(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コンクリート組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20241021BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20241021BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20241021BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20241021BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/02 B
C04B16/06 Z
C04B18/14 Z
C04B22/06 A
(21)【出願番号】P 2021059716
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2020123080
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓
(72)【発明者】
【氏名】峯 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】春日 昭夫
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134697(JP,A)
【文献】特開平11-343155(JP,A)
【文献】特開平10-114562(JP,A)
【文献】特開平11-131803(JP,A)
【文献】特開平11-189447(JP,A)
【文献】特開平11-092200(JP,A)
【文献】特開平02-267146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0212551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材と水と細骨材とを含み、前記細骨材は軽量細骨材を含み、
前記水の単位水量をW(kg/m
3)、水結合材比をW/B(%)とするとき、Wは110以上、1
40以下、W/Bは18以上、(0.168×(W-110)+20)以下である、コンクリート組成物。
【請求項2】
結合材と水と細骨材とを含み、前記結合材はセメントを含み、前記細骨材は軽量細骨材を含み、
前記水の単位水量をW(kg/m
3)
、ペーストに対する前記細骨材の体積比をvs/vpとするとき、Wは110以上、1
40以下、vs/vpは0.67以上、1.00以下である、コンクリート組成物。
【請求項3】
結合材と水と細骨材とを含み、前記細骨材は軽量細骨材を含み、
前記水の単位水量をW(kg/m
3)は110以上、1
40以下、単位細骨材量(kg/m
3)は515以上、655以下である、コンクリート組成物。
【請求項4】
W=125~140である、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
【請求項5】
W=125~135である、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
【請求項6】
前記細骨材は人工軽量細骨材からなる、請求項1から
5のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
【請求項7】
有機繊維をさらに含む、請求項1から
6のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
【請求項8】
前記結合材はシリカフュームを含む、請求項1から
7のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人工軽量細骨材は、コンクリート組成物の軽量化や、内部養生効果による自己収縮低減などの特徴があることが知られている。特許文献1には人工軽量細骨材を含み、水を145~155kg/m3で添加したコンクリート組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工軽量細骨材は空隙が多く水分を含みやすい。このため、空隙に含まれる水分が凍結膨張と融解を繰り返すことでコンクリートに繰返し応力が掛かり、耐凍害性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は人工軽量細骨材を含み、耐凍害性が高いコンクリート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のコンクリート組成物は、結合材と水と細骨材とを含み、細骨材は軽量細骨材を含み、水の単位水量をW(kg/m3)、水結合材比をW/B(%)とするとき、Wは110以上、140以下、W/Bは18以上、(0.168×(W-110)+20)以下である。本発明の他の態様のコンクリート組成物は、結合材と水と細骨材とを含み、結合材はセメントを含み、細骨材は軽量細骨材を含み、水の単位水量をW(kg/m3)、ペーストに対する細骨材の体積比をvs/vpとするとき、Wは110以上、140以下、vs/vpは0.67以上、1.00以下である。本発明のさらに他の態様のコンクリート組成物は、結合材と水と細骨材とを含み、細骨材は軽量細骨材を含み、水の単位水量をW(kg/m3)は110以上、140以下、単位細骨材量(kg/m3)は515以上、655以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では水の単位水量を110~150kg/m3と低くしたため、凍結膨張する水分が減少する。このため、本発明によれば、人工軽量細骨材を含み、耐凍害性が高いコンクリート組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1~3と比較例1の凍結融解試験結果を示すグラフである。
【
図2】実施例1と比較例1の収縮ひずみを示すグラフである。
【
図3】実施例4~6と比較例2~3の収縮ひずみを示すグラフである。
【
図4】実施例1,3と比較例1の中性化促進試験結果を示すグラフである。
【
図5】実施例1~3,7と比較例1における材齢と圧縮強度の関係を示すグラフである。
【
図6】実施例1~3,7と比較例1の圧縮強度とヤング係数の関係を示すグラフである。
【
図7】実施例8~14と比較例4の圧縮強度を示すグラフである。
【
図8】実施例8~14と比較例4の凍結融解試験結果(相対動弾性係数)を示すグラフである。
【
図9】実施例8~14と比較例4の凍結融解試験結果(質量減少率)を示すグラフである。
【
図10】実施例8~14と比較例4における単位水量とW/Bの関係を示すグラフである。
【
図11】実施例8~14と比較例4における空気量と耐久性指数の関係を示すグラフである。
【
図12】実施例8~14と比較例4におけるvs/vpと圧縮強度の関係を示すグラフである。
【
図13】実施例8~14と比較例4における単位細骨材量と圧縮強度の関係を示すグラフである。
【
図14】実施例8~11と比較例4の収縮ひずみを示すグラフである。
【
図15】実施例8~11と比較例4における単位水量と収縮ひずみの関係を示すグラフである。
【
図16】実施例8~11と比較例4におけるW/Bと収縮ひずみの関係を示すグラフである。
【実施例】
【0009】
以下、実施例と比較例に基づいて、本発明のコンクリート組成物について説明する。表1は実施例1~7と比較例1~3のコンクリート組成物の配合を、表2は実施例1,3と比較例1のコンクリート組成物の単位質量と単位容積を、表3は実施例1~7と比較例1~3において使用した材料の諸元を示している。なお、表3中、BETはJIS R 1626「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」による測定結果であることを意味する。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
図1(a)は、実施例1~3と比較例1についての相対動弾性係数を、
図1(b)は、実施例1~3と比較例1についての質量減少率を、
図1(c)は実施例1~3と比較例1の配合を示している。細骨材比(s/a)は55.0としている。相対動弾性係数と質量減少率は、JISA1148:2010「コンクリートの凍結融解試験方法」に規定される水中凍結融解試験方法(A法)に基づいて求めた。300サイクル経過時に相対動弾性係数が初期値の60%以上であれば、耐凍害性に優れると評価できる。比較例1では、100サイクル程度で、相対動弾性係数が初期値の60%を下回ったのに対し、実施例1~3では300サイクル経過時でも初期値の80~90%程度にとどまっている。質量減少率は、比較例1ではサイクル数とともに急激に増加しているが、実施例1~3ではほぼ一定である。なお、実施例1~3のコンクリートは結合材としてシリカフュームを含み、比較例1のコンクリートは結合材としてシリカフュームを含んでいない。シリカフュームはコンクリートの流動性を高める効果を有する。
【0014】
図2(a)は、実施例1と比較例1についての収縮ひずみを、
図2(b)は実施例1と比較例1の配合を示している。実施例1と比較例1はいずれも人工軽量細骨材を用いているが、水の含有量(単位水量)Wと水結合材比W/Bが異なっている。実施例1では18-W130-55.0(20℃)と18-W130-55.0(7dry)の2種類の条件で試験を行っている。18-W130-55.0(20℃)では、コンクリートを打設後、20℃環境で封かん状態(乾燥させない状態)を維持した。18-W130-55.0(7dry)では、コンクリート打設後、材齢7日まで20℃環境で封かんし、材齢7日(図中A点)で脱枠し、気中養生した(乾燥させた)。比較例では、18-W130-55.0(20℃)と同様、コンクリートを打設後、20℃環境で封かん状態を維持した。打込み完了からの経過日数が少ない段階では、収縮ひずみは主に自己収縮(セメント水和反応によってコンクリート中の水が消費されることで生じる、コンクリート打設後の初期段階における収縮)によって生じる。18-W130-55.0(20℃)と比較例では封かんを続けているため、乾燥収縮(コンクリート中の水が空中に逸散することで生じる、コンクリート打設後長期に渡る収縮)は基本的に生じていない。以上より、18-W130-55.0(20℃)と18-W130-55.0(7dry)と比較例のいずれのケースでも、自己収縮による初期の収縮ひずみは抑えられていることがわかる。18-W130-55.0(7dry)では、脱枠後、水の蒸発が進み、これに伴い乾燥収縮による収縮ひずみが進行している。
【0015】
図3(a)は、実施例4~6と比較例2~3についての収縮ひずみを、
図3(b)は実施例4~6と比較例2~3の配合を示している。細骨材率(s/a)は47.5としている。各実施例と比較例では、材齢7日(図中A点)で脱枠し、気中養生した。実施例4~6では、細骨材として人工軽量細骨材を用い、比較例2~3は細骨材として砕砂を用いている。水の含有量(単位水量)Wはすべてのケースで同じである。実施例4~6では、自己収縮と乾燥収縮の両者が抑えられている。比較例2~3では自己収縮は大きいが、乾燥収縮は実施例4~6と同程度である。
【0016】
以上より、以下のことが理解される。まず、人工軽量細骨材と砕砂とを比べると、
図3(a)に示すように、人工軽量細骨材を用いたほうが、自己収縮が抑制されている。これは、人工軽量細骨材は内部の空隙が水を保持する性能が高く、内部養生効果による自己収縮抑制効果が大きいためであると考えられる。内部養生効果による自己収縮抑制効果は、人工軽量細骨材の従来から知られている特徴である。一方、18-W130-55.0(20℃)と18-W130-55.0(7dry)は材齢7日以降の封かんの有無だけが異なるが、
図2(a)に示すように、18-W130-55.0(7dry)においても、乾燥収縮に伴う収縮ひずみは大きく増加していない。これは、実施例1における水の含有量(単位水量)Wが少ないためであると考えられる。すなわち、セメントの水和反応で使用されなかった水は人工軽量細骨材の間隙に残留し、これが乾燥収縮の原因となるのであるが、単位水量Wが小さいため、残留水分量が減少し、乾燥収縮が抑えられたものと考えられる。さらに、残留水分量が減少する結果、耐凍害性が改善される。凍害は、コンクリートの空隙に含まれる水分が凍結膨張と融解を繰り返すことで、コンクリートに繰返し応力が掛かって生じる。残留水分が減少することで応力が抑えられ、
図1(a)に示すように、相対動弾性係数と質量減少率の変動が抑えられると考えられる。
【0017】
単位水量Wが110~140kg/m3の範囲、ないし約125~140kg/m3の範囲、特に130kg/m3を中心とした±5kg/m3程度の範囲(約125~約135kg/m3の範囲)では各実施例と同様の結果が得られると考えられる。実施例1と3は水結合材比W/Bだけが異なり、実施例1(W/B=18)のほうが実施例3(W/B=20)より多少耐凍害性に優れるが、両者とも十分な耐凍害性を有している。従って、水結合材比W/Bは少なくとも18~20%の範囲にあることが好ましい。また、PP(ポリプロピレン繊維)を含めることによって(実施例6)、耐凍害性がさらに向上する。繊維としてはポリプロピレン繊維以外の有機繊維を用いることもできる。細骨材はすべて人工軽量細骨材であることが好ましいが、一部が人工軽量細骨材であっても本発明の効果を奏することができる。
【0018】
細骨材に人工軽量細骨材を使用することで、砕砂を使用した場合に比べ、流動性が大きく改善される。表4に実施例4と比較例2のフレッシュ試験結果を示す。スランプフロー値はJIS A1150:2014「コンクリートのスランプフロー試験方法」に従って測定した。50cmスランプフロー通過時間は、コーンを引き上げた瞬間から、コンクリートの直径が50cmまで広がる時間のことであり、コンクリートの流動性の指標の一つである。比較例2はスランプフロー値が50cmに達しなかったため、測定値がない。実施例4と比較例2の違いは、細骨材での種類である。実施例4は細骨材に人工軽量細骨材を使用し、比較例2は細骨材に砕砂を使用している。比較例2は、実施例よりも高性能減水剤(SP)の使用量が多いにもかかわらず、スランプフロー値は実施例よりも極めて小さい。すなわち、細骨材に人工軽量細骨材を使用することで、極めて高い流動性が得られる。
【0019】
【0020】
図4(a)は実施例1,3と比較例1について、促進材齢と促進中性化深さとの関係を、
図4(b)は実施例1,3と比較例1の配合を示している。促進中性化深さは、JISA1153:2012「コンクリートの促進中性化試験方法」に基づいて求めた。コンクリートは、大気中に存在する二酸化炭素がコンクリート中の水酸カルシウムと反応することによって、中性化する。コンクリートの中性化は鉄筋の腐食の可能性を高める。従って、コンクリートの中性化のしにくさは、耐凍害性と同様、コンクリートの長期耐久性の指標の一つである。促進試験開始後26週経過の時点で促進中性化深さが25mm以下であれば十分な耐中性化性能を有していると評価される。実施例1,3は13週までのデータしかないが、比較例1との対比から十分な耐中性化性能を有していると考えられる。
【0021】
図5(a)は実施例1~3,7と比較例1について、材齢と圧縮強度との関係を、
図5(b)は実施例1~3,7と比較例1の配合を示している。
図5(a)は標準養生した試験体の材齢と圧縮強度の関係を示している。実施例1~3,7は比較例1と比べて大きな圧縮強度を有している。一般に水結合材比W/Bが小さいほどコンクリートの圧縮強度が上がるとされているが、
図5(a)からこの一般的な傾向が確認された。
【0022】
図6(a)は実施例1~3,7と比較例1について、圧縮強度とヤング係数との関係を、
図6(b)は実施例1~3,7と比較例1の配合を示している。ヤング係数としては、設計マージンを考慮して、計算値を0.8倍した値を用いることが多い。人工軽量細骨材を用いたコンクリートの比重γは2.3t/m
3程度になると考えられる。
図6(a)にはγ=2.4t/m
3と2.1t/m
3の例を示している。実施例1~3,7はγ=2.4t/m
3の場合の計算値を0.8倍した値を上回るヤング係数を示している。人工軽量骨材は砕砂より柔らかく、ヤング係数もその分低下する傾向にあるが、実施例1~3,7はヤング係数(剛性)の観点からも問題ない性能が得られた。
【0023】
表5は実施例8~14と比較例4のコンクリート組成物の配合を、表6は実施例8~14と比較例4において使用した材料の諸元を示している。実施例8は実施例1とロットが異なるが、同じ配合である。実施例8~14と比較例4において使用した材料は、基本的に実施例1~7と比較例1~3において使用した材料と同じである。
【0024】
【0025】
【0026】
表7は、実施例8~14と比較例4のフレッシュ試験結果を示している。フレッシュ試験は表4に示すフレッシュ試験と同様の方法で行った。いずれも表4の比較例2より良好な流動性を示しており、細骨材に人工軽量細骨材を使用することで、高い流動性が得られることが確認された。後述するように、比較例4は水や結合材と比べて細骨材が多いため、流動性が低下したものと考えられる。
【0027】
【0028】
図7は、実施例8~14と比較例4についての圧縮強度を示している。図中、「90℃封かんσ7」はコンクリートを打設し、90℃環境で7日間封かんした後の圧縮強度を、「標準σ28」はコンクリートを打設し、水中で28日間養生した後の圧縮強度を、「20℃封かんσ7」はコンクリートを打設し、20℃環境で7日間封かんした後の圧縮強度を意味する。実施例8~14と比較例4では、実用上問題のないレベルの圧縮強度が得られた。また、
図5と同様、水結合材比W/Bが小さいほどコンクリートの圧縮強度が上がる傾向が確認された。
【0029】
図8(a)は実施例8~14と比較例4についての、150サイクルまでの相対動弾性係数を示している。実施例8~11と比較例4については300サイクルまで相対動弾性係数の測定を行ったため、
図8(b)に別途示している。
図9は実施例8~14と比較例4についての質量減少率を示している。相対動弾性係数と質量減少率は、JISA1148:2010「コンクリートの凍結融解試験方法」に規定される水中凍結融解試験方法(A法)に基づいて求めた。比較例4では、150サイクル程度で、相対動弾性係数が初期値の60%を下回ったのに対し、実施例8~11では300サイクル経過時でも初期値と同程度の値が得られた。実施例12~14は150サイクルまでの測定結果しか得られていないが、150サイクルまでの傾向及び
図8(b)から判断し、300サイクル到達時での相対動弾性係数は少なくとも60%以上であると評価できる。質量減少率は、比較例4では150サイクルを中心として減少し、その後回復する傾向がみられた。これに対し、実施例8~14では、質量減少率は1%未満またはマイナス(質量が増加)となっている。なお、
図8(b)には実施例1のデータを併記しているが、同一配合である実施例1と8はほぼ同様の結果となっており、試験結果の再現性が確認された。
【0030】
図10は水の単位量W(kg/m
3)と水結合材比W/B(%)の関係を示している。
図8との対比より、Wが110以上、150以下、W/Bが18以上、(0.168×(W-110)+20)以下の領域で規定される台形の領域A、好ましくは、Wが110以上、140以下、W/Bが18以上、(0.168×(W-110)+20)以下の領域で規定される台形の領域Bでは相対動弾性係数が300サイクルで60%以上となっている。また、この領域では、0~300サイクルの範囲で質量減少率が1%未満またはマイナス(質量が増加)となっている。従って、水の単位量W(kg/m
3)と水結合材比W/B(%)の関係としては領域Aが好ましく、領域Bがより好ましい。
【0031】
図11は空気量と耐久性指数DFの関係を示している。耐久性指数DFはJISA1148:2010「コンクリートの凍結融解試験方法」に規定される、コンクリートの耐凍害性を評価するための指標であり、一般にはこの値が60以上であれば耐凍害性を有すると判定される。
【0032】
図12は、vs/vpと標準σ28の関係を示している。vsは細骨材の単位絶対容積を、vpはペーストの単位絶対容積を示している。
図13は単位細骨材量(kg/m
3)と標準σ28の関係を示している。比較例4は表5からもわかる通り細骨材の量が多く、セメントと水が少ない。このため、十分な圧縮強度が得られなかったものと考えられる。
図11より、Wが110以上、150以下、好ましくは110以上、140以下で、vs/vpが0.67以上、1.00以下であるとき、相対動弾性係数が300サイクルで60%以上となっている。
図12より、Wが110以上、150以下、好ましくは110以上、140以下で、単位細骨材量(kg/m
3)が515以上、655以下であるとき、相対動弾性係数が300サイクルで60%以上となっている。また、これらの領域では、0~300サイクルの範囲で質量減少率が1%未満またはマイナス(質量が増加)となっている。
【0033】
図14は実施例8~11と比較例4についての収縮ひずみを示している。
図14(a)は20℃で封かんした条件、
図14(b)は材齢7日まで20℃で封かんし、その後20℃、相対湿度60%で気中養生した条件での収縮ひずみを示している。20℃封かんの条件では実施例8~11、比較例4とも収縮は見られなかった。材齢7日まで20℃で封かんし、その後気中養生した場合は、収縮ひずみが200×10
-6程度まで進行したが、
図3に示す場合と比べて収縮ひずみは抑えられている。
【0034】
図15は単位水量と収縮ひずみの関係を、
図16はW/Bと収縮ひずみの関係を示している。単位水量とW/Bは収縮ひずみに対し大きな影響を及ぼしていないことがわかる。