(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】情報画像処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241021BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20241021BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241021BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20241021BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241021BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 308
G06F3/12 371
G06F3/12 356
G06F3/12 391
B41J5/30 C
B41J29/38 201
B41J29/46 Z
H04N1/00 912
H04N1/387
(21)【出願番号】P 2021016502
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 道彦
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-83776(JP,A)
【文献】特開2013-91168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 5/30
B41J 29/38
B41J 29/46
H04N 1/00
H04N 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDLデータを生成し出力するプリンタドライバであって、
PDLデータの出力方法として当該PDLデータに基づく印刷処理が可能な画像形成装置への保存が指示された場合、前記印刷処理の際に特定の色を別の色に置き換える処理の実行を、生成されるPDLデータに対して設定できなくする、
ことを特徴とするプリンタドライバ。
【請求項2】
前記画像形成装置にて前記印刷処理の際に前記置き換える処理を実行する設定がなされている場合に、生成されるPDLデータに対して前記置き換える処理の実行を設定できなくすることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ。
【請求項3】
生成されるPDLデータに関する設定を行うためのGUIにおいて、前記置き換える処理の実行を選択できないようにすることで、前記置き換える処理の実行を設定できなくすることを特徴とする請求項2に記載のプリンタドライバ。
【請求項4】
前記画像形成装置にて設定されているカラーマッチング方法のタイプが、前記置き換える処理を伴うタイプであった場合に、当該タイプのカラーマッチング方法を設定できないようにすることで、生成されるPDLデータに対して前記置き換える処理の実行を設定できなくすることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ。
【請求項5】
生成されるPDLデータに関する設定を行うためのGUIにおいて、前記置き換える処理を伴うタイプを選択できないようにすることを特徴とする請求項4に記載のプリンタドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの色調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるMFP(Multi-Function-Printer)は、基本的なプリント及びコピー機能に加え、印刷に用いる画像データを保存する機能(BOX機能)や保存した画像データを外部デバイスに送信する機能(SEND機能)を備えるものがある。特許文献1には、BOX機能で保存している複数の画像データを用いていわゆる製本印刷を行う場合において、当該複数の画像データの色空間が異なる場合に、印刷できない或いは色味が変化してしまう旨をユーザに警告する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーポレートカラ-といった特定色を印刷時に再現できるよう、企業ロゴ等に用いる特定色に色名(例えばDark_REDなど)を付けておき、印刷時に色名を指定することでその目標とする色を出力するスポットカラーマッチングと呼ばれる技術がある(
図1(a)参照)。さらに、より手軽にスポットカラーマッチングを行う技術として、印刷対象の画像データに含まれる特定色の色値(RGB値)を予め用意した色置換リストを用いて目標色の色値(RGB値)に置き換えた後に通常のカラーマッチングを行う技術がある(
図1(b)参照)。以下、この技術を「簡易スポットカラーマッチング」と呼ぶ。
【0005】
ここで、簡易スポットカラーマッチングによって特定色について色値の置き換えがなされたRGB色空間の画像データを上述のBOX機能で保存したとする。こうして保存された画像データをPCや他のプリンタに送信すると、特定色の色値(RGB値)が元の色値から変更されてしまっていることから、送信先のPCや他のプリンタにおいて元の画像データとは異なる色味になってしまう。そして、このケースでは、送信の前後で画像データの色空間は一致したままであることから、色空間が異なることを前提条件とする上記特許文献1の技術では上述の問題に対処することができない。
【0006】
本開示の技術は上記問題点に鑑みてなされたもので、簡易スポットカラーマッチングとBOX機能との両立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る、PDLデータを生成し出力するプリンタドライバは、PDLデータの出力方法として当該PDLデータに基づく印刷処理が可能な画像形成装置への保存が指示された場合、前記印刷処理の際に特定の色を別の色に置き換える処理の実行を、生成されるPDLデータに対して設定できなくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、簡易スポットカラーマッチングを行って印刷したい画像データについてのBOX機能利用時の利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)及び(b)は、本開示に係る技術の課題を説明する図。
【
図2】印刷システムのハードウェア構成を示すブロック図。
【
図3】プリンタドライバの機能構成を示すブロック図。
【
図4】(a)及び(b)は、印刷等の出力を指示するためのGUIの一例を示す図。
【
図5】(a)及び(b)は、色設定のためのGUIの一例を示す図。
【
図6】実施形態1に係る、画像処理部の内部構成を示すブロック図。
【
図7】プリンタドライバのGUI制御の流れを示すフローチャート。
【
図8】実施形態2に係る、画像処理部の内部構成を示すブロック図。
【
図9】PDLデータが入力された場合のMFPにおける処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】保存データを利用するためのGUIの一例を示す図。
【
図11】保存データに対して印刷或いは送信が指示された場合のMFPにおける処理の流れを示すフローチャート。
【
図12】(a)及び(b)は、警告表示の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
また、各実施形態では、印刷対象の入力画像データに従って記録媒体上に電子写真方式にて画像を形成する画像形成装置としていわゆるMFP(Multi Function Printer)を例に説明を行うものとする。ただし、本開示の技術の適用範囲はMFPに限定されるものではなく、モノカラー方式及びマルチカラー方式を問わず、複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ装置等の、画像形成装置に対して幅広く適用可能である。
【0012】
[実施形態1]
<印刷システムの構成>
図2は、本実施形態に係る、印刷システムのハードウェア構成を示すブロック図である。印刷システムは、画像形成装置としてのMFP100と情報処理装置としてのホストPC120とを含み、MFP100とホストPC120とがLAN等のネットワーク130を介して接続されている。
【0013】
≪MFPのハードウェア構成≫
MFP100は、CPU101、ROM102、RAM103、大容量記憶装置104、UI部105、画像処理部106、エンジンインタフェース(I/F)107、ネットワークI/F108、スキャナI/F109を備える。これら各部は、システムバス110を介して相互に接続されている。また、MFP100は、プリンタエンジン111及びスキャナユニット112を備える。プリンタエンジン111及びスキャナユニット112は、それぞれエンジンI/F107及びスキャナI/F109を介してシステムバス110に接続されている。尚、画像処理部106は、MFP100とは独立した画像処理装置(画像処理コントローラ)として構成されていてもよい。
【0014】
CPU101は、MFP100全体の動作を制御する。CPU101は、ROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって、後述する各種の処理を実行する。ROM102は、読み出し専用メモリであり、システム起動プログラムまたはプリンタエンジンの制御を行うためのプログラム、及び、文字データまたは文字コード情報等が格納されている。RAM103は、揮発性のランダムアクセスメモリであり、CPU101のワークエリア、及び、各種のデータの一時的な記憶領域として使用される。例えば、RAM103は、ダウンロードによって追加的に登録されたフォントデータ、または、外部デバイスから受信した画像ファイル等を格納するための記憶領域として使用される。大容量記憶装置104は、例えばHDDやSSDであり、様々なデータがスプールされ、プログラム、各種テーブル、情報ファイル及び画像データ等の格納、および、作業領域として使用される。
【0015】
UI(ユーザインタフェース)部105は、例えばタッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、MFP100の設定状態、実行中の処理の状況、エラー状態等をユーザに通知するための画面表示を行う。また、UI部105では、MFP100の各種設定値の入力や各種ボタンの選択など様々なユーザ指示を、所定のユーザインタフェース画面(GUI)を介して受け付ける。なお、UI部105は、ハードキーなどの入力デバイスを別途備えていてもよい。
【0016】
画像処理部106は、ホストPC120からネットワーク130を介して入力された、PDLで記述された描画データ(以下、「PDLデータ」と呼ぶ。)を解析し、印刷エンジン111で処理可能な画像データを生成する。なお、PDLとはページ記述言語(Page Description Language)の略称である。また、画像処理部106は、BOX機能によって保存された画像データを外部デバイスに送信する際にも所定の画像処理を施す。画像処理部106の詳細については後述する。
【0017】
エンジンI/F107は、印刷を実行する際に、CPU101からの指示に応じてプリンタエンジン111を制御するためのインタフェースである。エンジンI/F107を介して、CPU101とプリンタエンジン111との間でエンジン制御コマンド等が送受信される。ネットワークI/F108は、MFP100をネットワーク130に接続するためのインタフェースである。尚、ネットワーク108は、例えば、LANであってもよいし、電話回線網(PSTN)であってもよい。プリンタエンジン111は、画像処理部106から提供された印刷用の画像データに基づいて、複数色(ここではCMYKの4色)の色材(ここではトナー)を用いてマルチカラー画像を紙等の記録媒体上に形成する。スキャナI/F109は、スキャナユニット112による原稿の読み取りを行う際に、CPU101からの指示に応じてスキャナユニット112を制御するためのインタフェースとして機能する。スキャナI/F109を介して、CPU101とスキャナユニット112との間でスキャナユニット制御コマンド等が送受信される。スキャナユニット112は、CPU101による制御によって、原稿を光学的に読み取って画像データ(スキャン画像データ)を生成し、スキャナI/F109を介してRAM103または大容量記憶装置104に送信する。
【0018】
≪ホストPCのハードウェア構成≫
ホストPC120は、CPU121、ROM122、RAM123、大容量記憶装置124、UI部125及びネットワークI/F126を備える。これら各部は、システムバス127を介して相互に接続されている。CPU121は、ホストPC120全体の動作を制御するプロセッサであり、ROM122に記憶された制御プログラムやアプリケーションプログラムを読み出して各種処理を実行する。RAM123は、CPU121の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる。大容量記憶装置124は、例えばHDDやSSDであり、プリンタドライバなどの各種プログラムの他、画像データなどを記憶する。UI(ユーザインタフェース)部125は、例えば液晶モニタやキーボード等で構成され、各種GUIの表示やユーザ指示の受付に使用される。ネットワークI/F126は、ホストPC120をネットワーク130に接続するインタフェースである。ホストPC120は、インストールされているプリンタドライバを用いて生成したPDLデータを、ネットワークI/F126を介してMFP100に送信し、印刷処理を実行させる。また、ネットワークI/F126を介してMFP100から送信された画像データを受信し、編集・表示等を行う。
【0019】
<プリンタドライバの構成>
続いて、ホストPC120からMFP100に印刷指示を行う際に使用するプリンタドライバについて説明する。
図3は、ホストPC120にインストールされているプリンタドライバの機能構成を示すブロック図である。プリンタドライバ200は、出力条件設定部201、GUI制御部202、PDL生成部203を備える。これらの各機能部は、ホストPC120のオペレーティングシステム(以降OS)上で動作する。
【0020】
出力条件設定部201はGUI(Graphical User Interface)を介したユーザ入力に基づき、MFP100に対し印刷等の出力指示を行う際の詳細な条件を設定する。
図4(a)は、ユーザがMFP100に対し印刷等の出力を指示する際に用いるGUIの一例であり、いま「基本設定」タブが選択された状態である。ユーザは
図4(a)のGUIにおいて、「出力方法」についてのプルダウンメニュー(“印刷”、“セキュアプリント”、“保存”、“編集+プレビュー”)の中から1つを選択して指定することができる。出力方法の4種類の選択肢それぞれの意味は以下のとおりである。
・「印刷」:通常印刷を行う
・「セキュアプリント」:セキュリティを強化した印刷を行う
・「保存」:外部デバイスに画像データを保存(BOX保存)する
・「編集+プレビュー」:画像データを編集してプレビュー表示する
【0021】
さらに、例えば上記
図4(a)の状態でユーザが「印刷品質」のタブを選択すると、
図4(b)に示すGUIが表示される。そして、続けてユーザが、「色設定」ボタンを押下すると、
図5(a)に示すGUIが表示される。いま、
図5(a)のGUIは「マッチング」タブが選択された状態を示しており、ユーザはカラーマッチングに関する詳細設定を行うことができる。具体的には、マッチングモードを使用するか否か、使用する場合のマッチング方法のタイプを設定できる。
図5(a)の例では、選択可能なマッチング方法のタイプとして、「一般」、「モニター色再現」、「色差最小」、「VIVIDフォト」、「LBPxx色」、「POP印刷」がプルダウン表示されている。これらは、表示デバイスであるモニターのRGB色空間から出力デバイスであるMFP100(プリンタエンジン111)のCMYK色空間への色変換処理を行う際に用いる三次元のルックアップテーブル(以下、「色変換LUT」と表記)の特徴を表している。そして、タイプに応じて、前述の簡易スポットカラーマッチングで用いる色置換リストが関連付けられている。色置換リストは、特定色に対する目標色が定義されており、特定色の指定がない場合は特定色とそれに対応する目標色の登録がない状態(空の状態)になっている。本実施形態では、「LBPxx色」と「POP印刷」の2つのタイプには、少なくとも1組以上の特定色とその目標色が登録された色置換リストが関連付けられている。そして、「一般」、「モニター色再現」、「色差最小」、「VIVIDフォト」の4つのタイプに対しては特定色とその目標色が1組も登録されていない色置換リストが関連付けられている。以下の表1は、特定色とその目標色が3組登録された色置換リストの一例である。
【0022】
【0023】
上記表1では、特定色と目標色それぞれの色値(RGB値)が8ビットで表現されている。
【0024】
GUI制御部202は、ユーザが各種設定等を行うためのGUIの制御、つまり、UI部125に表示される
図4や
図5のGUI等の表示制御を行う。また、GUI制御部202は、GUI内の所定の項目に関する設定制限なども行う。
【0025】
PDL生成部203は、様々なアプリケーションで生成された文書ファイル等について、OSが用意しているGDI(Graphics Device Interface)を介して描画情報を受け取り、前述の出力条件設定部201で設定された内容に従ったPDLデータを生成する。生成されたPDLデータは、ネットワークI/F126を介してMFP100に送られる。
【0026】
<画像処理部の詳細>
次に、MFP100の画像処理部106について詳しく説明する。
図6は、本実施形態に係る、画像処理部106の内部構成を示す機能ブロック図である。画像処理部106は、PDL解析部601、特定色処理部602、RIP部603、カラーマッチング部604、中間調処理部605を備える。これら各機能部は、CPU101がROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって実現される。あるいは、これらの一部または全部が、ASICまたは電子回路等のハードウェアで実現されてもよい。以下、各部について説明する。
【0027】
MFP100が受信したPDLデータは、RAM103または大容量記憶装置104に格納され、PDL解析部601に入力される。PDL解析部601は、RAM103等からPDLデータを読み出して解析する。そして、描画対象オブジェクトの属性(文字、図形、イメージなど)や色値(ここではRGB値)、カラーマッチング方法等の出力条件に関する情報を取得して、後述の特定色処理部602やRIP部603等の制御コマンドの生成を行う。
【0028】
特定色処理部602は、大容量記憶装置104から色置換リストを読み出して、前述の簡易スポットカラーマッチングを行う。すなわち、PDL解析部601が取得した色値と色置換リストに登録されている特定色の色値とが一致する場合に、特定色に対応付けられた目標色の色値に変換する。なお、PDL解析部601によって取得されたすべての色値が、色置換リストに登録されている特定色の色値と一致しない場合は、処理対象となる色が印刷対象の入力画像に含まれないことを意味するので、簡易スポットカラーマッチングは実行されない。
【0029】
RIP部(Raster Image Processer)603は、PDL解析部601が生成した制御コマンドに基づいて、RGB色空間のラスタ形式の画像データ(以下、「RGBラスタ画像データ」と表記)を生成する。この際、入力画像を構成する画素の中に特定色を持つ画素が含まれていた場合は、当該特定色のRGB値は、上述の簡易スポットカラーマッチングによって目標色のRGB値に置換されていることになる。
【0030】
カラーマッチング部604は、大容量記憶装置104から色変換LUTを読み出して、RIP部603が生成したRGBラスタ画像データにおける各画素値を、RGB値からCMYK値に変換する。この色変換処理によって、CMYK色空間で表現されたラスタ形式の画像データ(以下、「CMYKラスタ画像データ」と表記)が生成される。
【0031】
中間調処理部605は、カラーマッチング部604によって生成されたCMYKラスタ画像データに対して中間調処理を行ない、プリンタエンジン111が処理可能な階調数を下げた画像データ(ハーフトーン画像データ)を生成する。なお、中間調処理の手法には、濃度パターン法、組織的ディザ法、誤差拡散法等の様々な方法を適用することが可能である。
【0032】
<プリンタドライバのGUI制御>
続いて、本実施形態に係る、プリンタドライバのGUI制御部202の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
図7のフローチャートの一連の処理は、ホストPC120のCPU121が、大容量記憶装置124に格納されたプログラムをRAM123に読み出して実行することによって実現される。なお、以下の説明における記号「S」はステップを意味する。
【0033】
まず、S701では、前述の
図4(a)のGUIを介してユーザが指定した「出力方法」の設定値が取得される。次のS702では、S701で取得された「出力方法」の設定値が、“保存”であるか否かによって処理が振り分けられる。「出力方法」の設定値が“保存”の場合はS703に進む。一方、設定値が“保存”以外(本実施形態では“印刷”、“セキュアプリント”、“編集+プレビュー”)の場合は、後述のS706の表示制御を行うことなく本処理を抜ける。
【0034】
S703では、保存先となる外部デバイス(ここではMFP100)におけるマッチング方法の設定情報が大容量記憶装置124から読み出されて取得される。なお、本フローが開始する前、例えばプリンタドライバ200がホストPC120にインストールされた段階で、保存先のMFP100で設定済みのマッチング方法のタイプの情報がネットワーク130を介して取得され、大容量記憶104に予め保存されているものとする。
【0035】
次のS704では、S703で取得された設定情報で特定されるマッチング方法のタイプ(すなわち、保存先となる外部デバイスで設定中のマッチング方法のタイプ)と関連付けられている色置換リストが取得される。前述のとおり本実施形態では、「一般」、「モニター色再現」、「色差最小」、「VIVIDフォト」の4つのタイプに対しては中身が空の色置換リストが関連付けられており、「LBPxx色」と「POP印刷」には特定色とその目標色が登録された色置換リストが関連付けられている。よって、保存先であるMFP100にて設定されているマッチング方法のタイプが「一般」、「モニター色再現」、「色差最小」、「VIVIDフォト」の何れかであれば中身が空の色置換リストが取得される。そして、MFP100にて設定されているマッチング方法のタイプが「LBPxx色」又は「POP印刷」であれば特定色とその目標色が登録された色置換リストが取得されることになる。
【0036】
次のS705では、S704で取得された色置換リストの中身が空であるか否かによって処理が振り分けられる。色置換リストの中身が空ではない(すなわち、特定色とその目標色の組合せが少なくとも1つ以上登録されている)場合はS706に進む。一方、色置換リストの中身が空であれば、次のS706の表示制御を行うことなく本処理を抜ける。
【0037】
S706では、簡易スポットカラーマッチングを伴う特定のマッチング方法の設定ができないようにGUI上でタイプ選択が一部不能化される。本実施形態の場合、前述の
図5(a)のGUIにおける「マッチング方法」のタイプの選択肢のうち「LBPxx色」と「POP印刷」について、
図5(b)に示すようにグレーアウト表示される。これによりユーザは、簡易スポットカラーマッチングを伴う特定のマッチング方法のタイプを選択することができなくなる。
【0038】
以上が、本実施形態に係る、GUI制御部203によるGUIの表示制御の内容である。なお、本実施形態では、カラーマッチング方法のタイプ設定を介して間接的に簡易スポットカラーマッチングの設定を制御しているが、これに限定されない。例えば、プリンタドライバ200のGUIやMFP100における動作設定において、簡易スポットカラーマッチングに関する独立した項目を別途設け、より直接的に制御してもよい。
【0039】
本実施形態によれば、BOX機能による保存が指示された場合は、簡易スポットカラーマッチングを伴う特定のマッチング方法のタイプをプリンタドライバ上で設定できなくなる。その結果、BOX機能によって保存される画像データには簡易スポットカラーマッチングが施されることはないので、保存された画像データをその後にホストPC120や他のプリンタに送信しても元の画像データの色味が保たれる。
【0040】
[実施形態2]
プリンタドライバ側でマッチング方法の設定に制限を掛ける実施形態1の手法の場合、BOX機能によって保存される画像データには簡易スポットカラーマッチングが施されない。そのため、簡易スポットカラーマッチングを行って印刷することを予定している場合には、ユーザはそのための画像データについてBOX機能を利用して予め保存しておくことができないことになる。そこで、BOX機能によって保存された画像データに対しても簡易スポットカラーマッチングを適用した印刷ができるようにする態様を、実施形態2として説明する。なお、基本的なシステム構成など実施形態1と共通する内容については説明を省き、以下では差異点を中心に説明を行うものとする。
【0041】
<画像処理部の詳細>
図8は、本実施形態に係る、MFP100の画像処理部106’の内部構成を示す機能ブロック図である。画像処理部106’は、PDL解析部601、特定色処理部602、RIP部603、カラーマッチング部604、中間調処理部605に加えて、逆置換リスト生成部801を備える。
【0042】
逆置換リスト生成部801は、特定色処理部602にて簡易スポットカラーマッチングが実行された場合に、前述の色置換リストにおける特定色と目標色とを入れ替えた逆置換リストを生成する。残りの各部は実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0043】
<入力PDLデータの処理>
続いて、本実施形態に係る、PDLデータが入力された場合のMFP100における処理について
図9のフローチャートを参照して説明する。本実施形態の前提として、ホストPC120のプリンタドライバ200では、実施形態1で説明したマッチング方法の設定制限は行わない。すなわち、出力方法として“保存”を指定した場合でもユーザはマッチング方法の設定に関して任意のタイプを自由に選択できる。そして、そのようなユーザ指示に従ったPDLデータが生成されて、MFP100に送信される。
図9のフローチャートが示す一連の処理は、MFP100のCPU111が、大容量記憶装置104に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって実現される。なお、以下の説明における記号「S」はステップを意味する。
【0044】
ホストPC120からPDLデータを受信すると、S901ではPDL解析部601が、入力されたPDLデータを解析する。この解析により、ユーザがプリンタドライバ200を介して指定した「出力方法」や「マッチング方法」に関する設定情報や色値の情報が取得され、さらに、RIP部603に対する描画コマンド等が生成される。実施形態1で説明した通り、例えば前述の
図4(a)のGUIの場合、「出力方法」として“印刷”、“セキュアプリント”、“保存”、“編集+プレビュー”の4種類が選択可能である。これらの中からいずれが選択された場合もPDLデータのヘッダ部には、「出力方法」についてのユーザ指示に基づく設定情報が入っている。また、例えば前述の
図5(a)のGUIの場合、「マッチング方法」のタイプとして“一般”、“モニター色再現”、“色差最小”、“VIVIDフォト”、“LBPxx色”、“POP印刷”の6種類が選択可能である。これらの中からいずれのタイプが選択された場合もPDLデータのヘッダ部には、「マッチング方法」についてのユーザ指示に基づく設定情報が入っている。そして、PDLデータのデータ部には、描画対象のオブジェクトの描画位置や色値のデータがページ単位で入っている。PDL解析部601は入力されたPDLデータからこれらの情報を読み出して取得する。
【0045】
次のS902ではPDL解析部601が、S901で取得した「マッチング方法」の設定情報で特定されるマッチング方法のタイプに関連付けられた色置換リストを取得する。実施形態1と同様、“LBPxx色”と“POP印刷”には特定色とその目標色の組合せが登録された色置換リストが関連付けられ、“一般”、“モニター色再現”、“色差最小”、“VIVIDフォト”には空の色置換リストが関連付けられているものとする。色置換リストは解析によって得られた入力色値の情報と共に特定色処理部602に送られる。
【0046】
S903では色置換リストの中身が空であるか否かによって処理が振り分けられる。色置換リストの中身が空ではない(すなわち、特定色とその目標色の組合せが少なくとも1つ以上登録されている)場合はS904に進み、色置換リストの中身が空であればS907に進む。
【0047】
S904では特定色処理部602が、PDLを解析して得られた入力色値とS902で取得された色置換リストに登録されている特定色の色値とを比較し、入力色値と特定色の色値とが一致するか否かを判定する。判定の結果、一致する場合はS905に進み、一致しない場合はS907へ進む。例えば入力色値が(R、G、B)=(204、0、0)であって、色置換リストにも特定色の色値として(R、G、B)=(204、0、0)が格納されている場合は、色値が一致するのでS905に進むことになる。
【0048】
S905では特定色処理部602が、特定色の色値と一致した入力色値を、色置換リストに登録されている対応する目標色の色値と置き換える処理(色値置換処理)を行う。例えば、色置換リストにおいて、特定色の色値(R、G、B)=(204、0、0)に対応する目標色の色値として(R、G、B)=(200、0、12)が登録されていたとする。この場合、入力色値(R、G、B)=(204、0、0)は、(R、G、B)=(200、0、12)に置き換えられることになる。
【0049】
次のS906では逆置換リスト生成部801が、S905における色値置換処理の結果に基づき、逆置換リストを生成する。具体的には、色値置換処理の対象となった特定色の色値を“目標色”の色値とし、当該色値置換処理によって置き換わった目標色の色値を“特定色”の色値としたリストを生成する。例えば、上述の例では、入力色値が特定色(R、G、B)=(204、0、0)に一致していたため、対応する目標色の色値(R、G、B)=(200、0、12)に置き換えられている。この場合、以下の表2に示すような逆置換リストが生成されることになる。
【0050】
【0051】
S907ではRIP部603が、PDL解析部601から受け取った描画コマンドに従ってラスタライズ処理を行って、RGBラスタ画像データを生成する。この際に用いる色値は原則として入力色値であるが、S905にて色値が置き換えられた場合には、当該置き換え後の色値が用いられる。
【0052】
S908では、S901のPDL解析で取得された「出力方法」の設定情報の内容が“保存”であるか否かによって処理が振り分けられる。“保存”の場合はS912に進み、“保存”以外の場合はS909に進む。
【0053】
S909ではカラーマッチング部604が、S907で生成されたRGBラスタ画像データに対して色変換LUTに基づき色変換処理を行って、CMYKラスタ画像データを生成する。次のS910では中間調処理部605が、S909で生成されたCMYKラスタ画像データに対して中間調処理を行って、ハーフトーン画像データを生成する。生成されたハーフトーン画像データはエンジンI/F107を経由してプリンタエンジン111に送られる。そして、S911ではプリンタエンジン111がハーフトーン画像データを用いて印刷処理を行う。
【0054】
一方、出力方法が“保存”であった場合のS912では、CPU101が、S907で生成されたRGBラスタ画像データとS906で生成された逆置換リストとを紐付けて、大容量記憶装置104に保存する。なお、本実施形態では、色値置換処理が行われた場合だけ逆置換リストの生成を行ってそれを保存時に紐づけているが、中身が空の逆置換リストを生成した上でそれを紐付けてRGBラスタ画像データを保存してもよい。
【0055】
以上が、本実施形態に係る、PDLデータが入力された場合のMFP100における処理の内容である。
【0056】
<BOX機能で保存された画像データの利用>
上記S912で保存された画像データ(以下、「保存データ」と呼ぶ。)については、それを使ってMFP100で印刷したり或いは外部デバイスに送信したりして利用することが可能である。
図10(a)は、BOX機能による保存データをユーザが利用するためのGUIの一例を示している。
図10(a)のGUIでは、保存データが一覧表示され、その中からユーザは任意の保存データを選択した上で、印刷したい場合には「印刷」ボタンを押下し、外部デバイスに送信したい場合は「送信」ボタンを押下する。「印刷」ボタンが押下された場合には印刷処理が開始する。一方、「送信」ボタンが押下された場合はさらに
図10(b)に示すGUIが表示される。
図10(b)のGUIには送信先候補のIPアドレスが一覧表示され、その中からユーザが任意の送信先を選択して「OK」ボタンを押下すると、選択された送信先に対する
図10(a)のGUIで選択された保存データの送信処理が開始する。
【0057】
図11は、上述したユーザ操作によって印刷或いは送信が指示された場合の、MFP100における処理の流れを示すフローチャートである。
図11のフローチャートが示す一連の処理も、CPU111が、大容量記憶装置104に格納されたプログラムをRAM103に読み出して実行することによって実現される。なお、以下の説明における記号「S」はステップを意味する。
【0058】
S1101では、上述の
図10(a)のGUIにてユーザが選択した保存データが大容量記憶装置104から読み出されて取得される。次のS1102では、上述の
図10(a)のGUIを介したユーザ指示の内容に応じて処理が振り分けられる。ユーザが「送信」ボタンを押下していた場合にはS1103へ進み、「印刷」ボタンを押下していた場合はS1107へ進む。
【0059】
保存データを送信する場合、S1103にて、S1101で取得された保存データに逆置換リストが紐づけられているか否かによって処理が振り分けられる。逆置換リストが紐付けられている場合はS1104に進み、紐付けられていない場合はS1106に進む。なお、保存データに中身が空の逆置換リストが紐付けられていた場合も、同様に処理すればよい。
【0060】
S1104ではCPU101が警告表示を行う。具体的には、
図12(a)に示すような警告画面を表示部105に表示する。
図12(a)の例では、送信先で色味がおかしくなる恐れがあることを示すメッセージが表示されることになる。また、
図12(a)の警告画面には、送信を続行する場合の「OK」ボタンと、送信をキャンセル場合の「中止」ボタンが設けられており、ユーザはいずれかを選択できるようになっている。次のS1105では、上述の警告表示を受けてユーザが行った指示に応じて処理が振り分けられる。ユーザが
図12(a)警告画面の「OK」ボタンを押下した場合はS1106に進み、「中止」ボタンを押下した場合は本処理を抜ける。そして、S1106において、S1101にて取得された保存データが、
図10(b)のGUIでユーザが指定した送信先に対してネットワークI/F108を介して送信される。
【0061】
保存データを印刷する場合のS1107~S1109の各処理は、前述の
図9のフローにおけるS909~S911の各処理に対応する。すなわち、S1101で取得された保存データに対し色変換処理と中間調処理が順に実行されて(S1107及びS1108)、印刷処理がなされる(S1109)。
【0062】
以上が、BOX機能によって保存された画像データを印刷或いは外部デバイスに送信する場合の処理の流れである。
【0063】
以上のとおり本実施形態においては、BOX機能を使った画像データの保存に際して制約を設けない。よって、簡易スポットカラーマッチングを行って印刷することを予定している画像データについても、その印刷出力を行う画像形成装置のBOX機能を使って画像データを保存することができる。さらには、当該保存された画像データを外部デバイスに送信する際には警告を出すことで、送信先で正確な色味を表現できなくなくなるリスクの発生を事前に抑制することができる。
【0064】
<変形例>
保存データを送信する選択がされた場合であって、逆置換リストに特定色とその目標色の組合せが少なくとも1つ以上登録されている場合、本実施形態ではS1105において警告表示を行って、送信処理の続行の要否をユーザの意思に係らしめていた。しかしながら、以下のような制御を行ってもよい。以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0065】
≪変形例1≫
前述の警告表示処理(S1105)に代えてエラー表示処理を行ない、送信処理を直ちに中止するような制御を行ってもよい。この際は、
図12(a)の警告画面の代わりに、例えば
図12(b)のような送信不可のメッセージを含むエラー画面を表示する。
【0066】
本変形例の場合、簡易スポットカラーマッチングが施された保存データが外部デバイスに送信されることがなくなるので、送信先の外部デバイスで元の画像データの色味が再現できないという問題が生じることはない。
【0067】
≪変形例2≫
送信対象の保存データを構成する画素のうち、色値置換処理が施された画素の色値を、逆置換リストを参照して元の色値に戻した上で送信するようにしてもよい。この際は、色値置換処理の実行時に色値を置き換えた画素にフラグを付しておけばよい。これにより元の色値に戻すべき画素を容易に特定することができる。なお、元の色値に戻して送信するので、前述の警告表示処理(S1105)は不要となる。
【0068】
本変形例の場合、簡易スポットカラーマッチングが施された保存データが外部デバイスに送信されても、送信先の外部デバイスで元の画像データの色味を再現することが可能となる。例えば、他のプリンタに送信して印刷する場合であっても、当該他のプリンタで簡易スポットカラーマッチングを施すことで狙った色味を再現できる。また、ホストPC120に送信してそこで閲覧する場合でも、正しい色味で表現することができる。
【0069】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。