(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】増幅回路及びこれを有する電流センサ
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20241021BHJP
H03F 3/38 20060101ALI20241021BHJP
H03F 1/34 20060101ALI20241021BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20241021BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/38
H03F1/34
G01R15/18 A
G01R15/20
(21)【出願番号】P 2021032124
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】上倉 宇晴
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅彦
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127422(JP,A)
【文献】特開2017-076942(JP,A)
【文献】米国特許第7535295(US,B1)
【文献】特開2009-211763(JP,A)
【文献】特開2009-159508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/34
H03F 3/38
H03F 1/34
G01R 15/18
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力が入力に負帰還されたメイン増幅回路と、
前記メイン増幅回路の入力オフセット電圧を補正するオフセット補正回路と、
前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが正常範囲を超えた異常状態を検出する検出回路と、
前記オフセット補正回路を制御する制御回路とを有し、
前記メイン増幅回路は、前記オフセット補正回路から供給される補正信号に応じて前記入力オフセット電圧が補正され、
前記オフセット補正回路は、
前記メイン増幅回路の入力電圧を増幅するチョッパ増幅回路と、
前記チョッパ増幅回路の出力信号に含まれる高周波成分を除去するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号に応じた前記補正信号を前記メイン増幅回路に供給する補正信号供給回路とを含み、
前記フィルタ回路は、前記チョッパ増幅回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられた積分回路を含み、
前記制御回路は、
前記検出回路において前記異常状態が検出された場合、前記積分回路における信号の積分の状態を初期状態に設定し、
前記検出回路において前記異常状態が検出された後、前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが前記正常範囲に含まれた正常状態に戻ったことが前記検出回路において検出された場合、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する、
増幅回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記検出回路において前記異常状態が検出された後、前記検出回路において前記正常状態に戻ったことが検出された場合、前記正常状態に戻ったことが検出された時から遅延時間が経過した後、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する、
請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記積分回路は、
前記チョッパ増幅回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられた積分用増幅段と、
前記積分用増幅段の入力と出力との間の少なくとも1つの負帰還経路に設けられた少なくとも1つの積分用キャパシタと、
前記積分用キャパシタに充電された電荷を放電する放電回路とを含み、
前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記積分用キャパシタに充電された電荷を前記放電回路により放電する、
請求項1又は2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、前記チョッパ増幅回路と前記積分回路との間の信号経路、又は、前記積分回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられたサンプルホールド回路を含み、
前記サンプルホールド回路は、前記チョッパ増幅回路のチョッパ動作に同期して、前段から入力した信号を1以上のサンプルホールド用キャパシタに保持するとともに、当該保持した信号を後段に出力し、
前記制御回路は、
前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持を停止するとともに、前記サンプルホールド用キャパシタに保持する信号のレベルを初期レベルに設定し、
前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合、前記サンプルホールド用キャパシタにおける前記初期レベルの設定を解除するとともに、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持を再開する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記サンプルホールド回路の前記前段から前記サンプルホールド用キャパシタへ信号を入力する経路を遮断するように前記サンプルホールド回路を制御する、
請求項4に記載の増幅回路。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、前記積分回路の一対の入力ノードとコモンモード基準電圧とを接続する経路に設けられたコモンモードスイッチ回路を有し、
前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合に前記コモンモードスイッチ回路をオンし、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合に前記コモンモードスイッチ回路をオフする、
請求項4又は5に記載の増幅回路。
【請求項7】
前記サンプルホールド回路は、
一対のノードの間で直列接続された2つの前記サンプルホールド用キャパシタをそれぞれ含む第1キャパシタ回路及び第2キャパシタ回路と、
前記第1キャパシタ回路の前記一対のノードと前記チョッパ増幅回路の一対の出力ノードとを接続する経路に設けられた第1スイッチ回路と、
前記第1キャパシタ回路の前記一対のノードと前記積分回路の前記一対の入力ノードとを接続する経路に設けられた第2スイッチ回路と、
前記第2キャパシタ回路の前記一対のノードと前記チョッパ増幅回路の前記一対の出力ノードとを接続する経路に設けられた第3スイッチ回路と、
前記第2キャパシタ回路の前記一対のノードと前記積分回路の前記一対の入力ノードとを接続する経路に設けられた第4スイッチ回路とを含み、
前記第1キャパシタ回路及び前記第2キャパシタ回路は、前記直列接続された2つの前記サンプルホールド用キャパシタの中間接続ノードが基準電位に接続されており、
前記制御回路は、
前記サンプルホールド回路において前記チョッパ動作に同期した信号の保持を行わせる場合、前記第1スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をオンするとともに前記第2スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をオフする第1スイッチ状態と、前記第1スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をオフするとともに前記第2スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をオンする第2スイッチ状態とを、前記チョッパ動作の1サイクルごとに交互に切り替え、
前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記第1スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をそれぞれオフするとともに、前記第2スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をそれぞれオンする、
請求項6に記載の増幅回路。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記チョッパ増幅回路のチョッパ動作を停止し、
前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合、前記チョッパ増幅回路の前記チョッパ動作を再開する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項9】
前記検出回路は、前記メイン増幅回路の出力信号、前記メイン増幅回路の入力信号及び前記チョッパ増幅回路の出力信号の少なくとも1つに基づいて前記異常状態を検出する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項10】
前記メイン増幅回路は、縦続接続された複数の増幅段を含んでおり、
前記補正信号供給回路は、前記複数の増幅段の縦続接続された中間のノードに前記補正信号を供給する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項11】
被測定電流による磁界に応じた検出信号を出力する磁気センサと、
前記磁気センサに作用する前記被測定電流による磁界を打ち消す方向に磁界を発生するコイルと、
前記検出信号に応じて、前記磁気センサに作用する前記被測定電流による磁界と前記コイルに流れる電流による磁界とが平衡するよう前記コイルを駆動するコイル駆動回路とを備え、
前記コイル駆動回路が、請求項1~10のいずれか一項に記載した増幅回路を有する
ことを特徴とする電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパ増幅回路を用いて入力オフセット電圧のドリフトを低減した増幅回路と、これを用いた電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョッパ増幅回路は、入力オフセット電圧のドリフトを低減する高精度の直流増幅回路に広く用いられている。一般的なチョッパ増幅回路は、入力信号を一定周波数で変調するスイッチ回路と、その変調信号を増幅するアンプと、アンプにより増幅された変調信号を復調するスイッチ回路からなる。通常、チョッパ増幅回路の後段には、復調信号に含まれる高周波成分を除去するためのフィルタ回路が設けられる。入力信号を直接増幅した場合、入力オフセット電圧のドリフト成分も一緒に増幅してしまうため、出力信号にはドリフト成分による大きな誤差が生じる。チョッパ増幅回路は、入力信号をドリフト成分の帯域より十分周波数が高い変調信号に変換して増幅を行い、これを復調して元の周波数帯域に戻すため、ドリフト成分による誤差を非常に小さくすることができる。
【0003】
チョッパ増幅回路は、高精度かつ広帯域の演算増幅器において、入力オフセット電圧を補正するためのオフセット補正回路に用いられる場合がある。チョッパ増幅回路は、専ら直流に近い入力電圧の増幅に用いられ、周波数の高い信号の増幅は別の高速なアンプによって行われる。チョッパ増幅回路を含むオフセット補正回路の応答速度は、通常の動作状態において、回路全体の周波数特性に殆ど影響を与えない。
【0004】
しかしながら、過大な信号が入力されて出力が最大レベルに振り切れた場合などにおいて、回路内部の直流電位が正常状態から大きく逸脱した飽和状態になることがある。この飽和状態から正常状態へ復帰する際には、オフセット補正回路の応答速度が問題となる。すなわち、飽和状態では負帰還制御が働いておらず、オフセット補正回路が一時的に単独で動作しているため、オフセット補正回路が単独で正常状態に戻るまで、回路全体が正常状態へ復帰できない。オフセット補正回路では、特にチョッパ増幅回路の後段に設けられたフィルタ回路の応答速度が遅いため、正常状態への復帰時間を長引かせる原因となる。
【0005】
そこで、下記の特許文献に記載される増幅回路では、過大な信号が入力されることなどによって飽和状態となった場合に、チョッパ増幅回路の後段のフィルタ回路に含まれるサンプルホールド回路の信号保持動作を停止させるとともに、前段から入力される信号をそのまま後段へ出力するようにサンプルホールド回路が制御される。これにより、サンプルホールド回路における応答の遅延が減少するため、正常状態への復帰時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1に記載される増幅回路において、チョッパ増幅回路の後段のフィルタ回路には、積分回路(ローパスフィルタ)も含まれており、過大な信号が入力された場合には、積分回路を構成するアンプも飽和状態となる。積分回路は大きな時定数を持つため、飽和状態から正常状態へ復帰するまでの時間が比較的長い。しかしながら、上述したサンプルホールド回路の制御では、積分回路の飽和状態を速やかに解消させることができないため、積分回路の時定数に起因した正常状態への復帰の遅れを短くすることができない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、チョッパ増幅回路を用いて入力オフセット電圧のドリフトを低減できるとともに、過大な入力信号などの影響を受けて負帰還制御が正常に働かなくなった状態から正常状態へ復帰するまでの時間を短くすることができる増幅回路と、そのような増幅回路を有する電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る増幅回路は、出力が入力に負帰還されたメイン増幅回路と、前記メイン増幅回路の入力オフセット電圧を補正するオフセット補正回路と、前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが正常範囲を超えた異常状態を検出する検出回路と、前記オフセット補正回路を制御する制御回路とを有する。前記メイン増幅回路は、前記オフセット補正回路から供給される補正信号に応じて前記入力オフセット電圧が補正される。前記オフセット補正回路は、前記メイン増幅回路の入力電圧を増幅するチョッパ増幅回路と、前記チョッパ増幅回路の出力信号に含まれる高周波成分を除去するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力信号に応じた前記補正信号を前記メイン増幅回路に供給する補正信号供給回路とを含む。前記フィルタ回路は、前記チョッパ増幅回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられた積分回路を含む。前記制御回路は、前記検出回路において前記異常状態が検出された場合、前記積分回路における信号の積分の状態を初期状態に設定し、前記検出回路において前記異常状態が検出された後、前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが前記正常範囲に含まれた正常状態に戻ったことが前記検出回路において検出された場合、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する。
【0010】
上記の構成によれば、前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが正常範囲を超える前記異常状態が検出された場合、前記積分回路における信号の積分の状態が前記初期状態に設定される。その後、前記メイン増幅回路に入力される信号のレベルが前記正常範囲に含まれた前記正常状態に戻ったことが検出された場合、前記積分回路における前記初期状態の設定が解除される。このとき、前記積分回路における信号の積分が前記初期状態から再開されるため、前記積分回路では、負帰還制御が正常に働いている場合に近い状態で積分動作が開始され易くなる。これにより、前記フィルタ回路の出力信号に応じて前記補正信号供給回路から出力される前記補正信号は、速やかに適正なレベルへ戻り易くなるため、負帰還制御が正常な状態へ速やかに復帰し易くなる。
【0011】
好適に、前記制御回路は、前記検出回路において前記異常状態が検出された後、前記検出回路において前記正常状態に戻ったことが検出された場合、前記正常状態に戻ったことが検出された時から遅延時間が経過した後、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する。
この構成によれば、前記検出回路において前記正常状態に戻ったことが検出された後も、前記遅延時間の期間においては、前記積分回路における前記初期状態の設定が維持される。これにより、前記正常状態へ戻っていない段階で前記積分回路の信号の積分が再開されることを回避し易くなる。
【0012】
好適に、前記積分回路は、前記チョッパ増幅回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられた積分用増幅段と、前記積分用増幅段の入力と出力との間の少なくとも1つの負帰還経路に設けられた少なくとも1つの積分用キャパシタと、前記積分用キャパシタに充電された電荷を放電する放電回路とを含み、前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記積分用キャパシタに充電された電荷を前記放電回路により放電する。
この構成によれば、前記積分用キャパシタに充電された電荷が放電されることによって、前記積分回路における信号の積分の状態が前記初期状態に設定される。これにより、前記積分回路における信号の積分が再開される場合には、前記積分用キャパシタにおいて電荷が放電された状態から充電が開始される。
【0013】
好適に、前記フィルタ回路は、前記チョッパ増幅回路と前記積分回路との間の信号経路、又は、前記積分回路と前記補正信号供給回路との間の信号経路に設けられたサンプルホールド回路を含み、前記サンプルホールド回路は、前記チョッパ増幅回路のチョッパ動作に同期して、前段から入力した信号を1以上のサンプルホールド用キャパシタに保持するとともに、当該保持した信号を後段に出力し、前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持を停止するとともに、前記サンプルホールド用キャパシタに保持する信号のレベルを初期レベルに設定し、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合、前記サンプルホールド用キャパシタにおける前記初期レベルの設定を解除するとともに、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持を再開する。
この構成によれば、前記積分回路における信号の積分の状態が前記初期状態に設定される場合、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持が停止されるとともに、前記サンプルホールド用キャパシタに保持される信号のレベルが前記初期レベルに設定される。その後、前記積分回路における前記初期状態の設定が解除される場合、前記サンプルホールド用キャパシタにおける前記初期レベルの設定が解除されるとともに、前記サンプルホールド回路による前記チョッパ動作に同期した信号の保持が再開される。このとき、前記サンプルホールド用キャパシタに保持される信号のレベルが前記初期レベルになっている状態から前記サンプルホールド回路の動作が再開されるため、前記サンプルホールド回路では、負帰還制御が正常に働いている場合に近い状態で信号保持動作が開始され易くなる。これにより、前記フィルタ回路の出力信号に応じて前記補正信号供給回路から出力される前記補正信号は、速やかに適正なレベルへ戻り易くなるため、負帰還制御が正常な状態へ速やかに復帰し易くなる。
【0014】
好適に、前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記サンプルホールド回路の前記前段から前記サンプルホールド用キャパシタへ信号を入力する経路を遮断するように前記サンプルホールド回路を制御する。
この構成によれば、前記サンプルホールド回路の前記前段から前記サンプルホールド用キャパシタへ無駄な電流が流れなくなる。
【0015】
好適に、前記フィルタ回路は、前記積分回路の一対の入力ノードとコモンモード基準電圧とを接続する経路に設けられたコモンモードスイッチ回路を有し、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合に前記コモンモードスイッチ回路をオンし、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合に前記コモンモードスイッチ回路をオフする。
この構成によれば、前記積分回路における前記初期状態の設定が解除されて前記積分回路の信号の積分が再開されるときに、前記積分回路における前記一対の入力ノードの電圧が前記コモンモード基準電圧になっている。このとき、前記積分回路では、負帰還制御が正常に働いている場合に近い状態で積分動作が開始され易くなる。これにより、前記フィルタ回路の出力信号に応じて前記補正信号供給回路から出力される前記補正信号は、速やかに適正なレベルへ戻り易くなるため、負帰還制御が正常な状態へ速やかに復帰し易くなる。
更に、この場合、前記チョッパ増幅回路と前記積分回路との間の信号経路に設けられた前記サンプルホールド回路において、前記前段の前記チョッパ増幅回路から前記サンプルホールド用キャパシタへ信号を入力する経路を遮断することにより、前記チョッパ増幅回路と前記コモンモード基準電圧とが短絡して、前記チョッパ増幅回路から前記コモンモード基準電圧に電流が流れることを防止できる。
【0016】
好適に、前記サンプルホールド回路は、一対のノードの間で直列接続された2つの前記サンプルホールド用キャパシタをそれぞれ含む第1キャパシタ回路及び第2キャパシタ回路と、前記第1キャパシタ回路の前記一対のノードと前記チョッパ増幅回路の一対の出力ノードとを接続する経路に設けられた第1スイッチ回路と、前記第1キャパシタ回路の前記一対のノードと前記積分回路の前記一対の入力ノードとを接続する経路に設けられた第2スイッチ回路と、前記第2キャパシタ回路の前記一対のノードと前記チョッパ増幅回路の前記一対の出力ノードとを接続する経路に設けられた第3スイッチ回路と、前記第2キャパシタ回路の前記一対のノードと前記積分回路の前記一対の入力ノードとを接続する経路に設けられた第4スイッチ回路とを含み、前記第1キャパシタ回路及び前記第2キャパシタ回路は、前記直列接続された2つの前記サンプルホールド用キャパシタの中間接続ノードが基準電位に接続されており、前記制御回路は、前記サンプルホールド回路において前記チョッパ動作に同期した信号の保持を行わせる場合、前記第1スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をオンするとともに前記第2スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をオフする第1スイッチ状態と、前記第1スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をオフするとともに前記第2スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をオンする第2スイッチ状態とを、前記チョッパ動作の1サイクルごとに交互に切り替え、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記第1スイッチ回路及び前記第3スイッチ回路をそれぞれオフするとともに、前記第2スイッチ回路及び前記第4スイッチ回路をそれぞれオンする。
この構成によれば、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記第1キャパシタ回路及び前記第2キャパシタ回路における各前記サンプルホールド用キャパシタには、前記コモンモード基準電圧に応じた電圧がそれぞれ印加される。
【0017】
好適に、前記制御回路は、前記積分回路における信号の積分の状態を前記初期状態に設定する場合、前記チョッパ増幅回路の前記チョッパ動作を停止し、前記積分回路における前記初期状態の設定を解除する場合、前記チョッパ増幅回路の前記チョッパ動作を再開する。
この構成によれば、前記積分回路における信号の積分の状態が前記初期状態に設定されてから当該設定が解除されるまでの間、前記チョッパ増幅回路の前記チョッパ動作が停止される。これにより、前記チョッパ動作に伴う雑音の発生が抑制される。
【0018】
好適に、前記検出回路は、前記メイン増幅回路の出力信号、前記メイン増幅回路の入力信号及び前記チョッパ増幅回路の出力信号の少なくとも1つに基づいて前記異常状態を検出する。
【0019】
好適に、前記メイン増幅回路は、縦続接続された複数の増幅段を含んでおり、前記補正信号供給回路は、前記複数の増幅段の縦続接続された中間のノードに前記補正信号を供給する。
【0020】
本発明の第2の観点に係る電流センサは、被測定電流による磁界に応じた検出信号を出力する磁気センサと、前記磁気センサに作用する前記被測定電流による磁界を打ち消す方向に磁界を発生するコイルと、前記検出信号に応じて、前記磁気センサに作用する前記被測定電流による磁界と前記コイルに流れる電流による磁界とが平衡するよう前記コイルを駆動するコイル駆動回路とを備え、前記コイル駆動回路が、上記第1の観点に係る増幅回路を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、チョッパ増幅回路を用いて入力オフセット電圧のドリフトを低減できるとともに、過大な入力信号などの影響を受けて負帰還制御が正常に働かなくなった状態から正常状態へ復帰するまでの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、オフセット補正回路における要部の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、制御回路における要部の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、各制御信号のタイミングを説明するための図である。
【
図5】
図5は、各制御信号のタイミングを説明するための図である。
【
図6】
図6は、異常状態が検出された場合のスイッチの状態を示す図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、異常状態から正常状態へ戻るときの出力波形の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、異常状態が検出された場合におけるオフセット補正回路の制御方法の比較例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る増幅回路の構成の一例を示す図である。
図1に示す増幅回路1は、入力信号の増幅を行うメイン増幅回路2と、メイン増幅回路2の入力オフセット電圧を補正するオフセット補正回路3と、検出回路4と、制御回路5とを有する。
【0024】
メイン増幅回路2は、縦続接続された2つの増幅段G1,G2を有する。増幅段G1が入力電圧Vaを増幅し、この増幅段G1の出力信号を増幅段G2が更に増幅する。
図1の例において、増幅段G1,G2は2つの差動入力端子(反転入力端子、非反転入力端子)と2つの差動出力端子(反転出力、非反転出力端子)を有する。増幅段G1の反転出力端子が増幅段G2の非反転入力端子に接続され、増幅段G1の非反転出力端子が増幅段G2の反転入力端子に接続される。例えば増幅段G1は、入力される電圧の差動信号(入力電圧Va)に応じた電流の差動信号(I1a,I1b)を出力する。増幅段G2は、入力される電流の差動信号(I1a,I1b)に応じた電圧の差動信号(出力電圧Vo)を出力する。
【0025】
メイン増幅回路2は、その出力が抵抗R1~R4の帰還回路によって入力に負帰還される。抵抗R2は増幅段G2の反転出力端子と増幅段G1の反転入力端子との間の経路に設けられ、抵抗R4は増幅段G2の非反転出力端子と増幅段G1の非反転入力端子との間の経路に設けられる。抵抗R1は増幅段G1の非反転入力端子と入力電圧Viの一方の入力端子との間の経路に設けられ、抵抗R3は増幅段G1の反転入力端子と入力電圧Viの他方の入力端子の間の経路に設けられる。抵抗R1とR3の抵抗値を「Rb」、抵抗R2とR4の抵抗値を「Rf」とすると、電圧増幅率はほぼ「Rf/Rb」となる。
【0026】
オフセット補正回路3は、負帰還の作用によってゼロ電圧に近くなるメイン増幅回路2の初段(増幅段G1)の入力電圧Vaを増幅し、増幅により得られた信号を補正信号としてメイン増幅回路2の中間のノード(増幅段G1の差動出力と増幅段G2の差動入力とを縦続接続したノードNm1、Nm2)に供給する。例えばオフセット補正回路3は、電流の差動信号(I5a,I5b)を補正信号としてノードNm1、Nm2に出力する。増幅段G2には、ノードNm1、Nm2において合成された電流の差動信号(I1a+I5a,I1b+I5b)が入力される。
【0027】
オフセット補正回路3の補正信号は、メイン増幅回路2の増幅段G2と帰還回路(抵抗R1~R4)を介して、メイン増幅回路2の入力(増幅段G1の入力)に負帰還される。メイン増幅回路2の入力電圧Vaが正の方向に増大すると、入力電圧Vaの正方向への増大が抑制されるように負帰還が働き、逆に入力電圧Vaが負の方向に増大すると、入力電圧Vaの負方向への増大が抑制されるように負帰還が働く。
【0028】
図1の例において、オフセット補正回路3は、メイン増幅回路2の入力電圧Vaを増幅するチョッパ増幅回路10と、チョッパ増幅回路10の出力信号に含まれる高周波成分を除去するフィルタ回路20と、フィルタ回路20の出力信号に応じた補正信号をメイン増幅回路2に供給する補正信号供給回路G5とを有する。
【0029】
チョッパ増幅回路10は、チョッパ動作によってメイン増幅回路2の入力電圧Vaを増幅する。チョッパ増幅回路10は、例えば
図1に示すように、チョッパ変調器CH1と、チョッパ増幅段G3と、チョッパ復調器CH2とを有する。
【0030】
チョッパ変調器CH1は、入力電圧Vaをクロック信号CLKに同期した制御信号Φchpに応じて変調する。例えばチョッパ変調器CH1は、差動信号である入力電圧Vaの極性を正負に反転するスイッチ回路を用いて構成される。
【0031】
チョッパ増幅段G3は、チョッパ変調器CH1において変調された入力電圧Vaの変調信号を増幅する回路である。
図1の例において、チョッパ増幅段G3の入力信号と出力信号はそれぞれ差動信号である。例えばチョッパ増幅段G3は、入力される電圧の差動信号に応じた電流の差動信号を出力してもよい。
【0032】
チョッパ復調器CH2は、チョッパ増幅段G3において増幅された変調信号を制御信号Φchpに応じて復調する。例えばチョッパ復調器CH2は、チョッパ増幅段G3から出力される差動信号の極性を正負に反転するスイッチ回路を用いて構成される。
【0033】
フィルタ回路20は、
図1の例において、サンプルホールド回路30と、積分回路40と、コモンモードスイッチ回路50を含む。
【0034】
サンプルホールド回路30及び積分回路40は、チョッパ増幅回路10と補正信号供給回路G5との間の信号経路に設けられている。
図1の例において、チョッパ増幅回路10の後段にサンプルホールド回路30が設けられ、サンプルホールド回路30の後段に積分回路40が設けられ、積分回路40の後段に補正信号供給回路G5が設けられている。コモンモードスイッチ回路50は、積分回路40の入力に設けられている。
【0035】
サンプルホールド回路30は、チョッパ増幅回路10の出力に含まれるリップルを除去する回路であり、クロック信号CLKに同期した制御信号Φchpの周波数成分を減衰するノッチフィルタとして動作する。サンプルホールド回路30は、チョッパ増幅回路10のチョッパ動作に同期して、前段のチョッパ増幅回路10から入力した信号を後述するサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4(
図2)に保持するとともに、これらのキャパシタ(Cd1~Cd4)に保持した信号を後段の積分回路40に出力する。
【0036】
サンプルホールド回路30は、例えば
図2に示すように、第1キャパシタ回路301及び第2キャパシタ回路302と、第1スイッチ回路311と、第2スイッチ回路312と、第3スイッチ回路313と、第4スイッチ回路314とを含む。
【0037】
第1キャパシタ回路301は、一対のノードN5及びN6の間で直列接続された2つのサンプルホールド用キャパシタCd1及びCd2を含む。2つのサンプルホールド用キャパシタCd1及びCd2の中間接続ノードは、基準電位GNDに接続される。
第2キャパシタ回路302は、一対のノードN7及びN8の間で直列接続された2つのサンプルホールド用キャパシタCd3及びCd4を含む。2つのサンプルホールド用キャパシタCd3及びCd4の中間接続ノードは、基準電位GNDに接続される。
【0038】
第1スイッチ回路311は、第1キャパシタ回路301の一対のノードN5及びN6とチョッパ増幅回路10の一対の出力ノードN3及びN4とを接続する経路に設けられている。
図2の例において、第1スイッチ回路311は、ノードN5とノードN3との間の経路に設けられたスイッチS3、及び、ノードN6とノードN4との間の経路に設けられたスイッチS4を含む。
第2スイッチ回路312は、第1キャパシタ回路301の一対のノードN5及びN6と積分回路40の一対の入力ノードN1及びN2とを接続する経路に設けられている。
図2の例において、第2スイッチ回路312は、ノードN5とノードN1との間の経路に設けられたスイッチS5、及び、ノードN6とノードN2との間の経路に設けられたスイッチS6を含む。
第3スイッチ回路313は、第2キャパシタ回路302の一対のノードN7及びN8とチョッパ増幅回路10の一対の出力ノードN3及びN4とを接続する経路に設けられている。
図2の例において、第3スイッチ回路313は、ノードN7とノードN3との間の経路に設けられたスイッチS7、及び、ノードN8とノードN4との間の経路に設けられたスイッチS8を含む。
第4スイッチ回路314は、第2キャパシタ回路302の一対のノードN7及びN8と積分回路40の一対の入力ノードN1及びN2とを接続する経路に設けられている。
図2の例において、第4スイッチ回路314は、ノードN7とノードN1との間の経路に設けられたスイッチS9、及び、ノードN8とノードN2との間の経路に設けられたスイッチS10を含む。
【0039】
第1スイッチ回路311は制御信号Φ1に応じてオンオフし、第2スイッチ回路312は制御信号Φ2に応じてオンオフし、第3スイッチ回路313は制御信号Φ3に応じてオンオフし、第4スイッチ回路314は制御信号Φ4に応じてオンオフする。
【0040】
積分回路40は、前段のサンプルホールド回路30から入力される信号を積分し、積分した信号を後段の補正信号供給回路G5に出力する。積分回路40は、サンプルホールド回路30の出力に含まれる高周波成分(特に、チョッパ復調器CH2のチョッパ動作によって高調波となった入力電圧Vaのドリフト成分)を除去する。積分回路40は、例えば
図1に示すように、サンプルホールド回路30と補正信号供給回路G5との間の信号経路に設けられた積分用増幅段G4と、積分用増幅段G4の入力と出力との間の負帰還経路に設けられた積分用キャパシタCs1及びCs2と、積分用キャパシタCs1及びCs2に充電された電荷を放電する放電回路401及び402とを含む。
【0041】
図1の例において、積分用増幅段G4の入力信号と出力信号はそれぞれ差動信号である。積分用増幅段G4の非反転入力端子がサンプルホールド回路30を介してチョッパ増幅回路10の出力ノードN3に接続され、積分用増幅段G4の反転入力端子がサンプルホールド回路30を介してチョッパ増幅回路10の出力ノードN4に接続される。例えば積分用増幅段G4は、入力される電圧の差動信号に応じた電流の差動信号を出力してもよい。
【0042】
積分用キャパシタCs1は、積分用増幅段G4の反転出力端子と非反転入力端子との間の経路に設けられる。積分用キャパシタCs2は、積分用増幅段G4の非反転出力端子と反転入力端子との間の経路に設けられる。
図1の例において、放電回路401は積分用キャパシタCs1と並列に接続されたスイッチであり、放電回路402は積分用キャパシタCs2と並列に接続されたスイッチである。放電回路401及び402は、制御信号Φstpに応じてオンオフする。
【0043】
コモンモードスイッチ回路50は、積分回路40の一対の入力ノードN1及びN2とコモンモード基準電圧Vrとを接続する経路に設けられており、制御信号Φstpに応じてオンオフする。
図2の例において、コモンモードスイッチ回路50は、ノードN1とコモンモード基準電圧Vrとの間の経路に設けられたスイッチS1、及び、ノードN2とコモンモード基準電圧Vrとの間の経路に設けられたスイッチS2を含む。コモンモード基準電圧Vrは、例えば、電源電圧に対して2分の1の電圧に設定される。
【0044】
図1に戻る。
補正信号供給回路G5は、前段の積分回路40の出力信号(電圧Vc)に応じた補正信号(I5a,I5b)を増幅段G1及び増幅段G2の縦続接続された中間のノードNm1及びNm2に供給する。補正信号供給回路G5は、入力される電圧の差動信号(電圧Vc)に応じた電流の差動信号(I5a,I5b)を出力する増幅回路である。
図1の例において、補正信号供給回路G5の非反転入力端子が積分用増幅段G4の反転出力端子に接続され、補正信号供給回路G5の反転入力端子が積分用増幅段G4の非反転出力端子に接続される。補正信号供給回路G5の反転出力端子は、増幅段G1の反転出力端子及び増幅段G2の非反転入力端子につながるノードNm1に接続され、補正信号供給回路G5の非反転出力端子は、増幅段G1の非反転出力端子及び増幅段G2の反転入力端子につながるノードNm2に接続される。
【0045】
検出回路4は、メイン増幅回路2に入力される信号のレベルが正常範囲を超えた異常状態を検出する。すなわち、検出回路4は、過大な入力電圧Viが印加されることによって各回路のバイアス電圧等が異常な状態になり、負帰還制御が正常に働かなくなったことを検出する。
図1の例において、検出回路4は、メイン増幅回路2の出力電圧Voに基づいてこの異常状態を検出する。すなわち、検出回路4は、差動信号である出力電圧Voの正側の電圧Vop及び負側の電圧Vonをそれぞれしきい値Vthと比較し、いずれか一方がしきい値Vthより高い電圧となった場合、異常状態が発生したことを検出する。しきい値Tthは、例えば、メイン増幅回路2において線形動作が保証される電圧の上限値より高い値(例えば電源電圧の90%程度)に設定される。
【0046】
図1に示す検出回路4は、比較器41及び42と、OR回路43を含む。比較器41は、電圧Vopがしきい値Vthを超えた場合にハイレベルの信号を出力し、比較器42は、電圧Vonがしきい値Vthを超えた場合にハイレベルの信号を出力する。OR回路43は、比較器41及び42のいずれかがハイレベルの信号を出力する場合、異常状態が発生したことを示すハイレベルの検出信号Φeを出力する。
【0047】
制御回路5は、オフセット補正回路3を制御する回路であり、上述した制御信号Φchp、Φ1~Φ4、Φstpを生成する。
【0048】
制御回路5は、通常の動作において、チョッパ増幅回路10のチョッパ動作の1サイクルごとに、サンプルホールド回路30の第1キャパシタ回路301及び第2キャパシタ回路302を前段(チョッパ増幅回路10)の出力へ交互に切り替えて接続するとともに、前段(チョッパ増幅回路10)の出力から切り離された方のキャパシタ回路(第1キャパシタ回路301又は第2キャパシタ回路302)を後段(積分回路40)の入力に接続する。すなわち、制御回路5は、サンプルホールド回路30においてチョッパ動作に同期した信号の保持を行わせる場合、第1スイッチ回路311及び第4スイッチ回路314をオンするとともに第2スイッチ回路312及び第3スイッチ回路313をオフする「第1スイッチ状態」と、第1スイッチ回路311及び第4スイッチ回路314をオフするとともに第2スイッチ回路312及び第3スイッチ回路313をオンする「第2スイッチ状態」とを、チョッパ動作の1サイクル(クロック信号CLKの1サイクル)ごとに交互に切り替える。
図3の例において、サンプルホールド回路30は「第1スイッチ状態」になっている。
【0049】
なお、この場合、制御回路5は、「第1スイッチ状態」と「第2スイッチ状態」との切り替えのタイミングと、チョッパ増幅回路10において信号レベルが切り替わるタイミングとを一定の位相だけずらす。例えば、制御回路5は、チョッパ増幅回路10において信号レベルが切り替わる一のタイミングと、当該一のタイミングの次にチョッパ増幅回路10において信号レベルが切り替わるタイミングとの中間の時点において、「第1スイッチ状態」と「第2スイッチ状態」との切り替えを行う。
【0050】
他方、制御回路5は、検出回路4において異常状態が検出された場合、積分回路40における信号の積分の状態を初期状態に設定する。例えば制御回路5は、積分回路40の積分用キャパシタCs1及びCs2に充電される電荷をそれぞれ放電回路401及び402によって放電する。
【0051】
制御回路5は、積分回路40における信号の積分の状態を初期状態に設定する場合(放電回路401及び402による放電を行う場合)、サンプルホールド回路30によるチョッパ動作に同期した信号の保持を停止するとともに、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4に保持する信号のレベルを初期レベルに設定する。
具体的には、制御回路5は、第1スイッチ回路311及び第3スイッチ回路313をそれぞれオフするとともに、第2スイッチ回路312及び第4スイッチ回路314をそれぞれオンする。また、制御回路5は、コモンモードスイッチ回路50をオンさせて、積分回路40の入力ノードN1及びN2をそれぞれコモンモード基準電圧Vrに接続する。
これにより、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4の各々には、コモンモードスイッチ回路50を介してコモンモード基準電圧Vr(初期レベルの電圧)が印加される。また、サンプルホールド回路30の前段(チョッパ増幅回路10)からサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4へ信号を入力する経路が、第1スイッチ回路311及び第3スイッチ回路313によって遮断された状態になる。
更にこの場合、制御回路5は、チョッパ増幅回路10のチョッパ動作を停止させる。すなわち、制御回路5は、クロック信号CLKに同期した制御信号Φchpの周期的な変化を停止させる。チョッパ動作が停止することにより、チョッパ増幅回路10におけるノイズの発生が抑制される。
【0052】
制御回路5は、検出回路4において異常状態が検出された後、メイン増幅回路2に入力される信号のレベルが正常範囲に含まれた正常状態に戻ったことが検出回路4において検出された場合、積分回路40における初期状態の設定を解除する(放電回路401及び402による放電を停止する)。例えば、制御回路5は、検出回路4において異常状態が検出された後、検出回路4において正常状態に戻ったことが検出された場合に、正常状態へ戻ったことが検出された時から遅延時間が経過した後で、積分回路40における初期状態の設定を解除する(放電回路401及び402による放電を停止する)。この遅延時間は、例えば、検出回路4において正常状態に戻ったことが確実に検出されることが見込まれる時間に設定される。
【0053】
制御回路5は、積分回路40における初期状態の設定(放電回路401及び402による放電)を解除する場合、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4における初期レベルの設定を解除する(サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4へのコモンモード基準電圧Vrの印加を停止する)とともに、サンプルホールド回路30によるチョッパ動作に同期した信号の保持(「第1スイッチ状態」と「第2スイッチ状態」とを交互に切り替える動作)を再開する。この場合、制御回路5は、コモンモードスイッチ回路50をオフさせて、積分回路40の入力ノードN1及びN2をそれぞれコモンモード基準電圧Vrから切り離す。また、制御回路5は、停止させていたチョッパ増幅回路10のチョッパ動作を再開する。
【0054】
図3は、制御回路5において制御信号Φ1~Φ4及びΦstpを生成する部分の構成の一例を示す図である。制御回路5は、例えば
図3に示すように、遅延回路51と、NOT回路52と、NAND回路53及び54と、XOR回路55及び56とを有する。
【0055】
遅延回路51は、検出回路4から出力される検出信号Φeに遅延を与え、制御信号Φstpとして出力する。NOT回路52は、制御信号Φstpを論理反転させてNAND回路53及び54に入力する。NAND回路53は、NOT回路52の出力と制御信号XΦbとの否定論理積を制御信号Φ2として出力する。NAND回路54は、NOT回路52の出力と制御信号XΦaとの否定論理積を制御信号Φ4として出力する。XOR回路55は、制御信号Φ2と制御信号Φstpとの排他的論理和を制御信号Φ3として出力する。XOR回路56は、制御信号Φ4と制御信号Φstpとの排他的論理和を制御信号Φ1として出力する。なお、制御信号XΦa及びXΦbは、クロック信号CLKの1サイクルごとにハイレベルとローレベルとが切り替わる信号であり、一方がハイレベルのときに他方がローレベルになる。
【0056】
検出信号Φeがローレベルとなる正常状態の場合、制御信号Φstpがローレベルになり、NOT回路52の出力信号がハイレベルになる。この場合、制御信号Φ1及びΦ4は制御信号XΦaを論理反転させた信号にそれぞれ等しくなり、制御信号Φ2及びΦ3は制御信号XΦbを論理反転させた信号にそれぞれ等しくなる。
他方、検出信号Φeがハイレベルとなる異常状態の場合、制御信号Φstpがハイレベルになり、NOT回路52の出力信号がローレベルになる。この場合、制御信号Φ2及びΦ4はそれぞれハイレベルで一定になり、制御信号Φ1及びΦ3はローレベルで一定になる。
【0057】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る増幅回路1の動作について説明する。
図4及び
図5は、各制御信号のタイミングを説明するための図である。
図4は正常状態から異常状態へ変化する場合を示し、
図5は異常状態から正常状態へ戻る場合を示す。
【0058】
(通常状態での動作)
過大な入力電圧Viが入力されておらず、メイン増幅回路2の入力電圧Vaが正常範囲に含まれている場合、検出回路4の検出信号Φeがローレベルになる。この場合、
図4及び
図5に示すように、制御信号Φ1及びΦ4と制御信号Φ2及びΦ3とが逆相になり、第1スイッチ状態の期間ST1と第2スイッチ状態の期間ST2とが交互に繰り返される。これにより、サンプルホールド回路30においてチョッパ増幅回路10のチョッパ動作に同期した信号保持動作が行われるため、チョッパ増幅回路10において生じるリップルが効果的に低減する。
【0059】
通常状態の動作では負帰還制御が正常に働くため、オフセット補正回路3における入力オフセット電圧の補正が有効に働く。オフセット補正回路3の入力オフセット電圧が非常に小さく、かつ、オフセット補正回路3の直流ゲインが十分に大きいことにより、増幅回路1の入力オフセット電圧はメイン増幅回路2の単体での入力オフセット電圧に比べて大幅に小さくなる。
【0060】
増幅段G1、チョッパ増幅段G3、積分用増幅段G4、補正信号供給回路G5の直流ゲインをそれぞれ「A1」、「A3」、「A4」、「A5」とした場合、チョッパ増幅段G3の入力オフセット電圧をゼロとみなすと、出力残留オフセット電圧Vofs_rは、以下の式で表される。
Vofs_r = Vos×A1/(A3・A4・A5) …(1)
【0061】
ここで「Vos」は、増幅段G1の入力オフセット電圧を示す。この式(1)から分かるように、出力残留オフセット電圧Vofs_rを小さくするためには、増幅段G1の直流ゲインA1に比べてオフセット補正回路3の直流ゲイン(A3・A4・A5)を十分に大きくする必要がある。オフセット補正回路3を大きな直流ゲインで安定に動作させるため、オフセット補正回路3はメイン増幅回路2に比べて時定数が大きな系となっている。
【0062】
(異常状態での動作:オフセット補正回路3の制御をしない場合)
次に異常状態における動作の比較例として、本実施形態におけるオフセット補正回路3の制御を何も行わない場合について説明する。
【0063】
過大な入力電圧Viによってメイン増幅回路2及びオフセット補正回路3の出力電圧Voが飽和すると、負帰還制御のループが形成されなくなり、増幅段G1と補正信号供給回路G5から共に飽和レベルの電流が出力される。この飽和状態において、入力電圧Viがゼロ電圧の状態へ戻ると、比較的高速なメイン増幅回路2では入力に追従して飽和状態が解消され、増幅段G1の出力電流が小さくなり、その分の出力電圧が低下する。他方、上述したようにオフセット補正回路3はメイン増幅回路2に比べて時定数が非常に大きいため、オフセット補正回路3の飽和状態は入力電圧Viがゼロ電圧に戻っても解消されず、補正信号供給回路G5から過剰な電流が出力され続ける。このため、入力電圧Viがゼロ電圧の状態へ戻っても、出力電圧Voがゼロ電圧まで低下しない状態が持続する。その後、補正信号供給回路G5の飽和状態が解消され始めると、補正信号供給回路G5の出力電流が適正なレベルまでゆっくりと低下し、出力電圧Voもゆっくりとゼロ電圧に向かって低下する。このように、異常状態においてオフセット補正回路3の制御を何も行わないと、異常状態から復帰するまでの時間が非常に長くなる。
【0064】
(異常状態での動作:サンプルホールド回路30の動作停止のみを行う場合)
次に、異常状態における動作の比較例として、サンプルホールド回路30の信号保持動作の停止のみを行う場合について説明する。
【0065】
この比較例では、本実施形態のように積分回路40の制御は行わず、サンプルホールド回路30の信号保持動作の停止のみを行う。すなわち、
図9において示すように、サンプルホールド回路30における第1スイッチ回路311~第4スイッチ回路314の各スイッチをオンすることのみを行う。
【0066】
異常状態においてサンプルホールド回路30の各スイッチをオンさせて、信号をスルーさせるようにすることで、サンプルホールド回路30のサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4の時定数に起因する応答の遅れが無くなる。これにより、オフセット補正回路3の応答速度がその分だけ早くなり、飽和状態からの回復も早くなるため、異常状態から復帰するまでの時間が短くなる。しかしながら、この手法では、オフセット補正回路3の帯域を制限している積分回路40の応答速度を早めることができないため、時間短縮の効果が限定的になる。また、オフセット補正回路3の安定性を高めるために積分回路40の積分用キャパシタCs1、Cs2の静電容量を大きくすると、オフセット補正回路3において飽和状態が解消されるまでの時間が相対的に長くなる。この場合、サンプルホールド回路30の各スイッチをオンさせることによる時間短縮の効果が更に小さくなってしまうという問題がある。
【0067】
(異常状態での動作:本実施形態の制御を行う場合)
次に、異常状態において本実施形態の方法によりオフセット補正回路3の制御を行う場合について説明する。
【0068】
図4に示すように、検出回路4において異常状態が検出されると、検出信号Φeがローレベルからハイレベルに立ち上がり(時刻t1)、この立ち上がりから遅延回路51の遅延時間Td1を経て、制御信号Φstpがローレベルからハイレベルに立ち上がる(時刻t2)。これにより、オフセット補正回路3のサンプルホールド回路30、積分回路40、コモンモードスイッチ回路50における各スイッチは、
図6に示すような状態となる。
【0069】
図6に示すように、積分回路40では、放電回路401及び402がそれぞれ積分用キャパシタCs1及びCs2の電荷を放電する。これにより、積分回路40における信号の積分の状態である積分用キャパシタCs1及びCs2の電荷が、それぞれ略ゼロの初期状態になる。検出回路4において正常状態に戻ったことが検出されて放電回路401及び402の放電が解除されると、積分回路40では、積分用キャパシタCs1及びCs2の電荷がゼロとなった初期状態から信号の積分が開始される。そのため、積分用キャパシタCs1及びCs2に飽和状態の電荷が蓄積された状態から積分を再開する場合に比べて、異常状態から復帰するまでの時間が大幅に短くなる。
【0070】
また、
図6に示すように、積分回路40の入力ノードN1及びN2がコモンモードスイッチ回路50によってそれぞれコモンモード基準電圧Vrに接続される。これにより、検出回路4において正常状態に戻ったことが検出されてコモンモードスイッチ回路50がオフすると、積分回路40では、入力ノードN1及びN2の電圧がコモンモード基準電圧Vrに近い状態で信号の積分が再開される。そのため、入力ノードN1及びN2の電圧が飽和状態の影響によりコモンモード基準電圧Vrからずれた状態で信号の積分が開始される場合に比べて、異常状態から復帰するまでの時間が短くなる。
【0071】
また、
図6に示すように、検出回路4において異常状態が検出された場合には、サンプルホールド回路30のサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4にそれぞれコモンモード基準電圧Vrが印加される。そのため、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4がコモンモード基準電圧Vrからずれた電圧になっている状態でサンプルホールド回路30の信号保持動作が再開される場合に比べて、異常状態から復帰するまでの時間が短くなる。
【0072】
また、
図6に示すように、サンプルホールド回路30においてチョッパ増幅回路10とサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4との信号経路が遮断されているため、チョッパ増幅回路10の出力に不要な負荷電流が流れなくなる。
【0073】
また、検出回路4において異常状態が検出された場合、チョッパ増幅回路10におけるチョッパ動作が停止される。これにより、異常状態において飽和状態となったチョッパ増幅回路10においてチョッパ動作による雑音が発生しなくなる。
【0074】
また、
図5に示すように、検出回路4において異常状態から正常状態に戻ったことが検出されると、検出信号Φeがハイレベルベルからローレベルに立ち下がり(時刻t3)、この立ち下がりから遅延回路51の遅延時間Td2を経て、制御信号Φstpがハイレベルからローレベルに立ち下がる(時刻t4)。制御信号Φstpがローレベルになると、オフセット補正回路3において上述した通常状態の動作が再開される。このような遅延時間を設けることにより、検出回路4における異常状態から正常状態への変化の検出タイミングが多少早かったとしても、遅延時間が経過した時点では概ね正常状態になるようにすることが可能となり、異常状態で通常状態の動作が開始され難くなる。
【0075】
図7A及び
図7Bは、異常状態から正常状態へ戻るときの出力波形の一例を示す図である。
図7Aは出力電圧Voの正側の電圧Vopの波形を示し、
図7Aは出力電圧Voの負側の電圧Vonの波形を示す。これらの図において、点線は上述した「オフセット補正回路3の制御をしない場合」の波形であり、一点鎖線は上述した「サンプルホールド回路30の動作停止のみを行う場合」の波形であり、実線はオフセット補正回路3に対して本実施形態の制御を行った場合の波形である。時刻tsは、過大な入力電圧Vinがゼロ電圧に設定された時刻を示す。これらの波形を比較して分かるように、本実施形態の制御を行うことによって、過大な入力電圧Vinによる異常状態から復帰するまでの時間を大幅に短くすることができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る増幅回路1によれば、メイン増幅回路2に入力される信号のレベルが正常範囲を超えた異常状態が検出された場合、積分回路40における信号の積分の状態が初期状態(積分用キャパシタCs1及びCs2の電荷が放電された状態)に設定される。その後、メイン増幅回路2に入力される信号のレベルが正常範囲に含まれた正常状態に戻ったことが検出された場合、積分回路40における初期状態の設定(積分用キャパシタCs1及びCs2の放電)が解除される。このとき、積分回路40における信号の積分が初期状態から再開されるため、積分回路40では、負帰還制御が正常に働いている場合に近い状態で積分動作が開始され易くなる。これにより、フィルタ回路20の出力信号に応じて補正信号供給回路G5から出力される補正信号は、速やかに適正なレベルへ戻り易くなるため、負帰還制御が正常な状態へ速やかに復帰し易くなる。
【0077】
本実施形態に係る増幅回路1によれば、積分回路40における信号の積分の状態が初期状態に設定される場合、サンプルホールド回路30によるチョッパ動作に同期した信号の保持が停止されるとともに、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4に保持される信号のレベルが初期レベル(コモンモード基準電圧Vr)に設定される。その後、積分回路40における初期状態の設定(積分用キャパシタCs1及びCs2の放電)が解除される場合、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4における初期レベルの設定(コモンモード基準電圧Vrの印加)が解除されるとともに、サンプルホールド回路30によるチョッパ動作に同期した信号の保持が再開される。このとき、サンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4に保持される信号のレベルが初期レベル(コモンモード基準電圧Vr)になっている状態からサンプルホールド回路30の動作が再開されるため、サンプルホールド回路30では、負帰還制御が正常に働いている場合に近い状態で信号保持動作が開始され易くなる。これにより、フィルタ回路20の出力信号に応じて補正信号供給回路G5から出力される補正信号は、速やかに適正なレベルへ戻り易くなるため、負帰還制御が正常な状態へ速やかに復帰し易くなる。
【0078】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、本発明に係る出力回路を用いた磁気平衡式の電流センサに関するものである。
【0079】
図8は、第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図である。
図8に示す電流センサは、導体7に流れる被測定電流Isによる磁界に応じた検出信号S60を出力する磁気センサ60と、磁気センサ60に作用する被測定電流Isによる磁界を打ち消す方向に磁界を発生するコイル70と、コイル駆動回路80とを有する。
【0080】
図8の例において、磁気センサ60は、ブリッジ回路61を構成する4つの磁気抵抗効果素子(MR1~MR4)と、ブリッジ回路61に一定の電流を供給する定電流源62を有する。検出信号S60は、被測定電流Isによる磁界とコイル70に流れる電流Idによる磁界とが平衡する場合、所定の基準レベルとなる。2つの磁界が平衡していない場合、検出信号S60は、2つの磁界の大小に応じて、基準レベルより大きくなるか又は小さくなる。
【0081】
コイル駆動回路80は、磁気センサ60から出力される検出信号S60に応じて、磁気センサ60に作用する被測定電流Isによる磁界とコイル70に流れる電流Idによる磁界とが平衡するようにコイル70を駆動する。すなわち、コイル駆動回路80は、検出信号S60のレベルが上述した基準レベルと等しくなるように、コイル70の電流Idを負帰還制御する。
【0082】
コイル70の電流Idは、被測定電流Isにほぼ比例しており、被測定電流Isの測定結果を表す。この電流Idは、例えば
図8において示すように、コイル70に設けたシャント抵抗Rsに発生する電圧Vsとして出力される。
【0083】
コイル駆動回路80は、磁気センサ60から出力される検出信号S60を増幅するため、上述した本発明の実施形態に係る増幅回路1を有している。そのため、導体7に流れる被測定電流Isを直流から高い周波数まで高い精度で測定できる。また、過大な被測定電流Isによって測定値が最大値まで振り切れた場合でも、被測定電流Isが測定可能なレベルまで低下すると測定値が被測定電流Isに素早く追従するため、正確な測定値を得ることができる。
【0084】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。すなわち、上述した実施形態において挙げられている回路構成は一例であり、同様な機能を実現する他の回路に置き換えることができる。
【0085】
上述した実施形態では、チョッパ増幅回路10と積分回路40との間の信号経路にサンプルホールド回路30が設けられているが、本発明の他の実施形態では、積分回路と補正信号供給回路との間の信号経路にサンプルホールド回路が設けられていてもよい。
【0086】
上述した実施形態では検出回路4が出力電圧Voに基づいて異常状態を検出しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、メイン増幅回路2の入力信号(電圧Va)や、チョッパ増幅回路10の出力信号(電圧Vb)などに基づいて異常状態を検出してもよい。また、異常状態の検出は、1つの信号だけでなく、複数の信号に基づいて行ってもよい。
【0087】
上述した実施形態では、コモンモードスイッチ回路50において積分回路40の入力ノードN1及びN2をコモンモード基準電圧Vrに接続しているが、本発明の他の実施形態では、積分回路40の入力ノードN1及びN2を短絡するだけでもよい。
【0088】
上述した実施形態では、異常状態が検出された場合にサンプルホールド回路30のサンプルホールド用キャパシタCd1~Cd4とサンプルホールド回路30の前段(チョッパ増幅回路10)の入力とが遮断されているが、本発明はこの例に限定されない。過大な入力によって飽和状態となっている場合、負帰還制御が成立していないため、サンプルホールド回路30において上述した信号経路の遮断を行う代わりに、例えば
図9に示すように、サンプルホールド回路30の前段と後段とをスイッチによって直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…増幅回路、2…メイン増幅回路、3…オフセット補正回路、4…検出回路、41,42…比較器、43…OR回路、5…制御回路、51…遅延回路、52…NOT回路、53,54…NAND回路、55,56…XOR回路、7…導体、10…チョッパ増幅回路、20…フィルタ回路、30…サンプルホールド回路、301…第1キャパシタ回路、302…第2キャパシタ回路、311…第1スイッチ回路、312…第2スイッチ回路、313…第3スイッチ回路、314…第4スイッチ回路、40…積分回路、401…放電回路、402…放電回路、50…コモンモードスイッチ回路、60…磁気センサ、601…ブリッジ回路、70…コイル、80…コイル駆動回路、G1,G2…増幅段、G3…チョッパ増幅段、G4…積分用増幅段、G5…補正信号供給回路、CH1…チョッパ変調器、CH2…チョッパ復調器、Cs1,Cs2…積分用キャパシタ、Cd1~Cd4…サンプルホールド用キャパシタ