(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】制振材用組成物および制振材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20241021BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20241021BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20241021BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20241021BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20241021BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20241021BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241021BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241021BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C09K3/00 P
C08L23/20
C08L57/02
C08L93/04
C08L65/00
C08L91/00
B32B27/32
F16F15/02 Q
F16F7/00 B
(21)【出願番号】P 2021018534
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020023123
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小助川 陽太
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019515(JP,A)
【文献】特開2011-111499(JP,A)
【文献】特開2001-288329(JP,A)
【文献】特開2006-335997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/20
C08L 57/02
C08L 93/04
C08L 65/00
C08L 91/00
B32B 27/32
F16F 15/02
F16F 7/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークを0℃以上40℃以下の温度範囲に1つ以上有するオレフィン系重合体(A)100質量部と、
液状軟化剤(B)10~200質量部と、
水添石油樹脂、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の、軟化点が100℃未満の樹脂(C)25~200質量部と
を含
み、
前記オレフィン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)の含有割合が16~95モル%であり、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)の含有割合が5~84モル%であり、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)の含有割合が0~10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の含有割合の合計を100モル%とする)である共重合体(A-1)である、
制振材用組成物。
【請求項2】
前記液状軟化剤(B)が、
40℃の動粘度が1000mm
2/s以上の高分子量オイルと、
40℃の動粘度が10~500mm
2/sのプロセスオイルと
を含む、請求項1に記載の制振材用組成物。
【請求項3】
前記液状軟化剤(B)がプロセスオイルを含む、請求項1に記載の制振材用組成物。
【請求項4】
前記炭素数2~20のα-オレフィンがプロピレンである、請求項
1に記載の制振材用組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の制振材用組成物から形成された樹脂層を有する制振材。
【請求項6】
前記樹脂層に積層された拘束層をさらに備える、請求項
5に記載の制振材。
【請求項7】
前記拘束層が、金属箔、金属メッシュ、樹脂層、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスから選ばれる、請求項
6に記載の制振材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材用組成物および制振材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、船舶、鉄道車両、航空機、家庭電化機器、OA機器、AV機器、事務機器、建築・住宅設備、工作機械、産業機械などの分野に用いられる部品および筐体は、その運転時に振動や騒音を生じやすい。振動および騒音の発生を抑制すべく、部品および筐体に制振材を貼付することが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-208797号公報
【文献】特開2015-007179号公報
【文献】特開2002-302608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制振材は、室温程度を含む広い温度範囲に高い制振効果を有することが好ましい。また、制振材用組成物から形成された樹脂層に金属箔等の拘束層が積層された拘束型制振材の場合は、上記樹脂層は柔軟性が高く、かつ粘着性が高いことが好ましい。従来の制振材用組成物においては、これらの物性に関して充分に検討されていない。
【0005】
本発明の課題は、例えば室温程度を含む広い温度範囲に高い制振効果を有し、柔軟性が高く、かつ粘着性が高い樹脂層を形成可能な制振材用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、以下に記載の制振材用組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]~[8]に関する。
【0007】
[1]動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークを0℃以上40℃以下の温度範囲に1つ以上有するオレフィン系重合体(A)100質量部と、液状軟化剤(B)10~200質量部と、水添石油樹脂、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の、軟化点が100℃未満の樹脂(C)25~200質量部とを含む制振材用組成物。
[2]上記液状軟化剤(B)が、40℃の動粘度が1000mm2/s以上の高分子量オイルと、40℃の動粘度が10~500mm2/sのプロセスオイルとを含む、上記[1]に記載の制振材用組成物。
[3]上記液状軟化剤(B)がプロセスオイルを含む、上記[1]に記載の制振材用組成物。
[4]上記オレフィン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)の含有割合が16~95モル%であり、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)の含有割合が5~84モル%であり、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)の含有割合が0~10モル%(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の含有割合の合計を100モル%とする)である共重合体(A-1)である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の制振材用組成物。
[5]上記炭素数2~20のα-オレフィンがプロピレンである、上記[4]に記載の制振材用組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の制振材用組成物から形成された樹脂層を有する制振材。
[7]上記樹脂層に積層された拘束層をさらに備える、上記[6]に記載の制振材。
[8]上記拘束層が、金属箔、金属メッシュ、樹脂層、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスから選ばれる、上記[7]に記載の制振材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば室温程度を含む広い温度範囲に高い制振効果を有し、柔軟性が高く、かつ粘着性が高い樹脂層を形成可能な制振材用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の制振材の一例に係る断面図であり、制振対象に制振材 を貼り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[制振材用組成物]
本実施形態の制振材用組成物(以下「重合体組成物」ともいう)は、
動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークを0℃以上40℃以下の温度範囲に1つ以上有するオレフィン系重合体(A)100質量部と、
液状軟化剤(B)10~200質量部と、
水添石油樹脂、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の、軟化点が100℃未満の樹脂(C)25~200質量部と
を含む。
【0012】
<オレフィン系重合体(A)>
オレフィン系重合体(A)は、室温程度を中心として高い制振効果を得るという観点から、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδのピークを0℃以上40℃以下の温度範囲に1つ以上有する。得られる制振材の制振性をより高める観点から、オレフィン系重合体(A)は、上記tanδのピークを10℃以上40℃の温度範囲に1つ以上有することが好ましい。
【0013】
損失正接tanδについて説明する。オレフィン系重合体(A)からなる試料について、雰囲気温度を連続的に変化させながら動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G")を測定し、G"/G'で与えられる損失正接tanδを求める。温度と損失正接tanδとの関係をみると、損失正接tanδは一般に特定の温度においてピークを有する。そのピークが現れる温度は一般にガラス転移温度(以下「tanδ-Tg」ともいう)と呼ばれる。損失正接tanδのピークが現れる温度は、実施例において記した動的粘弾性測定に基づき求めることができる。
【0014】
0℃以上40℃以下の温度範囲におけるtanδのピークの有無は、0℃以上40℃以下の温度範囲にtanδのピークの頂点が存在するか否かにより判断される。
tanδのピークを上記温度範囲に1つ以上有するオレフィン系重合体(A)は、例えば、オレフィン系重合体(A)の後述する構成単位(i)~(iii)の組成比の調整によって得ることができる。
【0015】
オレフィン系重合体(A)の135℃デカリン中の極限粘度[η]は、加工性の観点から、好ましくは0.5dL/g以上、より好ましくは0.6dL/g以上、さらに好ましくは0.7dL/g以上であり、好ましくは5.0dL/g以下、より好ましくは4.0dL/g以下、さらに好ましくは3.5dL/g以下である。極限粘度[η]の調整方法は特に制限されないが、重合中に水素分子を併用しオレフィン系重合体(A)の分子量を調整することで、極限粘度[η]を調整することができる。
【0016】
オレフィン系重合体(A)の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、得られる制振材の機械特性および加工性の観点から、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下であり、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算法により得られる。
【0017】
オレフィン系重合体(A)は、1種または2種以上のオレフィンから形成される重合体であり、単独重合体であっても共重合体であってもよい。オレフィンとしては、例えば、α-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、官能基化ビニル化合物が挙げられる。
【0018】
α-オレフィンとしては、例えば、直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられ、α-オレフィンの炭素数は特に限定されないが、好ましくは2~20である。
直鎖状α-オレフィンの炭素数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~15、さらに好ましくは2~10である。直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
【0019】
分岐状α-オレフィンの炭素数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。分岐状α-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンが挙げられる。
【0020】
環状オレフィンの炭素数は、好ましくは3~20、より好ましくは5~15である。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0022】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン;(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミンなどの不飽和アミン;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸から得られた無水物などの不飽和カルボン酸無水物;4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物が挙げられる。
【0023】
水酸基含有オレフィンとしては、例えば、末端水酸基化オレフィンが挙げられる。末端水酸基化オレフィンとしては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ウンデセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセン等の炭素数2~20、好ましくは炭素数2~15の直鎖状の水酸化-α-オレフィン;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20、好ましくは炭素数5~15の分岐状の水酸化-α-オレフィンが挙げられる。
【0024】
オレフィン系重合体(A)を形成するモノマーとしては、前述したオレフィンとともに、非共役ポリエンおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種を用いることもできる。
非共役ポリエンの炭素数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~10である。非共役ポリエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンが挙げられる。
【0025】
共役ジエンの炭素数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~10である。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンが挙げられる。
【0026】
オレフィン系重合体(A)は、作業者や作業環境に対する汚染性が低い(低汚染性)という観点から、非ハロゲン化オレフィン系重合体であることが好ましい。
オレフィン系重合体(A)は、損失正接tanδのピークを0~40℃付近に1つ以上持つ共重合体を得やすいという観点から、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)とを有する共重合体(A-1)を含むことが好ましい。
【0027】
共重合体(A-1)における炭素数2~20のα-オレフィンとしては、炭素数2~10の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましく、エチレンおよびプロピレンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。共重合体(A-1)における構成単位(ii)は、1種であっても2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
共重合体(A-1)は、必要に応じて、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を有していてもよい。共重合体(A-1)における構成単位(iii)は、1種であっても2種以上の組合せであってもよい。
【0029】
共重合体(A-1)は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合成分から導かれる構成単位を有していてもよい。その他の共重合成分としては、例えば、前述した、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、官能基化ビニル化合物、共役ジエンが挙げられる。
【0030】
共重合体(A-1)において、構成単位(i)、(ii)および(iii)の含有割合の合計を100モル%として、構成単位(i)の含有割合が16~95モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が5~84モル%であり、構成単位(iii)の含有割合が0~10モル%であることが好ましく、構成単位(i)の含有割合が26~90モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が10~74モル%であり、構成単位(iii)の含有割合が0~7モル%であることがより好ましく、構成単位(i)の含有割合が61~85モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が15~39モル%であり、構成単位(iii)の含有割合が0~5モル%であることがさらに好ましい。上記含有割合は、13C-NMRにより測定することができる。
【0031】
オレフィン系重合体(A)は、例えば、メタロセン系触媒などの重合触媒を用いる従来公知の方法により製造することができる。この方法としては、例えば、WO2011/055803や、WO2005/121192等に記載の方法が挙げられる。
オレフィン系重合体(A)は1種または2種以上用いることができる。
【0032】
<液状軟化剤(B)>
液状軟化剤(B)における「液状」とは、通常、室温(約23℃)、1気圧下で、流動性を有することをいう。液状軟化剤(B)は、重合体組成物から形成される樹脂層の柔軟性を向上させる働きを有する。ただし、液状軟化剤(B)からは、後述する、軟化点が100℃未満の水添石油樹脂(C-1)を除く。また、液状軟化剤(B)からは、後述する成分(C)が除かれてもよい。
【0033】
液状軟化剤(B)としては、例えば、鉱物油系液状軟化剤、植物油系液状軟化剤、液状ゴム又は樹脂(例:高分子量オイル)、液状可塑剤が挙げられる。
鉱物油系液状軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系またはアロマ系のプロセスオイル、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイルなどの炭化水素系オイルが挙げられる。植物油系液状軟化剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸の塩、植物油等のオイルが挙げられ、具体的には、オレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸の塩;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油、パーム油、綿実油、大豆油、落花生油等の植物油が挙げられる。
【0034】
液状ゴム又は樹脂としては、例えば、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状スチレン-ブタジエンゴム、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリブテン、末端水酸基化ポリブタジエン、液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム、液状アクリロニトリル-ブタジエンゴム、液状アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレンゴム、液状アクリロニトリル-イソプレンゴム、液状エチレン・α-オレフィン共重合体、液状クマロン-インデン樹脂、液状テルペン樹脂、液状ロジン樹脂が挙げられる。
【0035】
液状可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルグリコールアジペート、ジブチルカルビトールアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、トリクレジルフォスフェート、クレジルフェニルフォスフェート等のエステル系可塑剤が挙げられる。
【0036】
一実施形態において、液状軟化剤(B)としては、鉱物油系液状軟化剤が好ましく、炭化水素系オイルがより好ましく、プロセスオイルがさらに好ましく、パラフィン系オイルがよりさらに好ましい。鉱物油系液状軟化剤の40℃における動粘度は、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは30mm2/s以上であり、好ましくは2000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下である。
【0037】
一実施形態において、液状軟化剤(B)としては、
40℃の動粘度が1000mm2/s以上の高分子量オイルと、
40℃の動粘度が10~500mm2/sのプロセスオイルと
を併用することが好ましい。これらの成分を併用することにより、制振材の柔軟性をより向上させるとともに、tanδのピーク値を上昇させ、制振性をより向上させることができる。
【0038】
高分子量オイルの40℃の動粘度は、好ましくは2000mm2/s以上であり、好ましくは35000mm2/s以下、より好ましくは30000mm2/s以下である。高分子量オイルとしては、上述した液状ゴム又は樹脂が挙げられる。
【0039】
プロセスオイルの40℃の動粘度は、好ましくは30mm2/s以上、より好ましくは50mm2/s以上であり、好ましくは400mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以下である。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルが挙げられる。
【0040】
上記併用において、40℃の動粘度が10~500mm2/sのプロセスオイル100質量部に対する、40℃の動粘度が1000mm2/s以上の高分子量オイルの量は、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。
【0041】
動粘度は、JIS K2283に準拠し、測定される。
液状軟化剤(B)は1種または2種以上用いることができる。
重合体組成物における液状軟化剤(B)の含有量は、オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、10~200質量部であり、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。液状軟化剤(B)の含有量を上記範囲とすることで、得られる制振材の柔軟性を向上させることができる。
【0042】
<樹脂(C)>
樹脂(C)は、水添石油樹脂(C-1)、水添ロジンエステル(C-2)およびテルペン樹脂(C-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の、軟化点が100℃未満の樹脂である。
水添石油樹脂(C-1)は、石油樹脂に水素を添加して得られる樹脂、すなわち石油樹脂を水素化して得られる樹脂である。石油樹脂とは、例えば、ナフサ分解により、エチレン、アセチレン、プロピレン等を生産する際に副生産される分解油留分を精製した石油由来の不飽和炭化水素を原料として得られる石油樹脂を意味する。
水添ロジンエステル(C-2)は、ロジンエステルの水添すなわち水素化により得られた樹脂である。水添することでオレフィン系重合体(A)との相容性が良好となり、高制振性、良粘着性の効果を発現すると考えられる。
テルペン樹脂(C-3)としては、テルペン樹脂および水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂およびその水素化物、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂およびその水素化物が挙げられる。なかでも、テルペン樹脂および水添テルペン樹脂が好ましく、水添テルペン樹脂が特に好ましい。テルペン樹脂(C-3)は未水添であっても十分な効果が得られる。これは、オレフィン系重合体(A)と良相容性であるためと考えられる。また、テルペン樹脂(C-3)は水添されたものであることで、さらに優れた効果が期待できる。これは、オレフィン系重合体(A)との相容性がより良好となるためと考えられる。
【0043】
樹脂(C)を、液状軟化剤(B)とともに、tanδのピークを0℃以上40℃以下の温度範囲に1つ以上有するオレフィン系重合体(A)に添加することにより、粘着性や、室温程度を含む広い温度範囲における制振効果を高めることができる傾向にある。
【0044】
水添石油樹脂(C-1)の原料となる石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン(以下「DCPD」ともいう)系石油樹脂が挙げられる。C5系石油樹脂は、石油のC5留分を原料として得られる石油樹脂である。C9系石油樹脂は、石油のC9留分を原料として得られる石油樹脂である。C5/C9系石油樹脂は、石油のC5留分およびC9留分を原料として得られる石油樹脂である。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタンが挙げられる。C9留分としては、例えば、スチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンが挙げられる。
【0045】
水添石油樹脂(C-1)としては、具体的には、水添C5系石油樹脂、水添C9系石油樹脂、水添C5/C9系石油樹脂、水添DCPD系石油樹脂が挙げられる。これらの中でも、水添DCPD系石油樹脂が好ましい。
水添ロジンエステル(C-2)の具体例としては、「エステルガムH」(商品名、荒川化学工業(株)製)が挙げられる。
テルペン樹脂(C-3)の具体例としては、「YSレジン」「YSポリスター」、「クリアロン」(以上、商品名、ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0046】
樹脂(C)の軟化点は、制振材の柔軟性および粘着性を高める等の観点から、100℃未満であり、好ましくは98℃以下、より好ましくは95℃以下であり、好ましくは65℃以上、より好ましくは68℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。樹脂(C)の軟化点は、JIS K2207に準拠し、環球法により測定される。
【0047】
樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、制振材の柔軟性および粘着性を高める等の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下であり、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上である。樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、JIS
K7121に準拠し、補外ガラス転移開始温度として求められる。
【0048】
成分(C)のうちの水素添加物、すなわち水添石油樹脂(C-1)、水添ロジンエステル(C-2)および水添テルペン樹脂は、水素化されていない不飽和結合を含み得る部分水素添加物であってもよく、不飽和結合のすべてが水素化された完全水素添加物であってもよい。たとえば水添石油樹脂(C-1)は、水素化されていない不飽和結合を含み得る部分水添石油樹脂であってもよく、不飽和結合のすべてが水素化された完全水添石油樹脂であってもよい。上記水素添加物の水素化率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。水素化率は、1H-NMR測定により、水素添加前の成分、たとえば石油樹脂中に存在した全不飽和結合のうち消失した不飽和結合の割合を算出することで導出される。
【0049】
樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下である。重量平均分子量(Mw)は、JIS K7252に準拠し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算法により算出することができる。
【0050】
樹脂(C)は1種または2種以上用いることができる。
重合体組成物におけるオレフィン系重合体(A)、液状軟化剤(B)および樹脂(C)の含有割合の合計は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0051】
重合体組成物における樹脂(C)の含有量は、オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、25~200質量部であり、好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上であり、好ましくは170質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。樹脂(C)の含有量を上記範囲とすることで、得られる制振材の広い温度範囲での制振効果や粘着性を向上させることができる。
【0052】
<その他の成分>
重合体組成物は、その他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、例えば、オレフィン系重合体(A)以外の重合体、補強材、充填材、加工助剤、活性剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、吸湿剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、防カビ剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、発泡剤、磁性粉末が挙げられる。
【0053】
<制振材用組成物の調製>
制振材用組成物(重合体組成物)は、上記成分を混合することにより得ることができる。重合体組成物を調製する方法は特に限定されないが、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダーなどの密閉式混練機、一軸押出機、二軸押出機などの押出機、オープンロールなどで混練することで調製できる。混練においては単独の装置を使用しても、複数種の装置を併用してもよい。
【0054】
以上の各成分を含む制振材用組成物から形成される樹脂層は、被着体に対して、室温程度を含む広い温度範囲に高い制振効果を示し、さらに柔軟性および粘着性に優れている。
重合体組成物中のハロゲン量は、低汚染性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。ハロゲン量の測定は、蛍光X線分析により行うことができる。測定値は、波長分散型蛍光X線分析装置(LAB CENTER XRF-1700:(株)島津製作所社製)を用い、FP法により解析をし、算出する。
【0055】
[制振材]
本実施形態の制振材は、上述した制振材用組成物(重合体組成物)から形成された樹脂層(以下「樹脂層(1)」ともいう)を有する。上記制振材は、樹脂層(1)に積層された拘束層(以下「拘束層(2)」ともいう)をさらに有することが好ましい。
【0056】
<樹脂層(1)>
樹脂層(1)は、通常、動的粘弾性測定により求められた損失正接tanδが1以上となる温度範囲(以下「tanδピーク幅」ともいいう)が広く、例えば室温程度を含む広い温度範囲において高い制振効果を有する。具体的には、樹脂層(1)は、tanδのピーク(tanδピーク温度)を、好ましくは0~35℃、より好ましくは5~30℃の温度範囲に1つ以上有する。また、樹脂層(1)のtanδピーク幅は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0057】
樹脂層(1)は、柔軟性に優れる。具体的には、樹脂層(1)の、動的粘弾性測定により求められた25℃における貯蔵弾性率(G')は、好ましくは2.5×105Pa未満、より好ましくは2.0×105Pa未満であり、好ましくは0.75×105Pa以上、より好ましくは0.8×105Pa以上である。
【0058】
上記各物性の測定条件の詳細は実施例欄に記載する。
樹脂層(1)は、粘着性に優れ、特に、アルミニウム箔などの拘束層(2)に対する粘着性に優れることから、樹脂層(1)に拘束層(2)を積層して得られる拘束型制振材の場合に好ましい。
【0059】
樹脂層(1)は、前述のようにハロゲン量の少ない、あるいはハロゲンを含まない重合体組成物から形成されることにより、低汚染性にも優れる。
樹脂層(1)の厚さは、制振性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは6.0mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下である。
【0060】
<拘束層(2)>
拘束層(2)は、樹脂層(1)を拘束し、樹脂層(1)に靭性を付与する。拘束層(2)は、制振材としての効果を高めるために、一実施形態において樹脂層(1)に積層される。拘束層(2)は、例えば、シート状で、樹脂層(1)に密着一体化できる層である。
【0061】
拘束層(2)としては、例えば、金属箔、金属メッシュ、樹脂層、繊維強化樹脂層、ガラスクロスが挙げられる。
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、スチール箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔が挙げられる。
【0062】
金属メッシュとは、金属材料を平織、綾織、平畳織、綾畳織などにしたもので、例えば、ステンレスメッシュ(ステンレス金網)が挙げられる。また金属メッシュは、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸された、樹脂含浸金属メッシュであってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)、各種ポリアミド樹脂、各種ポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂はそれぞれ1種または2種以上用いることができる。
【0063】
樹脂層を形成するための樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの各種ポリエステル、ナイロン6(ポリアミド6)などの各種ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの各種(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。また樹脂としては、発泡体であってもよく、例えば、熱可塑性樹脂の発泡体である、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン-酢酸ビニル共重合体や、熱硬化性樹脂の発泡体であるウレタンフォームが挙げられる。拘束層(2)としての樹脂層は、上述の樹脂層(1)とは異なる樹脂から形成される層である。
【0064】
繊維強化樹脂層を形成するための繊維強化樹脂としては、例えば、各種のガラス繊維強化樹脂(FRP)、炭素繊維強化樹脂(CFRP)が挙げられ、公知の繊維強化樹脂が挙げられる。
【0065】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。またガラスクロスは、表面に粘着剤が付着されたものであってもよい。またガラスクロスは、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸された、樹脂含浸ガラスクロスであってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)、各種ポリアミド樹脂、各種ポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂はそれぞれ1種または2種以上用いることができる。
【0066】
拘束層(2)の中では、制振性、加工性およびコストの観点から、金属箔、金属メッシュ、樹脂層、ガラスクロスが好ましく、金属箔、樹脂層、ガラスクロスがより好ましく、金属箔がさらに好ましい。
【0067】
拘束層(2)の厚さは、制振性、作業性または形状追従性の観点から、好ましくは0.06mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0068】
<他の層>
本実施形態の制振材は、樹脂層(1)および拘束層(2)の他に、樹脂層(1)における拘束層(2)が積層された面とは反対側の面上に、必要に応じて、公知の離型紙または離型フィルムを有してもよい。その場合は、離型紙または離型フィルムは、樹脂層(1)をシート化するときに、樹脂層(1)に積層することが好ましい。
【0069】
<制振材の製造方法>
本実施形態の制振材は、種々公知の製造方法、例えば、プレス機や押出機等の装置を用いて上記重合体組成物から所望の厚さを有するシート状樹脂層(1)を得た後、必要に応じて、樹脂層(1)に拘束層(2)を圧着または熱圧着する方法、あるいは、拘束層(2)面に上記重合体組成物を押出機等の装置を用いて押出しラミネートして、拘束層(2)上に樹脂層(1)を形成する方法が挙げられる。
【0070】
<制振材の用途>
本実施形態の制振材は、制振対象となる部材(例えば部品または筐体)に貼付され、その部品または筐体を制振する。
このため、上記制振材は、自動車、船舶、鉄道車両、航空機、家庭電化機器、OA機器、AV機器、事務機器、建築・住宅設備、工作機械、産業機械などの、振動が発生する様々な用途における部品または筐体に対して使用することができる。上記制振材は、作業者や作業環境に対する汚染性が低いことから、クリーンルーム等での使用に好適であり、クリーンルーム等で使用され、振動が発生する、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、半導体パネル製造装置、有機ELパネル製造装置、シリコンウエハー製造装置、携帯電話製造装置、タッチパネル製造装置、プリント基板製造装置、塗工装置、偏光フィルム押し出し機、偏光フィルム巻き取り機、光学フィルム押し出し機、光学フィルム巻き取り機、裁断機、レーザー微細加工装置、超音波加工装置、半導体露光装置、液晶露光装置、X線検査装置、医薬品製造装置、農薬製造装置、ホモジナイザー、ミキサー、プレス機、クリーンベンチ、エアシャワー、ベルトコンベヤー、空調設備、製品製造機、製品充填機、包装印字機、洗浄機、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、膜厚測定機、エッチング装置、成膜装置、LED基板作製装置、真空乾燥機、イナートオーブン、高温炉、研磨機等の、半導体、液晶、食品、化粧品、医薬品等の製造現場での使用ができる。
【0071】
例えば、上記制振材が樹脂層(1)の表面に離型紙または離型フィルムを備える場合には、使用時には樹脂層(1)の表面から離型紙または離型フィルムを剥がして、次いで、その樹脂層(1)の表面を、被着体である制振対象(各種部品、筐体など)に貼着する。樹脂層(1)と制振対象(各種部品、筐体など)とを、例えば、圧着または熱圧着(焼き付け)等することにより、上記制振材を制振対象に貼付することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0073】
[測定方法および評価方法]
以下の重合例、実施例および比較例において、測定および評価は以下の方法で行った。
<重合体の分析>
(組成)
オレフィン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびその他のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有割合(モル%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECP500型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン、積算回数:1万回以上にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0074】
(極限粘度)
オレフィン系重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。具体的には、約20mgの粉末状の重合体をデカリン25mLに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定した。このデカリン溶液にデカリン5mLを加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηSPを測定した。この希釈操作を2回繰り返し、重合体の濃度(C)を0に外挿したときのηSP/Cの値を極限粘度[η](単位:dL/g)として求めた(下記式1参照)。
[η]=lim(ηSP/C) (C→0) ・・・式1
【0075】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn))
オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記の通りである。
測定装置 :GPC(ALC/GPC 150-C plus型、
示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム :GMH6-HT2本、およびGMH-HTL2本を直列に接続
(いずれも東ソー(株)製)
溶離液 :o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量 :1.0mL/min
【0076】
(動的粘弾性測定)
オレフィン系重合体または重合体組成物を厚さ2mmのプレスシートに成型し、試験片有効サイズを、長さ20mm×幅10mm×厚さ2mmで測定するため、短冊片を切り出した。粘弾性測定装置(商品名:ARES-G2、TA Instrumens JAPAN Inc.社製)を用いて、下記測定条件でオレフィン系重合体または重合体組成物の動的粘弾性の温度依存性を測定した。当該測定で得られた、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")との比(G"/G':損失正接)をtanδとし、tanδを温度に対してプロットすると、上に凸の曲線すなわちピークが得られ、そのピークの頂点の温度をガラス転移温度、すなわちtanδ-Tg(tanδピーク温度)とし、その温度における極大値(tanδピーク値)を測定した。また、tanδが1以上となる温度範囲を、tanδピーク幅とした。
((測定条件))
Frequency :1.0Hz
Temperature:-70~100℃
Ramp Rate :4.0℃/分
Strain :0.1%
tanδピーク幅が広い場合は、制振効果が高い温度範囲が広いと評価できる。
【0077】
(ガラス転移温度測定)
水添石油樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、30℃まで昇温させた試料を10℃/minの速度で-70℃まで冷却し、10℃/分の速度で再び昇温させた際のDSC曲線をJIS K7121に準拠し、補外ガラス転移開始温度として求めた。
【0078】
<制振材の評価>
(粘着性評価)
オレフィン系重合体または重合体組成物を厚さ2mmのプレスシートに成型し、試験片サイズを、長さ150mm×幅25mmで測定するため、短冊片を切り出した。被着体のアルミニウム箔サイズを、長さ100mm×幅50mm×厚さ0.2mmとし、アルミニウム箔をエタノールで脱脂後、試験片をアルミニウム箔に5kgの圧着ローラーで圧着し、粘着させた。万能材料試験機201X((株)インテスコ社製)を用いて、下記測定条件で制振材を被着体に対し、180°引きはがした際の剥離応力を測定した。剥離応力が高いほど、粘着性に優れる。
次の基準で、〇、×で評価した。
剥離応力5N/cm以上 : 〇
剥離応力5N/cm未満 : ×
((測定条件))
測定温度 :23.0℃
試験速度 :300.0mm/min
試験区間 :10.0-150.0mm
試験方法 :180°剥離
【0079】
(柔軟性評価)
粘弾性測定装置を用いて得られた貯蔵弾性率(G')によって、柔軟性の評価を実施した。G'の値が低いほど、柔軟性に優れる。
次の基準で、〇、×で評価した。
G'(25℃) 2.5×105Pa未満 = 〇
G'(25℃) 2.5×105Pa以上 = ×
【0080】
[重合例1]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテン450mlを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0081】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0082】
得られた溶媒を含む重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥することで4-メチル-1-ペンテン共重合体を得た。これを190℃でペレタイズして得たペレットを4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)とした。4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位含量は72モル%、プロピレンから導かれる構成単位含量は28モル%であった。また共重合体(A-1-1)の135℃デカリン中の極限粘度[η]は1.5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、tanδピーク温度は28℃、tanδピーク値は2.7であった。
【0083】
[実施例1]
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)100部、パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製、動粘度(40℃):95.54mm2/s)60部、水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製、軟化点88℃、ガラス転移温度(Tg)22℃)100部をバッチ式混練機(商品名:ラボプラストミル、(株)東洋精機製作所製)を用い、150℃で混練し、重合体組成物を得た。上記重合体組成物を、加熱プレスを用い、190℃で5分加熱後、冷却プレスをし、厚さ2mmのプレスシートを得た。
このプレスシートからなる制振材について、評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)の使用量60部を50部に変更し、液状ポリブテン(商品名:HV-300、JXTGエネルギー(株)製、動粘度(100℃):550mm2/s、動粘度(40℃):26,000mm2/s)30部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)の代わりに、水素化ロジンエステル(商品名:エステルガムH、荒川化学工業(株)製)100部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)の代わりに、テルペン樹脂(商品名:YSレジンPX800、ヤスハラケミカル(株)製)100部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例1]
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例2]
水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
[比較例3]
水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)を使用せず、パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)の使用量60部を30部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例4]
水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)の代わりに、水添炭化水素石油樹脂(商品名:HA125、JXTGエネルギー(株)製、軟化点125℃、Tg72℃)を使用し、パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)の使用量60部を30部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
[比較例5]
パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)の代わりに、液状ポリブテン(商品名:HV-300、JXTGエネルギー(株)製)を30部使用し、水添炭化水素石油樹脂(水添DCPD系石油樹脂、商品名:HA085、JXTGエネルギー(株)製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例6]
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)の代わりに、水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(商品名:S.O.E1606、旭化成(株)製、MFR:4.0g/10min(230℃、2.16kgf)、tanδピーク温度:-15℃)を使用し、パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)の使用量60部を30部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0093】
[比較例7]
パラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製)を使用しないこと以外は、実施例3と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0094】
【符号の説明】
【0095】
1 制振材
2 制振材用組成物から形成された樹脂層
3 拘束層
4 制振対象