(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】臭気物質吸着剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
A61L9/01 K
A61L9/01 H
(21)【出願番号】P 2021007887
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2020007637
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 透
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 修一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 加奈子
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000711(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167258(WO,A1)
【文献】特開2008-187928(JP,A)
【文献】特開2009-028071(JP,A)
【文献】特開2011-079750(JP,A)
【文献】特開2018-114463(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031474(WO,A1)
【文献】特開2004-337367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01D 53/00-53/96
B01J 20/00-20/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダゾール化合物
と、芳香族多価カルボン酸及び/又は脂肪族多価カルボン酸とを含有し、
前記
芳香族多価カルボン酸及び/又は脂肪族多価カルボン酸の官能数をNとして、前記イミダゾール化合物の含有量が、前記
芳香族多価カルボン酸及び/又は脂肪族多価カルボン酸1モルに対して0.5~N+1モルである、臭気物質吸着剤。
【請求項2】
前記イミダゾール化合物が、一般式(1):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物である、請求項1に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項3】
前記
芳香族多価カルボン酸及び/又は脂肪族多価カルボン酸が、芳香族多価カルボン
酸である、請求項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項4】
前記芳香族多価カルボン
酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸及びメリット酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項5】
前記
芳香族多価カルボン酸及び/又は脂肪族多価カルボン酸が、脂肪族多価カルボン
酸である、請求項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項6】
前記脂肪族多価カルボン
酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸及びクエン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項7】
さらに、水溶性塩基化合物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項8】
前記臭気物質が、酸性臭気物質及び塩基性臭気物質である、請求項1~7のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項9】
さらに、ヒドラジン化合物を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項10】
前記臭気物質が、アルデヒド化合物である、請求項9に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項11】
さらに、溶媒を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、工業製品。
【請求項13】
臭気物質と、請求項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気物質吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者による消臭に対するニーズが高まっている。臭気物質吸着剤は、臭気物質を吸着することによって、不快な臭いを和らげるものであり、その一例として、中和反応を利用した中和消臭技術が挙げられる。これは、酸性臭気物質又は塩基性臭気物質を、中和により揮発性の低い化合物に変える技術であり、効果の高い消臭方法として知られている。具体的には、酸性臭気物質に対しては塩基性化合物を含む臭気物質吸着剤を使用し、塩基性臭気物質に対しては酸性化合物を含む臭気物質吸着剤を使用する。
【0003】
しかしながら、1剤で酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方に対して効果的に消臭性能を付与することを目的として、酸性化合物及び塩基性化合物を含む臭気物質吸着剤を採用して水等の溶媒に溶解させると、消臭成分である酸性化合物及び塩基性化合物が反応して強固な相互作用で塩を形成し、臭気物質を吸着することができなくなってしまう。また、臭気物質吸着剤を繊維の後加工に使用する場合には、臭気物質吸着剤を塗布した後に多くの場合乾燥等で加熱することになるが、その際に黄変してしまうことがある。
【0004】
例えば、特許文献1においては、特定のポリカルボン酸芳香族誘導体を含有する液体消臭剤組成物が開示されており、この液体消臭剤組成物には、特定のポリヒドロキシアミン化合物を含有することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、特定のポリカルボン酸芳香族誘導体を含有する液体消臭剤組成物においては、特定のポリヒドロキシアミン化合物を含有していても、消臭性能は大幅に向上していない。そのうえ、このような臭気物質吸着剤は、加熱時に黄変してしまい、住居用の臭気物質吸着剤としては不向きである。また、特許文献1では、消臭物質としてはイソ吉草酸等の酸性臭気物質が想定されており、塩基性臭気物質は想定されていないため、1剤で酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方に対して効果的に消臭性能を付与するという課題すら認識されていない。
【0007】
以上から、本発明は、加熱時に黄変することなく、また、1剤で酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方を効果的に吸着することができる臭気物質吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含有する臭気物質吸着剤によれば、加熱時に黄変することなく、また、イミダゾール化合物と多価カルボン酸化合物とが反応して塩を形成したとしても相互作用が弱いために臭気物質を吸着することが可能であり、1剤で酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方を効果的に吸着することができることを見出した。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下に示す構成を包含する。
【0009】
項1.イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含有し、
前記多価カルボン酸化合物の官能数をNとして、前記イミダゾール化合物の含有量が、前記多価カルボン酸化合物1モルに対して0.5~N+1モルである、臭気物質吸着剤。
【0010】
項2.前記イミダゾール化合物が、一般式(1):
【0011】
【0012】
[式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物である、項1に記載の臭気物質吸着剤。
【0013】
項3.前記多価カルボン酸化合物が、芳香族多価カルボン酸化合物である、項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
【0014】
項4.前記芳香族多価カルボン酸化合物が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸及びメリット酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項3に記載の臭気物質吸着剤。
【0015】
項5.前記多価カルボン酸化合物が、脂肪族多価カルボン酸化合物である、項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
【0016】
項6.前記脂肪族多価カルボン酸化合物が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸及びクエン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項5に記載の臭気物質吸着剤。
【0017】
項7.さらに、水溶性塩基化合物を含有する、項1~6のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【0018】
項8.前記臭気物質が、酸性臭気物質及び塩基性臭気物質である、項1~7のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【0019】
項9.さらに、ヒドラジン化合物を含有する、項1~7のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【0020】
項10.前記臭気物質が、アルデヒド化合物である、項9に記載の臭気物質吸着剤。
【0021】
項11.さらに、溶媒を含有する、項1~10のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【0022】
項12.項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、工業製品。
【0023】
項13.臭気物質と、項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の臭気物質吸着剤は、加熱時に黄変することなく、また、1剤で酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方を効果的に吸着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0026】
1.臭気物質吸着剤(酸性臭気物質及び塩基性臭気物質吸着剤)
本発明の第1の態様の臭気物質吸着剤は、イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含有し、前記多価カルボン酸化合物の官能数をNとして、前記イミダゾール化合物の含有量が、前記多価カルボン酸化合物1モルに対して0.5~N+1モルである。このような構成を有する本発明の臭気物質吸着剤においては、加熱時に黄変しないとともに、イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物は塩を形成せず、イミダゾール化合物により酸性臭気物質を効果的に吸着し、多価カルボン酸化合物により塩基性臭気物質を効果的に吸着することができる。
【0027】
(1-1)イミダゾール化合物
本発明において、イミダゾール化合物は、酸性臭気物質を吸着させるために使用される。
【0028】
イミダゾール化合物は、特に制限されず、例えば、一般式(1):
【0029】
【0030】
[式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾール化合物が挙げられる。
【0031】
一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4で示されるアルキル基の炭素数は、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、例えば、12以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましい。なお、R1、R2、R3及びR4で示されるアルキル基の炭素数の下限値は特に制限はなく、通常、1以上とすることができる。このアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。なかでも、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が好ましい。
【0032】
一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4としては、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基のいずれでもよいが、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つ(好ましくは1又は2つ)は炭素数1~12のアルキル基であることが好ましい。例えば、R1及び/又はR4を炭素数1~12のアルキル基とすることができる。
【0033】
このような条件を満たす一般式(1)で表されるイミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、4-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、4-n-ブチルイミダゾール、1-n-ペンチルイミダゾール、2-n-ペンチルイミダゾール、4-n-ペンチルイミダゾール、1-n-ヘキシルイミダゾール、2-n-ヘキシルイミダゾール、4-n-ヘキシルイミダゾール、1-n-ヘプチルイミダゾール、2-n-ヘプチルイミダゾール、4-n-ヘプチルイミダゾール、1-n-オクチルイミダゾール、2-n-オクチルイミダゾール、4-n-オクチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、1,2,4-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-3-メチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-5-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、1,5-ジエチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、4,5-ジエチルイミダゾール、1,2,4-トリエチルイミダゾール、1,4,5-トリエチルイミダゾール、2,4,5-トリエチルイミダゾール等が挙げられる。なかでも、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、4-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、4-n-ブチルイミダゾール、1-n-ペンチルイミダゾール、2-n-ペンチルイミダゾール、4-n-ペンチルイミダゾール、1-n-ヘキシルイミダゾール、2-n-ヘキシルイミダゾール、4-n-ヘキシルイミダゾール、1-n-ヘプチルイミダゾール、2-n-ヘプチルイミダゾール、4-n-ヘプチルイミダゾール、1-n-オクチルイミダゾール、2-n-オクチルイミダゾール、4-n-オクチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-3-メチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-5-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、1,5-ジエチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、4,5-ジエチルイミダゾール等が好ましく、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、4-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、4-n-ブチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-エチル-3-メチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-5-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、1,5-ジエチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、4,5-ジエチルイミダゾール等がより好ましい。これらのイミダゾール化合物は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0034】
イミダゾール化合物の含有量は、特に限定されず、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、イミダゾール化合物と多価カルボン酸化合物の総量を100質量%として、例えば、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、イミダゾール化合物の含有量は、同様の理由により、イミダゾール化合物と多価カルボン酸化合物の総量を100質量%として、例えば、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、55質量%以下が特に好ましい。なお、2種以上のイミダゾール化合物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。
【0035】
イミダゾール化合物の含有量は、後述の多価カルボン酸化合物1モルに対して、0.5モル以上、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.25モル以上である。イミダゾール化合物の含有量が、多価カルボン酸化合物1モルに対して0.5モル未満では、酸性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度に劣る。また、イミダゾール化合物の含有量は、後述の多価カルボン酸化合物の官能数をNとして、N+1モル以下である。なお、多価カルボン酸化合物の官能数Nが2である場合には、多価カルボン酸化合物1モルに対して、3モル以下、好ましくは2モル以下、より好ましくは1.75モル以下であり、多価カルボン酸化合物の官能数Nが3以上である場合には、多価カルボン酸化合物1モルに対して、N+1モル以下、好ましくはN+0.5モル以下、より好ましくはNモル以下、さらに好ましくはN-0.5モル以下である。イミダゾール化合物の含有量が、多価カルボン酸化合物1モルに対してN+1モルをこえると、塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度に劣る。
【0036】
なお、本明細書において、「多価カルボン酸の官能数」とは、当該多価カルボン酸が有するカルボキシル基の数を意味する。2種以上の多価カルボン酸化合物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。
【0037】
(1-2)多価カルボン酸化合物
本発明において、多価カルボン酸化合物は、塩基性臭気物質を吸着させるために使用される。
【0038】
多価カルボン酸化合物としては、特に制限はなく、芳香族多価カルボン酸化合物及び脂肪族多価カルボン酸化合物をいずれも採用できる。なかでも、加熱時の黄変をより抑制する観点からは芳香族多価カルボン酸化合物が好ましい。また、塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点からは、官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸化合物が好ましく、官能基としてカルボキシ基のみを有する脂肪族多価カルボン酸化合物がより好ましい。
【0039】
多価カルボン酸化合物が有するカルボキシ基の数は、塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。多価カルボン酸化合物が有するカルボキシ基の数の上限値は特に制限されず、通常、6以下とすることができる。
【0040】
上記のような多価カルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸等の芳香族多価カルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸等が挙げられる。また、これらの多価カルボン酸化合物は、塩の形態であってもよい。なかでも、加熱時の黄変をより抑制する観点からは、芳香族多価カルボン酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸等がより好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸等がより好ましい。また、塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点からは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸等の官能基としてカルボキシ基のみを有する多価カルボン酸化合物が好ましく、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸等の官能基としてカルボキシ基のみを有する脂肪族多価カルボン酸化合物がより好ましい。これらの多価カルボン酸化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0041】
多価カルボン酸化合物の含有量は、特に限定されず、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、イミダゾール化合物と多価カルボン酸化合物の総量を100質量%として、例えば、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上が特に好ましい。また、多価カルボン酸化合物の含有量は、同様の理由により、イミダゾール化合物と多価カルボン酸化合物の総量を100質量%として、例えば、85質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。なお、2種以上の多価カルボン酸化合物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。
【0042】
(1-3)水溶性塩基化合物
本発明において、上記した多価カルボン酸化合物は、水等の溶媒に対する溶解度の低い化合物が含まれている。例えば、後述の溶液吸着剤として使用する等の場合は、水等の溶媒に対する溶解度をさらに高めつつもpHを中性領域に近づけやすいことを目的として、水溶性塩基化合物を使用することもできる。
【0043】
このような水溶性塩基化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アルキルアミン(トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等)、芳香族アミン(N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等)等が挙げられる。なかでも、水等の溶媒に対する溶解度をより高め、後述の溶液吸着剤とした場合に液状又は固体の溶け残りを抑制しやすく、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度を十分な性能としやすい観点から、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等がより好ましい。これらの水溶性塩基化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0044】
水溶性塩基化合物の含有量は、特に限定されず、水等の溶媒に対する溶解度をより高め、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度を十分な性能としやすい観点から、水溶性塩基化合物の官能数をMとして、多価カルボン酸化合物1モルに対して、例えば、0.01モル以上が好ましく、0.02モル以上がより好ましく、0.03モル以上がさらに好ましい。また、水溶性塩基化合物の含有量は、同様の理由により、水溶性塩基化合物の官能数をMとして、多価カルボン酸化合物1モルに対して、例えば、0.9/Mモル以下が好ましく、0.7/Mモル以下がより好ましく、0.6/Mモル以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、「水溶性塩基化合物の官能数」とは、当該水溶性塩基化合物が有する水酸基やアミノ基の等の塩基性官能基の数を意味する。2種以上の水溶性塩基化合物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。
【0045】
(1-4)溶液吸着剤
本発明では、上記イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物、並びに必要に応じて水溶性塩基化合物を溶媒に溶解させた液剤の吸着剤として用いることもできる(以下、「溶液吸着剤」と言うこともある)。溶解には溶解助剤を用いることもできる。このように、溶液吸着剤とすることで、溶媒に溶解した状態であっても、酸性ガス及び塩基性ガスのいずれも吸着できる点で特に有用である。
【0046】
溶媒としては、例えば、水、低級アルコール、多価アルコール、ケトン、エーテル、エステル、芳香族系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、極性有機溶剤等が挙げられる。
【0047】
低級アルコールとしては、例えば、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖状アルキル基を有するアルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0048】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0049】
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0050】
エーテルとしては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等が挙げられる。
【0052】
芳香族系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、エチルビフェニル、ジエチルビフェニル、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0053】
ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
【0054】
極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0055】
これらの中でも、上記したイミダゾール化合物、多価カルボン酸化合物等の溶解度をより高め、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、水、低級アルコール及び多価アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、水がより好ましい。これらの溶媒は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0056】
本発明の臭気物質吸着剤中に上記溶媒を使用する場合、その含有量は、特に制限されず、多価カルボン酸化合物等の溶解度をより高め、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、例えば、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また、溶媒の含有量は、多価カルボン酸化合物等の溶解度をより高め、加熱時の黄変をより抑制するとともに酸性臭気物質及び塩基性臭気物質に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、例えば、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
溶解助剤としては、例えば、脂肪酸エステル、高級アルコール等が挙げられる。
【0058】
脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数4~20の脂肪酸のエステル等が挙げられる。具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0059】
高級アルコールとしては、例えば、炭素数6~18の直鎖又は分岐鎖状アルキル基を有するアルコール等が挙げられる。具体的には、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0060】
これらの溶解助剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0061】
溶解助剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として0.1~20質量%が好ましい。
【0062】
また、本発明の溶液吸着剤は、その目的、用途等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤、例えば、不揮発性の無機酸、キレート剤の他、酸化防止剤、光安定剤等の、広く一般的に用いられる各種の添加剤を含有することもできる。
【0063】
上記不揮発性の無機酸としては、例えば、100℃以上の沸点を有する無機酸が挙げられる。
【0064】
無機酸としては、具体的には、リン酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸等が挙げられ、これらの塩も採用できる。
【0065】
好ましい不揮発性の無機酸としては、ホウ酸等が挙げられ、これらの塩も採用できる。これらの不揮発性の無機酸は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。このような不揮発性の無機酸を配合することにより、臭気物質吸着剤の安定性をより一層向上させることができる。
【0066】
不揮発性の無機酸を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0067】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸等が挙げられ、これらの塩も採用できる。これらのキレート剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。このようなキレート剤を配合することにより、臭気物質吸着剤の安定性を一段と向上させることができる。
【0068】
キレート剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。また、アミン系酸化防止剤としては、具体的には、アルキルジフェニルアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0070】
酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0071】
光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0072】
光安定剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されないが、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0073】
これら添加剤は、単独で使用することもできるが、目的に合わせて併用することも可能である。
【0074】
(1-5)担体に担持された臭気物質吸着剤
本発明では、上記イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物、並びに必要に応じて水溶性塩基化合物を担体に担持(添着)させたものを吸着剤として用いてもよい(以下、「担持吸着剤」と言うこともある)。担体としては、多孔質担体が好ましい。
【0075】
多孔質担体としては、特に限定されず、担体として一般に公知のものを広く使用できるが、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、シリカゲル、ゼオライト、アルミナ、セラミック、珪藻土、活性炭、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられ、シリカが好ましい。
【0076】
(1-6)懸濁吸着剤
本発明では、上記イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物、並びに必要に応じて水溶性塩基化合物を溶媒に分散させて懸濁剤とし、これを吸着剤として使用することもできる(以下、「懸濁吸着剤」と言うこともある)。また、この状態の懸濁吸着剤を上記した溶媒に溶解させて溶液吸着剤として使用することもできる。
【0077】
上記溶媒としては、前述の溶液吸着剤を作製する際に使用される溶剤と同様の溶媒を使用することができる。
【0078】
本発明の懸濁吸着剤は、その目的、用途等に応じて、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、不揮発性の無機酸、キレート剤の他、酸化防止剤、光安定剤等の、広く一般に製剤化に用いられる各種の添加剤を配合することができる。当該各種添加剤としては、前述の、溶液吸着剤の項目で挙げた各種の添加剤を用いることができる。また、界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0079】
非イオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0080】
陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0081】
(1-7)粉吸着剤又はペレット吸着剤
本発明では、前述の溶液吸着剤、担持吸着剤、懸濁吸着剤等を、粉体に混合して粉剤として使用することもできる。また、前述の粉剤自体を圧縮成形したり、本発明の臭気物質吸着剤や前述の粉剤を樹脂と混合してペレットとしても使用することができる。当該ペレットは成形品等に使用される。
【0082】
(1-8)臭気物質吸着剤
このような本発明の臭気物質吸着剤は、例えば、繊維の後加工等に使用できる臭気物質吸着剤として、繊維に塗布した後に、例えば130℃以上、特に150℃以上で加熱する用途に適用することが想定される。この場合の加熱温度の上限値は特に制限されないが、例えば300℃である。
【0083】
この場合、具体的には、製造過程の全工程において、品温及び雰囲気温度(ドライヤーの温度等)のいずれも130℃未満であることが好ましい。この際の温度は、本発明の臭気物質吸着剤の消臭性能及び消臭速度の観点から、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。また、この場合の製造温度の下限値は特に制限はないが、例えば0℃とすることができる。特に、室温が経済的である。
【0084】
このような本発明の臭気物質吸着剤の用途としては、例えば、繊維製品(カーテン、マット、フェルト、クッション、椅子、靴インソール、靴、衣類、帽子等)、建材(壁紙、床材、天井材、手すり等)、衛生用品(おむつ、ガーゼ、マスク、ナプキン等)、ペット用品(ペットシーツ、ペット用トイレ、猫砂、ペット用マット・カーペット、ペット用ベット、ペット用ケージ・ハウス、わら、消臭スプレー、ペット用洗剤等、ペット用食器、グルーミング用品、トリミング用品、キャリーバック、キャットタワー、ペット用玩具、水中生物用水処理剤等)、家庭用品(トイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤(柔軟剤)、芳香剤・脱臭剤・消臭剤(置き型・スプレー型・噴霧型)、家庭用雑貨等)、塗料、接着剤、インキ、シーリング剤、紙製品、バインダー、樹脂エマルション、パルプ、木質材料、木質製品、プラスチック製品、フィルム、フィルター等が挙げられる。
【0085】
(1-9)臭気物質
上記した本発明の臭気物質吸着剤は、臭気物質(特に酸性臭気物質及び塩基性臭気物質の双方)を効率よく、すばやく吸着することができる。なお、本発明の臭気物質吸着剤は、1種又は2種以上を組合せた上記臭気物質に対して有効である。
【0086】
本発明の臭気物質吸着剤で吸着する対象としての臭気物質としては、特に制限はなく、例えば、酸性臭気物質として、ギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、3-メチルブタン酸、4-メチルオクタン酸の有機酸系臭気物質(カルボン酸化合物)、上記以外で臭気のある有機酸化合物等が挙げられ、塩基性臭気物質として、アンモニア、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、芳香族アミン(ピリジン等)、上記以外で臭気のある有機アミン化合物等が挙げられる。
【0087】
2.臭気物質吸着剤(アルデヒド化合物)
本発明の第2の態様の臭気物質吸着剤は、上記した第1の態様の臭気物質吸着剤に対して、さらに、ヒドラジン化合物を含有する。つまり、本発明の第2の態様の臭気物質吸着剤は、イミダゾール化合物、多価カルボン酸化合物及びヒドラジン化合物を含有する。このような構成を有する本発明の臭気物質吸着剤においては、ヒドラジン化合物を含みイミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含まない場合や、イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含みヒドラジン化合物を含まない場合と比較して、イミダゾール化合物、多価カルボン酸化合物及びヒドラジン化合物の三成分を含むことにより、アルデヒド化合物に対する消臭性能及び消臭速度を相乗的に向上させることができる。
【0088】
なお、本発明の第2の態様の臭気物質吸着剤が含有するイミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物については、上記したものを採用できる。好ましい種類や含有量も同様である。また、上記した第1の態様の臭気物質吸着剤と同様に、第2の態様の臭気物質吸着剤においても、水等の溶媒に対する溶解度をさらに高めつつもpHを中性領域に近づけやすいことを目的として、水溶性塩基化合物を使用することもできる。この場合の水溶性塩基化合物についても、上記したものを採用できる。好ましい種類や含有量も同様である。
【0089】
また、本発明の第2の態様の臭気物質吸着剤は、第1の態様の臭気物質吸着剤と同様に、溶液吸着剤、担持吸着剤、懸濁吸着剤、粉吸着剤、ペレット吸着剤等のいずれの形態も取り得る。これらの場合の各種溶媒や各種添加剤の種類や含有量等については、上記したものを採用できる。
【0090】
(2-1)ヒドラジン化合物
ヒドラジン化合物としては、特に制限はなく、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、酸ヒドラジド化合物、アルキルヒドラジン化合物、その他のヒドラジン化合物等を使用することができる。酸ヒドラジド化合物としては、分子中に1個のヒドラジド基を有する酸モノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有する酸ジヒドラジド化合物、分子中に3個のヒドラジド基を有する酸トリヒドラジド化合物等を使用することができる。なかでも、加熱時の黄変をより抑制するとともにアルデヒド化合物に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、酸ヒドラジド化合物が好ましく、酸ジヒドラジド化合物又は酸トリヒドラジド化合物がより好ましい。なかでも、このようなヒドラジン化合物は汎用化合物が好ましい。これらのヒドラジン化合物は、臭気物質(アルデヒド化合物)を吸着する作用を有する化合物である。
【0091】
ヒドラジン化合物の分子量は、加熱時の黄変をより抑制するとともにアルデヒド化合物に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、例えば、30以上が好ましく、60以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。また、ヒドラジン化合物の分子量は、同様の理由により、例えば、300以下が好ましく、280以下がより好ましく、260以下がさらに好ましい。
【0092】
このようなヒドラジン化合物としては、具体的には、酸ヒドラジド化合物として、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、ベンズヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド等が挙げられ、アルキルヒドラジン化合物として、tert-ブチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、n-ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェニルヒドラジン等が挙げられ、その他のヒドラジン化合物として、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノウラゾール、アミノグアニジン等が挙げられる。なかでも、加熱時の黄変をより抑制するとともにアルデヒド化合物に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、酸ヒドラジド化合物が好ましく、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等がより好ましい。これらのヒドラジン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0093】
本発明の臭気物質吸着剤中のヒドラジン化合物の含有量は、特に制限されず、加熱時の黄変をより抑制するとともにアルデヒド化合物に対する消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、例えば、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。また、本発明の臭気物質吸着剤中のヒドラジン化合物の含有量は、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、同様の理由により、例えば、90.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。
【0094】
(2-2)臭気物質吸着剤
このような本発明の臭気物質吸着剤は、例えば、繊維の後加工等に使用できる臭気物質吸着剤として、繊維に塗布した後に、例えば乾燥等の目的で130℃以上、特に150℃以上で加熱する用途に適用することが想定される。この場合の加熱温度の上限値は特に制限されないが、例えば300℃である。
【0095】
この場合、具体的には、製造過程の全工程において、品温及び雰囲気温度(ドライヤーの温度等)のいずれも200℃未満であることが好ましい。この際の温度は、本発明の臭気物質吸着剤の消臭性能及び消臭速度の観点から、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。また、この場合の製造温度の下限値は特に制限はないが、例えば0℃とすることができる。特に、室温が経済的である。
【0096】
このような本発明の臭気物質吸着剤の用途としては、例えば、繊維製品(カーテン、マット、フェルト、クッション、椅子、靴インソール、衣類、靴、帽子等)、建材(壁紙、床材、天井材、手すり等)、衛生用品(おむつ、ガーゼ、マスク、ナプキン等)、ペット用品(ペットシーツ、ペット用トイレ、猫砂、ペット用マット・カーペット、ペット用ベット、ペット用ケージ・ハウス、わら、消臭スプレー、ペット用洗剤等、ペット用食器、グルーミング用品、トリミング用品、キャリーバック、キャットタワー、ペット用玩具、水中生物用水処理剤等)、家庭用品(トイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤(柔軟剤)、芳香剤・脱臭剤・消臭剤(置き型・スプレー型・噴霧型)、家庭用雑貨等)、塗料、接着剤、インキ、シーリング剤、紙製品、バインダー、樹脂エマルション、パルプ、木質材料、木質製品、プラスチック製品、フィルム、フィルター等が挙げられる。
【0097】
(2-3)臭気物質
上記した本発明の臭気物質吸着剤は、臭気物質(特にアルデヒド化合物)を効率よく、すばやく吸着することができる。なお、本発明の臭気物質吸着剤は、1種又は2種以上を組合せた上記臭気物質に対して有効である。
【0098】
本発明の臭気物質吸着剤で吸着する対象としての臭気物質としては、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノネナール、デカナール、3-メチル-ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2,4-ヘプタジエナール等が挙げられ、なかでも、本発明の臭気物質吸着剤は、ホルムアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドの吸着に有効である。
【0099】
3.臭気物質吸着剤を含む工業製品
本発明の臭気物質吸着剤は、工業製品に含んで(配合して)使用することができる。当該工業製品は、本発明を包含する(本発明の工業製品)。
【0100】
前記工業製品とは、従来より広く知られている工業製品及び工業原料を指す。具体的には、繊維製品(カーテン、マット、フェルト、クッション、椅子、靴インソール、衣類、靴、帽子等)、建材(壁紙、床材、天井材、手すり等)、衛生用品(おむつ、ガーゼ、マスク、ナプキン等)、ペット用品(ペットシーツ、ペット用トイレ、猫砂、ペット用マット・カーペット、ペット用ベット、ペット用ケージ・ハウス、わら、消臭スプレー、ペット用洗剤等、ペット用食器、グルーミング用品、トリミング用品、キャリーバック、キャットタワー、ペット用玩具、水中生物用水処理剤等)、家庭用品(トイレタリー製品、洗剤・仕上げ剤(柔軟剤)、芳香剤・脱臭剤・消臭剤(置き型・スプレー型・噴霧型)、家庭用雑貨等)、塗料、接着剤、インキ、シーリング剤、紙製品、バインダー、樹脂エマルション、パルプ、木質材料、木質製品、プラスチック製品、フィルム、フィルター等が挙げられる。
【0101】
本発明の工業製品中、本発明の臭気物質吸着剤の含有量は、特に限定されず、工業製品及びその使用用途によって適宜設定することができる。
【0102】
4.臭気物質吸着剤を使用した臭気物質の吸着方法
本発明の臭気物質の吸着方法は、臭気物質を、本発明の臭気物質吸着剤と接触させることで、本発明の臭気物質吸着剤に臭気物質を吸着させる。具体的には、臭気物質を、本発明の臭気物質吸着剤を備える工業製品と接触させることができる。上記吸着方法によれば、本発明の臭気物質吸着剤が上記した臭気物質を効率よく且つすばやく吸着するので、上記臭気物質を効率的に且つすばやく除去することができる。例えば、本発明の臭気物質吸着剤を備えた繊維製品を室内に配置した場合、室内空気中に含まれる上記臭気物質は、室内空気の自然循環によって前記繊維製品に接触することで、吸着(消臭)される。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。なお、各種化合物は以下のものを使用した。
2-エチルイミダゾール(分子量96.13):東京化成工業株式会社製
イミダゾール(分子量68.08):富士フイルム和光純薬株式会社製
2-メチルイミダゾール(分子量82.10):富士フイルム和光純薬株式会社製
4-エチル-2-メチルイミダゾール(分子量110.16):富士フイルム和光純薬株式会社製
1-オクチルイミダゾール(分子量180.29):富士フイルム和光純薬株式会社製
トリメリット酸(分子量210.14):富士フイルム和光純薬株式会社製
テレフタル酸(分子量166.13):富士フイルム和光純薬株式会社製
ピロメリット酸(分子量254.15):東京化成工業株式会社製
1,2,3-プロパントリカルボン酸(分子量176.12):富士フイルム和光純薬株式会社製
クエン酸(分子量192.12):富士フイルム和光純薬株式会社製
水酸化ナトリウム(分子量40.00):富士フイルム和光純薬株式会社製
水酸化カルシウム(分子量74.09):富士フイルム和光純薬株式会社製
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(分子量121.14):富士フイルム和光純薬株式会社製
アジピン酸ジヒドラジド(ADH):東京化成工業(株)製。
【0104】
実施例1
2-エチルイミダゾール6.0質量部及びトリメリット酸4.0質量部を水90.0質量部に添加し、超音波バスにて溶解させ、臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)とした。
【0105】
得られた吸着剤(吸着液)を、実施例1で得た臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)を1質量%に希釈し、この1質量%水溶液10mLをアルミ皿に載せ、40℃で一晩乾燥後、150℃で10分間加熱した後の各臭気物質吸着剤の色彩を確認した。ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布し実施例1の消臭試験用サンプルとした。
【0106】
実施例2
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.7質量部及びトリメリット酸4.3質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例2の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0107】
実施例3
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.3質量部及びトリメリット酸4.7質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例3の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0108】
実施例4
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例4の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0109】
実施例5
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール4.7質量部及びトリメリット酸5.3質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例5の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0110】
実施例6
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール4.3質量部及びトリメリット酸5.7質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例6の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0111】
実施例7
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール4.0質量部及びトリメリット酸6.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例7の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0112】
実施例8
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール3.2質量部及びトリメリット酸6.8質量部としつつ、完全に溶解させるために1質量%の希釈液となるように調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例8の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0113】
実施例9
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール2.5質量部及びトリメリット酸7.5質量部としつつ、完全に溶解させるために1質量%の希釈液となるように調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例9の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0114】
実施例10
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール2.0質量部及びトリメリット酸8.0質量部としつつ、完全に溶解させるために1質量%の希釈液となるように調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例10の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0115】
実施例11
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を89.5質量部とし、さらに、水酸化ナトリウムを0.5質量部添加したこと以外は実施例1と同様に、実施例11の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0116】
実施例12
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を88.0質量部とし、さらに、水酸化ナトリウムを2.0質量部添加したこと以外は実施例1と同様に、実施例12の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0117】
比較例1
2-エチルイミダゾールの含有量を10.0質量部とし、トリメリット酸を使用しないこと以外は実施例1と同様に、比較例1の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0118】
比較例2
トリメリット酸の含有量を10.0質量部とし、2-エチルイミダゾールを使用しないこととしつつ、完全に溶解させるために1質量%の希釈液となるように調整したこと以外は実施例1と同様に、比較例2の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0119】
比較例3
2-エチルイミダゾールの代わりに2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールを使用し、トリメリット酸及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの含有量を、トリメリット酸5.0質量部及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール5.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、比較例3の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0120】
比較例4
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール7.0質量部及びトリメリット酸3.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、比較例4の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0121】
比較例5
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール1.0質量部及びトリメリット酸9.0質量部としつつ、完全に溶解させるために1質量%の希釈液となるように調整したこと以外は実施例1と同様に、比較例5の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0122】
実施例13
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を85.0質量部とし、アジピン酸ジヒドラジド5.0質量部を添加したこと以外は実施例1と同様に、実施例13の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0123】
比較例6
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸を使用せず、水の含有量を95.0質量部とし、アジピン酸ジヒドラジド5.0質量部を添加したこと以外は実施例1と同様に、比較例6の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0124】
実施例14
2-エチルイミダゾールの代わりにイミダゾールを使用し、イミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、イミダゾール3.5質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を91.5質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例14の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0125】
実施例15
2-エチルイミダゾールの代わりに2-メチルイミダゾールを使用し、2-メチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-メチルイミダゾール4.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を91.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例15の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0126】
実施例16
2-エチルイミダゾールの代わりに4-エチル-2-メチルイミダゾールを使用し、4-エチル-2-メチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、4-エチル-2-メチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を90.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例16の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0127】
実施例17
2-エチルイミダゾールの代わりに1-オクチルイミダゾールを使用し、1-オクチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、1-オクチルイミダゾール10.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、水の含有量を85.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例17の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0128】
実施例18
トリメリット酸の代わりにテレフタル酸を使用し、2-エチルイミダゾール及びテレフタル酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びテレフタル酸6.0量部とし、水の含有量を89.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例18の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0129】
実施例19
トリメリット酸の代わりにピロメリット酸を使用し、2-エチルイミダゾール及びテレフタル酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びピロメリット酸6.0質量部とし、水の含有量を89.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例19の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0130】
実施例20
トリメリット酸の代わりに1,2,3-プロパントリカルボン酸を使用し、2-エチルイミダゾール及び1,2,3-プロパントリカルボン酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及び1,2,3-プロパントリカルボン酸4.0質量部とし、水の含有量を91.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例20の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0131】
実施例21
トリメリット酸の代わりにクエン酸を使用し、2-エチルイミダゾール及びクエン酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びクエン酸4.0質量部とし、水の含有量を91.0質量部としたこと以外は実施例1と同様に、実施例21の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0132】
実施例22
2-エチルイミダゾール及びトリメリット酸の含有量を、2-エチルイミダゾール5.0質量部及びトリメリット酸5.0質量部とし、さらに、水酸化カルシウムを0.5質量部添加したこと以外は実施例1と同様に、実施例22の臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)及び消臭試験用サンプルを得た。
【0133】
試験例1(色彩)
実施例1~22及び比較例1~6で得た臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)をガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布し、40℃で一晩乾燥後、200℃で乾燥後の色彩を確認し、200℃加熱ΔEとした。結果を表1~4に示す。
【0134】
試験例2(臭気物質吸着性能)
実施例1~22及び比較例1~6で得た臭気物質吸着剤(溶液吸着剤)を1質量%に希釈し、この1質量%水溶液10mLをアルミ皿に載せ、40℃で一晩乾燥後、150℃で10分間加熱した試験片を、1Lのサンプリングバック(スマートバッグPA、ジーエルサイエンス(株)製)に入れ、密封後、ピストンを用いてサンプリングバック内の空気を抜いた後、240ppmに調整したアンモニアガスを1L注入し、6時間後の残存ガス濃度を、検知管((株)ガステック)を用いて測定した。また、同様に60ppmに調整した酢酸ガスを1L注入し、6時間後の残存ガス濃度を、検知管((株)ガステック)を用いて測定した。結果を表1~4に示す。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
以上のとおり、イミダゾール化合物及び多価カルボン酸化合物を含有する実施例においては、酸性臭気物質である酢酸ガスと塩基性臭気物質であるアンモニアの双方を効果的に吸着することができた。一方、イミダゾール化合物を使用し多価カルボン酸化合物を使用しない比較例1においては、酸性臭気物質である酢酸ガスは効果的に吸着するものの、塩基性臭気物質であるアンモニアガスはほとんど吸着できなかった。また、多価カルボン酸化合物を使用しイミダゾール化合物を使用しない比較例2においては、塩基性臭気物質であるアンモニアガスは効果的に吸着するものの、酸性臭気物質である酢酸ガスはほとんど吸着できなかった。また、酸性化合物と塩基性化合物とを組合せて使用したとしても、イミダゾール化合物とアミン化合物を使用した比較例3は、それぞれ反応して強固な相互作用を有する塩を形成するためか、酸性臭気物質である酢酸ガスと塩基性臭気物質であるアンモニアのいずれもほとんど吸着することができなかった。さらに、酸性化合物と塩基性化合物とを組合せて使用したとしても、多価カルボン酸化合物の含有量が少ない比較例4では塩基性臭気物質であるアンモニアの吸着量が少なく、イミダゾール化合物の含有量が少ない比較例5では酸性臭気物質である酢酸の吸着量が少なかった。