(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G21/00 386
(21)【出願番号】P 2020195550
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】行木 亮
(72)【発明者】
【氏名】小倉 基博
(72)【発明者】
【氏名】菊地 恭平
(72)【発明者】
【氏名】中島 正敦
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012992(JP,A)
【文献】特開2010-170157(JP,A)
【文献】特開2018-049088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された潜像をトナー像に現像する現像装置と、
前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、
前記クリーニングブレードは、前記像担持体に当接する当接部を備え、
前記当接部は、前記クリーニングブレードの長手方向において、中央側に配置された第1領域と、
前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第1領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記現像剤担持体が現像剤を担持する現像領域の端部よりも内側となる領域を含み、前記第1領域よりも硬度が高くなるように表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第2領域であって、前記第1領域との境界部に第1の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第1領域よりも厚い第2領域と、
前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第2領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記第2領域よりも硬度が高くなるように表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第3領域であって、前記第2領域との境界部に第2の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第2領域よりも厚い第3領域と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第
3領域は、前記第
2領域よりもイソシアネート化合物の含浸時間が長いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第
3領域は、前記第
2領域よりもイソシアネート化合物の含浸回数が多いことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2領域及び前記第3領域との包絡線の傾斜角は、0.05[°]以上0.5[°]以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体を帯電する帯電装置を備え、前記第3領域は、前記クリーニングブレードの両端に配置され、前記現像領域の端部よりも外側で、前記帯電装置の帯電領域よりも内側となる領域を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体を帯電する帯電装置と、
前記帯電装置に所定の電圧を印加した時に流れる電流を検知する電流検知手段と、
前記像担持体の寿命に関する情報を表示する表示部と、を有し、
前記電流検知手段により検知された検知結果に基づいて、前記像担持体の前記第1領域の摩耗量に関する第1情報を取得し、前記第1情報に基づいて、前記第2領域における前記像担持体の摩耗量に関する第2情報を取得し、前記第2情報に基づいて、前記像担持体の寿命に関する情報を表示することを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1領域と前記第3領域のダイナミック硬度差は0.040[mN/(μm×μm)]であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の段差と前記第2の段差は、12μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
像担持体と、
トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された潜像をトナー像に現像する現像装置と、
前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、
前記クリーニングブレードは、前記像担持体に当接する当接部を備え、
前記当接部は、前記クリーニングブレードの長手方向において、中央側に配置された第1領域と、
前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第1領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記現像剤担持体が現像剤を担持する現像領域の端部よりも内側となる領域を含み、表層がイソシアネート化合物を含有しない溶剤で膨潤処理された第2領域であって、前記第1領域との境界部に第1の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第1領域よりも厚い第2領域と、
前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第2領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第3領域であって、前記第2領
域との境界部に第2の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第2領域よりも厚い第3領域と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記第2領域の表面は、酢酸ブチルの含浸による膨潤処理されていることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上の残留トナーを除去するクリーニングブレードを備えた画像形成装置において、クリーニングブレードの端部がイソシアネート化合物で硬化処理されている画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置は、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、及びこれらの複数の機能を有する複合機等として広く応用されている。この種の画像形成装置は、像担持体の一例である感光ドラムに形成されたトナー像を、中間転写体やシート状の記録材に転写する。このような画像形成装置では、記録材への転写後に感光ドラム上に残留したトナーをクリーニングブレードで除去する。クリーニングブレードは、通常、感光ドラムの回転方向に対してカウンタ方向に圧接配置されている。このため、感光ドラムとクリーニングブレードの間の摩擦力が過大になるので、クリーニングブレードのエッジ部が感光ドラムの回転方向に反転して、クリーニングブレードの捲れが発生する場合がある。特に、画像形成領域外は、画像形成領域に比べてクリーニングブレードに達するトナー又は外添剤の量が少ない。トナーや外添剤はクリーニングブレードと感光ドラムの滑性を維持する効果があるため、トナーや外添剤の少ない画像形成領域外はクリーニングブレードの捲れが発生しやすい。
【0003】
このような画像形成領域外でのクリーニングブレードの捲れを抑制するために、クリーニングブレードの長手方向(以下、幅方向という)の両端部に処理部を設けた技術が知られている(特許文献1参照)。このクリーニングブレードでは、イソシアネート化合物がクリーニングブレードのエッジ側の端面から含浸されることにより、端面の幅方向両端部が硬化処理されている。このクリーニングブレードによれば、トナーや外添剤の少ない画像形成領域(現像コート領域)外に当接する部分が硬化処理されているので、クリーニングブレードの捲れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、両端部にイソシアネートの処理部を設けた際、処理部は硬化処理による膨潤が起きる。クリーニングブレードの捲れを抑制するためには十分な硬化処理を行い、クリーニングブレードの摩擦係数を下げる必要がある。しかしながら、硬化処理と比例して、処理部と未処理部との境界で膨潤による境界段差が発生する。この境界段差が大きくなると境界部で空隙が発生し、トナーのすり抜けが発生する。処理部と未処理部との境界部を現像コート領域外に配置しておけば、トナーのすり抜けを抑制することができる。しかしながら、処理部と未処理部との境界部を現像コート領域外に配置すると、現像コート領域外に未処理部が配置されることになる。すると、そこを起点にしてクリーニングブレードが捲れてしまう可能性がある。そこで、処理部の一部を現像コート領域内に配置することが好ましいが、上述したように現像コート内で境界段差が発生するとトナーのすり抜けが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、クリーニングブレードの端部をイソシアネート化合部で硬化処理を行っても、境界段差で発生するトナーすり抜けを抑制しながら、ブレード捲れを抑制することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の画像形成装置は、像担持体と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された潜像をトナー像に現像する現像装置と、前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、前記クリーニングブレードは、前記像担持体に当接する当接部を備え、前記当接部は、前記クリーニングブレードの長手方向において、中央側に配置された第1領域と、前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第1領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記現像剤担持体が現像剤を担持する現像領域の端部よりも内側となる領域を含み、前記第1領域よりも硬度が高くなるように表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第2領域であって、前記第1領域との境界部に第1の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第1領域よりも厚い第2領域と、前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第2領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記第2領域よりも硬度が高くなるように表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第3領域であって、前記第2領域との境界部に第2の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第2領域よりも厚い第3領域と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明の画像形成装置は、像担持体と、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された潜像をトナー像に現像する現像装置と、前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレードと、を備え、前記クリーニングブレードは、前記像担持体に当接する当接部を備え、前記当接部は、前記クリーニングブレードの長手方向において、中央側に配置された第1領域と、前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第1領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、前記現像剤担持体が現像剤を担持する現像領域の端部よりも内側となる領域を含み、表層がイソシアネート化合物を含有しない溶剤で膨潤処理された第2領域であって、前記第1領域との境界部に第1の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第1領域よりも厚い第2領域と、前記クリーニングブレードの長手方向において、前記第2領域に隣接するように前記クリーニングブレードの両端側にそれぞれ設けられ、表面がイソシアネート化合物で硬化処理された第3領域であって、前記第2領域との境界部に第2の段差を形成するとともに前記クリーニングブレードの厚み方向の幅が前記第2領域よりも厚い第3領域と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、クリーニングブレードの端部をイソシアネート化合部で硬化処理を行っても、境界段差で発生するトナーすり抜けを抑制しながら、ブレード捲れを抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例における画像形成装置の概略構成図。
【
図2】本実施例におけるクリーニングブレード6の模式図。
【
図3】実施例1および実施例3における硬化処理部の模式図。
【
図4】実施例2および実施例4における硬化処理部の模式図。
【
図5】実施例5における硬化処理部と当接圧の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に沿って、本実施例の実施の形態について説明する。なお、各図面において同一の符号を付したものは、同一の構成又は作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0012】
<画像形成装置>
図1に、本実施例における画像形成装置の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置は、接触帯電方式を採用した電子写真方式のレーザビームプリンタである。まず、
図1を参照して、本実施例の画像形成装置の全体構成について説明する。
【0013】
<感光ドラム>
感光体1は、帯電特性が負帯電性の回転ドラム型の有機電子写真感光体であり、アルミニウム製シリンダ(導電性ドラム基体)の表面に、有機材料からなる電荷発生層と、電荷輸送層(厚さ約20μm)とを下から順に塗り重ねた構成をしている。ここで、感光体1の表面層は結着樹脂として硬化性樹脂を用いて硬化層(厚み8μm)としている。なお、本実施例では感光体1の表面硬化処理として硬化性樹脂を用いる硬化層を用いたが、これに限らない。例えば、炭素-炭素二重結合を有するモノマーと、炭素-炭素二重結合を有する電荷輸送性モノマーと、を熱または光のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層を用いることができる。また、同一分子内に連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を電子線のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層を用いることができる。また、硬化層を有しない感光体1も用いることができる。
【0014】
本実施例において、感光体1は、軸方向の長さ340mm、外径30mmであり、中心支軸を中心に200mm/secのプロセススピード(周速度)をもって曲線矢印の方向に回転駆動される。
【0015】
<帯電ローラ>
帯電手段2は、感光体1表面を一様に帯電処理する接触式帯電手段としての帯電ローラ2aを有し、帯電ローラ2aは軸方向の長さ330mm、直径14mmであり、ステンレス製の芯金の外回りに、導電ゴム層を形成した構成である。帯電ローラ2aは、芯金の両端部をそれぞれ軸受け部材により回転自在に保持されると共に、押圧ばねによって感光体1に向かって付勢して、感光体1の表面に対して所定の押圧力をもって圧接させている。これにより、帯電ローラ2aは、感光体1の回転に従動して(周速度は200mm/sec)回転する。帯電ローラ2aは、感光体1との間の微小ギャップにて生じる放電現象を利用して帯電する。帯電ローラ2aの芯金は、電源PS1より所定の条件の帯電電圧が印加される。本実施例では、電源PS1はDCおよびAC電源からなる構成である。例えば、印加する直流電圧を-500V、交流電圧をその環境における放電開始電圧の2倍以上の値に設定すると、回転する感光体1の画像形成部が約-500Vに一様に帯電処理される。なお、画像形成中に印加される直流電圧は、この値に限定されるものではなく、環境や感光体1および帯電ローラ2aの使用耐久状況などに応じて、良好な画像形成に適する電位に適宜設定される。
【0016】
<レーザースキャナ>
潜像手段3は、帯電処理された感光体1の面に静電潜像を形成する情報書き込み手段として潜像装置を有する。本実施例において、潜像装置は半導体レーザを用いたレーザビームスキャナである。レーザビームスキャナは、画像読み取り装置などのホスト処理装置からプリンタ側に送られた画像信号に対応して変調されたレーザ光を出力して、一様に帯電処理された回転する感光体1の表面をレーザ走査露光する。このレーザ走査露光により、感光体1の表面のレーザ光で照射されたところの電位が低下し、回転する感光体1の表面には、画像情報に対応した静電潜像が順次に形成されていく。また、レーザビームスキャナによる軸方向の露光可能幅は315mmである。
【0017】
<現像装置>
現像手段4は、感光体1上の静電潜像に従ってトナーを供給し、静電潜像をトナー像として反転現像する現像手段として、現像装置を有する。現像剤担持体としての現像スリーブ4aは、現像スリーブ4aの軸方向の長さは325mmである。本実施例においては、現像スリーブ4aはトナーとキャリアからなる二成分現像剤による磁気ブラシを保持し、感光体1に接触させながら現像を行う。本実施例では、トナーはポリエステルを主体とした樹脂バインダーに顔料を混練したものを粉砕分級して得られた平均粒径が約5μmのトナーを用いている。また、感光体1に付着したトナーの平均帯電量は約-30μC/gである。現像装置には電源PS2から所定の現像電圧が印加される。本実施例においては、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。例えば、振動電圧は周波数8.0kHz、ピーク間電圧1.8kV、矩形波の交流電圧を重畳した振動電圧である。直流電圧は、現像部における感光体1の電位に対して適正なカブリ取り電位になるように適宜設定される。
【0018】
<1次転写ローラ>
一次転写手段5は、本実施例においては一次転写ローラ5aである。一次転写ローラ5aは、感光体1と中間転写体7を挟む方向に所定の押圧力をもって圧接され、その圧接ニップ部が一次転写部である。一次転写ローラ5aには電源PS3からトナーの正規帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の転写電圧、本実施例では+600Vが印加される。これにより、中間転写体7の表面に感光体1の表面側のトナー像が順次に静電転写されていく。一次転写部を通ってトナー像の転写を受けた中間転写体7は、二次転写手段8において、機構部から所定の制御タイミングにて給送された記録材15にトナー像が転写される。本実施例において、二次転写手段8は二次転写ローラ8aであり、二次転写ローラ8aには+800Vの転写電圧が印加される。記録材15は定着手段10へ搬送される。本実施例では、定着手段10は熱ローラ定着装置であり、この定着手段10により記録材15はトナー像の定着処理を受けて画像形成物(プリント、コピー)として出力される。
【0019】
<中間転写ベルト>
中間転写体7は、本実施例では、無端状の中間転写ベルトを備えている。中間転写ベルトは、樹脂層、表層の2層構造からなるベルトである。樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリカーボネート,フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)等を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。また、表層の材料は特に制限は無いが、中間転写ベルト表面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン,ポリエステル等を使用することができる。樹脂層には、抵抗値調節用導電剤が添加される。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト等でもよい。本実施例では、表面抵抗率1012Ω/□(JIS-K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み100μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。しかし、これに限定されるものではなく、他の材料、体積抵抗率、及び厚みのものでも構わない。
【0020】
<クリーニングブレード>
図2に本実施例で用いるクリーニングブレード6の模式図を示す。クリーニングブレード6は、一次転写手段5における中間転写体7へのトナー像転写後に、感光体1に若干残留する転写残トナーを感光体1表面から除去する。クリーニングブレード6は平板状のポリウレタンからなるゴム部材61を板金部材62に接着材で張り付けて構成されている。本実施例ではゴム部材61は厚み2mm、自由長8mmで板金部材62に貼り付けられている。クリーニングブレード6は、軸方向の長さは330mmで、20gf/cmから50gf/cmの範囲の当接圧で感光体1に押圧されている。当接圧が20gf/cmより小さい場合、クリーニングブレード6と感光体1との当接圧が小さくなり、転写残トナーを塞き止めることが出来なくなりすり抜けといったクリーニング不良が発生する。逆に当接圧が50gf/cmより大きい場合はクリーニングブレード6と感光体1との摩擦力が増大し、ブレードのビビリ、ブレード磨耗、欠けといった問題が発生し良好なクリーニング性が得られない。
【0021】
本実施例では、クリーニングブレード6の感光体1との当接部は、以下のように構成されている。即ち、クリーニングブレード6の長手方向中央側には、最大画像形成領域(露光可能幅)に対応して配置された第1領域を備える。また、クリーニングブレード6の長手方向両端側には、第1領域と隣接配置され、第1領域よりも硬度が高くなるように硬化処理された第2領域をそれぞれ備える。また、クリーニングブレード6の長手方向両端側には、第2領域に隣接配置され、第2領域よりも硬度が高くなるように硬化処理された第3領域を備える。後述するように、本実施例では、クリーニングブレード6の長手方向両端側にそれぞれ配置された第2領域、第3領域に対してイソシアネート化合部で硬化処理が施されている。こうすることで、クリーニングブレード6の長手方向における両端側の表面硬度が、中央側の表面硬度よりも高く構成されるとともに、その硬度が長手方向において段階的に高くなるように構成されている。こうすることで、1段あたりの段差を小さくしてトナーすり抜けを抑制しつつ、ブレード端部の摩擦係数を下げてブレード捲れを抑制することができる。
【0022】
○両端部のイソシアネート処理
次に、ゴム部材61の両端部にイソシアネート処理部を形成する方法について説明する。前記処理部の形成方法として、例えば、下記工程を有する方法を挙げることができる。
【0023】
(1)ゴム部材61の感光体1当接部の長手方向両端部にイソシアネート化合物を接触させる工程
(2)イソシアネート化合物をゴム部材61表面に接触させた状態で、放置することによりイソシアネート化合物をゴム部材61中に含浸させる工程、
(3)含浸後、ゴム部材61の表面に残留しているイソシアネート化合物を除去する工程、及び、
(4)ゴム部材61中に含浸したイソシアネート化合物を反応させることにより処理部を形成する工程。
【0024】
すなわち、工程(1)及び(2)において、ゴム部材61先端の感光体1との接触面である61xの長手方向両端部にイソシアネート化合物を適当量含浸させる。工程(3)において余分なイソシアネート化合物をゴム部材61の表面から取り除き、工程(4)において、イソシアネート化合物を反応させて処理部を形成する。工程(4)においては、ゴム部材61を形成するポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物とが反応してアロファネート結合を形成し、硬化して高硬度の両端処理部61aが形成されると考えられる。両端処理部61aは、ゴム部材61の長手方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられる。すなわち、ゴム部材61を形成するポリウレタン樹脂中には活性水素を有するウレタン結合が存在している。そして、工程(4)でこのウレタン結合と含浸されたイソシアネート化合物とが反応しアロファネート結合を形成することにより両端処理部61aが形成されると考えられる。このイソシアネート化合物の含浸はゴム部材61の深さ方向100μm~500μmまで含浸している。また、イソシアネート化合物同士での反応による多量化反応(例えば、カルボジイミド化反応、イソシアヌレート化反応など)も同時に進行し、両端処理部61aの形成に寄与するものと考えられる。この結果、両端処理部61aの硬さは向上し、クリーニングブレード6の摩擦係数を軽減させ、ブレード捲れを抑制することができるものと考えられる。処理部61a1のダイナミック硬度は、クリーニングブレードの捲れ抑制の観点から0.17mN/(μm×μm)以上であることが好ましい。一方、感光ドラムの削れ抑制の観点から、処理部61a1のダイナミック硬度は0.30mN/(μm×μm)以下が好ましい。また、長手中央領域(最大画像形成領域(露光可能幅)に対応して配置された第1領域)と、端部硬化領域(第三領域)とのダイナミック硬度差が0.040mN/(μm×μm)以上であることが好ましい。本実施例では、処理部61a1は、感光ドラム1の摩擦係数が最も高くなる領域に当接される。即ち、処理部61a1は、現像スリーブ4aの現像領域(現像剤が担持される現像コート幅)の端部よりも外側で帯電ローラ2aの帯電領域の端部よりも内側に当接している。尚、本実施例では、クリーニングブレード6の長手方向において、帯電領域(最大帯電可能領域)の端部は、現像領域の端部よりも外側に配置されている。また本実施例では、ゴム部材61に含浸させるイソシアネート化合物としては、分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることができる。分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。また、ゴム部材61に含浸させる分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m-フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。本実施例においては、イソシアネート化合物の反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、触媒もポリウレタン樹脂に含浸させても良い。イソシアネート化合物のブレードへの含浸は、例えば、繊維質状の部材や多孔質の部材にイソシアネート化合物を含浸させ、ブレードに塗布する方法や、スプレーにより塗布する方法などによって行なうこともできる。以上のようにして、所定時間イソシアネート化合物をブレードに含浸させる。処理時間は画像形成装置や当接する部材により変更可能であるし、感光体1と中間転写ベルト7で別々に最適な処理時間、処理幅としても良い。ついで、工程(3)において、ゴム部材61表面に残存するイソシアネート化合物を、イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて拭き取る。以上の工程を経た後、工程(4)において、含浸させたイソシアネート化合物は、反応してアロファネート結合を形成し、あるいは空気中の水分との反応によって殆どが消費されて白色不透明な高硬度な処理層が形成される。
【0025】
上述した工程により作成される両端処理部61aは、両端処理部61aがクリーニングブレード6の厚さ方向へ膨潤することがある。両端処理部61aが膨潤することで、両端処理部61aと、イソシアネート処理を行っていない中央側の表面層との境界で段差が生じ、段差部分からトナーがすり抜ける虞がある。このため、できるだけ段差を抑えた塗布条件とすることが望まれる。尚、境界段差、即ちクリーニングブレード6の厚みの差分は、例えば、12μm以下であるとトナーのすり抜けを効果的に抑制でき、10μm以下であるとより好ましい。
【0026】
また本実施例ではイソシアネート処理面を61xとしたが、61yを処理面として自由長方向に膨潤しても同様の効果を得ることができる。
【実施例1】
【0027】
実施例1における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードの摩擦係数と境界段差を両立する手段について記載する。
【0028】
本実施例では、ブレードの摩擦係数と境界段差を両立するために、クリーニングブレード6の長手方向の両端側のそれぞれにおいて、イソシアネート化合物による硬化処理が多段階に行われている。以下、詳細に説明する。
【0029】
実施例1においては、クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、10min放置後に、イソシアネート化合物を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mm、即ち、現像スリーブ4aの現像領域の端部から0.5mm内側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、60min放置後にイソシアネート化合物を除去する。最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0030】
図3に実施例1で作製したクリーニングブレード6の形状を示す。上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、
図3のように2段階の硬化処理部(61a1、61a2)ができる。
【0031】
即ち、本実施例では、クリーニングブレード6の感光体1に対する当接部は、第1領域及び第2領域、第3領域を有する。第1領域は、長手方向において、中央側に配置され、露光可能領域(最大画像形成領域)の全域に亘って設けられている。第2領域としての硬化処理部61a2は、クリーニングブレード6の長手方向において、第1領域の両端にそれぞれ隣接して設けられている。また、第3領域としての硬化処理部61a1は、クリーニングブレード6の両端側にそれぞれ設けられ、硬化処理部61a2に隣接して設けられている。
【0032】
このように、クリーニングブレード6の一端側において、長手方向に段階的に硬化処理を行うことで、一段当たりの段差を小さくしつつ、長手方向端部の摩擦係数を下げることができる。
【実施例2】
【0033】
実施例2における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードの摩擦係数と境界段差を両立する手段について記載する。
【0034】
クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、5min放置後に、イソシアネート化合物を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から5。0mmまでイソシアネート化合物を接触させる。次に、20min放置後にイソシアネート化合物を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mm、即ち、現像スリーブ4aの端部から0.5mm内側までイソシアネート化合物を接触させる。60min放置後にイソシアネート化合物を除去する。そして、最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0035】
図4に実施例2で作製したクリーニングブレード6の形状を示す。上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、
図4のように3段階の硬化処理部(61a1、61a2、61a3)ができる。
【実施例3】
【0036】
実施例3における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードの摩擦係数と境界段差を両立する手段について記載する。
【0037】
実施例3においては、クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、10min放置後に、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mmから7.0mmの範囲のイソシアネート化合物を除去する。さらに80min放置後に、クリーニングブレードの長手方向における端部から0.0mmか3.0mmの範囲のイソシアネート化合物を除去する。最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。即ち、本実施例では、イソシアネート化合物の含浸時間を変更することで段階的に硬化処理部を形成している。
【0038】
実施例3においても上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、実施例1と同様に
図3のような2段階の硬化処理部(61a1、61a2)ができる。
【実施例4】
【0039】
実施例4における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードの摩擦係数と境界段差を両立する手段について記載する。
【0040】
クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。クリーニングブレードの長手方向における端部から5.0mmから7.0mmの範囲のイソシアネート化合物を除去する。さらに30min放置後に、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mmから5.0mmの範囲のイソシアネート化合物を除去する。さらに50min放置後に0.0mmから3.0mmの範囲のイソシアネート化合物を除去した。そして、最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0041】
実施例4においても上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、実施例2と同様に
図4のような3段階の硬化処理部(61a1、61a2、61a3)ができる。
【0042】
〔比較例1〕
比較例1ではクリーニングブレード6として、表面硬化処理を施していないゴム部材61を用いた。
【0043】
〔比較例2〕
比較例2では、下記の方法で表層硬化処理を施したクリーニングブレード6を用いた。比較例2においては、クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、10min放置後にイソシアネート化合物を除去し、最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0044】
〔比較例3〕
比較例3では、下記の方法で表層硬化処理を施したクリーニングブレード6を用いた。比較例3においては、クリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、80min放置後にイソシアネート化合物を除去し、最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【実施例5】
【0045】
実施例5では、実施例1のクリーニングブレード6を使用したときの感光体1の摩耗量を算出する手段について説明する。
図5に示すように、実施例1のクリーニングブレード6を感光体ドラム1に当接させると、感光体1に対する当接圧は非処理部の当接圧に対して局所的に増大する(Pa1、Pa2)。このように当接圧が局所的に増大する位置は、処理部61a1と処理部61a2の境界段差に対応する箇所(Xa1)と、処理部61a2と非処理部の境界段差に対応する箇所(Xa2)である。これはクリーニングブレード6に段差があることによって感光体1に当接させたときに段差の境界部に応力が集中するためである。
【0046】
感光体1の摩耗量Vは摩擦力(摩擦係数×当接圧)に相関があり、当接圧が高いと摩耗量が大きくなる。従って、実施例5では感光体1の処理部61a1と処理部61a2の境界段差に対応する箇所(Xa1)が最も削れ量が大きくなる。発明者の鋭意検討の結果、本実施例のクリーニングブレード6を使用した場合にはXa1部の摩耗量が感光体1の長手全域の平均摩耗量の2.5倍であることがわかった。
【0047】
感光体1の最表層である硬化層が摩耗し、下層の電荷輸送層が所定量削れると感光体1の帯電電位が不安定になり、黒スジ画像が発生する。本実施例においては、摩耗量が8μmを超えると黒スジ画像が発生し始めたので、感光体1のXa1の位置の摩耗量が8μmに到達したときを感光体1の寿命と設定する。
【0048】
以下では、長手全域の摩耗量Vallを検知し、感光体1の最大摩耗位置であるXa1部の摩耗量Vxを予測する方法を説明する。まず、感光体1を200mm/secのプロセススピードで回転し、帯電ローラ2aに摩耗量検知準備用の直流電圧0V、交流電圧1400Vppを印加する。この動作は感光体1の表面電位を0Vに除電する工程である。次に感光体1が1周回転したタイミングで帯電ローラ2aに印加する直流電圧を摩耗量検知用の―1000Vに変更し、直流電圧感光体1が1周するまでの間、電流検知手段によって感光体に流れる直流電流をサンプリング時間1msecで検知する。電流検知手段の検知結果に基づき、ドラム1周の間の平均電流を取得し、摩耗量検知電流Ivとする。この動作を感光体1の使用初期状態のときと印刷枚数1000枚毎に実施する。ここで初期状態のときの検知電流をIv0としたときに、長手全域の平均摩耗量Vallは(Iv-Iv0)×βで表すことができる。これは感光体1の表層の膜厚に対応して静電容量が変化するためである。発明者の鋭意検討の結果、本実施例の構成においては(Iv-Iv0)が30μAとなったときに感光体1の長手全域の平均摩耗量が8μmとなることがわかった。そこで本実施例では長手全域の摩耗量Vallを0.27μm/μAとし、Xa1部の摩耗量Vxを2.5×0.27μm/μA=0.67μm/μAとした。そして、Xa1部の摩耗量Vxが8μmに達したときを感光体1の寿命値100%とする。そして、印刷枚数1000枚毎に画像形成装置の不図示の表示部にその時点での寿命値を0.01%刻みで表示するようにした。すなわち摩耗量Vxが0.0008μm摩耗した時に0.01%寿命が加算される。
【0049】
また、摩耗量検知動作中は現像スリーブ4aは回転させない。また、本実施例では使用しないが除電手段を備えた画像形成装置では前述の除電工程を省略することが可能である。
【実施例6】
【0050】
実施例6では実施例1~5のようなクリーニングブレードに硬化処理が施されていないカートリッジ(ここでは、通常カートリッジと呼ぶ)が装着可能となっている。そして、そのような通常カートリッジが装着された場合、自動的に、それを検知し、換算式を元の寿命判断できる手段に切り替えることを説明する(
図6)。まず、カートリッジが本体内に挿入される(S61)と、そのカートリッジ情報を検知する(S62)。カートリッジ情報が、上記イソシアネート化合物ブレード(実施例1~5のブレード)だとする(S63)と、寿命検知は摩耗量Vxに基づいて算出される。即ち、上記検知式が採用され、寿命ライフ値をその式で判断する(S64)。それ以外のカートリッジ情報の場合(通常カートリッジの場合)は、上記検知式を用いず、摩耗量Vallに基づいて寿命を検知する。(S65)本実施例では、カートリッジ情報から寿命検知の検知式を本体内に書き換えて終了する66。このように、カートリッジ情報に基づいて、上記検知式を変更することで様々なカートリッジに応じて、寿命を精度よく検知できる。
【0051】
〔比較例4〕
比較例4では、長手全域の摩耗量Vallの値をそのまま使用し、Vallが8μmを超えたときを感光体1の寿命値100%とした。それ以外のことは実施例5と同じ構成を用いた。すなわち摩耗量Vallが0.0008μm摩耗した時に0.01%寿命が加算される。
【0052】
○摩耗量検知精度の評価
実施例5では、耐久枚数が452000枚のときにXa1の摩耗量Vxが8μmを超えて、黒スジが発生し始め、表示部上の感光体1の寿命値も100%になっていた。
【0053】
比較例4では、452000枚程度でXa1部で黒スジが発生し始めたが、そのときの表示部上には感光体1の寿命値は40%と表示されており、寿命値と黒スジ発生のタイミングに乖離が生じていた。
【実施例7】
【0054】
実施例7における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、表面処理層(硬化処理部)の傾斜角を抑制する手段について記載する。
【0055】
実施例7においては、JIS―A硬度が72°であるウレタンゴム製のクリーニングブレードの長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、10min放置後に、イソシアネート化合物を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mm、即ち、現像スリーブ4aの端部から0.5mm内側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、60min放置後にイソシアネート化合物を除去する。最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0056】
図7に実施例1で作製したクリーニングブレード6の形状を示す。上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、
図7のように2段階の硬化処理部(61a1、61a2)ができる。
【0057】
〔比較例5〕
比較例5では、下記の方法で表層硬化処理を施したクリーニングブレード6を用いた。比較例5においては、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.5mmイソシアネート化合物を接触させる。次に、35min放置後にイソシアネート化合物を除去し、最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【実施例8】
【0058】
実施例8における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードのμと境界段差を両立する手段について記載する。
【0059】
実施例8におけるクリーニングブレード6は、
図3に示すような61a1,61a2の処理段差を有しているが、61a2が硬化処理はさせずに膨潤させた非硬化層である構成となっている。
【0060】
イソシアネート化合物の溶液の滴下による処理幅には、ばらつきがあり露光可能域に硬化部分が侵入してしまうことがある。硬化部分が露光領域に侵入すると硬化したクリーニングブレードの凹凸追従性の低さにより、露光可能域のクリーニング性能を低下させトナーすり抜けを引き起こしてしまうことがあるからである。
【0061】
クリーニングブレード6のめくれが発生するのは、現像コート領域外であることから61a1部分のみを硬化することでブレード捲れが防止できる。この時の境界段差を低減しトナーすり抜けや局所的な当接圧増大による、感光体1の摩耗量Vの低減を実現できる。また、処理部分61a2が露光領域に侵入しても硬化していないため、トナーがすり抜けることなくクリーニングすることができる。したがって、イソシアネート化合物による処理幅に関する公差を広げることができる。
【0062】
クリーニングブレード6の効果処理に用いられる溶剤は、イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて、希釈されているのが一般的である。ここで用いることのできる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。実施例8では、この酢酸ブチルを用いたイソシアネート化合物の溶剤を用いており、酢酸ブチルが含浸することでブレードが膨潤することが解っている。本実施例では、61a2の処理部においては、イソシアネート化合物を含有しない酢酸ブチルのみでの膨潤処理を行い、61a1の処理部にイソシアネート化合物を含有する溶剤を用いて硬化処理を行う。
【0063】
クリーニングブレード長手方向における端部から7.0mm、即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を含有しない酢酸ブチル溶剤だけを接触させる。次に、10min放置後に、残った酢酸ブチル溶剤を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mm、即ち、現像スリーブ4aの端部から0.5mm内側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、60min放置後にイソシアネート化合物を除去する。最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0064】
図3に実施例8で作製したクリーニングブレード6の形状を示す。上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、
図3のように2段階の硬化および非硬化処理部を有するブレード段差(61a1、61a2)ができる。
【0065】
実施例8においてクリーニングブレード6長手方向における端部から7.0mmを処理した後にクリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mmの処理を行っているが、この領域の処理の順序が変更した場合にも同様の効果が得られる。
【実施例9】
【0066】
実施例9における、表面硬化処理を施されたクリーニングブレード6において、ブレードのμと境界段差を両立する手段について記載する。
【0067】
クリーニングブレード長手方向における端部から3.0mmの位置(現像スリーブ4aの端部から0.5mm内側まで)から7.0mmの領域即ち、露光可能幅の端部から0.5mm外側までイソシアネート化合物を含有しない酢酸ブチル溶剤だけを接触させる。次に、10min放置後に、残った酢酸ブチル溶剤を除去する。さらに、クリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mm、即ち、現像スリーブ4aの端部から0.5mm内側までイソシアネート化合物を接触させる。次に、60min放置後にイソシアネート化合物を除去する。最後に24時間放置することでクリーニングブレード6を作製した。クリーニングブレード6の他端側にも同様の処理を施している。
【0068】
図3に実施例9で作製したクリーニングブレード6の形状を示す。上記のように段階的にイソシアネート処理を施すことによって、
図3のように2段階の硬化および非硬化処理部を有するブレード段差(61a1、61a2)ができる。
【0069】
実施例9においてクリーニングブレード6長手方向における3.0mmから7.0mmを処理した後にクリーニングブレードの長手方向における端部から3.0mmの処理を行っているが、この領域の処理の順序が変更した場合にも同様の効果が得られる。
【0070】
○クリーニングブレード6の評価
表1は実施例1~4、比較例1~3の境界段差とダイナミック硬度DH、および、トナーのすり抜けとブレード捲れの評価結果を示している。
【0071】
【0072】
境界段差は、各クリーニングブレード6のエッジ部の膨潤部の高さを、光学顕微鏡により測定した。測定器は、小坂研究所 SE 3500で行った。測定条件は以下の通りである。
測定力;0.75mN、触針半径;2μm60°円錐ダイヤ、評価長さ;8mm、カットオフ値;0.8mm、測定速度;0.5mm/secである。境界段差は、クリーニングブレードの前側、奥側の2か所で測定し、その平均値を用いた。また、各境界段差は、当接エッジから1.0±0.1mmの位置を測定した。
【0073】
ダイナミック硬度DHの定義は、DH=α×P/D2である。ここで、P:荷重(mN)、D:圧子の試料への押し込み深さ(μm)、α:圧子形状による定数であり、測定器としてFISCHERSCOPE HM2000LT(Fisher製)、測定圧子としてHM2000 060の使用し、測定荷重:10mN、荷重増加時間:20秒、クリープ5秒、荷重減少時間:20秒、クリープ5秒で測定したときの値を用いた。
【0074】
各種のクリーニングブレード6を用いて、感光体1の残留トナーの除去を行い、20000枚のプリント後、クリーニングブレード6のブレード捲れ評価とトナーのすり抜け評価を行った。画像形成装置としては、上述した実施形態の画像形成装置を利用した。ブレード捲れ評価は高温高湿環境(室温30℃、湿度80%)で行い、トナーのすり抜け評価は低温低湿環境(室温15℃、湿度10%)で行った。
【0075】
実施例1では、最も感光ドラム1のμが高くなる現像スリーブ4aの端部から帯電ローラ2aの端部までの部分に当接する処理部61a1のダイナミック硬度が0.35mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0076】
実施例2では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.35mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差との境界段差が7μm、処理部61a2と処理部61a3との境界段差が3μm、処理部61a3と非処理部との境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0077】
実施例3では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.37mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0078】
実施例4では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.37mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差との境界段差が7μm、処理部61a2と処理部61a3との境界段差が3μm、処理部61a3と非処理部との境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0079】
比較例1では、両端部のイソシアネート処理がないので、滑り性が維持できず、7000枚でブレード捲れが発生した。なお、境界段差がないため、境界すり抜けは発生しなかった。
【0080】
比較例2では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.10mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できず、9000枚でブレード捲れが発生した。なお、処理部61a1と非処理部との境界段差は3μmであるため境界すり抜けは発生しなかった。
【0081】
比較例3では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.37mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しないが、処理部61a1と非処理部との境界段差は13μmであるため2000枚で境界すり抜けが発生した。
【0082】
表2は実施例7、比較例5の傾斜角、および、感光体1の摩耗量の評価結果を示している。
【0083】
【0084】
傾斜角は、各クリーニングブレード6のエッジ部の膨潤部の高さを、光学顕微鏡により測定した境界段差を用いて、算出する。即ち、表面処理層の、表面処理を施した面と平行で且つ長手方向に直交する方向への射影において、段差の包絡線と非表面処理層の自由長方向(ブレード長手方向)の端部とがなす角度のうち、長手方向における端部のより近い方の側にある角度(61b)を算出した。本実施例では、傾斜角は、0.05[°]以上0.5[°]以下になることが好ましい。
【0085】
各種のクリーニングブレード6を用いて、感光体1の残留トナーの除去を行い、300000枚のプリント後、感光体1の摩耗量評価を行った。画像形成装置としては、上述した実施形態の画像形成装置を利用した。評価は低温低湿環境(室温15℃、湿度10%)で行った。
【0086】
実施例7では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.37mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0087】
実施例7では、傾斜角が0.11°となり、境界段差での応力の集中が抑制できており、感光体1の摩耗量は8μmに到達しなかった。
【0088】
比較例5では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.37mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、ブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。
【0089】
比較例5では、傾斜角が1.4°となり、境界段差での応力の集中が抑制できず、180000枚で感光体1の摩耗量が8μmに到達した。
【0090】
表3は実施例8,9の感光体1の境界段差とダイナミック硬度DH、および、トナーのすり抜けとブレード捲れの評価結果を示している。
【0091】
【0092】
実施例8では、最も感光ドラム1のμが高くなる現像スリーブ4aの端部から帯電ローラ2aの端部までの部分に当接する処理部61a1のダイナミック硬度が0.35mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、処理部61a2のダイナミック硬度が0.08mN/(μm×μm)の酸ブチルによる非硬化処理であってもブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。さらに実施例8では、傾斜角が0.11°となり、境界段差での応力の集中が抑制できており、感光体1の摩耗量は8μmに到達しなかった。
【0093】
実施例9では、処理部61a1のダイナミック硬度が0.35mN/(μm×μm)となり、滑り性が維持できており、処理部61a2のダイナミック硬度が0.08mN/(μm×μm)酢酸ブチルによる非硬化処理であってもブレード捲れは発生しなかった。また、処理部61a1と処理部61a2の境界段差の境界段差が8μm、処理部61a2と非処理部の境界段差が3μmであるため、境界すり抜けも発生しなかった。さらに実施例9では、傾斜角が0.11°となり、境界段差での応力の集中が抑制できており、感光体1の摩耗量は8μmに到達しなかった。
【0094】
本実施例では、クリーニングブレード6の両端部にのみイソシアネート化合物で硬化処理を行った例を説明したが、これに限定されない。例えば、クリーニングブレード6の長手全域にイソシアネート化合物で硬化処理を行った上で、実施例1~9のように、クリーニングブレードの長手方向の両端部に硬化処理を行っても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 感光体
2 帯電手段
2a 帯電ローラ
3 潜像手段
4 現像手段
4a 現像スリーブ
5 一次転写手段
5a 一次転写ローラ
6 クリーニングブレード
61 ゴム部材
61x ゴム部材当接面(回転方向下流)
61y ゴム部材当接面(回転方向上流)
61a 両端処理部
61a1 硬化処理部 最端部
61a2 硬化処理部 端部より2段目
61a3 硬化処理部 端部より3段目
61b 硬化処理部の傾斜角
62 板金部材
7 中間転写体
8 二次転写手段
8a 二次転写ローラ
9 クリーニング手段(中間転写体)
10 定着手段
15 記録材