(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】積層体及び被覆構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20241021BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20241021BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B7/027
E04B1/94 V
(21)【出願番号】P 2021037527
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
(72)【発明者】
【氏名】柳樂 大貴
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 幸矢
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213330(JP,A)
【文献】特開2013-185419(JP,A)
【文献】特開2013-213329(JP,A)
【文献】特開2013-130005(JP,A)
【文献】国際公開第2010/067637(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/125838(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3248061(JP,U)
【文献】特開2022-139418(JP,A)
【文献】特開2022-126907(JP,A)
【文献】特開2022-160726(JP,A)
【文献】特開2008-31796(JP,A)
【文献】特開2010-216228(JP,A)
【文献】特開2001-220840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
E04B1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の周囲が積層体によって囲まれた被覆構造体であって、
上記積層体は、
熱発泡性を有する積層体であり、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が積層されたものであり、
上記熱発泡層は、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有するものであり、
上記熱発泡層の厚みは、0.1~10mmであり、
上記吸熱層は、上記熱発泡層の裏面側に、間隔を空けて複数並設されている
ことを特徴とする
被覆構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体及び被覆構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物においては、建築物を火災から保護する目的で、柱、梁等の主要構造物を耐熱構造にすることが求められている。耐熱構造を施す方法の一つとして、主要構造物等の基材に、熱によって発泡する材料(熱発泡性被覆材)を被覆する方法がある。熱発泡性被覆材は、平常時は薄くて軽量であり、火災等による温度上昇には、発泡・炭化して断熱層を形成し、耐熱保護性を発揮するものである。
【0003】
このような熱発泡性被覆材を用いた被覆構造体について、種々の提案がなされている。その一例として、特許文献1には、断面矩形状の長尺木製基材の周囲を、熱発泡性被覆材で被覆し、さらにその外側の各面に接着剤を塗布した後、不燃性シート片を接合させることによって被覆構造体を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献では、被覆構造体を得る工程が繁雑であり、また耐熱保護性の点においても改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたもので、施工性、耐熱保護性等に優れた積層体及び被覆構造体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が積層された特定形状の積層体、及びその積層体を有する被覆構造体に想到し、本発明の完成に到った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.基材の周囲が積層体によって囲まれた被覆構造体であって、
上記積層体は、熱発泡性を有する積層体であり、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が積層されたものであり、
上記熱発泡層は、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有するものであり、
上記熱発泡層の厚みは、0.1~10mmであり、
上記吸熱層は、上記熱発泡層の裏面側に、間隔を空けて複数並設されている
ことを特徴とする被覆構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工性、耐熱保護性等に優れた被覆構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本発明の被覆構造体の一例を示す断面図である。
【
図4】本発明の被覆構造体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1:積層体
2,21~24:吸熱層
3:熱発泡層
4:接着材層
5:化粧層
6:基材
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明の積層体は、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が積層されたものであり、吸熱層は、上記熱発泡層の裏面側に、間隔を空けて複数並設されていることを特徴とする。本発明では、このような特定の積層体を用いて、基材の周囲を囲むことにより、効率良く被覆構造体が得られるため、施工性に優れている。そして、積層体を構成する吸熱層、及び熱発泡層の複合的な作用によって、優れた耐熱保護性を発揮することができる。
【0014】
[積層体]
本発明の積層体は、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が積層されたものである。
【0015】
本発明において、吸熱層は、温度上昇時に吸熱作用を示すものを用いることができる。吸熱層としては、結合水及び/又は自由水を有する層が好ましく、このような吸熱層は、温度上昇の際、結合水及び/又は自由水の脱水(蒸発等)により熱を吸収する性能を発揮することができる。ここで、結合水とは、吸熱層を構成する成分に結合した状態にある水であり、例えば、水和水、結晶水、吸着水等が挙げられる。一方、自由水とは、吸熱層を構成する成分との結びつきがない状態で吸熱層に含まれる、結合水以外の水である。
【0016】
吸熱層を構成する材料としては、例えば、セメント、石膏等を原料とする硬化物(例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード等)、珪酸カルシウム等を原料とする硬化物(例えば、珪酸カルシウム板等)、あるいは、吸水性ポリマー、ハイドロゲル等を内包する板、シート、硬化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0017】
本発明では、吸熱層を構成する好適な材料の一例として、例えば、石膏ボードが挙げられる。石膏ボードは、通常、硫酸カルシウム2水和物を主成分とすることから、結合水を多く含んでおり、100~200℃の温度領域内で吸熱作用を示す。そのため、炎や熱等による温度上昇の際に、安定した吸熱作用を発揮することができる。石膏ボードとしては、一般的な石膏ボードの他、不燃積層石膏ボード(表紙として不燃性の原紙を用いた石膏ボード)、強化石膏ボード(ガラス繊維等の無機繊維を混入した石膏を芯材とする石膏ボード)、ガラス繊維不織布入石膏ボード(ガラス繊維を混入した石膏を芯材とし、その表裏面にガラス繊維不織布を挿入した石膏ボード)等が使用できる。
【0018】
吸熱層の厚みは、断熱性、耐熱保護性、強度、軽量性等の点から、好ましくは1~30mm、より好ましくは3~28mmであり、さらに好ましくは5~25mmである。なお、本発明において「a~b」は、「a以上b以下」と同義である。
【0019】
熱発泡層としては、火災等により周囲温度が上昇して、熱発泡層の温度が所定の発泡温度に達すると、熱発泡層を構成する各原料等の作用によって発泡し、炭化断熱層を形成するものが使用できる。熱発泡層は、例えば、熱発泡性シート等によって形成することができる。
【0020】
熱発泡層の発泡温度は、炎や熱等による温度上昇の点から、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200~400℃である。
【0021】
熱発泡層は、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有する各成分の混合物からなるものが好適である。このうち、樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。難燃剤としては、例えばポリリン酸アンモニウム等が挙げられ、発泡剤としては、例えばメラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が挙げられる。また、炭化剤としては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、充填剤としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、無機繊維等が挙げられる。これら各成分は、1種又は2種以上で使用できる。
【0022】
熱発泡層を構成する各成分の混合比率(重量比率)は、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200~600重量部、発泡剤40~150重量部、炭化剤40~150重量部、及び充填剤50~160重量部であることが耐熱保護性等の点から好ましい。
【0023】
熱発泡層に用いられる熱発泡性シートは、上記各成分及び必要に応じ各種添加剤を含有する混合物がシート状に成形されたものを用いることができる。
【0024】
熱発泡層を形成する混合物に使用可能な添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0025】
熱発泡層の厚みは、用途等により適宜設定すれば良いが、耐熱保護性、軽量性等の点から、好ましくは0.1~10mmであり、より好ましくは0.3~8mmであり、さらに好ましく0.5~6mmである。
【0026】
熱発泡層は、上記各成分や添加剤を含む混合物の成形体のみから構成されたものであってもよいが、熱発泡層の表面ないし裏面に繊維質シート等が積層されたものであってもよい。このような繊維質シートとしては、例えば、有機繊維及び/又は無機繊維等を含む公知のシートを使用することができる。
【0027】
本発明では、例えば、接着材等を用いて各層を貼り合わせることができる。接着材としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン等を主原料とした水分散型、水溶性型、溶剤型の接着材等、公知のものを使用することができる。接着材には、必要に応じて、上述の熱発泡性層に配合されるような難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤等の添加剤を配合することができる。なお、本発明において、接着材には粘着材も包含される。
【0028】
本発明では、吸熱層と熱発泡層とを接着材層を介して積層することにより、熱発泡層が発泡して炭化断熱層を形成した際に、炭化断熱層の形状を保持して脱落を防止する性能等を発揮することができ、耐熱保護性等の効果を安定的に得ることができる。
【0029】
本発明の積層体では、吸熱層が、熱発泡層の裏面側に、間隔を空けて複数並設されている。
図1に本発明の積層体の一例(断面図)を示す。
図2は、
図1の積層体の斜視図である。
図1、2の積層体では、熱発泡層3の裏面側に、4つの吸熱層21~24が間隔を空けて並設されている。吸熱層21~24は、それぞれ、正面視において四角形(正方形または長方形)の板材である。熱発泡層3は、正面視において四角形(長方形)のシートである。熱発泡層3と吸熱層21~24とは、接着材層4を介して貼り合わされている。
【0030】
吸熱層どうしの間隔は、例えば、基材のサイズ、基材への被覆方法等に応じて、適宜設定することができる。
【0031】
図1、2の積層体は、4つの吸熱層が並設されたものであるが、本発明では少なくとも2つ以上の吸熱層が並設されていればよい。
【0032】
図1、2の積層体において、熱発泡層3は、吸熱層24の右側端部を超えて一方向に延びている。このように吸熱層の端部を超えて延びている熱発泡層は、下層の吸熱層の側面、あるいは、隣接する積層体の側面や表面等を覆うことができる。これにより、耐熱保護性等の効果を十分に得ることが可能となる。吸熱層の端部を超えて延びている熱発泡層の長さは、下層の吸熱層の厚み以上、または隣接する積層体の厚み以上であることが望ましい。吸熱層の端部を超えて延びている熱発泡層は、被覆構造体を形成する際に、適宜カットすることもできる。
【0033】
本発明の積層体では、さらに熱反射層を積層することができる。熱反射層の積層によって遮熱作用等がはたらき、耐熱保護性を高めることができる。熱反射層は、例えば、各吸熱層の裏面側、熱発泡層の裏面側、または熱発泡層の表面側等に設けることができる。
【0034】
熱反射層としては、例えば、熱反射性の高い金属製の板、シート、テープ等を用いることができる。熱反射層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、銅、銀等が挙げられ、この中でもアルミニウムが好適である。具体的に熱反射層としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウムテープ、アルミニウムクロス、アルミニウム箔・ガラス不織布積層シート、アルミニウム箔・メッシュ積層シート、アルミニウム箔・ガラスクロス複合シート、アルミニウム箔・合成樹脂積層シート等が挙げられる。例えば、アルミニウムテープを使用する際は、アルミニウム層の片面に粘着材層が形成されているテープなどを使用することができる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0035】
熱反射層の厚みは、熱反射性、耐熱保護性、軽量性等の点から、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.02~0.5mmであり、更に好ましくは、0.0
3~0.3mmである。
【0036】
[被覆構造体]
本発明では、上記積層体を用いて基材の周囲を被覆することにより、被覆構造体を得ることができる。
【0037】
基材としては、建築物、土木構築物等の構造物を構成する、柱、梁等が挙げられる。このような基材としては、例えば、セメント系材料、プラスチック、木質材、金属等の材料からなるものが挙げられる。これら基材の形状は、長尺であること好ましく、その断面形状としては、例えば、円形、多角形(四角形等)が挙げられる。
【0038】
本発明では、積層体の吸熱層側が基材に向き、熱発泡層側が外側に向くようにして、基材に積層体を設置する。積層体は、例えば、釘、ネジ、鋲、ピン、ボルト、ステープル等の固定具、あるいは、石膏系やセメント系の接着材等を用いて、基材に設置することができる。これにより、基材に対し、少なくとも吸熱層、及び熱発泡層が順に積層された被覆構造体を効率的に得ることができ、施工性の点で有利である。そして、上記順で各層が積層されることにより、火災等の熱による温度上昇を抑制する効果が高まり、耐熱保護性等において優れた効果が発揮され、基材の強度低下を抑制することができる。さらに、炭化断熱層の脱落防止性能等を発揮することもでき、耐熱保護性等の効果を安定的に得ることができる。
【0039】
積層体どうしの継ぎ目(積層体どうしが接する箇所)は、適宜処理することができる。このような継ぎ目の処理方法としては、例えば、熱発泡性コーティング材や熱発泡性シート等で継ぎ目を覆う(跨ぐ)方法、熱発泡性パテ材等で継ぎ目を充填する方法、継ぎ目を跨ぐように繊維状補強材を設置する方法、等が挙げられる。これら処理方法は、2種以上を組み合わせることもできる。継ぎ目を跨いだ熱発泡層や繊維状補強材等は、例えば、加熱、押圧等の処理によって平坦化することができる。
【0040】
基材の長尺方向では、積層体どうしが隣接するように突き合わせて設置することができる。積層体どうしの継ぎ目は、必要に応じ処理することができる。継ぎ目の処理方法としては、上述の方法等が採用できる。
【0041】
本発明の被覆構造体では、必要に応じ、熱発泡層の外側に化粧層を設けることができる。化粧層は、熱発泡層の発泡性を阻害しないものであればよい。化粧層としては、透明ないし不透明、無色ないし着色、無光沢ないし有光沢、単色ないし多色、平坦ないし凹凸等、種々の外観を呈するものが使用できる。本発明では、化粧層を設けることにより、被覆構造体の美観性、耐水性、耐候性等を高めることができる。
【0042】
化粧層は、例えば、積層体製造時に予め設けておくこともできるし、被覆構造体を形成した後に設けることもできる。化粧層は公知の方法で形成することができ、例えば、各種コーティング材を塗装する方法、あるいはフィルム、シート等を貼り付ける方法等を採用することができる。化粧層として、複数の材料を積層することもできる。
【0043】
本発明の被覆構造体は、例えば、建築、土木等の各分野において耐熱保護性が要求される用途に適用することができる。建築材料として用いる場合は、例えば、柱、梁等に適用することができる。本発明の被覆構造体は、例えば、JIS A1304:2017に規定される試験において所定の条件を満たす耐熱保護性(耐火性)を発揮することができる。このような性能は、例えば、各層の種類、積層態様、厚み等を選定することにより、適宜調整することができる。
【0044】
[具体例1]
図3に、本発明の被覆構造体の一例(断面図)を示す。
図3の被覆構造体では、
図1、2の積層体を用いて、長尺の角型基材を被覆している。具体的に、
図3の被覆構造体では、断面視において、吸熱層21~24がそれぞれ、基材6(角型基材)の四辺の外側に沿うようにして、積層体1が設置されている。積層体1において、吸熱層21~24の厚みは同じである。吸熱層21~24のサイズは、角型基材の一辺の長さに等しいものである。なお、ここに言うサイズとは、断面視において、基材の辺に沿った方向の長さである。
【0045】
基材6の角部(右上角部、右下角部、及び左下角部)では、熱発泡層3が曲げられており、これにより吸熱層21~24が四辺の外側に沿うように設置されている。各角部では、断面視三角形の空間が設けられている。基材6の左上角部では、
図1の積層体1が一周して、積層体1の左端と右端が接している。このような積層体どうしの継ぎ目は、上述の方法等によって適宜処理することができる。
【0046】
図3の被覆構造体では、角型基材の周囲全体が、吸熱層と熱発泡層との積層体によって覆われている。
図3の被覆構造体が、火災等によって高温に晒された場合には、熱発泡層3が発泡して炭化断熱層を形成するとともに、吸熱層2が吸熱作用を示すことにより、基材6の温度上昇を抑制し、その強度を保持することができる。
【0047】
図3では、各角部において、断面視三角形の空間が設けられているが、この空間には、例えばコーナー材(湿式または乾式)を設けることもできる。コーナー材としては、例えば、吸熱層と同様の材料等を使用することができる。また、各角部では、上記空間を設けずに、吸熱層の側面に沿って熱発泡層を設置することもできる。
【0048】
[具体例2]
図1、2の積層体を用いた被覆構造体の別の一例(断面図)を、
図4に示す。具体的に、
図4の被覆構造体では、断面視において、基材6(角型基材)の四辺の外側に沿って、
図1、2の積層体を設置している。
図4の積層体1において、吸熱層21~24の厚みは同じであり、吸熱層21~24のサイズは、角型基材の一辺の長さと隣接する吸熱層の厚みとの和に等しいものである。
【0049】
基材6(角型基材)の角部では、一方の吸熱層裏面と、他方の吸熱層側面とが接している。具体的に、右上角部では、吸熱層21の側面と、吸熱層22の裏面とが接している。右下角部では、吸熱層22の側面と、吸熱層23の裏面とが接している。左下角部では、吸熱層23の側面と、吸熱層24の裏面とが接している。左上角部では、吸熱層24の側面と、吸熱層21の裏面とが接している。
【0050】
基材6の左上角部では、
図1の積層体1が一周して、積層体1の左端と右端が接している。このような積層体の継ぎ目は、上述の方法等によって適宜処理することができる。
【0051】
図4の被覆構造体が、火災等によって高温に晒された場合には、熱発泡層3が発泡して炭化断熱層を形成するとともに、吸熱層2が吸熱作用を示すことにより、基材6の温度上昇を抑制し、その強度を保持することができる。
【0052】
[具体例3]
図5には、本発明の積層体の別の一例(断面図)を示す。
図5の積層体では、吸熱層2、熱発泡層3、及び化粧層5が順に積層されている。
図5の積層体では、熱発泡層3の裏面側に、4つの吸熱層21~24が間隔を空けて並設されている。吸熱層21~24は、それぞれ、正面視において四角形(正方形または長方形)の板材である。熱発泡層3は、正面視において四角形(長方形)のシートであり、化粧層5は、正面視において四角形(長方形)の化粧シートである。
図5の積層体において、熱発泡層3と吸熱層21~24とは、接着材層4を介して貼り合わされている。化粧層5は、接着材層等を介して、熱発泡層3の表面に積層することができる。また、
図5の積層体において、熱発泡層3及び化粧層5は、吸熱層24の右側端部を超えて一方向に延びている。
【0053】
化粧層5としては、例えば、木目調、砂岩調等の意匠性を有する化粧シートを使用することができる。このような化粧シートを用いることにより、美観性を高めることができる。
【0054】
図5の積層体は、例えば、
図3、
図4等の態様で被覆構造体を形成することができる。積層体が基材を一周した箇所では、化粧層の継ぎ目が生じるが、このような継ぎ目は、例えば、化粧層と同系色の接着材、コーティング材、パテ材等で適宜処理することができる。
【0055】
図5の積層体を用いて形成された被覆構造体が、火災等によって高温に晒された場合には、熱発泡層3が発泡して炭化断熱層を形成するとともに、吸熱層2が吸熱作用を示すことにより、基材6の温度上昇を抑制し、その強度を保持することができる。