(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】殺菌庫
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20241021BHJP
A47L 19/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61L2/10
A47L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021019779
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】黒木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 園生
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523329(JP,A)
【文献】特開2004-097289(JP,A)
【文献】特開2006-132801(JP,A)
【文献】特開2007-259930(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111419140(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A47L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の内部に画成した収容室に収容した物品を、殺菌灯によって殺菌する殺菌庫であって、
前記本体の内部に、前記収容室と熱交換室とを隔てるように画成する隔壁と、
前記隔壁に離間して設けられ、前記収容室と熱交換室とを連通する吹出口および吸込口と、
前記熱交換室に配設され、前記収容室の空気を前記吸込口から吸い込んで熱交換した温風を、前記吹出口から収容室に吹き出す温風循環手段と、
前記隔壁に設けられて前記収容室に突出し、前記物品を支持する支持部材が配設される取付部材と、を備え、
前記吹出口と吸込口との間を、前記取付部材によって遮るよう構成した
ことを特徴とする殺菌庫。
【請求項2】
前記取付部材は、前記隔壁側に開放する箱状に形成されて、前記吸込口の一部を覆うように隔壁に配設されると共に、
前記取付部材における前記吸込口を覆う側において前記吹出口から離間する側を向く壁に、取付部材の内部と前記収容室とを連通する通孔を設けた請求項1記載の殺菌庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収容室に収容した調理器具等の物品を殺菌する殺菌庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学校その他レストラン等の厨房施設で使用される包丁やまな板等の物品(調理器具)、または病院等で使用される衛生用品や医療品等の物品を衛生的に保つため、洗浄が終わり濡れた状態の物品を収容室に収容して、殺菌状態で乾燥させる殺菌庫が好適に使用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の開示の殺菌庫は、収容室に収容した物品に向けて紫外線を照射する発光部と、乾燥ヒータや乾燥ファンからなる乾燥部と、を備え、該乾燥ファンを運転して乾燥ヒータと熱交換した温風により収容室に収容した物品を乾燥するよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の殺菌庫では、温風によって収容室に収容した物品を乾燥するようにしているものの、乾燥部が配置される室と収容室との間で温風を効率的に循環させる構成まで検討されているようなものではない。すなわち、収容室への温風の吹出口と、収容室からの温風の吸込口との間で温風がショートサイクルすることで、物品を乾燥するのに時間が掛かる問題等に対する対策について検討されていない。
【0005】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、収容室に収容した物品を効率的に乾燥することができる殺菌庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る殺菌庫は、
本体(10)の内部に画成した収容室(12)に収容した物品(16A,16B)を、殺菌灯(17)によって殺菌する殺菌庫であって、
前記本体(10)の内部に、前記収容室(12)と熱交換室(13)とを隔てるように画成する隔壁(11)と、
前記隔壁(11)に離間して設けられ、前記収容室(12)と熱交換室(13)とを連通する吹出口(28)および吸込口(29)と、
前記熱交換室(13)に配設され、前記収容室(12)の空気を前記吸込口(29)から吸い込んで熱交換した温風を、前記吹出口(28)から収容室(12)に吹き出す温風循環手段(18,19)と、
前記隔壁(11)に設けられて前記収容室(12)に突出し、前記物品(16A,16B)を支持する支持部材(31)が配設される取付部材(30)と、を備え、
前記吹出口(28)と吸込口(29)との間を、前記取付部材(30)によって遮るよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明では、収容室と熱交換室とを隔てる隔壁に配設した取付部材によって、吹出口と吸込口との間の温風の流れを遮ることができ、温風のショートサイクルを防いで、物品を効率的に乾燥することができ、乾燥時間を短縮することができる。また、取付部材は、収容室に収容する物品を支持する支持部材が配設される部材であるので、ショートサイクルを防止するための専用の部材を必要としない。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記取付部材(30)は、前記隔壁(11)側に開放する箱状に形成されて、前記吸込口(29)の一部を覆うように隔壁(11)に配設されると共に、
前記取付部材(30)における前記吸込口(29)を覆う側において前記吹出口(28)から離間する側を向く壁(30a)に、取付部材(30)の内部と前記収容室(12)とを連通する通孔(30b)を設けたことを要旨とする。
請求項2の発明では、本体の大型化を抑えたもとで、吸込口の開口面積を大きくして熱交換室への空気の吸い込み量を多くすることができ、温風の循環量を多くして物品を効率的に乾燥させることができる。すなわち、吹出口と吸込口との離間距離を大きくすれば、ショートサイクルを抑制することはできるが、その場合には本体を大型化するか、または吸込口や吹出口の開口面積を小さくしなければならない。しかるに、請求項2の発明では、取付部材で吸込口の一部を覆うと共に、取付部材の内部と収容室とを連通する通孔を設けることで、吸込口の開口面積を大きくしても、本体を大型化することなくショートサイクルを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る殺菌庫によれば、温風のショートサイクルを防止する専用の手段を設けることなくショートサイクルを防いで、物品を効率的に乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る殺菌庫における収容室の内部構造を示す概略斜視図である。
【
図2】実施例に係る殺菌庫を示す概略平断面図である。
【
図3】実施例に係る排気ダンパを示す概略図であって、(a)は排気口の閉状態を示し、(b)は排気口の開状態を示している。
【
図4】実施例に係る殺菌庫の制御ブロック図である。
【
図5】実施例に係る殺菌・乾燥処理を示すフローチャート図である。
【
図6】別実施例に係る排気ダンパを示す概略図であって、(a)は排気口の閉状態を示し、(b)は排気口の開状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る殺菌庫につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0011】
図1、
図2に示す如く、実施例の殺菌庫は、矩形箱状の本体10の内部に、隔壁11によって収容室12と熱交換室13とが区画されている。実施例では、収容室12と熱交換室13とが、隔壁11によって左右に隔てて画成されている。本体10の前部には、収容室12に対応して出入口14が設けられると共に、該出入口14を開閉可能な開閉扉15が本体10に配設されており、該開閉扉15を開いて開放した出入口14を介して調理器具等の物品16A,16Bを、収容室12に対して出し入れし得るよう構成される。また、収容室12に、収容された物品16A,16Bを殺菌するための殺菌灯17が配設されると共に、熱交換室13に、収容室12に収容した物品16A,16Bを乾燥するための温風を、収容室12と熱交換室13との間で循環させる温風循環手段18,19が配設されている。
【0012】
図1、
図2に示す如く、前記収容室12を画成して前記出入口14と対向する奥壁20に、上下に離間して一対の後取付部材21,21が配設されると共に、該後取付部材21,21に、複数の第1の支持部材22が左右方向に離間して配設されている。そして、左右に隣り合う第1の支持部材22,22の間に、例えばまな板等の物品16Aを、縦向き姿勢で支持し得るよう構成される。収容室12を画成する底壁23には、下支持部材24が配設され、第1の支持部材22,22で支持される物品16Aの下端を下支持部材24で支持するよう構成される。また、下側の後取付部材21に、奥壁20から前方に離間して規制部材25が設けられ、第1の支持部材22,22や下支持部材24で支持される物品16Aが、該規制部材25より奥壁20に近づくのを規制するよう構成される。第1の支持部材22、下支持部材24および規制部材25は、物品16Aを各壁20,23から離間した状態で支持または規制し、前記温風循環手段18,19によって循環する温風が物品16Aの全体に効率的に接触するよう構成される。
【0013】
図1に示す如く、前記奥壁20には、前記規制部材25の前端より奥側に位置するように、前記殺菌灯17が配設されている。実施例では、殺菌灯17としてUVランプが用いられ、該ランプから照射される紫外線によって物品16A,16Bを殺菌するよう構成される。また、殺菌灯17は、奥壁20に配設された反射部材26における前方に向けて拡開する凹部内に配置されて、殺菌灯17から照射される紫外線を反射部材26によって前方へ向けて広範囲に反射し得るよう構成されている。
【0014】
図2に示す如く、前記温風循環手段18,19は、空気を加熱するヒータ18と、該ヒータ18により加熱された空気(温風)を送風する、モータで羽根車を回転するシロッコファン等からなるファン19とから構成される。前記熱交換室13には、前記隔壁11から側方に離間して、前後方向に延在すると共に前後で開口する風洞27が設けられており、該風洞27の内部にヒータ18が配設されている。また、隔壁11には、熱交換室13から収容室12への空気(温風)の吹出口28と、収容室12から熱交換室13への空気(温風)の吸込口29とが、前後方向に離間して形成されている。実施例では、吸込口29が前側で吹出口28が奥側に配置されている。吹出口28および吸込口29は、何れも前後方向に延在する長孔28a,29aを上下方向に離間して複数形成することで構成される。また、前記ファン19は、隔壁11と風洞27との間において、吸込口29側に偏って配置され、該ファン19を運転することで、収容室12の空気を吸込口29から熱交換室13に吸い込み、該空気を風洞27における前側の開口である入口27aに向けて送り出すよう構成される。そして、入口27aから入って風洞27を流通する空気がヒータ18によって加熱されて温風となり、後側の開口である出口27bから出た温風が、前記吹出口28から収容室12に吹き出すようになっている。
【0015】
図1、
図2に示す如く、前記隔壁11に、前記収容室12に向けて突出する側取付部材(取付部材)30が配設されると共に、該側取付部材30には、複数の第2の支持部材31が上下および前後方向に離間して配設されている。実施例では、前後に整列する2つの第2の支持部材31,31が組をなし、各組の第2の支持部材31,31に、前記第1の支持部材22で支持される物品16Aとは種類が異なる、例えば包丁等の物品16Bを支持し得るよう構成される。側取付部材30は、隔壁11側に開放する箱状に形成された部材であって、該側取付部材30は、開放端を隔壁11に当接した状態で該隔壁11に配設されている。また、側取付部材30は、前記吹出口28より吸込口29側に偏った位置において、吹出口28および吸込口29の上下方向の形成領域より上下方向に長く延在するよう構成されて、該側取付部材30によって吹出口28と吸込口29との間を、前後方向において遮るよう構成される。すなわち、吹出口28から収容室12に吹き出された温風が、直ぐに吸込口29に吸い込まれるショートサイクルが発生するのを、当該側取付部材30によって防ぐよう構成される。
【0016】
前記側取付部材30は、
図2に示す如く、前記吸込口29の一部を覆うように配置されると共に、該側取付部材30における吸込口29側(吸込口29を覆う側)に位置して前記吹出口28から離間する側を向く前壁(壁)30aに、側取付部材30の内部と前記収容室12とを連通する通孔30bが、上下方向に離間して複数形成されている。すなわち、収容室12の空気(温風)は、吸込口29における側取付部材30から露出する部分から直接熱交換室13に吸い込まれると共に、前壁30aの通孔30bから側取付部材30の内部に吸い込まれた空気(温風)が、吸込口29における側取付部材30で覆われている部分からも熱交換室13に吸い込まれるよう構成されている。また、箱状の側取付部材30における後壁30cは、隔壁11に対して吹出口28からの温風の吹き出し方向に突出して、該吹出口28から吹き出される温風を、収容室12における隔壁11とは反対側に向けて案内するよう機能する。
【0017】
前記熱交換室13には、上下方向に延在すると共に本体外部に開放する排気ダクト32が設けられている。また、排気ダクト32には、
図3に示す如く、熱交換室13に連通する排気口32aが形成されており、排気口32aから排気ダクト内に流入した湿気(空気)を本体外部に排出し得るよう構成される。排気ダクト32の内部には、排気ダンパ33が回動自在に枢支されており、該排気ダンパ33は、排気口32aを閉成する閉位置(
図3(a))と、排気口32aを開放する開位置(
図3(b))とに回動変位し得るよう構成される。また、排気ダンパ33は、無負荷状態で閉位置に向けて回動するように、重心が回転中心から離れた位置に設定されている。そして、排気ダンパ33は、前記ファン19の運転により送り出される温風の力(風圧)によって開位置に回動して排気口32aを開放することで、湿気を本体外部に排出し、ファン19の運転停止により温風の力(風圧)が作用しなくなることで、自重で閉位置に回動して排気口32aを閉成するよう構成される。なお、排気ダクト32および排気ダンパ33の配設位置は、熱交換室内において風圧や湿度が最も高くなる、前記ファン19の吹き出し側近傍に配置されるのが好ましい。
【0018】
殺菌庫は、前記殺菌灯17および温風循環手段18,19を制御する制御手段34を有している。
図4に示す如く、制御手段34には、殺菌灯17、ヒータ18およびファン19が電気的に接続されている。また、制御手段34は、タイマ35を備え、該タイマ35が計時する時間に基づいて、殺菌灯17、ヒータ18およびファン19を制御する。また、制御手段34には、前記開閉扉15の開閉を検知する開閉検知手段36が電気的に接続されている。
【0019】
前記本体10には、使用者が操作可能な各種のボタンを備えたコントロールパネル37が設けられている。コントロールパネル37には、
図4に示す如く、殺菌庫での殺菌・乾燥運転を開始させる運転開始ボタン38、殺菌庫での運転モードを切り替えるモード切替えボタン39、殺菌・乾燥運転を実行する時間(殺菌・乾燥時間)を設定可能な時間設定手段40が設けられている。コントロールパネル37は、前記制御手段34に電気的に接続されており、運転開始ボタン38を操作することで、制御手段34は、前記殺菌灯17を点灯すると共に、ヒータ18およびファン19に通電してファン19を運転し、殺菌・乾燥運転を開始するよう構成される。なお、コントロールパネル37には、各種ボタン38,39の夫々に対応してスイッチが設けられ、該スイッチによって操作されたボタン38,39の操作が検知される。また、コントロールパネル37には、運転開始ボタン38に対応してLED等の運転ランプ38aが設けられ、該運転ランプ38aの点灯によって運転中であることを報知するよう構成される。また、コントロールパネル37には、モード切替えボタン39に対応してLED等のモードランプ39aが設けられ、該モードランプ39aの点灯によって後述するリセット有モードであることを報知すると共に、該モードランプ39aの消灯によって後述するリセット無モードであることを報知するよう構成される。なお、運転ランプ38aは、殺菌・乾燥運転が実行されていない待機中(運転停止中)には消灯するよう構成される。
【0020】
前記タイマ35は、前記運転開始ボタン38の操作により殺菌・乾燥運転が開始されると同時に計時を開始し、該タイマ35の計時時間が、前記時間設定手段40で設定された殺菌・乾燥時間になったときに、前記制御手段34は殺菌・乾燥運転を停止するよう構成される。実施例では、殺菌・乾燥時間として、例えば3時間が設定された場合、タイマ35は、設定された3時間を、運転開始ボタン38の操作と同時にカウントダウン(計時)し、その計時時間(カウント値)が「0」になると、制御手段34は、前記殺菌灯17を消灯すると共に、ヒータ18およびファン19への通電を停止して、殺菌・乾燥運転を停止する。
【0021】
実施例の殺菌庫は、前記モード切替えボタン39の操作によって、殺菌・乾燥時間を自動でリセットするリセット有モードと、殺菌・乾燥時間を自動ではリセットしないリセット無モードを選択できるよう構成されている。リセット有モードでは、前記制御手段34は、殺菌・乾燥運転中(タイマ35のカウントダウン中)に、前記開閉検知手段36が開閉扉15の開閉を検知した場合に、タイマ35でのカウント値をリセットし、再度、殺菌・乾燥時間のカウントダウンを、最初の値(例えば3時間)から開始(殺菌・乾燥運転は継続)する。また、リセット有モードでは、制御手段34は、運転停止中に開閉検知手段36が開閉扉15の開閉を検知した場合に、タイマ35でのカウント値をリセットし、再度、殺菌・乾燥時間のカウントダウンを、最初の値(例えば3時間)から開始すると共に、殺菌・乾燥運転を開始する。制御手段34によるタイマ35のリセットおよび殺菌・乾燥運転の継続や開始は、具体的には、開閉検知手段36が、開閉扉15の開放を検知した後に、該開閉扉15の閉成を検知したときに行われる。
【0022】
次に、実施例に係る殺菌庫の前記制御手段34で実行する殺菌・乾燥処理について、
図5を参照して説明する。
制御手段34は、前記運転開始ボタン38が操作されると(ステップS10)、ステップS11でリセット有モードか否かを判定し、該ステップS11の判定結果が否定(すなわち、リセット無モード)の場合には、殺菌・乾燥運転を開始すると共に、前記タイマ35での計時(カウントダウン)を開始する(ステップS12)。そして、タイマ35が殺菌・乾燥時間を計時すると(ステップS13で肯定)、制御手段34は、殺菌・乾燥運転を停止し(ステップS14)、殺菌・乾燥処理を終了する。
【0023】
前記ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御手段34は、殺菌・乾燥運転を開始すると共に、前記タイマ35での計時(カウントダウン)を開始する(ステップS15)。制御手段34は、ステップS16で前記開閉検知手段36が開閉扉15の開閉を検知したか否かを判定し、該ステップS16の判定結果が否定の場合には、ステップS18に移行してタイマ35が殺菌・乾燥時間を計時した(タイマ35のカウント値が「0」となった)か否かを判定する。ステップS18の判定結果が否定の場合、ステップS16に戻る。前記ステップS16の判定結果が肯定の場合、すなわち、タイマ35のカウントダウン中に開閉扉15が開閉された場合、制御手段34は、タイマ35のカウント値をリセットし、殺菌・乾燥時間のカウントダウンを、最初の値(例えば3時間)から開始すると共に、殺菌・乾燥運転を実行(継続)する(ステップS17)。そして、ステップS18においてタイマ35が殺菌・乾燥時間を計時したか否かを判定し、該ステップS18の判定結果が否定の場合、ステップS16に戻る。
【0024】
前記ステップS18の判定結果が肯定の場合、制御手段34は、ステップS19において、前記開閉検知手段36が開閉扉15の開閉を検知したか否かを判定し、該ステップS19の判定結果が肯定の場合は、ステップS17に戻って前記フローを繰り返す。また、制御手段34は、ステップS19の判定結果が否定の場合は、リセット無モードに切り替えられたか否かを判定する(ステップS20)。制御手段34は、ステップS20の判定結果が否定の場合は、ステップS19に戻り、該ステップS20の判定結果が肯定の場合は、殺菌・乾燥処理を終了する。
【0025】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る殺菌庫の作用について説明する。
殺菌庫において、前記収容室12に、物品16A,16Bを収容したもとで、前記運転開始ボタン38を操作すると、前記殺菌・乾燥処理が実行される。すなわち、前記制御手段34は、リセット有モードか否かを判定した後、リセット有モードおよびリセット無モードの何れのモードの場合も、前記殺菌灯17を点灯すると共に、前記ヒータ18およびファン19に通電して該ファン19を運転し、殺菌・乾燥運転を開始する。また、タイマ35による計時(カウントダウン)を開始する。
【0026】
殺菌・乾燥運転では、前記殺菌灯17を点灯することで照射される紫外線によって、収容した物品16A,16Bは殺菌される。また、前記ファン19の運転によって、前記収容室12の空気が前記吸込口29から熱交換室13に吸い込まれ、該空気は前記ヒータ18によって加熱されて温風となり、該温風が前記吹出口28から収容室12に吹き出される。すなわち、温風が収容室12と熱交換室13との間で循環し、収容室12に収容した物品16A,16Bは乾燥される。殺菌・乾燥運転において、熱交換室13内を流れる空気(温風)の圧力(風圧)によって、
図3(b)に示す如く、前記排気ダンパ33が開位置に回動して前記排気口32aを開放し、庫内(収容室12および熱交換室13)の湿気を外部に排出することができる。すなわち、殺菌・乾燥運転では湿気が庫内にこもることなく外部に排出され、収容室12に収容した物品16A,16Bの乾燥を促進することができる。前記タイマ35が殺菌・乾燥時間を計時すると、前記制御手段34は、殺菌灯17を消灯すると共に、ヒータ18およびファン19への通電を停止して、殺菌・乾燥運転を停止する。また、熱交換室13に収容室12の空気(温風)が吸い込まれなくなると、前記排気ダンパ33に作用する風力がなくなり、該排気ダンパ33は自重で閉位置に回動して排気口32aを閉成する。
【0027】
実施例の殺菌庫は、前記収容室12と熱交換室13とを隔てる前記隔壁11に配設した側取付部材30によって、前記吹出口28と吸込口29との間の温風の流れを遮るよう構成したので、温風のショートサイクルを防くことができる。すなわち、吹出口28から収容室12に吹き出された温風の風量がショートサイクルによって減少することなく、充分な量の温風が収容室12の広範囲に行き渡り、物品16A,16Bを効率的に乾燥することができ、乾燥時間を短縮し得る。また、側取付部材30は、収容室12に収容する物品16Bを支持する第2の支持部材31が配設される部材であるので、ショートサイクルを防止するための専用の部材を必要とせず、部品点数が増えることはない。また、側取付部材30で吸込口29の一部を覆うと共に、側取付部材30における吸込口29の一部を覆う側の前壁30aに、側取付部材30の内部と収容室12とを連通する通孔30bを設けてあるので、吸込口29の開口面積を大きくして、熱交換室13への空気の吸い込み量を多く確保したもとで、前記本体10を大型化することなくショートサイクルを防止することができる。
【0028】
また、側取付部材30における後壁30cは、
図2に示に示す如く、前記隔壁11に対して吹出口28からの温風の吹き出し方向に突出しているので、吹出口28から吹き出される温風を、収容室12における隔壁11とは反対側に向けて案内し、該温風を収容室12の広い範囲に行き渡らせることができる。更に、前記通孔30bが設けられる前壁30aは、吹出口28から離間する側を向いているので、吹出口28から吹き出された直後の温風が、側取付部材30の外周を回り込んで通孔30bから吸い込まれるのは抑制される。
【0029】
実施例の殺菌庫は、庫内の湿気を外部に排出するための前記排気ダンパ33を、前記ファン19の停止時には自重により排気口32aを閉成し、該ファン19の運転時には風圧により排気口32aを開放するよう構成したので、排気ダンパ33を動作するための電動部品を必要とせず、部品点数が増加することはない。また、手動で排気ダンパを動かして排気口を開閉する構成に比べ、開け忘れによる乾燥機能の低下、閉め忘れによる虫、埃の侵入を防止すると共に、使用者による開閉作業等の手間をなくすことができる。
【0030】
実施例の殺菌庫は、リセット有モードに設定しておけば、殺菌・乾燥運転中に、前記開閉扉15を開閉して追加で物品16A,16Bを収容室12に収容した場合に、使用者がタイマ35を手動でリセットしたり、再度運転開始ボタン38を操作することなく、追加した物品16A,16Bについても、設定された殺菌・乾燥時間で殺菌・乾燥することができる。すなわち、リセット無モードでは、殺菌・乾燥時間が3時間に設定されている場合に、例えば殺菌・乾燥運転が1時間経過したときに、開閉扉15を開閉して追加した物品16A,16Bについては、残りの2時間しか殺菌・乾燥されず、殺菌・乾燥不足となるが、リセット有モードでは開閉扉15の開閉を前記開閉検知手段36が検知すればタイマ35が自動でリセットされるので、追加した物品16A,16Bについても3時間の殺菌・乾燥を行うことができ、殺菌・乾燥不足となることはない。また、運転停止中に開閉扉15を開閉して収容室12に物品16A,16Bを収容したものの、運転開始ボタン38の操作を行わなかった場合でも、リセット有モードであれば、開閉扉15の開閉によってタイマ35が自動でリセットされて殺菌・乾燥運転が自動で実行されるので、使用者が運転開始ボタン38の操作をするのを忘れた場合であっても、収容した物品16A,16Bを殺菌・乾燥時間で殺菌・乾燥することができる。すなわち、開閉扉15を開放して物品16A,16Bを収容した後、開閉扉15を閉成するだけで殺菌・乾燥運転が自動で実行されるので、手動による運転開始ボタン38の操作が必要なくなり、作業者の負担を軽減し得る。
【0031】
〔別実施例〕
図6は、殺菌庫の別実施例を示すものであって、該別実施例は、前記排気ダンパ33に関連する構成が実施例と異なるのみであるので、該排気ダンパ33に関連する構成についてのみ説明する。また、実施例で説明した同一部材には、同じ符号を付すものとする。
【0032】
図6に示す如く、前記排気ダクト32に、前記排気口32aを開閉可能な排気ダンパ33が回動自在に支持される。排気ダンパ33は、制御手段34に電気的に接続されているソレノイド等の作動手段41に連繋されており、該作動手段41を作動することで、排気ダンパ33は、排気口32aを閉成する閉位置と、該排気口32aを開放する開位置とに移動するよう構成される。制御手段34には、前記収容室12の湿度を検出する検出手段(図示せず)が電気的に接続されており、制御手段34は、検出手段が予め設定された開設定湿度を検出すると、前記作動手段41により排気ダンパ33を開位置に移動して排気口32aを開放する。また、制御手段34は、排気口32aの開放により収容室12の湿度が開設定湿度より低い閉設定湿度を検出手段が検出すると、作動手段41により排気ダンパ33を閉位置に移動して排気口32aを閉成するよう構成される。
【0033】
別実施例の殺菌庫は、検出手段の検出湿度に応じて、適切な時期に排気口32aを開放して庫内の湿気を外部に排出することができる。また、前記実施例のように、風圧によって排気ダンパ33を開放する構成では、前記熱交換室13内での空気(温風)の流れや流量等の変化によって、排気ダンパ33が適正に開放しないおそれがあるが、別実施例では作動手段41によって排気ダンパ33を強制的に開位置に移動するので、空気(温風)の流れや流量等の変化の影響を受けることなく確実に排気口32aを開放することができる。
【0034】
なお、別実施例において、排気ダンパ33を移動する作動手段41は、ソレノイドに限らず、ギヤモータ等、その他各種の手段を用いることができる。また、排気ダンパ33は、回動する構成に限らず直線的に移動する構成であってもよい。更に、湿度を検出する検出手段に代えて、収容室12の温度を検出する検出手段の検出温度に応じて、制御手段34が作動手段41を制御して排気ダンパ33によって排気口32aを開閉する構成を作用することができる。
【0035】
〔別形態〕
図7は、別形態の殺菌庫を示すものであって、実施例で説明した同一または同じ機能を有する部材には、同じ符号を付して詳細説明は省略する。
【0036】
別形態の殺菌庫は、本体10が縦長の箱状に形成されて、内部上方に配設された仕切壁42の上側に機械室43が画成されると共に、該仕切壁42の下側に収容室12が画成され、仕切壁42に設けた吸込口29によって収容室12と機械室43とが連通している。また、本体10の内部には、収容室12および機械室43を画成する側壁(図示例では左側壁)47の外側に、上下方向に延在する循環ダクト44が設けられ、該循環ダクト44の上部側の側壁47に、循環ダクト44を機械室43に連通する通孔44aが設けられると共に、該循環ダクト44の下部側の側壁47に、循環ダクト44を収容室12の底部側で連通する吹出口28が設けられている。別形態では、機械室43にファン19が配設されると共に、循環ダクト44の内部にヒータ18が配設されている。すなわち、ファン19を運転すると、収容室12の空気が吸込口29を介して機械室43に吸い込まれ、該空気が通孔44aから循環ダクト44内に流入し、該循環ダクト44内を下方へ移動中にヒータ18で加熱された温風が、循環ダクト44の吹出口28から収容室12に吹き出されて上昇して、再び吸込口29から機械室43に吸い込まれる。すなわち、別形態では、庫内空気は、収容室12、機械室43、循環ダクト44の間で循環する。別形態では、機械室43および循環ダクト44により熱交換室が構成され、前記仕切壁42と前記奥壁20とで隔壁が構成される。
【0037】
前記機械室43に、前記排気ダクト32が設けられ、該排気ダクト32に配設した実施例と同じ前記排気ダンパ33によって、排気口32aを開閉するよう構成される。排気ダクト32および排気ダンパ33は、機械室内において風圧や湿度が最も高くなる前記ファン19の吹き出し側近傍に配置されている。なお、前記収容室12には、前記奥壁20に、上下方向に離間して複数の殺菌灯17が配設されている。また、別形態では、収容室12の内部上方に、前記物品16A,16Bとは異なる種類の物品を支持し得る第3の支持部材45が別取付部材46を介して配設されている。
【0038】
別形態では、前記排気ダクト32および排気ダンパ33を、機械室内の風圧や湿度が最も高くなる前記ファン19の吹き出し側近傍に配置したので、より多くの湿気を外部に排出することができる。また、排気ダンパ33の配設位置は風圧が高いので、機械室内での温風の流量が変化(低下)しても、該排気ダンパ33を移動させるのに充分な風圧を確保することができ、殺菌・乾燥運転中に排気口32aが開放しない事態が発生するのを抑制できる。なお、別形態において、排気ダンパ33としては、別実施例の構成を採用することができる。また、循環ダクト44は、収容室12の左側面側に限らず、右側面側や背面側に設ける構成を採用し得る。
【0039】
〔変更例〕
本発明は実施例や別実施例の構成に限定されるものではなく、例えば、以下のようにも変更実施可能である。また、以下の変更例に限らず、実施例に記載した構成については、本発明の主旨の範囲内において種々の実施形態を採用し得る。
(1) 実施例では、吸込口の一部を側取付部材で覆うようにしたが、吸込口を覆うことなく吹出口と吸込口との間に側取付部材を配設する構成を採用することができる。この構成では、側取付部材の前壁に設けた通孔を省略することができる。
(2) 側取付部材に配設される第2の支持部材の形状や配置は、支持する対象となる物品の種類に応じて設定すればよい。
(3) 実施例では、殺菌灯としてUVランプを用いたが、キセノンランプ等、紫外線を照射可能な各種のランプを用いることができる。
(4) 実施例では、収容室の側面側に熱交換室を画成し、吹出口と吸込口とを前後に離間して設けたが、熱交換室を、奥壁(隔壁)によって収容室の背面側に隔てて画成し、吹出口と吸込口とを左右に離間して設け、該吹出口と吸込口との間を遮る取付部材を、奥壁(隔壁)から収容室側に突出するように配設する構成を採用することができる。また、収容室の上方に、収容室の天井を構成する隔壁によって熱交換室を隔てて画成し、該隔壁に前後または左右に離間して吹出口と吸込口とを設け、該吹出口と吸込口との間を遮る取付部材を、隔壁から下方(収容室側)に突出するように配設する構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 本体,11 隔壁,12 収容室,13 熱交換室,16A,16B 物品
18 ヒータ(温風循環手段),19 ファン(温風循環手段),28 吹出口
29 吸込口,30 側取付部材(取付部材),30a 前壁(壁),30b 通孔
31 第2の支持部材