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特許7574126コーティング組成物、塗装積層体、および、塗装積層体の製造方法
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  • 特許-コーティング組成物、塗装積層体、および、塗装積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コーティング組成物、塗装積層体、および、塗装積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20241021BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20241021BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20241021BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D161/28
B05D1/36 B
B05D7/24 303A
B05D7/24 302S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021052410
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022150018
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】市原 有人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 陽介
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028607(JP,A)
【文献】国際公開第2019/202964(WO,A1)
【文献】特開2015-112565(JP,A)
【文献】特開平11-207255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装体の表面をコーティングするコーティング組成物であって、
前記被塗装体の表面を被覆する第1コーティング層を形成するための第1コーティング組成物と、
前記第1コーティング層の表面を被覆する第2コーティング層を形成するための第2コーティング組成物とを備え、
前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、前記第2水酸基含有樹脂の水酸基価よりも小さい、コーティング組成物。
【請求項2】
前記第2コーティング組成物は、さらに、下記(II-d)を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
(II-d)塩基解離定数pKbが、6以上14以下であるラジカル捕捉剤
【請求項3】
被塗装体と、前記被塗装体の表面を被覆する第1コーティング層と、前記第1コーティング層の表面を被覆する第2コーティング層とを備え、
前記第1コーティング層は、第1コーティング組成物からなり、
前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第2コーティング層は、第2コーティング組成物からなり、
前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、前記第2水酸基含有樹脂の水酸基価よりも小さい、塗装積層体。
【請求項4】
前記被塗装体が、樹脂である、請求項3に記載の塗装積層体。
【請求項5】
前記樹脂が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、請求項4に記載の塗装積層体。
【請求項6】
被塗装体の表面に、第1コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第1コーティング層を配置する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記未硬化の第1コーティング層の表面に、第2コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第2コーティング層を配置する第2工程と、
前記未硬化の第1コーティング層および前記未硬化の第2コーティング層を、同時に硬化させる第3工程とを備え、
前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、前記第2水酸基含有樹脂の水酸基価よりも小さい、塗装積層体の製造方法。
【請求項7】
前記被塗装体が、樹脂である、請求項6に記載の塗装積層体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂フィルムの材料が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、請求項7に記載の塗装積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物、塗装積層体、および、塗装積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用塗料および家電用塗料の分野において、ポリオールとアルキルエーテル化メラミン樹脂とを含む熱硬化性樹脂組成物が使用されている。
【0003】
このような熱硬化性樹脂組成物として、例えば、水酸基を有する樹脂(A)と、アルキルエーテル化メラミン樹脂(B)と、ルイス酸触媒(C)と、溶剤(D)を含む熱硬化性樹脂組成物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2019/202964号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような熱硬化性樹脂組成物から形成される塗膜には、より一層、密着性、硬度、耐水性および耐候性が要求される。
【0006】
本発明は、密着性、硬度、耐水性および耐候性に優れるコーティング組成物、塗装積層体、および、塗装積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、被塗装体の表面をコーティングするコーティング組成物であって、前記被塗装体の表面を被覆する第1コーティング層を形成するための第1コーティング組成物と、前記第1コーティング層の表面を被覆する第2コーティング層を形成するための第2コーティング組成物とを備え、前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下である、コーティング組成物である。
【0008】
本発明[2]は、前記第2コーティング組成物は、さらに、下記(II-d)を含む、上記[1]に記載のコーティング組成物を含んでいる。
(II-d)塩基解離定数pKbが、6以上14以下であるラジカル捕捉剤
【0009】
本発明[3]は、被塗装体と、前記被塗装体の表面を被覆する第1コーティング層と、前記第1コーティング層の表面を被覆する第2コーティング層とを備え、前記第1コーティング層は、第1コーティング組成物からなり、前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、前記第2コーティング層は、第2コーティング組成物からなり、前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下である、塗装積層体である。
【0010】
本発明[4]は、前記被塗装体が、樹脂である、上記[3]に記載の塗装積層体を含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、前記樹脂が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、上記[4]に記載の塗装積層体を含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、被塗装体の表面に、第1コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第1コーティング層を配置する第1工程と、前記第1工程の後に、前記未硬化の第1コーティング層の表面に、第2コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第2コーティング層を配置する第2工程と、前記未硬化の第1コーティング層および前記未硬化の第2コーティング層を、同時に硬化させる第3工程とを備え、前記第1コーティング組成物は、下記(I-a)~(I-d)を含み、
(I-a)水酸基価が、20mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
酸価が、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である第1水酸基含有樹脂(但し、第1メラミン樹脂(I-b)を除く)
(I-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性された第1メラミン樹脂
(I-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
(I-d)顔料
かつ、前記第1メラミン樹脂(I-b)に対する前記第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))が、60/40以上95/5以下であり、
前記第2コーティング組成物は、下記(II-a)~(II-c)を含み、
(II-a)水酸基価が、70mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である第2水酸基含有樹脂(但し、第2メラミン樹脂(II-b)を除く)
(II-b)メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性された第2メラミン樹脂
(II-c)Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属からなるカチオンと、硝酸の脱プロトン化体である対アニオンとからなるルイス酸触媒
かつ、前記第2メラミン樹脂(II-b)に対する前記第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))が、60/40以上95/5以下である、塗装積層体の製造方法である。
【0013】
本発明[7]は、前記被塗装体が、樹脂である、上記[6]に記載の塗装積層体の製造方法を含んでいる。
【0014】
本発明[8]は、前記樹脂フィルムの材料が、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、上記[7]に記載の塗装積層体の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコーティング組成物において、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物は、それぞれ、所定の組成からなる。そのため、密着性、硬度、耐水性および耐候性に優れる塗装積層体を製造できる。
【0016】
本発明の塗装積層体において、第1コーティング層および第2コーティング層は、それぞれ、所定の組成からなる第1コーティング組成物および第2コーティング組成物からなる。そのため、密着性、硬度、耐水性および耐候性に優れる。
【0017】
本発明の塗装積層体の製造方法では、未硬化の第1コーティング層および前記未硬化の第2コーティング層を、同時に硬化させる。そのため、生産効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の塗装積層体の製造方法の一実施形態を示す。図1Aは、第1工程において、被塗装体を準備する工程を示す。図1Bは、第1工程において、被塗装体の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第1コーティング層を配置する工程を示す。図1Cは、未硬化の第1コーティング層の表面(厚み方向一方面に、未硬化の第2コーティング層を配置する第2工程を示す。図1Dは、未硬化の第1コーティング層および未硬化の第2コーティング層を、同時に硬化させる第3工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物は、詳しくは後述するが、被塗装体2の表面をコーティングするために用いられる。
【0020】
コーティング組成物は、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物を備える。詳しくは、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物は、それぞれ、第1コーティング層3および第2コーティング層4を形成するための組成物である。換言すれば、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物の混合物が、第1コーティング層3または第2コーティング層4を形成するものではない。
【0021】
<第1コーティング組成物>
第1コーティング組成物は、詳しくは後述するが、被塗装体2の表面を被覆する第1コーティング層を形成するための組成物である。
【0022】
第1コーティング組成物は、(I-a)第1水酸基含有樹脂と、(I-b)第1メラミン樹脂と、(I-c)ルイス酸触媒と、(I-d)顔料とを含む。
【0023】
<第1水酸基含有樹脂>
第1水酸基含有樹脂は、所定の酸価および所定の水酸基価を有する樹脂である。第1水酸基含有樹脂として、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有エポキシ樹脂、および、水酸基含有ウレタン樹脂が挙げられ、好ましくは、水酸基含有アクリル樹脂が挙げられる。なお、第1水酸基含有樹脂には、後述する第1メラミン樹脂は含まれない。
【0024】
第1水酸基含有樹脂において、水酸基含有アクリル樹脂は、第1重合成分の重合生成物である。
【0025】
第1重合成分は、モノマー成分である。詳しくは、第1重合成分は、ラジカル重合(ビニル重合)可能な重合可能成分(モノマー成分)である。
【0026】
第1重合成分は、(メタ)アクリル酸エステルと、酸性基含有ビニルモノマーと、水酸基含有ビニルモノマーと、必要により、これらと共重合可能な共重合性モノマーとを含む。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~12のアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~12のアルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、および、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~8のアルキルエステル、より好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~6のアルキルエステル、さらに好ましくは、メチルメタアクリレート、n-ブチルアクリレートが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0029】
酸性基含有ビニルモノマーは、顔料(後述)を分散させる観点から、第1重合成分に配合される。酸性基含有ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー、および、スルホン酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0030】
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはこれらの塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、および、無水フマル酸が挙げられる。
【0031】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、スルホン酸またはこれらの塩が挙げられる。スルホン酸としては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、および、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸が挙げられる。また、スルホン酸の塩としては、上記スルホン酸の、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、および、アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、および、メタリルスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0032】
酸性基含有ビニルモノマーとしては、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、より好ましくは、モノカルボン酸、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸、とりわけ好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0033】
酸性基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、より好ましくは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0035】
共重合性モノマーとしては、例えば、官能基含有ビニルモノマー(酸性基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを除く。以下同様。)、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、および、ジエン類が挙げられる。
【0036】
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノ基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、および、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0037】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、および、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルが挙げられる。
【0038】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0039】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0040】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルが挙げられる。
【0041】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0042】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、および、α-メチルスチレンが挙げられる。
【0043】
N-置換不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0044】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンが挙げられる。
【0045】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、および、フッ化ビニリデンが挙げられる。
【0046】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、および、プロピレンが挙げられる。
【0047】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンが挙げられる。
【0048】
さらに、共重合性モノマーとして、架橋性ビニルモノマーを挙げることもできる。
【0049】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、2つ以上のビニル基を含有する化合物が挙げられる。2つ以上のビニル基を含有する化合物としては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、および、ペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。
【0050】
共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
第1重合成分において、(メタ)アクリル酸エステルの配合割合は、第1重合成分100質量部に対して、例えば、70質量部以上、好ましくは、80質量部以上、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
【0052】
また、酸性基含有ビニルモノマーの配合割合は、第1重合成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3質量部以下である。
【0053】
酸性基含有ビニルモノマーの配合割合が、上記した範囲内であれば、第1水酸基含有樹脂の酸価(後述)を、後述する所定の範囲に調整することができる。
【0054】
また、水酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、第1重合成分100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、10質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、12質量部以下である。
【0055】
水酸基含有ビニルモノマーの配合割合が、上記した範囲内であれば、第1水酸基含有樹脂の水酸基価(後述)を、後述する所定の範囲に調整することができる。
【0056】
また、共重合性モノマーの配合割合は、第1重合成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0057】
第1重合成分は、好ましくは、共重合性モノマーを含まず、(メタ)アクリル酸エステルと、酸性基含有ビニルモノマーと、水酸基含有ビニルモノマーとを含み、より好ましくは、第1重合成分は、(メタ)アクリル酸エステルと、酸性基含有ビニルモノマーと、水酸基含有ビニルモノマーとからなる。
【0058】
そして、水酸基含有アクリル樹脂は、第1重合成分を重合することにより得られる。
【0059】
重合方法は、特に限定されない。重合方法としては、例えば、バルク重合、および、溶液重合が挙げられ、好ましくは、溶液重合が挙げられる。
【0060】
重合方法として、溶液重合を採用する場合には、溶剤に、第1重合成分と、必要により、重合開始剤とを配合し、重合する。
【0061】
溶剤としては、公知の溶剤が挙げられる。溶剤として、例えば、アルキルエステル(例えば、酢酸ブチル)、アルコール(イソブタノール)が挙げられる。
【0062】
また、溶剤として、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ティーソルシリーズ(芳香族炭化水素、ENEOS株式会社製)が挙げられる。
【0063】
溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0064】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤(例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)が挙げられる。
【0065】
重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0066】
重合条件として、重合温度は、例えば、70℃以上、また、例えば、120℃以下である。また、重合時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、12時間以下である。
【0067】
これにより、水酸基含有アクリル樹脂が得られる。
【0068】
第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、20mgKOH/g以上、好ましくは、40mgKOH/g以上、また、80mgKOH/g以下、好ましくは、60mgKOH/g以下である。
【0069】
上記水酸基価が、上記下限以上であれば、架橋密度が向上するため、耐水性に優れる第1コーティング層3を得ることができる。
【0070】
また、上記水酸基価が、上記上限以下であれば、第1コーティング層3の硬化収縮の増加を抑制できるため、密着性に優れる第1コーティング層3を得ることができる。
【0071】
また、詳しくは後述するが、好ましくは、第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、第2水酸基含有樹脂の水酸基価(後述)よりも小さくなるように設定される。
【0072】
上記水酸基価は、例えば、JIS K 0070-1992(アセチル化法)により求めることができる(以下同様。)。
【0073】
第1水酸基含有樹脂の酸価は、3mgKOH/g以上、好ましくは、7mgKOH/g以上、また、50mgKOH/g以下、好ましくは、30mgKOH/g以下、より好ましくは、20mgKOH/g以下である。
【0074】
上記酸価が、上記下限以上であれば、顔料分散性に優れる第1コーティング組成物を得ることができる。
【0075】
また、上記酸価が、上記上限以下であれば、耐水性に優れる第1コーティング層3を得ることができる。
【0076】
上記酸価は、例えば、JIS K 0070-1992(電位差滴定法)により求めることができる(以下同様。)。
【0077】
第1水酸基含有樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000以上、好ましくは、8000、より好ましくは、10000以上、また、例えば、200000以下、好ましくは、100000以下、より好ましくは、80000以下、さらに好ましくは、40000以下、とりわけ好ましくは、30000以下、最も好ましくは、25000以下である。
【0078】
上記重量平均分子量が、上記範囲内であれば、塗装性、外観、強度、硬度および耐摩耗性に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0079】
第1水酸基含有樹脂のガラス転移温度は、例えば、-30℃以上、好ましくは、-20℃以上、より好ましくは、0℃以上、さらに好ましくは、5℃以上、また、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下、より好ましくは、50℃以下、さらに好ましくは、30℃以下である。
【0080】
上記ガラス転移温度が、上記範囲内であれば、塗装性、硬度および耐水性に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0081】
ガラス転移温度の測定方法は、後述する実施例で詳述する(以下同様。)。
【0082】
<第1メラミン樹脂>
第1メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとから得られるメラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、アルコールで変性(アルキルエーテル化)させることにより得られるアルキルエーテル化メラミン樹脂である。
【0083】
ホルムアルデヒドは、水溶液として調製できる。また、ホルムアルデヒドとして、固形のパラホルムアルデヒドをそのまま用いることもできる。
【0084】
ホルムアルデヒドを、水溶液として調製する場合には、その濃度は、例えば、80%以上、また、例えば、99%以下である。
【0085】
第1メラミン樹脂において、アルコールは、炭素数1以上6以下のアルコールである。一方、アルコールが炭素数7以上のアルコールである場合には、加熱硬化時にアルコールが揮発せず、第1コーティング組成物の硬化性が低下し、硬度や耐水性が低下するという不具合がある。炭素数1以上6以下のアルコールとしては、例えば、炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコール、および、炭素数1以上6以下の分岐状の1価アルコールが挙げられる。炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、および、n-ヘキサノールが挙げられる。炭素数1以上6以下の分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、および、tert-ブタノールが挙げられる。
【0086】
アルコールとしては、好ましくは、炭素数1以上6以下の直鎖状の1価アルコール、より好ましくは、炭素数1以上4以下の直鎖状の1価アルコール、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、および、n-ブタノール、とりわけ好ましくは、エタノールが挙げられる。
【0087】
アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0088】
第1メラミン樹脂を得るには、まず、メラミンと、ホルムアルデヒドとをメチロール化反応させ、メラミン樹脂を得る。
【0089】
メラミンと、ホルムアルデヒドとをメチロール化反応させるには、メラミンと、ホルムアルデヒドとを配合する。具体的には、ホルムアルデヒドを、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上、好ましくは、4mol以上、また、6mol以下となるよう、配合する。
【0090】
上記平均付加数が、上記下限以上であれば、架橋密度を向上させることができ、耐水性を向上できる。
【0091】
一方、上記平均付加数が、上記下限未満であれば、耐水性が低下する。
【0092】
上記平均付加数は、例えば、13C-NMRによる分析で算出することができる(以下同様。)。
【0093】
なお、メラミンの3つのアミノ基のすべてに、ホルムアルデヒドが付加した場合、ホルムアルデヒドの平均付加数は、6molである。
【0094】
また、上記メチロール化反応において、メラミンおよびホルムアルデヒドとともに、予め、アルコールを配合する。アルコールの配合割合は、メラミン1molに対して、例えば、4mol以上、好ましくは、6mol以上、また、例えば、8mol以下である。
【0095】
メチロール化反応の後、酸触媒を配合し、メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、アルコールで変性(アルキルエーテル化)する。
【0096】
酸触媒としては、例えば、有機酸、および、無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、蓚酸、および、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、燐酸、塩酸、硫酸、および、硝酸が挙げられる。酸触媒としては、好ましくは、有機酸、より好ましくは、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
【0097】
酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0098】
酸触媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0099】
反応条件として、反応温度は、例えば、60℃以上、また、例えば、120℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、12時間以下である。
【0100】
その後、中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)を配合し、反応生成物を中和する。
【0101】
これにより、第1メラミン樹脂が得られる。このような第1メラミン樹脂は、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数1以上6以下のアルコールで変性されたメラミン樹脂である。
【0102】
第1メラミン樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、800以上、好ましくは、1000、より好ましくは、1100以上、さらに好ましくは、1800以上、また、例えば、15000以下、好ましくは、7000以下、より好ましくは、5000以下、さらに好ましくは、2500以下である。
【0103】
上記重量平均分子量が、上記範囲内であれば、機械特性、平滑性、外観に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0104】
<ルイス酸触媒>
ルイス酸触媒は、カチオンと、対アニオンとからなる。
【0105】
カチオンは、Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属のカチオンである。詳しくは、Paulingの電気陰性度は、1.31以上、好ましくは、1.50以上、より好ましくは、1.60以上、また、2.02以下、好ましくは、1.80以下である。
【0106】
電気陰性度が、上記下限以上であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0107】
また、電気陰性度が、上記上限以下であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる。
【0108】
Paulingの電気陰性度が、1.31以上2.02以下の金属としては、例えば、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、錫、亜鉛、銅、および、ビスマスが挙げられ、好ましくは、マンガン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、より好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
【0109】
対アニオンは、硝酸の脱プロトン化体である。
【0110】
このようなルイス酸触媒として、具体的には、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸銅、および硫酸ビスマスが挙げられ、好ましくは、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム、硝酸ニッケル、より好ましくは、硝酸アルミニウムが挙げられる。
【0111】
<顔料>
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、および、体質顔料が挙げられる。
【0112】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、および、ペリレン顔料が挙げられる。
【0113】
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム粉末、アルミニウムペースト、雲母粉末、および、酸化チタンで被覆した雲母粉末が挙げられる。
【0114】
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、および、アルミナホワイトが挙げられる。
【0115】
顔料として、好ましくは、酸性基含有ビニルモノマー(好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー)により、分散性が向上する観点から、光輝性顔料、より好ましくは、アルミニウムペーストが挙げられる。
【0116】
顔料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0117】
<第1コーティング組成物の調製>
第1コーティング組成物は、第1水酸基含有樹脂と、第1メラミン樹脂と、ルイス酸触媒と、顔料とを混合することにより得られる。
【0118】
また、第1水酸基含有樹脂および第1メラミン樹脂を調製する際に、溶剤を用いる場合には、第1コーティング組成物には、溶剤が含まれる。
【0119】
また、第1コーティング組成物には、必要により、公知の添加剤を配合することができる。
【0120】
第1コーティング組成物において、第1メラミン樹脂(I-b)に対する第1水酸基含有樹脂(I-a)の質量比(第1水酸基含有樹脂(I-a)/第1メラミン樹脂(I-b))は、60/40以上、好ましくは、70/30以上、また、例えば、95/5以下である。
【0121】
上記質量比が、上記下限以上であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0122】
上記質量比が、上記上限以下であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第1コーティング層3を形成することができる。
【0123】
また、第1水酸基含有樹脂の配合割合は、第1水酸基含有樹脂と、第1メラミン樹脂と、ルイス酸触媒と、顔料との総量(以下、第1成分)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、70質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0124】
また、第1メラミン樹脂の配合割合は、第1成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、好ましくは、15質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0125】
ルイス酸触媒の配合割合は、第1水酸基含有樹脂および第1メラミン樹脂の総量100質量に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、4質量部以下である。
【0126】
また、ルイス酸触媒の配合割合は、第1成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。
【0127】
ルイス酸触媒の配合割合が、上記範囲内であれば、保存安定性および低温硬化性に優れる第1コーティング組成物を得ることができる。
【0128】
顔料の配合割合は、第1水酸基含有樹脂と、第1メラミン樹脂と、ルイス酸触媒との総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下、とりわけ好ましくは、10質量部以下である。
【0129】
また、顔料の配合割合は、第1成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0130】
そして、詳しくは後述するが、第1コーティング層3は、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、第1コーティング組成物を塗布し、これを硬化させることにより得られる。
【0131】
<第2コーティング組成物>
第2コーティング組成物は、詳しくは後述するが、第1コーティング層3の表面を被覆する第2コーティング層4を形成するための組成物である。
【0132】
第2コーティング組成物は、(II-a)第2水酸基含有樹脂と、(II-b)第2メラミン樹脂と、(II-c)ルイス酸触媒と、必要により、(II-d)ラジカル捕捉剤とを含む。
【0133】
<第2水酸基含有樹脂>
第2水酸基含有樹脂は、所定の水酸基価を有する樹脂である。詳しくは、第2水酸基含有樹脂は、上記した第1水酸基含有樹脂とは異なる水酸基価を有する。また、第2コーティング組成物は、後述するように、第2コーティング層4が、クリア層となる場合には、顔料を含まないため、顔料の分散性が必要とされない。そのため、そのような場合には、第2水酸基含有樹脂には、酸価が必要とされない。
【0134】
第2水酸基含有樹脂としては、上記した第1水酸基含有樹脂で例示した樹脂と同様のものが挙げられ、好ましくは、水酸基含有アクリル樹脂が挙げられる。なお、第2水酸基含有樹脂には、後述する第2メラミン樹脂は含まれない。
【0135】
第2水酸基含有樹脂において、水酸基含有アクリル樹脂は、第2重合成分の重合生成物である。
【0136】
第2重合成分は、モノマー成分である。詳しくは、第2重合成分は、ラジカル重合(ビニル重合)可能な重合可能成分(モノマー成分)である。
【0137】
第2重合成分は、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有ビニルモノマーと、必要りより、酸性基含有ビニルモノマーと、必要により、これらと共重合可能な共重合性モノマーとを含む。上記したように、第2水酸基含有樹脂には、酸価が必要とされない場合がある。そのため、酸性基含有ビニルモノマーは、任意成分である。
【0138】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、第1水酸基含有樹脂で例示したものと同様であり、好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~8のアルキルエステル、より好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~6のアルキルエステル、さらに好ましくは、メチルメタアクリレート、n-ブチルアクリレートが挙げられる。
【0139】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、第1水酸基含有樹脂で例示したものと同様であり、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、より好ましくは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0140】
酸性基含有ビニルモノマーとしては、第1水酸基含有樹脂で例示したものと同様であり、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、より好ましくは、モノカルボン酸、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸、とりわけ好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0141】
共重合性モノマーとしては、第1水酸基含有樹脂で例示したものと同様である。
【0142】
第2重合成分において、(メタ)アクリル酸エステルの配合割合は、第2重合成分100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、80質量部以下である。第2重合成分における(メタ)アクリル酸エステルの配合割合は、好ましくは、第1重合成分における(メタ)アクリル酸エステルの配合割合よりも、小さく設定される。
【0143】
また、水酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、第2重合成分100質量部に対して、例えば、12質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0144】
水酸基含有ビニルモノマーの配合割合が、上記した範囲内であれば、第2水酸基含有樹脂の水酸基価(後述)を、後述する所定の範囲に調整することができる。
【0145】
また、第2重合成分における水酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、好ましくは、第1重合成分における水酸基含有ビニルモノマーの配合割合よりも、大きく設定される。これにより、第2水酸基含有樹脂の水酸基価を、第1水酸基含有樹脂の水酸基価よりも大きくできる。
【0146】
また、酸性基含有ビニルモノマーの配合割合は、第2重合成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、また、例えば、8質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0147】
酸性基含有ビニルモノマーの配合割合が、上記した範囲内であれば、第2水酸基含有樹脂の酸価(後述)を、後述する所定の範囲に調整することができる。
【0148】
また、第2重合成分における酸性基含有ビニルモノマーの配合割合は、好ましくは、第1重合成分における酸性基含有ビニルモノマーの配合割合よりも、小さく設定される。これにより、第2水酸基含有樹脂の酸価を、第1水酸基含有樹脂の酸価よりも小さくできる。
【0149】
また、共重合性モノマーの配合割合は、第2重合成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0150】
第2重合成分は、好ましくは、共重合性モノマーを含まず、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有ビニルモノマーと、酸性基含有ビニルモノマーとを含み、より好ましくは、第2重合成分は、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有ビニルモノマーと、酸性基含有ビニルモノマーとからなる。
【0151】
そして、水酸基含有アクリル樹脂は、第2重合成分を重合することにより得られる。
【0152】
重合において、重合方法、重合条件、溶剤の種類、および、重合開始剤の種類は、第1水酸基含有樹脂において例示したものと同様である。
【0153】
これにより、水酸基含有アクリル樹脂が得られる。
【0154】
第2水酸基含有樹脂の水酸基価は、70mgKOH/g以上、好ましくは、90mgKOH/g以上、より好ましくは、110mgKOH/g以上、また、180mgKOH/g以下、好ましくは、140mgKOH/g以下である。
【0155】
上記水酸基価が、上記下限以上であれば、架橋密度が向上するため、耐水性に優れる第2コーティング層4を得ることができる。
【0156】
また、上記水酸基価が、上記上限以下であれば、第1コーティング層3の硬化収縮の増加を抑制できるため、密着性に優れる第2コーティング層4を得ることができる。
【0157】
また、詳しくは後述するが、好ましくは、第2水酸基含有樹脂の水酸基価は、第1水酸基含有樹脂の水酸基価よりも大きくなるように設定される。
【0158】
第2水酸基含有樹脂の酸価は、例えば、0mgKOH/g以上、好ましくは、0.5mgKOH/g以上、より好ましくは、1mgKOH/g以上、また、例えば、50mgKOH/g以下、好ましくは、30mgKOH/g以下、より好ましくは、20mgKOH/g、さらに好ましくは、10mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、5mgKOH/g以下である。
【0159】
第2水酸基含有樹脂の酸価が、上記範囲内であれば、相溶性および硬化性に優れる第2コーティング組成物が得られる。
【0160】
また、好ましくは、第2水酸基含有樹脂の酸価は、第1水酸基含有樹脂の酸価よりも小さくなるように設定される。
【0161】
第2水酸基含有樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000以上、好ましくは、8000、より好ましくは、10000以上、また、例えば、200000以下、好ましくは、100000以下、より好ましくは、80000以下、さらに好ましくは、40000以下、とりわけ好ましくは、25000以下である。
【0162】
上記重量平均分子量が、上記範囲内であれば、塗装性、外観、強度、硬度および耐摩耗性に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0163】
第2水酸基含有樹脂のガラス転移温度は、例えば、-30℃以上、好ましくは、-20℃以上、より好ましくは、0℃以上、さらに好ましくは、5℃以上、また、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下、より好ましくは、30℃以下、さらに好ましくは、20℃以下である。
【0164】
上記ガラス転移温度が、上記範囲内であれば、塗装性、硬度および耐水性に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0165】
<第2メラミン樹脂>
第2メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとから得られるメラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を、アルコールで変性(アルキルエーテル化)させることにより得られるアルキルエーテル化第2メラミン樹脂である。
【0166】
ホルムアルデヒドとしては、第1メラミン樹脂において例示したホルムアルデヒドと同様のものを用いることができる。
【0167】
第2メラミン樹脂において、アルコールは、炭素数2以上6以下のアルコールである。一方、アルコールが炭素数7以上のアルコールである場合には、加熱硬化時にアルコールが揮発せず、第2コーティング組成物の硬化性が低下し、硬度および耐水性が低下するという不具合がある。炭素数2以上6以下のアルコールとしては、例えば、炭素数2以上6以下の直鎖状の1価アルコール、および、炭素数2以上6以下の分岐状の1価アルコールが挙げられる。炭素数2以上6以下の直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、および、n-ヘキサノールが挙げられる。炭素数2以上6以下の分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、および、tert-ブタノールが挙げられる。
【0168】
アルコールとしては、好ましくは、炭素数2以上6以下の直鎖状の1価アルコール、より好ましくは、炭素数2以上4以下の直鎖状の1価アルコール、さらに好ましくは、エタノール、および、n-ブタノール、とりわけ好ましくは、n-ブタノールが挙げられる。つまり、とりわけ好ましくは、第2メラミン樹脂におけるアルコールは、第1メラミン樹脂におけるアルコールよりも炭素数の多いアルコールが選択される。これにより、耐水性が向上する。
【0169】
アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0170】
第2メラミン樹脂は、上記した第1メラミン樹脂と同様の方法で得ることができる。
【0171】
この方法において、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数は、3mol以上、好ましくは、4mol以上、また、6mol以下となるよう配合する。これにより、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる。
【0172】
上記平均付加数が、上記下限以上であれば、架橋密度を向上させることができ、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0173】
また、この方法において、アルコールの配合割合、酸触媒、および、反応条件は、第1メラミン樹脂において例示したものと同様である。
【0174】
これにより、第2メラミン樹脂が得られる。このような第2メラミン樹脂は、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、3mol以上6mol以下であり、炭素数2以上6以下のアルコールで変性されたメラミン樹脂である。
【0175】
第2メラミン樹脂の、GPCにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、例えば、800以上、好ましくは、1000、より好ましくは、1100以上、さらに好ましくは、1800以上、また、例えば、15000以下、好ましくは、7000以下、より好ましくは、5000以下、さらに好ましくは、2500以下、である。
【0176】
上記重量平均分子量が、上記範囲内であれば、機械特性、平滑性、外観に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0177】
<ルイス酸触媒>
ルイス酸触媒としては、例えば、第1メラミン樹脂において例示したものとルイス酸触媒が挙げられ、好ましくは、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、より好ましくは、硝酸アルミニウムが挙げられる。
【0178】
<ラジカル捕捉剤>
ラジカル捕捉剤は、第2コーティング層4の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられる。
【0179】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ヒンダードピペリジン類が挙げられる。また、ラジカル捕捉剤として、公知の重合性光安定剤を用いることもできる。
【0180】
ラジカル捕捉剤の塩基解離定数pKbは、例えば、6以上、好ましくは、7.5以上、より好ましくは、8.5以上、また、例えば、14以下である。
【0181】
塩基解離定数pKbが、上記範囲内であれば、ルイス酸触媒との酸・塩基反応を抑制でき、触媒活性を損なわない程度の範囲において、第2コーティング層4の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉することができる。
【0182】
また、ラジカル捕捉剤として、市販品を用いることもできる。具体的には、Tinuvin 249(pKb=8.0)、Tinuvin 152(pKb=7.0および9.4)、Tinuvin 123(pKb=9.6)(以上BASF社製)、HOSTAVIN 3058LIQ(クラリアント社製)、アデカスタブ LA-81(ADEKA社製)が挙げられる。
【0183】
<第2コーティング組成物の調製>
第2コーティング組成物は、第2水酸基含有樹脂と、第2メラミン樹脂と、ルイス酸触媒と、必要により、ラジカル捕捉剤とを混合することにより得られる。
【0184】
また、第2水酸基含有樹脂および第2メラミン樹脂を調製する際に、溶剤を用いる場合には、第2コーティング組成物には、溶剤が含まれる。
【0185】
また、第2コーティング組成物には、必要により、公知の添加剤(例えば、紫外線吸収剤)を配合することができる。
【0186】
紫外線吸収剤は、ルイス酸触媒との錯体形成による着色を抑制できるものが好ましく用いられる。このような紫外線吸収剤として、例えば、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、および、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、Uvinul 3030、Uvinul 3035、Uvinul 3039C(BASF社製)、および、SEESORB 501、SEESORB 502(シプロ化成社製)が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、アデカスタブ LA-46、アデカスタブ LA-F70(ADEKA社製)、Tinvin 400、Tinvin 405、Tinvin 460、Tinvin 477、Tinvin 479(BASF社製)、KEMISORB 102(ケミプロ化成社製)、EVERSORB 40、EVERSORB 41FD、および、EVERSORB 45(Everlight Chemical社製)が挙げられる。
【0187】
第2コーティング組成物において、第2メラミン樹脂(II-b)に対する第2水酸基含有樹脂(II-a)の質量比(第2水酸基含有樹脂(II-a)/第2メラミン樹脂(II-b))は、60/40以上、好ましくは、70/30以上、また、例えば、95/5以下である。
【0188】
上記質量比が、上記下限以上であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0189】
上記質量比が、上記上限以下であれば、耐水性、硬度、および、耐候性に優れる第2コーティング層4を形成することができる。
【0190】
また、第2水酸基含有樹脂の配合割合は、第2水酸基含有樹脂と、第2メラミン樹脂と、ルイス酸触媒と、ラジカル捕捉剤との総量(以下、第2成分)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、70質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0191】
また、第2メラミン樹脂の配合割合は、第2成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、好ましくは、15質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0192】
ルイス酸触媒の配合割合は、第2水酸基含有樹脂および第2メラミン樹脂の総量100質量に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、4質量部以下である。
【0193】
また、ルイス酸触媒の配合割合は、第2成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。
【0194】
ルイス酸触媒の配合割合が、上記範囲内であれば、保存安定性および低温硬化性に優れる第2コーティング組成物を得ることができる。
【0195】
また、ラジカル捕捉剤の配合割合は、第2成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。
【0196】
そして、詳しくは後述するが、第2コーティング層4は、第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、第2コーティング組成物を塗布し、これを硬化させることにより得られる。
【0197】
<塗装積層体の製造方法(コーティング組成物の使用方法>
コーティング組成物は、被塗装体2の表面をコーティングするために用いられる。被塗装体2を、コーティングすることにより、塗装積層体が製造される。
【0198】
図1を参照して、本発明の塗装積層体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0199】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0200】
塗装積層体1の製造方法は、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、第1コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第1コーティング層3を配置する第1工程と、第1工程の後に、未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、第2コーティング組成物を塗布することにより、未硬化の第2コーティング層4を配置する第2工程と、未硬化の第1コーティング層3および未硬化の第2コーティング層4を、同時に硬化させる第3工程とを備える。
【0201】
第1工程では、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第1コーティング層3を配置する。
【0202】
第1工程では、図1Aに示すように、まず、被塗装体2を準備する。
【0203】
被塗装体2は、第1コーティング層3および第2コーティング層4によって、その表面(厚み方向一方面)に、各種物性が付与される被塗装体である。
【0204】
なお、図1Aにおいて、被塗装体2は、平板形状を有するが、被塗装体2の形状は、特に限定されず、種々の形状が選択される。
【0205】
被塗装体2としては、例えば、樹脂、および、金属が挙げられる。
【0206】
樹脂として、例えば、ポリエスエル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂を含む)、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、および、酢酸セルロースが挙げられる。ポリエスエル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、および、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
【0207】
金属としては、例えば、鉄、アルミ、亜鉛、および、ステンレスが挙げられる。
【0208】
被塗装体2として、好ましくは、加工性および軽量性の観点から、樹脂、より好ましくは、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)が挙げられる。
【0209】
とりわけ、第1コーティング層3および第2コーティング層4は、それぞれ、第1メラミン樹脂を含む第1コーティング組成物および第2メラミン樹脂を含む第2コーティング組成物から形成されるため、低温(例えば、60℃以上100℃以下)で硬化させることができる。そのため、耐熱性の低い樹脂であっても、被塗装体2として選択することができる。
【0210】
次いで、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第1コーティング層3を配置するには、図1Bに示すように、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、第1コーティング組成物を塗布し、第1コーティング組成物が溶剤を含む場合には、必要により、乾燥する。
【0211】
これにより、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第1コーティング層3を配置することができる。つまり、未硬化の第1コーティング層3で、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)を被覆することができる。
【0212】
第2工程では、未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第2コーティング層4を配置する。
【0213】
未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第2コーティング層4を配置するには、図1Cに示すように、未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、第2コーティング組成物を塗布し、第1コーティング組成物が溶剤を含む場合には、必要により、乾燥する。
【0214】
これにより、未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に、未硬化の第2コーティング層4を配置することができる。つまり、未硬化の第2コーティング層4で、未硬化の第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)を被覆することができる。
【0215】
第3工程では、未硬化の第1コーティング層3および未硬化の第2コーティング層4を同時に硬化させる。
【0216】
具体的には、図1Dに示すように、未硬化の第1コーティング層3および未硬化の第2コーティング層4を、例えば、60℃以上、100℃以下で加熱し、未硬化の第1コーティング層3および未硬化の第2コーティング層4を、同時に硬化させる。
【0217】
これにより、塗装積層体1が得られる。図1Dに示すように、塗装積層体1において、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)は、第1コーティング層3(硬化後)に被覆されており、第1コーティング層3(硬化後)の表面(厚み方向一方面)は、第2コーティング層4(硬化後)に被覆されている。つまり、塗装積層体1は、被塗装体2と、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)を被覆する第1コーティング層3と、第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)を被覆する第2コーティング層4とを備える。具体的には、塗装積層体1は、被塗装体2と、被塗装体2の表面(厚み方向一方面)に直接配置される第1コーティング層3と、第1コーティング層3の表面(厚み方向一方面)に直接配置される第2コーティング層4とを備える。
【0218】
第1コーティング層3は、フィルム形状を有する。第1コーティング層3は、第2コーティング層4の下面に接触するように、第2コーティング層4の下面全面に、配置されている。
【0219】
第1コーティング層3は、上記したように、第1コーティング組成物から形成されている。
【0220】
第1コーティング層3は、顔料を含む塗料層であり、また、下塗り層である。
【0221】
第1コーティング層3の厚みは、例えば、5μm以上、また、例えば、40μm以下である。
【0222】
第2コーティング層4は、フィルム形状を有する。第2コーティング層4は、第1コーティング層3の上面に接触するように、第1コーティング層3の上面全面に、配置されている。第2コーティング層4は、塗装積層体1の最上層である。
【0223】
第2コーティング層4は、上記したように、第2コーティング組成物から形成されている。
【0224】
第2コーティング層4は、保護層(トップコート層)であり、好ましくは、顔料を含まないクリア層である。
【0225】
第2コーティング層4の厚みは、例えば、5μm以上、また、例えば、40μm以下である。
【0226】
また、第2コーティング層4の厚みに対する第1コーティング層3の厚みの比(第1コーティング層3の厚み/第2コーティング層4の厚み)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.0以下である。
【0227】
<作用効果>
コーティング組成物において、第1コーティング組成物および第2コーティング組成物は、それぞれ、所定の組成からなる。そのため、密着性、硬度、耐水性および耐候性に優れる塗装積層体1を製造できる。
【0228】
詳しくは、塗装積層体1では、とりわけ、第1コーティング層3によって、密着性を確保する一方、とりわけ、第2コーティング層4によって、硬度、耐水性および耐候性を確保している。これにより、第1コーティング層3および第2コーティング層4の全体で、密着性、硬度、耐水性および耐候性を確保できる。
【0229】
具体的には、第1コーティング層3(第1コーティング組成物)における、第1水酸基含有樹脂の水酸基価は、第2コーティング層4(第2コーティング組成物)における、第2水酸基含有樹脂の水酸基価よりも、相対的に、小さく設定されている。
【0230】
これにより、架橋密度の小さい第1コーティング層3によって、密着性を確保する一方、架橋密度の大きい第2コーティング層4によって、硬度、耐水性および耐候性を確保できる。
【0231】
塗装積層体1の製造方法では、未硬化の第1コーティング層3および前記未硬化の第2コーティング層4を、同時に硬化させる。そのため、生産効率に優れる。
【0232】
塗装積層体1において、第1コーティング層3および第2コーティング層4は、それぞれ、所定の組成からなる第1コーティング組成物および第2コーティング組成物からなる。そのため、密着性、硬度、耐水性および耐候性に優れる。
【0233】
コーティング組成物は、とりわけ、プレコート用塗料(コート剤)として、好適に用いることができる。そして、コーティング組成物、および、コーティング組成物を用いて得られる塗装積層体1は、家電用電気製品用途または車両用途などの各種産業用途に用いることができ、とりわけ、車両用途(例えば、二輪車の外装)において、好適に用いることができる。
【実施例
【0234】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0235】
1.成分の詳細
各製造例、各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
【0236】
MMA:メタクリル酸メチル
n-BA:アクリル酸n-ブチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
MAC:メタクリル酸
PBO:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、商品名「パーブチルO」、日油株式会社製
T-SOL100:芳香族系炭化水素、ENEOS株式会社製
Tinuvin123:ラジカル捕捉剤、塩基解離定数pKb=9.6、BASF社製
Tinuvin249:塩基解離定数pKb=8.0、BASF社製
Tinuvin292:塩基解離定数pKb=5.1、BASF社製
Tinuvin144:塩基解離定数pKb=5.5、BASF社製
Tinuvin405:紫外線吸収剤、BASF社製
Tinuvin384:紫外線吸収剤、BASF社製
【0237】
2.第1水酸基含有樹脂または第2水酸基含有樹脂の製造
製造例1
撹拌機、温度計、還流コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコにT-SOL100 51g、iso-ブタノール51gを仕込み、窒素で脱気しながら100℃まで昇温した。次いで、MMA 50g、n-BA 41.5g、HEMA 7.0g、MAC 1.5g、PBO 2.0gを混合した溶液を4時間かけて滴下し、1時間熟成させて、第1水酸基含有樹脂(I-a1)を得た。固形分濃度は、50質量%であった。
【0238】
製造例2~製造例9
製造例1と同様の手法に従って、第1水酸基含有樹脂を得た。但し、配合処方を表1に従って変更した。
【0239】
製造例10~製造例13
製造例1と同様の手法に従って、第2水酸基含有樹脂を得た。但し、配合処方を表2に従って変更した。
【0240】
3.第1メラミン樹脂または第2メラミン樹脂の製造
製造例14
撹拌機、温度計、還流コンデンサーおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メラミン126g(1.0モル)、ホルマリン濃度が92%のパラホルムアルデヒド196g(6.0モル)およびn-ブタノール519g(7.0モル)を仕込み、還流温度まで昇温した。還流温度で1時間メチロール化反応を実施した。パラトルエンスルホン酸の20%水溶液0.45g(0.53ミリモル)を加え、還流状態にて脱水させながら、3時間、アルキル化反応を実施した。その後、20%水酸化ナトリウム溶液0.16g(0.80ミリモル)で反応生成物を中和した。次いで、減圧下で溶剤留去した後、n-ブタノールで、固形分濃度60質量%となるまで希釈した。これにより、第1メラミン樹脂(I-b1)を得た。
【0241】
製造例15~製造例19
製造例14と同様の手法に従って、第1メラミン樹脂を得た。但し、配合処方を表3に従って変更した。
【0242】
製造例20~製造例24
製造例14と同様の手法に従って、第2メラミン樹脂を得た。但し、配合処方を表4に従って変更した。
【0243】
また、第1メラミン樹脂(I-b5)として、商品名「サイメル370」(ダイセル・オルネクス社製、溶剤:iso-ブタノール、固形分濃度:88%、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、5.8molであり、メタノールで変性されたメラミン樹脂(メチル化メラミン樹脂))を準備した。
【0244】
また、第2メラミン樹脂(II-b3’)として、商品名「サイメル303」、(ダイセル・オルネクス社製、固形分濃度:98%、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数が、5.9molであり、メタノールで変性されたメラミン樹脂(メチル化メラミン樹脂))を準備した。
【0245】
4.塗装積層体の製造
実施例1~実施例24、および、比較例1~比較例21
【0246】
<第1コーティング組成物の調製>
表5~表7に記載の配合処方に従って、第1水酸基含有樹脂、第1メラミン樹脂、ルイス酸触媒、および、顔料を混合し、第1コーティング組成物を調製した。なお、表5~表7において、第1水酸基含有樹脂、第1メラミン樹脂、ルイス酸触媒、および、顔料は、固形分の値である。
【0247】
<第2コーティング組成物の調製>
表5~表7に記載の配合処方に従って、第2水酸基含有樹脂、第2メラミン樹脂、ルイス酸触媒、ラジカル捕捉剤、および、紫外線吸収剤を混合し、第2コーティング組成物を調製した。なお、表5~表7において、第2水酸基含有樹脂、第2メラミン樹脂、ルイス酸触媒、ラジカル捕捉剤、および、紫外線吸収剤は、固形分の値である。
【0248】
<塗装積層体の製造>
[第1工程]
被塗装体として、厚み2mmのABS樹脂を準備した。
【0249】
次いで、被塗装体の厚み方向一方面に、第1コーティング組成物を塗布し、25℃で乾燥することにより、未硬化の第1コーティング層を配置した。
【0250】
[第2工程]
未硬化の第1コーティング層の厚み方向一方面に、第2コーティング組成物を塗布し、25℃で乾燥することにより、未硬化の第2コーティング層を配置した。
【0251】
[第3工程]
未硬化の第1コーティング層および前記未硬化の第2コーティング層を、70℃で、20分加熱し、同時に硬化させた。
【0252】
これにより、塗装積層体を得た。塗装積層体において、第1コーティング層の厚みは、20μmであり、第2コーティング層の厚みは、20μmであった。
【0253】
5.評価
<酸価>
各製造例の第1水酸基含有樹脂および第2水酸基含有樹脂について、JIS K 0070-1992(電位差滴定法)に基づき、酸価を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0254】
<水酸基価>
各製造例の第1水酸基含有樹脂および第2水酸基含有樹脂について、JIS K 0070-1992(アセチル化法)に基づき、水酸基価を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0255】
<重量平均分子量>
各製造例の第1水酸基含有樹脂、第2水酸基含有樹脂、第1メラミン樹脂、および、第2メラミン樹脂について、GPC法に基づき、以下の測定条件に基づき、重量平均分子量を測定した。その結果を表1~表4に示す。
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:TSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(何れも東ソー社製)
移動層:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:25℃
流量:0.6ml/分
サンプルの濃度:20mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
注入量:10μl
【0256】
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、重量平均分子量を算出した。
【0257】
<ガラス転移温度>
各製造例の第1水酸基含有樹脂および第2水酸基含有樹脂について、下記式(1)で示されるFOX式により算出した。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg (1)
【0258】
上記式(1)において、Tgは、n種類の第1重合成分または第2重合成分(モノマー)のガラス転移温度(K)であり、W、W、Wは、各モノマーの質量分率であり、W+W+・・・+W=1である。また、Tg、Tg、Tgは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)である。
【0259】
また、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができ、例えば、三菱レイヨン株式会社のアクリルエステルカタログ(1997年度版)や北岡協三著、「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、p168~p169などに記載されている。その結果を表1および表2に示す。
【0260】
<ホルムアルデヒドの平均付加数>
各製造例の第1メラミン樹脂および第2メラミン樹脂について、メラミン1molに対するホルムアルデヒドの平均付加数を、13C-NMRにより測定した。その結果を表3および表4に示す。
【0261】
<顔料分散性>
第1コーティング組成物のそれぞれを、25℃で24時間静置した。その後、第1コーティング組成物の状態を目視で観察した。顔料分散性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
◎:顔料の沈降が観測されなかった。
〇:顔料の沈降が観測されるが、撹拌により顔料の再分散が可能であった。
×:顔料の沈降が観測され、撹拌しても顔料は分散しなかった。
【0262】
<金属腐食性>
40℃に保った第1コーティング組成物および第1コーティング組成物のそれぞれに、リン酸亜鉛処理鋼板を24時間浸漬し、取り出した後のリン酸亜鉛処理鋼板の状態を目視で観測した。金属腐食性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
〇:鋼板に着色が観測されなかった。
×:鋼板に錆に起因した着色が観測された。
【0263】
<密着性>
JIS K5400 8.5.2:1990に準じて、各実施例および比較例の塗装積層体にナイフを使用して、被塗装体に達するよう1mm幅で縦、横それぞれ切り目を碁盤目に入れた。次いで、その表面に粘着テープを密着させ、瞬時に剥がした後の塗膜状態を目視で観察した。密着性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
〇:剥離、塗膜の欠けが観測されなかった。
×:剥離、塗膜の欠けが全面に観測された。
【0264】
<耐水性>
各実施例および比較例の塗装積層体を40℃に保った温水に8時間浸漬し、取り出した後の状態を目視で観察した。耐水性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
◎:白化などの異常が観測されなかった。
〇:わずかに白化が観測されたが、12時間以内に白化は消失した。
×:著しく白化し、白化は消失しなかった。
【0265】
<鉛筆硬度>
JIS K 5600-5-4に準じて、各実施例および比較例の塗装積層体に対し約45°の角度で鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜に傷が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。その結果を表5~表7に示す。
【0266】
<光沢>
JIS K 5600-4-7に準じて、塗装試験片の60度光沢を測定した。光沢について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
〇:60度光沢値が90以上であった。
×:60度光沢値が90未満であった。
【0267】
<耐候性>
JIS D 0205に準じて、ブラックパネル温度63±3℃で、各実施例および比較例の塗装積層体を500時間試験し、試験0時間の塗装試験片との色差の変化(ΔE)を測定した。耐候性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表5~表7に示す。
[基準]
◎:0≦ΔE≦1.5
〇:1.5<ΔE≦3.0
×:3.0<ΔE
【0268】
【表1】
【0269】
【表2】
【0270】
【表3】
【0271】
【表4】
【0272】
【表5】
【0273】
【表6】
【0274】
【表7】
【符号の説明】
【0275】
1 塗装積層体
2 被塗装体
3 第1コーティング層
4 第2コーティング層
図1