(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】発泡性ポリオレフィン組成物およびその方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
(21)【出願番号】P 2020569126
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019037339
(87)【国際公開番号】W WO2019241724
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510320575
【氏名又は名称】イクイスター・ケミカルズ・エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ガリアトサトス、ヴァッシリス
(72)【発明者】
【氏名】セッカリーニ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ、チーチャン
(72)【発明者】
【氏名】クランブ、リアン
(72)【発明者】
【氏名】トリアッシ、イグナツィオ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-246716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218158(US,A1)
【文献】特開平02-158441(JP,A)
【文献】特開2008-208362(JP,A)
【文献】特開2009-275120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
B29C44/00-44/60
B29C67/20
C08F251/00-283/00
C08F283/02-289/00
C08F291/00-291/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む発泡体組成物:
以下のa)ならびに/またはb)を有する、結晶性ランダムコポリマーを含む反応器製ポリオレフィン組成物であって、 前記結晶性ランダムコポリマーが2~15g/10分の間のメルトフローレート(ASTM D 1238)を有する反応器製ポリオレフィン組成物:
a) 以下を含む群から選択される、第1のプロピレンベースのコポリマーもしくはターポリマー:
i) エチレンの含量が1~7wt%の間である、プロピレンとエチレンのコポリマー、
ii) アルファ-オレフィンの含量が2~14wt%の間である、プロピレンと少なくとも1種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、
iii) エチレンの含量が0.5~4.5wt%の間であり、アルファ-オレフィンの含量が2~6wt%の間である、プロピレン、エチレンおよび少なくとも1種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマーであって、前記エチレンと前記少なくとも1種のアルファ-オレフィンの総含量が6.5wt%以下である、ターポリマー、ならびに/または
b) 以下を含む群から選択される、第2のプロピレンベースのコポリマーもしくはターポリマー:
i) アルファ-オレフィンの含量が8~30wt%の間である、プロピレンと少なくとも1種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、
ii) エチレンの含量が1~7wt%の間であり、アルファ-オレフィンの含量が6~8wt%の間である、プロピレン、エチレンおよび少なくとも1種のC
4~C
8アルファ-オレフィンのターポリマー
(ここで、前記第1のプロピレンベースのコポリマーは0~80wt%で存在し、前記第2のプロピレンベースは20~100wt%で存在する)。
【請求項2】
前記反応器製ポリオレフィン組成物が、少なくとも1種の物理発泡剤(PBA)または少なくとも1種の化学起泡剤(CFA)を使用して発泡される、請求項1に記載の発泡体組成物。
【請求項3】
前記反応器製ポリオレフィン組成物が、少なくとも1種の核形成剤を含むマスターバッチと組み合わされる、請求項2に記載の発泡体組成物。
【請求項4】
前記物理発泡剤が、高加圧CO
2、N
2、空気、プロパン、イソブタン、ブタン、CFC誘導体、アルゴン、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項3に記載の発泡体組成物。
【請求項5】
前記化学起泡剤が少なくとも1種の核形成剤と同じマスターバッチ中にある、または少なくとも1種の核形成剤として異なるマスターバッチ中にある、請求項3に記載の発泡体組成物。
【請求項6】
発泡体組成物中のマスターバッチの総量が前記反応器製ポリオレフィン組成物の5wt%以下である、請求項5に記載の発泡体組成物。
【請求項7】
前記化学起泡剤が吸熱性または発熱性である、請求項2に記載の発泡体組成物。
【請求項8】
前記化学起泡剤が核形成剤として作用する、請求項2に記載の発泡体組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の反応器製ポリオレフィン組成物を含む、物品。
【請求項10】
シート、ストランド、チューブまたは容器である、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
発泡体組成物であって、
該発泡体組成物は、結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーを含む反応器製ポリオレフィン組成物を含み、
該結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーを含む反応器製ポリオレフィン組成物は、以下のa)、およびb)
a) 約4.5wt%~約8wt%のエチレン、および;
b) 約92wt%~約95.5wt%のプロピレン
を有する、結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーを含む反応器製ポリオレフィン組成物であり、且つ、
前記結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーが0.3~15g/10分の間のメルトフローレート(ASTM D 1238)を有し、且つ
前記反応器製ポリオレフィン組成物が、少なくとも1種の物理発泡剤(PBA)または少なくとも1種の化学起泡剤(CFA)を使用して発泡され、且つ
前記反応器
製ポリオレフィン組成物が、少なくとも1種の核形成剤を含むマスターバッチと組み合わされる、発泡体組成物。
【請求項12】
前記物理発泡剤が、高加圧CO
2、N
2、空気、プロパン、イソブタン、ブタン、CFC誘導体、アルゴン、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項11に記載の発泡体組成物。
【請求項13】
前記化学起泡剤が少なくとも1種の核形成剤と同じマスターバッチ中にある、または少なくとも1種の核形成剤として異なるマスターバッチ中にある、請求項11に記載の発泡体組成物。
【請求項14】
発泡体組成物中のマスターバッチの総量が前記反応器製ポリオレフィン組成物の5wt%以下である、請求項13に記載の発泡体組成物。
【請求項15】
前記化学起泡剤が吸熱性または発熱性である、請求項11に記載の発泡体組成物。
【請求項16】
前記化学起泡剤が核形成剤として作用する、請求項11に記載の発泡体組成物。
【請求項17】
請求項11に記載の反応器製ポリオレフィン組成物を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、特許協力条約の下で出願される、2018年6月14日に出願された米国特許仮出願第62/685,133号の利益を主張し、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本開示の分野
【0002】
本開示は、ポリオレフィン組成物、特に、発泡または膨張した、反応器製ポリオレフィン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンは、その傑出した性能および費用特性のために、商業的なプラスチック用途で頻繁に使用されている。これらのポリマーは、非晶質または高結晶質であり得、熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックエラストマーまたは熱硬化性としての挙動を示すことができる。したがって、ポリオレフィンは、押出しプロセスにおける剛性と耐衝撃性と加工性の適切なバランスを得るようにその分子構造および分子量分布(複数可)を正しく選択することによって、選択された用途のために容易に設計され、改変される。
【0004】
ポリオレフィンへの関心が高まっている1つの分野は、発泡体の形成である。ポリオレフィン発泡体は、軽量性、優れたクッション性、熱絶縁ならびに水および化学物質への耐性を含めたその有益な特性のために、ポリマー産業の非常に重要な部分になってきている。
【0005】
ポリオレフィン発泡体はポリマー発泡材料の範囲へ比較的最近加わり、60年代初めに最初に販売されたが、ほとんどすべての産業で使用されている。適用分野としては、包装、スポーツおよびレジャー、玩具、絶縁体、自動車、軍隊、航空機、浮力、クッション性などが挙げられる。この広範囲の適用は、硬質および頑強から軟質および弾性的まで、オレフィンの幅広い物理的性状に起因する。硬質(砕けやすいくはない)発泡体は、例えば、ベースポリマーとして高密度ポリエチレンを使用して得られるが、より軟質の材料は、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのエチレンコポリマーを使用して得られる。ポリマーの変化により発泡体の性状を変えるこの能力はポリウレタン発泡体で見られるものと類似しているが、ほとんどすべてのポリウレタン発泡体はその場重合および発泡化を用いる液体技術から生じるが、ポリオレフィン発泡体は基本熱可塑性ポリマーから開始して生成されるので、技術は非常に異なる。
【0006】
重合技法の先進的な開発とともに、ポリオレフィンは、架橋ポリオレフィン、コポリマー、高溶融強度(分枝)ポリオレフィンおよびポリオレフィンブレンドを含めた様々な化学的および物理的形態を介して、発泡体用途において急速拡大している。しかし、発泡ポリオレフィンにおいてなされた進歩にもかかわらず、製造プロセスに追加費用なしで、強度、起泡性、気泡(cell)の一貫性、寸法安定性、および温度耐性が高まっている、改善された発泡性組成物の開発が引き続き必要である。理想的には、新しい発泡性組成物はまた、ポリオレフィンリサイクルストリームに適合することによって、カーボンフットプリントを低減するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、物理的性状が改善している新規な発泡ポリオレフィン組成物を提供する。特に、発泡性組成物は、化学起泡剤または物理起泡剤によって発泡させられる、高いコモノマー含量(約5重量%コモノマーを越える)を有する、反応器製のプロピレンベースのランダムコポリマー(RACO)またはターポリマーポリオレフィンを含む。発泡反応器製のプロピレンベースのランダムコポリマー(RACO)またはターポリマーポリオレフィンを用いて様々な物品を製造することができる。
【0008】
高いコモノマー含量を有するプロピレンベースのRACOおよびターポリマーは、それらの低い密封開始温度、光学特性、良好な加工性、および粘着性がないという理由で、密封用途のための性状が改善されている。高いコモノマー含量を有する反応器製のRACOおよびターポリマーは、従来のプロピレンベースのRACOポリオレフィンと比べてそれらの性状が改善されているので、発泡されるプロピレンベースのポリオレフィンとして選択された。気相反応器重合プロセスは、従来のプロピレンベースのRACOおよびターポリマーと比較して、可撓性の増大、高光沢、より低い密封温度および他のポリオレフィンとの適合性の改善などの物理的性状の改善を提供するより高いコモノマー含量(例えば、エチレンおよび/またはブテン)の組み込みを可能にする。
【0009】
本明細書に記載の発泡組成物のための、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーのベース樹脂は、A)高いコモノマー含量を有する、プロピレンベースのRACOまたはターポリマー、B)起泡剤、およびC)任意選択で、1種または複数種の核形成剤から構成される。約5重量%を越える高いコモノマー含量を有する、いかなる反応器製のプロピレンベースのランダムコポリマーまたはターポリマーポリオレフィンも成分Aとして使用することができる。あるいは、選択される反応器製のプロピレンベースのランダムコポリマーまたはターポリマーポリオレフィンは、約8重量%を越える、もしくは約13重量%を越える、高いコモノマー含量を有し得る。これらのより高いコモノマーポリオレフィン(約8wt%以上)は、5wt%未満のコモノマーのコモノマーポリオレフィンと比べて、可撓性の増大、高光沢、より低い密封温度および他のポリオレフィンとの適合性の改善などの物理的性状が改善されているので、選択され得る。例示的コモノマーとしては、エチレンおよびC4~C8アルファ-オレフィンが挙げられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、発泡組成物中の反応器製ポリオレフィンは、高いエチレン含量を有する、プロピレンとエチレンのランダムコポリマーである。他の実施形態では、反応器製ポリオレフィンは、エチレン、プロピレンおよびブテンのコモノマーを有するターポリマーである。いくつかの実施形態では、反応器製ポリオレフィンはランダムコポリマーとターポリマーのブレンドである。さらに多くの実施形態では、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーは多段式気相重合プロセスを使用して調製される。
【0011】
本開示の発泡ポリオレフィン組成物および発泡ポリオレフィン組成物から製造される物品を得るために、選ばれた反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーは、物理タイプおよび化学タイプの両方を含めた当技術分野で既知のプロセスおよび起泡剤を使用して発泡される。
【0012】
限定されないが、高加圧CO2、N2、空気、プロパン、イソブタン、ブタン、CFC誘導体、および/またはアルゴンを含めて、物理起泡剤としても知られる任意の物理発泡剤(PBA)は、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーベースの樹脂を発砲させるために使用することができる。
【0013】
PBAは、発泡体の押出しまたは発泡体の射出成形の間に、ベース樹脂の溶融物中に計量して入れられ得る。PBAは、固体ポリマーが供給される地点から離れた所にある、押出し機中の溶融ポリマー塊に射出または導入することができ、ここでは、ポリマーは溶融しており、均一であることが見出される。加圧されたPBAが溶融物中に直接射出される場合、これらは、大気圧に戻るときに膨張し、ポリマー内に微細な気泡を形成する。
【0014】
起泡剤としてPBAを使用する場合に気泡形成を促進するために、少なくとも1種の核形成剤を含むマスターバッチと反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーを組み合わせることができる。核形成剤はポリプロピレンベースの樹脂に有用であり、なぜならば、核形成剤は、性状の増強、成形または押出しの生産性の改善および透明度の増大を反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーに与えることができるからである。核形成剤の適切な分散を確実にするために、マスターバッチは、ポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン中の少なくとも1種のポリマーまたはモノマーに適合する担体樹脂を使用する。例えば、ポリエチレン担体樹脂はRACOまたはターポリマーのコモノマーに適合するであろう。これによって、押出しされ、発泡した反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー全体にわたってサイズ分布が制御された一貫した気泡形態が可能になる。
【0015】
他の実施形態では、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーベースの樹脂は、少なくとも1種の化学起泡剤(CFA)を使用して発泡される。CFAは、分解されると気体を生成/放出し、気泡構造を材料に与える。溶融物が加圧下にある間、CFAの気体はポリマー溶融物中に溶解したままである。溶融物が型に射出されるか、または押出しされると、圧力が下がり、これによって、気体がポリマーを膨張させることが可能になる。
【0016】
核形成剤と同様に、マスターバッチは、CFA(複数可)の適切な分散を確実にするために使用することができ、マスターバッチ中の担体樹脂は反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーベースの樹脂中の少なくとも1種のモノマーに適合する。
【0017】
CFA(複数可)は、吸熱性でもよく、または発熱性でもよい。CFAはブレンド中でより安定な傾向があり、押出しプロセスにおいて熱に暴露されるまで分解せず、気体を生成しないので、吸熱性が望まれる。さらに、CFA(複数可)は、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーベースの樹脂中で気泡形成を促進するために、核形成剤として作用することもできる。核形成化学起泡剤はポリプロピレン成分を有する樹脂に有用であり、なぜならば、核形成剤は、性状の増強、成形または押出しの生産性の改善および透明度の増大を反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーに与えることができるからである。しかし、核形成能力はCFAの要件ではない。
【0018】
CFAを分布させるために使用されるマスターバッチは少なくとも1種の化学起泡剤を含むが、様々な濃度の化学起泡剤の混合物を有することもできる。いくつかの実施形態では、マスターバッチはCFA(複数可)およびCFA(複数可)とは別の随意の核形成剤を有することができる。あるいは、選択された用途について、得られる発泡体の特徴、例えば、気泡サイズ、気泡分布および気泡安定性を微調整するために、核形成および非核形成の両方の化学起泡剤の混合物をマスターバッチで使用することができる。さらに別の選択肢では、所望のCFA(複数可)および随意の核形成剤を提供するために、複数のマスターバッチを組み合わせることができる。
【0019】
本明細書に記載される発泡組成物を使用して形成される物品は、いかなる特定のアーキテクチャにも限定されない。シート、ストランド、チューブ、容器、またはある特定の用途に特有の特化された外形(profiles)を含めた多くの形状の加工の間に発泡体をインラインで押出しすることができ、これによって、第2の加工ステップに対する必要性およびさらなる費用が排除される。あるいは、発泡体を射出成形することができる。さらに別の選択肢では、特定の用途に必要な場合、発泡体を他のポリオレフィン樹脂と層にすることもでき、または他のポリオレフィン樹脂と組み合わせることもできる。例えば、反応器製のRACOまたはターポリマーから製造される発泡物品は、固体ポリオレフィンで作られている1つまたは複数の外層との中心層として使用することができる。したがって、ポリオレフィンの物理的性状、CFA、PBAと随意の核形成剤の混合物を使用した、発泡体の気泡構造の調整能力、および利用可能な広範なアーキテクチャが相乗的に組み合わさって、広範囲の適用を可能にする。いずれの場合も、気体は、ダイから放出されるまで、ポリマー溶融物中に完全に溶解しているべきであり、適切な圧力下で維持されるべきである。
【0020】
本開示は、任意の組み合わせ(複数可)で以下の実施形態のうちのいずれかを含む。
【0021】
2~15g/10分の間のメルトフローレートを有するプロピレンベースのポリオレフィン、および少なくとも1種の化学起泡剤を有するマスターバッチを含む、発泡性組成物(MFR値はASTM D 1238Lに従って測定される)。プロピレンベースのポリオレフィンは、以下を有する半結晶性プロピレンコポリマー組成物を有する:(A)1~7wt%のエチレンを含むプロピレン/エチレンコポリマー、2~10wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、または0.5~4.5wt%のエチレンおよび2~6wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマー(但し、ターポリマー中のエチレンとC4~C8アルファ-オレフィンの総含量は6.5wt%以下である)からなる群から選択される、20~80重量%の1種または複数種のプロピレンベースの成分、ならびに(B)10wt%超~30wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、または1~7wt%のエチレンおよび6~15wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマーからなる群から選択される、20~80wt%の1種または複数種のプロピレンベースの成分。上記の割合で同じ成分(A)および(B)を含む前駆組成物のMFR値(MFR(1))は0.3~5g/10分であり、前駆組成物を前駆組成物の分解にかけることによって得られるMFR値(MFR(2))は2~15g/10分であり、MFR(2)対MFR(1)の比は2対20である。
【0022】
2~15g/10分の間のメルトフローレートを有する反応器製のプロピレンベースのRACOを含む、発泡ポリオレフィン組成物(MFR値はASTM D 1238Lに従って測定される)。以下を有する結晶性プロピレンコポリマー組成物を有する、プロピレンベースのポリオレフィン:(A)1~7wt%のエチレンを含むプロピレン/エチレンコポリマー、2~15wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、または0.5~4.5wt%のエチレンおよび2~6wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマー(但し、ターポリマー中のエチレンとC4~C8アルファ-オレフィンの総含量は6.5wt%以下である)からなる群から選択される、0~80重量%の1種または複数種のプロピレンベースの成分、ならびに(B)8wt%超~30wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、および1~7wt%のエチレンおよび6~18wt%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマーからなる群から選択される、20~100wt%の1種または複数種のプロピレンベースの成分。
【0023】
0.3~15g/10分の間のメルトフローレートを有する反応器製のプロピレンベースのRACOを含む、発泡ポリオレフィン組成物(メルトフローレート値はASTM D 1238に従って測定される)。このRACOは、約4.5wt%~約8wt%のエチレンおよび約92wt%~約95.5wt%のプロピレンを有する結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーでもよい。
【0024】
0.3~15g/10分の間のメルトフローレートを有する反応器製のプロピレンベースのRACOを含む、発泡ポリオレフィン組成物(メルトフローレート値はASTM D 1238に従って測定される)。このRACOは、以下を有する結晶性RACOでもよい:(A)プロピレンとエチレンの20~60wt%のコポリマー(エチレンの含量は約1wt%~約5wt%のエチレンである)、および(B)プロピレンとエチレンおよびC4~C8α-オレフィンとの40~80wt%のターポリマー、(エチレンの含量は約1wt%~約5wt%であり、C4~C8α-オレフィンの含量は約7wt%~12wt%である)。RACO中のエチレンの総含量は約1wt%~約5wt%の間であり、RACO中のC4~C8α-オレフィンの総含量は約2.8wt%~約9.6wt%の間である。
【0025】
上記の発泡組成物のいずれかを、化学起泡剤(CFA)または物理発泡剤(PBA)を使用して発泡させた。
【0026】
上記の発泡組成物のいずれかでは、融解する前に、少なくとも1種の化学起泡剤を有する少なくとも1種のマスターバッチが高いコモノマー含量を有する反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂に加えられ、マスターバッチのための担体樹脂は、RACOまたはターポリマー樹脂中の少なくとも1種のポリマーまたはモノマーに適合する。
【0027】
上記の発泡組成物のいずれかでは、化学起泡剤は吸熱性または起泡剤の起泡剤であり得、かつ/または核形成剤として機能し得る。
【0028】
上記の発泡組成物のいずれかでは、融解する前に、少なくとも1種の化学起泡剤および任意選択で少なくとも1種の核形成剤を有する少なくとも1種のマスターバッチがRACOまたはターポリマー樹脂に加えられる。
【0029】
上記の発泡組成物のいずれかでは、発泡組成物を生成するために、物理発泡剤および核形成剤を含むマスターバッチが使用される。
【0030】
上記の発泡組成物のいずれかでは、発泡組成物中で組み合わされたマスターバッチの総量は、最終組成物の5wt%以下、あるいは、最終組成物の0.25~3wt%である。
【0031】
上記の反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂のいずれかでは、C4~C8α-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンまたは1-オクテンでもよい。
【0032】
化学起泡剤を用いて上記の発泡性ポリオレフィン組成物のいずれかを生成する方法であって、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂とマスターバッチ(複数可)を乾燥ブレンドすること、組成物を融解すること、ダイを介して組成物を押出しすることを含み、化学起泡剤が分解して、気体を放出し、放出された気体を用いて、融解したRACOまたはターポリマー中に1つまたは複数の独立気泡を形成する方法。押出しステップの間に気体を放出するために、化学起泡剤としても作用する核形成剤の使用を含めて、複数の化学起泡剤をこの方法で使用することができる。押出しステップは、発泡したシート、ストランド、チューブ、容器、または他の押出しされた物品を生成することができる。
【0033】
反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂とマスターバッチ(複数可)を乾燥ブレンドすること、組成物を融解すること、ダイを介して組成物を押出しすることを使用して、上記の発泡性ポリオレフィン組成物のいずれかを生成する方法であって、化学起泡剤が分解して、気体を放出し、放出された気体を用いて、融解した反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー中に1つまたは複数の独立気泡を形成する方法。発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーの密度は、同じ組成を有する非発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーよりも最大で70%まで低い可能性があり、発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーにおける平均気泡サイズの範囲は25~40ミクロンの間である。
【0034】
発泡性組成物を溶融すること、押出し機においてポリマー溶融物に1種または複数種の物理発泡剤を射出すること、およびダイを介して組成物を押出しすることを含む、上記の発泡性組成物のいずれかを生成する方法。押出しステップは、発泡したシート、ストランド、チューブ、容器、または他の押出しされた物品を生成することができる。発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーの密度は、同じ組成を有する非発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーよりも最大で50%まで低い可能性があり、発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーにおける平均気泡サイズの範囲は20~40ミクロンの間である。
【0035】
反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂と少なくとも1種の核形成剤を含むマスターバッチとを乾燥ブレンドすること、発泡性組成物を融解すること、押出し機においてポリマー融解物に1種または複数種の物理発泡剤を射出すること、およびダイを介して組成物を押出しすることを含む、上記の発泡性組成物のいずれかを生成する方法。押出しステップは、発泡したシート、ストランド、チューブ、容器、または他の押出しされた物品を生成することができる。発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーの密度は、同じ組成を有する非発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーよりも最大で50%まで低い可能性があり、発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーにおける平均気泡サイズの範囲は20~40ミクロンの間である。
【0036】
発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーの密度が同じ組成を有する非発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーより約10~約50%低い、上記の方法のいずれか。あるいは、発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーの密度は同じ組成を有する非発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーより約10~約25%低い。
【0037】
発泡反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーにおける平均気泡サイズの範囲が、約10~約60ミクロン、約10~約25ミクロン、または約25~約55ミクロン、または約45~約60ミクロンである、上記の方法のいずれか。
【0038】
押出しステップの間に加えられた物理発泡剤が、約100~3,000mL/分、または約400~1,500mL/分、または約500~800mL/分、または約600mL/分、または約1,300mL/分で射出される、上記の方法のいずれか。
【0039】
上記の発泡組成物のいずれかを含む物品。あるいは、上記の方法のいずれかから生成された物品。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】Catalloyプロセスの概略図を示す図である。LyondellBasell(Houston、TX)からの画像提供。
【
図2】RACOまたはターポリマーのここに開示される新規な組成物ならびに吸熱性化学核形成および起泡剤を有するマスターバッチから形成される単層発泡シートについての例示的押出しプロセス条件を示す図である。
【
図3】
図3Aは、Adsyl 5C30F発泡体ストランドについての気泡サイズ分布を示す図であり、
図3Bは、Adsyl 5C30F発泡体ストランドについての気泡サイズ分布のヒストグラムである。Adsyl 5C30Fは、LyondellBasell(Houston、TX)から市販されている製品である。
【
図4】Adsyl 7416XCPを使用して調製した発泡体シート試料K17218およびK17219についての気泡の数および気泡サイズの範囲の傾向を示す図である。Adsyl 7416XCPは、LyondellBasell(Houston、TX)から市販されている製品である。
【
図5】複数のRACOおよびターポリマー発泡体単層シートについての気泡サイズ分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
本明細書で使用する場合、用語「コポリマー」は、2つのタイプのアルファ-オレフィンモノマー単位を含むポリオレフィンを指す。これは、2つのホモポリマーのアロイを指さない。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「コモノマー(comonomer)」または「コモノマー(comonomers)」は、ポリマー鎖中の微量成分であるモノマーの1つまたは複数のタイプを指す。1つの例示として、エチレンはプロピレンとエチレンのランダムコポリマー中のコモノマーであり、エチレンおよびブテンはプロピレンとエチレンおよびブテンのターポリマー中のコモノマーである。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「ランダムコポリマー」または「RACO」は、コモノマー単位がポリマー鎖全体にわたってランダムに分布されるように2つのタイプのモノマー単位を含む、ポリマーを指す。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「ターポリマー」は、2つのタイプのコモノマー単位がポリマー鎖全体にわたってランダムに分布されるように3つのタイプのモノマー単位を含む、ポリマーを指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「α-オレフィン」または「アルファ-オレフィン」は、一般式CH2=CH-R(式中Rは1~10個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状アルキルである)のオレフィンを意味する。α-オレフィンは、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどから選択され得る。
【0046】
用語「反応器製」は、反応器システムで製造されたポリオレフィンを指すのに使用される。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「ベース樹脂」は、少なくとも1種の化学起泡剤または少なくとも1種の物理発泡剤によって高いコモノマー含量を有する、発泡している反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂を指す。フレーズ「高いコモノマー含量」は、プロピレン以外のモノマーが約5wt%を越える量で存在することを意味する。
【0048】
「発泡体」は、中に分散している気相を囲む、固相または液相の連続的な三次元網目構造または気泡構造である。本明細書中に開示されるもののようなポリマー発泡体では、固相はポリマー樹脂であり、これは、連続的な「気泡相」中に気泡壁を形成する。発泡体の「気泡画分」は、気泡または気相中にある発泡体の量である。
【0049】
用語「化学起泡剤」および「化学発泡剤」は互換的に使用されて、ポリマー加工の間に分解反応を受けて、気体の生成および放出をもたらす、化学化合物を示す。これらの化合物は、無機でもよく、または有機でもよく、分解は吸熱性(分解を起こすためにエネルギーを必要とする)でもよく、または発熱性(分解の間にエネルギーを放出する)でもよい。分解を起こすために必要とされるエネルギーは、ポリマーの加工の間に供給され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の化学起泡剤は、核形成剤として作用することもでき、「核形成化学起泡剤」と称することができる。
【0051】
「物理発泡剤」は、気体を生成するための加工の間に状態の変化を受けるので、化学起泡剤と区別可能である。圧縮液化気体は物理発泡剤として利用することができ、これは、高圧下でポリマー溶融物中に射出される。圧力が解放されると、気体は溶融物に溶けにくくなり、その結果、気泡が形成される。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「マスターバッチ」は、ベース樹脂に他の性状を与えるために使用される1種または複数種の固体または液体添加物を有する、予め混合された組成物を指す。本発泡組成物で使用されるマスターバッチは、少なくとも1種の化学起泡剤または少なくとも1種の核形成剤または両方を含むことができ、同様に、ベース樹脂の発泡能力を妨げない添加物を含むことができる。マスターバッチは既に予め混合された組成物であるので、その使用は、化学起泡剤(複数可)および/または核形成剤(複数可)の分散が不十分であるという問題を軽減する。
【0053】
用語「メルトフローレート」および「MFR」は互換的に使用されて、ベース樹脂の溶融物が圧力下で流動する能力の尺度を指す。特記しない限り、メルトフローレートは、ASTM D 1238L(「Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer」)によって決定される。ASTM D 1238Lは、230℃および2.16kgの重量でメルトフローレートを測定する。「メルトフロー範囲」はメルトフローレートの範囲である。
【0054】
本明細書におけるすべての濃度は、別段の指定がない限り、重量パーセント(「wt%」)による。
【0055】
特許請求の範囲または本明細書において用語「含む(comprising)とともに使用される場合、単語「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、文脈において別段示さない限り、1つまたは1つより多い(one or more than one)を意味する。
【0056】
用語「約」は、記載される値+もしくは-測定誤差のマージン、または測定の方法が示されない場合は+もしくは-10%を意味する。
【0057】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されていない限り、または代替物が相互排他的である場合を除き、「および/または」を意味するように使用される。
【0058】
用語「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」および「含む(contain)」(およびこれらの変形)はオープンエンドの連結動詞であり、特許請求の範囲で使用される場合、他の要素の追加を許可する。
【0059】
フレーズ「からなる」は閉じられており、すべての追加的な要素を排除する。
【0060】
フレーズ「から本質的になる」は追加的な材料要素を排除するが、ここに開示される組成物および方法の性質を実質的に変えない非材料要素の包含を許可する。
【0061】
以下の省略形が本明細書で使用される。
【表1】
本開示の実施形態の説明
【0062】
本開示は、現在利用可能な発泡ポリオレフィンと比べて物理的性状が改善している反応器製ランダムポリプロピレンコポリマー(RACO)またはターポリマーポリオレフィンの新規な発泡性組成物を提供する。明細書で使用されるRACOおよびターポリマーは、約5wt%越える高いコモノマー含量を有し、これにより、これらポリオレフィンが幅広い剛性、溶融温度および他の物理的性状を有するようにし、これにより、得られる発泡体が幅広い様々な用途について利用可能になる。例えば、より剛性のコポリマーまたはターポリマーを有するある特定の発泡組成物は、スペアタイヤの包装のために自動車産業で使用することができ、一方で、より軟質で剛性が低いコポリマーまたはターポリマーは、輸送材料または食品包装としての使用のために発泡させることができる。さらに、コポリマーまたはターポリマーにおいてある特定の気泡特性を誘出し、さらに用途の幅を広げるために、発泡体中にボイドを作出するのに必要とされる起泡剤を選択することができる。発泡性組成物から生成される物品も記載される。
【0063】
ベースとしてプロピレンモノマーを有し、高いコモノマー含量(約5wt%を越える)を有し、最終的なメルトフローレート(MFR)が0.1~約15g/10分の間(ASTM D 1238Lによる)である、任意の反応器製ランダムコポリマーまたはターポリマーポリオレフィンを、ここに記載される方法によって使用することができる。
【0064】
一態様では、反応器製プロピレンベースのポリオレフィンは以下を有する結晶性コポリマーでもよい:(A)1~7%のエチレンを含むプロピレン/エチレンコポリマー、2~10%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、0.5~4.5%のエチレンおよび2~6%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマー(但し、ターポリマー中のエチレンとC4~C8アルファ-オレフィンの総含量は6.5%以下である)からなる群から選択される、20~80重量%の1種または複数種のプロピレンベースの成分、ならびに(B)10%超~30%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、1~7%のエチレンおよび6~15%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマーからなる群から選択される、20~80%の1種または複数種のプロピレンベースの成分。上記の割合で同じ成分(A)および(B)を含む前駆組成物のMFR値(MFR(1))は0.3~5g/10分であり、前駆組成物を前駆組成物の分解にかけることによって得られるMFR値(MFR(2))は2~15g/10分であり、MFR(2)対MFR(1)の比は2対20である。
【0065】
あるいは、反応器製プロピレンベースのポリオレフィンは以下を有する結晶性コポリマーでもよい:(A)1~7%のエチレンを含むプロピレン/エチレンコポリマー、2~14%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、または0.5~4.5%のエチレンおよび2~6%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマー(但し、ターポリマー中のエチレンとC4~C8アルファ-オレフィンの総含量は6.5%以下である)からなる群から選択される、0~80重量%の1種または複数種のプロピレンベースの成分、ならびに(B)8%超~30%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンと1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのコポリマー、または1~7%のエチレンおよび6~18%のC4~C8アルファ-オレフィンを含む、プロピレンとエチレンおよび1種または複数種のC4~C8アルファ-オレフィンのターポリマーからなる群から選択される、20~100%の1種または複数種のプロピレンベースの成分。このコポリマーのメルトフローレートは、2.0~15.0g/10分の間であり得る。
【0066】
あるいは、反応器製のプロピレンベースのポリオレフィンは、約4.5wt%~約8wt%のエチレンおよび約92wt%~約95.5wt%のプロピレンを有する結晶性プロピレン/エチレンランダムコポリマーを有するRACOでもよい。このコポリマーのメルトフローレートは、0.3~15.0g/10分の間であり得る。
【0067】
さらに別の選択肢では、反応器製プロピレンベースのポリオレフィンは、以下を有する反応器製のプロピレンベースのRACOでもよい:(A)プロピレンとエチレンの20~60%のコポリマー(エチレンの含量は約1wt%~約5wt%のエチレンである)、および(B)プロピレンとエチレンおよびC4~C8α-オレフィンとの40~80%のターポリマー、(エチレンの含量は約1wt%~約5wt%であり、C4~C8α-オレフィンの含量は約7wt%~12wt%である)。RACO中のエチレンの総含量は約1wt%~約5wt%の間であり、RACO中のC4~C8α-オレフィンの総含量は約2.8wt%~約9.6wt%の間である。このコポリマーのメルトフローレートは、0.3~15.0g/10分の間であり得る。
【0068】
上記のランダムコポリマーおよびターポリマーのすべては例示的であり、本開示における反応器製のRACOおよびターポリマーポリオレフィン樹脂および発泡押出し物の幅広い使用を可能にする配合物の広いバリエーションを示す。上記のランダムコポリマーおよびターポリマー配合に加えて、本組成物のためのポリオレフィンは、EP0674991、EP1025162、およびUS6395831に記載されている配合のうちのいずれかを含むこともでき、これらのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、ポリオレフィンは、EP0674991、EP1025162、およびUS6395831に記載されている反応器プロセスのうちのいずれかによって調製することもできる。
【0069】
さらに多くの実施形態では、ランダムコポリマーまたはターポリマーは多段式気相重合プロセスを使用して調製される。いくつかの実施形態では、多段式気相重合プロセスはLyondellBasell(Houston、TX)のCatalloyプロセスである。
図1に示すCatalloyプロセスは、触媒、2つまたは3つの独立の流動床反応器、および複数のモノマー能力のユニークな組み合わせを利用して、新しい機能性を加えることによって、得られるポリオレフィンの性能を拡大する。Catalloyプロセスは、各気相反応器中でランダムコポリマーまたはターポリマーを製造することができ、反応器中でコポリマーおよび/またはターポリマーのアロイを作出する。このプロセスによって、従来のポリプロピレン生成プロセスと比較して、同じ反応器中の2種の異なるコモノマーを含むポリオレフィン中へのより多くの量のコモノマーの組み込みが可能になる。高いコモノマー含量および複数のコモノマーの存在は、得られるRACOまたはターポリマーに対する、熱特性と物理的特性と光学特性との新しい組み合わせにつながる。Catalloy生成コポリマーおよびターポリマーを使用する利点としては、加工の容易さ、幅広いポリマー組成物で樹脂を製造する能力、および限定されないが、低い密封開始温度を含めた、ユニークな熱性状が挙げられる。したがって、Adsyl製品を含めて、LyondellBasell(Houston、TX)から市販されているCatalloyポリマーを、発泡体のためのベース樹脂として本組成物で使用することができる。
【0070】
上記の反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマーいずれかを使用して発泡気泡構造を作出するために、各ベース樹脂を化学起泡剤または物理発泡剤および随意の核形成剤と混合することができる。
【0071】
反応器製のRACOまたはターポリマーベースの樹脂を少なくとも1種の化学起泡剤(CFA)と組み合わせることができる。本開示で使用するに許容可能な化学起泡剤は、熱分解または化学反応を経て樹脂中に気体を発生する。いくつかの実施形態では、CFAは押出しプロセスの間に分解して、押出しポリマー中で気体を生成および放出して、樹脂を発砲させる。CFAの適切な分散を確実にするために、CFAは、ポリオレフィンベース樹脂、例えば、エチレンまたはプロピレン中の少なくとも1種のポリマーまたはモノマーに適合する担体樹脂を使用するマスターバッチ中にある。これによって、CFAが、押出しされ、発泡した反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂全体にわたってサイズ分布が制御された一貫した気泡形態を作出することが可能になる。
【0072】
多くのCFAが当技術分野で既知であり、および/または市販されている。例示的有機CFAとしては、アゾおよびジアゾ化合物(例えば、アゾジアカルボンアミド)、ヘキサヒドロフタル酸ならびにヒドラジン(その塩および無水物(例えば、スルホニルヒドラジドまたはトリアジン)を含める)、N-ニトロソ化合物、アジド、スルホニルセミカルバジド、トリアゾールおよびテトラゾール、尿素誘導体、グアニジン誘導体ならびにエステルが挙げられる。例示的無機CFAとしては、炭酸アンモニウムおよびアルカリ金属の炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、およびクエン酸が挙げられる。CFAとしては、酸と金属の混合物、有機酸と無機炭酸塩の混合物、亜硝酸塩とアンモニウム塩の混合物を挙げることもできる。
【0073】
少なくとも1つの随意の核形成剤をCFA(複数可)と組み合わせることもできる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のCFAが、随意の核形成剤を含む同じマスターバッチ中に存在するか、または少なくとも1種のCFAが別々のマスターバッチ中に存在するか、または少なくとも1種のCFAが核形成剤として作用する。核形成CFAは、多くのポリオレフィンに対して、性状の増強、成形または押出しの生産性の改善および透明度の増大に役立つ。核形成剤および複数のCFAを有するマスターバッチでは、少なくとも1種のCFAが核形成剤でもよい。あるいは、本組成物で使用される任意のまたはすべてのCFAが核形成性でもよい。さらに、マスターバッチ中のCFAの1種または複数種は、押出しプロセスまで、反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂中で分解しないように、吸熱性でもよい。これは、吸熱性CFAは、活性化するための熱を必要とし、熱は押出しプロセスによって提供されるからである。
【0074】
本開示の他の態様では、得られる発泡体の望ましい気泡形態を達成するために、複数のマスターバッチを反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂と混合することができる。発泡樹脂中のマスターバッチの終濃度は、発泡樹脂の重量の5%に限定され得る。あるいは、発泡樹脂中のマスターバッチの終濃度は0.25~3wt%の間であり得る。
【0075】
反応器製のプロピレンベースのRACOまたはターポリマー樹脂は幅広い物理的性状を有し、これは、特定の気泡サイズ、気泡分布および気泡安定性達成するために選択されたCFAと混合した場合に、可撓性配合物につながる。この組み合わせによって、安定性および性能特性が増強した発泡体構造を形成するために組成物を微調整することが可能になる。したがって、得られた発泡体は、次いで、幅広い物理的性状、密度低減、気泡サイズ、気泡パターンおよび/または気泡安定性を有することができる。これによって、発泡体が、例えば、自動車、輸送、食品包装産業などにおける様々な用途について利用可能になる。
【0076】
CFAは、大きな気泡サイズ(直径150ミクロンより上)または小さな気泡サイズ(直径120~150ミクロンより下)および気泡サイズの広いまたは狭い分布をもたらすために、選ばれ得る。いくつかの用途では、気泡サイズの狭い分布が望ましい。いくつかの実施形態では、望ましい気泡サイズは25~55ミクロンの範囲内であり、なぜならば、これらの発泡体は微細気泡の発泡体に分類することができるからである。しかし、望ましい気泡密度は発泡体の用途に依存するであろう。例えば、低気泡密度発泡体は最も可撓性であり、熱絶縁および快適性(例えば、家具および車の座席)などの多くの用途にとってより良いが、高気泡密度は、エネルギー吸収用途、パイプ、器具、食品および飲料容器などのより剛性の発泡体に使用することができる。ポリマー発泡体の機械的強度は発泡体密度に比例することができるので、発泡体の用途によって、精製される発泡体密度の範囲が定められる。
【0077】
気泡サイズおよび密度に加えて、CFAは、得られる発泡押出し物においてある特定の可撓性を達成するために選ばれ得る。
【0078】
あるいは、溶融形態の反応器製のRACOまたはターポリマーベースの樹脂は、CO2、N2、イソブタンまたはCFC誘導体などの物理発泡剤と組み合わせ、発泡させることができる。発泡剤に対するプロセス条件は、得られる発泡体の気泡相、気泡サイズおよび他の気泡特色を調整するように制御される。
【0079】
PBAを使用する場合、反応器製のRACOまたはターポリマーベースの樹脂を、任意選択で、少なくとも1種の核形成剤を有するマスターバッチと組み合わせることができる。PBAおよび核形成剤は、大きな気泡サイズ(直径150ミクロンより上)または小さな気泡サイズ(直径120~150ミクロンより下)の両方、および気泡サイズの広いまたは狭い分布を含めた望ましい気泡形態を達成するように、相乗的に働く。上記のように、発泡樹脂中のマスターバッチの終濃度は、発泡樹脂の重量の5%に限定され得る。あるいは、発泡樹脂中のマスターバッチの終濃度は0.25~3wt%の間であり得る。
【0080】
ここに開示される反応器製のRACOまたはターポリマーベースの樹脂のいずれかを含む発泡組成物を使用して、様々な形状およびサイズの物品を形成することができる。
【0081】
ここに開示されるベース樹脂組成物は、以下の開示に関して例示される。しかし、これらは例示的であり、方法は、高いコモノマー含量および化学起泡剤または物理発泡剤を有する、いかなる反応器製のプロピレンベースのRACOおよびターポリマーベース樹脂にも広く適用することができる。
【0082】
以下の説明は様々な実施形態を示し、例示であり、添付の特許請求の範囲の範囲を過度に制限しないことが意図される。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなしに、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、同様または類似の結果を依然として得ることができることを当業者なら認識すべきである。決して、添付の特許請求の範囲の範囲を制限または規定するために以下を読むべきではない。
【0083】
ベースポリマー:以下に記載の方法によって、LyondellBasell(Houston、TX)の高いコモノマー含量を有する一連の市販のCatalloy ランダムコポリマーおよびターポリマー樹脂を起泡剤とともに押出し、発泡させ、分析した。例は、Adsyl製品ラインからの樹脂を利用した。これらのベースポリマー樹脂は、幅広いコモノマーのタイプおよび含量を有し、これが多数の潜在用途につながるので、選ばれた。さらに、これらの樹脂は、中程度の溶融弾性および溶融強度を有し、これは発泡体生成に望ましい。
【0084】
Adsyl製品ラインは、高いエチレンおよびブテンコモノマー含量でプロピレンを重合することによって形成される、プロピレンベースのターポリマーを含む。これらのポリマーは、素晴らしい密封性状、良好な光学性、広い操作ウィンドウ(operating window)を有し、金属被覆(metallization)に適する。これらはまたPEおよびPPに適合する。さらに、Adsyl製品ラインは、高エチレン含量または高ブテン含量のいずれかのRACOコポリマーも有する。
【0085】
合わせて、市販樹脂のこの選択は、提案される方法の適用性を研究するために、広範囲の熱特性、物理的特性および光学特性を提供する。
【0086】
化学起泡剤:少なくとも1種の化学起泡剤を含む一連の市販のマスターバッチをプロピレン-ベースのポリマーと組み合わせで得られた。`マスターバッチA(MB-A)は、1.5~2.25wt%の濃度で使用される吸熱性の化学的な核形成および起泡剤を含む。MB-A中のCFAはまた、中程度の密度の押出し物において、密度を低減し、処理量を向上させるために、気泡の作出に使用される。マスターバッチB(MB-B)は、0.75~1.0wt%の濃度で使用されたオレフィン性核形成剤を含む。MB-B中のCFAは、化学的発泡体を生成する押出しプロセスにおいて、気泡の分散、サイズおよび均一性を向上させるために使用される。マスターバッチC(MB-C)は、1wt%の濃度で吸熱性/発熱性のブレンド化学起泡剤を含む。MB-C中のCFAは、中程度の密度の押出し物中に気泡を作出するために、射出成形用途および押出し用途の両方に使用される。マスターバッチD(MB-D)は、2.5wt%の濃度で化学起泡剤を含む。マスターバッチE(MB-E)は、1wt%の濃度で使用される核形成剤を含み、CFAを有する他の上記のマスターバッチのうちの1つと組み合わされた。
【0087】
押出し、発泡させる前に、少なくとも1種のCFAを有するマスターバッチを樹脂と混合した。1種の核形成化学起泡剤の使用は、選ばれたベースポリマーを発泡させるのに十分であるが、発泡押出し物の特性を微調整するために、化学起泡剤の混合物が望ましくあり得る。
【0088】
特記しない限り、選択されたマスターバッチは、溶融段階の前に、ベース樹脂と乾燥ブレンドした。
【0089】
CFA発泡体の押出し:CFAを有する様々な試料組成物を調製し、初期分析のために発泡ストランドとして押出した。押出し機器または樹脂グレードの改変なしで、ベースポリマーおよびマスターバッチを乾燥ブレンドし、押出した。次いで、発泡体ストランド試料を気泡相、気泡サイズおよび他の気泡特色について分析した。
【0090】
発泡体ストランドの特性評価の結果から、CFAを有する特定の試料組成物をシートとして押出した。シートについて、ベースポリマーおよびマスターバッチを乾燥ブレンドし、多層シート(モード2)として押出して、約40mm厚である発泡シートを生成した。ある特定の発泡体シート試料は、密度、ベースポリマー単独と比較した密度低減、気泡サイズおよび他の気泡特色についてさらなる分析にかけた。
【0091】
試料発泡シートを生成するために、押出し機器または樹脂グレードへの改変は必要とされなかった。
図2は、発泡シート(この場合、マスターバッチAを使用する単層発泡シート試料)の押出しについての例示的プロセス条件を示す図である。これらの条件は、異なる発泡シートについて著しく変わらなかった。
図2の破線のボックスは、化学起泡剤を活性化するためにバレルゾーン1および3よりも高い温度を使用するバレルゾーン2を強調する。
【0092】
発泡体の特性評価:光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)によって、発泡Catalloy押出し物の気泡構造の形態学的特性評価を決定した。ダイアモンドナイフを有するLeica MZ6ウルトラミクロトームを-40℃で使用して、押出し品に垂直の方向で発泡体試料をクライオミクロトーム処理した。薄い横断切片は、透過光および交差偏光の両方を用いる光学顕微鏡(Olympus BX51複合顕微鏡)によって調べた。バルク横断切片は、5kVの加速電圧で高真空モードにおいて、SEM(Hitachi S-3500NまたはSU8230)を使用して調べた。SEM画像は、各試料の押出し物の横断切片の全体が単一画像に含まれることを可能にするために、同じ低倍率(25×)で取得した。SEMイメージングより前に、SEM電子ビームからの荷電を排除するために、スパッタコーター(Emitech K550X)を使用してバルク横断切片標本をPTでコーティングした。
【0093】
Olympus Stream Essentials画像ソフトウェアを用いて、暗い穴として示される気泡が明るいポリマーマトリックス中に分散しているSEM画像に対して画像分析を行った。このタイプの気泡形態に対して、ソフトウェアの粒子分析機能が、各発泡体の横断切片において気泡のサイズおよび数を測定するのに最も適した手段である。正確な結果を確実にするために、画像分析より前に、各SEM画像を調べ、Adobe Photoshopソフトウェアを使用して手作業で補正して、気泡と固相の間のコントラストを高めた。画像分析で気泡と固相を区別する濃淡値の閾値を、最多数の気泡が数えられるように、個々の画像のそれぞれに基づいて調整した。一貫性を確実にするために、Stream Essentialsソフトウェアによる自動画像分析後に画像検出のさらなる手動編集を行わなかった。平均の気泡サイズまたは半径、累積気泡面積分布および気泡の形態(連続または独立)を画像から決定した。
【0094】
密度測定は、水またはアルコールによる置き換えを使用して、ASTM D792-13で確立された標準的な方法試験に従って行った。密度の低減は、いかなる起泡剤も加えていない各例に対するベースポリマーの密度に基づいて計算した。
CFA発泡ストランド
【0095】
Adsyl 5C30Fの発泡ストランドは、CFAを使用して調製し、非発泡樹脂と比較した密度の最大低減、および最小気泡サイズについて分析した。予備的な試料についての組成および結果を表1に示す。
【表2】
【0096】
表1の1%のMB-BまたはMB-Eと組み合わせた1.5%MB-Aを有するAdsyl 5C30F試料を、画像分析を含めたさらなる特性評価のために選んだ。追加分析の結果を表2に示す。
【表3】
【0097】
画像分析から、表2の選択された押出しストランドは、直径測定値が2.75mmに及ぶ環状の横断面を有することが見出された。これらの発泡組成物は、剛性およびサイズのわずかなバリエーションを示し、これは、異なる起泡剤組成および発泡体膨張のレベルを反映する。
【0098】
光学画像のすべては可能な最低倍率で顕微鏡から得たので、発泡体横断切片の最大領域が含まれ得る。気泡形態は、ストランド試料によって異なっていた。一般に、気泡サイズは、ポリマー溶融物が加工の間により高いせん断力を受けるストランド表面の近くでより小さかった。気泡のサイズは、表面からの距離とともに徐々に増大した。中心の近くでは、多くの小さな気泡は、凝集して、不規則な形状の大きな気泡を形成すると思われ、これは、どちらかの最初のバブル形成の間に個々の気泡を分散させることをできなくするポリマー溶融物の低いせん断力、または気泡の成長の間に気泡の破裂を引き起こす溶融物の高い伸展力が理由である。いくつかの試料では、観察されたより大きな気泡は、個々の気泡を分離する気泡壁の消失の結果である可能性がある。しかし、気泡壁は、分析用の試料を調製するために使用される低温のミクロトーム処理に耐えるには薄すぎるので、崩壊する傾向がある。
【0099】
SEMを使用して、ストランド表面からの距離にともなう気泡サイズのバリエーションを確認し、かつ気泡凝集を観察した。凝集体のいくつかは、隣接する気泡の間に固体壁が存在する気泡のクラスターを形成した。他のものは不規則な形状のより大きな気泡凝集体を形成した。発泡体ストランド試料中の気泡の多くは、非球状であった。発泡ポリマー融解物は、気体バブルが、界面領域および毛細管圧力を最小化するように厳密に球状の形状である場合に安定である傾向があるが、バブルは押出し方向に伸長し、その結果、発泡の間に機械的応力の分布が不均一になる。気体バブルは、最小局部応力の方向に沿って膨張して、気泡の異方形状をもたらす傾向があると思われる。さらに、幾何制約がより少ないので、発泡の間、押出し方向で自由度がより高い。
【0100】
SEM画像は、これらの半球状気泡の囲いは示さなかった。SEM画像は、互いに連結している、大きな気泡凝集体内の個々の気泡を示すことができるが、全視野において、これらの発泡体試料のうちのいずれかを連続気泡発泡体として特徴づけるための形態学的証拠はない。
【0101】
気泡は固体ポリマー中で均一に分散していなかった。このタイプの発泡体について、気泡サイズ分析は、様々な発泡体試料を区別するために、発泡体構造の包括的かつ有益な特性を提供する。いくつかの形態学的パラメーター、例えば、壁の厚さおよび気泡パッキングジオメトリーは測定可能でなかったか、または有意義でなかった。
【0102】
表2は、粒子分析を介して、Stream Essentials画像ソフトウェアによって得られた、気泡数、平均気泡サイズおよび相対標準偏差の結果を収載する。気泡相のサイズおよび気泡相の面積分率は、これらの結果および測定されたストランド直径に基づいて計算した。これらの試料についての気泡相の面積分率は42%未満である。
【0103】
マスターバッチCの使用は、52%以上の低減で、樹脂の密度の最大の低減を達成するように思われたが、マスターバッチAは39~44%の範囲であった。
【0104】
しかし、マスターバッチAを第2のマスターバッチと組み合わせた場合、気泡サイズは最小であり、直径が130ミクロンという小さな気泡サイズを示した。これらの結果は、各ベースポリマーから所望の性状を誘出するための、マスターバッチ中の起泡剤の微調整を例示する。表2に示すように、平均気泡サイズは、約97~100μmの等価直径の範囲内に収まり、したがって、これらは小さな気泡の発泡体に分類される。
【0105】
気泡サイズ測定の結果をサイズ分布についてさらに分析した。
図3A(気泡累積数対気泡半径)および
図3B(気泡サイズのヒストグラム)に示すように、および表2にも示すように、これらの発泡体ストランド試料は対称的ではない。
図3Aの曲線は、起泡剤組成が気泡形成の主な違いの原因であることを示す。同じ樹脂から生成される発泡体の各ペア内のバリエーションの範囲は、比較的広かった。各発泡体試料で最も頻繁に検出される気泡の寸法は、最小の粒径範囲中にある。このタイプの粒径分布は、気泡サイズ測定において比較的高い標準偏差をもたらす。
【0106】
結論として、ストランド例で使用されるベース樹脂は、発泡体を形成することができた。この起泡性は、2つの理由で予想外であった。第1に、反応器製のプロピレンベースのRACOおよびターポリマー、例えばAdsylベース樹脂は、半結晶性マトリックス成分および部分的に非結晶のバイポリマー成分を有する異相コポリマーではない。これらの2つの成分は、発泡体を形成するのに必要であると考えられる。しかし、本例は両方の成分が必要でないことを示す。第2に、本組成物で使用される、反応器製のプロピレンベースのRACOおよびターポリマーベース樹脂は、高分子量のバイポリマー成分を有するポリオレフィンと比較して、より低い溶融強度を有する。高い溶融強度がポリオレフィンを発砲させるのに必要とされるので、これらのポリマーは悪い発泡候補になる。しかし、本組成物は発泡ストランドを生成することができた。さらに、選択された発泡ストランド組成物は、表面の近くに見られるより小さな気泡を有するが、不規則な形状のより大きな気泡が中心の近くに位置する、小さな気泡の発泡体であった。小さな気泡構造は機械的性状に対する負の影響が大きな気泡構造よりも小さい傾向があることが当技術分野で一般に既知である。密度低減は、ベース樹脂と比較した場合、最大70%までであった。
【0107】
これらの結果は、高いコモノマー含量を有するCatalloy 反応器製のRACOおよびターポリマーポリオレフィンが、発泡できるだけでなく、化学起泡剤(複数可)の選択および/または1種または複数種の核形成剤の添加によって、発泡体の形質(例えば、気泡サイズ、密度低減など)を調整することができることを示す。さらに、発泡ポリオレフィンについての可能な用途の幅広さのため、気泡サイズが一貫していない発泡ストランドなど、ある特定の用途について認められる「欠点」には、さらに多くの用途がある。
CFA発泡シート
【0108】
発泡ストランド試験の結果に基づいて、追加のAdsylグレードを使用して、CFA発泡シートを調製した。単層シート(モード1)として、または多層シート(モード2)としてのいずれかで、組成物を発泡させた。発泡ストランドと同様に、CFA発泡シートのためにマスターバッチAおよびマスターバッチBを利用した。発泡シートは、マスターバッチAとマスターバッチBの組み合わせを選択されたベースAdsyl樹脂乾燥ブレンドし、8インチのフラットダイで押出して、40ミル(約1mm)の標的厚を有する発泡体シートを調製することによって、生成した。
【0109】
異なるAdsylグレードの各CFA発泡シートの組成およびASTM D792に従った密度試験の結果を表3および表4に示す。表3は、多層試料(モード2)についての結果を示し、
図4は、各組成物についての累積気泡面積分布を示し、密度をラベルした。単層試料(モード1)についての結果を表4および
図5に示す。
【表4】
【0110】
化学起泡剤は、試験したベースポリマー樹脂のそれぞれについて密度を低減することができた。これらの発泡シート試料を用いて、約25%までの良好な低減範囲があった。
【0111】
表3は、多層シートとして押出されたAdsyl 7416XCPを使用した結果を示す。試料番号K17218は、21%の低減である、44.7 lb/ft3の密度を有する発泡体を生成した。試料番号K17219は同じ濃度のマスターバッチAを使用したが、0.75wt%のマスターバッチBを加えた。この組成物は、21%という匹敵する密度低減ももたらした。実施例番号K17218の平均気泡半径は15ミクロンであったが、実施例番号K17219は18ミクロンの気泡半径を達成した。
【0112】
Adsyl 7416XCPを使用するさらなる例を単層シートとして発泡させた。表4の結果は、マスターバッチの組成および/または濃度の変化が発泡体の特色にどのように影響を及ぼし得るかを示す。実施例番号 K19011は番号K17219と同じマスターバッチ組成を有しており、モード1と2の間で同様の結果が見られた。しかし、実施例番号K19012についてマスターバッチAの含量を増大させると、密度低減が約6%に増大した。したがって、マスターバッチAの濃度は、Adsyl 7416XCP発泡体の密度低減に対して、より大きな影響があるように思われる。Adsyl 5C30F発泡体で同様の結果が見られ、マスターバッチBの添加は密度低減を増大させなかった。
【表5】
【0113】
上記で説明したように、Adsyl樹脂は、半結晶性マトリックス成分および部分的に非結晶のバイポリマー成分を有する異相コポリマーではない。第2に、反応器製のRACOおよびターポリマーは、長鎖または高分子量の成分を有さない。したがって、これらのポリオレフィンは、これらの特色を有するポリオレフィンと比較して、より低い溶融強度を有する。したがって、これらの樹脂は発泡にとって悪い選択であると考えられた。しかし、初期の例から得られた発泡結果に基づいて、異なるグレードのこの反応器製ランダムコポリマーおよびターポリマーをマスターバッチの様々な組み合わせと混合し、単層シートとして発泡させた。表4の結果は、異なるグレードのこれらの反応器製ランダムコポリマーおよびターポリマーが、マスターバッチの変化とともに、どのように予想外に発泡したかを例示する。
【0114】
ベース樹脂としてAdsyl 6C30Fを使用して生成した発泡組成物は、Adsyl 7416XCPと同様に、マスターバッチAの量が増大するにつれて気泡サイズ半径の増加を示した。これに対して、Adsyl 3C30F-HPは、マスターバッチAの増大とともに気泡半径の減少を示した。Adsylグレードは、マスターバッチAの量が増大するにつれて、およびマスターバッチBを加えた場合、密度低減を示した。
【0115】
前の場合と同様に、SEMを使用して、表4の例示的シートの単層表面からの距離にともなう気泡サイズのバリエーションを確認し、気泡凝集を観察した。凝集体のいくつかは、隣接する気泡の間に固体壁が存在する気泡のクラスターを形成した。他のものは不規則な形状のより大きな気泡凝集体を形成した。発泡体単層試料における気泡の多くは、押出しプロセスの間に伸長するので、非球状であった。
【0116】
気泡直径約25~55ミクロンまで低減し、したがって、これらの発泡体は小さな気泡の発泡体に分類することができる。さらに、各試料は、発泡気泡が互いに分離しており、気泡が完全な気泡壁で取り囲まれているので、主に独立気泡の発泡体であった。この望ましい特色は発泡組成物の用途を選択するのに役立つ。発泡体試料は、発泡体表面からの距離にともなって、気泡のサイズおよび形状のバリエーションも示した。より小さな気泡は表面の近くに見られたが、不規則な形状のより大きな気泡は中心の近くに位置し、これによって、発泡体構造は、ベース樹脂のレオロジー的挙動および発泡に使用される機器に強く依存することが示唆される。
【0117】
各発泡体試料からの結果は、化学起泡剤を使用して複数のAdsyl グレードをシートまたはストランドとして首尾よく発泡させることができることを示す。同様に、核形成剤の有り無し両方で、PBAを用いる発泡能力は、同様に好結果であることが期待される。発泡押出し物は広範囲の性状を示し、これによって、幅広い用途が可能になる。さらに、化学起泡剤もしくはそれらの組み合わせ、および核形成剤の選択を利用して、選択された用途のために発泡体押出し物の特色を調整することができる。さらに、異なる反応器製ランダムコポリマーおよびターポリマーの発泡は、システムのハードウェアへの改変を必要せず、これによって、中断時間および資本費用を低減することができることが認められた。
【0118】
以下の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
ASTM D792-13、Standard Test Methods for Density and Specific Gravity(Relative Density) of Plastics by Displacement
【0120】
ASTM D 1238L、Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer
【0121】
EP0674991
【0122】
EP1025162
【0123】
US6395831