面側に1つの画素12ごとに1つのマイクロレンズ102が対応して設けられている。また、1つの画素12は複数の光電変換素子を有する。
図3においては、3つの光電変換素子121、132a、132bを有している。もしくは1つの光電変換ユニット内に4つの光電変換素子、9つの光電変換素子を有していてもよい。
【0029】
また、以下では1つの画素12が複数の光電変換素子を含み、1つの画素12に対して1つのマイクロレンズが配される形態を説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、各画素が1つの光電変換素子を含み、2以上の画素に対して1つのマイクロレンズが配される場合も本発明に含まれるものとする。つまり、画素を基準とするのではなく、複数の光電変換素子に対して1つのマイクロレンズが配されていれば、本発明に含まれるものとする。また、画素領域内のすべての画素が本発明を実施している必要はなく、画素領域内に間引きされて本発明を実施している構成が含まれていればよい。
【0030】
光電変換素子121はN型半導体領域118(第3半導体領域)及びP型半導体領域116を含んで構成される。具体的には、N型半導体領域118とP型半導体領域116とで埋め込み型のフォトダイオードとして光電変換素子121が構成される。N型半導体領域118は電子に対してポテンシャルが低くなっており、信号電荷を収集する領域である。
【0031】
光電変換素子132aは、N型半導体領域122aおよびP型半導体領域117aを含んで構成される。同様に、光電変換素子132bは、N型半導体領域122bおよびP型半導体領域117bを含んで構成される。
【0032】
光電変換素子121、132a、132bにはマイクロレンズ102により集光された光が入射する。転送トランジスタに含まれるゲート電極124は、平面視で、N型半導体領域118とFD120を構成するN型半導体領域との間に配される。ゲート電極124は、半導体基板110上にゲート絶縁膜123を介して設けられる。ゲート電極124は、平面型転送ゲートである。つまり、半導体基板110に埋め込まれておらず。半導体基板110の表面に配されている。
【0033】
半導体基板110内のN型半導体領域118およびFD120よりも深い位置に、P型半導体領域130、136、134が配される。
【0034】
本明細書において、深さ方向は、第1面から第2面に向かう方向である。
【0035】
P型半導体領域130は、半導体基板110の内部において、互いに隣接する画素12を電気的に分離する。P型半導体領域136は、P型半導体領域130よりもさらに半導体基板110の深い位置において、互いに隣接する画素12を電気的に分離する。P型半導体領域134は、光の入射によって半導体基板110中で発生した信号電荷を有効に集める深さを規定するために機能する。半導体基板110の表面に対する正射影において、P型半導体領域134は、N型半導体領域118、P型半導体領域116、FD120および転送ゲート124、125のすべてを含む領域と重なるように配される。
図3に示されるように、半導体基板110の表面に対する正射影において、P型半導体領域134は、それぞれの画素12の全体に配されていてもよい。P型半導体領域130、136、134の不純物濃度は、P型半導体領域116の不純物濃度よりも低くてもよい。
図3では、P型半導体領域130とP型半導体領域136とは分離されているが、P型半導体領域130とP型半導体領域136とは接していてもよい。
【0036】
N型半導体領域122aとN型半導体領域122bとは、半導体基板110の第1面から第1の深さに配置される。また、N型半導体領域118は、第1の深さよりも半導体基板110の第1面からの深さが浅い第2の深さに配置される。つまり、N型半導体領域118は、N型半導体領域122aと半導体基板110の第1面との間に配置される。第2の深さには、FD120が配される。P型半導体領域134は、第1の深さよりも深い第3の深さに配される。半導体基板110の表面に対する正射影において、N型半導体領域118およびFD120は、P型半導体領域130、136と重ならない位置に配される。
【0037】
N型半導体領域122a、122bは、平面視において、N型半導体領域118と重なる部分を含む。このときN型半導体領域122a、122bの不純物濃度は、N型半導体領域118の不純物濃度よりも低い。そして、N型半導体領域122aとN型半導体領域118との間、および、N型半導体領域122bとN型半導体領域118との間に配されるN型半導体領域127は、N型半導体領域122aおよびN型半導体領域122bよりも不純物濃度が低い。このように構成することにより、N型半導体領域122a、N型半導体領域122bで生成された信号電荷をN型半導体領域118に転送しやすくできる。
【0038】
本実施形態では、N型半導体領域122aおよびN型半導体領域122bの一部が、第1の深さから第2の深さまで連続して配されている。つまり、N型半導体領域122aおよびN型半導体領域122bは、半導体基板110の第1面と平行な方向に延びており、第1の深さに配される領域と、第1面と垂直な方向に延びており、第1の深さから第2の深さまで連続して配される領域と、を有する。
【0039】
本実施形態では、転送トランジスタの転送ゲート125、126は、光電変換素子121と光電変換素子132a、132bの間の半導体基板110上にゲート絶縁膜123を介して設けられる。上述の通り、転送ゲート125は、光電変換素子132aに蓄積された信号電荷の転送を制御し、転送ゲート126は、光電変換素子132bに蓄積された信号電荷の転送を制御する。
【0040】
本実施形態によれば、光電変換素子121よりも深い領域にN型半導体領域122a、122bが配置されることによって、光電変換素子121よりも深い領域で光電変換により生じた電子をN型半導体領域122a、122bで蓄積することが可能となる。したがって、隣接した他画素のN型半導体領域に移動して蓄積されることを防ぐことが可能となる。また、N型半導体領域118の不純物濃度がN型半導体領域122a、122bの不純物濃度よりも濃く、N型半導体領域122a、122bの不純物濃度が領域127の不純物濃度よりも濃い。このとき、N型半導体領域122a、122bはP型半導体領域130、136、134に囲まれているため、N型半導体領域122a、122bが飽和したときに蓄積電荷はN型半導体領域127を介してN型半導体領域118にオーバーフローする。
【0041】
このように、本実施形態によれば、画素内において隣り合う光電変換素子121よりも深い領域で光電変換により生じた電子が、2つの光電変換素子122a、122b同士の間で移動することを防ぐことが可能となる。これにより、像面位相差式の焦点検出方法により、自動合焦を行うために必要な情報をより精度を高めた光電変換装置を実現することができる。さらに、光電変換素子122a、122bの飽和電荷量を超える信号電荷を光電変換素子121へとオーバーフローさせることができるため、読み出せる信号電荷量を増やすことが可能となる。
【0042】
本実施形態の電荷の読み出し動作の一例を説明する。
図6は、電荷の読み出し動作時のクロックタイミングチャートである。このタイミングチャートは、
図2に示す選択トランジスタSEL、リセットトランジスタRES、転送トランジスタTx、Tx-A、Tx-Bのそれぞれの駆動電圧Vsel、Vres、Vtx、Vtxa、Vtxbを示す。
図6では、電圧がローレベルのときにトランジスタがオフとなり、電圧がハイレベルのときにトランジスタがオンとなる。つまり、ローレベル(Low)電圧がゲートに印加されているときはトランジスタが電気的に非導通となり、ハイレベル(High)電圧がゲートに印加されているときはトランジスタが電気的に導通される。
図7は
図4のC-C′線、
図8は
図5のD-D′線における光電変換装置の信号電荷の蓄積時及び信号電荷の転送時の半導体基板内のポテンシャル図である。ポテンシャル図では、信号電荷である電子に対するポテンシャルを示す。
図7(a)、
図8(a)は、
図6の時刻(a)のポテンシャル図であり、
図7(b)、
図8(b)は、
図6の時刻(b)のポテンシャル図である。同様に、
図7(c)、
図8(c)は、
図6の時(c)のポテンシャル図であり、
図7(d)、
図8(d)は、
図6の時刻(d)のポテンシャル図である。
【0043】
時刻(a)では、信号電荷を蓄積している。
図7(a)、
図8(a)においては、各光電変換素子121、132a、132bにそれぞれ電荷が蓄積されている。時刻(a)では、各トランジスタのゲートにはLow電圧が印加される。このとき、
図8(a)に示す、光電変換素子132aと光電変換素子121との間のポテンシャルバリアの高さは、
図7(a)に示す光電変換素子132aと光電変換素子132bとの間のポテンシャルバリアよりも低い。これにより、光電変換素子132aおよび光電変換素子132bで溢れた電荷を光電変換素子121へと逃がすことができる。また、
図8(a)に示すように、光電変換素子121とFD120との間のポテンシャルバリアの高さは、光電変換素子132aと光電変換素子121との間のポテンシャルバリアの高さよりも低い。これにより、光電変換素子121で溢れた電荷が他の画素へと移動しにくくすることができる。
【0044】
時刻(b)では、光電変換素子121で蓄積された信号電荷の読み出しを行う。
図7(b)、
図8(b)で示す光電変換素子121の電荷読み出し時においては、転送トランジスタTxのゲート124にHigh電圧を印加し、光電変換素子121に蓄積された電荷をFD120に転送する。
【0045】
時刻(c)では、光電変換素子132aの電荷を読み出す。
図7(c)、
図8(c)で示す光電変換素子132aの電荷読み出し時においては、転送トランジスタTx-Aの転送ゲート125にHigh電圧を印加し、光電変換素子132aに蓄積された電荷を光電変換素子121に転送する。このとき、転送トランジスタTxの転送ゲート124にはLow電圧が印加されている。これにより、時刻(c)においてFD120へと転送された信号電荷を画素から読み出すことが可能となる。なお、転送トランジスタTx-の転送ゲート125にはHigh電圧を印加し続けていてもよい。
【0046】
時刻(d)では、光電変換素子132aから光電変換素子121に転送された電荷を、光電変換素子121からFD120へと転送する。
図7(d)、
図8(d)で示す光電変換素子121の読み出し時においては、転送トランジスタTxのゲート124にHigh電圧を印加し、光電変換素子121に転送された電荷をFD120に転送する。転送トランジスタTx-Aのゲート125にHigh電圧を印加する期間と、転送トランジスタTxのゲート124にHigh電圧を印加する期間とは少なくとも一部が重なることが好ましい。これにより、期間を重ねない場合に比べて、転送トランジスタTx-Aをオンしてから信号電荷をFD120に転送するまでの期間を短くすることができる。
【0047】
以降の時刻で、時刻(c)、(d)と同様に、光電変換素子132bで蓄積された電荷を光電変換素子121へと転送し、光電変換素子121からFD120へと信号電荷を転送する。具体的には、時刻(e)では、光電変換素子132bの電荷を読み出す。
図7(e)、
図8(e)で示す光電変換素子132bの電荷読み出し時においては、転送トランジスタTx-Bの転送ゲート126にHigh電圧を印加し、光電変換素子132bに蓄積された電荷を光電変換素子121に転送する。このとき、転送トランジスタTxの転送ゲート124にはLow電圧が印加されている。これにより、時刻(e)においてFD120へと転送された信号電荷を画素から読み出すことが可能となる。なお、転送トランジスタTx-の転送ゲート126にはHigh電圧を印加し続けていてもよい。
【0048】
時刻(f)では、光電変換素子132bから光電変換素子121に転送された電荷を、光電変換素子121からFD120へと転送する。
図7(f)、
図8(f)で示す光電変換素子121の読み出し時においては、転送トランジスタTxのゲート124にHigh電圧を印加し、光電変換素子121に転送された電荷をFD120に転送する。転送トランジスタTx-Bのゲート126にHigh電圧を印加する期間と、転送トランジスタTxのゲート124にHigh電圧を印加する期間とは少なくとも一部が重なることが好ましい。これにより、期間を重ねない場合に比べて、転送トランジスタTx-Bをオンしてから信号電荷をFD120に転送するまでの期間を短くすることができる。
【0049】
この駆動によって、飽和電荷量を増やしながら、撮像用の信号の品質を損なうことなく焦点検知用の信号を取得可能となる。
【0050】
なお、高照度下においては、
図6~
図8における電荷の読み出し動作とは異なる読み出し動作をすることが好ましい。
図9~
図11を参照しながら、高照度下における電荷の読み出し動作の一例を説明する。
【0051】
図9は、電荷の読み出し動作時のクロックタイミングチャートである。
図6と同様の構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
図10はれ
図4のC-C’線、
図11は
図5のD-D’線における光電変換装置の信号電荷の蓄積時及び信号電荷の転送時の半導体基板内のポテンシャル図である。ポテンシャル図では、信号電荷である電子に対するポテンシャルを示す。
図10(a)、
図11(a)は、
図9の時刻(a)のポテンシャル図であり、
図10(b)、
図10(b)は、
図9の時刻(b)のポテンシャル図であり、
図10(c)、
図11(c)は、
図9の時刻(c)のポテンシャル図である。同様に、
図10(d)、
図11(d)は、
図9の時刻(d)のポテンシャル図であり、
図10(e)、
図11(e)は、
図9の時刻(e)のポテンシャル図であり、
図10(f)、
図11(f)は、
図9の時刻(f)のポテンシャル図である。同様に、
図10(g)、
図11(g)は、
図9の時刻(g)のポテンシャル図であり、
図10(h)、
図11(h)は、
図9の時刻(h)のポテンシャル図である。
【0052】
時刻(a)、時刻(b)では、それぞれ各光電変換素子で信号電荷を蓄積している。時刻(a)は
図6の時刻(a)と同様であるが、時刻(b)では、光電変換素子132a、132bから信号電荷が飽和している。時刻(b)においては、光電変換素子132a、132bで光電変換した電荷が光電変換素子121にオーバーフローする。これは、前述の説明の通り、光電変換素子132a、132b間よりも光電変換素子121に信号が溢れやすいポテンシャルとしているためである。
【0053】
高照度下では、時刻(c)において、転送トランジスタTx-Aの転送ゲート、転送トランジスタTx-Bの転送ゲートにHigh電圧を印加し、光電変換素子132a、光電変換素子132bに蓄積された電荷を光電変換素子121に転送する。これにより、焦点検出用の光電変換素子132a、132bとの蓄積された信号電荷をリセットすることができる。
【0054】
時刻(d)において、転送トランジスタTx-Aの転送ゲート、転送トランジスタTx-Bの転送ゲートにLow電圧を印加する。これにより、焦点検知用の光電変換素子132a、132bの電荷のリセットを終了する。これにより、光電変換素子132a、132b内の電位はリセットされた状態となる。
【0055】
時刻(e)において、各光電変換素子121、132a、132bが信号電荷を蓄積する。このとき、各トランジスタのゲートにLow電圧を印加する。
【0056】
時刻(f)において、転送トランジスタTxの転送ゲートにHigh電圧を印加する。
図10(f)、
図11(f)で示す光電変換素子121の電荷読み出し時においては、転送トランジスタTxの転送ゲートにHigh電圧を印加し、光電変換素子121に蓄積された電荷をFDに転送する。
【0057】
時刻(g)以降は、
図6の時刻(c)以降と同様であるため説明を省略する。
【0058】
このような駆動を行うことで、焦点検知用の光電変換素子132a、132bの蓄積時間を撮像用の光電変換素子131よりも短く設定し、焦点検知用の画素の信号量を制御することが可能となる。そのため、撮像用の光電変換素子121が飽和するような高照度下においても焦点検知が可能となる。このような高照度下における像面位相差式の焦点検出方法により、高照度下での自動合焦を行うために必要な情報をより精度を高めた光電変換装置を実現することができる。
【0059】
なお、
図4では、N型半導体領域122aとN型半導体領域122bとの間のポテンシャルバリアの高さを、N型半導体領域118とN型半導体領域122a間のポテンシャルバリアの高さよりも高くしているがこれは必須ではない。隣接する画素間及びN型半導体領域118とFD間の各ポテンシャルバリアの高さが、画素内における各N型半導体領域122a、122b、118間のポテンシャルバリアの高さよりも高ければどのようなポテンシャルの高さの関係であってもよい。例えば、N型半導体領域122aとN型半導体領域122b間のポテンシャルバリアの高さがN型半導体領域122aとN型半導体領域118との間のポテンシャルバリアの高さよりも低くてもよい。また、
図12に示すように、N型半導体領域122aとN型半導体領域122b間のポテンシャルバリアの高さと、N型半導体領域122aとN型半導体領域118間のポテンシャルバリアの高さとが同じでもよい。このような場合でも、画素間のクロストークを抑えつつ、飽和電荷量を増やすことが可能となる。
【0060】
(実施形態2)
図13から
図15を参照しながら、実施形態2に係る光電変換装置について説明する。
図13は、本実施形態に係る光電変換装置の画素12の平面レイアウトを示す図である。
図14は、
図13のE-E′線に沿った概略断面図である。
図15は、本実施形態の画素の等価回路図である。本実施形態に係る光電変換装置は、撮像用の光電変換素子が2つに分かれており、各光電変換素子に対応して転送ゲートが配されている。この点および以下で説明する点以外は、実施形態1と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0061】
実施形態1に係る光電変換装置では、平面視において光電変換素子121はN型半導体領域118及びP型半導体領域116を含んで構成されていたが、本実施形態では、光電変換素子121a、121bで構成される。そして、光電変換素子121a、121b間は分離されている。具体的には、本実施形態による光電変換装置では、光電変換素子121a及び121bを撮像用の光電変換素子として用いている。光電変換素子121aは、N型半導体領域118aおよびP型半導体領域116を含んで構成される。また、光電変換素子121bは、N型半導体領域118bおよびP型半導体領域116を含んで構成される。具体的には、N型半導体領域118a、118bとP型半導体領域116とで埋め込み型のフォトダイオードとして光電変換素子121a、121bがそれぞれ構成される。平面視で、光電変換素子121aとFD120との間には、転送トランジスタTx-1の転送ゲート124aが配される。また、光電変換素子121bとFD120との間には、転送トランジスタTx-2の転送ゲート124bが配される。光電変換素子132aは平面視において、光電変換素子121aと重なっている部分を含む。また、光電変換素子132bは平面視において光電変換素子121bと重なっている部分を含む。
【0062】
転送トランジスタのゲートである転送ゲート124a、124bはそれぞれ光電変換素子121a、121bで発生した電荷をFD120に転送する。また、転送ゲート125、126はそれぞれ光電変換素子132a、132bで発生した電荷を光電変換素子121a、121bに転送する。
【0063】
それぞれの画素12は、
図14に示すように、光電変換素子121a、121bと、転送トランジスタTx1、Tx2と、光電変換素子132a、132bと、転送トランジスタTx-A、Tx-Bを含む。FD以降は
図2と同様であるため、説明を省略する。光電変換素子121a、121b、132a、132bは、例えばフォトダイオードであり、アノードが接地電圧線に接続され、カソードがそれぞれ転送トランジスタTx1、Tx2、Tx-A、Tx-Bのソースに接続されている。転送トランジスタTx1、Tx2のドレインは、リセットトランジスタRESのソース及び増幅トランジスタSFのゲートに接続されている。
【0064】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、画素内において隣り合う光電変換素子121a、121bよりも深い領域で光電変換により生じた電子が、2つの光電変換素子122a、122b同士の間で移動することを防ぐことが可能となる。これにより、像面位相差式の焦点検出方法により、自動合焦を行うために必要な情報をより精度を高めた光電変換装置を実現することができる。さらに、光電変換素子122a、122bの飽和電荷量を超える信号電荷を光電変換素子121へとオーバーフローさせることができるため、読み出せる信号電荷量を増やすことが可能となる。
【0065】
(実施形態3)
図16および
図17を用いて、実施形態3に係る光電変換装置について説明する。
図16は、本実施形態に係る光電変換装置の画素12の平面レイアウトを示す図である。
図17は、
図16のF-F′線の概略断面図である。本実施形態は、光電変換素子122a、122bから光電変換素子121への電荷の転送を制御する転送ゲートとして、縦型転送ゲート(VTG)を用いている。この点および以下で説明する点以外は、実施形態1と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0066】
本実施形態に係る光電変換装置は、
図16及び
図17に示すように平面視における光電変換素子132a、132b及び転送トランジスタTx-A、Tx-Bの構造が異なる。本実施形態による光電変換装置では、光電変換素子142a、142bはそれぞれN型半導体領域122a、122bで構成される。また、縦型転送トランジスタVTG-A、VTG-Bは、光電変換素子121と焦点検知用の光電変換素子142a、142bの間の半導体基板110上にゲート絶縁膜123を介して設けられた縦型転送ゲート電極135、136を含む。縦型トランジスタVTG-A、VTG-Bはその縦型転送ゲート電極135、136が深さ方向に光電変換素子142a、142bに達する位置まで形成されている。つまり、縦型転送ゲート電極135、136は半導体基板110の深さ方向において半導体基板110埋め込まれて形成されている。そして、埋め込みの深さは、光電変換素子142a、142bのN型半導体領域122a、122bに接する位置である。縦型転送ゲート電極135、136は所望の電圧を印加することでそれぞれ光電変換素子142a、142bで発生した電荷を光電変換素子121に転送する。
【0067】
本実施形態では、縦型転送ゲートにより電荷の転送を制御することが可能であるため、N型半導体領域122a、122bを第2の深さまで形成する必要はない。
【0068】
本実施形態では、実施形態1と同様に、画素内において隣り合う光電変換素子121a、121bよりも深い領域で光電変換により生じた電子が、2つの光電変換素子122a、122b同士の間で移動することを防ぐことが可能となる。これにより、像面位相差式の焦点検出方法により、自動合焦を行うために必要な情報をより精度を高めた光電変換装置を実現することができる。さらに、光電変換素子122a、122bの飽和電荷量を超える信号電荷を光電変換素子121へとオーバーフローさせることができるため、読み出せる信号電荷量を増やすことが可能となる。また、縦型転送トランジスタを配置することで撮像用の光電変換素子121の面積を大きくすることが可能となる。これにより、精度の高い焦点検知用の信号を取得と同時に撮像用の飽和電荷量を高めることが可能となる。
【0069】
(実施形態4)
図18を参照しながら実施形態4の光電変換装置について説明する。
図17は、本実施形態による光電変換装置の概略断面図である。本実施形態は、裏面から光が入射する裏面照射型の光電得変換装置である。この点および以下で説明する点以外は、実施形態1と実質的に同じであるため、説明を省略する。なお、実施形態1乃至3において本実施形態の構成を採用してもよい。
【0070】
本実施形態では、半導体基板の裏面側にカラーフィルタ201及びマイクロレンズ202が設けられている。また、第1面の側にトランジスタや配線層が設けられている。カラーフィルタ201及びマイクロレンズ202は、前述のカラーフィルタ101及びマイクロレンズ102と同様であるため説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、裏面照射型の光電変換装置であるため、入射光は焦点検知用の光電変換素子132aまたは132bを先に通過し撮像用の光電変換素子121に到達する。したがって、光電変換により発生する電荷が光電変換素子132a、132bで発生する確率が高まる。入射側に焦点検知用の光電変換素子132a、132bが配置されることで、自動合焦を行うために必要な情報をより精度を高めた光電変換装置を実現することができる。
【0072】
(実施形態5)
図19は、本実施形態に係る光電変換システム1200の構成を示すブロック図である。本実施形態の光電変換システム1200は、光電変換装置1204を含む。ここで、光電変換装置1204は、上述の実施形態で述べた光電変換装置のいずれかを適用することができる。光電変換システム1200は例えば、撮像システムとして用いることができる。撮像システムの具体例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダー、監視カメラ等が挙げられる。
図19では、光電変換システム1200としてデジタルスチルカメラの例を示している。
【0073】
図19に示す光電変換システム1200は、光電変換装置1204、被写体の光学像を光電変換装置1204に結像させるレンズ1202、レンズ1202を通過する光量を可変にするための絞り1203、レンズ1202の保護のためのバリア1201を有する。レンズ1202および絞り1203は、光電変換装置1204に光を集光する光学系である。
【0074】
光電変換システム1200は、光電変換装置1204から出力される出力信号の処理を行う信号処理部1205を有する。信号処理部1205は、必要に応じて入力信号に対して各種の補正、圧縮を行って出力する信号処理の動作を行う。光電変換システム1200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのバッファメモリ部1206、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1209を有する。更に光電変換システム1200は、撮像データの記録または読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1211、記録媒体1211に記録または読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1210を有する。記録媒体1211は、光電変換システム1200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。また、記録媒体制御I/F部1210から記録媒体1211との通信や外部I/F部1209からの通信は無線によってなされてもよい。
【0075】
更に光電変換システム1200は、各種演算を行うとともにデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1208、光電変換装置1204と信号処理部1205に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1207を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システム1200は、少なくとも光電変換装置1204と、光電変換装置1204から出力された出力信号を処理する信号処理部1205とを有すればよい。第4の実施形態にて説明したようにタイミング発生部1207は光電変換装置に搭載されていてもよい。全体制御・演算部1208およびタイミング発生部1207は、光電変換装置1204の制御機能の一部または全部を実施するように構成してもよい。
【0076】
光電変換装置1204は、画像用信号を信号処理部1205に出力する。信号処理部1205は、光電変換装置1204から出力される画像用信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。また、信号処理部1205は、画像用信号を用いて、画像を生成する。また、信号処理部1205は、光電変換装置1204から出力される信号に対して測距演算を行ってもよい。なお、信号処理部1205やタイミング発生部1207は、光電変換装置に搭載されていてもよい。つまり、信号処理部1205やタイミング発生部1207は、画素が配された基板に設けられていてもよいし、別の基板に設けられている構成であってもよい。上述した各実施形態の光電変換装置を用いて撮像システムを構成することにより、より良質の画像が取得可能な撮像システムを実現することができる。
【0077】
(実施形態6)
本実施形態の光電変換システムおよび移動体について、
図20及び
図21用いて説明する。
図20は、本実施形態による光電変換システムおよび移動体の構成例を示す概略図である。
図21は、本実施形態による光電変換システムの動作を示すフロー図である。本実施形態では、光電変換システムとして、車載カメラの一例を示す。
【0078】
図20は、車両システムとこれに搭載される撮像を行う光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム1301は、光電変換装置1302、画像前処理部1315、集積回路1303、光学系1314を含む。光学系1314は、光電変換装置1302に被写体の光学像を結像する。光電変換装置1302は、光学系1314により結像された被写体の光学像を電気信号に変換する。光電変換装置1302は、上述の各実施形態のいずれかの光電変換装置である。画像前処理部1315は、光電変換装置1302から出力された信号に対して所定の信号処理を行う。画像前処理部1315の機能は、光電変換装置1302内に組み込まれていてもよい。光電変換システム1301には、光学系1314、光電変換装置1302および画像前処理部1315が、少なくとも2組設けられており、各組の画像前処理部1315からの出力が集積回路1303に入力されるようになっている。
【0079】
集積回路1303は、撮像システム用途向けの集積回路であり、メモリ1305を含む画像処理部1304、光学測距部1306、測距演算部1307、物体認知部1308、異常検出部1309を含む。画像処理部1304は、画像前処理部1315の出力信号に対して、現像処理や欠陥補正等の画像処理を行う。メモリ1305は、撮像画像の一次記憶、撮像画素の欠陥位置を格納する。光学測距部1306は、被写体の合焦や、測距を行う。測距演算部1307は、複数の光電変換装置1302により取得された複数の画像データから測距情報の算出を行う。物体認知部1308は、車、道、標識、人等の被写体の認知を行う。異常検出部1309は、光電変換装置1302の異常を検出すると、主制御部1313に異常を発報する。
【0080】
集積回路1303は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0081】
主制御部1313は、光電変換システム1301、車両センサ1310、制御ユニット1320等の動作を統括・制御する。主制御部1313を持たず、光電変換システム1301、車両センサ1310、制御ユニット1320が個別に通信インターフェースを有して、それぞれが通信ネットワークを介して制御信号の送受を行う(例えばCAN規格)方法も取り得る。
【0082】
集積回路1303は、主制御部1313からの制御信号を受け或いは自身の制御部によって、光電変換装置1302へ制御信号や設定値を送信する機能を有する。
【0083】
光電変換システム1301は、車両センサ1310に接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの自車両走行状態および自車外環境や他車・障害物の状態を検出することができる。車両センサ1310は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段でもある。また、光電変換システム1301は、自動操舵、自動巡行、衝突防止機能等の種々の運転支援を行う運転支援制御部1311に接続されている。特に、衝突判定機能に関しては、光電変換システム1301や車両センサ1310の検出結果を基に他車・障害物との衝突推定・衝突有無を判定する。これにより、衝突が推定される場合の回避制御、衝突時の安全装置起動を行う。
【0084】
また、光電変換システム1301は、衝突判定部での判定結果に基づいて、ドライバーに警報を発する警報装置1312にも接続されている。例えば、衝突判定部の判定結果として衝突可能性が高い場合、主制御部1313は、ブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして、衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置1312は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムやメーターパネルなどの表示部画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0085】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方または後方を光電変換システム1301で撮影する。
図20(b)に、車両前方を光電変換システム1301で撮像する場合の光電変換システム1301の配置例を示す。
【0086】
2つの光電変換装置1302は、車両1300の前方に配される。具体的には、車両1300の進退方位または外形(例えば車幅)に対する中心線を対称軸に見立て、その対称軸に対して2つの光電変換装置1302が線対称に配されると、車両1300と被写対象物との間の距離情報の取得や衝突可能性の判定を行う上で好ましい。また、光電変換装置1302は、運転者が運転席から車両1300の外の状況を視認する際に運転者の視野を妨げない配置が好ましい。警報装置1312は、運転者の視野に入りやすい配置が好ましい。
【0087】
次に、光電変換システム1301における光電変換装置1302の故障検出動作について、
図21を用いて説明する。光電変換装置1302の故障検出動作は、
図21に示すステップS1410~S1480に従って実施される。
【0088】
ステップS1410は、光電変換装置1302のスタートアップ時の設定を行うステップである。すなわち、光電変換システム1301の外部(例えば主制御部1313)または光電変換システム1301の内部から、光電変換装置1302の動作のための設定を送信し、光電変換装置1302の撮像動作および故障検出動作を開始する。
【0089】
次いで、ステップS1420において、有効画素から画素信号を取得する。また、ステップS1430において、故障検出用に設けた故障検出画素からの出力値を取得する。この故障検出画素は、有効画素と同じく光電変換部を備える。この光電変換部には、所定の電圧が書き込まれる。故障検出用画素は、この光電変換部に書き込まれた電圧に対応する信号を出力する。なお、ステップS1420とステップS1430とは逆でもよい。
【0090】
次いで、ステップS1440において、故障検出画素の出力期待値と、実際の故障検出画素からの出力値との該非判定を行う。ステップS1440における該非判定の結果、出力期待値と実際の出力値とが一致している場合は、ステップS1450に移行し、撮像動作が正常に行われていると判定し、処理ステップがステップS1460へと移行する。ステップS1460では、走査行の画素信号をメモリ1305に送信して一次保存する。そののち、ステップS1420に戻り、故障検出動作を継続する。一方、ステップS1440における該非判定の結果、出力期待値と実際の出力値とが一致していない場合は、処理ステップはステップS1470に移行する。ステップS1470において、撮像動作に異常があると判定し、主制御部1313、または警報装置1312に警報を発報する。警報装置1312は、表示部に異常が検出されたことを表示させる。その後、ステップS1480において光電変換装置1302を停止し、光電変換システム1301の動作を終了する。
【0091】
なお、本実施形態では、1行毎にフローチャートをループさせる例を例示したが、複数行毎にフローチャートをループさせてもよいし、1フレーム毎に故障検出動作を行ってもよい。ステップS1470の警報の発報は、無線ネットワークを介して、車両の外部に通知するようにしてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、他の車両と衝突しない制御を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。さらに、光電変換システム1301は、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機或いは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0093】
本発明の光電変換装置は、更に、距離情報など各種情報を取得可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
100 光電変換装置
102 マイクロレンズ
110 半導体基板
112 活性領域
114 素子分離領域
116、130、136、134 P型半導体領域
118、119、122、127 N型半導体領域
120 フローティングディフュージョン
121、132a、132b 光電変換素子
124、125、126 転送ゲート