(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】皮膚プレトリートメント剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20241021BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241021BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241021BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241021BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/81
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021022867
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111722(JP,A)
【文献】特開2017-061432(JP,A)
【文献】特開2018-104399(JP,A)
【文献】特開2019-131547(JP,A)
【文献】特開2019-001723(JP,A)
【文献】特開2018-188423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)を含有
し、化粧水の使用の前に皮膚に塗布する皮膚プレトリートメント剤。
(A)グリセリン
(B)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド
(C)ホスホリルコリン基含有重合体
(D)高重合ポリエチレングリコール
(E)シロキクラゲ多糖体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水等の使用の前に皮膚に塗布することにより、化粧水等の浸透感を高め、肌なじみを良くする皮膚プレトリートメント剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア化粧料を塗布する前に使用することで経皮吸収を促進するとして、プレトリートメント剤は様々開発されている。これまで、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、スクワラン及びテトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットを配合することを特徴とする皮膚プレトリートメント剤において、後で使用する化粧水の経皮吸収性が高まること(引用文献1)や、脂肪酸またはその塩、タウリン誘導体またはその塩を含有することを特徴とする経皮吸収促進用プレトリートメント剤(引用文献2)等が開示されている。しかしながら、必ずしも使用感や浸透感において十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-111722号公報
【文献】特開2003-160465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、化粧水等の使用の前に皮膚に塗布することにより、化粧水等の浸透感を高め、肌なじみを良くする皮膚プレトリートメント剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(A)~(E)を含有する皮膚プレトリートメント剤を提供する。
(A)グリセリン
(B)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド
(C)ホスホリルコリン基含有重合体
(D)高重合ポリエチレングリコール
(E)シロキクラゲ多糖体
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚プレトリートメント剤は、化粧水等の使用の前に皮膚に塗布することにより、化粧水等の浸透感を高め、肌なじみを良くする効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
[グリセリン]
本発明の皮膚プレトリートメント剤に配合するグリセリンは、通常化粧料に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0009】
本発明においてグリセリンの配合量は、皮膚プレトリートメント剤全量に対して1~40質量%が好ましく、さらに1~25質量%が好ましい。
【0010】
[ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド]
本発明の皮膚プレトリートメント剤に配合するポリオキシアルキレンアルキルグルコシドは、例えば、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選択される1種又は2種のアルキレンオキサイドを、アルキルグルコシドに付加したものを使用することができ、その平均付加モル数としては、1~30モル程度が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドにおけるアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好ましい例である。ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドの好ましい具体例としては、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドが挙げられ、より具体的には、POE(10)メチルグルコシド、POE(20)メチルグルコシド、POP(10)メチルグルコシド及びPOP(20)メチルグルコシド等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンアルキルグルコシドとしては、肌なじみの良さの観点からPOE(10)メチルグルコシドを用いることが最も好ましい。なお、本明細書において、ポリオキシエチレンをPOEと略記し、ポリオキシプロピレンをPOPと略記し、かっこ内の数はその平均付加モル数である。市販品としては、マクビオブライドMG-10E、マクビオブライドMG-20E、マクビオブライドMG-10P(いずれも日油社製)、GLUCAME-10LFG、GLUCAMEP-10(いずれもLUBRIZOLADVANCEDMATERIALS社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明においてポリオキシアルキレンアルキルグルコシドの配合量は、皮膚プレトリートメント剤全量に対し、0.0001~20質量%が好ましく、さらに0.001~5質量%が好ましい。
【0012】
[ホスホリルコリン基含有重合体]
本発明の皮膚プレトリートメント剤に配合するホスホリルコリン基含有重合体は、化粧料に配合し得るものであればいずれのものも使用することができる。1種を単独で、又は2種以上を併用して組み合わせて使用してもよい。かかるホスホリルコリン基含有重合体としては、具体的には、化粧品成分表示名称として、ポリクオタニウム-51(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、ポリクオタニウム-65(2-メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体)、ポリクオタニウム-64(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体)、ポリクオタニウム-61(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体)等が挙げられる。本発明においては効果の点からポリクオタニウム-51を用いることが好ましい。市販品としては、LIPIDURE-PMB、LIPIDURE-B(いずれも日油社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明においてホスホリルコリン基含有重合体の配合量は、皮膚プレトリートメント剤全量に対し、0.00001~5質量%が好ましく、さらに0.00001~1質量%が好ましい。
【0014】
[高重合ポリエチレングリコール]
本発明の皮膚プレトリートメント剤に配合する高重合ポリエチレングリコールは、化粧品表示名称でPEG-100、PEG-135、PEG-150、PEG-180、PEG-200、PEG-220、PEG-240、PEG-350、PEG-400、PEG-450、PEG-800、PEG-2M、PEG-5M、PEG-7M、PEG-9M、PEG-14M、PEG-18M、PEG-20M、PEG-23M、PEG-25M、PEG-45M、PEG-65M、PEG-90M等が例示される。これらのなかでも、本発明の効果の点からPEG-150を用いることがより好ましい。市販品としてはPEG 6000、PEG 6000P(いずれも日油社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明において高重合ポリエチレングリコールの配合量は、皮膚プレトリートメント剤全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、さらに0.1~5質量%がより好ましい。
【0016】
[シロキクラゲ多糖体]
本発明の皮膚プレトリートメント剤に配合するシロキクラゲ多糖体は、シロキクラゲ科(Tremellaceae)に属するキノコから溶媒を用いて抽出される水溶性多糖類である。
【0017】
抽出溶媒としては水、エタノールなどの低級アルコール、1,3-ブチレングリコールやジプロピレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの溶媒は一種又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、水、熱水、又は水と任意の割合で混合可能な溶媒、例えば、エタノールや1,3-ブチレングリコールとの混液を用いるのが好ましく、熱水を用いるのがより好ましい。抽出方法は特に限定されないが、例えば、抽出のための溶媒とシロキクラゲを混合して加温抽出する方法が挙げられる。得られた抽出物はそのまま用いられるか、適宜濃縮したものや噴霧乾燥や凍結乾燥などによって粉末状に乾燥したものを用いることもできる。
【0018】
また、市販のものを用いることもでき、例えばTremoist-TP、Tremoist-SL(日本精化社製)、白キクラゲ多糖体-P(オリザ油化社製)、HyaCare Tremella(エボニックジャパン社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるシロキクラゲ多糖体の配合量は、皮膚プレトリートメント剤全量に対し、シロキクラゲ多糖体純分として0.00001~3質量%が好ましく、0.00005~2質量%がより好ましい。
【0020】
本発明の皮膚プレトリートメント剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、色素、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0021】
本発明の皮膚プレトリートメント剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0022】
本発明の皮膚プレトリートメント剤は定法により調製することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り配合量は質量%で示す。
【0024】
[使用感評価]
官能評価専門員3名が、実施例及び比較例にかかる皮膚プレトリートメント剤をそれぞれ独立して使用し、合議により下記の評価を行った。さらに、本発明の皮膚プレトリートメント剤を塗布した後、精製水を塗布したときの評価も同様に行った。
【0025】
[評価基準]浸透感・肌なじみ
非常に良い:◎
良い:〇
悪い:△
非常に悪い:×
【0026】
表1および表2に示す処方にて、本発明の実施例及び比較例となる皮膚プレトリートメント剤を常法により調製した。
【0027】
【0028】
【0029】
表1および表2に示した通り、本願発明の皮膚プレトリートメント剤は化粧水等の使用の前に皮膚に塗布することにより、化粧水等の浸透感を高め、肌なじみを良くする効果を発揮することが確認された。