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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20241021BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 371
G03G9/087 331
G03G9/087 333
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020190196
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079180
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】大山 一成
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
(72)【発明者】
【氏名】菅原 庸好
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】村田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆穂
(72)【発明者】
【氏名】中島 良
(72)【発明者】
【氏名】石上 恒
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-087127(JP,A)
【文献】特開平05-197202(JP,A)
【文献】特開2002-012657(JP,A)
【文献】特開2020-063348(JP,A)
【文献】特開2000-122341(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、無機微粒子を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂は下記一般式(1)で表される変性ポリエステルを含有し、
前記無機微粒子はシリコーンオイルで表面処理されたものであることを特徴とするトナー。
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、-R1OH、-R1COOH、
【化2】
-R1NH2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下であって、
前記ポリエステル部位は、ポリエステルユニットとシリコーンユニットとをつなぐ連結基を含むものとする。
【請求項2】
前記トナー粒子が、結着樹脂100質量部に対して、無機微粒子を0.5質量部以上10質量部以下含有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記無機微粒子は、シリコーンオイルに由来する炭素量が2.0質量%以上6.0質量%以下である請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記無機微粒子は、シリカあるいはアルミナである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記結着樹脂は、前記変性ポリエステルを50質量%以上98質量%以下含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記変性ポリエステルは、シリコーンユニットを0.5質量%以上5.0質量%以下含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記シリコーンユニットは、前記一般式(1)中、Rがいずれもメチル基である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及に伴い、更なる高速化、高画質化はもちろんのこと、省エネルギー性能、色味安定性能、およびメンテナンスフリー性能など、維持費用等の付加的な性能の向上も要求されている。
求められる具体的なトナーとしては、メンテナンスフリー対応策として、サービスマンによる現像剤の交換頻度を抑えるために、長期の画像出力においても劣化しにくいトナーが求められている。
そこで、長期の画像出力においても劣化しにくいトナーとして、トナーの表面に大粒径の無機微粒子を添加し、スペーサー効果を発現させる提案(特許文献1)がなされている。
一方、フルカラー複写機の印刷市場への適用も始まっており、印刷物の画像強度も重要視されている。そこで、印刷物の強度を向上させるために、ラジカル反応性の不飽和結合を有する結着樹脂を、紫外線を照射することで架橋させるトナーが提案されている(特許文献2および特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-063607号公報
【文献】特開2004-151145号公報
【文献】特開2013-57868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトナーは、初期の画像出力においては、スペーサー効果によるトナーの流動性や付着性が担保され、高画質の画像出力が可能となっている。しかし、結着樹脂としてポリエステルやスチレンアクリル樹脂を用いているため、長期の画像出力における現像器の撹拌等により、大粒径の無微微粒子がトナー表面に埋没し、トナーの付着性が高くなることから、転写効率が低下し、画質濃度が低下する場合があった。
また、特許文献2および特許文献3に記載のトナーは、結着樹脂の架橋によって印刷物の画像強度が可能となっている。しかし、印刷物の裁断等によって印刷物が折り曲げられる場合には、印刷物の画像がひび割れて、メディアから剥がれる場合があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、転写安定性と画像強度に優れたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の構成を用いることにより、転写安定性と画像強度に優れたトナーを提供することが可能となった。本発明は以下のとおりである。
本発明のトナーは、結着樹脂、無機微粒子を含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂は下記一般式(1)で表される変性ポリエステルを含有し、
前記無機微粒子はシリコーンオイルで表面処理されたものであることを特徴とするトナーである。
【0006】
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、-R1OH、-R1COOH、
【0007】
【化2】
-R1NH2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下であって、
前記ポリエステル部位は、ポリエステルユニットとシリコーンユニットとをつなぐ連結基を含むものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、転写安定性と画像強度に優れたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を示す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
本発明者らは、転写安定性と画像強度の更なる向上を目的として、鋭意検討をした結果、下記一般式(1)で表される変性ポリエステルを含有する結着樹脂と、シリコーンオイルで表面処理された無機微粒子を含有するトナー粒子を含有するトナー用いることで、従来にない優れた転写安定性と画像強度が得られることを見出した。
【0011】
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、-R1OH、-R1COOH、
【0012】
【化4】
-R1NH2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下である。)
【0013】
本発明の効果が得られた理由は以下のように考えている。
【0014】
転写安定性を向上させるために、トナーが付着している部材との付着力を低減させる方法が考えられる。その手段として、トナーと部材との接触面積を減らすこと、あるいはトナーと部材との単位面積当たりの付着力を下げることが考えられる。接触面積を減らすためには、無機微粒子をトナー母体に含有することにより、トナー母体に外添した無機微粒子の埋没を抑制する手段があり、この手段により長期の画像出力における転写安定性が向上する。しかし、トナー母体に無機微粒子が含有することで、結着樹脂と無機微粒子の界面で割れやすくなるため、印刷物の画像強度が低下する。
【0015】
また、トナーと部材との単位面積当たりの付着力を下げる手段として、表面自由エネルギーが低いシリコーンをポリエステル樹脂に変性させることが考えられる。シリコーン変性させたポリエステル樹脂は、シリコーン部位の表面自由エネルギーが低いため、部材との付着力が低下し、転写性が向上し、外添剤が埋没しても高い転写性を可能にする。しかし、シリコーン部位はポリエステル樹脂と極性が離れているため、印刷物の折り曲げ等で印刷物の画像層に大きなストレスがかかる場合には、ポリエステルとシリコーンの界面で画像層が割れて剥がれることがある。
【0016】
そこで鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、シリコーン変性ポリエステル樹脂とシリコーンオイルで表面処理した無機微粒子とを組み合わせることで、転写安定性と画像強度を両立することを見出した。ポリエステル樹脂が高極性、シリコーン変性部位が低極性であるため、シリコーン変性ポリエステル樹脂中に、シリコーンオイル表面処理した無機微粒子を含有させた場合、シリコーン変性部位は、ポリエステルよりも極性が近い無機微粒子の周りに偏在する。この結果、画像が割れる原因となるシリコーンとポリエステルとの界面が減少し、ポリエステル同士の内部凝集力が強固になることで、印刷物上における画像層の強度が向上する。
【0017】
さらに、無機微粒子がトナー母体に含有していることで、長期に渡り外添剤の埋没を抑制でき、さらに、シリコーン変性部位により部材との付着力を低減することで、転写安定性が向上する。
【0018】
上述の理由により、優れた転写安定性と画像強度を両立するトナーを得るに至った。
【0019】
本発明のトナーに使用される結着樹脂について説明する。
【0020】
本発明のトナーに使用される結着樹脂は、変性ポリエステルを含有することが必要である。本発明において「変性ポリエステルを含有する」とは、例えば、変性ポリエステルとその他の樹脂を2種以上含有した結着樹脂が含まれる。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これら2種以上の樹脂ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明において、結着樹脂中、変性ポリエステルを50質量%以上98質量%以下含有することが好ましい。変性ポリエステルが結着樹脂の主成分であることにより、上述した転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0022】
上記一般式(1)の変性ポリエステルにおけるA、Bに係わるポリエステル部位を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0023】
ポリエステル部位を構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。
【0024】
一方、ポリエステル部位を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I-1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I-2)で示されるジオール類。
【0025】
【化5】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0026】
【化6】
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
【0027】
本発明で使用される、ポリエステル部位の構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
【0028】
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用される、ポリエステル部位の構成成分は、上述した化合物以外に、1価のカルボン酸化合物及び1価のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられ、また、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸などが挙げられる。
【0030】
また、1価のアルコール化合物としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
【0031】
前記変性ポリエステルのシリコーンユニットを構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0032】
本発明におけるシリコーンユニットは、下記一般式で表されるシリコーンユニットを有することを特徴とする。
【0033】
【化7】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下である。)
【0034】
シリコーンユニットを構成する成分としては、末端にポリエステルと化学的に反応する官能基を有するシリコーンオイルを用いることができる。ポリエステルと反応する官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0035】
尚、一般式(1)において、ポリエステル部位Bは、ポリエスエルユニットとシリコーンユニットをつなぐ連結基(反応性官能基の残基など)を含んでおり、連結基は、-R1OH、-R1COOH、
【0036】
【化8】
-R1NH2からなる群から選択されるいずれかの官能基(R1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基)である。
【0037】
前記シリコーンユニットの変性量(含有量)は、0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましい。シリコーンユニットの変性量が上記の範囲にあることで、上述した転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0038】
前記シリコーンオイルの末端の官能基は、ポリエステルとの反応性を制御する上で、官能基はヒドロキシ基またはカルボキシル基を用いることが好ましい。官能基をヒドロキシ基またはカルボキシキル基にすることで、上述した転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0039】
本発明におけるシリコーンオイルの官能基の価数は、1価、2価又は3価以上のシリコーンオイルを用いることができる。ポリエステルの主骨格にシリコーンユニットを導入することで、転写安定性・画像強度が良好となることから、シリコーンオイルの両末端に官能基を有する2価のシリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0040】
本発明において、変性ポリエステルの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物及び官能基を有するシリコーンオイルをエステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。
【0041】
本発明における変性ポリエステルの軟化点は、85℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。変性ポリエステルの軟化点が上記範囲であることにより、転写安定性が向上すると共に、画像強度も良好となる。
【0042】
なお、軟化点は、以下のようにして測定される。樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0043】
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度Tmである。
【0044】
測定試料は、約1.3gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
【0045】
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0046】
本発明のトナーは、無機微粒子を含有する。本発明のトナーで使用される無機微粒子は、金属酸化物である、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化セリウム、酸化錫、酸化亜鉛、などからなる無機微粒子が挙げられる。また、無定形炭素(カーボンブラックなど)、窒化物(窒化ケイ素など)、炭化物(炭化ケイ素など)、金属塩(チタン酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)からなる無機微粒子が挙げられる。また、前記無機微粒子は、上記の如き金属酸化物を単独で使用してもよいし、複数で使用してもよい。さらに、複数の金属酸化物を複合化したものであっても良い。本発明においては、無機微粒子がシリカ、又はアルミナであることが好ましい。シリカやアルミナにすることで、転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0047】
本発明の無機微粒子は、比表面積が10m2/g以上200m2/g未満であることが好ましい。比表面積が10m2/g以上であるとき、結着樹脂と無機微粒子との界面が小さくなるため、画像強度の観点で好ましい。また比表面積が200m2/g未満のときは、外添剤の埋没抑制の効果が良好に発現し、転写安定性の観点で好ましい。
【0048】
本発明の無機微粒子は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。無機微粒子の含有量が上記の範囲であるとき、上述した転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0049】
また、本発明の無機微粒子は、無機微粒子にシリコーンオイルにより表面処理したものであることを特徴としている。
【0050】
シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性のシリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンなどがあげられる。
【0051】
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。
【0052】
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が5mm2/s以上2000mm2/s以下であることが好ましい。5mm2/s未満では十分な疎水性が得られないことがあり、2000mm2/sを超える場合には無機微粒子処理時に均一に処理しづらくなり、凝集物ができやすく十分な流動性が得られないことがある。
【0053】
シリコーンオイルの好ましい処理量は、無機微粒子100質量当たり2質量部以上30質量部以下が無機微粒子の表面に均一にシリコーンオイルを処理できるため好ましい。
【0054】
シリコーンオイル処理の方法は、例えば無機微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよく、シリコーンオイルを噴霧する方法でもよい。
【0055】
本発明の無機微粒子は、シリコーンオイルに由来する炭素量が2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。シリコーンオイルに由来する炭素量が上記の範囲にあることで、上述した転写安定性と画像強度の効果を効果的に得ることが可能となる。
【0056】
本発明の無機微粒子の一例であるシリカの製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。珪素化合物をガス状にして火炎中において分解・溶融させる火炎溶融法、四塩化珪素を酸素、水素、希釈ガス(例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素など)の混合ガスとともに高温で燃焼させる気相法(乾式法シリカ又はヒュームドシリカ)である。また、水が存在する有機溶媒中で、アルコキシシランを触媒により加水分解、縮合反応させ後、得られたシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥する湿式法(ゾルゲルシリカ)である。
【0057】
本発明の無機微粒子の一例であるアルミナとしては、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、塩化アルミニウムの火焔分解法により得られるアルミナ微粉体が用いられる。結晶系としてはα,β,γ,δ,ζ,η,θ,κ,χ,ρ型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いられ、α,δ,γ,θ,混晶型,アモルファスのものが好ましく用いられる。
【0058】
本発明の無機微粒子は任意の疎水化処理がされても良い。疎水化処理については特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0059】
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、β-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラメン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2~12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位に夫々1個あたりのケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0060】
本発明のトナーで使用される着色剤は、本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
【0061】
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
磁性酸化鉄粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30質量部以上150質量部以下が好ましい。
【0063】
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0064】
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0065】
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0066】
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0067】
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、、2、、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48::2、48::3、48::4、49、50、51、52、53、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19:C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、52、58、63、81、82、83、84、100、109、111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40等、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0068】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0069】
トナーに離型性を与えるために、離型剤(ワックス)を用いてもよい。本発明に用いられるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N、N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N、N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N、N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0070】
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスである。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
【0071】
ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時に添加してもよいし、結着樹脂の製造時に添加してもよい。また、これらワックスは、一種類を単独で使用してもよいし二種類以上を併用して使用してもよい。ワックスは、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
【0072】
本発明のトナーは、荷電制御剤として、既知の荷電制御剤を用いることができる。既知の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもかまわない。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下添加することが好ましい。
【0073】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0074】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0075】
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。
【0076】
シリカ微粉体のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉体の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0077】
シリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物のような処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
【0078】
さらに本発明のトナーには、必要に応じて他の外添剤を添加してもよい。このような外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。帯電補助剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
【0079】
本発明におけるトナー粒子を製造する方法としては、平均円形度を0.930以上0.990以下に調整することができる製造方法であれば、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。
【0080】
粉砕法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。変性ポリエステル、結晶性ポリエステル、着色剤及び必要に応じてその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。この際、微粉砕時の排気温度を調整することで、トナー粒子の平均円形度を制御することができる。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得ることができる。
【0081】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
【0082】
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0083】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
【0084】
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、トナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。
【0085】
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0086】
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
【0087】
次に本発明に関わるトナー粒子の粒度分布の測定方法に関して記載する。
【0088】
(トナーの粒度分布の測定)
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0089】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0090】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0091】
(平均円形度の測定方法)
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0092】
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0093】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス(株)製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3、000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0094】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0095】
なお、本願実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けたときと同じ測定及び解析条件で測定を行った。
【0096】
(無機微粒子のシリコーンオイルに由来する炭素量の測定)
下記の様に、酸素気流下の温度1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中の炭素量が得られる。
1.試料2gを円筒金型に入れプレスする。
2.プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA-110で測定する。
【0097】
本発明における無機微粒子は、転写安定性及び画像強度の観点からシリカあるいはアルミナであることが好ましい。
【0098】
(結着樹脂及びトナーのガラス転移温度(Tg)の測定)
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0099】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0100】
具体的には、樹脂又はトナー約3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
【0101】
測定範囲30~180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【実施例
【0102】
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下、実施例に基づいて具体的に本願発明について説明する。しかしながら、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部は、質量基準である。
【0103】
<結着樹脂PL1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
上記ポリエステルユニットを構成するモノマー97部及び両末端にヒドロキシ基を有するジメチルシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)3部を、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0104】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂PL1を得た。結着樹脂PL1は、シリコーンユニットの両末端にポリエステルユニットが結合した樹脂であり、Tmは130℃、Tgは55℃であった。
【0105】
<結着樹脂PL2~PL6及びPL8、PL9の製造例>
表1に示すようにシリコーンオイルの種類及び添加量を変更し、反応時間を調整してTm、Tgを変更した以外は結着樹脂PL1の製造例に従い、結着樹脂PL2~PL6、PL8、PL9を得た。得られた結着樹脂は、シリコーンユニットの両末端にポリエステルユニットが結合した樹脂であり、その物性を表1に示した。
【0106】
<結着樹脂PL7の製造例>
シリコーンオイルの添加量を0に変更し、反応時間を調整してTm、Tgを変更した以外は結着樹脂PL1の製造例に従い、結着樹脂PL7を得た。Tmは100℃、Tgは60℃であった。
【0107】
<結着樹脂PH1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 10.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物):90.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。さらに、チタンテトラブトキシド500ppmを反応槽に投入した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
【0108】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
【0109】
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
その後、上記材料とともにtert-ブチルカテコール(重合禁止剤)0.003モル部とを反応槽に投入し、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が148℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め(第2反応工程)、結着樹脂PH1を得た。得られた結着樹脂PH1の軟化点(Tm)は148℃、ガラス転移温度(Tg)は59℃であった。
【0110】
【表1】
【0111】
<無機微粒子S1の製造例>
撹拌機付きオートクレーブに、未処理の乾式シリカ(比表面積50m2/g、無機微粒子S0)を投入し、室温で撹拌により流動化状態にした。
【0112】
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、シリカ原体100部に対し、10部のジメチルシリコーンオイル(粘度=400mm2/s)を噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら150℃まで昇温させてさらに2時間撹拌した後に取り出し、本発明で使用した無機微粒子S1を得た。シリコーンオイルに由来する炭素量は4.0質量%であった。無機微粒子S1の物性を表2に示す。
【0113】
<無機微粒子S2~S10の製造例>
無機微粒子S1と同様の手法にて基材やシリコーンオイルを表2に示すように変更した以外は無機微粒子S1と同様にして、無機微粒子S2~S10を得た。無機微粒子S2~S10の物性を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
〔実施例1〕
(トナー1の製造例)
・結着樹脂PL1 70部
・結着樹脂PH1 30部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6部
・無機微粒子S1 5部
・ピグメントブルー15:3 5部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
【0116】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
【0117】
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.5μm、平均円形度0.952の負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。
【0118】
該トナー粒子100部に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m2/g)2.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
【0119】
(磁性コア粒子の製造例)
・Fe23 62.7部
・MnCO3 29.5部
・Mg(OH)2 6.8部
・SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。
【0120】
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
【0121】
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe23d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0122】
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0123】
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0部、及び、バインダーとしてのポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子の粒度を調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0124】
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0125】
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子を得た。
【0126】
(被覆樹脂の製造例)
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3%
・メチルエチルケトン 31.3%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れた。セパラブルフラスコ内に、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加し、5時間還流して重合させた。
【0127】
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
【0128】
得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
【0129】
30部の該樹脂を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液(固形分濃度30%)を得た。
【0130】
(被覆樹脂溶液の調製)
・樹脂溶液(固形分濃度30%) 33.3%
・トルエン 66.4%
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3%
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m2/g、DBP吸油量:75ml/100g)
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液を得た。
【0131】
(磁性キャリアの製造例)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液及び磁性コア粒子を投入した(被覆樹脂溶液の投入量は、磁性コア粒子100部に対して、樹脂成分として2.5部)。
【0132】
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
【0133】
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリアを得た。
【0134】
<現像剤1の製造例>
トナー1と磁性キャリアを、磁性キャリア90部に対して、トナー1が10部になるように、V型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)を用いて、0.5s-1、回転時間5minの条件で混合して現像剤1を調製した。
【0135】
得られた現像剤1を用いて以下の評価を行った。
【0136】
[転写安定性評価]
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560の改造機を用いて常温常湿環境下(23℃/50%Rh)において低印字率(印字率1%)で耐久試験を行った。ここでは耐久中現像キャリアの入れ替え(オートリフレッシュ機構)は行っていない。
【0137】
評価紙はCS-680(68.0g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン社より販売)を使用した。耐久枚数はA4チャート、連続100000枚通紙した。転写性の評価は0.35mg/cm2のトナーを感光ドラム上に現像し、転写工程中に本体動作をシャットダウンし、感光ドラム上に残った転写残トナーをテーピングし、その濃度を測定した値から転写効率を求めた。転写電流設定はトナー帯電量に応じて最適な値を用いた。濃度測定はX-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用した。
(評価基準)
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が90%以上95%未満
C:転写効率が85%以上90%未満
D:転写効率が85%未満
【0138】
[画像強度評価]
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560を、画像濃度を変更できるように改造して用いた。ベタ画像を出力し、濃度が1.80になるように調整した。評価紙は、GFC-300C(300.0g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン社より販売)を使用した。
【0139】
出力した画像を、マンドレル試験を行った。マンドレル試験装置は、円筒型マンドレル屈曲試験器(コーテック株式会社製)を使用した。マンドレルの直径はΦ2mmを使用した。画像をマンドレル試験装置に設置し、画像を180°折り曲げる。折り曲げた部分を、シルボン紙の上に重りを載せて擦り、紙から画像を剥がす。画像が剥がれた部分をPIAS(QEA社製)で読み取り、画像剥がれ率をImage Jで数値化し算出する。
(評価基準)
A:画像剥がれ率が3%以下
B:画像剥がれ率が7%以下3%超
C:画像剥がれ率が10%以下7%超
D:画像剥がれ率が10%超
【0140】
以上の各評価項目において、現像剤1は全てA判定であった。
【0141】
〔実施例2~20、比較例1~5〕
(トナー2~25の製造例)
結着樹脂と着色剤の種類及び量を表3のように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~25を得た。
【0142】
【表3】
【0143】
(現像剤2~25の製造例)
トナーを表4のように変更した以外は、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤2~19を得た。さらに、現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0144】
【表4】