(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス、及び電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02G 3/06 20060101AFI20241021BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241021BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241021BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20241021BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20241021BHJP
H01B 7/282 20060101ALI20241021BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20241021BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H02G3/06
H02G3/04 081
H02G3/30
H01B7/00 301
H01B7/00 306
H01B7/40 307Z
H01B7/282
H02K11/33
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2021051715
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆容
(72)【発明者】
【氏名】加生 茂寛
(72)【発明者】
【氏名】氏原 寛人
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩揮
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083655(JP,A)
【文献】特開2004-350406(JP,A)
【文献】特開2020-122449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/06
H02G 3/30
H01B 7/00
H01B 7/40
H01B 7/282
H02K 11/33
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、
前記ケーブルの一端に設けられた第1コネクタと、
前記ケーブルの他端に設けられた第2コネクタと、
前記ケーブルを覆う複数の保護部材と、
前記複数の保護部材のうち前記第1コネクタに最も近いものに設けられ、取付対象への固定に用いられる第1固定部材と、
前記複数の保護部材のうち前記第2コネクタに最も近いものに設けられ、取付対象への固定に用いられる第2固定部材と、を備え、
前記ケーブルは、前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の全域において前記複数の保護部材に覆われており、
前記複数の保護部材は、それぞれの端部が互いに摺動するよう重なった摺動部を有
し、
前記保護部材を覆う防水部材を更に備え、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、前記防水部材を介して前記保護部材に設けられる、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項
1に記載のワイヤハーネスと、
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するためのインバータと、
前記電動モータを収容する有底筒状のハウジングとを備え、
前記第1コネクタは、前記ハウジングに固定されるとともに前記インバータに電気的に接続される、
ことを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス、及び電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載機器には、ワイヤハーネスが接続されている。ワイヤハーネスは、車両衝突時や、通常使用時に破損しないように耐衝撃性が求められている。耐衝撃性を持たせるため、ワイヤハーネスには、ケーブルを保護部材によって保護した多層構造を持つものがある。さらに、ワイヤハーネスは、予め決められた位置に配置されるように取り回される。ワイヤハーネスの取り回し状態を維持するため、ワイヤハーネスに設けた固定部材が、予め決められた車両の取付位置に取り付けられる。このようなワイヤハーネスは、ケーブルの芯線がインバータなどの車載装置に予め一体化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤハーネスにおいてケーブルの端部にあって車載装置に取り付けられるコネクタは、電気的接点が摩耗や変形しうるためケーブルから伝わる振動に弱い。よって複数ある固定部材のうち、コネクタに最も近い固定部材に対しては、その取付位置について、他の固定部材よりも厳しい公差が要求されている。ワイヤハーネスは、運搬や梱包に際して、ワイヤハーネス単体で、又は少なくとも一端が車載機器に接続された状態で曲げられるようにまとめられる場合がある。曲げられることによってワイヤハーネスにかかる力により、保護部材全体が一方向に移動してしまい、保護部材の移動によって固定部材の位置がワイヤハーネスの長手方向に沿ってずれてしまう。特に、特許文献1のように、車載装置にワイヤハーネスが一体化されている場合は、ワイヤハーネスのケーブルを車載装置に巻き付けて搬送されるため、固定部材がずれやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するワイヤハーネスは、ケーブルと、前記ケーブルの一端に設けられた第1コネクタと、前記ケーブルの他端に設けられた第2コネクタと、前記ケーブルを覆う複数の保護部材と、前記複数の保護部材のうち前記第1コネクタに最も近いものに設けられ、取付対象への固定に用いられる第1固定部材と、前記複数の保護部材のうち前記第2コネクタに最も近いものに設けられ、取付対象への固定に用いられる第2固定部材と、を備え、前記ケーブルは、前記第1固定部材と前記第2固定部材との間の全域において前記複数の保護部材に覆われており、前記複数の保護部材は、それぞれの端部が互いに摺動するよう重なった摺動部を有することを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、ワイヤハーネスを曲げる力がワイヤハーネスにかかったとき、その力のかかった保護部材は移動する。このとき、保護部材の移動は、摺動部における保護部材の端部の摺動に集まるため、コネクタに最も近い第1固定部材および第2固定部材の移動は抑制される。よって、第1固定部材及び第2固定部材の位置がずれることを抑制できる。
【0007】
ワイヤハーネスについて、前記保護部材を覆う防水部材を更に備え、前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、前記防水部材を介して前記保護部材に設けられてもよい。
かかる構成によれば、防水部材を備えない場合に比して、ワイヤハーネスの防水性能を高くすることができる。
【0008】
上記目的を達成する電動圧縮機は、請求項1又は2に記載のワイヤハーネスと、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するためのインバータと、前記電動モータを収容する有底筒状のハウジングとを備え、前記第1コネクタは、前記ハウジングに固定されるとともに前記インバータに電気的に接続されることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ワイヤハーネスを曲げる力がワイヤハーネスにかかったとき、その力のかかった保護部材は移動する。このとき、保護部材の移動は、摺動部における保護部材の端部の摺動に集まるため、コネクタに最も近い第1固定部材および第2固定部材の移動は抑制される。よって、第1固定部材及び第2固定部材の位置がずれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コネクタに近い固定部材の位置がずれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
【
図2】コネクタの一部分と、ワイヤハーネスの一部分とを示す分解斜視図。
【
図5】まとめられたワイヤハーネスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、
図1~
図7を参照し、ワイヤハーネス、及び電動圧縮機を具体化した一実施形態について説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
【0013】
[全体構成]
図1に示すように、電動圧縮機10は、有底筒状である金属製のハウジング11を備えている。ハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、を有している。吐出ハウジング12及びモータハウジング13は、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。モータハウジング13の周壁13bには、モータハウジング13内に流体としての冷媒を吸入する吸入口13hが形成されている。
【0014】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。回転軸15は、回転軸15の軸線がモータハウジング13の周壁13bの軸心に一致した状態でモータハウジング13内に収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。したがって、ハウジング11は、圧縮部16及び電動モータ17を収容している。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。
【0015】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0016】
電動モータ17は、筒状のステータ18と、ステータ18の内側に配置されるロータ19とから構成されている。ロータ19は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ18は、ロータ19を取り囲んでいる。ロータ19は、回転軸15に止着されたロータコア19aと、ロータコア19aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ18は、筒状のステータコア18aと、ステータコア18aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0017】
吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0018】
図1に示すように、電動圧縮機10は、有底筒状のインバータケース30を備えている。インバータケース30は、板状のケース底壁31、及びケース底壁31の外周部から筒状に延びるケース周壁32を有している。ケース底壁31は、モータハウジング13の底壁13aに対向する。そして、インバータケース30は、ケース底壁31がモータハウジング13の底壁13aに取り付けられることにより、モータハウジング13に連結されている。モータハウジング13のケース底壁31には、筒状の外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34がそれぞれ突設されている。
【0019】
電動圧縮機10は、ケース周壁32の開口を閉塞する板状のインバータカバー40を備えている。インバータカバー40は、インバータケース30と共にインバータ収容室41を形成している。さらに、電動圧縮機10は、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間に介在される環状のガスケット42を備えている。ガスケット42は、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間をシールしている。
【0020】
電動圧縮機10は、インバータ43を備えている。インバータ43は、電動モータ17を駆動するための回路基板44を有している。インバータ43は、インバータ収容室41内に収容されている。したがって、インバータ収容室41は、インバータ43を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ43は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0021】
外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34には、外部電源及び電動圧縮機10の制御装置と、電動圧縮機10とを接続するワイヤハーネス60が接続される。以降の説明において、外部電源及び制御装置を総称して、外部装置EXと記載する。
【0022】
[ワイヤハーネス60の詳細について]
以下、
図2~
図6を用いて、ワイヤハーネス60の詳細について説明する。ワイヤハーネス60は、ケーブル70と、第1コネクタ80aと、第2コネクタ80bと、保護部材72と、防水部材73と、摺動部90と、固定部材74とを有する。
【0023】
図3に示すように、ケーブル70は、芯線CCと、絶縁被膜CDとを有する。芯線CCは、絶縁被膜CDにより覆われている。
図4に示すように、第1コネクタ80aは、ケーブル70の第1端部70aに設けられる。第2コネクタ80bは、ケーブル70の第2端部70bに設けられる。第1コネクタ80aは、ケーブル70の第1端部70aを被覆しているとともに第2コネクタ80bは、ケーブル70の第2端部70bを被覆している。
【0024】
図2及び
図3に示すように、第1コネクタ80aは第1コネクタハウジング81aと、芯線CCの端部に接続される端子82a及び端子83aと、を備える。第2コネクタ80bは第2コネクタハウジング81bと、芯線CCの端部に接続される端子82b及び83bと、を備える。第1コネクタハウジング81aに設けられる端子82aと、第2コネクタハウジング81bに設けられる端子82bとは、芯線CCのうち、外部電源に接続される芯線CCに接続される端子である。第1コネクタハウジング81aに設けられる端子83aと、第2コネクタハウジング81bに設けられる端子83bとは、芯線CCのうち、制御装置に接続される芯線CCに接続される端子である。端子82a及び端子83aは、第1端子の一例である。端子82b及び端子83bは、第2端子の一例である。
【0025】
図2に示すように、第1コネクタ80aは、電動圧縮機10の外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34に接続されるコネクタである。第1コネクタ80aは、外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34に接続されることにより、ハウジング11に固定されるとともにインバータ43に電気的に接続される。第2コネクタ80bは、外部装置EXの外部電源用コネクタ接続部CN1及び制御用コネクタ接続部CN2に接続されるコネクタである。そして、第1コネクタ80aと、外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34とが嵌合するとともに、第2コネクタ80bと、外部電源用コネクタ接続部CN1及び制御用コネクタ接続部CN2とが嵌合する。これにより、電動圧縮機10と、外部装置EXとがワイヤハーネス60によって電気的に接続される。
【0026】
図3及び
図4に示すように、保護部材72は、第1保護部材721と第2保護部材722とから構成される。防水部材73は、第1防水部材731と第2防水部材732とから構成される。第1保護部材721及び第2保護部材722を互いに区別しない場合には、単に保護部材72と記載し、第1防水部材731及び第2防水部材732を互いに区別しない場合には、単に防水部材73と記載する。
【0027】
ケーブル70は、保護部材72と、防水部材73とによって略全体が覆われている。第1保護部材721と第1防水部材731とでは、第1保護部材721の方が第1防水部材731よりも、ケーブル70側に設けられる。第2保護部材722と第2防水部材732とでは、第2保護部材722の方が第2防水部材732よりも、ケーブル70側に設けられる。
【0028】
保護部材72は、例えば、所定の耐衝撃性能を有する部材により実現される。ケーブル70は、保護部材72に覆われることにより、保護部材72に覆われてない場合に比して、耐衝撃性能が高くなる。防水部材73は、例えば、所定の防水性能及び所定の防塵性能を有する部材により実現される。ケーブル70は、防水部材73に覆われることにより、防水部材73に覆われていない場合に比して、防水性能及び防塵性能が高くなる。
【0029】
保護部材72は、例えば、内部にケーブル70を収容する筒状に形成されている。保護部材72は、長手方向全体に延びる切れ込みOPを有する。ケーブル70は、保護部材72の切れ込みOPから保護部材72内に収容される。なお、保護部材72は、ケーブル70の周方向においてケーブル70の全体を覆うことができれば、ケーブル70の周方向の長さよりも十分に長い円周を有する筒状であってもよい。この場合、保護部材72の周方向の両端部が互いに重なり合う。
【0030】
防水部材73は、例えば、テープ状の部材であって、ケーブル70が収容された保護部材72に対して螺旋状に巻き付けられる。これにより、防水部材73は、保護部材72の周方向の両端部の間を閉塞し、保護部材72の周方向の両端部の間からケーブル70が露出することを抑制する。また、防水部材73は、保護部材72の長手方向の両端部側において、ケーブル70の外周面と保護部材72の内周面との隙間を閉塞する。
【0031】
図6に示すように、ワイヤハーネス60は、保護部材72と、防水部材73とからなる多層構造である。具体的には、第1コネクタ80a側は、第1保護部材721と、第1防水部材731とからなる2層構造を有する。この2層構造の内層を構成する第1保護部材721は、ケーブル70の外周面と第1防水部材731の内周面との間でケーブル70の長手方向に移動可能である。第2コネクタ80b側は、第2保護部材722と、第2防水部材732とからなる2層構造を有する。この2層構造の内層を構成する第2保護部材722は、ケーブル70の外周面と第2防水部材732の内周面との間でケーブル70の長手方向に移動可能である。
【0032】
図4及び
図5に示すように、ワイヤハーネス60には、複数の固定部材74が設けられる。固定部材74は、例えば、ワイヤハーネス60において、ワイヤハーネス60の径方向に沿った保護部材72よりも外側に設けられる。本実施形態では、固定部材74は、防水部材73の表面に設けられる。固定部材74は、ワイヤハーネス60が取り付けられる取付位置への、ワイヤハーネス60の固定に用いられる。上述したように、本実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23に用いられる。したがって、ワイヤハーネス60が取り付けられる取付位置とは、車両等の取付対象に予め定められた位置である。図示しないが、車両の六か所に取付位置が設けられている。
【0033】
固定部材74は、例えば、リング部75と、クリップ部76とを有する。リング部75は、ワイヤハーネス60の周方向に巻かれており、ケーブル70、保護部材72及び防水部材73を把持する。リング部75と、クリップ部76とは、接合されている。クリップ部76は、例えば、取付位置に取り付けられることにより、当該取付位置にケーブル70を固定する。
【0034】
また、ワイヤハーネス60には、固定部材74a~74fの六個の固定部材74が設けられる。これらの固定部材74は、車両の六カ所に設けられた取付位置に適切に固定できるように、ワイヤハーネス60の長手方向における位置が予め定められている。以下、ワイヤハーネス60の長手方向における各固定部材74の位置を、指定位置と記載する。指定位置は、例えば、第1コネクタ80a又は第2コネクタ80bからの距離により指定される。この一例では、固定部材74a~74dは、第1コネクタ80aからの距離により指定位置が定められ、固定部材74e~74fは、第2コネクタ80bからの距離により指定位置が定められる。固定部材74aは、第1コネクタ80aに最も近い第1保護部材721に設けられる第1固定部材である。固定部材74fは、第2コネクタ80bに最も近い第2保護部材722に設けられる第2固定部材である。図示されない固定部材74dは、第1コネクタ80aから最も遠い第1保護部材721に設けられる固定部材である。図示されない固定部材74eは、第2コネクタ80bから最も遠い第2保護部材722に設けられる固定部材である。ケーブル70は、固定部材74aと固定部材74fとの間の全域において、保護部材72に覆われている。ここで、固定部材74は、防水部材73を介して保護部材72に設けられるともいえる。
【0035】
第1保護部材721の第1端部721aを、第1コネクタ80a寄りの端部とし、第1保護部材721の第2端部721bを、第2保護部材722寄りの端部とする。第2保護部材722の第1端部722aを、第2コネクタ80b寄りの端部とし、第2保護部材722の第2端部722bを、第1保護部材721寄りの端部とする。第1保護部材721と、第2保護部材722とは、第2端部721b,722b同士が重なり合っている。
【0036】
図5に示すように、ワイヤハーネス60は、ワイヤハーネス60単体で、又は少なくとも第1コネクタ80aが電動圧縮機10に接続された状態で曲げられるようにまとめられる場合がある。この場合、曲げられたことによりかかる力により、ワイヤハーネス60には、ワイヤハーネス60の長手方向に沿って、第1コネクタ80aに近づく方向dr1、又は第2コネクタ80bに近づく方向dr2に引っ張られる力が生じる場合がある。
【0037】
本実施形態のワイヤハーネス60は、曲げられたことによってワイヤハーネス60にかかる力により、固定部材74aおよび固定部材74fがずれることを抑制すべく、一以上の摺動部90を備える。摺動部90は、例えば、固定部材74aと固定部材74fとの間のいずれかの場所に設けられる。本実施形態では、ワイヤハーネス60が、固定部材74dと固定部材74eとの間に摺動部90を一つ備える場合について説明する。
【0038】
図6に示すように、ワイヤハーネス60において摺動部90は、第1保護部材721の第2端部721bと、第2保護部材722の第2端部722bとの端部同士が互いに摺動するように、第2端部721bと第2端部722bとが長手方向に重なった部分である。
【0039】
第1防水部材731は、第1保護部材721の第2端部721bの先端を越えて第2防水部材732の表面を覆っている。このため、第1保護部材721の先端はワイヤハーネス60の外部に露出していない。また、第2防水部材732は、第2保護部材722の第2端部722bの先端を越えてケーブル70の表面を覆っている。第1保護部材721は、第2防水部材732の外側から第2保護部材722の第2端部722bを覆っている。
【0040】
摺動部90では、第1保護部材721及び第1防水部材731が、第2保護部材722及び第2防水部材732よりも外周側に設けられる。したがって、摺動部90において、ワイヤハーネス60は、内側から、ケーブル70、第2保護部材722、第2防水部材732、第1保護部材721及び第1防水部材731の順に設けられる。このため、摺動部90は、4層構造である。この摺動部90には、固定部材74のリング部75は巻かれていない。固定部材74a~74dは、第1防水部材731の表面に取り付けられている。固定部材74fは、第2防水部材732の表面に取り付けられている。摺動部90は、固定部材74dと固定部材74eとの間に設けられる。
【0041】
次に、作用を説明する。ワイヤハーネス60に対し、方向dr2に引っ張られる力がかかった場合、第2保護部材722は第2コネクタ80b側に引っ張られる。すると、第1保護部材721の第2端部721bに対し、第2保護部材722の第2端部722bが摺動して、第1保護部材721に対し、第2保護部材722が離隔する方向へ移動する。したがって、ワイヤハーネス60に生じる、方向dr2に引っ張られる力は、摺動部90によって第1保護部材721に伝搬しない。このため、第1保護部材721の位置は変わらない。よって、第1保護部材721を覆う第1防水部材731に取り付けられた固定部材74a~74dの位置は変わらない。固定部材74fは、他の固定部材74eよりも摺動部90から離れた位置に設けられるため、他の固定部材74eよりも自身の位置に変化が生じにくい。
【0042】
同様に、
図7に示すように、ワイヤハーネス60に対し、方向dr1に引っ張られる力がかかった場合、第1保護部材721は第1コネクタ80a側に引っ張られる。すると、第2保護部材722の第2端部722bに対し、第1保護部材721の第2端部721bが摺動して、第2保護部材722に対し、第1保護部材721が離隔する方向へ移動する。したがって、ワイヤハーネス60に生じる、方向dr1に引っ張られる力は、摺動部90によって第2保護部材722に伝搬しない。このため、第2保護部材722の位置変わらない。よって、第2保護部材722を覆う第2防水部材732に取り付けられた固定部材74e~74fの位置は変わらない。また、第1保護部材721において、固定部材74aは、他の固定部材74b~74dよりも摺動部90から離れた位置に設けられており、固定部材74b~74dよりも自身の位置に変化が生じにくい。
【0043】
[本実施形態のワイヤハーネス60及び電動圧縮機10にかかる効果について]
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ワイヤハーネス60は、第1保護部材721の第2端部721bと第2保護部材722の第2端部722bとの端部同士が摺動するように、2端部721bと第2端部722bとが長手方向に重なった摺動部90を備える。摺動部90は、固定部材74dと、固定部材74eとの間に設けられる。ワイヤハーネス60を曲げる力がワイヤハーネス60にかかったとき、力のかかった第1保護部材721及び第2保護部材722の移動は、摺動部90における第2端部721bと第2端部722bの摺動に集まる。このため、第1コネクタ80aに最も近い固定部材74a及び第2コネクタ80bに最も近い固定部材74fの移動は抑制される。つまり、固定部材74a及び固定部材74fは、第1保護部材721及び第2保護部材722において、それぞれ摺動部90から最も離れた位置に設けられた固定部材74である。そのため、固定部材74a及び固定部材74fの位置は、摺動部90の摺動による影響を受けにくい。よって、第1保護部材721に対する固定部材74aの位置、及び第2保護部材722に対する固定部材74fの位置がずれることを抑制できる。
【0044】
かかる構成により、ワイヤハーネス60は、力がかけられた場合であっても、固定部材74a及び固定部材74fの指定位置がずれることを抑制することができるため、固定部材74a及び固定部材74fを車両の取付位置に適切に固定できる。
【0045】
(2)保護部材72は、所定の耐衝撃性能を有する材料により形成されている。
ワイヤハーネス60に外部からの強い衝撃がかかったとき、保護部材72により衝撃からケーブル70を保護できる。
【0046】
(3)保護部材72は、筒状に形成され、長手方向全体に延びる切れ込みOPを有している。
かかる構成によれば、保護部材72が切れ込みOPを有しない場合に比して、ケーブル70を保護部材72内に収容しやすくなるため、ワイヤハーネス60を容易に製造することができる。
【0047】
(4)ワイヤハーネス60は、防水部材73を備える。
かかる構成によれば、ワイヤハーネス60は、防水部材73を備えない場合に比して、ワイヤハーネス60の防水性能を高くすることができる。
【0048】
(5)第1防水部材731は、第1保護部材721の第2端部721bの全体を覆うように、長手方向に第1保護部材721の第2端部721bを越えている。また、第2防水部材732は、第2保護部材722の第2端部722bの全体を覆うように、長手方向に第2保護部材722の端部を越えている。
【0049】
かかる構成によれば、第2防水部材732が、第2保護部材722及びケーブル70の一部を覆い、第1防水部材731が、第1保護部材721及びケーブル70の他の一部を覆う。これにより、ケーブル70及び保護部材72が表面に露出しないため、ワイヤハーネス60の防水性能を高くすることができる。
【0050】
(6)電動圧縮機10は、第1コネクタ80aが接続された状態において、ワイヤハーネス60がまとめられる等して力がかけられた場合であっても、固定部材74a及び固定部材74fの指定位置がずれることを抑制することができる。
【0051】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態および以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
[摺動部90の別例について]
○
図8に示すように、ワイヤハーネス60において、摺動部100は、第1保護部材721の第2端部721bと、第2保護部材722の第2端部722bとの端部同士が摺動するように、第2端部721bと第2端部722bとが長手方向に重なった部分である。第2防水部材732は、第2保護部材722の第2端部722bの先端を越えてケーブル70の表面を覆っている。第1保護部材721は、第2防水部材732の外側から第2保護部材722の第2端部722bを覆っている。また、第1防水部材731は、第1保護部材721の表面を覆う一方で、第2端部721bを越えて第1保護部材721を覆わない。
【0052】
ケーブル70、第1保護部材721、第1防水部材731、第2保護部材722及び第2防水部材732の順序は、上述した摺動部90と同様であるため、説明を省略する。
かかる構成によれば、第1防水部材731は、第1保護部材721を覆う一方で、長手方向に第1保護部材721の第2端部721bを越えない。このため、第1保護部材721の先端はワイヤハーネス60の外部に露出する。また、第2防水部材732は、第2保護部材722の第2端部722bの全体を覆うように、長手方向に第2保護部材722の端部を越えている。ここで、第1保護部材721のうち、第1防水部材731に覆われていない部分から水や塵がワイヤハーネス60内に入った場合であっても、第1防水部材731に覆われていない第1保護部材721の一部の内側には、第2防水部材732が設けられている。このため、第2防水部材732は、更に内層に水や塵が入ることを抑制することができる。したがって、摺動部100を備えるワイヤハーネス60は、防水性能を確保しつつ、摺動部90を備えるワイヤハーネス60に比して、ワイヤハーネス60の製造に用いられる防水部材73の量を少なくすることができる。
【0053】
○
図9に示すように、ワイヤハーネス60において、摺動部102は、第1保護部材721の第2端部721bと、第2保護部材722の第2端部722bとの端部同士が摺動するように、第2端部721bと第2端部722bが長手方向に重なった部分である。第2防水部材732は、第2保護部材722の第2端部722bの先端を越えてケーブル70の表面を覆っている。第1保護部材721は、第2防水部材732の外側から第2保護部材722の第2端部722bを覆っている。また、第1防水部材731は、第1保護部材721を覆いつつ、第2端部721bを越えて、ケーブル70の第2端部70bまで、第2防水部材732及び第2保護部材722を覆う。
【0054】
ケーブル70、第1保護部材721、第1防水部材731、第2保護部材722及び第2防水部材732の順序は、上述した摺動部90と同様であるため、説明を省略する。
かかる構成によれば、第1防水部材731が、ケーブル70及び保護部材72の略全体を覆う。また、摺動部102を備えるワイヤハーネス60は、摺動部90や摺動部100を備えるワイヤハーネス60のように、第1コネクタ80aと第2コネクタ80bとの間に防水部材73の端部が存在しない。したがって、摺動部102を備えるワイヤハーネス60は、防水部材73の端部から水や塵が入ることを抑制し、ワイヤハーネス60の防水性能をより高くすることができる。
【0055】
〇ワイヤハーネス60が防水部材73を備える場合について説明したが、これに限られない。ワイヤハーネス60は、防水部材73を備えていなくてもよい。この場合、固定部材74は、保護部材72の表面に設けられる。
【0056】
〇保護部材72が切れ込みOPを有する場合について説明したが、これに限られない。保護部材72が切れ込みOPを有しない場合、ワイヤハーネス60は、筒形状の保護部材72の一端から他端までケーブル70を挿入して製造される。
【0057】
〇保護部材72は、筒形状を有していなくてもよい。例えば、保護部材72は、シート状の部材であって、ケーブル70の周方向を覆うように用いられてもよい。また、保護部材72は、テープ状の部材であって、ケーブル70に対して螺旋状に巻き付けられてもよい。
【0058】
〇ワイヤハーネス60は、複数のケーブル70を有していてもよい。この場合、保護部材72は、複数のケーブル70をまとめて収容する。かかる構成によれば、ケーブル70をそれぞれ保護部材72や防水部材73により覆う場合に比して、ワイヤハーネス60の製造に用いられる保護部材72や防水部材73の量を少なくすることができる。
【0059】
〇第2コネクタ80bの形状は、
図2に示す第1コネクタ80aの形状とは異なる形状を有していてもよい。例えば、第2コネクタ80bは、外部電源のコネクタ接続部や、制御装置のコネクタ接続部に合った形状を有していてもよい。
【0060】
〇ワイヤハーネス60が、摺動部90を一つ備える場合について説明したが、これに限られない。ワイヤハーネス60は、三つ以上の保護部材72を設けることにより複数の摺動部90を備えていてもよい。この場合、複数の摺動部90は、ケーブル70の長手方向に隣接して設けられ、摺動部90の間には固定部材74が設けられないことが好ましい。
【0061】
〇ワイヤハーネス60には、六個の固定部材74が設けられる場合について説明したが、これに限られない。固定部材74は、第1保護部材721と第2保護部材722に少なくとも一つずつ設けられていればよい。
【0062】
〇摺動部90では、第1保護部材721及び第1防水部材731が、第2保護部材722及び第2防水部材732よりもワイヤハーネス60の径方向に沿った外側に設けられる場合について説明したが、これに限られない。摺動部90において、ワイヤハーネス60は、内側から、ケーブル70、第1保護部材721、第1防水部材731、第2保護部材722及び第2防水部材732の順に設けられてもよい。
【0063】
〇実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
〇実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、17…電動モータ、43…インバータ、60…ワイヤハーネス、70…ケーブル、72…保護部材、73…防水部材、74a…第1固定部材としての固定部材、74b、74c、74d、74e…固定部材、74f…第2固定部材としての固定部材、80a…第1コネクタ、80b…第2コネクタ、90、100、102…摺動部、721…第1保護部材、722…第2保護部材、731…第1防水部材、732…第2防水部材。