(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
B30B 12/00 20060101AFI20241021BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B30B12/00 A
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2020193661
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 斉
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0054043(US,A1)
【文献】特開2019-030947(JP,A)
【文献】特開2007-054934(JP,A)
【文献】米国特許第03965950(US,A)
【文献】特開昭54-040400(JP,A)
【文献】特開昭58-010469(JP,A)
【文献】特開2004-255480(JP,A)
【文献】特開2008-161908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 12/00
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容してハンドル部を有するハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能なバッテリと、
前記モータの駆動で作動する打撃機構と、
前記打撃機構の前方に配置され、前記打撃機構により打撃が伝達されるシャフトと、前記シャフトに対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピンの後端が挿入可能なスリーブと、前記スリーブを前記ストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネとを含んでなるドリフトピン打ち込み機構と、
を備え
、
前記ハウジングは、前記打撃機構及び前記ドリフトピン打ち込み機構を含む駆動側ハウジングと、前記駆動側ハウジングに対して所定の前後ストロークで相対移動可能に連結され、前記ハンドル部を含むハンドル側ハウジングとを有し、前記駆動側ハウジングと前記ハンドル側ハウジングとの間に、前記ハンドル側ハウジングを前記前後ストロークの後端となる後退位置に付勢する弾性手段が設けられていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記ハンドル部の少なくとも一部は、前記打撃機構の後方で前記シャフトの軸線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
被打ち込み材への前記ドリフトピンの打ち込み完了を検知する打ち終わり検知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記打ち終わり検知手段は、前記被打ち込み材と、前記ドリフトピンの打ち込みに伴って前進する前記ハウジングとの距離を非接触で計測するセンサを含むことを特徴とする請求項3に記載の打撃工具。
【請求項5】
前記打ち終わり検知手段によって前記ドリフトピンの打ち込み完了を検知したら、前記モータの駆動が停止することを特徴とする請求項3又は4に記載の打撃工具。
【請求項6】
前記ドリフトピンの打ち込みを開始する際、前記モータの立ち上がりの回転数は、低い状態から徐々に高くなることを特徴とする請求項1乃至
5の何れかに記載の打撃工具。
【請求項7】
前記モータは、段階的に高くなる複数の定回転状態を含む回転数で駆動することを特徴とする請求項1乃至
5の何れかに記載の打撃工具。
【請求項8】
前記モータの回転数を任意に変更可能な変速機構を備えることを特徴とする請求項1乃至
7の何れかに記載の打撃工具。
【請求項9】
前記ドリフトピン打ち込み機構は、着脱可能なアダプタであることを特徴とする請求項1乃至
8の何れかに記載の打撃工具。
【請求項10】
前記シャフトは、前記スリーブ内で径方向に弾性支持されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の接合部等にドリフトピンを打ち込むために使用される打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、一方の木材に金具を取り付け、他方の木材にドリフトピンを打ち込んで金具ごと貫通させることで、木材同士を接合させる工法が知られている。このドリフトピンの打ち込みは、作業者が金槌を用いて行うが、本数が多いと時間がかかり、作業者への負担も大きい。そこで、特許文献1には、ドリフトピンの打ち込み先端構造を備えたアダプタをエアハンマに装着してなる打ち込み機の発明が開示されている。このアダプタは、エアハンマに装着されるスナップ(シャフト)と、スナップに外装されて所定のストロークを相対移動可能なガイド(スリーブ)と、スナップ及びガイドに外装されてガイドを前進位置へ付勢するスプリング(コイルバネ)とを備えている。
ここでは、スナップから突出するガイドの先端にドリフトピンの後端を差し込んだ状態でエアハンマを駆動させると、スナップがエアハンマのピストンに連続して打撃されることで、ドリフトピンが木材に打ち込まれる。スナップがストローク分前進すると、前端面がガイドの前端面と同一面となってドリフトピンを木材の内部まで完全に打ち込み可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の打ち込み機においては、エアハンマを用いるため、エアハンマに加えてコンプレッサ及びホースを用意する必要がある。よって、設置や撤去が面倒である上、ホースに繋がる状態となるため取り回し性が悪くなり、打ち込み作業の効率を低下させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、取り回し性に優れて打ち込み作業の効率を向上させることができる打撃工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、打撃工具であって、モータを収容してハンドル部を有するハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能なバッテリと、
前記モータの駆動で作動する打撃機構と、
前記打撃機構の前方に配置され、前記打撃機構により打撃が伝達されるシャフトと、前記シャフトに対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピンの後端が挿入可能なスリーブと、前記スリーブを前記ストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネとを含んでなるドリフトピン打ち込み機構と、を備え、
前記ハウジングは、前記打撃機構及び前記ドリフトピン打ち込み機構を含む駆動側ハウジングと、前記駆動側ハウジングに対して所定の前後ストロークで相対移動可能に連結され、前記ハンドル部を含むハンドル側ハウジングとを有し、前記駆動側ハウジングと前記ハンドル側ハウジングとの間に、前記ハンドル側ハウジングを前記前後ストロークの後端となる後退位置に付勢する弾性手段が設けられていることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記ハンドル部の少なくとも一部は、前記打撃機構の後方で前記シャフトの軸線上に位置していることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、被打ち込み材への前記ドリフトピンの打ち込み完了を検知する打ち終わり検知手段を備えることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記打ち終わり検知手段は、前記被打ち込み材と、前記ドリフトピンの打ち込みに伴って前進する前記ハウジングとの距離を非接触で計測するセンサを含むことを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記打ち終わり検知手段によって前記ドリフトピンの打ち込み完了を検知したら、前記モータの駆動が停止することを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記ドリフトピンの打ち込みを開始する際、前記モータの立ち上がりの回転数は、低い状態から徐々に高くなることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記モータは、段階的に高くなる複数の定回転状態を含む回転数で駆動することを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記モータの回転数を任意に変更可能な変速機構を備えることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記ドリフトピン打ち込み機構は、着脱可能なアダプタであることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記シャフトは、前記スリーブ内で径方向に弾性支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動部としてバッテリを利用することで、取り回し性に優れて打ち込み作業の効率を向上させることができる。
ハンドル部の少なくとも一部が打撃機構の後方でシャフトの軸線上に位置する別の態様によれば、ドリフトピンを押し込みやすくなり、ハンドル部からの押圧力をドリフトピンへ効率よく伝えることができる。
特に、ハウジングが、打撃機構及びドリフトピン打ち込み機構を含む駆動側ハウジングと、駆動側ハウジングに対して所定の前後ストロークで相対移動可能に連結され、ハンドル部を含むハンドル側ハウジングとを有し、駆動側ハウジングとハンドル側ハウジングとの間に、ハンドル側ハウジングを前後ストロークの後端となる後退位置に付勢する弾性手段が設けられているので、打撃機構及びドリフトピン打ち込み機構で発生する振動がハンドル部へ伝わりにくくなり、作業時の使用感が良好となる。
被打ち込み材へのドリフトピンの打ち込み完了を検知する打ち終わり検知手段を備えた別の態様によれば、打ち込み完了時にモータの駆動を停止する等の対応が迅速に行える。
打ち終わり検知手段が、被打ち込み材と、ドリフトピンの打ち込みに伴って前進するハウジングとの距離を非接触で計測するセンサを含む別の態様によれば、打ち終わり検知手段を設けても作業の邪魔になることがない。
打ち終わり検知手段によってドリフトピンの打ち込み完了を検知したら、モータの駆動が停止する別の態様によれば、打ち込み完了後に打撃されなくなり、被打ち込み材の保護に繋がる。
ドリフトピンの打ち込みを開始する際、モータの立ち上がりの回転数が、低い状態から徐々に高くなるように制御される別の態様によれば、打ち込み開始時の衝撃が少なくなる。
モータの回転数を任意に変更可能な変速機構を備える別の態様によれば、作業しやすい打撃数を選択でき、使い勝手が良好となる。
ドリフトピン打ち込み機構が、着脱可能なアダプタである別の態様によれば、アダプタのメンテナンスや交換が容易に行える。
シャフトがスリーブ内で径方向に弾性支持される別の態様によれば、シャフトがスリーブに接触しにくくなり、ドリフトピンを打ち込む際の音を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】形態1のドリフトピン打ち込み用アダプタを装着した電動ハンマの中央縦断面図である。
【
図2】ドリフトピン打ち込み用アダプタ部分の拡大図である。
【
図3】ドリフトピンの打ち込み完了状態を示す説明図である。
【
図4】ドリフトピンの保持機構(マグネット)を採用した変更例の説明図で、(A)がマグネット部分の横断面、(B)が中央縦断面をそれぞれ示す。
【
図5】ドリフトピンの保持機構(Oリング)を採用した変更例の説明図である。
【
図7】スリーブに保護部を設けた変更例の説明図である。
【
図9】ストッパ機構の変更例を示す説明図で、(A)は回り止めピン部分の横断面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図10】ストッパ機構の変更例におけるドリフトピンの打ち込み完了状態を示す説明図である。
【
図11】形態2のドリフトピン打ち込み機の中央縦断面図(初期位置)である。
【
図12】打ち込み機構部分の拡大図(初期位置)である。
【
図13】打ち込み機構部分の拡大図(打撃位置)である。
【
図14】打ち込み機構部分の拡大図(打ち込み完了状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、ドリフトピン打ち込み用アダプタ(以下「アダプタ」という。)1の一例と、アダプタ1を装着した打撃工具の一例である電動ハンマ50とを示す中央縦断面図である。
図2は、アダプタ1の部分の拡大図である。ここでは左側を前方として説明する。
【0010】
(ドリフトピン打ち込み用アダプタの説明)
アダプタ1は、シャフト2と、スリーブ3と、コイルバネ4とを含んでなる。
シャフト2は、横断面が円形となる金属製で、前部5と、中間部6と、後部7とを備えている。前部5と後部7とは同径で、中間部6は、前部5及び後部7よりも大径に形成されている。前部5の前端面5aは、前方へ膨出する球面となっている。前部5と中間部6との間には、中間部6よりも大径のフランジ8が形成されている。中間部6には、径方向に回り止めピン9が打ち込まれている。後部7には、フランジ8よりも大径となる円盤状のストッパ10が外装されている。ストッパ10は、中間部6の後端に当接する位置で、後部7に係合するサークリップ11によって軸方向に固定されている。後部7の後端外周には、後端面から前方へ延びる一対の溝12,12と、前後方向へ延びる一対の凹部13,13とが、互いに90°位相を変えた状態でそれぞれシャフト2の軸線Lを中心とした点対称位置に形成されている。
【0011】
スリーブ3は、シャフト2が遊挿される金属製の筒体で、前部に小径孔15、後部に大径孔16が同軸で形成されている。小径孔15の中間部には、シャフト2の前部5が遊挿するさらに小径の絞り部17が、リング状に形成されている。絞り部17よりも前側の小径孔15は、前方へ向かうに従って拡径するテーパ孔部18となっている。
大径孔16は、シャフト2のフランジ8が遊挿する径を有している。フランジ8の後方で大径孔16内には、金属製の内スリーブ19が後方から圧入されてフランジ8を抜け止めしている。内スリーブ19は、後端に、圧入状態でスリーブ3の後面に当接するフランジ部20を有している。内スリーブ19の内周には、中間部6に設けた回り止めピン9が係合する係合溝21が、軸方向の全長に亘って形成されている。この回り止めピン9と係合溝21との係合により、シャフト2とスリーブ3とは互いに回転規制される。また、スリーブ3は、内スリーブ19がフランジ8に当接する前進位置と、小径孔15と大径孔16との間に形成される段部22がフランジ8に当接する後退位置との間のストロークで、シャフト2に対して前後に相対移動可能となる。
【0012】
コイルバネ4は、スリーブ3の内部で前部5に外装されている。コイルバネ4の前端は、絞り部17に当接し、コイルバネ4の後端は、フランジ8に当接している。
よって、スリーブ3は、コイルバネ4によって、常態では内スリーブ19がフランジ8に当接する前進位置に付勢されている。この前進位置で、シャフト2の前部5の前端面5aは、絞り部17よりも前方に位置してテーパ孔部18内に突出している。
図2に示すスリーブ3の前進位置で、ストッパ10の前端面と内スリーブ19の後端面との軸方向の距離D1は、シャフト2の前端面5aとスリーブ3の前端面との軸方向の距離D2と等しくなっている。また、距離D1は、段部22とフランジ8の前端面との軸方向の距離D3とも等しくなっている。
【0013】
(電動ハンマの説明)
電動ハンマ50は、ハウジング50aとして、本体ハウジング51と、モータハウジング52とを備えている。本体ハウジング51は、打撃機構53を収容して、打撃軸線方向となる前後方向に延びる。モータハウジング52は、本体ハウジング51の下側へ一体に結合され、出力軸55を上向きとしたブラシレスのモータ54を収容している。出力軸55は、本体ハウジング51内に突出している。
また、電動ハンマ50は、ハウジング50aとして、外側ハウジング56と、ハンドルハウジング57とをさらに備えている。外側ハウジング56は、前後方向に延びて本体ハウジング51の外側を覆っている。ハンドルハウジング57は、外側ハウジング56の後側へ一体に結合され、外側ハウジング56の後方からモータハウジング52の下方にかけて設けられている。
【0014】
ハンドルハウジング57は、ハンドル部58と、バッテリ装着部59と、コントローラ収容部60とを備えている。ハンドル部58は、上下方向に延び、前側に、外側ハウジング56の後端に連結されて本体ハウジング51の後部を後方から覆う連結部61を備えている。ハンドル部58は、スイッチ62及びスイッチレバー63を備えている。バッテリ装着部59は、ハンドル部58の下端に形成されている。コントローラ収容部60は、バッテリ装着部59の前側に連続し、モータハウジング52の下側へ回り込んで形成されている。コントローラ収容部60の前面上端には、係止部64が後ろ向きに形成されている。モータハウジング52の前面下端には、係止部64が前方から係止する係止凹部65が形成されている。
バッテリ装着部59には、電源となるバッテリパック66が後方からスライド装着可能となっている。バッテリ装着部59には、バッテリパック66が電気的に接続される端子台67が設けられている。
コントローラ収容部60には、制御回路基板を備えたコントローラ68が、前部が後部よりも下側となる傾斜姿勢で収容されている。
【0015】
打撃機構53は、筒状のツールホルダ70及びシリンダ71を備えている。ツールホルダ70は、本体ハウジング51の前側に保持されて前後方向に延びている。シリンダ71は、本体ハウジング51の後側に保持されてツールホルダ70と同軸で前後方向に延びている。
本体ハウジング51内でシリンダ71の後側には、クランク軸72が上下方向に支持されている。クランク軸72の上部には、偏心ピン73が上向きに設けられ、クランク軸72の下部には、ギヤ74が設けられている。ギヤ74は、出力軸55の上端に設けたピニオン75と噛合している。
シリンダ71には、ピストン76が前後移動可能に収容されている。ピストン76は、コネクティングロッド77を介して偏心ピン73と連結されている。シリンダ71内でピストン76の前方には、空気室78を介してストライカ79が前後移動可能に収容されている。ストライカ79の前方でツールホルダ70内には、インパクトボルト80が設けられている。ツールホルダ70の前端には、アダプタ1の後部7に設けた凹部13,13に係合する一対のボール81,81が設けられている。ツールホルダ70の前端には、前方へ付勢されて凹部13,13へのボール81,81の係合状態を維持する操作スリーブ82が設けられている。
【0016】
外側ハウジング56及びハンドルハウジング57は、本体ハウジング51及びモータハウジング52に対して前後へ相対移動可能に設けられている。
本体ハウジング51とハンドル部58との間には、第1コイルバネ83が前後方向に設けられている。第1コイルバネ83は、連結部61内で、本体ハウジング51の後面とハンドル部58の前面とにそれぞれ設けられた前ボス84と後ボス85とに跨がって両端が外装されている。第1コイルバネ83は、1つでもよいし、複数を左右方向に並べて配置してもよい。
モータハウジング52とコントローラ収容部60との間にも第2コイルバネ86が設けられている。モータハウジング52の下面には、コントローラ収容部60内へ下向きに突出する突出片87が設けられている。コントローラ収容部60内には、突出片87の後方で立設される受けリブ88が設けられている。第2コイルバネ86は、突出片87と受けリブ88との間で前後方向に保持されている。
外側ハウジング56及びハンドルハウジング57は、常態では第1、第2コイルバネ83,86の付勢により、コントローラ収容部60の係止部64がモータハウジング52の係止凹部65に当接する
図1の後退位置へ弾性的に付勢される。
【0017】
モータ54の後方でモータハウジング52の下部には、変速ダイヤル89が設けられている。コントローラ68は、変速ダイヤル89の回転操作によって選択された回転数(打撃数)でモータ54を駆動させる。
モータ54の前方でモータハウジング52の上部には、センサ90が前向きに設けられている。センサ90は、レーザ光を前方へ照射して反射光を受光し、対象物との距離を計測する。計測信号は、コントローラ68に入力される。
モータハウジング52の下方でコントローラ収容部60の前面には、ツールホルダ70の前方を照射するライト91が設けられている。
【0018】
(ドリフトピンの打ち込み)
以上の如く構成されたアダプタ1及び電動ハンマ50では、ツールホルダ70の前端で操作スリーブ82を後退させてボール81,81の押圧を解除する。この状態で、ビットに代えて、アダプタ1のシャフト2の後部7を、ツールホルダ70の前端に挿入する。このとき、ツールホルダ70の内周面に図示しない一対の突条が形成されていれば、後部7の溝12,12を突条の位相に合わせて挿入する。すると、凹部13,13がボール81,81の内側にそれぞれ位置し、操作スリーブ82の後退を解除して前進させると、操作スリーブ82がボール81,81をツールホルダ70の軸心側へ押圧する。よって、ボール81,81が凹部13,13に嵌合してシャフト2が抜け止め且つ回り止めされた状態で装着される。但し、シャフト2は、凹部13,13内をボール81,81が相対移動するストロークで前後移動可能となる。
【0019】
ツールホルダ70の内周面に突条がない場合、シャフト2の後部7をツールホルダ70に挿入し、操作スリーブ82を前進させても、ボール81,81と凹部13,13との位相が合わない場合がある。この場合、アダプタ1を回転させれば、押圧されるボール81,81が凹部13,13に嵌合することになる。ここでシャフト2は回り止めピン9と内スリーブ19とを介してスリーブ3と回転方向で一体となっているので、スリーブ3を把持して回転させればシャフト2も追従して回転する。よって、シャフト2を直接把持しなくてもスリーブ3の操作で容易にシャフト2を回転させてボール81,81を凹部13,13に嵌合させることができる。
【0020】
こうしてツールホルダ70にアダプタ1を装着した電動ハンマ50のハンドル部58を把持して、スリーブ3のテーパ孔部18を、
図1,2に示すように、被打ち込み材Wの打ち込み位置に前端を浅く挿入したドリフトピン100の後端101に被せる。すると、ドリフトピン100の後端101がテーパ孔部18内に収容されてシャフト2の前端面5aに当接し、シャフト2はドリフトピン100と略直線状に並ぶ。ここでハンドル部58を把持する手で電動ハンマ50を前方へ押し込むと、シャフト2がツールホルダ70内で後方へ相対移動し、ボール81,81を凹部13,13の前端に係合させると共に、後部7がインパクトボルト80に当接する。続いて外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して前進する。
【0021】
そして、スイッチレバー63を押し込んでスイッチ62をONさせると、コントローラ68は、モータ54を駆動させる。但し、コントローラ68は、起動時から変速ダイヤル89で設定された回転数でモータ54を駆動させず、立ち上がりの所定時間は低い回転数から徐々に回転数を上げていくソフトスタートを実行し、その後設定された回転数でモータ54を駆動させる。
なお、ハンドル部58の上部には、スイッチレバー63を押し込み位置で保持するロックオンボタン92が設けられている。よって、スイッチレバー63を押し込んだ状態でロックオンボタン92を押し込み操作すれば、その後はスイッチレバー63の押し込みを維持しなくてもモータ54の駆動は継続する。
【0022】
モータ54の出力軸55が回転すると、ピニオン75及びギヤ74を介してクランク軸72が回転する。よって、コネクティングロッド77を介してピストン76が前後移動する。これにより、空気室78を介してストライカ79が連動して前後移動する。ストライカ79が前後移動してインパクトボルト80を打撃し、シャフト2を間接的に打撃する。よって、ドリフトピン100が被打ち込み材Wに打ち込まれる。このときシャフト2の球面状の前端面5aがドリフトピン100の後端101に当接するため、常にドリフトピン100の軸心に打撃が伝わる。また、アダプタ1に振れが生じてもドリフトピン100とのずれはテーパ孔部18内で吸収できるため、ドリフトピン100への打撃は効率よく伝わる。
打ち込みの際、ハンドル部58を把持する手は、シャフト2の軸線(ツールホルダ70の軸線)L上で後方に位置している。よって、作業者による前方への押圧力はロスなくシャフト2に伝わる。また、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して前進して本体ハウジング51及びモータハウジング52と接触していない。よって、打ち込み時に外側ハウジング56及びハンドルハウジング57に伝わる振動が抑制され、ハンドル部58を把持する手に伝わる振動が小さくなる。
【0023】
打ち込みが進むにつれて電動ハンマ50及びアダプタ1が前進すると、スリーブ3の前端が被打ち込み材Wの表面に当接する。すると、スリーブ3はそのままでシャフト2が打ち込みを続けながら前進する。よって、
図3に示すように、ストッパ10が内スリーブ19のフランジ部20に当接する。このときフランジ8も段部22に当接して、前端面5aはスリーブ3の前端面と同じ前後位置となる。こうしてドリフトピン100の後端面が被打ち込み材Wの表面と面一となり、被打ち込み材Wへ完全に打ち込まれた状態となる。
作業者は、ストッパ10が内スリーブ19のフランジ部20に当接したことを目視して電動ハンマ50の押し込みを解除すれば、打ち込み作業は終了する。
但し、ストッパ10による目視に代えて、コントローラ68に、センサ90による計測信号を監視させて、計測信号により、被打ち込み材Wとの距離がドリフトピン100の打ち込み完了距離に達したことを判別すると、コントローラ68が、打ち込み完了と判断してモータ54の駆動を停止させるようにしてもよい。
打ち込み作業の際、作業者は他方の手でアダプタ1を支えることができるが、コイルバネ4がスリーブ3の内側にあってスリーブ3の全体が露出しているため、スリーブ3を把持して容易に支持することができる。また、被打ち込み材Wから発生した木屑等の異物が内部に入り込むおそれも少なくなる。
【0024】
(アダプタ及びアダプタを装着した電動ハンマに係る発明の効果)
上記形態1のアダプタ1及び電動ハンマ50は、ドリフトピン100を打撃可能なシャフト2と、シャフト2に対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピン100の後端101が挿入可能なスリーブ3と、スリーブ3をストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネ4と、を含んでなる。そして、コイルバネ4は、スリーブ3の内側に配置されている。
この構成により、異物が噛み込んでスリーブ3の相対移動に支障を与えたり、外部からの衝撃でコイルバネ4が損傷したりすることがなく、良好な動作性及び耐久性を維持できる。また、スリーブ3を確実に把持できるため、使い勝手にも優れたものとなる。
【0025】
アダプタ1には、シャフト2とスリーブ3との互いの相対回転を規制する回り止めピン9及び係合溝21(回り止め機構)が設けられている。よって、電動ハンマ50への着脱時にスリーブ3を保持してシャフト2を回転操作でき、位相合わせが簡単に行える。
ドリフトピン100の後端101が挿入されるスリーブ3の前端は、前方へ向かうに従って拡径するテーパ形状のテーパ孔部18が形成されている。よって、打ち込みの際のアダプタ1の振れを許容できると共に、ドリフトピン100の後端101をスムーズにスリーブ3内へ案内できる。
被打ち込み材Wへのドリフトピン100の打ち込み完了時にシャフト2の前進を規制するストッパ10及び内スリーブ19(ストッパ機構)が目視可能に設けられている。よって、作業者がドリフトピン100の打ち込み完了を容易に確認できる。
【0026】
なお、アダプタ及びアダプタを装着した電動ハンマに係る発明において、シャフトとスリーブとの回り止め機構は、内スリーブを省略してシャフトとスリーブとの間に形成してもよい。例えばシャフトとスリーブとの一方にキーを、他方にキー溝を形成したり、スプライン結合したりすることが考えられる。
ストッパ機構も適宜変更可能で、ストッパ自体の形状が変更可能であるのは勿論、ストッパの位置をシャフトの軸方向で変更可能とすることもできる。
その他、モータの向きや配置、モータの種類、コントローラの位置、バッテリパックの位置や数等、変更して差し支えない。打撃工具は、バッテリパックを電源とするDC工具に限らず、商用電源を用いるAC工具であってもよいし、エア工具であってもよい。電動ハンマでなくハンマドリルも使用できる。
【0027】
(バッテリパックを用いる電動ハンマに係る発明の効果)
上記形態1の電動ハンマ50は、モータ54を収容してハンドル部58を有するハウジング50aと、ハウジング50aに着脱可能なバッテリパック66(バッテリ)と、モータ54の駆動で作動する打撃機構53とを備えている。また、電動ハンマ50は、打撃機構53の前方に配置され、打撃機構53により打撃が伝達されるシャフト2と、シャフト2に対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピン100の後端101が挿入可能なスリーブ3と、スリーブ3をストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネ4とを含んでなるアダプタ1(ドリフトピン打ち込み機構)を備えている。
このように駆動部としてバッテリパック66を利用することで、取り回し性に優れて打ち込み作業の効率を向上させることができる。
【0028】
ハンドル部58の上部は、打撃機構53の後方でシャフト2の軸線L上に位置しているので、ドリフトピン100を押し込みやすくなり、ハンドル部58からの押圧力をドリフトピン100へ効率よく伝えることができる。
被打ち込み材Wへのドリフトピン100の打ち込み完了を検知するセンサ90及びコントローラ68(打ち終わり検知手段)を備えている。よって、打ち込み完了時にモータ54の駆動を停止する等の対応が迅速に行える。
打ち終わり検知手段は、被打ち込み材Wと、ドリフトピン100の打ち込みに伴って前進するハウジング50aとの距離を非接触で計測するセンサ90を含んでいる。よって、打ち終わり検知手段を設けても作業の邪魔になることがない。
打ち終わり検知手段によってドリフトピン100の打ち込み完了を検知したら、モータ54の駆動が停止するようになっている。よって、打ち込み完了後に打撃されなくなり、被打ち込み材Wの保護に繋がる。
【0029】
ハウジング50aは、打撃機構53及びアダプタ1を含む本体ハウジング51及びモータハウジング52(駆動側ハウジング)と、本体ハウジング51及びモータハウジング52に対して所定の前後ストロークで相対移動可能に連結され、ハンドル部58を含む外側ハウジング56及びハンドルハウジング57(ハンドル側ハウジング)とを有している。そして、本体ハウジング51及びモータハウジング52と、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57との間に、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57を前後ストロークの後端となる後退位置に付勢する第1、第2コイルバネ83,86(弾性手段)が設けられている。
よって、打撃機構53及びアダプタ1で発生する振動がハンドル部58へ伝わりにくくなり、作業時の使用感が良好となる。
【0030】
ドリフトピン100の打ち込みを開始する際、モータ54の立ち上がりの回転数は、低い状態から徐々に高くなるように制御される。よって、打ち込み開始時の衝撃が少なくなる。
モータ54の回転数を任意に変更可能な変速ダイヤル89及びコントローラ68(変速機構)を備えている。よって、作業しやすい打撃数を選択でき、使い勝手が良好となる。
ドリフトピン打ち込み機構は、着脱可能なアダプタ1である。よって、アダプタ1のメンテナンスや交換が容易に行える。
【0031】
なお、バッテリパックを用いる電動ハンマに係る発明において、打ち終わり検知手段としては、非接触式のセンサに限らず、接触式のものも使用できる。例えばハウジングに、前方へ突出するストッパポールを取り付ければ、ストッパポールが被打ち込み材の表面に当接したタイミングで打ち込み完了となる。ストッパポールは、前方への突出量を変更可能とするのが望ましい。
打ち込み完了時には、モータの駆動を停止させる制御に限らず、モータの回転数を下げる制御を行ってもよい。
打ち込み開始からのモータの制御は、ソフトスタートに限らず、最初から定回転で行うようにしてもよいし、段階的に高くなる複数の定回転状態を含む回転数で駆動するようにしてもよい。また、モータへの負荷や打撃時の振動に応じて回転数を上げたりしてもよい。
これらのモータの制御は、打ち込みモードとしてそれぞれコントローラに設定し、作業者が操作パネル等で選択できるようにしてもよい。
【0032】
変速機構は、変速ダイヤルを利用するものに限らず、スイッチレバーの押し込み量に基づいて変速するものとしてもよい。
シャフトの軸線上に位置するハンドル部の位置は、ハンドル部の上部でなくてもよい。
その他、モータの向きや配置、モータの種類、コントローラの位置、バッテリパックの位置や数等も適宜変更して差し支えない。打撃工具としては電動ハンマでなくハンマドリルも使用できる。
【0033】
(アダプタの変更例の説明)
次に、各発明に共通するアダプタの変更例について説明する。
図4は、スリーブ3の前端に、ドリフトピン100の後端101を保持する保持機構として、小径孔15内に露出するマグネット25を設けたものである。このマグネット25に、小径孔15に挿入したドリフトピン100の後端101が吸着することで、後端101が保持される。
このように、スリーブ3の前端に、挿入されたドリフトピン100の後端101を保持可能なマグネット25を設ければ、スリーブ3からのドリフトピン100の脱落が生じにくくなり、作業性が良好となる。
なお、マグネットの形状はこれに限らず、リング状やC字状等の他の形状としてもよいし、マグネットを複数配置してもよい。また、ここでは小径孔の前端をテーパ形状としていないが、ドリフトピンの吸着が可能であればテーパ形状としてもよい。
図5は、同じく保持機構として、小径孔15の先端内周にOリング26を保持させたものである。このOリング26により、小径孔15に挿入したドリフトピン100の後端101が保持される。よって、スリーブ3からのドリフトピン100の脱落が生じにくくなり、作業性が良好となる。
なお、Oリングは1つに限らず、軸方向に複数並べて配置してもよい。Oリング以外の弾性リングも採用できる。マグネットと組み合わせることも可能である。
【0034】
図6は、スリーブ3の絞り部17の内周面に、リング溝27を形成して前部5に摺接するOリング28を保持させている。また、フランジ8の外周面に、リング溝29を形成して大径孔16に摺接するOリング30を保持させている。
このOリング28,30により、スリーブ3内でシャフト2が径方向に弾性支持される。よって、シャフト2がスリーブ3に接触しにくくなり、ドリフトピン100を打ち込む際の音を軽減させることができる。
なお、Oリングはそれぞれ1つに限らず、軸方向に複数並べて配置してもよい。Oリング以外の弾性リングも採用できる。
図6では同時に、スリーブ3を樹脂製とすると共に、スリーブ3の外周を吸音スポンジ31で被覆している。よって、スリーブ3にシャフト2が接触しても発生する音は小さくなり、発生した音も吸音スポンジ31で吸収されて低減される。
【0035】
このような消音機構を設ければ、打ち込み時の音が効果的に軽減される。但し、シャフトの弾性支持と、スリーブの樹脂成形と、吸音スポンジとは、全てを同時に適用する必要はなく、何れか1つのみ適用してもよいし、何れか2つのみ適用してもよい。他の消音機構も採用できる。
【0036】
図7は、スリーブ3の前端面に、樹脂又はゴム製の保護部32を設けた例を示している。この保護部32により、スリーブ3が当接した際に被打ち込み材Wの表面を保護することができる。
保護部の形状は適宜変更可能で、種類や物性が異なる材料を前後方向に積層して形成してもよい。
図6のようにスリーブ3の全体を樹脂とした場合も前端面は保護部となる。
【0037】
図8及び
図9は、ストッパ10Aを、後筒33と、後筒33から拡開して前方へ開口する前筒34とからなる筒状とした例を示している。後筒33が、シャフト2の後部7へピン35によって連結される。前筒34が、スリーブ3の後端に後方から外装される構造となっている。スリーブ3の外周面には、距離D1の前進で前筒34が当接するストッパ部36が周設されている。
内スリーブ19は、フランジ部を備えず、スリーブ3内へ全体が圧入されて、シャフト2の中間部6に貫通させた回り止めピン37の両端を、一対の係合溝21,21に係合させている。よって、シャフト2とスリーブ3とが互いに回転規制される。
この場合、ドリフトピン100の打ち込み完了時には、
図10に示すように、ストッパ10Aの前筒34がスリーブ3の後端を外側から覆う格好となってストッパ部36に当接する。よって、作業者は打ち込み完了を目視できる。このときスリーブ3の後端面は、前筒34内で後筒33の前面に当接する。
このようにストッパ機構を、シャフト2へ一体に前後移動可能に取り付けられ、打ち込み完了時にスリーブ3の後端に当接するストッパ10A(ストッパ部材)とし、ストッパ10Aを、打ち込み完了時にスリーブ3の後端外周へ被さって径方向にオーバーラップする筒状としている。よって、スリーブ3とストッパ10Aとの間が閉塞され、木屑等の異物がアダプタ1内に侵入するおそれが小さくなる。
【0038】
[形態2]
上記形態では、別体のアダプタ1を既存の電動ハンマ50に装着した例となっているが、アダプタの機能を打ち込み機構として先端へ一体的に備えたドリフトピン専用の打撃工具とすることもできる。以下、この打撃工具の一例であるドリフトピン打ち込み機(以下「打ち込み機」という。)について説明する。但し、形態1のアダプタ1及び電動ハンマ50と同じ構成部には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
(打ち込み機の説明)
図11に示す打ち込み機50Aの先端には、打ち込み機構1Aが設けられている。打ち込み機構1Aにおいて、前方へ長く延ばしたツールホルダ70の前端部95内には、
図12にも示すように、シャフト2Aが前後移動可能に遊挿されている。シャフト2Aは、前端面5aが球面となる前部5と、凹部13,13を有する後部7とを備えている。前端部95には、径方向に外側から遊挿されて先端が凹部13,13に係合する一対の係合ピン96,96が設けられている。前端部95の外径は、先端から小径部97、中径部98、大径部99となるように、後方へ向かうに従って段階的に大径となっている。係合ピン96,96は中径部98に配置されている。
【0039】
前端部95には、スリーブ3Aが外装されている。スリーブ3Aは、小径部97に外装される前側の小径孔40と、中径部98に外装される後側の大径孔41とを同軸で備えている。小径孔40の前側には、後方へ向かうに従って大径となるテーパ孔部18が形成されて、テーパ孔部18の後端は、小径孔40よりも小径の前ストッパ42となっている。
スリーブ3Aの後部には、大径孔41と連通する前後方向のスリット43,43が一対形成され、スリット43,43に係合ピン96,96が相対移動可能に遊挿されている。スリット43,43の外側でスリーブ3Aの後部には、外スリーブ44が外装されている。外スリーブ44は、スリーブ3Aの後端に形成したフランジ部45と、スリーブ3Aに係止させた係止リング46との間で前後方向に位置決めされている。外スリーブ44により、係合ピン96,96は径方向外側への抜け止めがなされる。外スリーブ44の外周面には、リング状の後ストッパ47が形成されている。
【0040】
コイルバネ4は、スリーブ3Aの内側で小径部97に外装されて、前端が、小径孔40と大径孔41との間の段部48に当接し、後端が、中径部98の前面に当接している。コイルバネ4により、スリーブ3Aは、係合ピン96,96がスリット43,43の後端に位置する前進位置に付勢される。
打ち込み機50Aの本体ハウジング51の前端は、スリーブ3Aの前進位置でフランジ部45に外装する筒状部93となっている。
スリーブ3Aの前進位置で、筒状部93の前端面と外スリーブ44の後ストッパ47の後端面との軸方向の距離D1は、小径部97の前端面と前ストッパ42の後端面との軸方向の距離D2と等しくなっている。距離D1は、大径部99の前端面とスリーブ3Aのフランジ部45の後端面との軸方向の距離D3とも等しくなっている。
【0041】
(ドリフトピンの打ち込み)
以上の如く構成された打ち込み機50Aでは、ハンドル部58を把持して、スリーブ3Aのテーパ孔部18を、
図11,12に示すように、被打ち込み材Wの打ち込み位置に前端を浅く挿入したドリフトピン100の後端101に被せる。すると、ドリフトピン100の後端101がテーパ孔部18内に収容されてシャフト2Aの前端面5aに当接し、シャフト2Aはドリフトピン100と略直線状に並ぶ。ここでハンドル部58を把持する手で打ち込み機50Aを前方へ押し込むと、
図13に示すように、シャフト2Aがツールホルダ70内で後方へ相対移動し、係合ピン96,96を凹部13,13の前端に係合させると共に、後部7がインパクトボルト80に当接する。続いて外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して前進する。
そして、スイッチレバー63を押し込んでスイッチ62をONさせると、コントローラ68は、モータ54を駆動させる。ここでもコントローラ68は、ソフトスタートを実行し、その後設定された回転数でモータ54を駆動させる。
【0042】
モータ54の出力軸55が回転すると、ピニオン75及びギヤ74を介してクランク軸72が回転する。よって、コネクティングロッド77を介してピストン76が前後移動する。これにより、空気室78を介してストライカ79が連動して前後移動する。ストライカ79がインパクトボルト80を介してシャフト2Aを間接的に打撃することで、ドリフトピン100が被打ち込み材Wに打ち込まれる。このときシャフト2Aの球面状の前端面5aがドリフトピン100の後端101に当接するため、常にドリフトピン100の軸心に打撃が伝わることになる。また、ハンドル部58を把持する手は、シャフト2Aの軸線(ツールホルダ70の軸線)L上で後方に位置しているため、作業者による前方への押圧力はロスなくシャフト2に伝わる。
作業中は、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57が、第1、第2コイルバネ83,86の付勢力に抗して前進して本体ハウジング51及びモータハウジング52と接触していない。よって、打ち込み時に第1、外側ハウジング56及びハンドルハウジング57に伝わる振動が抑制され、ハンドル部58を把持する手に伝わる振動が小さくなる。
【0043】
打ち込みが進むにつれて打ち込み機50Aが前進し、スリーブ3Aの前端が被打ち込み材Wの表面に当接する。すると、スリーブ3Aはそのままでシャフト2Aが打ち込みを続けながら前進する。よって、
図14に示すように、筒状部93が外スリーブ44の後ストッパ47に当接すると共に、大径部99がフランジ部45に当接する。このとき小径部97も前ストッパ42に当接して、前端面5aはスリーブ3Aの前端面と同じ前後位置となる。こうしてドリフトピン100の後端面が被打ち込み材Wの表面と面一となり、被打ち込み材Wへ完全に打ち込まれた状態となる。従って、作業者が、筒状部93が外スリーブ44の後ストッパ47に当接したことを目視して打ち込み機50Aの押し込みを解除すれば、打ち込み作業は終了する。コントローラ68は、センサ90による計測信号を監視し、被打ち込み材Wとの距離がドリフトピン100の打ち込み完了距離に達したことを判別すると、モータ54の駆動を停止させる。
打ち込み作業の際、作業者は他方の手でスリーブ3Aを支えることになるが、コイルバネ4がスリーブ3Aの内側にあってスリーブ3Aの略全体が露出しているため、スリーブ3Aを把持して容易に支持することができる。また、被打ち込み材Wから発生した木屑等の異物が内部に入り込むおそれも少なくなる。
【0044】
(打ち込み機に係る発明の効果)
上記形態2の打ち込み機50Aは、ドリフトピン100を打撃可能なシャフト2Aと、シャフト2Aに対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピン100の後端101が挿入可能なスリーブ3Aと、スリーブ3Aをストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネ4と、を含み、コイルバネ4が、スリーブ3Aの内側に配置されている打ち込み機構1A(ドリフトピン打ち込み機構)を先端に有する。そして、打ち込み機50Aは、シャフト2Aの後端を打撃可能な打撃機構53と、打撃機構53を作動させるモータ54(駆動部)とを備える。
この構成により、異物が噛み込んでスリーブ3Aの相対移動に支障を与えたり、外部からの衝撃でコイルバネ4が損傷したりすることがなく、良好な動作性及び耐久性を維持できる。また、スリーブ3Aを確実に把持できるため、使い勝手にも優れたものとなる。
【0045】
さらに、打ち込み機50Aは、モータ54を収容してハンドル部58を有するハウジング50aと、ハウジング50aに着脱可能なバッテリパック66(バッテリ)と、モータ54の駆動で作動する打撃機構53とを備えている。また、打ち込み機50Aは、打撃機構53の前方に配置され、打撃機構53により打撃が伝達されるシャフト2Aと、シャフト2Aに対して所定のストロークで前後方向へ相対移動可能に外装され、前端にドリフトピン100の後端101が挿入可能なスリーブ3Aと、スリーブ3Aをストロークの前端となる前進位置へ付勢するコイルバネ4とを含んでなる打ち込み機構1A(ドリフトピン打ち込み機構)を備えている。
このように駆動部としてバッテリパック66を利用することで、取り回し性に優れて打ち込み作業の効率を向上させることができる。
【0046】
ドリフトピン100の打ち込み完了時にシャフト2Aの前進を規制する筒状部93及び後ストッパ47(ストッパ機構)が目視可能に設けられている。よって、作業者がドリフトピン100の打ち込み完了を容易に確認できる。
ストッパ機構を、シャフト2Aへ一体に前後移動可能に取り付けられ、打ち込み完了時にスリーブ3Aの外スリーブ44に当接する本体ハウジング51(ストッパ部材)とし、本体ハウジング51の前端を、スリーブ3Aの後端と径方向にオーバーラップする筒状部93としている。よって、スリーブ3Aと筒状部93との間が閉塞され、木屑等の異物が打ち込み機構1A内に侵入するおそれが小さくなる。
その他、形態1と同じ構成部については形態2でも同じ効果を享受できる。
【0047】
なお、形態2においても、形態1と同様に、マグネットやOリング等をスリーブの前端に設けてドリフトピンの保持機構を形成してもよい。シャフトをスリーブ内で径方向に弾性支持することもできる。
消音機構として、スリーブを樹脂製としたり、外周に吸音スポンジを外装したりすることもできる。スリーブの前端に保護部を設けて被打ち込み材の表面保護を図ることも可能である。
また、打ち込み機構以外の打ち込み機の構造も、形態1の電動ハンマと同様の変更が可能である。モータの向きや配置、モータの種類、コントローラの位置、バッテリパックの位置や数等も変更して差し支えない。
【符号の説明】
【0048】
1・・ドリフトピン打ち込み用アダプタ、1A・・打ち込み機構、2,2A・・シャフト、3,3A・・スリーブ、4・・コイルバネ、5・・前部、5a・・前端面、6・・中間部、7・・後部、8・・フランジ、9,37・・回り止めピン、10・・ストッパ、13・・凹部、14・・小径孔、15・・大径孔、18・・テーパ孔部、19・・内スリーブ、20,45・・フランジ部、21・・係合溝、25・・マグネット、26,28,30・・Oリング、31・・吸音スポンジ、32・・保護部、33・・後筒、34・・前筒、36・・ストッパ部、40・・小径孔、41・・大径孔、42・・前ストッパ、43・・スリット、44・・外スリーブ、47・・後ストッパ、50・・電動ハンマ、50a・・ハウジング、50A・・ドリフトピン打ち込み機、51・・本体ハウジング、52・・モータハウジング、53・・打撃機構、54・・モータ、55・・出力軸、56・・外側ハウジング、57・・ハンドルハウジング、58・・ハンドル部、62・・スイッチ、63・・スイッチレバー、68・・コントローラ、70・・ツールホルダ、83・・第1コイルバネ、86・・第2コイルバネ、89・・変速ダイヤル、90・・センサ、95・・前端部、100・・ドリフトピン、101・・後端、L・・シャフトの軸線。