(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241021BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241021BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241021BHJP
【FI】
G03G15/16
B32B27/18 J
B32B7/025
(21)【出願番号】P 2020189028
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】石尾 昌平
(72)【発明者】
【氏名】石角 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】片桐 真史
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼名 英一
(72)【発明者】
【氏名】江川 紀章
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189882(JP,A)
【文献】特開2013-076935(JP,A)
【文献】特開2010-134307(JP,A)
【文献】特開2009-258698(JP,A)
【文献】特開2018-036624(JP,A)
【文献】特開2018-105997(JP,A)
【文献】特開2019-185019(JP,A)
【文献】特開2013-231942(JP,A)
【文献】特開2018-025621(JP,A)
【文献】特開2009-258699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0174404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G03G 13/00
13/02
13/14-13/16
15/00
15/02
15/14-15/16
21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、
前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、
前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×10
6Ω/□以下であり、
前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部がアルミ材により形成されたローラであって、前記導電層と接触する表面を形成するアルマイト層を有するローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記アルマイト層の厚さは、10μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記アルマイト層の硬度は、100HV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ローラは、前記画像形成装置の動作時に通電が不要なローラであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、
前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、
前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×10
6Ω/□以下であり、
前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部が金属材料により形成されたローラであって、前記ローラ部が、主に第1の金属からなる第1の金属材料により形成された母材と、前記導電層と接触する表面を形成する、前記母材上に主に第2の金属からなる第2の金属材料により形成されたコート層と、を有し、前記第2の金属と銅との標準電位の差は、前記第1の金属と銅との標準電位の差よりも小さいローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の金属と銅との標準電位の差は、0.80V以下であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記コート層は、メッキ層であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記母材はアルミ材により形成されており、前記コート層はニッケルメッキ層であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、
前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、
前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×10
6Ω/□以下であり、
前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部がアルミ材により形成されたローラであって、前記導電層と接触する表面を形成するニッケルメッキ層を有するローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記ローラは、前記画像形成装置の動作時に通電が必要なローラであることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記バインダー樹脂は、テレフタル酸、オルトフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記導電剤は、カーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記導電層中の前記銅化合物の含有量は、1.0質量%以上13.5質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記基層は、ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記ベルトは、像担持体から一次転写されたトナー像を記録材に二次転写するために搬送する中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の画像形成装置として、感光体から一次転写されたトナー像を記録材に二次転写するために搬送する無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)で構成された中間転写ベルトを有する中間転写方式のものがある。以下、中間転写方式の画像形成装置を例に更に説明する。
【0003】
このような画像形成装置において、例えば装置構成の簡略化や画質の向上のために、中間転写ベルトの周方向に電流を流すことが可能な構成が求められることがある。特許文献1では、転写性の向上のために、中間転写ベルトにその内周面を形成する低抵抗の導電層を設けた構成が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術の構成によって、転写性の向上は見込めるが、近年の長寿命化した画像形成装置では、装置の更なる耐久性の向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、内周面を形成する導電層を有するベルトを備えた装置の耐久性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×106Ω/□以下であり、前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部がアルミ材により形成されたローラであって、前記導電層と接触する表面を形成するアルマイト層を有するローラを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
本発明の他の態様によると、無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×10
6
Ω/□以下であり、前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部が金属材料により形成されたローラであって、前記ローラ部が、主に第1の金属からなる第1の金属材料により形成された母材と、前記導電層と接触する表面を形成する、前記母材上に主に第2の金属からなる第2の金属材料により形成されたコート層と、を有し、前記第2の金属と銅との標準電位の差は、前記第1の金属と銅との標準電位の差よりも小さいローラを備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明の他の態様によると、無端状のベルトであって、基層と、前記基層よりも前記ベルトの内周面側に位置し前記内周面を形成する導電層と、を有するベルトを備えた画像形成装置において、前記導電層は、バインダー樹脂と、導電剤と、前記導電剤を前記バインダー樹脂に分散させるための分散剤である銅化合物と、を含み、表面抵抗率が5.0×10
6
Ω/□以下であり、前記ベルトの前記内周面側に配置され、前記ベルトが巻き掛けられるローラ部がアルミ材により形成されたローラであって、前記導電層と接触する表面を形成するニッケルメッキ層を有するローラを備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内周面を形成する導電層を有するベルトを備えた装置の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ベルトクリーニング装置の模式的な断面図である。
【
図3】中間転写ベルトの模式的な外観斜視図及び断面図である。
【
図5】ローラの構成を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0011】
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のレーザービームプリンタである。
【0012】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdを有する。これら4つの画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、後述する中間転写ベルト13の移動方向に沿って一定の間隔をおいて一列に配置されている。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1(1a、1b、1c、1d)、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、露光装置11(11a、11b、11c、11d)、現像装置8(8a、8b、8c、8d)、一次転写ローラ10(10a、10b、10c、10d)、ドラムクリーニング装置3(3a、3b、3c、3d)などを有して構成される。
【0013】
像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、金属製の円筒上に、機能性有機材料が複数層積層されて構成されている。本実施例では、感光ドラム1は、機能性有機材料の層として、感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層などを有し、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。感光ドラム1は、駆動源(図示せず)からの駆動力を受けて、図示矢印R1方向(反時計回り方向)に所定の周速度(プロセススピード)で回転する。画像形成装置100が備えた制御手段としてのコントローラ(図示せず)が画像信号(画像情報)を受信することによって、画像形成動作が開始される。すると、各感光ドラム1a~1d及び後述する二次転写対向ローラ15などは、駆動源(図示せず)からの駆動力によって所定の周速度(プロセススピード)で回転を始める。本実施例ではプロセススピードは200mm/sである。
【0014】
帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2は、感光ドラム1に当接し、感光ドラム1の回転に伴って従動回転する。回転する感光ドラム1の表面(外周面)は、帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ2は、帯電電源20に接続されている。帯電処理時に、帯電ローラ2には、帯電電源20により、所定の極性(本実施例では負極性)の直流電圧である帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転方向に関して帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部の上流側及び下流側に形成された微小な空気ギャップの少なくとも一方で発生する放電によって、感光ドラム1の表面を帯電させる。
【0015】
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段11によって画像信号に従った走査ビーム12を照射され、感光ドラム1上に画像信号に従った静電潜像(静電像)が形成される。本実施例では、露光装置11は、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットで構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12を感光ドラム1に照射する。
【0016】
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置8によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。現像装置8は、現像部材(現像剤担持体)としての現像ローラ4と、現像容器5と、現像剤塗布ブレード7と、を有する。なお、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの各現像装置8a、8b、8c、8dは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを現像容器5内に収容している。現像ローラ4は、現像電源21に接続されている。現像装置8に収容されたトナーは、現像剤塗布ブレード7によって、負極性に帯電されて、現像ローラ4に塗布される。そして、現像電源21から現像ローラ4に所定の現像電圧(現像バイアス)が印加されることで、現像ローラ4と感光ドラム1とが接触する現像部において、静電潜像の画像部にトナーが付着する。これにより、各感光ドラム1上に、各画像形成部Sに対応する色の画像成分に対応したトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0017】
4つの感光ドラム1a~1dと対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト(電子写真用ベルト)13が配置されている。中間転写ベルト13は、張架部材としての二次転写対向ローラ15(以下、単に「対向ローラ」という。)、テンションローラ14、及び補助ローラ19の3つの張架ローラに掛け渡されて所定の張力で張架されている。テンションローラ14は、中間転写ベルト13に対して適切なテンション力を付与するように、付勢手段としての付勢部材であるバネ(図示せず)によって付勢されている。駆動ローラを兼ねる対向ローラ15は、駆動源(図示せず)からの駆動力を受けて図示矢印R2方向(時計回り方向)に回転し、中間転写ベルト13は対向ローラ15の回転に伴って図示矢印R3方向(時計回り方向)に回転(周回移動)する。中間転写ベルト13は、感光ドラム1a~1dに対して順方向に略同一の周速度(プロセススピード)で回転する。対向ローラ15以外の張架ローラは、中間転写ベルト13の移動に伴って従動回転する。中間転写ベルト13については後述して更に詳しく説明する。
【0018】
本実施例では、対向ローラ15は、電気的に接地(グラウンドに接続)されている。なお、本実施例では、対向ローラ15は、アルミ材で形成された芯金に、肉厚が0.5mmのEPDMゴムで形成された弾性層が被覆されて構成された弾性ローラであり、外径は24.0mmである。また、本実施例では、対向ローラ15は、電気抵抗値が約1×105Ωとなるように、EPDMゴムに導電剤としてカーボンが分散されている。他の張架ローラである補助ローラ19及びテンションローラ14については後述して更に詳しく説明する。
【0019】
中間転写ベルト13の内周面側には、各感光ドラム1a、1b、1c、1dに対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ10a、10b、10c、10dがそれぞれ配置されている。本実施例では、一次転写ローラ10は、中間転写ベルト13を介して感光ドラム1と対向する位置に配置されており、中間転写ベルト13の内周面に接触し、中間転写ベルト13の移動に伴って従動回転する。一次転写ローラ10は、感光ドラム1に向けて付勢され、中間転写ベルト13を介して感光ドラム1に当接して、感光ドラム1と中間転写ベルト13とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。また、一次転写ローラ10は、一次転写電源22に接続されている。なお、本実施例では、一次転写ローラ10は、外径が5mmのニッケルメッキ鋼棒の芯金の周囲に、外径が14mmとなるように発泡性弾性体で形成された弾性層が被覆されて構成された弾性ローラである。また、本実施例では、一次転写ローラ10は、弾性層の材料に導電剤が含有されて、電気抵抗値が約1×106Ωになるように調整されている。一次転写ローラ10の電気抵抗は、103~107Ωの範囲であることが、良好な画像形成を行う点で好ましい。
【0020】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ10の作用によって、回転している被転写体としての中間転写ベルト13上に一次転写される。一次転写時に、一次転写ローラ10には、一次転写電源22により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト13上に重ね合わされるようにして順次転写される。これにより、中間転写ベルト13上に、目的のカラー画像に対応した4色のトナー像が形成される。
【0021】
中間転写ベルト13の外周面側において、中間転写ベルト13を介して対向ローラ15と対向する位置に、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ25が配置されている。二次転写ローラ25、中間転写ベルト13の外周面に接触し、中間転写ベルト13の移動に伴って従動回転する。二次転写ローラ25は、対向ローラ15に向けて付勢され、中間転写ベルト13を介して対向ローラ15に当接して、中間転写ベルト13と二次転写ローラ25とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。また、本実施例では、二次転写ローラ25は、二次転写電源26に接続されている。なお、本実施例では、二次転写ローラ25は、外径が6mmのニッケルメッキ鋼棒の芯金の周囲に、外径が18mmとなるように発泡性弾性体で形成された弾性層が被覆されて構成された弾性ローラである。また、本実施例では、二次転写ローラ25は、弾性層の材料に導電剤が含有されて、電気抵抗値が約1×108Ωになるように調整されている。二次転写ローラ25の電気抵抗は、107~109Ωの範囲であることが、良好な画像形成を行う点で好ましい。
【0022】
中間転写ベルト13上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ25の作用によって、中間転写ベルト13と二次転写ローラ25とに挟持されて搬送されている被転写体としての紙やOHPシートなどの記録材P上に二次転写される。二次転写時に、二次転写ローラ25には、二次転写電源26により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。記録材Pは、記録材収容部としてのカセット16に収容されており、給送手段としての給送ローラ17によってカセット16から1枚ずつ送り出されて、搬送手段としての搬送ローラ18に向けて給送される。この記録材Pは、搬送ローラ18によって、中間転写ベルト13上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2に向けて搬送される。
【0023】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置50へと搬送される。定着装置50は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧して、トナー像を記録材P上に定着(溶融、固着)させる。例えばフルカラー画像の形成時には、このときに4色のトナーが溶融し、混色して、記録材P上に定着される。その後、記録材Pは、画像形成装置100の装置本体110の上部に設けられた積載部としての排紙トレイ52に排出(出力)されて積載される。
【0024】
一方、一次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)などの付着物は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置3によって、感光ドラム1上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置3は、感光ドラム1の表面(外周面)に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレードと、クリーニングブレードによって感光ドラム1の表面から除去されたトナーなどの付着物を収容するクリーニング容器と、を有する。また、中間転写ベルト13の外周面側において、中間転写ベルト13を介して対向ローラ15と対向する位置に、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置30が配置されている。二次転写後に中間転写ベルト13上に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、ベルトクリーニング装置30によって、中間転写ベルト13上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置30は、対向ローラ15と対向する位置で中間転写ベルト13の表面(外周面)に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレード31を有する。また、ベルトクリーニング装置30は、クリーニングブレード31によって中間転写ベルト13の表面から除去されたトナーなどの付着物を収容するクリーニング容器32を有する。ベルトクリーニング装置30については後述して更に詳しく説明する。
【0025】
なお、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置8及びドラムクリーニング装置3とは、一体的に画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能なプロセスカートリッジ9を構成している。
【0026】
また、中間転写ベルト13、各張架ローラ14、15、19、各一次転写ローラ10a~10d、及びベルトクリーニング装置30は、一体的に画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能な中間転写ユニット23を構成している。
【0027】
また、画像形成装置100は、画像形成装置100の各部の動作の制御を行うための電気回路が搭載された制御基板(図示せず)を有する。制御基板には、制御手段としてのCPU、各種の制御情報が格納された記憶手段としてのメモリ(図示せず)などが搭載されている。CPUは、記録材Pの搬送に関する制御、中間転写ベルト13及びプロセスカートリッジ9の駆動に関する制御、画像形成に関する制御、更には故障検知に関する制御などを実行する。
【0028】
2.ベルトクリーニング装置
次に、本実施例における中間転写体クリーニング手段(ベルトクリーニング手段、回収手段)としてのベルトクリーニング装置30について更に説明する。
図2(a)は、クリーニングブレード31が弾性変形していない場合のクリーニングブレード31の取り付け位置を説明するための仮想断面図である。また、
図2(b)は、ベルトクリーニング装置30の構成を説明するための概略断面図である。
【0029】
ベルトクリーニング装置30は、クリーニング容器32と、クリーニング容器32内に設けられたクリーニング作用部33と、を有する。クリーニング容器32は、中間転写ベルト13などを有する中間転写ユニット23の枠体(図示せず)の一部として構成されている。クリーニング作用部33は、クリーニング部材(当接部材)としてのクリーニングブレード31と、クリーニングブレード31を支持する支持部材34と、を有する。クリーニングブレード31は、弾性材料(弾性部材)であるウレタンゴム(ポリウレタン)を用いて構成された弾性ブレードである。クリーニングブレード31は、メッキ鋼板を材料とする板金で形成された支持部材34に、接着により固定されている。クリーニングブレード31は、支持部材34を介してクリーニング容器32に支持されている。
【0030】
クリーニングブレード31は、中間転写ベルト13の移動方向と略直交する中間転写ベルト13の幅方向に関して長い板状部材である。つまり、クリーニングブレード31は、中間転写ベルト13の幅方向と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する板状部材である。クリーニングブレード31は、その短手方向に関する一方の端部である自由端部31eが中間転写ベルト13の表面(外周面)に当接されており、他方の端部である固定端部31f側の一部が支持部材34に接着により固定されている。本実施例では、クリーニングブレード31の長手方向の長さは230mmであり、厚さは2mmであり、クリーニングブレード31の硬度はJIS K 6253規格で77度である。
【0031】
クリーニング作用部33は、中間転写ベルト13の表面に対して揺動可能に構成されている。すなわち、支持部材34は、クリーニング容器32に固定された揺動軸35を介して、中間転写ベルト13の表面に対して揺動可能なように、クリーニング容器32に支持されている。クリーニング容器32内に設けられた付勢手段として付勢部材である加圧バネ36によって、支持部材34が加圧される。これにより、揺動軸35を中心としてクリーニング作用部33が回動(揺動)し、クリーニングブレード31が中間転写ベルト13の表面に対して付勢(押圧)される。
【0032】
クリーニングブレード31に対向して、中間転写ベルト13の内周面側には、対向ローラ15が配置されている。クリーニングブレード31は、対向ローラ15に対向する位置で、中間転写ベルト13の移動方向に対してカウンター方向となるように、中間転写ベルト13の表面に当接されている。すなわち、クリーニングブレード31は、その短手方向に関する自由端部31eが中間転写ベルト13の移動方向に関する上流側を向くようにして、中間転写ベルト13の表面に当接されている。これにより、
図2(b)に示すように、クリーニングブレード31と中間転写ベルト13との接触部であるブレードニップ部37が形成されている。クリーニングブレード31は、ブレードニップ部37において、移動する中間転写ベルト13の表面から二次転写残トナーなどの付着物を掻き取り、クリーニング容器32に回収する。
【0033】
図2(a)に示すように、中間転写ベルト13とクリーニングブレード31との交点における対向ローラ15の接線とクリーニングブレード31の面とのなす角度を設定角θとする。また、
図2(a)に示すように、中間転写ベルト13とクリーニングブレード31との交点における対向ローラ15の接線からクリーニングブレード31の自由端部31eの先端(対向ローラ15側のエッジ部)までの距離を侵入量δとする。この設定角θ、侵入量δは、良好なクリーニング性能が得られるように最適化されている。
【0034】
3.中間転写ベルト
次に、本実施例における中間転写ベルト13について更に説明する。
【0035】
図3(a)は、中間転写ベルト13の模式的な外観斜視図である。また、
図3(b)は、中間転写ベルト13の移動方向に略直交する方向に切った(中間転写ベルト13の移動方向に沿って見た)中間転写ベルト13の模式的な拡大部分断面図である。
【0036】
本実施例では、中間転写ベルト13は、基層41と、表層40と、導電層42と、の3層からなる無端状のベルト部材(あるいはフィルム状部材)である。本実施例では、中間転写ベルト13の周長は700mmである。
【0037】
ここで、中間転写ベルト13の基層41とは、中間転写ベルト13の厚さ方向に関して、中間転写ベルト13を構成する層のうち、最も厚い層であると定義する。本実施例では、基層41は、基材としてのポリエステル樹脂であるポリエチレンナフタレート樹脂に、電気抵抗の調整剤としてイオン導電剤である第4級アンモニウム塩が分散されて形成されている。本実施例では、基層41の厚さは70μmである。
【0038】
また、表層40は、中間転写ベルト13の外周面側において基層41上に形成されており、中間転写ベルト13の外周面を形成する。本実施例では、表層40は、基材としてのアクリル樹脂に、電気抵抗の調整剤としてアンチモンドープの酸化亜鉛が分散され、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子が添加されて形成されている。本実施例では、表層40の厚さは3μmである。表層40については後述して更に詳しく説明する。また、導電層42は、中間転写ベルトの内周面側において基層41上に形成されており、中間転写ベルト13の内周面を形成する。本実施例では、導電層42は、基材としてのポリエステル樹脂に、導電剤としてカーボンが混合されて低抵抗となるように形成されている。本実施例では、導電層42の厚さは3μmである。導電層42については後述して更に詳しく説明する。
【0039】
中間転写ベルト13の表層40について更に説明する。表層40の基材としては、耐摩耗性、耐クラック性などの強度の観点から、硬化性材料の中でも樹脂材料(硬化性樹脂)が好ましく、硬化性樹脂の中でも、不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。本実施例では、表層40は、基層41の表面に、紫外線硬化性のモノマー成分又はオリゴマー成分の少なくとも一方を含有する液を塗布し、これに紫外線などのエネルギー線を照射して硬化させることで得た。
【0040】
表層40の作製方法の一例の概略を示せば次のとおりである。不飽和二重結合含有アクリル共重合体中に、導電材料としてのアンチモンドープの酸化亜鉛、固体潤滑剤としてのPTFE粒子を混合し、高圧乳化分散機で分散混合し、表層40の形成用塗工液を作製する。また、表層40を基層41上に形成する方法としては、通常のコーティング方法、例えば、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、スピンコートなどを挙げることができる。これらの方法から適宜選択して用いることで、所望の膜厚の表層40を得ることができる。
【0041】
次に、中間転写ベルト13の導電層42について更に説明する。導電層42は、中間転写ベルト13の内周面側に形成される層である。つまり、基層41は、中間転写ベルト13の厚さ方向に関して、導電層42よりも各感光ドラム1a~1dに近い位置に配置される。本実施例では、導電層42は、基層41に対してスプレーコーティングを行うことにより形成した。導電層42の形成方法については後述して更に詳しく説明する。
【0042】
本実施例では、基層41と導電層42とで電気抵抗が異なり、基層41の電気抵抗に比べて導電層42の電気抵抗の方が低く設定されている。
【0043】
中間転写ベルト13の体積抵抗率及び表面抵抗率は、三菱化学株式会社のHiresta-UP(MCP-HT450)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の測定環境のもとで測定した。体積抵抗率の測定は、リングプローブのタイプUR(型式MCP-HTP12)を使用し、中間転写ベルト13の外周面側からプローブを当て、印加電圧100[V]、測定時間10秒の条件で行った。表面抵抗率の測定は、リングプローブのタイプUR100(型式MCP-HTP16)を使用し、印加電圧10[V]、測定時間10秒の条件で行った。中間転写ベルト13の内周面側の表面抵抗率は、導電層42側にプローブを当てて測定し、中間転写ベルト13の外周面側の表面抵抗率は、表層40側にプローブを当てて測定した。本実施例では、この中間転写ベルト13の内周面側の表面抵抗率、外周面側の表面抵抗率を、それぞれ表層40の電気抵抗、導電層42の電気抵抗と定義する。なお、3層構成の中間転写ベルト13において基層41の表面抵抗率を測定する場合は、表層40を削る、若しくは表層40を基層41から剥がした後に測定を行う。
【0044】
本実施例では中間転写ベルト13の外周面側(表層40側)から測定した表面抵抗率は表層40の電気抵抗を反映しており、本実施例では2.6×1011Ω/□であった。また、本実施例では中間転写ベルト13の内周面側(導電層42側)から測定した表面抵抗率は導電層42の電気抵抗を反映しており、本実施例では4.7×106Ω/□であった。また、本実施例では、上述のような方法で基層41の表面低効率を測定すると、3.2×109Ω/□であった。このように、本実施例では、各層の電気抵抗を比較すると、導電層42の電気抵抗が最も低く設定されている。
【0045】
本実施例では、体積抵抗率が1×109Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下の範囲であり、内周面側の表面抵抗率が外周面側の表面抵抗率よりも小さく、且つ、内周面側の表面抵抗率が5.0×106Ω/□以下の範囲の中間転写ベルト13を用いた。なお、中間転写ベルト13の内周面側(導電層42)の表面抵抗率は、製造上の理由などから、典型的には1.0×104Ω/□以上である。導電層42の厚さが大きいほど、中間転写ベルト13の内周面側の表面抵抗率を低くすることができる。しかし、導電層42の厚さが大きすぎると、中間転写ベルト13の屈曲による導電層42の割れや、導電層42の基層41からの剥離が発生するおそれがある。これらを勘案し、本実施例では導電層42の厚さを3μmとしている。
【0046】
次に、導電層42の製造方法について説明する。導電層42は、導電剤としての導電性粒子と、バインダー樹脂と、を含む。
【0047】
導電層42に含有させる導電性粒子としては、電子導電剤を用いることが可能である。例えば、電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)、カーボンマイクロコイル、グラフェン、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛などが挙げられる。また、電子導電剤としては、酸化錫、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)なども挙げられる。さらに、電子導電剤としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子などが挙げられる。これらの中でも、導電性の高いケッチェンブラック(登録商標)などの高導電性カーボンブラックが好ましい。導電層42中のカーボンブラックの含有量は、上述の表面抵抗率の観点から、6質量%以上が好ましい。また、他の摺動部材(例えば、転写ローラや張架ローラなど)との摺擦による割れや摩耗といった物理的劣化を抑制する観点から、導電層42中のカーボンブラックの含有量は、15質量%以下が好ましい。すなわち、導電層42中のカーボンブラックの含有量は、6質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、9質量%以上13質量%以下の範囲がより好ましい。
【0048】
ここで、導電層42中のカーボンブラックの含有量は、導電層42を溶媒に溶かして得た溶液を、メンブレンフィルターなどでろ過して回収した固形物の組成分析から求めることができる。また、導電層42中のカーボンブラックの含有量は、導電層42を形成する際のカーボンブラックの添加量から算出してもよい。
【0049】
導電層42は、導電性粒子用の分散剤を含む。導電性粒子の一例としてのカーボンブラック用の分散剤としては、イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、遷移金属錯体などが挙げられる。これらの中でも、芳香族官能基を有する遷移金属錯体からなる分散剤は、π-π電子相互作用によりカーボンブラックの表面への吸着性が高く、優れた分散性を示すため、導電層42の電気抵抗の均一性の観点から好ましい。芳香族官能基を有する遷移金属錯体からなる分散剤としては、ポルフィリンやフタロシアニン構造を有する亜鉛化合物、コバルト化合物及び銅化合物などが挙げられる。これらの中でも、安価でかつ分散能が高いという理由から芳香族官能基を有する銅化合物が好ましい。なお、後述するMHIブラック#273(商品名、御国色素社製)は、カーボンブラックの分散剤として、芳香族官能基を有する銅化合物からなる分散剤を含有している。
【0050】
導電層42中の銅化合物の含有量は、カーボンブラックの分散性の観点から、1.0質量%以上が好ましい。また、導電層42中の分散剤量の増加に伴う相対的なバインダー樹脂の割合の低下に伴う膜(導電層42)の機械特性低下の抑制の観点から、13.5質量%以下が好ましい。すなわち、導電層中の銅化合物の含有量は、1.0質量%以上13.5質量%以下の範囲が好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下の範囲がより好ましい。
【0051】
ここで、導電層42中の銅化合物の含有量は、導電層42を溶媒に溶かして得た溶液を、メンブレンフィルターなどでカーボンブラックをろ過して回収したろ液をオーブンなどで加温し、溶媒を除去して得た固形物の重量から求めることができる。また、導電層42中の銅化合物の含有量は、導電層42を形成する際の銅化合物の添加量から算出してもよい。
【0052】
また、銅化合物中の銅の量は、銅化合物を熱分解反応させた残渣の量から求めることができる。銅化合物を構成する材料の中で、銅の熱分解温度は最も高い。そのため、上述のろ液から得た固形物を、熱重量分析装置(TGA)を用いて空気雰囲気下で有機物の分解温度以上、銅の分解温度未満の温度で処理して熱分解反応を進める。これにより、銅の含有量を算出することができる。具体的な条件としては、昇温速度20℃/分で600℃まで昇温後、数時間保持することで銅以外の熱分解反応を進める。重量減少速度が1%/時間以下になることで熱分解反応が完了したことを判断することができる。上述の銅化合物中には銅は略1質量%含まれる。そのため、例えば、上述の導電層42中の銅化合物のより好適な含有量である2.0質量%以上8.0質量%以下の範囲を、導電層42中の銅の含有量に換算すると、0.02質量%以上0.08質量%以下に相当する。
【0053】
導電層42に用いられるバインダー樹脂としては、テレフタル酸、オルトフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂が好適に用いられる。例えば、エチレンテレフタレート単位とエチレンオルトフタレート単位を有する共重合体、エチレンテレフタレート単位とエチレンイソフタレート単位を有する共重合体などである。また、他の例としては、エチレンオルトフタレート単位とエチレンイソフタレート単位を有する共重合体である。これらの共重合体は、ブロック/ランダムいずれの共重合体でもよい。また、2種以上の共重合体がブレンド、アロイされた混合体として用いてもよい。この場合、該導電層42は、化学構造が異なる複数のポリエステルが混在することから非晶性が非常に高い。上述のポリエステル樹脂の化学構造は、溶媒への溶解などの適切な手段により導電層42からポリエステルを抽出した後、単離し、熱分解GC/MSや、IR、NMR、元素分析を用いて同定することができる。
【0054】
導電層42は、上述のバインダー樹脂に加えて、後述する本実施例の効果を損なわない範囲でその他の添加剤を含有してもよい。具体的には、以下のようなものが挙げられる。二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、層状粘土鉱物、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル、フッ素オイル、パーフルオロポリエーテル、結晶制御剤、架橋剤などである。導電層42に含有される上記その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂の原料と共にジイソシアネートなどの架橋剤を加えて、ポリエステルとウレタンとの共重合体(ポリエステルウレタン樹脂)を形成することが導電層42の硬度の向上の観点から好ましい。
【0055】
導電層42のポリエステル樹脂は、導電層42の膜厚に鑑みると、溶媒に溶解して塗布できることが好ましい。例えば、導電層42の形成方法は、ポリエステル樹脂、該ポリエステル樹脂を溶解する溶媒、カーボンブラック及び分散剤を含む導電層42の形成用塗料の塗膜を基層41に塗布して導電層42を形成する工程を含む。ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸及びジオールなどの原料からエステル交換反応、重縮合を経て得るか、又は、市販のポリエステル樹脂含有塗料を用いることができる。カーボンブラック及び分散剤としては、各々を溶媒に混合し、ビーズミルなどで分散処理をするか、又はカーボンブラック、分散剤及び溶媒が予め均一分散された市販のスラリーを用いることができる。具体的には、MHIブラック#273(商品名、御国色素社製)などを用いることができる。溶媒としては、具体的には、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを用いることができる。さらに、導電層42の形成用塗料には、必要に応じてレベリング剤などの添加剤を加えることができる。レベリング剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。得られた導電層42の形成用塗料をディップコート、スプレーコート、リングコート、ロールコートなどの塗布手段によって、エンドレスベルト状の基層41の内周面へ塗布する。その後、溶媒を乾燥させて除去し、塗膜としての導電層42を形成することができる。
【0056】
以上のような方法で、内周面を形成する導電層42を有する中間転写ベルト13を形成することができる。
【0057】
なお、中間転写ベルト13は、3層構成に限定されるものではなく、例えば、基層41と導電層42との2層構成であってもよし、基層41と表層40との間や基層41と導電層42との間に別の層が設けられた4層以上の構成であってもよい。また、基層41の基材としては、ポリエステルの他、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの材料及びこれらの混合樹脂を用いてもよい。また、導電層42のバインダー樹脂としては、アクリル樹脂などの他の材料を用いてもよい。ただし、所望の電気特性を有するベルトを得やすいなどの理由から、基層41の基材がポリエステル樹脂を含むことが好ましい。また、前述の理由から、導電層42のバインダー樹脂が前述のようなポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0058】
4.張架ローラ
次に、本実施例における中間転写ベルト13の張架ローラについて更に説明する。
【0059】
本実施例の画像形成装置100は、中間転写ベルト13の張架ローラとして、対向ローラ15、テンションローラ14及び補助ローラ19を有する。
【0060】
本実施例では、前述のように、対向ローラ15は、アルミ材で形成された芯金に、肉厚が0.5mmのEPDMゴムで形成された弾性層が被覆されて構成された弾性ローラであり、外径は24.0mmである。
【0061】
また、本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、中間転写ベルト13が巻き掛けられるローラ部(中間転写ベルト13と当接可能な円筒形状あるいは円柱形状の部分)が金属により形成された金属ローラである。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、ローラ部、及び該ローラ部の回転軸線方向の両端部に設けられた、軸受により回転可能に支持される回転軸部を含み、全体が金属で形成された金属ローラである。なお、金属ローラのローラ部は中実であっても中空であってもよいが、本実施例ではテンションローラ14及び補助ローラ19を構成する金属ローラは、ローラ部を含む全体が中実である。本実施例では、テンションローラ14は、ローラ部の外径が20.0mm、ローラ部の回転軸線方向の長さが中間転写ベルト13の幅と同等の250mmである。また、本実施例では、補助ローラ19は、ローラ部の外径が18mm、ローラ部の回転軸線方向の長さが260mmである。なお、本実施例では、テンションローラ14のローラ部は、回転軸線方向の全域で外径が略同一のストレート形状である。一方、補助ローラ19のローラ部も同様のストレート形状でもよいが、対向ローラ15との間での中間転写ベルト13の波打ちを防止して画質の向上を図るなどのために、テーパ形状とするのがより好ましい。本実施例では、このテーパ形状は、補助ローラ19のローラ部の回転軸線方向に関する中央部の外径よりも端部の外径の方が小さくされている(クラウン形状)。
【0062】
特に、本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、比較的安価であり、比較的加工しやすい金属材料である、アルミ材を用いて形成されている。なお、ここでは、「アルミ材」とは、アルミニウム(純アルミニウム)及びアルミニウム合金を含むもの(アルミニウム系の金属材料)である。アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする(含有量が最も多い)合金である。また、ここでは、金属材料としてアルミ材を用いて形成された金属ローラを、単に「アルミローラ」ともいう。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19を構成するアルミローラは、アルミニウム合金の合金番号A6063を用いて形成されている。
【0063】
そして、本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、ローラ部の中間転写ベルト13の内周面(導電層42)と接触する表面を形成するアルマイト層を有する。ここでは、アルミ材をアルマイト処理(陽極酸化処理)することで形成される酸化被膜を「アルマイト層」という。つまり、本実施例では、アルミローラで構成されたテンションローラ14及び補助ローラ19の中間転写ベルト13の導電層42と接触する表面に、アルマイト処理(アルマイト化)が施されている。これにより、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部に、中間転写ベルト13の導電層42と接触する表面を形成するアルマイト層が設けられている。
図5(a)は、本実施例におけるテンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60の層構成を示す模式的な断面図(回転軸線方向と略直交する断面)である。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60は、アルミ材で形成された母材61の表面を形成するアルマイト層62を有する。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60は、少なくとも中間転写ベルト13の内周面と接触する部分(本実施例では回転軸線方向の全域)の全周の表面にアルマイト層62が設けられている。
【0064】
アルマイト処理は、利用可能な公知の方法を用いて行うことができる。アルマイト処理とは、硫酸や蓚酸などの電解液を用いて、アルミ材の表面を電気化学的に酸化させ、酸化アルミニウムAl2O3(アルミナ)の皮膜を生成させる方法である。また、アルマイト層は、利用可能な公知の方法を用いて封孔処理が施されていてもよい。アルマイト層の封孔処理としては、例えば水蒸気処理、沸騰水処理などを用いることができる。
【0065】
なお、本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、表面のアルマイト層に関して同様の構成とされる。
【0066】
アルマイト層の厚さは、5μm以上でよい場合があるが、より確実にアルミローラの表面がアルマイト層で被覆されるようにするためには10μm以上が好ましい。また、アルマイト層の厚さは、製造上の理由などから50μm以下、必要十分であることなどから典型的には30μm以下である。本実施例では、アルマイト層の厚さは、15μmとした。
【0067】
アルマイト層の厚さの測定は、測定装置としてデュアルスコープMP0Rを用い、渦電流式の測定方法で行うことができる。測定原理は、次のとおりである。つまり、測定器プローブ内のコイル部分で高周波交流による交流磁界を発生させると、その磁界の打消し方向に渦電流が発生する。渦電流による打消しで生じる抵抗の大きさと、プローブ距離(膜厚)と、に相関があるため、該抵抗を膜厚に変換することができる。そのため、上述の測定装置は、非磁性金属の上にある絶縁被膜の測定に有効である。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19のそれぞれのアルマイト層の厚さを、ローラ部上の計6点(周方向を2等分した2箇所のそれぞれにおける回転軸線方向の3点)で測定した。アルマイト層の厚さは、上述のような中間転写ベルト13の導電層42と接触する表面の十分な数の複数箇所で測定した値の平均値で代表することができる。
【0068】
また、アルマイト層の硬度は、中間転写ベルト13との間の摺擦による削れを防止のためにビッカース硬さで100HV以上が好ましい。アルマイト層の硬度がビッカース硬さで100HV未満の場合は、中間転写ベルト13との間の摺擦によって、テンションローラ14又は補助ローラ19の表面に傷が入り、その傷が中間転写ベルト13の導電層42にダメージを与える可能性がある。上記観点から、アルマイト層の硬度はビッカース硬度で120HV以上がより好ましい。また、アルマイト層の硬度は、製造上の理由などからビッカース硬さで400HV以下、必要十分であることなどから典型的には250HV以下である。
【0069】
アルマイト層の硬度の測定は、市販のビッカース硬さ試験機(例えば、ビッカース硬度計MMT-X7(マツザワ製))を用いて行うことができる。
【0070】
5.効果
次に、本実施例の構成による効果について説明する。本実施例では、上述のようにテンションローラ14及び補助ローラ19は、表面のアルマイト層に関して同様の構成とされるので、ここではテンションローラ14を例として説明する。
【0071】
表面にアルマイト層を有していないアルミローラで構成されたテンションローラ14に張架された中間転写ベルト13について、高温高湿環境下での放置や輸送を想定した高温保管評価を行った場合に、次の現象が発生する可能性があることがわかった。
【0072】
図4を用いて、上記高温保管時に発生する可能性のある現象について説明する。
図4(a)は、表面にアルマイト層を有していないアルミローラで構成されたテンションローラ14と中間転写ベルト13の導電層42との接触部分を示す模式図である。また、
図4(b)~(e)は、その接触部分を拡大した模式図である。なお、上述のように、ここではテンションローラ14の場合について説明するが、補助ローラ19の場合も同様である。
【0073】
まず、中間転写ベルト13の導電層42中に分散剤として含まれる銅化合物から銅イオンが生成する。次に、生成した銅イオンと、テンションローラ14のアルミニウムとの間で、酸化還元反応が起きる。これにより、
図4(b)に示すようにアルミニウムから銅イオンへと電荷が移動し、
図4(c)に示すようにアルミニウムイオンが生成する。そして、
図4(d)に示すように、生成したアルミニウムイオンがテンションローラ14の表面で酸化して、酸化物としてテンションローラ14の表面に付着する。
【0074】
これは、空気中に比較的多くの水分が含まれている高温高湿条件下で特に発生しやすい。画像形成装置100では、高温高湿環境下での放置や輸送の際に画像形成装置100の内部の空気中に含まれる水分量が多くなる可能性がある。また、画像形成装置100では、定着装置50によって熱が加えられることによって、記録材Pの含有水分が気化して、画像形成装置100の内部の空気中に含まれる水分量が多くなる。そして、場合によっては、画像形成装置100の内部で結露が発生する可能性もある。このように、画像形成装置100の内部の空気中に含まれる水分が多い場合には、上述のような中間転写ベルト13の導電層42とテンションローラ14との間での反応が発生しやすくなる。
【0075】
上述のような酸化還元反応によって発生したアルミニウム由来の成分(Al
2O
3、Al(OH)
3など)は、テンションローラ14の表面(中間転写ベルト13とテンションローラ14との界面)に固着する可能性がある。この固着が発生すると、中間転写ベルト13とテンションローラ14との間で貼り付きが発生してしまう可能性がある。そして、この貼り付きが発生すると、画像形成装置100の起動時に中間転写ベルト13の回転を開始する際に、テンションローラ14から中間転写ベルト13が離れにくくなる。そのため、テンションローラ14に中間転写ベルト13が巻き付いて中間転写ベルト13に折れが発生してしまう可能性がある。また、中間転写ベルト13の回転を継続すると、上記貼り付きが発生した部分に力が加わるため、中間転写ベルト13はテンションローラ14から離れるが、このときに
図4(e)に示すように中間転写ベルト13の導電層42ごと剥がれてしまう可能性がある。この導電層42の剥がれが発生すると、中間転写ベルト13に基層41が露出して導電層42が無い部分ができてしまう。
【0076】
このような中間転写ベルト13の折れや導電層42の剥がれといった変形が発生すると、その発生の程度が軽微であれば問題ないが、繰り返し発生するなどして変形の程度が進んだ場合には、装置の耐久性の向上が難しくなる可能性がある。
【0077】
まず、中間転写ベルト13の折れが発生すると、折れた部分において中間転写ベルト13が凹形状となってしまう。これにより、一次転写の際に感光ドラム1と中間転写ベルト13との間で空間が生じ、一次転写ができずに画像不良が発生する可能性がある。同様に、二次転写の際にも中間転写ベルト13と記録材Pとの間で空間が生じ、二次転写ができずに画像不良が発生する可能性がある。また、二次転写残トナーなどの付着物の回収の際に、クリーニングブレード31の上記凹形状への追従性が不足して、二次転写残トナーなどの付着物を回収しきれなくなる可能性がある。あるいは、逆に、クリーニングブレード31が凹形状に追従してしまい、クリーニングブレード31と中間転写ベルト13との接触状態が変化して、二次転写残トナーなどの付着物がクリーニングブレード31をすり抜けてしまう可能性がある。このように、中間転写ベルト13の折れの発生の程度が進むと、画像不良などが発生する可能性があるため、中間転写ベルト13の交換などの必要が生じ、装置の耐久性の向上が難しくなる可能性がある。
【0078】
また、中間転写ベルト13の導電層42に剥がれ(剥離部)が発生すると、導電層42と他の摺動部材(例えば、転写ローラや張架ローラなど)との摺擦により、先に剥がれた部分を起点に導電層42の剥がれ領域が拡大する可能性がある。また、中間転写ベルト13の導電層42の剥がれが発生すると、導電層42と他の摺動部材(例えば、転写ローラや張架ローラなど)との摺擦により、剥がれた導電層42より内側の基層41に対して摺擦で傷を与えてしまう可能性がある。導電層42が剥がれた部分は、当初の中間転写ベルト13より高い電気抵抗になっており、一次転写時や二次転写時に必要な転写電圧が不足して、画像不良が発生する可能性がある。また、中間転写ベルト13の基層41に傷が入ると、中間転写ベルト13の機械的強度の低下などが懸念される。このように、中間転写ベルト13の導電層42の剥がれの発生の程度が進むと、画像不良などが発生する可能性があるため、中間転写ベルト13の交換などの必要が生じ、装置の耐久性の向上が難しくなる可能性がある。
【0079】
以上のように、内周面を形成する低抵抗の導電層42を有する中間転写ベルト13を用いることで、良好な転写性能を達成することができる。しかし、高温高湿環境下などにおいて、導電層42と接触するアルミローラのアルミニウムと導電層42中に分散剤として含まれる銅化合物の銅との間での反応で生じた成分が、アルミローラの表面に固着する可能性がある。そして、この固着した成分によって中間転写ベルト13とアルミローラとの間で貼り付きが発生してしまう可能性がある。その結果、中間転写ベルト13の折れや導電層42の剥がれが発生してしまい、装置の耐久性の向上が難しくなる可能性がある。
【0080】
上述の課題の原因は、導電層42中に含まれる銅化合物の銅とアルミローラのアルミニウムとの間での酸化還元反応が発生することにある。そこで、本実施例では、これを抑制するために、アルミローラで構成されたテンションローラ14(本実施例では更に補助ローラ19)の表面をアルマイト処理し、表面にアルマイト層(酸化被膜)を形成する。この表面をアルマイト処理したアルミローラをテンションローラ14(本実施例では更に補助ローラ19)として用いることで、アルミローラのアルミニウムと導電層42とが直接触れず、アルミローラのアルマイト層と導電層42とが触れるようになる。そのため、上述の酸化還元反応を抑制し、中間転写ベルト13とアルミローラとの間の貼り付きによる上述の課題の発生を抑制することができる。本実施例では、アルマイト層の厚さは、上述の反応の抑制と絶縁に十分な厚さとして15μmとした。
【0081】
ここで、アルミローラで構成されたテンションローラ14にアルマイト層を設けると、テンションローラ14は絶縁ローラとなり、アルマイト層で形成されたテンションローラ14の表面のチャージアップ現象が生じ得ると考えられる。しかし、中間転写ベルト13の内周面を形成する導電層42が低抵抗であるため、テンションローラ14の表面から対向ローラ15や一次転写ローラ10への通電経路があるため、チャージアップ現象は発生しない。補助ローラ19に関しても同様である。
【0082】
このように、本実施例の画像形成装置100は、エンドレス形状の中間転写ベルト13であって、基層41と、基層41よりも内周面側に位置し該内周面を形成する導電層42と、を有する中間転写ベルト13を備えている。導電層42は、バインダー樹脂と、導電剤としての本実施例ではカーボンブラックとされる導電性粒子と、本実施例では導電性粒子の分散剤として用いられる銅化合物と、を含む。また、導電層42の表面抵抗率は5.0×106Ω/□以下である。本実施例では、基層41は、ポリエステル樹脂を含有する。また、本実施例では、バインダー樹脂は、テレフタル酸、オルトフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含む。そして、画像形成装置100は、中間転写ベルト13の内周面側に配置され、中間転写ベルト13が巻き掛けられるローラ部がアルミ材により形成されたローラであって、中間転写ベルト13の内周面を形成する導電層42と接触する表面を形成するアルマイト層62を有するローラ(本実施例ではテンションローラ14及び補助ローラ19)を備えている。
【0083】
斯かる構成により、転写性の向上などのために、内周面を形成する銅化合物を含有する導電層42を有する中間転写ベルト13を使用すると共に、張架ローラとして比較的安価なアルミローラを使用した構成において、装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0084】
6.評価試験
次に、本実施例と比較例とについて行った評価試験の結果について説明する。比較例では、テンションローラ14及び補助ローラ19として、アルマイト処理を行っていないアルミニウム合金の合金番号A6063で形成されたアルミローラを用いた。この点を除いて、比較例の構成は本実施例の構成と実質的に同じである。なお、比較例についても本実施例と同一の符号を付して説明する。
【0085】
評価試験は、次のようにして行った。本実施例の構成と比較例の構成とのそれぞれについて、中間転写ベルト13をテンションローラ14、補助ローラ19及び対向ローラ15に張架して、温度60℃、相対湿度85%の高温高湿条件下で3日間放置した。その状態で、導電層42とテンションローラ14及び補助ローラ19との間での貼り付きの発生の有無、中間転写ベルト13を手動で回転させた際の中間転写ベルト13の折れの発生の有無、導電層42の剥がれの発生の有無を、本実施例と比較例とで比較した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
比較例の構成では、導電層42とテンションローラ14又は補助ローラ19との間での貼り付きが発生し、中間転写ベルト13の折れと、導電層42の剥がれと、が発生した。そのため、前述のように装置の耐久性の向上が難しくなる可能性があることがわかる。一方、本実施例の構成では、導電層42とテンションローラ14及び補助ローラ19との間での貼り付きが発生せず、中間転写ベルト13の折れも、導電層42の剥がれも発生しなかった。したがって、本実施例の構成によれば、装置の耐久性の向上を図ることが可能であることがわかる。
【0088】
ここで、前述の課題は、空気中の水分との接触の多い、中間転写ベルト13の内周面を形成する導電層42とアルミローラとの接触端部で発生が顕著な傾向にある。そのため、中間転写ベルト13の内周面を形成する導電層42に接触するすべてのアルミローラに関して前述の酸化還元反応の発生を抑制することが好ましい。そこで、本実施例では、導電層42と接触するアルミローラで構成されたテンションローラ14及び補助ローラ19の両方の導電層42と接触する表面にアルマイト層を設けた。ただし、特に、中間転写ベルト13との巻き付き量の大きいアルミローラにおいて、中間転写ベルト13とアルミローラとの密着が強いため、貼り付きによる影響をより受ける傾向にある。そのため、例えば本実施例の構成におけるテンションローラ14のように、導電層42と接触する複数のアルミローラのうち、中間転写ベルト13の巻き付き量の比較的大きいアルミローラでは、前述の酸化還元反応の発生をより抑制することが望まれる。したがって、例えば本実施例の構成におけるテンションローラ14など、中間転写ベルト13の巻き付き量の比較的大きい少なくとも1つのアルミローラの導電層42と接触する表面にアルマイト層を設けることによって、相応の効果を得ることができる。
【0089】
以上説明したように、本実施例によれば、アルミローラで構成されたテンションローラ14及び補助ローラ19の中間転写ベルト13の導電層42に接触する表面にアルマイト処理によりアルマイト層を設けることで、装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0090】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置と同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0091】
実施例1で説明した中間転写ベルト13と金属ローラとの貼り付きは、銅化合物からの銅イオンと金属ローラの金属との間でのイオン化傾向が異なるために発生する酸化還元反応が原因である。実施例1の構成では、アルミローラのアルミニウムの方が銅よりもイオン化傾向が大きい。
【0092】
そこで、本実施例では、中間転写ベルト13の内周面(導電層42)と接触する金属ローラの表面を、該金属ローラの母材の金属よりもイオン化傾向が銅と近い金属でコートして、該表面にコート層を形成する。本実施例では、金属ローラの表面にメッキ処理によりメッキ層を形成する。これにより、金属ローラの母材の金属と銅との間での酸化還元反応を抑制することができる。また、金属ローラの表面を金属でコートすることで、金属ローラの通電性を確保することができる。
【0093】
本実施例では、金属ローラとしてのアルミローラで構成されたテンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部の中間転写ベルト13の導電層42と接触する表面に、ニッケルメッキ処理が施されている。これにより、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部に、中間転写ベルト13の導電層42と接触する表面を形成するコート層としてニッケルメッキ層が設けられている。
図5(b)は、本実施例におけるテンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60の層構成を示す模式的な断面図(回転軸線方向と略直交する断面)である。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60は、アルミ材で形成された母材61の表面を形成するニッケルメッキ層63を有する。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19のローラ部60は、少なくとも中間転写ベルト13の内周面と接触する部分(本実施例では回転軸線方向の全域)の全周の表面にコート層(ニッケルメッキ層)63が設けられている。なお、ニッケルメッキ層は、メッキ処理により形成されたニッケルを主成分とする層である。また、本実施例におけるコート層(ニッケルメッキ層)の厚さは、実施例1におけるアルマイト層の厚さに準じて設定することができる。
【0094】
これにより、金属単体の標準電位(標準水素電極の電位を基準(0ボルト)とした標準電極電位)の差(ここでは、「標準電位差」ともいう。)で、アルミニウムと銅との間の約2.00Vの標準電位差に対して、ニッケルと銅との間の約0.60Vの標準電位差にすることができる。したがって、ニッケルメッキ層を設けることで、ニッケルメッキ層を設けない場合と比較して、金属ローラの金属と導電層42の銅との間の酸化還元反応を抑制することができる。なお、アルミニウムの標準電位は-1.662V、ニッケルの標準電位は-0.257V、銅の標準電位は0.342Vとしている。
【0095】
メッキ処理は、利用可能な公知の方法を用いて行うことができる。例えば、アルミ材に対するニッケルメッキは、いわゆる無電解メッキにより行うことができる。
【0096】
ここで、前述の酸化還元反応を抑制するためには、金属ローラの導電層42と接触する表面を形成するコート層の金属と銅との標準電位の差が、金属ローラの母材の金属と銅との標準電位の差よりも小さければよい。ただし、前述の酸化還元反応をより確実に抑制するためには、該コート層の金属と銅との標準電位の差を0.80V以下にすることが好ましく、0.60V以下にすることがより好ましい。この標準電位の差は略0Vであってもよい。
【0097】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト13の内周面側に配置され、中間転写ベルト13が巻き掛けられるローラ部が金属材料により形成されたローラであって、ローラ部が、主に第1の金属からなる第1の金属材料により形成された母材61と、中間転写ベルト13の内周面を形成する導電層42と接触する表面を形成する、上記母材上に主に第2の金属からなる第2の金属材料により形成されたコート層63と、を有し、第2の金属と銅との標準電位の差は、第1の金属と銅との標準電位の差よりも小さいローラ(本実施例ではテンションローラ14及び補助ローラ19)を備えている。なお、金属材料が主に所定の金属からなるとは、該金属材料中の該所定の金属の含有量が、該金属材料中に含まれていてよい金属のうち最も多いことをいう。また、本実施例では、コート層は、メッキ処理により形成されるメッキ層であるが、蒸着、溶射などの他の方法でコート層を形成することも企図し得る。また、本実施例では、上記母材はアルミ材により形成されており、上記コート層はニッケルメッキ層であるが、斯かる態様に限定されるものではない。例えば、SUM材(快削鋼)で形成された母材に、コート層としてニッケルメッキ層などのメッキ層を設けてもよい。この場合も、母材の主な金属と銅との標準電位の差よりも、コート層の主な金属と銅との標準電位の差を小さくすることができる。
【0098】
実施例1で説明した評価試験と同様にして、本実施例の構成と比較例の構成とについて評価試験を行った。本実施例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、ニッケルメッキ層を設けたアルミローラで構成されている。比較例では、テンションローラ14及び補助ローラ19は、ニッケルメッキ層を設けていないアルミローラで構成されている。そして、温度60℃、相対湿度85%の高温高湿条件下で3日間放置して、貼り付きの発生の有無、手動回転時の中間転写ベルト13の折れの発生の有無、導電層42の剥がれの発生の有無を比較した。その結果、本実施例の構成では、貼り付きを抑制でき、中間転写ベルト13の折れと導電層42の剥がれを抑制することができた。
【0099】
また、ニッケルメッキは通電可能なため、通電性を確保しつつ、前述の酸化還元反応の発生を抑制することができる。実施例1の構成は、画像形成装置100の動作時(典型的には画像形成時)に通電の必要のないローラに対して特に好適に用いることができるものであるといえる。これに対して、本実施例の構成は、画像形成装置100の動作時(典型的には画像形成時)に通電が必要なローラに対して特に好適に用いることができるものであるといえる。本実施例では、画像形成装置100の動作時に通電が不要なテンションローラ14及び補助ローラ19に本実施例の構成を適用したが、一次転写ローラ10や対向ローラ15といった動作時に通電が必要なローラに本実施例の構成を適用することができる。つまり、一次転写ローラ10をアルミローラなどの金属ローラで構成することができる。なお、この場合、一次転写ローラ10を、中間転写ベルト13の移動方向に関して感光ドラム1に対し例えば下流側にオフセットさせて配置することが好ましい。また、これにより、中間転写ベルト13の移動方向に関して、感光ドラム1と中間転写ベルト13との接触領域と、中間転写ベルト13と一次転写ローラ10との接触領域と、が重ならないようにすることが好ましい。また、対向ローラ15をアルミローラなどの金属ローラで構成することができる。なお、この場合、中間転写ベルト13を駆動する駆動ローラを対向ローラ15とは別に設けることが好ましい。このように、一次転写ローラ10や対向ローラ15などの、導電層42に接触し、画像形成装置100の動作時(典型的には画像形成時)に電流経路として用いられる金属ローラの導電層42に接触する表面に、ニッケルメッキ処理を行うことが有効である。画像形成装置100が中間転写ベルト13の導電層42に接触する複数の金属ローラを有する場合に、動作時に通電が必要な金属ローラについては本実施例の構成を適用し、動作時に通電が不要な金属ローラについては実施例1の構成を適用してもよい。そして、中間転写ベルト13の導電層42と接触する全ての金属ローラの表面に、実施例1に従うアルマイト層又は本実施例に従うコート層を設けることが好ましい。
【0100】
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、中間転写ベルト13の導電層42とこれに接触する金属ローラとの間の通電性を確保することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 感光ドラム
10 一次転写ローラ
13 中間転写ベルト
14 テンションローラ
15 二次転写対向ローラ
19 補助ローラ
25 二次転写ローラ
62 アルマイト層
63 コート層(ニッケルメッキ層)