(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】両面印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 85/00 20060101AFI20241021BHJP
B41J 3/60 20060101ALI20241021BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20241021BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B65H85/00
B41J3/60
B65H29/58 B
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2021023837
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020057172
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】佐田 和也
(72)【発明者】
【氏名】寺門 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡 恭祐
(72)【発明者】
【氏名】原 昌史
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-46303(JP,A)
【文献】特開2010-189145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 85/00
B41J 3/60
B65H 29/58
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、
前記印刷部に向かって一定の間隔で前記印刷媒体を送り込むレジスト部と、
前記印刷部によって一方の面に印刷処理が施された印刷済印刷媒体が送り込まれ、該印刷済印刷媒体を反転して排出する反転部と、
前記印刷媒体の搬送速度を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて、前記印刷媒体の搬送経路内における印刷媒体の枚数および前記印刷済印刷媒体を循環搬送して前記レジスト部に再給紙する際の両面搬送速度を算出し、該算出した前記両面搬送速度が、予め設定された範囲外である場合には、前記搬送経路内における印刷媒体の枚数および前記反転部の制御条件を変更して、前記両面搬送速度を再算出する両面印刷装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合に前記反転部の制御条件を変更して、前記両面搬送速度を再算出する請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合に、前記反転部に前記印刷済印刷媒体が送り込まれた時の反転部正転速度を下げて、前記両面搬送速度を再算出する請求項2記載の両面印刷装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記反転部正転速度を下げて算出した前記両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合、前記反転部における前記印刷媒体の停止時間を変更して、前記両面搬送速度を再算出する請求項3記載の両面印刷装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合に、前記反転部における前記印刷媒体の停止時間を変更して、前記両面搬送速度を再算出する請求項2記載の両面印刷装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズ、前記印刷速度および前記両面印刷装置に接続される後処理装置における後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて、前記印刷媒体の搬送経路内における印刷媒体の枚数および前記印刷済印刷媒体を循環搬送して前記レジスト部に再給紙する際の両面搬送速度を算出する請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズ、前記印刷速度および後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて算出した両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合に、前記反転部に前記印刷済印刷媒体が送り込まれた時の反転部正転速度を下げて、前記両面搬送速度を再算出する請求項6記載の両面印刷装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記反転部正転速度を下げて算出した前記両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合、前記後処理に要する時間に応じた紙間の範囲内で、前記反転部における前記印刷媒体の停止時間を変更して前記両面搬送速度を再算出する請求項7記載の両面印刷装置。
【請求項9】
前記制御部が、前記印刷媒体のサイズ、前記印刷速度および後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて算出した両面搬送速度が、前記印刷速度未満である場合に、前記後処理に要する時間に応じた紙間の範囲内で、前記反転部における前記印刷媒体の停止時間を変更して前記両面搬送速度を再算出する請求項6記載の両面印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に両面印刷を施す両面印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の面に印刷処理が施された印刷媒体を循環搬送し、反転部においてスイッチバックすることによって表裏反転し、他方の面に印刷処理を施す両面印刷装置が知られている。近年、印刷装置に対する高速印刷による生産性向上の要求が高まっており、片面印刷時のみならず、両面印刷時においても高速印刷による高生産性の実現が望まれている。
【0003】
片面印刷の際には印刷用紙を次々に給紙することができるため、印刷処理を行う印刷部が可能な単位時間当りの印刷枚数で印刷媒体を出力することができる。一方、両面印刷の際には表面印刷済の印刷媒体を循環搬送して反転させて裏面印刷を行なうため、循環搬送する際の両面搬送速度が印刷装置の生産性に影響を与えることになる。すなわち、両面搬送速度が適切でないと、印刷部による印刷処理が可能にもかかわらず印刷媒体が印刷部まで搬送されていない等の状況が生じて、片面印刷時と同等の生産性を担保することができない。
【0004】
ところで、両面印刷時には片面印刷時2回分の印刷処理が必要になる。このため、単位時間当りの両面印刷時の出力枚数が片面印刷時の出力枚数の1/2であれば、片面印刷時と同等の片面当りの生産性で両面印刷を行なえることになる。
【0005】
特許文献1においては、両面印刷時にも片面印刷時と同等の生産性を担保するため、印刷媒体のサイズ、用紙間隔(紙間)および印刷速度に基づいて、印刷媒体の循環枚数を求め、その循環枚数に基づいて、上記生産性を担保可能な両面搬送速度を決定する方法が提案されている。なお、本明細書において印刷速度とは、印刷媒体に対してインクを吐出するなどして印刷処理を施しているときの、印刷媒体の搬送速度である。
【0006】
また、特許文献1には、循環搬送の経路内での印刷媒体の衝突を避けるため、両面搬送速度が印刷速度未満である場合には、循環枚数を減らして両面搬送速度を再算出することが提案されている。なお、両面搬送速度が印刷速度未満の場合、印刷部から排出される印刷媒体の搬送速度より循環搬送される印刷媒体の両面搬送速度の方が遅いので、先に循環搬送される印刷媒体に、印刷部から排出された後続の印刷媒体の先端が衝突することになる。
【0007】
ただし、上述したように循環枚数を減らして両面搬送速度を速くした場合、その両面搬送速度が、搬送機構のモータの定格回転数を超える場合がある。したがって、特許文献1では、この際、印刷媒体の用紙間隔(紙間)を広げることによって、モータの定格回転数を超えない両面搬送速度を算出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法のように、用紙間隔を調整することによって両面搬送速度を下げるようにしたのでは、両面印刷の生産性が低下する問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送不良を生じさせないとともに生産性を維持できるような両面搬送速度を算出することができる両面印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の両面印刷装置は、印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、印刷部に向かって一定の間隔で印刷媒体を送り込むレジスト部と、印刷部によって一方の面に印刷処理が施された印刷済印刷媒体が送り込まれ、その印刷済印刷媒体を反転して排出する反転部と、印刷媒体の搬送速度を制御する制御部とを備え、制御部が、印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて、印刷媒体の搬送経路内における印刷媒体の枚数および印刷済印刷媒体を循環搬送してレジスト部に再給紙する際の両面搬送速度を算出し、その算出した両面搬送速度が、予め設定された範囲外である場合には、搬送経路内における印刷媒体の枚数および反転部の制御条件を変更して、両面搬送速度を再算出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の両面印刷装置によれば、印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて、印刷媒体の搬送経路内における印刷媒体の枚数および印刷済印刷媒体を循環搬送してレジスト部に再給紙する際の両面搬送速度を算出し、その算出した両面搬送速度が、予め設定された範囲外である場合には、搬送経路内における印刷媒体の枚数および反転部の制御条件を変更して、両面搬送速度を再算出するようにしたので、搬送不良を生じさせないとともに生産性を維持できるような両面搬送速度を算出することができる。なお、搬送経路内における印刷媒体の枚数および反転部の制御条件の変更が両面搬送速度に及ぼす作用については、後で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のインクジェット印刷装置の第1の実施形態の概略構成を示す図
【
図2】
図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【
図3】
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷媒体の搬送動作を説明するためのタイミングチャート
【
図4】両面印刷時の印刷スケジュールを説明するための図
【
図5】両面搬送速度が印刷速度よりも遅い場合の印刷媒体の衝突を説明するための図
【
図6】
図1に示すインクジェット印刷装置における両面搬送速度の調整方法を説明するためのフローチャート
【
図7】後処理に要する時間に応じた紙間を考慮した両面搬送速度の調整方法を説明するためのフローチャート
【
図8】本発明のインクジェット印刷装置の第2の実施形態の概略構成を示す図
【
図9】
図8に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【
図10】
図8に示すインクジェット印刷装置の印刷媒体の搬送動作を説明するためのタイミングチャート
【
図11】
図8に示すインクジェット印刷装置における両面搬送速度の調整方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のインクジェット印刷装置の第1の実施形態について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、両面印刷時における印刷媒体の搬送速度制御に特徴を有するものであるが、まずは、その全体構成について説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成を示す図である。なお、
図1に示す上下左右方向が、本実施形態のインクジェット印刷装置1の上下左右方向である。また、
図1の紙面手前側が前方向であり、紙面奥側が後ろ方向である。
【0015】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図1に示すように、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0016】
印刷部30および内部給紙部20は、金属または樹脂などから形成された筐体内に収容されて設置されている。また、サイド給紙部10および排紙部40は、筐体内に一部が収容され、筐体外に一部が突出する状態で設置されている。
【0017】
サイド給紙部10は、印刷媒体Pが載置される給紙台11と、給紙台11から最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して搬送する1次給紙部12と、1次給紙部12によって搬送された印刷媒体Pを所定のタイミングで印刷部30に送り出す2次給紙部14とを備えている。
【0018】
1次給紙部12は、給紙ローラおよび給紙ローラを駆動する給紙モータなどを備えている。
【0019】
2次給紙部14は、1次給紙部12から搬送された印刷媒体Pまたは内部給紙部20から搬送された印刷媒体Pの先端が当接して印刷媒体Pを一旦停止させることによって弛みを形成し、これにより斜行補正を行うレジストローラ14aと、レジストローラ14aを駆動するレジストモータなどを備えている。なお、本実施形態では、2次給紙部14が、本発明のレジスト部に相当する。
【0020】
内部給紙部20は、印刷媒体Pが載置される給紙台21aと、給紙台21aから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して搬送する1次給紙部22aと、印刷媒体Pが載置される給紙台21bと、給紙台21bから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して搬送する1次給紙部22bと、搬送ローラ23と、縦搬送ローラ15とを備えている。
【0021】
1次給紙部22a,22bは、給紙ローラおよび給紙ローラを駆動する給紙モータなどを備えている。
【0022】
1次給紙部22aによって給紙台21aから繰り出された印刷媒体Pおよび1次給紙部22bによって給紙台21bから繰り出された印刷媒体Pは、搬送ローラ23によって縦搬送ローラ15に向けて搬送される。
【0023】
縦搬送ローラ15は、レジストローラ14aと搬送ローラ23との間およびレジストローラ14aと後述する第2両面搬送ローラ45との間の搬送経路上に設けられている。
【0024】
したがって、縦搬送ローラ15には、1次給紙部22a,22bから印刷媒体Pが搬送されるとともに、さらに後述する反転部50からも印刷媒体Pが搬送される。そのため搬送方向における縦搬送ローラ15の手前には、内部給紙部20から給紙された印刷媒体Pの搬送経路と、反転部50から搬送された一方の面が印刷された印刷媒体Pの搬送経路とが合流する合流地点が存在する。
【0025】
本実施形態においては、レジストローラ14aを基準として、レジストローラ14aから印刷部30および後述する第1両面搬送ローラ44を経由して後述する反転ローラ52までの搬送経路を第1両面搬送経路DS1と呼ぶ。また、反転ローラ52から後述する第2両面搬送ローラ45および縦搬送ローラ15を経由してレジストローラ14aまでの搬送経路を第2両面搬送経路DS2と呼ぶ。また、後述する第2ベルトプラテンローラ34から排紙部40までの搬送経路を排紙搬送経路HSと呼び、反転部50において印刷媒体Pがスイッチバックする搬送経路を反転搬送経路SRと呼ぶ。
【0026】
また、第1両面搬送経路DS1、第2両面搬送経路DS2、排紙搬送経路HSおよび反転搬送経路SRなどの印刷媒体Pの搬送経路上には、印刷媒体Pを検出する用紙検出センサが多数設けられており、その用紙検出センサによって検出された検出信号に基づいて、後述する制御部60によって印刷媒体Pの搬送制御が行われる。特に、最下流の第1両面搬送ローラ44と反転ローラ52との間の第1両面搬送経路DS1上であって、第1両面搬送ローラ44の下流側近傍には、反転搬送センサRSが設けられている。反転搬送センサRSも、印刷媒体Pを検出するセンサである。
【0027】
印刷部30は、4つのラインヘッド31と、ラインヘッド31に対向して設けられた環状の搬送ベルト32と、第1ベルトプラテンローラ33と、第2ベルトプラテンローラ34とを備えている。
【0028】
搬送ベルト32は、環状の無端ベルトから形成され、多数の吸引孔が形成されている。2次給紙部14から給紙された印刷媒体Pは、環状の搬送ベルト32まで搬送される。そして、印刷媒体Pは、搬送ベルト32の搬送路面の裏面側に設置された吸引ファン(図示省略)の吸引によって搬送ベルト32上に吸着され、所定の搬送速度で搬送される。そして、印刷媒体Pが搬送ベルト32によって搬送されながら、ラインヘッド31から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、これにより印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0029】
第1ベルトプラテンローラ33と第2ベルトプラテンローラ34には、搬送ベルト32が掛け渡され、第1ベルトプラテンローラ33と第2ベルトプラテンローラ34とが、搬送モータ(図示省略)によって駆動することによって搬送ベルト32が
図1の時計回りに回転移動する。
【0030】
各ラインヘッド31は、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ベルト32によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。4つのラインヘッド31は、
図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド31は、それぞれCMYKのインクを吐出する。
【0031】
各ラインヘッド31は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(前後方向)に3つのインクジェットヘッドが等間隔で配置されたヘッド列を有する。各ラインヘッド31は、それぞれ2列のヘッド列を有し、その2列のヘッド列は、各ヘッド列のインクジェットヘッドが、所定のノズルの数だけオーバーラップするように千鳥状に配置されている。
【0032】
そして、各ラインヘッド31が有する2列のヘッド列のインクジェットヘッドによって印字することにより、1ラインの印刷画像が形成される。
【0033】
第1両面搬送経路DS1と排紙搬送経路HSとの合流地点には切り替え機構43が設けられている。切り替え機構43は、印刷部30で印刷処理が施された印刷媒体Pを排紙部40へ案内するか、または第1両面搬送経路DS1上へ循環させるかを切り替える。
【0034】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷媒体Pを排紙する3対の排紙ローラ42とを有する。そして、切り替え機構43により排紙搬送経路HSに案内された印刷媒体Pは、排紙ローラ42により排紙台41に排紙される。
【0035】
反転部50は、印刷媒体Pを反転させる反転搬送経路SRと、第1両面搬送経路DS1から反転搬送経路SRへ印刷媒体Pを搬送するとともに、その反転搬送経路SRに搬送された印刷媒体Pをスイッチバックして第2両面搬送経路DS2上に再び戻す反転ローラ52と、反転ローラ52を駆動する反転モータ(図示省略)などを備えている。
【0036】
切り替え機構43により第1両面搬送経路DS1に案内された印刷媒体Pは、第1両面搬送ローラ44によって第1両面搬送経路DS1から反転搬送経路SRに搬送される。そして、反転ローラ52によって印刷媒体Pが反転搬送経路SRから第2両面搬送経路DS2へ再び戻されることによって、表裏が反転した状態で第2両面搬送経路DS2上を搬送される。そして、表裏が反転された印刷媒体Pは、第2両面搬送経路DS2上に設けられた第2両面搬送ローラ45によって縦搬送ローラ15に向けて搬送される。
【0037】
縦搬送ローラ15によって搬送された印刷媒体Pは、再び2次給紙部14のレジストローラ14aまで搬送され、レジストローラ14aによって所定のタイミングで再び印刷部30に向けて送り出される。そして、印刷部30によって印刷媒体Pの裏面に印刷処理が施される。
【0038】
印刷部30によって裏面に印刷処理が施された印刷媒体Pは、切り替え機構43により排紙搬送経路HSに案内され、排紙ローラ42により排紙台41に排紙される。
【0039】
図2は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、制御部60と、操作パネル70とを備えている。
【0040】
制御部60は、インクジェット印刷装置1全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。制御部60は、半導体メモリに予め記憶されたプログラムをCPUに実行させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。
【0041】
また、制御部60は、コンピュータなどから出力された画像データまたはスキャナなどによって読み取られた画像データを取得し、その画像データに基づいて、印刷部30を制御することによって印刷処理を施す。
【0042】
また、制御部60は、印刷媒体Pのサイズおよび印刷速度などの印刷条件を取得し、その印刷条件に基づいて、後述する印刷媒体Pの両面搬送速度の算出、印刷媒体Pの搬送経路用紙枚数の算出などの処理を行なう。
【0043】
操作パネル70は、液晶ディスプレイを有するタッチパネルから構成されるものであり、種々の設定入力画面を表示し、印刷開始の指示入力や印刷条件の設定入力などの種々の設定入力を受け付ける。制御部60によって取得される印刷媒体Pのサイズは、たとえば操作パネル70で設定入力される。また、印刷媒体Pのサイズは、サイド給紙部10および内部給紙部20の給紙台に設置したセンサによって検知するようにしてもよい。
【0044】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の印刷媒体Pの搬送動作について、
図3に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。なお、
図3の横軸が時間であり、縦軸が印刷媒体Pの搬送速度である。また、ここでは両面印刷時の搬送動作について説明する。
【0045】
まず、サイド給紙部10または内部給紙部20によって搬送された印刷媒体Pの先端がレジストローラ14aに当接し、弛みが形成された状態で一旦停止する。
【0046】
そして、印刷媒体Pは、時刻t1のタイミングでレジストローラ14aによって印刷部30に向けて搬送される。この際、2次給紙部14は、加速度α1で加速した後、搬送速度V1で印刷媒体Pを搬送する。
【0047】
そして、2次給紙部14は、その後、減速度α2で減速し、搬送速度V
2になった時刻t2において印刷媒体Pを搬送ベルト32に引き渡す。なお、搬送速度V
1と搬送速度V
2との関係は、
図3に示すように、V
1>V
2である。これにより紙間を詰めることができる。
【0048】
搬送ベルト32も搬送速度V2で駆動しており、2次給紙部14から受け取った印刷媒体Pを搬送速度V2で定速搬送する。そして、搬送速度V2で搬送される印刷媒体Pの表面に対して、印刷部30によって印刷処理が施される。搬送ベルト32から送り出された印刷媒体Pは、その後、第1両面搬送ローラ44および反転ローラ52により、引き続き搬送速度V2で等速搬送される。
【0049】
そして、印刷媒体Pの後端が、反転搬送センサRSに達すると(時刻t3)、反転ローラ52は、加速度α3で加速し、搬送速度V3で印刷媒体Pを定速搬送する。反転ローラ52による搬送によって、印刷媒体Pは、反転搬送経路SRに案内される。
【0050】
反転搬送経路SRに印刷媒体Pが案内された後、印刷媒体Pをスイッチバックで停止させるために、反転ローラ52は、減速度α4で減速する。そして、印刷媒体Pの後端が、反転ローラ52から距離Ls(反転時後端残し量)だけ離れた位置まで到達した時点で反転ローラ52は停止する(時刻t4)。
【0051】
反転時後端残し量Lsは、印刷媒体Pが反転可能なように、反転搬送経路SRに十分引き込まれ、かつ、反転ローラ52から外れずに印刷媒体Pを双方向に搬送可能な距離として予め設定されている。このため、反転ローラ52の減速開始位置は、搬送速度V3から減速度α4で減速したときに、印刷媒体Pの後端が反転ローラ52から距離Lsの位置で停止できる位置となる。
【0052】
そして、反転ローラ52による印刷媒体Pの搬送を一旦停止した時刻t4から反転部ウェイト時間だけ経過した時刻t5から反転ローラ52が逆方向への回転を再開し、印刷媒体Pは、スイッチバックして搬送される。時刻t4から時刻t5までの反転部ウェイト時間SBwaitは、最初は初期値に設定されているが、後述する両面搬送速度の算出の際に、必要に応じて変更される。
【0053】
そして、印刷媒体Pの反転が開始された後、印刷媒体Pは、反転ローラ52および第2両面搬送ローラ45によって加速度α3で加速して搬送される。印刷媒体Pが、搬送速度V4まで到達すると、第2両面搬送ローラ45および縦搬送ローラ15によってそのまま定速搬送される。
【0054】
その後、レジストローラ14aで印刷媒体Pを停止させるために、第2両面搬送ローラ45および縦搬送ローラ15は、減速度α5で減速する。なお、本実施形態では、減速度α5で減速する途中で、印刷媒体Pを搬送速度V5で定速搬送している。このように、印刷媒体Pの先端が2次給紙部14のレジストローラ14aに当接する前に、一旦定速搬送することによって、印刷媒体Pがレジストローラ14aに衝突する速度を遅くすることができ、衝突音を小さくすることができる。ただし、必ずしもこの等速搬送期間を設けなくてもよい。
【0055】
また、上述した第2両面搬送ローラ45および縦搬送ローラ15の減速開始位置は、搬送速度V4から減速度α5で減速したときに、印刷媒体Pの先端が2次給紙部14で停止できる位置であればよい。ただし、2次給紙部14では、上述したように印刷媒体Pが一旦当接して斜行補正されるため、弛みを持たせて停止する。この斜行補正の際に形成される弛み量は、予め設定される。
【0056】
そして、第2両面搬送ローラ45および縦搬送ローラ15による印刷媒体Pの搬送が停止した時刻t6から予め設定されたレジスト起動待ち時間を経過した時刻t7からレジストローラ14aが回転し、印刷媒体Pが印刷部30に向けて送り出される。
【0057】
そして、
図3に示す時刻t1からの動作が繰り返して行われ、搬送ベルト32により搬送速度V
2で定速搬送されながらラインヘッド31により裏面が印刷される。
【0058】
裏面が印刷された印刷媒体Pは、切り替え機構43により排紙台41側の排紙搬送経路HSに案内され、排紙ローラ42により排紙に適した搬送速度で排紙される。
【0059】
次に、両面印刷時の印刷スケジュールについて説明する。
【0060】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、先行する印刷媒体Pが排紙される前に、後続の印刷媒体Pを給紙可能である。このため、たとえば1枚目の印刷媒体Pの表面を印刷した後、その1枚目の印刷媒体Pが循環搬送で反転されてその裏面に印刷される前に、2枚目の印刷媒体Pを給紙して2枚目の表面を印刷することができる。したがって、複数枚の印刷媒体が循環可能な場合、両面印刷における印刷媒体Pの各面の印刷をどのような順序で行なうかのスケジューリングが必要になる。
【0061】
複数枚の印刷媒体Pが循環可能な場合の印刷順序については、新たに給紙された印刷媒体Pの表面と、第1両面搬送経路DS1および第2両面搬送経路DS2を循環搬送された印刷媒体Pの裏面とを交互に印刷することで、生産性を高めることが行なわれている。
【0062】
たとえば2枚の印刷媒体Pを循環させる場合には、
図4(a)に示すように、1枚目の表面を印刷してから、1枚分の印刷時間を空けて2枚目の表面を印刷し、つぎに、循環搬送されてきた1枚目の裏面印刷を行なう。なお、本図では、K枚目の表面印刷を白地に黒文字のKで表し、K枚目の裏面印刷を黒地に白文字のKで表している。
【0063】
そして、1枚目の裏面印刷の後、3枚目の表面を印刷して、次いで、循環搬送されてきた2枚目の裏面印刷を行なう。その後は、同様にして新たに給紙された印刷媒体Pの表面と循環搬送された印刷媒体Pの裏面とを交互に印刷していく。ただし、印刷の終わりにおいて新たな印刷媒体Pの給紙が完了すると、循環搬送された印刷媒体の裏面印刷が1枚分の印刷時間を空けて2回続けて行なわれて印刷が終了する。なお、本実施形態では、所定の印刷媒体Pの表面の印刷を終了してからその印刷媒体Pの裏面を印刷するまでの間に循環搬送されている印刷媒体Pの枚数を搬送経路用紙枚数Nとし、
図4(a)の場合、N=2である。
【0064】
ところで、インクジェット印刷装置1が片面印刷を行う場合、
図4(b)に示すように、1枚目の印刷開始から2枚目の印刷開始までの時間がdtであるとする。片面印刷の際は、印刷媒体Pを次々に給紙することができるため、インクジェット印刷装置1の印刷部30の最大の生産性で印刷を実行することができる。すなわち、要求される印字品質等を保てる範囲で、印刷部30が印刷可能な印刷速度と紙間(用紙間隔)とで印刷媒体を搬送すればよい。
【0065】
これに対し、インクジェット印刷装置1が両面印刷を行う場合、片面印刷と同等の生産性、すなわち、片面当り印刷時間dtで両面印刷を行なうことができれば、インクジェット印刷装置1の最大の生産性で両面印刷を行なうことになる。
【0066】
この生産性を実現するためには、N=2のときは、
図4(a)に示すように、例えば、時刻t11で表面の印刷を開始した1枚目の印刷媒体Pは、循環して時刻t14で裏面の印刷を開始することになるので、3×dtの間に印刷媒体Pを循環させればよい。
【0067】
しかしながら、dtは、印刷媒体Pのサイズ(印刷媒体Pの搬送方向の長さ)と紙間と印刷速度によって決定するため、印刷速度が速い場合には、印刷媒体Pのサイズによっては3×dtが短くなる。そして、3×dtの時間が経過するまでの間に、1枚目の印刷媒体Pを循環搬送させるためには、第2両面搬送ローラ45を駆動するモータなどが定格回転数を超えてしまうことがあった。このような場合、
図4(c)に示すように給紙間隔を広くすれば、3×dtの時間が長くなるので両面印刷を行うことができるが、生産性が低下する問題があった。
【0068】
そこで、本実施形態においては、両面印刷時の生産性を担保し、かつ第2両面搬送ローラ45のモータなどが定格回転数を超えることがないようにする。具体的には、本実施形態は、循環搬送における搬送経路用紙枚数Nおよび反転部50の制御条件を変更して、両面搬送速度を調整する。第1の実施形態における両面搬送速度とは、
図3に示す搬送速度V
4であり、すなわち反転ローラ52によって印刷媒体Pを逆転搬送する際における定速搬送の搬送速度である。
【0069】
なお、搬送経路用紙枚数Nを増やした場合、第1両面搬送経路DS1および第2両面搬送経路DS2に存在する印刷媒体Pの枚数を増やすことができるので、上述した両面搬送速度V
4を遅くすることができる。たとえば搬送経路用紙枚数N=2の場合の両面印刷時の印刷スケジュールは、上述したように
図4(a)に示すような印刷スケジュールとなるが、搬送経路用紙枚数N=3の場合の両面印刷時の印刷スケジュールは、
図4(d)に示すような印刷スケジュールとなる。すなわち、5×dtの間に印刷媒体Pを循環搬送させればよいので、両面搬送速度V
4を遅くすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、反転部50の制御条件として、反転ローラ52によって反転搬送経路SRに印刷媒体Pを正転搬送する際における搬送速度V3と、上述した反転部ウェイト時間SBwaitとを必要に応じて調整する。
【0071】
具体的には、上述したように搬送経路用紙枚数Nを増やした場合、両面搬送速度V4を遅くすることができるが、その結果、再算出した両面搬送速度V4が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなる場合がある。両面搬送速度V4が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなった場合、不都合が生じる。具体的には、たとえば内部給紙部20から印刷媒体Pの給紙を行う場合、内部給紙部20からレジストローラ14aに向けて、印刷速度(搬送速度V2)と同じ速度で給紙が行われる。そして、内部給紙部20からの印刷媒体Pの給紙間において、第2両面搬送経路DS2から印刷媒体Pを供給し、レジストローラ14aに対して常に一定の間隔で印刷媒体Pが到達するように制御される。
【0072】
このような制御において、両面搬送速度V
4が印刷速度(搬送速度V
2)よりも遅い場合、縦搬送ローラ15とレジストローラ14a間の搬送速度も遅くなる。一方で、レジストローラ14aに印刷媒体Pが到達する時刻は変わらないようにする必要があるため、早めのタイミングでレジストローラ14aに向けて搬送することになる。このように印刷媒体Pの搬送制御を行った場合、
図5に示すように、内部給紙部20から給紙された印刷媒体P1の後端と、第2両面搬送経路DS2から供給された印刷媒体P2の先端とが衝突する場合がある。
【0073】
そこで、このような印刷媒体Pの衝突を避けるため、両面搬送速度V4が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなった場合には、搬送速度V3を遅くすることによって、その分、両面搬送速度V4を速くできるようにする。また、搬送速度V3を下げても両面搬送速度V4が、印刷速度(搬送速度V2)以上とならなかった場合には、反転部ウェイト時間SBwaitを長くすることによって、その分、両面搬送速度V4を速くできるようにする。
【0074】
すなわち、本実施形態では、両面印刷時の生産性を担保し、かつ第2両面搬送ローラ45のモータなどが定格回転数を超えることがないようにし、さらに両面搬送速度が印刷速度以上となるように搬送経路用紙枚数Nおよび反転部50の制御条件を変更して、両面搬送速度を調整する。
【0075】
ここで、上述した両面搬送速度V
4の調整方法の具体的な説明の前に、両面搬送速度V
4の算出方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3の上部に示す1~5の数字は、矢印の範囲の各区間を示す番号であり、1a~1cは、区間1をさらに区分した区間を示し、3a~3dは、区間3をさらに区分した区間を示し、4a~4eは、区間4をさらに区分した区間を示している。そして、以下の説明で、Tの添え字として区間の番号が付されている場合には、その番号の区間における印刷媒体Pの搬送時間を意味し(区間5を除く)、Lの添え字として区間の番号が付されている場合には、その番号の区間における印刷媒体Pの搬送距離を意味するものとする。
【0076】
まず、印刷媒体Pの2次給紙部14による搬送を開始した時刻t1からその印刷媒体Pが循環搬送されて再び2次給紙部14によって再給紙されるまでの両面搬送時間TINVは、下式(1)によって算出される。
TINV=T1+T2+T3+T4+T5 ・・・(1)
【0077】
次に、
図3に示す区間1における搬送時間T
1は、下式(2)によって算出される。なお、L
1は、2次給紙部14のレジストローラ14aから第1ベルトプラテンローラ33までの距離である。
【数1】
【0078】
また、
図3に示す区間2における搬送時間T
2は、下式(3)によって算出される。なお、L
2は、第1ベルトプラテンローラ33から反転搬送センサRSまでの距離+印刷媒体Pの長さである。
【数2】
【0079】
また、
図3に示す区間3における搬送時間T
3は、下式(4)によって算出される。なお、L
3は、反転搬送センサRSから反転ローラ52までの距離-反転時後端残し量Lsである。また、T
3d=SB
waitは、反転搬送経路SRにおいて印刷媒体Pを一旦停止する時間であり、最初は初期値が設定されている。
【数3】
【0080】
また、
図3に示す区間4における搬送時間T
4は、下式(5)によって算出される。なお、L
4は、反転ローラ52からレジストローラまでの距離-反転時後端残し量Ls+弛み量である。
【数4】
【0081】
また、
図3に示す区間5における時間T
5は、レジストローラが起動するまでの待ち時間である。
【0082】
そして、上式(5)で示されるT
4を整理すると、下式(6)で表すことができる。
【数5】
【0083】
そして、上式(1)に対して、上式(6)で表されるT
4を代入し、T
INVを右辺に移動させると、下式(7)で表すことができる。
【数6】
【0084】
上式(7)の両辺にV
4を乗算することによって、下式(8)のようなV
4の2次方程式を求めることができる。式(8)の2次方程式を解くことによって、両面搬送速度V
4は、下式(9)で表すことができる。
【数7】
【数8】
【0085】
なお、上式(9)におけるT
INVは、片面印刷と同等の生産率を担保するためには、
図4(a)のN=2のときの両面搬送時間が3×dtを満たす必要があるように、下式(10)を満たす必要がある。
T
INV={(印刷媒体Pの長さ/印刷速度)+紙間}(2×経路内枚数N-1)
・・・(10)
【0086】
次に、上述した両面搬送速度V
4の調整方法について、
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0087】
まず、制御部60は、ユーザによって設定された印刷条件(印刷媒体Pのサイズ(長さ)および印刷速度など)に基づいて、循環搬送における搬送経路用紙枚数Nを仮決めする(S10)。具体的には、制御部60は、下式(11)のように、上述したL1,L2,L3,L4を加算して全体搬送経路長Laを算出する。
La=L1+L2+L3+L4・・・(11)
【0088】
そして、両面搬送の場合、表面印刷を行う印刷媒体Pと、裏面の印刷を行う印刷媒体Pが交互に搬送されているため、見かけ上、印刷媒体Pの長さと紙間を加算した長さの印刷媒体が2枚循環していると考え、搬送経路用紙枚数Nを、下式(12)によって仮算出する。このように搬送経路用紙枚数Nを仮算出するのは、後で、搬送経路用紙枚数Nを増加させる場合があるからである。なお、物理的には、下式(12)によって算出される搬送経路用紙枚数Nの2倍の枚数が、最大搬送経路用紙枚数ということになる。
搬送経路用紙枚数N=全体搬送経路長さLa/{2×(印刷媒体Pの長さ+紙間)}
・・(12)
【0089】
そして、制御部60は、搬送経路用紙枚数Nを仮算出すると、仮算出された搬送経路用紙枚数Nを上式(9)に代入して両面搬送速度V4を算出する(S12)。
【0090】
制御部60は、S12で算出した両面搬送速度V4が、上式(9)によって算出可能か否かを確認する(S14)。両面搬送速度V4は、上式(8)に示す2次式を解くことによって算出されるが、その解が虚数となる場合には、制御部60は、両面搬送速度V4を算出不可能と判定する(S14,NO)。なお、両面搬送速度V4が算出不可能な場合とは、S10で仮算出された搬送経路用紙枚数Nでは、循環搬送された印刷媒体Pが、レジストローラ14aに対して予め設定されたタイミング(印刷媒体Pのサイズと印刷速度と紙間で決定されるタイミング)で到着不可能な場合である。
【0091】
したがって、制御部60は、両面搬送速度V4を算出不可能と判定した場合には(S14,NO)、搬送経路用紙枚数NをN+1に変更し(S16)、再び、その搬送経路用紙枚数N+1を上式(9)に代入して両面搬送速度V4を算出する(S12)。制御部60は、両面搬送速度V4が算出可能となるまで、搬送経路用紙枚数Nの増加(S16)と両面搬送速度V4の算出(S12)を繰り返して行う。なお、S16において、搬送経路用紙枚数Nを増加させることは、両面搬送速度V4を算出可能とするためであるとともに、後のS18での判定において、両面搬送速度V4を最大両面搬送速度未満とするためでもある。
【0092】
そして、制御部60は、S14において両面搬送速度V4を算出可能と判定した場合には(S14,YES)、その算出した両面搬送速度V4と予め設定された最大両面搬送速度とを比較する(S18)。最大両面搬送速度とは、第2両面搬送ローラ45など両面搬送速度V4で印刷媒体Pを搬送するローラを駆動するモータの定格回転数の上限値から算出される値である。
【0093】
制御部60は、S18において両面搬送速度V4が最大両面搬送速度以下である場合には(S18,NO)、両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上であるか否かを判定する(S20)。ここで、S20の判定を行う理由については、上述したとおりである。
【0094】
そして、制御部60は、両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上である場合には(S20,YES)、反転部駆動マージンを算出する(S22)。反転部駆動マージンとは、反転部50において印刷媒体Pが反転している間に、次に反転部50に向けて搬送されてきた印刷媒体Pがぶつからないように設定される。反転部駆動マージンの算出方法については、後で述べる。
【0095】
次いで、制御部60は、反転部駆動マージンが20ms以下であるか否かを判定する(S24)。そして、制御部60は、反転部駆動マージンが20msを超える場合には(S24,NO)、両面搬送速度V4は適切であるとして調整処理を終了する。
【0096】
一方、制御部60は、S20において、両面搬送速度V
4が印刷速度(搬送速度V
2)未満である場合には(S20,NO)、
図3に示す搬送速度V
3が、印刷速度(搬送速度V
2)+100mm/s以上であるか否かを確認する(S26)。搬送速度V3は、反転部50に印刷済の印刷媒体Pが送り込まれる際の搬送速度であり、本発明の反転部正転速度である。また、搬送速度V
3が初期値の場合には、印刷速度(搬送速度V
2)+100mm/s以上に設定されている。
【0097】
そして、制御部60は、搬送速度V3が、印刷速度(搬送速度V2)+100mm/s以上である場合には、その搬送速度V3-100mm/sを算出し、すなわち搬送速度V3を100mm/sだけ下げて(S28)、S12に戻り、上式(9)に減速後の搬送速度V3を代入して両面搬送速度V4を再算出する。そして、制御部60は、S14以降の処理を再び行う。
【0098】
そして、制御部60は、搬送速度V3を下げながら両面搬送速度V4の再算出を行った場合でも、S20において、両面搬送速度V4が印刷速度未満のままのであり、その結果、S26において、搬送速度V3が、印刷速度(搬送速度V2)+100mm/s未満となった場合には(S26,NO)、搬送速度V3と印刷速度(搬送速度V2)とが異なるか否かを確認する(S30)。制御部60は、搬送速度V3と印刷速度(搬送速度V2)とが異なる場合には(S30,YES)、搬送速度V3を印刷速度(搬送速度V2)と同じ大きさに設定する(S32)。そして、制御部60は、S12に戻り、上式(9)に印刷速度(搬送速度V2)と同じ大きさの搬送速度V3を代入して両面搬送速度V4を再算出する。そして、制御部60は、S14以降の処理を再び行う。
【0099】
そして、その結果、再び、S18,S20およびS26の判定結果がNOとなった場合、もしくはS28で搬送速度V
3を下げた結果、S30において搬送速度V
3と印刷速度(搬送速度V
2)が同じになった場合には、制御部60は、S30において搬送速度V
3と印刷速度(搬送速度V
2)とが同じであると判定する(S30,NO)。この場合、搬送速度V
3の減速による両面搬送速度V
4の調整は不可能であるので、反転部50のウェイト時間である
図3に示すT
3d=SB
waitを1msだけ長くする(S34)。そして、制御部60は、S12に戻り、上式(9)に対して、T
3d=SB
waitを1ms加算した後のT
3を代入して両面搬送速度V
4を再算出する。そして、制御部60は、S14以降の処理を再び行う。
【0100】
そして、制御部60は、S20において、両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上になるまで、上述した処理を繰り返し行うが、S18において、両面搬送速度V4が最大両面搬送速度を超えると判定した場合(S18,YES)、またはS24において、反転部駆動マージンが20ms以下であると判定した場合(S24,YES)には、上述した搬送速度V3および反転部ウェイト時間の調整だけでは、両面搬送速度V4を適切に設定することできないので、生産性を落とすことになるが、紙間を1msだけ加算する(S36)。
【0101】
そして、制御部60は、S12に戻り、上式(9)に対して、紙間を1ms加算したTINVを代入して両面搬送速度V4を再算出する。そして、制御部60は、S14以降の処理を再び行う。制御部60は、S20において両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定されるまで、S36における紙間の加算を繰り返して行う。
【0102】
そして、制御部60は、S20において両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定された時点において処理を終了し、この時点で算出されている両面搬送速度V4、搬送速度V3、反転部ウェイト時間T3d=SBwaitを用いて両面搬送制御を行う。
【0103】
上記実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、印刷媒体Pのサイズおよび印刷速度に基づいて、印刷媒体Pの搬送経路用紙枚数Nおよび両面搬送速度V4を算出し、その算出した両面搬送速度V4が、最大両面搬送速度を超える場合および印刷速度未満になる場合には、搬送経路用紙枚数Nおよび反転部50の制御条件を変更して、両面搬送速度を再算出するようにしたので、両面印刷の生産性を低下させることなく、かつ予め設定された範囲内(最大両面搬送速度未満、印刷速度以上)の両面搬送速度V4を算出することができる。
【0104】
また、印刷媒体Pのサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度V
4が、印刷速度未満である場合には(
図6のS20,NO)、反転部正転速度を下げて(
図6のS28)、両面搬送速度を再算出するようにしたので、上述したように反転部正転速度を下げた分、両面搬送速度V
4を速くすることができるので、
図5で示したような印刷媒体P1と印刷媒体P2の衝突を回避することができる。
【0105】
また、反転部正転速度を下げて算出した両面搬送速度V
4が、反転部正転速度と同じである場合(
図6のS30,NO)、反転部50における印刷媒体Pの反転部ウェイト時間T
3d=SB
waitを長くして(
図6のS34)、両面搬送速度V
4を再算出するようにしたので、反転部正転速度を下げることができない場合でも、反転部ウェイト時間を長くした分、両面搬送速度V
4を速くすることができるので、
図5で示したような印刷媒体P1と印刷媒体P2の衝突を回避することができる。
【0106】
すなわち、本実施形態のインクジェット印刷装置1では、上述したように搬送経路用紙枚数Nの追加並びに反転部50の反転部正転速度の減速および反転部ウェイト時間の変更を実施することによって、紙間を広げることなく両面搬送速度V
4を最大両面搬送速度未満、かつ印刷速度以上とすることができるので、
図5で示したような印刷媒体P1と印刷媒体P2の衝突を回避することができる。
【0107】
さらに、本実施形態では、反転部駆動マージンも確保するようにしたので、反転部50における印刷媒体Pの衝突も回避することができる。
【0108】
したがって、本実施形態のインクジェット印刷装置1は、搬送不良を生じさせないとともに生産性を維持することができる。
【0109】
生産性については、たとえば片面印刷の紙間を100msとした場合、従来の方法では両面印刷時に200msまで紙間を広げなければならなかったが、本実施形態のインクジェット印刷装置によれば、搬送経路用紙枚数Nと反転部50の制御条件に変更によって紙間を100msに維持することができる。
【0110】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1では、上述したように反転部正転速度(搬送速度V3)と反転部ウェイト時間を調整するようにしているが、反転部正転速度を反転部ウェイト時間よりも先に調整するようにしている。このように反転部正転速度の減速を優先的に行うことによって、加速時間を短くすることができるので、印刷媒体Pの搬送を安定化させることができる。また、反転部正転速度の低減によって、振動および消費電力を抑制できる。
【0111】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1では、両面搬送速度V4を反転部正転速度(搬送速度V3)よりも先に調整するようにしている。これは、反転部正転速度での搬送距離よりも両面搬送速度V4での搬送距離の方が長いからであり、これにより調整の幅を広くすることができる。
【0112】
次に、上述した反転部駆動マージンの算出方法について説明する。反転部駆動マージンとは、上述したように反転部50において印刷媒体Pが反転している間に、次に反転部50に向けて搬送されてきた印刷媒体Pがぶつからないように設定される。
【0113】
まず、印刷部30から搬送された印刷媒体Pが、反転部50に突入する間隔(用紙反転突入間隔)を算出する。印刷部30で印刷にかかる時間は、印刷媒体Pの長さを印刷速度で割ることで算出でき、この印刷にかかる時間と紙間を足すことによって、印刷部30の給紙間隔を算出することができる。
【0114】
そして、反転部50には印刷された印刷媒体Pが2枚に1枚の間隔で入るため、反転部50への用紙反転突入間隔は、印刷部30の給紙間隔の2倍の時間となる。したがって、用紙反転突入間隔Tnpは、下式(13)によって算出される。
Tnp={(印刷媒体Pの長さ/印刷速度)+紙間}×2 ・・・(13)
【0115】
一方、反転部50の反転ローラ52の動作時間TSBは、TSB=T3+T4となる。
【0116】
そして、印刷媒体Pが反転している間に、次の印刷媒体Pがぶつからないようにするためには、T
SBとTnpの関係は、T
SB<T
npである必要がある。したがって、反転部駆動マージンは、T
np-T
SBで算出することができる。
図6に示すS24では、T
np-T
SBが、20ms以下であるか否かを判定している。
【0117】
次に、上記第1の実施形態においては、
図6のフローチャートにしたがって両面搬送速度V
4を調整する際、上式(9)および上式(10)に基づいて両面搬送速度V
4を算出する場合に、予め設定された紙間を用いているが、この紙間は、たとえばインクジェット印刷装置1に対して後処理装置が接続される場合には、その後処理装置において実施される後処理が要する時間を考慮する必要がある。
【0118】
具体的には、たとえば後処理装置において、インクジェット印刷装置1から排出された印刷媒体P毎に、後処理として整合処理を施す場合には、前に排出された印刷媒体Pの整合処理が終了した後に次の印刷媒体Pが排出されるように紙間を調整する必要がある。
【0119】
そこで、以下、上述した後処理に要する時間に応じた紙間を考慮して、両面搬送速度V
4を調整する方法について、
図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、
図6に示したフローチャートの処理とは異なる点を中心に説明する。
【0120】
まず、制御部60は、上記実施形態と同様に、ユーザによって設定された印刷条件(印刷媒体Pのサイズ(長さ)および印刷速度など)に基づいて、循環搬送における搬送経路用紙枚数Nを仮決めする(S40)。
【0121】
具体的には、上式(12)に基づいて、搬送経路用紙枚数Nを仮算出するが、この際、紙間として、後処理に要する時間に応じた最短の紙間が代入される。後処理に要する時間に応じた紙間については、インクジェット印刷装置1に予め設定するようにしてもよいし、インクジェット印刷装置1に接続された後処理装置から後処理に要する時間を取得し、その取得した後処理に要する時間と印刷媒体Pのサイズと印刷速度に基づいて算出するようにしてもよい。
【0122】
そして、制御部60は、上記実施形態と同様に、仮算出された搬送経路用紙枚数Nを上式(9)および上式(10)に代入して両面搬送速度V
4を算出するが(S42)、この際、式(10)に代入する紙間としては、上述した後処理に要する時間に応じた最短の紙間が用いられる。そして、その後のS44~S60までの処理については、
図6に示すフローチャートのS14~S30の処理と同様の処理を行う。
【0123】
そして、制御部60は、搬送速度V3(反転部正転速度)を下げながら両面搬送速度V4の再算出を行った場合でも、S50において、両面搬送速度V4が印刷速度未満のままであり、印刷速度との関係で搬送速度V3をそれ以上下げることができない場合には、すなわちS60において、搬送速度V3と印刷速度が同じであると判定された場合には(S60,NO)、上記実施形態のように反転部50のウェイト時間を調整するステップに進む。
【0124】
そして、制御部60は、この際、反転部50のウェイト時間SBwaitが、上述した後処理に要する時間に応じた最短の紙間以下であるか否かを確認する(S64)。なお、以下、後処理に要する時間に応じた最短の紙間を、後処理要求最短紙間という。このようにウェイト時間SBwaitと後処理要求最短紙間を比較するのは、もしウェイト時間SBwaitが後処理要求最短紙間よりも長い場合には、反転部50において一旦停止している印刷媒体Pに対して、次の印刷媒体Pが衝突してしまうからである。
【0125】
そして、S64において、ウェイト時間SBwaitが、後処理要求最短紙間以下であると判定された場合には、制御部60は、ウェイト時間SBwaitを1msだけ長くする(S66)。そして、制御部60は、S42に戻り、上式(9)に対して、T3d=SBwaitを1ms加算した後のT3を代入して両面搬送速度V4を再算出する。そして、制御部60は、S44以降の処理を再び行う。
【0126】
そして、制御部60は、S50において、両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上になるまで、上述した処理を繰り返し行うが、S64においてウェイト時間SBwaitが、後処理要求最短紙間よりも長いと判定された場合には、後処理要求最短紙間が、200ms以下であるか否かを確認する(S68)。なお、200msは、インクジェット印刷装置1において許容できる最長の紙間であり、予め設定された値である。この値は、インクジェット印刷装置1の構成によって異なるものであり、200msに限定される値ではない。
【0127】
そして、制御部60は、S68において、後処理要求最短紙間が、200ms以下であると判定された場合には(S68,YES)、上述した搬送速度V3および反転部ウェイト時間の調整だけでは、両面搬送速度V4を適切に設定することできないので、生産性を落とすことになるが、紙間を1msだけ加算する(S72)。
【0128】
そして、制御部60は、S42に戻り、式(9)および上式(10)に基づいて両面搬送速度V4を算出するが(S42)、この際、式(10)に代入する紙間としては、後処理要求最短紙間が用いられる。次いで、制御部60は、S44以降の処理を再び行う。
【0129】
制御部60は、S50において両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定されるまで、S72における紙間の加算を繰り返して行う。
【0130】
一方、制御部60は、S72における紙間の加算を繰り返した結果、両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定される前に、S68において、加算後の紙間が、200msを超えた場合には(S68,NO)、搬送経路用紙枚数NをN+1に変更し(S70)、再び、その搬送経路用紙枚数N+1を上式(10)に代入し、上式(9)に基づいて両面搬送速度V4を算出する(S42)。そして、制御部60は、S44以降の処理を再び行う。
【0131】
なお、制御部60は、S48において、S44において算出された両面搬送速度V4が最大両面搬送速度を超えると判定した場合(S48,YES)、またはS54において、反転部駆動マージンが20ms以下であると判定した場合(S54,YES)にも、上述した搬送速度V3および反転部ウェイト時間の調整だけでは、両面搬送速度V4を適切に設定することできないので、S68以降の処理が繰り返して行われる。
【0132】
そして、制御部60は、S50において両面搬送速度V4が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定された時点において処理を終了し、この時点で算出されている両面搬送速度V4、搬送速度V3、反転部ウェイト時間T3d=SBwait、および紙間を用いて両面搬送制御を行う。
【0133】
上述したように
図7に示すフローチャートにしたがって両面搬送速度V
4を調整することによって、後処理に要する時間に応じた紙間を考慮して両面搬送速度V
4を調整することができる。すなわち、上記紙間に応じたタイミングでインクジェット印刷装置1から後処理装置に対して排紙することができるとともに、両面印刷の生産性を低下させることなく、かつ予め設定された範囲内(最大両面搬送速度未満、印刷速度以上)の両面搬送速度V
4に調整することができる。
【0134】
また、印刷媒体Pのサイズ、印刷速度および後処理要求最短紙間に基づいて算出した両面搬送速度V
4が、印刷速度未満である場合に(
図7のS50,NO)、反転部正転速度(搬送速度V
3)を下げて(
図7のS58)、両面搬送速度V
4を再算出するようにしたので、上述したように反転部正転速度を下げた分、両面搬送速度V
4を速くすることができるので、
図5で示したような印刷媒体P1と印刷媒体P2の衝突を回避することができる。
【0135】
また、反転部正転速度(搬送速度V3)を下げて算出した両面搬送速度V4が、印刷速度未満である場合、後処理要求最短紙間の範囲内で、反転部50における印刷媒体Pの停止時間を変更して両面搬送速度V4を再算出するようにしたので、反転部50における印刷媒体Pの衝突を回避することができる。
【0136】
次に、本発明の両面印刷装置の第2の実施形態を用いたインクジェット印刷装置2について説明する。第1の実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図1に示すように、反転部50がインクジェット印刷装置1の下部に設けられ、反転部50で反転された印刷媒体Pが、第2両面搬送経路DS2を経由してレジスト部1まで搬送されるものであるが、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2は、
図8に示すように、反転部150が、上側に配置され、反転部150で反転された印刷媒体Pが、そのままレジスト部114に搬送される構成である。以下、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2について、具体的に説明する。なお、
図8に示す上下左右方向が、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2の上下左右方向である。また、
図8の紙面手前側が前方向であり、紙面奥側が後ろ方向である。
【0137】
本実施形態のインクジェット印刷装置2は、
図8に示すように、サイド給紙部110と、内部給紙部120と、印刷部130と、排紙部140と、反転部150とを備えている。
【0138】
印刷部130および内部給紙部120は、金属または樹脂などから形成された筐体内に収容されて設置されている。また、サイド給紙部110および排紙部140は、筐体内に一部が収容され、筐体外に一部が突出する状態で設置されている。
【0139】
サイド給紙部110は、印刷媒体Pが載置される給紙台111と、給紙台111から最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して搬送する1次給紙部112と、1次給紙部112によって搬送された印刷媒体Pを所定のタイミングで印刷部130に送り出す2次給紙部114とを備えている。
【0140】
1次給紙部112は、給紙ローラおよび給紙ローラを駆動する給紙モータなどを備えている。
【0141】
2次給紙部114は、1次給紙部112から搬送された印刷媒体Pまたは内部給紙部120から搬送された印刷媒体Pの先端が当接して印刷媒体Pを一旦停止させることによって弛みを形成し、これにより斜行補正を行うレジストローラ114aと、レジストローラ114aを駆動するレジストモータなどを備えている。なお、本実施形態では、2次給紙部114が、本発明のレジスト部に相当する。
【0142】
内部給紙部120は、印刷媒体Pが載置される給紙台121aと、給紙台121aから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部122aと、印刷媒体Pが載置される給紙台121bと、給紙台121bから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部122bと、印刷媒体Pが載置される給紙台121cと、給紙台121cから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部122cと、縦搬送ローラ115とを備えている。
【0143】
1次給紙部122a,122b,122cは、給紙ローラおよび給紙ローラを駆動する給紙モータなどを備えている。
【0144】
1次給紙部122aによって給紙台121aから繰り出された印刷媒体Pおよび1次給紙部122bによって給紙台121bから繰り出された印刷媒体Pは、縦搬送ローラ115に向けて搬送される。
【0145】
縦搬送ローラ115は、レジストローラ114aと1次給紙部122a,122b,122cとの間の搬送経路上に設けられている。
【0146】
このように2次給紙部114には、サイド給紙部110または内部給紙部120から印刷媒体Pが搬送されるとともに、さらに後述する反転部150からも印刷媒体Pが搬送される。
【0147】
そのため搬送方向における2次給紙部114の手前には、サイド給紙部110または内部給紙部120から給紙された印刷媒体Pの搬送経路と、反転部150から搬送された一方の面が印刷された印刷媒体Pの搬送経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと呼び、それ以外の経路を循環搬送路CRと呼ぶ。
【0148】
また、循環搬送路CR上には、印刷媒体Pを検出する用紙検出センサが多数設けられており、その用紙検出センサによって検出された検出信号に基づいて、後述する制御部160によって印刷媒体Pの搬送制御が行われる。
【0149】
印刷部130は、第1の実施形態と同様に、4つのラインヘッド131と、ラインヘッド131に対向して設けられた環状の搬送ベルト132と、第1ベルトプラテンローラ133と、第2ベルトプラテンローラ134とを備えている。
【0150】
搬送ベルト132は、環状の無端ベルトから形成され、多数の吸引孔が形成されている。2次給紙部114から給紙された印刷媒体Pは、環状の搬送ベルト132まで搬送される。そして、印刷媒体Pは、搬送ベルト132の搬送路面の裏面側に設置された吸引ファン(図示省略)の吸引によって搬送ベルト132上に吸着され、所定の搬送速度で搬送される。そして、印刷媒体Pが搬送ベルト132によって搬送されながら、ラインヘッド131から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、これにより印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0151】
第1ベルトプラテンローラ133と第2ベルトプラテンローラ134には、搬送ベルト132が掛け渡され、第1ベルトプラテンローラ133と第2ベルトプラテンローラ134とが、搬送モータ(図示省略)によって駆動することによって搬送ベルト132が
図1の時計回りに回転移動する。
【0152】
各ラインヘッド131の構成は、第1の実施形態の各ラインヘッド31と同様である。
【0153】
印刷部130により印刷された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷媒体Pを排紙部140へ案内するか、または循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構143が備えられている。切り替え機構143は、具体的には、排紙部140側の搬送経路と反転部150側の搬送経路とを切り替える。
【0154】
排紙部140は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台141と、排紙台141に印刷媒体Pを排紙する1対の排紙ローラ142とを有する。そして、切り替え機構143により排紙部140に向けて案内された印刷媒体Pは、排紙ローラ142により排紙台141に排紙される。
【0155】
反転部150は、印刷媒体Pを反転させる反転搬送経路SRを有する反転台151と、循環搬送路CRから反転台151へ印刷媒体Pを搬送するとともに、その反転台151に搬送された印刷媒体Pを循環搬送路CR上へ再び戻す反転ローラ152と、反転ローラ152を駆動する反転モータ(図示省略)などを備えている。
【0156】
切り替え機構143により反転部150に案内された印刷媒体Pは、反転ローラ152により循環搬送路CRから反転台151に搬送され、反転台151から循環搬送路CRへ再び戻されることによって、表裏が反転した状態で循環搬送路CR上を搬送される。そして、表裏が反転された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ153等の複数のローラによって印刷部130へ向かって再び搬送される。
【0157】
搬送ローラ153によって搬送された印刷媒体Pは、再び2次給紙部114のレジストローラ114aまで搬送され、レジストローラ114aによって所定のタイミングで再び印刷部130に向けて送り出される。そして、印刷部130によって印刷媒体Pの裏面に印刷処理が施される。
【0158】
図9は、本実施形態のインクジェット印刷装置2の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図9に示すように、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2も、制御部160と、操作パネル170とを備えている。
【0159】
制御部160は、インクジェット印刷装置2全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。制御部160は、半導体メモリに予め記憶されたプログラムをCPUに実行させることによって、インクジェット印刷装置2の各部の動作を制御する。
【0160】
また、制御部160は、コンピュータなどから出力された画像データまたはスキャナなどによって読み取られた画像データを取得し、その画像データに基づいて、印刷部130を制御することによって印刷処理を施す。
【0161】
また、制御部160は、印刷媒体Pのサイズおよび印刷速度などの印刷条件を取得し、その印刷条件に基づいて、後述する印刷媒体Pの両面搬送速度の算出、印刷媒体Pの搬送経路用紙枚数の算出などの処理を行なう。
【0162】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置2の印刷媒体Pの搬送動作について、
図10に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。なお、
図10の横軸が時間であり、縦軸が印刷媒体Pの搬送速度である。また、ここでは両面印刷時の搬送動作について説明する。
【0163】
まず、サイド給紙部110または内部給紙部120によって搬送された印刷媒体Pの先端がレジストローラ114aに当接し、弛みが形成された状態で一旦停止する。
【0164】
そして、印刷媒体Pは、時刻t1のタイミングでレジストローラ114aによって印刷部130に向けて搬送される。この際、2次給紙部114は、加速度α1で加速した後、搬送速度V1で印刷媒体Pを搬送する。
【0165】
そして、2次給紙部114は、その後、減速度α2で減速し、搬送速度V
2になった時刻t2において印刷媒体Pを搬送ベルト132に引き渡す。なお、搬送速度V
1と搬送速度V
2との関係は、
図10に示すように、V
1>V
2である。これにより紙間を詰めることができる。
【0166】
搬送ベルト132も搬送速度V2で駆動しており、2次給紙部114から受け取った印刷媒体Pを搬送速度V2で定速搬送する。そして、搬送速度V2で搬送される印刷媒体Pの表面に対して、印刷部130によって印刷処理が施される。そして、印刷媒体Pの後端が、搬送ベルト132から抜けた時点t3から加速度α3で加速し、循環搬送路CR上において搬送速度V3で印刷媒体Pを定速搬送する。次いで、反転ローラ152による搬送によって、印刷媒体Pは、反転搬送経路SRに案内される。
【0167】
反転搬送経路SRに印刷媒体Pが案内された後、印刷媒体Pをスイッチバックで停止させるために、反転ローラ152は、減速度α4で減速する。そして、印刷媒体Pの後端が、反転ローラ152から距離Ls(反転時後端残し量)だけ離れた位置まで到達した時点で反転ローラ152は停止する(時刻t4)。
【0168】
反転時後端残し量Lsは、印刷媒体Pが反転可能なように、反転搬送経路SRに十分引き込まれ、かつ、反転ローラ152から外れずに印刷媒体Pを双方向に搬送可能な距離として予め設定されている。このため、反転ローラ152の減速開始位置は、搬送速度V3から減速度α4で減速したときに、印刷媒体Pの後端が反転ローラ152から距離Lsの位置で停止できる位置となる。
【0169】
そして、反転ローラ152による印刷媒体Pの搬送を一旦停止した時刻t4から反転部ウェイト時間だけ経過した時刻t5から反転ローラ152が逆方向への回転を再開し、印刷媒体Pは、スイッチバックして搬送される。時刻t4から時刻t5までの反転部ウェイト時間SBwaitは、最初は初期値に設定されているが、後述する両面搬送速度の算出の際に、必要に応じて変更される。
【0170】
そして、印刷媒体Pの反転が開始された後、印刷媒体Pは、反転ローラ152によって加速度α5で加速して搬送される。印刷媒体Pが、再び搬送速度V3まで到達すると、反転ローラ152および搬送ローラ153によってそのまま定速搬送される。
【0171】
その後、レジストローラ114aで印刷媒体Pを停止させるために、反転ローラ152および搬送ローラ153は、減速度α6で減速する。なお、本実施形態では、減速度α6で減速する途中で、印刷媒体Pを搬送速度V4で定速搬送している。このように、印刷媒体Pの先端が2次給紙部114のレジストローラ114aに当接する前に、一旦定速搬送することによって、印刷媒体Pがレジストローラ114aに衝突する速度を遅くすることができ、衝突音を小さくすることができる。ただし、必ずしもこの等速搬送期間を設けなくてもよい。
【0172】
また、上述した反転ローラ152および搬送ローラ153の減速開始位置は、搬送速度V3から減速度α6で減速したときに、印刷媒体Pの先端が2次給紙部114で停止できる位置であればよい。ただし、2次給紙部114では、上述したように印刷媒体Pが一旦当接して斜行補正されるため、弛みを持たせて停止する。この斜行補正の際に形成される弛み量は、予め設定される。
【0173】
そして、反転ローラ152および搬送ローラ153による印刷媒体Pの搬送が停止した時刻t6から予め設定されたレジスト起動待ち時間を経過した時刻t7からレジストローラ114aが回転し、印刷媒体Pが印刷部130に向けて送り出される。
【0174】
そして、
図10に示す時刻t1からの動作が繰り返して行われ、搬送ベルト132により搬送速度V
2で定速搬送されながらラインヘッド131により裏面が印刷される。
【0175】
裏面が印刷された印刷媒体Pは、切り替え機構143により排紙台141側に案内され、排紙ローラ142により排紙に適した搬送速度で排紙される。
【0176】
次に、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2における両面印刷時の印刷スケジュールについて説明する。
【0177】
上記第1の実施形態のインクジェット印刷装置1においては、両面印刷時の生産性を担保し、かつ第2両面搬送ローラ45のモータなどが定格回転数を超えることがないように、循環搬送における搬送経路用紙枚数Nおよび反転部50の制御条件を変更して、両面搬送速度を調整したが、基本的な考え方は、第2の実施形態も同様であり、両面印刷時の生産性を担保し、かつ循環搬送路RS上の搬送ローラのモータなどが定格回転数を超えることがないように、搬送経路用紙枚数Nおよび反転部150の制御条件を変更し、両面搬送速度を調整する。本実施形態では、
図10に示す搬送速度V
3が、本発明の両面搬送速度に相当する。
【0178】
なお、搬送経路用紙枚数Nを増やした場合、循環搬送路RS上の印刷媒体Pの枚数を増やすことができるので、
図10に示す搬送速度V
3を遅くすることができる。
【0179】
また、本実施形態では、反転部150の制御条件として、上述した反転部ウェイト時間SBwaitを必要に応じて調整する。
【0180】
具体的には、上述したように搬送経路用紙枚数Nを増やした場合、搬送速度V3を遅くすることができるが、その結果、再算出した搬送速度V3が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなる場合がある。搬送速度V3が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなった場合、不都合が生じる。具体的には、たとえば内部給紙部120から印刷媒体Pの給紙を行う場合、内部給紙部120からレジストローラ114aに向けて、印刷速度(搬送速度V2)と同じ速度で給紙が行われる。そして、内部給紙部120からの印刷媒体Pの給紙間において、反転部150から循環搬送路CRを経由して印刷媒体Pを供給し、レジストローラ114aに対して常に一定の間隔で印刷媒体Pが到達するように制御される。
【0181】
このような制御において、搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)よりも遅い場合、反転部150とレジストローラ114a間の搬送速度も遅くなる。一方で、レジストローラ114aに印刷媒体Pが到達する時刻は変わらないようにする必要があるため、早めのタイミングでレジストローラ114aに向けて搬送することになる。このように印刷媒体Pの搬送制御を行った場合、内部給紙部120から給紙された印刷媒体Pの後端と、反転部150から搬送された印刷媒体Pの先端とが衝突する場合がある。
【0182】
そこで、このような印刷媒体Pの衝突を避けるため、搬送速度V3が、印刷速度(搬送速度V2)よりも遅くなった場合には、反転部ウェイト時間SBwaitを長くすることによって、その分、搬送速度V3を速くできるようにする。
【0183】
すなわち、本実施形態では、両面印刷時の生産性を担保し、かつ循環搬送路CR上の搬送ローラのモータなどが定格回転数を超えることがないようにし、さらに搬送速度V3が印刷速度以上となるように搬送経路用紙枚数Nおよび反転部50の制御条件を変更して、搬送速度V3を調整する。
【0184】
なお、搬送速度V
3の算出方法については、基本的な考え方は、第1の実施形態の両面搬送速度V
4の算出方法と同様であり、
図10に示すタイミングチャートに基づいて算出される。具体的には、搬送速度V
3は、下式(14)によって算出される。
【0185】
なお、
図10の上部に示す1~5の数字は、
図3と同様に、矢印の範囲の各区間を示す番号であり、1a~1cは、区間1をさらに区分した区間を示し、3a~3dは、区間3をさらに区分した区間を示し、4a~4eは、区間4をさらに区分した区間を示している。そして、Tの添え字として区間の番号が付されている場合には、その番号の区間における印刷媒体Pの搬送時間を意味し(区間5を除く)、Lの添え字として区間の番号が付されている場合には、その番号の区間における印刷媒体Pの搬送距離を意味するものとする。
【数9】
【0186】
なお、上式(14)におけるTINVは、片面印刷と同等の生産率を担保するためには、下式(15)を満たす必要がある。
TINV={(印刷媒体Pの長さ/印刷速度)+紙間}(2×経路内枚数N-1)
・・・(15)
【0187】
次に、上述した搬送速度V
3の調整方法について、
図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、上述した後処理に要する時間に応じた紙間を考慮して、搬送速度V
3を調整する方法について説明する。
【0188】
まず、制御部160は、ユーザによって設定された印刷条件(印刷媒体Pのサイズ(長さ)および印刷速度など)に基づいて、循環搬送路CRにおける搬送経路用紙枚数Nを仮決めする(S80)。具体的には、制御部160は、上式(12)に従って、搬送経路用紙枚数Nを仮算出する。なお、第2の実施形態の場合、全体搬送経路長さLaは、
図10に示すL1+L2+L3+L4である。
【0189】
そして、制御部160は、搬送経路用紙枚数Nを仮算出すると、仮算出された搬送経路用紙枚数Nを上式(14)及び上式(15)に代入して両面搬送速度V3を算出する(S82)。
【0190】
制御部160は、S82で算出した両面搬送速度V3が、上式(14)によって算出可能か否かを確認する(S84)。両面搬送速度V3は、上式(14)に示す2次式を解くことによって算出されるが、その解が虚数となる場合には、制御部160は、両面搬送速度V3を算出不可能と判定する(S84,NO)。なお、両面搬送速度V3が算出不可能な場合とは、S80で仮算出された搬送経路用紙枚数Nでは、循環搬送された印刷媒体Pが、レジストローラ114aに対して予め設定されたタイミング(印刷媒体Pのサイズと印刷速度と紙間で決定されるタイミング)で到着不可能な場合である。
【0191】
したがって、制御部160は、両面搬送速度V3を算出不可能と判定した場合には(S84,NO)、搬送経路用紙枚数NをN+1に変更し(S86)、再び、その搬送経路用紙枚数N+1を上式(14)に代入して両面搬送速度V3を算出する(S82)。制御部160は、両面搬送速度V3が算出可能となるまで、搬送経路用紙枚数Nの増加(S86)と両面搬送速度V3の算出(S82)を繰り返して行う。なお、S86において、搬送経路用紙枚数Nを増加させることは、両面搬送速度V3を算出可能とするためであるとともに、後のS88での判定において、両面搬送速度V3を最大両面搬送速度未満とするためでもある。
【0192】
そして、制御部160は、S84において両面搬送速度V3を算出可能と判定した場合には(S84,YES)、その算出した両面搬送速度V3と予め設定された最大両面搬送速度とを比較する(S88)。最大両面搬送速度とは、両面搬送速度V3で印刷媒体Pを搬送するローラを駆動するモータの定格回転数の上限値から算出される値である。
【0193】
制御部160は、S88において両面搬送速度V3が最大両面搬送速度以下である場合には(S88,NO)、両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上であるか否かを判定する(S90)。ここで、S90の判定を行う理由については、上述したとおりである。
【0194】
そして、制御部160は、両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上である場合には(S90,YES)、反転部駆動マージンを算出する(S92)。
【0195】
次いで、制御部160は、反転部駆動マージンが20ms以下であるか否かを判定する(S94)。そして、制御部160は、反転部駆動マージンが20msを超える場合には(S94,NO)、両面搬送速度V3は適切であるとして調整処理を終了する。
【0196】
一方、制御部160は、S90において、両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)未満である場合には(S90,NO)、反転部150のウェイト時間を調整するステップに進むが、この際、反転部50のウェイト時間SBwaitが、後処理要求最短紙間以下であるか否かを確認する(S96)。
【0197】
そして、S96において、ウェイト時間SBwaitが、後処理要求最短紙間以下であると判定された場合には(S96,YES)、ウェイト時間SBwaitを1msだけ長くする(S98)。そして、制御部160は、S82に戻り、上式(14)に対して、ウェイト時間SBwaitを1ms加算した後の時間を代入して両面搬送速度V3を再算出する。そして、制御部160は、S84以降の処理を再び行う。このようにウェイト時間SBwaitを長くすることによって、両面搬送速度V3を速くすることができるので、内部給紙部120から給紙された印刷媒体Pの後端と、反転部150から搬送された印刷媒体Pの先端との衝突を回避することができる。また、上述したように後処理要求最短紙間の範囲内でウェイト時間SBwaitを加算することによって、反転部150における印刷媒体Pの衝突を回避することができる。
【0198】
そして、制御部160は、S90において、両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上になるまで、上述したように、ウェイト時間SBwaitを1ms加算する処理を行うが、S96において、その加算後のウェイト時間SBwaitが、後処理要求最短紙間よりも長くなった場合には(S96,NO)、後処理要求最短紙間が、200ms以下であるか否かを確認する(S100)。なお、200msは、インクジェット印刷装置2において許容できる最長の紙間であり、予め設定された値である。この値は、インクジェット印刷装置2の構成によって異なるものであり、200msに限定される値ではない。
【0199】
そして、制御部160は、S100において、後処理要求最短紙間が、200ms以下であると判定された場合には(S100,YES)、上述したウェイト時間SBwaitの調整だけでは、両面搬送速度V3を適切に設定することできないので、生産性を落とすことになるが、紙間を1msだけ加算する(S104)。
【0200】
そして、制御部160は、S82に戻り、式(14)および上式(15)に基づいて両面搬送速度V3を算出するが(S82)、この際、式(15)に代入する紙間としては、後処理要求最短紙間が用いられる。次いで、制御部160は、S84以降の処理を再び行う。
【0201】
制御部160は、S90において両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定されるまで、S104における紙間の加算を繰り返して行う。
【0202】
一方、制御部160は、S104における紙間の加算を繰り返した結果、両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定される前に、S100において、後処理要求最短紙間が、200msを超えた場合には(S100,NO)、搬送経路用紙枚数NをN+1に変更し(S102)、再び、その搬送経路用紙枚数N+1を上式(15)に代入し、式(14)に基づいて両面搬送速度V3を算出する(S82)。そして、制御部160は、S84以降の処理を再び行う。
【0203】
なお、S88において、両面搬送速度V3が最大両面搬送速度を超えると判定した場合(S88,YES)、またはS94において、反転部駆動マージンが20ms以下であると判定した場合(S94,YES)にも、上述した反転部ウェイト時間SBwaitの調整だけでは、両面搬送速度V3を適切に設定することできないので、S100以降の処理が繰り返して行われる。
【0204】
そして、制御部160は、S90において両面搬送速度V3が印刷速度(搬送速度V2)以上と判定され、かつ反転部駆動マージンが20msを超えると判定された時点において処理を終了し、この時点で算出されている両面搬送速度V3、反転部ウェイト時間SBwait、および紙間を用いて両面搬送制御を行う。
【0205】
なお、上記実施形態は、本発明の両面印刷装置をインクジェット印刷装置に適用した例であるが、印刷方式としてはインクジェット方式に限らず、レーザ方式または孔版印刷方式の印刷装置に本発明の両面印刷装置を適用するようにしてもよい。
【0206】
本発明の両面印刷装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0207】
本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合に反転部の制御条件を変更して、両面搬送速度を再算出することができる。
【0208】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合に反転部に印刷済印刷媒体が送り込まれた時の反転部正転速度を下げて、両面搬送速度を再算出することができる。
【0209】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、反転部正転速度を下げて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合、反転部における印刷媒体の停止時間を変更して、両面搬送速度を再算出することができる。
【0210】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズおよび印刷速度に基づいて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合に、反転部における印刷媒体の停止時間を変更して、両面搬送速度を再算出することができる。
【0211】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズ、印刷速度および両面印刷装置に接続される後処理装置における後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて、印刷媒体の搬送経路内における印刷媒体の枚数および印刷済印刷媒体を循環搬送してレジスト部に再給紙する際の両面搬送速度を算出することができる。
【0212】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズ、印刷速度および後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合に、反転部に印刷済印刷媒体が送り込まれた時の反転部正転速度を下げて、両面搬送速度を再算出することができる。
【0213】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、反転部正転速度を下げて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合、後処理に要する時間に応じた紙間の範囲内で、反転部における印刷媒体の停止時間を変更して両面搬送速度を再算出することができる。
【0214】
また、本発明の両面印刷装置において、制御部は、印刷媒体のサイズ、印刷速度および後処理に要する時間に応じた紙間に基づいて算出した両面搬送速度が、印刷速度未満である場合に、後処理に要する時間に応じた紙間の範囲内で、反転部における印刷媒体の停止時間を変更して両面搬送速度を再算出することができる。
【符号の説明】
【0215】
1 インクジェット印刷装置
10,110 サイド給紙部
11,111 給紙台
12,112 1次給紙部
14,114 2次給紙部
14a,114a レジストローラ
15,115 縦搬送ローラ
20,120 内部給紙部
21a,21b,121a,121b,121c 給紙台
22a,22b,122a,122b,122c 1次給紙部
23 搬送ローラ
30,130 印刷部
31,131 ラインヘッド
32,132 搬送ベルト
40,140 排紙部
41,141 排紙台
42,142 排紙ローラ
43,143 切り替え機構
50,150 反転部
52,152 反転ローラ
60,160 制御部
70,170 操作パネル
HS 排紙搬送経路
P,P1,P2 印刷媒体
RS 反転搬送センサ
SR 反転搬送経路
DS1 第1両面搬送経路
DS2 第2両面搬送経路
CR 循環搬送路
FR 給紙搬送路