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特許7574068ポジションセンサを有するバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ポジションセンサを有するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241021BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020204806
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2021090756
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】16/711,344
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-175861(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0365464(US,A1)
【文献】特表2012-508083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - A61B18/16
A61B 34/20
A61M 25/10
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
対象の生体の身体内の空洞内に挿入されるように構成されている遠位端を有する可撓性のある挿入管であって、前記挿入管を通って前記遠位端に至るルーメンを収容する挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端から展開可能である膨張可能なバルーンであって、前記バルーンが前記身体内の前記空洞内に展開されている間に、前記ルーメンを通って流体が通過することによって膨張されるように構成されている膨張可能なバルーンと、
前記バルーンの表面に取り付けられた少なくとも1つの可撓性のある回路基板と、
前記バルーンが膨張されたときに前記身体内の前記空洞内の組織と接触するように、前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板の外側に配設された導電性材料を含む1つ以上の電極と、
前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に配設された、螺旋状の導電性トレースと、
を備える医療装置。
【請求項2】
前記挿入管が、コンソールに接続するように構成されている近位端を有し、
前記医療装置が、前記1つ以上の電極及び前記螺旋状の導電性トレースを前記コンソールに連結する電気配線を備える、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記1つ以上の電極が接触している前記組織に治療手技を適用するように、前記電気配線を介して前記1つ以上の電極に電気信号を供給するように構成されている信号生成回路系を備える、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記身体に印加される磁場に応答して前記螺旋状の導電性トレースによって出力される信号を、前記電気配線を介して受信し、前記信号を処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出するように構成されているポジション感知回路系を備える、請求項2に記載の医療装置。
【請求項5】
前記磁場が、異なるそれぞれの軸線に沿って方向付けられた複数の磁場構成成分を含み、
前記ポジション感知回路系が、前記複数の磁場構成成分に応じて前記信号を処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのロケーション座標及び配向座標の両方を導出するように構成されている、
請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記身体に近接して配置され、前記磁場を前記身体に印加するように構成されている、1つ以上の磁場発生器を備える、請求項4に記載の医療装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板は、前記バルーンの周囲に円周方向に分散された複数の可撓性のある回路基板を含み、
前記1つ以上の電極が、前記複数の可撓性のある回路基板上にそれぞれ配設された複数の電極を含む、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記螺旋状の導電性トレースが、前記複数の可撓性のある回路基板のうちの2つ以上の上にそれぞれ配設された2つ以上の螺旋状の導電性トレースを含む、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記身体に印加される磁場に応じて、前記2つ以上の螺旋状の導電性トレースによって出力されるそれぞれの信号を受信し、前記それぞれの信号を組み合わせて処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出するように構成されているポジション感知回路系を備える、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記挿入管の前記遠位端が、前記対象の心内腔内に挿入されるように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲性医療用プローブに関し、具体的にはバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、その遠位端に膨張可能なバルーンを具備しており、必要な場合に、これを膨張させ、収縮させることができる。手術中、カテーテルを患者の体腔(例えば、心内腔)に挿入する間、バルーンは典型的には収縮されており、その後、必要な手技を行うため、バルーンは心内腔内で拡張され、手技が終了したら再び収縮される。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2018/0280658号には、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口するルーメンを有するプローブと、ルーメンを通して体腔内に展開することができる膨張可能なバルーンと、を含む医療器具が記載されている。医療器具は、更に、可撓性のあるプリント回路基板と超音波振動子とを含み、可撓性のあるプリント回路基板は、膨張可能なバルーンの外壁に接続する第1側面と、第1側面に対向する第2側面とを有し、超音波トランスデューサは、可撓性のあるプリント回路基板の第1側面に取り付けられ、バルーンの外壁と可撓性のあるプリント回路基板との間に封入されている。一部の実施形態において、医療器具は、可撓性のある回路基板に取り付けられ、ロケーションセンサとして構成された電極を含んでいてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
後述の本発明の実施形態は、身体内におけるバルーンカテーテルのポジションを特定する、改善された装置及び方法を提供する。
【0005】
したがって、本発明の一実施形態によれば、生体の身体内の空洞内に挿入されるように構成されている遠位端を有した可撓性のある挿入管であって、その挿入管を通って遠位端に至るルーメンを収容する挿入管を含む医療装置が提供される。膨張可能なバルーンが、挿入管の遠位端から展開可能であり、かつそのバルーンは、プローブが体内の空洞内に展開されている間に、ルーメンを通って流体が通過することによって膨張されるように構成されている。少なくとも1つの可撓性のある回路基板が、膨張可能なバルーンの表面に取り付けられている。導電性材料を含む1つ以上の電極が少なくとも1つの可撓性のある回路基板の外側に配設され、それらの電極は、バルーンが膨張したときに身体内の空洞内の組織に接触するようになっている。螺旋状の導電性トレースが、少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に配設される。
【0006】
一部の実施形態では、挿入管は、コンソールに接続するように構成された近位端を有し、かつ装置は、コンソールに1つ以上の電極と螺旋状の導電性トレースとを連結する電気配線を含む。一実施形態では、装置は、信号生成回路系を含み、その信号生成回路系は、電気配線を介して1つ以上の電極に電気信号を供給して、その1つ以上の電極が接触している組織に、治療手技を適用するように構成されている。
【0007】
追加的に又は代替的に、この装置は、ポジション感知回路系を含み、そのポジション感知回路系は、身体に印加される磁場に応答して螺旋状の導電性トレースによって出力される信号を、電気配線を介して受信し、その信号を処理して、膨張したバルーンの身体内でのポジション座標を導出するように構成されている。開示される実施形態では、磁場は、異なるそれぞれの軸線に沿って方向付けられた複数の磁場構成成分を含み、ポジション感知回路系は、複数の磁場構成成分に応答して信号を処理して、身体内における膨張したバルーンのロケーション座標及び配向座標の両方を導出するように構成されている。追加的に又は代替的に、装置は、1つ以上の磁場発生器を含み、その1つ以上の磁場発生器は、身体に近接して配置され、身体に磁場を印加するように構成されている。
【0008】
一部の実施形態では、少なくとも1つの可撓性のあるプリント回路基板は、複数の可撓性のある回路基板を含み、その複数の可撓性のある回路基板は、膨張可能なバルーンの周囲に円周方向に分散されており、1つ以上の電極は、複数の可撓性のあるプリント回路基板上にそれぞれ配設された複数の電極を含む。このような一実施形態では、螺旋状の導電性トレースは、2つ以上の可撓性のある回路基板上にそれぞれ配設された2つ以上の螺旋状の導電性トレースを含む。装置は、ポジション感知回路系を更に含んでもよく、そのポジション感知回路系は、身体に印加される磁場に応答して2つ以上の螺旋状の導電性トレースによって出力されるそれぞれの信号を受信し、それぞれの信号を組み合わせて処理して、身体内における膨張したバルーンのポジション座標を導出するように構成されている。
【0009】
開示される実施形態では、可撓性のある挿入管の遠位端は、対象の心内腔内に挿入されるように構成されている。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ポジション感知のための方法が提供され、この方法は、可撓性のある挿入管を提供することを含み、その挿入管は、対象の生体の身体内の空洞内に挿入されるように構成された遠位端を有し、かつ挿入管を通って遠位端に至るルーメンを含む。膨張可能なバルーンは、挿入管の遠位端から展開されるように連結され、プローブが身体内の空洞内に展開されている間にルーメンを通って流体が通過することによって膨張される。少なくとも1つの可撓性のあるプリント回路基板は、膨張可能なバルーンの表面に取り付けられる。導電性材料が、少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に堆積されて、バルーンが膨張されると、その1つ以上の電極が身体内の空洞内の組織と接触するように可撓性のある回路基板の外側面に1つ以上の電極を形成し、少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に螺旋状の導電性トレースを形成する。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、心臓内での電気生理学的測定及び処置のためのシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、心内腔内において展開されたバルーンカテーテルの遠位端の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
バルーンカテーテルは、特に心内腔内における侵襲的な治療手技及び診断手技において広く使用されている。カテーテル及びカテーテルの遠位端にあるバルーンの、心臓内における座標を見出すための様々な方法が、当該技術分野において既知である。カテーテルの遠位端にある磁気センサを使用して、カテーテル自体のロケーション座標及び配向座標を見出すことができ、しかもそれによって、カテーテルに取り付けられたバルーンの近位端のロケーション座標及び配向座標を見出すことができる。しかしながら、この種の測定は、バルーンの遠位側の座標及びバルーンの外側表面の周囲に配設された電極の座標を、正確に示す指標を与えるのには十分ではない。なぜならば、バルーンの形状及びサイズは、バルーン内の膨張圧及びバルーンの外側表面と心臓内の組織との間の接触圧の関数として、実質的に変化するからである。
【0014】
上記の米国特許出願公開第2018/0280658号に記載されているシステムなどの、一部のバルーンカテーテル法システムにおいては、バルーン上の電極と身体表面上の電極との間のインピーダンスを測定することによって、バルーンのロケーションが推定される。しかしながら、このような方法は不正確であり、システムがバルーンのロケーション座標を推定することしか可能にせず、配向座標を推定することを可能にしない。
【0015】
当該技術分野において既知のシステムにおけるこの欠陥を受けて、本発明の実施形態は、バルーンの表面上にある1本以上の螺旋状の導電性トレースの形をとる、追加的な磁気ポジションセンサを有するバルーンカテーテルを提供する。(本明細書及び特許請求の範囲で使用される「螺旋状」という用語は、中心点の周りに巻きつく経路であって、その経路の連続する転回部の各々が、経路が通る方向に応じて中心点に近づいたりあるいは遠ざかったりしながら巻き付く経路を指す。螺旋の展開部は、湾曲していても矩形であってもよく、あるいは任意の他の好適な形状を有してもよい。)このような螺旋状トレースのそれぞれはコイルとして作用し、磁場内に配置されたときに電気信号を出力する。バルーン内部の圧力及びバルーン外部の圧力によって、バルーンのサイズ及び形状は変化するものの、上記のコイルからの電気信号を処理して、バルーンの遠位側を含むバルーン全体のロケーション及び配向の両方を見出すようにすることができる。
【0016】
開示される実施形態では、医療装置は、対象の生体の身体内の空洞、例えば心内腔の中に挿入されるように構成された、可撓性のある挿入管を備える。膨張可能なバルーンは挿入管の遠位端から展開されるが、少なくとも1つの可撓性のある回路基板がバルーンの表面に取り付けられている。導電性材料を含む1つ以上の電極が、コイルとして機能する螺旋状の導電性トレースと共に、可撓性のある回路基板の外側に蒸着されるか又は別の方法で配設される。一部の実施形態では、複数の可撓性のある回路基板は、バルーンの周囲に円周方向に分散され、電極及び螺旋状の導電性トレースが、回路基板の一部又は全部の上に形成されている。挿入管の遠位端が、身体内の空洞内における所定の場所に配置されると、バルーンは、挿入管内のルーメンを通して流体が通過することによって膨張され、その結果バルーンは、身体内の空洞内において組織と接触するようになる。
【0017】
膨張したバルーンのポジション(ロケーション及び配向)座標を見つけるため、磁界が身体に印加される。ポジション感知回路系は、ポジション座標を導出するために、螺旋状の導電性トレースによって出力される信号を受信及び処理する。空間及びサイズに関する制約のため、螺旋状の導電性トレースによって形成されたコイルは、一般的に、小さい直径(例えば、約2mm)と比較的少ない巻数とを有しており、したがって弱い信号しか出力できない。複数の可撓性のある回路基板上に螺旋状の導電性トレースが形成されると、それぞれの信号を組み合わせて処理して、信号/雑音比が改善されかつそれによって精度が向上したポジション座標を導出することができる。
【0018】
図1は、本発明の例示的な一実施形態による、心臓の電気生理学的(EP)感知及び処置のための、カテーテルを用いたシステム20の概略描写図である。システム20は、テーブル29に横たわった状態で示されている患者28の心臓26内に、血管を介して挿入される挿入管22を備えたカテーテル21を備える。膨張可能なバルーン40が、(図1の挿入図に見られるように)挿入管22の遠位端25に展開される。図示された実施形態では、バルーン40は治療手技において適用されるが、そのような治療手技の例としては、心臓26の左心房内の肺静脈の小孔51の周りの組織をアブレーションすることが挙げられる。バルーン40の構造及び機能の詳細については、以下に図2を参照しながら説明される。
【0019】
カテーテル21の近位端は、電源45を備える制御コンソール24に接続され、電源45は、典型的には、無線周波(RF)信号生成回路系を含む。電源45は、バルーン40上の電極が接触している組織に対して治療手技を適用するために、バルーン40上の電極まで挿入管22を通って延びる電気配線を介して、RF電気信号を供給する。例えば、RF電気信号の電圧、周波数、及び電力に応じて、バルーン40が、心臓組織に対するRFアブレーションによって又は心臓組織に対する不可逆的電気穿孔法(IRE)によって、心臓26内の不整脈を治療する際に、適用されてもよい。追加的に又は代替的には、バルーン上の電極が、心臓26内での電気信号の電気生理学的(EP)感知及びマッピングに使用されてもよい。
【0020】
治療的又は診断的手技を実行するためには、医師30は、最初にシース23を患者28の心臓26内に挿入し、次いで挿入管22をシースを通して通過させる。医師30は、カテーテル21の近位端付近にあるマニピュレータ32を使用してカテーテル21を操作することによって、挿入管22の遠位端25を、心臓26内の、例えば小孔51に近接した標的ロケーションに向かって前進させる。挿入管22の挿入中に、バルーン40は収縮され、シース23によって、畳み込まれた形状に維持されている。
【0021】
ひとたび挿入管22の遠位端25が心臓26内の左心房に到達すると、医師30はシース23を後退させ、バルーン40を部分的に膨張させ、更にカテーテル21を操作して、肺静脈の小孔51内の標的ロケーションにバルーンを導く。バルーン40が標的ロケーションに到達したとき、医師30はバルーン40を完全に膨張させるが、その結果、バルーンの周囲に円周方向に配設された電極(図2)が、小孔の周囲の組織と接触する。コンソール24は、各電極と組織との間のインピーダンスを測定することによって、電極が組織と良好に接触していることを確認してもよい。ひとたび良好な接触が確立されると、医師30は電源45を作動させて、組織にRF電力を印加する。
【0022】
この手技の間、システム20は、心臓26内での挿入管22及びバルーン40のロケーション及び配向を追跡する際に磁気ポジション感知を適用し、それにより医師30を導いて、バルーンを(本例では小孔51内の)巧みに操縦させて標的ロケーションに至らしめ、バルーンが所定の場所に適切に配置されたことを確認させる。この目的のため、図1内の挿入図に示すように、挿入管22の遠位端25は磁気的ポジションセンサ39を、バルーン40のわずかに近位側のロケーションに含む。1つ以上の磁場発生器36が、患者28の身体に近接した既知のポジション、例えば、図1に示すように、ベッド29の下に固定される。コンソール24内の駆動回路34は、磁場発生器に駆動信号を印加して、異なるそれぞれの軸に沿って方向付けられた複数の磁場成分を発生させる。心臓26内を遠位端25が誘導されている間、磁気センサ39は、磁場成分に応じて信号を出力する。コンソール24内のプロセッサ41などのポジション感知回路系は、インターフェース回路44を介してこれらの信号を受信し、この信号を処理して、遠位端25のロケーション座標及び配向座標を見つける。これらの座標はまた、挿入管22の遠位端25から展開されるバルーン40の近位端の、ロケーション及び配向を示す。
【0023】
加えて、図2に示すように、バルーン40自体はその表面上に、1つ以上の感知コイルを螺旋状の導電性トレースの形で有する。これらの感知コイルも同様に、磁場発生器36によって印加された磁場に応じて信号を出力する。プロセッサ41は、これらの信号を処理して、膨張したバルーンの、具体的には心臓26内の組織に接触するバルーンの遠位部分の、ロケーション座標及び配向座標を導出する。プロセッサ41は、バルーン40の座標をディスプレイ27上に提示するが、そのためには、例えば、バルーンが配置される心腔の三次元マップ上に、ポジションセンサによって示されるロケーション及び配向で、バルーンの図形表現が重ね合わされる。
【0024】
システム20に実装される磁気ポジション感知のための方法及び装置は、Biosense Webster,Inc.(カリフォルニア州アーバイン)により製造されるCARTO(登録商標)システムで使用されるものに基づく。この種の磁気感知の動作原理は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されている。なお、これらの開示内容は、完全に記載されているかのように、その全体がすべて、参照により本明細書に組み込まれている。代替的に、システム20は、当該技術分野において既知の他の磁気ポジション感知技術を実装してもよい。
【0025】
一部の実施形態では、プロセッサ41は、(低雑音増幅器及びアナログ/デジタル変換器を含む)カテーテル21から信号を受信するための、並びにシステム20の他の構成要素からの信号を受信して、そのシステム20の他の構成要素の動作を制御するための好適なインターフェース回路44と共に、汎用コンピュータを備える。プロセッサ41は、典型的には、システム20のメモリ48に格納されたソフトウェアの制御下でこれらの機能を実行する。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替的に若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供及び/若しくは記憶されてもよい。追加的に又は代替的には、プロセッサ41の機能の少なくとも一部は、専用の又はプログラム可能なハードウェア論理によって実行されてもよい。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態による、挿入管22の遠位端25から展開されるバルーン40の概略側面図である。バルーン40は、この図において、小孔51内で膨張した状態で示されている。バルーン40は、典型的には、挿入管22内のルーメン(図示せず)を通して生理食塩水などの流体を通過させることによって膨張される。
【0027】
バルーン40は、典型的には、可撓性のある生体適合性材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ナイロン、又はシリコーンから作られる。複数の可撓性のある回路基板60は、例えば好適なエポキシ又は他の接着剤を使用して、バルーン40の外側表面58に取り付けられ、バルーン40の周囲に円周方向に分散される。基板60は、当該技術分野において既知のプリント回路製造技術を用いて電気トレースを蒸着及びエッチングすることができる、ポリイミドなどの好適な誘電材料を含む。基板60を外側表面58に取り付ける前に、基板60の外側に、金などの好適な導電性材料を蒸着及びエッチングすることによって、電極55が形成される。したがって、電極55は、バルーン40が膨張したときに、例えば小孔51の組織などの心臓26内の組織と接触する。
【0028】
螺旋状の導電性トレース66は、電極と同様の様式で基板60上に蒸着され、磁気感知コイル62として機能する。感知コイル62の寸法は、基板60上の利用可能な空間によって限定され、例えば、約2×2mmに限定される。高感度では、トレース66は、典型的には、例えば0.4mm以下の微細ピッチを有し、絶縁コーティングによって覆われて、身体組織及び体液によるトレースの短絡を防止することができる。電気配線64は、挿入管22を介してコンソール24に感知コイル62を連結し、電極55は、同様の様式で配線によってコンソールに連結される。(導電性トレースは、配線64のコイル62の中心点への接続を可能にするために、当該技術分野で既知のプリント回路製造技術を用いて、基板60の両側に形成されてもよく、又は基板上に複数の層で蒸着されてもよい。)図2に示す実施形態では、直線状螺旋の形の導電性トレース66は、カテーテルシャフト25を通ってハンドルに戻るトレース68及びトレース70に接続されるか、又はトレース68及びトレース70の一部として延在することにより、コイル62を使用して、患者に参照される磁場発生器を検出することができる。コイル62並びに方法の他の変形例は、米国特許出願公開第20180180684号に記載されかつ図示されており、これは、参照により、完全に記載されているかのようにここに組み込まれており、複製が付録として取り付けられている。
【0029】
上述したように、プロセッサ41は、磁場発生器36によって生成された磁場に応答して感知コイル62によって出力される信号を受信及び処理し、それによって、心臓26内の膨張したバルーン40の遠位側のロケーション座標及び配向座標の両方を導出する。図示された実施形態では、感知コイル62は、バルーン40の周りの異なるロケーションで、複数の異なる基板60上に形成される。プロセッサ41は、感知コイル62によって出力されるそれぞれの信号を組み合わせて処理するが、その際、例えば、複数の感知コイルのポジション座標の方向平均を見つけることによって処理が行われる。したがって、プロセッサ41は、膨張したバルーンのポジション座標を、向上した精度で導出することができる。
【0030】
上記の実施形態は、具体的には、肺静脈内及び肺静脈の周囲の心臓におけるアブレーション療法に関連しているが、本発明の原理は、必要な変更を加えた上で、心臓内及び他の体腔内での他の治療的及び診断的処置において、同様に適用されてもよい。したがって、上で説明される実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上で具体的に図示及び説明されるものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上述のとおり様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0031】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
対象の生体の身体内の空洞内に挿入されるように構成されている遠位端を有する可撓性のある挿入管であって、前記挿入管を通って前記遠位端に至るルーメンを収容する挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端から展開可能である膨張可能なバルーンであって、前記プローブが前記身体内の前記空洞内に展開されている間に、前記ルーメンを通って流体が通過することによって膨張されるように構成されているバルーンと、
前記膨張可能なバルーンの表面に取り付けられた少なくとも1つの可撓性のある回路基板と、
前記バルーンが膨張されたときに前記身体内の前記空洞内の組織と接触するように、前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板の外側に配設された導電性材料を含む1つ以上の電極と、
前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に配設された、螺旋状の導電性トレースと、
を備える医療装置。
(2) 前記挿入管が、コンソールに接続するように構成されている近位端を有し、
前記装置が、前記1つ以上の電極及び前記螺旋状の導電性トレースを前記コンソールに連結する電気配線を備える、
実施態様1に記載の装置。
(3) 前記1つ以上の電極が接触している前記組織に治療手技を適用するように、前記電気配線を介して前記1つ以上の電極に電気信号を供給するように構成されている信号生成回路系を備える、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記身体に印加される磁場に応答して前記螺旋状の導電性トレースによって出力される信号を、前記電気配線を介して受信し、前記信号を処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出するように構成されているポジション感知回路系を備える、実施態様2に記載の装置。
(5) 前記磁場が、異なるそれぞれの軸線に沿って方向付けられた複数の磁場構成成分を含み、
前記ポジション感知回路系が、前記複数の磁場構成成分に応じて前記信号を処理して、前記身体内の前記膨張したバルーンのロケーション座標及び配向座標の両方を導出するように構成されている、
実施態様4に記載の装置。
【0032】
(6) 前記身体に近接して配置され、前記磁場を前記身体に印加するように構成されている、1つ以上の磁場発生器を備える、実施態様4に記載の装置。
(7) 前記少なくとも1つの可撓性のあるプリント回路基板は、前記膨張可能なバルーンの周囲に円周方向に分散された複数の可撓性のある回路基板を含み、
前記1つ以上の電極が、前記複数の前記可撓性のあるプリント回路基板上にそれぞれ配設された複数の電極を含む、
実施態様1に記載の装置。
(8) 前記螺旋状の導電性トレースが、前記可撓性のある回路基板のうちの2つ以上の上にそれぞれ配設された2つ以上の螺旋状の導電性トレースを含む、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記身体に印加される磁場に応じて、前記2つ以上の螺旋状の導電性トレースによって出力されるそれぞれの信号を受信し、前記それぞれの信号を組み合わせて処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出するように構成されているポジション感知回路系を備える、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記可撓性のある挿入管の前記遠位端が、前記対象の心内腔内に挿入されるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0033】
(11) ポジション感知の方法であって、
対象の生体の身体内の空洞内に挿入されるように構成されている遠位端を有する可撓性のある挿入管を提供することであって、前記挿入管が、前記挿入管を通って前記遠位端に至るルーメンを収容する、ことと、
前記挿入管の前記遠位端から展開され、前記プローブが前記身体内の前記空洞内で展開されている間に前記ルーメンを通る流体の通過によって膨張される、膨張可能なバルーンを連結することと、
少なくとも1つの可撓性のあるプリント回路基板を前記膨張可能なバルーンの表面に取り付けることと、
前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に導電性材料を蒸着させ、前記可撓性のある回路基板の外側に、1つ以上の電極を形成させ、それにより、前記バルーンが膨張されると、前記1つ以上の電極を、前記身体内の前記空洞内の組織と接触させ、前記少なくとも1つの可撓性のある回路基板上に螺旋状の導電性トレースを形成することと、
を含む方法。
(12) 前記1つ以上の電極と、前記螺旋状の導電性トレースとを、前記可撓性のある挿入管を通って延びる電気配線を介してコンソールに連結することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記1つ以上の電極が接触している前記組織に治療手技を適用するように、前記電気配線を介して前記1つ以上の電極に電気信号を供給することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記電気配線を介して、前記身体に印加される磁場に応じて前記螺旋状の導電性トレースによって出力される信号を受信することと、
前記信号を処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出することと、
を含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記身体の近傍の異なるそれぞれの軸線に沿って方向付けられる複数の磁場構成成分を生成することを含み、
前記信号を処理することが、前記複数の磁場構成成分に応じて前記身体内の前記膨張したバルーンのロケーション座標及び配向座標の両方を導出することを含む、
実施態様14に記載の方法。
【0034】
(16) 前記複数の磁場構成成分を生成することが、1つ以上の磁場発生器を前記身体に近接して配置して、前記磁場構成成分を前記身体に印加することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記少なくとも1つの可撓性のあるプリント回路基板は、前記膨張可能なバルーンの周囲に円周方向に分散された複数の可撓性のある回路基板を含み、
前記1つ以上の電極が、前記複数の前記可撓性のあるプリント回路基板上にそれぞれ配設された複数の電極を含む、
実施態様11に記載の方法。
(18) 前記螺旋状の導電性トレースが、前記可撓性のある回路基板のうちの2つ以上の上にそれぞれ配設された2つ以上の螺旋状の導電性トレースを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記身体に印加される磁場に応じて、前記2つ以上の螺旋状の導電性トレースによって出力されるそれぞれの信号を受信することと、
前記それぞれの信号を組み合わせて処理して、前記身体内の膨張した前記バルーンのポジション座標を導出することと、を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記可撓性のある挿入管の前記遠位端を、前記対象の心内腔内に挿入することを含む、実施態様11に記載の方法。
図1
図2