(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】乗物用荷室構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
B60R5/04 T
(21)【出願番号】P 2021065102
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎也
(72)【発明者】
【氏名】角谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 吉紀
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/079576(WO,A1)
【文献】特開2006-160097(JP,A)
【文献】実開昭62-082254(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0087295(KR,A)
【文献】米国特許第05632520(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用荷室構造であって、
乗物幅方向において対になる形で設けられた一対の側壁部と、
デッキボードと、
使用時には前記デッキボードの上方に配されるとともに、非使用時には前記デッキボードの下方に収納されるトノカバーと、を備え、
一対の前記側壁部のうちの一方は、
前記使用時における前記トノカバーの端部を支持する支持部と、
前記非使用時における前記トノカバーの前記端部を支持する凹状の凹部と、を備え、
前記支持部は、前記使用時における前記トノカバーの前記端部に対向する対向面を備え、
前記凹部は、前記非使用時における前記トノカバーの前記端部に対向する底面を備え、
前記底面は、前記対向面よりも乗物幅方向外側に位置し
、
一対の前記側壁部のうちの他方は、前記使用時における前記トノカバーの前記端部とは反対側の反対端部に対向する反対対向面と、前記非使用時における前記トノカバーの前記反対端部に対向する下側対向面と、を備え、
前記下側対向面は、前記反対対向面よりも乗物幅方向内側に位置していることを特徴とする乗物用荷室構造。
【請求項2】
前記底面と前記下側対向面との間の距離は、前記対向面と前記反対対向面との間の距離以上であることを特徴とする
請求項1に記載の乗物用荷室構造。
【請求項3】
前記凹部は、前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部を備え、
前記開口部は、その一部が前記凹部の内側に向かって折れ曲がっていることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の乗物用荷室構造。
【請求項4】
前記凹部は、
前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部と、
当該凹部の内側において前記開口部に向かって伸びる形で立設したリブと、を備えることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の乗物用荷室構造。
【請求項5】
前記凹部は、
前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部と、
前記底面を有し、前記開口部に取り付けられた凹状のブラケットと、を備えることを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の乗物用荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用荷室構造として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的には、特許文献1に記載の乗物用荷室構造(ラゲッジスペース)において、リアサイドトリムに取り付けられた1対のトノカバー取付部材には、ばね付勢式のロールスクリーンと同様の構造を有するトノカバー(巻取り式トノカバー・アセンブリ)が、着脱可能に取り付けられている。また、ラゲッジスペースの床は、左右の側部ラゲッジフロアパネルと、デッキボード(ラゲッジフロアリッド)等により画定されている。左右の側部ラゲッジフロアパネルは、ヒンジ部によって開閉可能なリッド部を有する。トノカバーの収納時には、トノカバーをトノカバー取付部材より取り外し、デッキボードを跳ね上げて開き位置に位置させ、左右のリッド部もヒンジ部周りに回動させて開き位置に位置させる。そして、トノカバーをトノカバー床下収納凹部に入れ、デッキボード、左右のリッド部を元の閉じ位置に戻すことで、トノカバーの床下収納が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、トノカバーをトノカバー床下収納凹部に収納したり、収納されたトノカバーを取り出したりするために、左右のリッド部を操作する必要があり、煩雑である。また、左右のリッド部が設けられていることにより、左右の側部ラゲッジフロアパネルおいてリッド部との境界が生じ、見栄えが悪い。さらに、工具等を収納するスペースがトノカバー床下収納凹部の側方に設けられることが考えられ、その場合、トノカバーを収納する際は、当該スペースを避けるようにして収納する必要があり、トノカバーの収納、取り出しが一層煩雑となる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、トノカバーの収納、取り出しが容易になる乗物用荷室構造を提供することを目的の一つとする。また、意匠性が向上する乗物用荷室構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、乗物用荷室構造であって、乗物幅方向において対になる形で設けられた一対の側壁部と、デッキボードと、使用時には前記デッキボードの上方に配されるとともに、非使用時には前記デッキボードの下方に収納されるトノカバーと、を備え、一対の前記側壁部のうちの一方は、前記使用時における前記トノカバーの端部を支持する支持部と、前記非使用時における前記トノカバーの前記端部を支持する凹状の凹部と、を備え、前記支持部は、前記使用時における前記トノカバーの前記端部に対向する対向面を備え、前記凹部は、前記非使用時における前記トノカバーの前記端部に対向する底面を備え、前記底面は、前記対向面よりも乗物幅方向外側に位置していることに特徴を有する乗物用荷室構造である。
【0007】
このような乗物用荷室構造によると、使用時のトノカバーをデッキボードの下方に収納するときは、トノカバーを底面側(乗物の左側又は右側)に偏らせながら凹部に差し込んで支持させることができる。これにより、トノカバーを収納するための開閉可能な部材(例えば、特許文献1に記載されたリッド部)を設けることなく、トノカバーをスムーズに収納することができるとともに、収納された状態からスムーズに取り出して使用することができる。
【0008】
また、上記構成において、一対の前記側壁部のうちの他方は、前記使用時における前記トノカバーの前記端部とは反対側の反対端部に対向する反対対向面と、前記非使用時における前記トノカバーの前記反対端部に対向する下側対向面と、を備え、前記下側対向面は、前記反対対向面よりも乗物幅方向内側に位置していてもよい。
【0009】
このような乗物用荷室構造によると、反対対向面側において、ジャッキ等の他部材を収容する収容空間を設けることができるとともに、トノカバーをスムーズに収納すること、取り出すことが可能となる。
【0010】
また、上記構成において、前記底面と前記下側対向面との間の距離は、前記対向面と前記反対対向面との間の距離以上であってもよい。このような乗物用荷室構造によると、トノカバーをよりスムーズに収納すること、取り出すことが可能となる。仮にトノカバーが乗物幅方向に伸縮可能な構成であったとしても、好適である。
【0011】
また、上記構成において、前記凹部は、前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部を備え、前記開口部は、その一部が前記凹部の内側に向かって折れ曲がっていてもよい。このような乗物用荷室構造によると、使用者の手指が開口部の上記一部に触れたときの感触を滑らかにすることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記凹部は、前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部と、当該凹部の内側において前記開口部に向かって伸びる形で立設したリブと、を備えていてもよい。
【0013】
このような乗物用荷室構造によると、トノカバーを開口部の内側から抜き出すときに、トノカバーの端部が開口部に引っ掛かりにくくなる。また、トノカバーの端部が凹部の内側においてガタつくことを抑制することができる。
【0014】
また、上記構成において、前記凹部は、前記トノカバーの前記端部を当該凹部の内側に挿入可能な開口部と、前記底面を有し、前記開口部に取り付けられた凹状のブラケットと、を備えていてもよい。
【0015】
このような乗物用荷室構造によると、開口部付近の剛性を向上することができる。また、トノカバーの収納時ではトノカバーの端部が開口部から挿入されブラケットに受け止められるので、開口部付近においてトノカバーが傷付くことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、トノカバーの収納、取り出しが容易になる乗物用荷室構造を提供することが可能となる。また、意匠性が向上する乗物用荷室構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態においてトノカバーとデッキボードを展開した状態の荷室構造を上方から視た図
【
図2】トノカバーを展開した状態の荷室構造の断面図(
図1の線Cにおける断面を右方から視た図)
【
図3】トノカバーを巻き取った状態の荷室構造の断面図(
図2と同じ位置の断面)
【
図4】トノカバーを収納しデッキボードを折り畳んだ状態の荷室構造を上方から視た図
【
図5】トノカバーを収納しデッキボードを展開した状態の荷室構造の断面図(
図2と同じ位置の断面)
【
図7】右側のサイドトリム等を上前方から視た斜視図
【
図9】左側のサイドトリム等を上前方から視た斜視図
【
図13】トノカバーを収納するときの後方から視た棒部の軌跡等を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本開示の実施形態を
図1から
図13によって説明する。本実施形態では、乗物としての自動車(車両)の後側に設けられる荷室2等が構成する荷室構造(乗物用荷室構造)1について説明する。尚、矢印方向Fを前方、矢印方向Bを後方、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。また、本実施形態における左右方向を、車幅方向(乗物幅方向)と呼ぶ。
【0019】
図1及び
図2に示すように、荷室構造1は、サイドトリム(側壁部)3,4やリアトリム5等によって囲まれた荷室2、及び、サイドトリム3,4によって車幅方向から支持されるトノカバー6やデッキボード7等によって構成される。車幅方向において対になる形で設けられた一対のサイドトリム3,4のうち、左側に配されたものをサイドトリム3(一対の側壁部のうちの一方)とし、右側に配されたものをサイドトリム4(一対の側壁部のうちの他方)とする。一対のサイドトリム3,4の後側には、車幅方向に延びたリアトリム5が取り付けられている。
【0020】
トノカバー6は、車幅方向に延びた棒状の棒部60と、棒部60から後方に引き出し可能な膜状の引出部61と、引出部61の後端部に接続された上面視三日月状の三日月部62と、を備える。棒部60は、引出部61を内部に巻き取り可能とされている。棒部60の車幅方向外側における端部60L,60Rの内部には、バネ等の弾性体(不図示)が設けられている。棒部60は、この端部60L,60Rが車幅方向に変位することで、全体として車幅方向に伸縮することができる。端部60L,60Rが車幅方向内側に変位した場合(即ち、棒部60が車幅方向内側に縮んだ場合)、当該端部60L,60Rは、上述した弾性体によって車幅方向外側に付勢される。これにより、棒部60は、所定位置で突っ張ることができる。
【0021】
トノカバー6は、使用時(以下、使用状態と呼ぶことがある)には、後述する延出部30,40に載置されたデッキボード7の上方に配され(
図1から
図3参照)、非使用時(以下、非使用状態と呼ぶことがある)には、延出部30,40に載置されたデッキボード7の下方に収納される(
図4及び
図5参照)。使用時におけるトノカバー6は、引出部61が引き出されて三日月部62が後述する窪部34,44に引っ掛けられた展開状態(
図1及び
図2参照)と、引出部61が棒部60の内部に巻き取られて三日月部62が棒部60の下方にぶら下がった巻取状態(
図3参照)と、に変更することができる。トノカバー6は、上下側(表裏)を反転させることで、使用状態と非使用状態とを変更することができる。トノカバー6は、使用状態では棒部60が前側に位置する形となり、非使用状態では三日月部62が前側に位置する形となる。
【0022】
図2に示すように、デッキボード7は、第1板部71と、第1板部71の後端部に接続された第2板部72と、第1板部71と第2板部72との間に設けられたヒンジ部73と、を備えており、全体として板状をなしている。デッキボード7は、第2板部72が第1板部71に重なるようにヒンジ部73を軸(折り目)として折り畳むことができる。
図2、
図3、及び
図5では、デッキボード7が水平方向に展開されて折り畳まれていない非折畳状態を示し、
図1及び
図4では、デッキボード7が折り畳まれた折畳状態を示している。非折畳状態における第2板部72の下側には、上方が開口した凹状をなし、図示しない他部材を収納可能な第1収納部8が設けられている。
【0023】
図6及び
図7に示すように、右側のサイドトリム4は、前下側において前後方向に延び車幅方向内側に延出した延出部40と、延出部40の上方において幅方向外側に窪んだ上右側支持部41と、延出部40の後方であって上右側支持部41よりも後下方に位置し、幅方向外側に窪んだ下右側支持部46と、を備える。延出部40は、デッキボード7の右端部を載置してデッキボード7を下方から支持することができる。
【0024】
上右側支持部41及び下右側支持部46は、左方から視た場合に四角形状をなしており、トノカバー6の棒部60の右端部60R(
図1参照)に倣う形で窪んでいる。上右側支持部41及び下右側支持部46は、棒部60の左端部60Lとは反対側の右端部(反対端部)60Rを嵌めることができ、これにより、棒部60を車幅方向外側から支持することができる。上右側支持部41は、トノカバー6の使用時において棒部60の右端部60Rを嵌めた場合に、当該右端部60Rの端面60R1に対向する面である上右側対向面(反対対向面)42を備えており、延出部40に載置されたデッキボード7の第1板部71の上方で棒部60を車幅方向外側から支持することができる。上右側支持部41の後方には、トノカバー6において三日月部62の右側に設けられた突部62R(
図1参照)が引っ掛かり可能な、車幅方向外側に窪んだ窪部44と、窪部44の前側において後方に向かうほど上方に傾いた斜面部43と、が設けられている。
【0025】
サイドトリム4の後側部分であって、窪部44の下方には、着脱可能な板状のパネル9が設けられている。パネル9の下方には、ジャッキ等の工具を収納することができる第2収納部90が設けられている。パネル9は、第2収納部90を覆うカバーとしての機能を有している。延出部40と下右側支持部46との間には、前後方向に延在し車幅方向外側に窪んだ取手部49が設けられている。パネル9は、使用者が取手部49に手指を引っ掛けて持ち上げることで、取り外すことができる。
【0026】
下右側支持部46は、トノカバー6の非使用時において棒部60の右端部60Rを嵌めた場合に、当該右端部60Rの端面60R1に対向する面である下右側対向面(下側対向面)47を備えており、延出部40載置されたデッキボード7の第2板部72の下方で棒部60を車幅方向外側から支持することができる。パネル9の後側の下端部9Aは、下右側支持部46の一部(上側の縁部)を構成している。
図1に示すように、右側のサイドトリム4において、下右側支持部46の下右側対向面47は、上右側支持部41の上右側対向面42よりも左方(車幅方向内側)に位置している。
【0027】
図8及び
図9に示すように、左側のサイドトリム3は、右側のサイドトリム4と同様に、前下側において前後方向に延び車幅方向内側に延出した延出部30と、延出部30の上方において車幅方向外側に窪んだ上左側支持部(支持部)31と、延出部30の後方であって上左側支持部31よりも後下方に位置し、車幅方向外側に凹状に窪んだ凹部36と、を備える。延出部30は、デッキボード7の左端部を載置してデッキボード7を下方から支持することができる。
【0028】
また、サイドトリム3は、車両の左後側のホイールハウス(不図示)に倣う形で車幅方向内側に膨出した膨出部35Aと、膨出部35Aの後方であって凹部36の上側の壁部を構成する上壁部35Bと、を備える。上壁部35Bは、サイドトリム3において上下前後方向に延在した側面35Cから車幅方向内側に延出した形をなしている。
図2に示すように、上壁部35Bの上面は、デッキボード7を展開して非折畳状態にした場合、第2板部72の上面と面一になる。
【0029】
図8及び
図9に示すように、上左側支持部31は、左方から視た場合に四角形状をなしており、トノカバー6の棒部60の左端部60L(
図1参照)に倣う形で窪んでいる。上左側支持部31は、使用時におけるトノカバー6の棒部60の左端部60Lを嵌めることができ、これにより、棒部60を車幅方向外側から支持することができる。上左側支持部31は、使用時におけるトノカバー6の棒部60の左端部60Lを嵌めた場合に、当該左端部60Lの端面60L1に対向する面である上左側対向面(対向面)32を備えており、延出部30に載置されたデッキボード7の第1板部71の上方で棒部60を車幅方向外側から支持することができる。上左側支持部31の後方には、トノカバー6において三日月部62の左側に設けられた突部62L(
図4参照)が引っ掛かり可能な、車幅方向外側に窪んだ窪部34と、窪部34の前側において後方に向かうほど上方に傾いた斜面部33と、が設けられている。
【0030】
凹部36は、車幅方向に開口した開口部38,39と、開口部38,39に対し車幅方向外側(左方側)から取り付けられた凹状のブラケット80(
図11,
図12参照)と、を備える。
図10に示すように、開口部38,39は、右方から視た場合に四角形状の開口をなす後側開口部38と、後側開口部38から前方に延びた長方形状の開口をなす前側開口部39と、に区分され、トノカバー6を車幅方向内側から挿入することができる部分とされる。後側開口部38には、トノカバー6の棒部60の左端部60Lを挿入することができる。後側開口部38の開口は、前側開口部39の開口に比して、上下方向に大きく、前後方向に小さい。後側開口部38は、上前側において下方に立ち下がり前側開口部39に接続した立下部38Aを備える。前側開口部39には、トノカバー6の三日月部62の左側の端部を挿入することができる。前側開口部39は、下後側において、前方に向かうほど上方に傾いたスロープ状のスロープ部39Aを備える。スロープ部39Aの後側には、後側開口部38が接続されている。
図11に示すように、後側開口部38の上側の端部38Bは、凹部36の内側であって左方に折れ曲がっている。
【0031】
図10及び
図11に示すように、ブラケット80は、開口部38,39の左方において下側の壁部を構成し車幅方向に延在した下壁部81と、下壁部81の左端部(車幅方向外側の端部)から上方に立ち上がり、後側開口部38の車幅方向外側に位置した底面82と、前側開口部39の左方において上側の壁部を構成し、左方に向かうほど下方に傾いた傾斜壁部83と、を備える。底面82は、右方から視た場合に四角形状をなしている。傾斜壁部83は、前後方向に凹凸が並んだ蛇腹状をなしている。
【0032】
図12に示すように、上壁部35Bの下面35B1側(凹部36の内側)には、後側開口部38に向かって車幅方向に伸びる形で立設した複数のリブ84,85,86が設けられている。複数のリブ84,85,86のうち、最も後方に設けられたリブを第1リブ84とし、第1リブ84の前方に設けられたリブを第2リブ85とし、第2リブ85の前方に設けられたリブを第3リブ86とする。第1リブ84及び第2リブ85は、上壁部35Bの下面35B1から後側開口部38の端部38Bの車幅方向外側に至るまで立ち下がっている。一方、第3リブ86は、上壁部35Bの下面35B1から後側開口部38の端部38Bの上側に至るまで立ち下がっており、上下方向の長さが、第1リブ84や第2リブ85よりも短い。
【0033】
凹部36は、トノカバー6の棒部60の左端部60Lを、後側開口部38から下壁部81と上壁部35Bとの間に挿入し、三日月部62の左端部を、前側開口部39から下壁部81と傾斜壁部83との間に挿入することで、非使用時のトノカバー6において棒部60の左端部60L及び三日月部62を車幅方向外側から支持してデッキボード7の下方に収納することができる。
図4及び
図5に示すように、底面82は、非使用時におけるトノカバー6の棒部60の左端部60Lに対向する面である。
図1に示すように、底面82は、左側のサイドトリム3において上左側支持部31の上左側対向面32よりも左方(車幅方向外側)に位置している。
【0034】
図1及び
図4では、荷室2の左右方向における中央の位置を、1点鎖線Cで示している。この中央線Cは、例えば、一対のサイドトリム3,4(より具体的には、例えば、一対の延出部30,40)の左右方向における中央の位置、又は、一対の延出部30,40に載置されたデッキボード7の左右方向における中央の位置とすることができる。また、上左側対向面32と上右側対向面42との間の距離をL1とし、その距離L1の中点をP1として示している。さらに、底面82と下右側対向面47との間の距離をL2とし、その距離L2の中点をP2として示している。上左側対向面32及び上右側対向面42は、距離L1の中点P1が中央線C上に位置するように設けられている。従って、使用時におけるトノカバー6の左右方向における中央部分は、荷室2の左右方向における中央の位置に配される。一方、底面82及び下右側対向面47は、距離L2の中点P2が中央線Cよりも左方(車幅方向外側)に位置するように設けられている。従って、収納時におけるトノカバー6の左右方向における中央部分は、荷室2の左右方向における中央の位置よりも左方に配される。また、底面82及び下右側対向面47は、その間の距離L2が、距離L1よりも大きくなるように配されている。
【0035】
使用時のトノカバー6をデッキボード7の下方に収納するためには、トノカバー6を展開状態から巻取状態に変更し(
図1から
図3参照)、デッキボード7を非折畳状態から折畳状態に変更した後(
図4参照)、トノカバー6の棒部60を縮めて上左側支持部31、上右側支持部41から外す。そして、トノカバー6の表裏を反転し、
図13に示すような棒部60の2つの軌跡60P1,60P2をたどるようにトノカバー6をデッキボード7の下方に収納する。具体的には、棒部60の第1軌跡60P1に示すように、棒部60の右端部60Rをパネル9の上方に位置させ、左端部60Lを後側開口部38の右方に位置させ、棒部60を斜めに傾けた状態で、後側開口部38から凹部36の内部に左端部60Lを挿入する。次に、棒部60の第2軌跡60P2に示すように、左端部60Lが底面82に突き当たるまで、棒部60を凹部36の内部に挿入する。そして、右端部60Rを下右側支持部46に嵌めることにより、トノカバー6をデッキボード7の下方となる位置に収納することができる。尚、このような収納状態のトノカバー6は、上記手順を遡ることで、使用状態に変更することができる。
【0036】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、乗物用荷室構造1であって、車幅方向において対になる形で設けられた一対のサイドトリム3,4と、デッキボード7と、使用時にはデッキボード7の上方に配されるとともに、非使用時にはデッキボード7の下方に収納されるトノカバー6と、を備え、一対のサイドトリム3,4のうちの一方である左側のサイドトリム3は、使用時におけるトノカバー6の左端部60Lを支持する上左側支持部31と、非使用時におけるトノカバー6の左端部60Lを支持する凹状の凹部36と、を備え、上左側支持部31は、使用時におけるトノカバー6の左端部60Lに対向する上左側対向面32を備え、凹部36は、非使用時におけるトノカバー6の左端部60Lに対向する底面82を備え、底面82は、上左側対向面32よりも車幅方向外側に位置している乗物用荷室構造1を例示した。
【0037】
このような乗物用荷室構造1によると、使用時のトノカバー6をデッキボード7の下方に収納するときは、トノカバー6を底面82側(車両の左側)に偏らせながら凹部36に差し込んで支持させることができる。これにより、トノカバー6を収納するための開閉可能な部材(例えば、特許文献1に記載されたリッド部)を設けることなく、トノカバー6をスムーズ収納することができるとともに、収納された状態からスムーズに取り出して使用することができる。
【0038】
一対のサイドトリム3,4のうちの他方である右側のサイドトリム4は、使用時におけるトノカバー6の左端部60Lとは反対側の右端部60Rに対向する上右側対向面42と、非使用時におけるトノカバー6の右端部60Rに対向する下右側対向面47と、を備え、下右側対向面47は、上右側対向面42よりも車幅方向内側に位置している。
【0039】
このような乗物用荷室構造1によると、上右側対向面42側において、ジャッキ等の他部材を収容する収容空間を形成する第2収容部90を設けることができとともに、トノカバー6をスムーズに収納すること、取り出すことが可能となる。
【0040】
底面82と下右側対向面47との間の距離L2は、上左側対向面32と上右側対向面42との間の距離L1よりも大きい。このような乗物用荷室構造1によると、トノカバー6をよりスムーズに収納すること、取り出すことが可能となる。本実施形態のように、トノカバー6が車幅方向に伸縮可能な構成であった場合に、より好適である。
【0041】
凹部36は、トノカバー6の左端部60Lを当該凹部36の内側に挿入可能な開口部38を備え、後側開口部38は、その一部である上側部分が凹部36の内側に向かって折れ曲がっている。このような乗物用荷室構造1によると、使用者の手指が後側開口部38の上記一部に触れたときの感触を滑らかにすることができる。
【0042】
凹部36は、トノカバー6の左端部60Lを当該凹部36の内側に挿入可能な後側開口部38と、当該凹部36の内側において後側開口部38に向かって伸びる形で立設したリブ84,85,86と、を備えている。
【0043】
このような乗物用荷室構造1によると、トノカバー6を後側開口部38の内側から抜き出すときに、トノカバー6の左端部60Lが後側開口部38に引っ掛かりにくくなる。また、トノカバー6の左端部60Lが凹部36の内側においてガタつくことを抑制することができる。
【0044】
凹部36は、トノカバー6の左端部60Lを当該凹部36の内側に挿入可能な後側開口部38と、底面82を有し、後側開口部38に取り付けられた凹状のブラケット80と、を備えている。
【0045】
このような乗物用荷室構造1によると、後側開口部38付近の剛性を向上することができる。また、トノカバー6の収納時ではトノカバー6の左端部60Lが後側開口部38から挿入されブラケット80に受け止められるので、後側開口部38付近においてトノカバー6が傷付くことを抑制することができる。
【0046】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
(1)上記実施形態以外にも、トノカバーの構成は適宜変更可能である。上記実施形態では、トノカバーは、引出部を備えることとしたが、これに限られない。例えば、トノカバーは、上面視三日月状等の形状をなす板材であってもよい。また、トノカバーは、車幅方向に伸縮することができない構成であってもよい。
【0048】
(2)上記実施形態で示した乗物用荷室構造は、左右側を入れ替えた構成であってもよい。例えば、右側のサイドトリムが対向面と底面を備え、左側のサイドトリムが反対対向面と下側対向面を備えることとしてもよい。
【0049】
(3)右側のサイドトリムにおいて、下右側対向面(下側対向面)は、左右方向における位置が上右側対向面(反対対向面)と同じ位置であってもよい。
【0050】
(4)各支持部の形状は、上記実施形態で示した形状に限らない。各支持部の形状は、トノカバーの端部を当該支持部に掛けたときに、トノカバーが脱落しないように支持可能な形状であればよい。
【符号の説明】
【0051】
1…荷室構造(乗物用荷室構造)、3,4…一対のサイドトリム(一対の側壁部)、6…トノカバー、7…デッキボード、8…第1収納部、31…上左側支持部(支持部)、32…上左側対向面(対向面)、36…凹部、38,39…開口部、41…上右側支持部、42…上右側対向面(反対対向面)、46…下右側支持部、47…下右側対向面(下側対向面)、60…棒部、60L…左端部、60R…右端部(反対端部)、80…ブラケット、82…底面、84,85…リブ