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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/04 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
B25C1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021068180
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163314
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小宮 行功
(72)【発明者】
【氏名】井上 一也
(72)【発明者】
【氏名】大河内 幸康
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528331(JP,A)
【文献】実開昭55-055374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み工具であって、
シリンダ内を移動するピストンと、
前記ピストンと打ち込み方向に一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバと、を備え、
前記ピストンは前記ドライバよりも軽量な材料を素材とし、前記ドライバは前記ピストンよりも高強度な材料を素材とし、
前記ドライバは、成形型のキャビティに溶融材料を流し込んで行う射出成形であって前記ドライバの射出成形又は前記ピストンの射出成形により前記ピストンに結合される結合部を有し、
前記結合部は、前記ドライバの軸部から前記ピストン内に延在し、かつ前記軸部に隣接する基端部と、前記基端部に隣接し、かつ前記基端部よりも径が小さい小径部と、前記小径部に隣接し、かつ前記基端部よりも径が大きいフランジ状の後端部を有し、
前記基端部は前記小径部側ほど小径となる円錐形を有する打ち込み工具。
【請求項2】
請求項1記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンの素材はアルミニウム又はマグネシウムであり、前記ドライバの素材は鉄である打ち込み工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち込み工具であって、
前記ドライバの前記結合部は、前記ドライバの前記軸部の長手方向に対して直交する断面積を有し、前記結合部の前記後端部の前記断面積は、前記結合部の前記基端部の前記断面積の2倍以上である打ち込み工具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンは、前記ドライバの前記結合部の前記後端部よりも前側に位置し、且つ前記基端部よりも後方に位置する抜け止め部を有し、
前記抜け止め部は、前記ドライバの前記軸部の長手方向の肉厚を有し、前記肉厚は、前記結合部の前記後端部の前記軸部の長手方向の長さに比べて大きい打ち込み工具。
【請求項5】
請求項の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンは、前記ドライバの前記結合部の前記後端部よりも前側に位置する抜け止め部と、前記後端部よりも後側に位置する衝撃受け部を有し、
前記抜け止め部は、前記ドライバの前記軸部の長手方向の第1肉厚を有し、
前記衝撃受け部は、前記ドライバの前記軸部の長手方向の第2肉厚を有し、
前記第1肉厚が前記第2肉厚よりも大きい打ち込み工具。
【請求項6】
請求項1~の何れか1つに記載の打ち込み工具であって、
前記ピストンに、軽量化のための凹部を成形により設けた打ち込み工具。
【請求項7】
打ち込み工具のシリンダ内を移動するピストンに、打ち込み具を打撃するドライバを結合する方法であって、
前記ピストンを成形する成形型のキャビティに前記ドライバの軸部から延在される一端部をセットし、
前記ドライバの前記一端部に、前記ドライバの軸部に隣接する基端部と、前記基端部に隣接し、かつ前記基端部よりも径が小さい小径部と、前記小径部に隣接し、かつ前記基端部よりも径が大きいフランジ状の後端部を有し、前記基端部は前記小径部側ほど小径となる円錐形を有し、
前記キャビティに前記ピストンの素材を流し入れて前記ピストンを成形すると同時に、前記ドライバの前記一端部に前記ピストンを結合させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、釘やステープル等の打ち込み具を木材等に打ち込むための打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば圧縮エアを動力源として打ち込み具を打撃して打ち込む打ち込み工具では、シリンダに内装したピストンと、ピストンに一体化した打撃用のドライバを備えている。一般に、ピストンは軽量化を図ることで打ち込み時に高速化が図られる。これにより大きな打撃力が得られる。ドライバについては繰り返しの打撃動作に対する高い剛性(耐久性)が要求される。特許文献1には、ピストンとドライバを高強度材で一体的に構成する技術が開示されている。ピストンに対してドライバをねじ結合する構成に比してピストンの薄肉化による軽量化を図ることができる。特許文献2には、ドライバを中空状として軽量化を図りつつ剛性を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4211011号公報
【文献】特許第5320583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、ピストン部の強度をドライバに合わせる必要があるため、ピストン部の軽量化が困難になる。特許文献2に開示された技術によれば、ドライバが中空状の特殊部品となって高コスト化を招く。また、ピストンに対してドライバが溶接により結合されることで、変形や芯ずれが生じ易い問題があった。本開示は、これらの問題を解消しつつ、ピストンの軽量化とドライバの高剛性化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面によれば、打ち込み工具は、例えばシリンダ内を移動するピストンと、ピストンと打ち込み方向に一体で移動して打ち込み具を打撃するドライバを備える。ピストンはドライバよりも軽量な材料を素材とし、ドライバはピストンよりも高強度な材料を素材としてもよい。ドライバは、ドライバの成形又はピストンの成形によりピストンに結合される結合部を有する構成とすることができる。
【0006】
従って、それぞれ異なる適切な材料を素材とすることでピストンの軽量化とドライバの高剛性化が図られる。ピストンとドライバの一方又は双方が成形型により成形されてピストンがドライバの結合部に結合される。これにより従来のピストンに対するドライバの芯ずれ等の問題を生じない。
【0007】
ピストンとドライバの一方又は双方は、鋳型(成形型)を用いた鋳造(ダイカスト)により成形される。成形による結合は、例えばインサート成形、二色成形あるいは二重成形の手法によりなされる。ピストンとドライバの素材は、それぞれ金属材料若しくは樹脂材料を適用できる。インサート成形では、ピストンとドライバの一方を成形型にインサートし、他方の溶融材料を流し込んでピストンとドライバが結合される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】打ち込み工具の全体側面図である。本図では工具本体部が縦断面で示されている。
図2】ピストン及びドライバの側面図である。
図3】ピストン及びドライバの縦断面図である。
図4図3のIV部拡大図である。
図5】ドライバの斜視図である。本図は、ピストンが結合される前の状態を示している。
図6】成形工程の概略図である。
図7】別態様のピストンの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ピストンの素材はアルミニウム又はマグネシウムであってもよい。ドライバの素材は鉄であってもよい。これにより、ピストンの軽量化を図りつつ、ドライバの高剛性化を図ることができる。
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ドライバの結合部は、例えばドライバの軸部からピストン内に延在し、且つ軸部に隣接する基端部と、基端部よりも径が大きい後端部を有する。これにより、打ち込み時の衝撃によるドライバのピストンからの抜け防止がなされる。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ドライバの結合部は、例えばドライバの軸部の長手方向に対して直交する断面積を有する。結合部の後端部の断面積は、結合部の基端部の断面積の2倍以上とすることができる。これにより、ドライバのピストンからの抜け防止がより確実になされる。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ドライバの結合部の後端部は、例えばフランジ状である。これにより、ドライバのピストンからの抜け防止がより確実になされる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ドライバの結合部は、例えば後端部と基端部との間に、基端部よりも径が小さい小径部を有する。これにより、ドライバの軽量化が図られる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ピストンは、例えばドライバの結合部の後端部よりも前側に位置し、且つ基端部よりも後方に位置する抜け止め部を有する。抜け止め部は、例えばドライバの軸部の長手方向の肉厚を有する。肉厚は、例えば結合部の後端部の軸部の長手方向の長さに比べて大きい。従って、打ち込み時の衝撃に対するピストンの耐久性が確保されることにより、ピストンからのドライバの抜け止めがより確実になされる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、ピストンは、例えばドライバの結合部の後端部よりも前側に位置する抜け止め部と、後端部よりも後側に位置する衝撃受け部を有する。抜け止め部は、例えばドライバの軸部の長手方向の第1肉厚を有する。衝撃受け部は、例えばドライバの軸部の長手方向の第2肉厚を有する。例えば第1肉厚が第2肉厚よりも大きい。これにより、ドライバの抜け止めがより確実になされる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンに、軽量化のための凹部が成形により設けられる。これによりピストンの軽量化を一層図ることができる。軽量化用の凹部は、ピストンの例えば受圧面(後面)、受圧面とは反対面(前面)、あるいは側面(周面)に設けることができる。打ち込み時に圧縮エアのエア圧を受ける受圧面であって、ダンパ等の他部材が当接若しくは干渉されない部位である後面に凹部を設けることがより好ましい。ダンパの当接部位を避ける等することで、ピストンの前面に凹部を設けてもよい。また、ピストンの成形時に凹部が成形されることで、凹部の形状及び配置の自由度が高まるとともに、機械加工等の後加工を必要としない。なお、軽量化用の凹部は、成形によらず機械加工等の後加工により設けてもよい。
【0017】
本開示の他の局面によれば、例えば打ち込み工具のシリンダ内を移動するピストンに、打ち込み具を打撃するドライバを結合する方法である。例えばピストンを成形する成形型のキャビティにドライバの一端部をセットする。その後、例えばキャビティにピストンの素材を流し入れてピストンを成形する。これと同時に、ドライバの一端部にピストンを結合させる。
【0018】
従って、従来のねじ止めや溶接等の結合手段を用いることなく、インサート成形によりピストンがドライバに一体化される。これにより、例えば鉄を素材とするドライバの一端部に、アルミニウムやマグネシウムを素材とするピストンを成形することで、ピストンの軽量化とドライバの高剛性化が両立される。
【実施例
【0019】
図1は打ち込み工具1の一例として、圧縮エアを動力源とする釘打機を示している。打ち込み工具1は、工具本体部2と、使用者が把持するハンドル部3と、多数の打ち込み具を装填可能なマガジン4を備えている。工具本体部2の下部には打ち込みノーズ部5が設けられている。マガジン4から打ち込みノーズ部5の打ち込み通路5a内に打ち込み具nが1本ずつ供給される。
【0020】
打ち込みノーズ部5にはコンタクトレバー5bが設けられている。コンタクトレバー5bを被打ち込み材Wに押し付けて相対的に上動させるオン操作が打ち込み動作の条件となる。ハンドル部3の内部に圧縮エアが供給される。ハンドル部3の基部側下面にトリガ形式のスイッチレバー6が設けられている。コンタクトレバー5bのオン操作とスイッチレバー6の引き操作がなされると、工具本体部2に圧縮エアが供給されて打ち込み動作がなされる。
【0021】
工具本体部2は、概ね円筒形の本体ハウジング10を有する。本体ハウジング10の側部からハンドル部3が側方へ突き出す状態に設けられている。本体ハウジング10に円筒形のシリンダ11が内装されている。シリンダ11にピストン12が上下に往復動可能に内装されている。ピストン12の下面中心に、打ち込み具nを打撃するためのドライバ13が結合されている。
【0022】
ドライバ13は長尺棒形の部材で、その下部側は打ち込みノーズ部5の打ち込み通路5a内に進入している。シリンダ11の上室に供給される圧縮エアの推力によりピストン12が下動する。ピストン12と一体でドライバ13が打ち込み通路5a内を下動することで打ち込み具nがドライバ13で打撃される。ドライバ13で打撃された打ち込み具nが射出口5cから射出されて被打ち込み材Wに打ち込まれる。シリンダ11の下部には、ダンパ14が設けられている。ダンパ14に当接することでピストン12の下動端位置での衝撃が吸収される。
【0023】
圧縮エアの推力により高い打撃力を得るためピストン12の下動速度の高速化が図られている。高速化のためピストン12の軽量化が図られている。ドライバ13は繰り返しの打撃動作に対する高い剛性が要求される。本実施例は、軽量化されたピストン12と高剛性のドライバ13との結合構造に特徴を有する。図2~4は相互に一体化されたピストン12とドライバ13を示している。ピストン12とドライバ13はいわゆるインサート成形により一体化されている。
【0024】
本実施例では、図6に示すようにピストン12を成形する成形型20の下型21のキャビティ21aにドライバ13の結合部13b(一端部)がセットされる。ドライバ13は、鉄を素材として予め製作されたものが用いられる。上型22を型閉じして、射出成形機23からキャビティ21aにピストンの素材を流し入れてピストン12が成形される。ピストン12の素材には、アルミニウム若しくはマグネシウムが用いられる。これによりピストン12の軽量化が図られる。キャビティ21a内でピストン12が成形されることで、鉄製のドライバ13の結合部13bに、アルミニウム製若しくはマグネシウム製のピストン12が結合される。
【0025】
図5には、ピストン結合前の部品としてのドライバ13が単独で示されている。ドライバ13は、長尺棒形の軸部13aと結合部13bを有する。ピストン12とドライバ13の説明では、打ち込み方向(下側)を前側とし、反打ち込み方向(上側)を後側とする。軸部13aの後部に隣接して結合部13bが一体に設けられている。結合部13bは、軸部13aに隣接する基端部13cと、基端部13cよりも径が小さい小径部13dと、径方向にフランジ状に張り出す後端部13eを有する。
【0026】
図4に示すようにドライバ13の軸部13aは、径d1の円柱体形を有する。基端部13cは、後部側ほど小径となる円錐形(テーパ形)を有する。軸部13aに隣接する基端部13cの前端は径d1で、後端は径d2を有する。基端部13cの後端に小径部13dが隣接する。小径部13dは径d2の円柱体形を有する。
【0027】
小径部13dの後端に後端部13eが隣接して設けられている。後端部13eは、径方向に張り出すフランジ形(円板形)を有する。後端部13eは径d3と、ドライバ13の軸部13aの長手方向の長さ(板厚)t3を有する。後端部13eの径d3は、小径部13dの径d2よりも大きい(d2<d3)。後端部13eの径d3は、軸部13aの径d1よりも大きい(d1<d3)。後端部13eの径d3(張り出し量)は、後端部13eの横断面積が軸部13aの横断面積(基端部13cの最大横断面積)の2倍より大きくなるように設定されている。
【0028】
ドライバ13の結合部13bの周囲に円板形のピストン12が成形される。ピストン12の周面には、オーリングを装着するための半円弧形の溝部12aが周面全周に連続して成形される。ピストン12の前面(図において下面)には、半円弧形に湾曲する周面を有する円環部12bが成形される。円環部12bは、ドライバ13の主として基端部13cの周囲に成形される。
【0029】
ピストン12は、ドライバ13の軸部13aの長手方向(前後方向)であって、ピストン12の肉厚方向について、ドライバ13の結合部13bの後端部13eよりも前側の領域である抜け止め部12cを有する。ピストン12は、同じく肉厚方向についてドライバ13の結合部13bの後端部13eよりも後側の領域である衝撃受け部12dを有する。抜け止め部12cは、ドライバ13の軸部13aの長手方向の第1肉厚t1を有する。衝撃受け部12dは、ドライバ13の軸部13aの長手方向の第2肉厚t2を有する。
【0030】
本実施例では、前側の抜け止め部12cの第1肉厚t1が、ドライバ13の後端部13eの板厚t3よりも大きくなっている(t1>t3)。また、抜け止め部12cの第1肉厚t1は、衝撃受け部12dの第2肉厚t2よりも大きくなっている(t1>t2)。
【0031】
以上の実施例によれば、ピストン12はドライバ13よりも軽量な材料であるアルミニウム若しくはマグネシウムを素材としている。これによりピストン12の軽量化が図られる。ドライバ13は、ピストン12よりも高強度な材料である鉄製である。これによりドライバ13の高剛性化が図られる。それぞれ異なる適切な材料を素材とすることでピストン12の軽量化とドライバ13の高剛性化を両立される。
【0032】
ピストン12は、成形型20を用いたインサート成形によりドライバ13の結合部13bに一体に結合される。これにより、従来のねじ止めの場合にような結合状態の緩みが回避され、溶接により結合した場合のようなピストンに対するドライバの芯ずれ等の問題を生じない。
【0033】
ドライバ13の結合部13bは、ドライバ13の軸部13aからピストン12内に延在し、且つ軸部13aに隣接する基端部13cと、基端部13cよりも径が大きい後端部13eを有する。これにより、打ち込み時の衝撃によるドライバ13のピストン12からの抜け防止がなされる。
【0034】
ドライバ13の結合部13bは、ドライバ13の軸部13aの長手方向に対して直交する断面積を有する。結合部13bの後端部13eの断面積は、結合部13bの基端部13cの最大断面積の2倍よりも大きくなるようその張り出し量(径d3)が設定されている。これにより、ドライバ13のピストン12からの抜け防止がより確実になされる。
【0035】
ドライバ13の結合部13bは、後端部13eと基端部13cとの間に、小径部13dを有する。小径部13dの径d2は、テーパ形の基端部13cの最小径に等しい。これにより、ドライバ13の軽量化が図られる。ドライバ13の軽量化によりピストン12の下動速度が高速化される。小径部13dにピストン12の肉部が食い込むことでピストン12に対するドライバ13の緩み若しくは抜け防止がより確実になされる。
【0036】
ピストン12は、抜け止め部12cを有する。抜け止め部12cの第1肉厚t1は、ドライバ13の後端部13eの板厚t3よりも大きくなっている。これにより、打ち込み時の衝撃(下動端位置におけるダンパ14への衝突)に対するピストン12の耐久性が確保される。抜け止め部12cの第1肉厚t1が十分に確保されることで、ピストン12からのドライバ13の抜け止めがより確実になされる。
【0037】
ピストン12は、ドライバ13の後端部13eよりも後側に衝撃受け部12dを有する。抜け止め部12cの第1肉厚t1は、衝撃受け部12dの第2肉厚t2よりも大きくなっている。衝撃受け部12dには、ドライバ13の後端部13eから打撃時の衝撃を受ける。係る衝撃に対する耐久性を確保するに必要十分な第2肉厚t2とすることで、ピストン12の耐久性及び軽量化が図られる。
【0038】
例示した実施例には種々の変更を加えることができる。例えば、インサート成形によりドライバ13の結合部13bにピストン12を結合する構成を例示したが、いわゆる二色成形あるいは二重成形の手法によっても一体化させることができる。
【0039】
ピストンとドライバの素材は、それぞれ樹脂材料若しくは金属材料を適用できる。ドライバよりも軽量な金属材料若しくは樹脂材料を素材としてピストンが成形若しくは機械加工される。ピストンよりも高剛性な金属材料を素材としてドライバが成形若しくは機械加工される。ピストンとドライバの少なくとも一方が他方の結合部に成形されることで両者が相互に結合される。インサート成形では、ピストンとドライバの一方を成形型にインサートし、他方の溶融材料を流し込んでピストンとドライバが結合される。
【0040】
ドライバ13の結合部13bに1つのフランジ部を設けて後端部13eとする構成を例示したが、ドライバ13の長手方向(前後方向)に複数のフランジ部を並列に配置して後端部としてもよい。
【0041】
後端部13eの径d3は、小径部13dの径d2より大きければ足り、軸部13aの径d1に対しても大きければより好ましい。
【0042】
小径部13dは省略して、軸部13aと同径の円柱体形の基端部の後端に後端部を設ける構成としてもよい。
【0043】
図7には別態様のピストン15が示されている。ピストン15の周面にはピストン12と同様オーリング装着用の溝部15aが設けられている。ピストン15の後面(受圧面)には、6つの凹部15bが設けられている。凹部15bは後面から適切な深さで設けられている。6つの凹部15bは、同一円周上で周方向に等間隔に配置されている。各凹部15bは、図示するように概ね扇形に設けられている。6つの凹部15bによって肉部が欠落(いわゆる肉盗み)されることで上記例示したピストン12よりもさらに軽量化が図られている。
【0044】
軽量化のための凹部の形状、配置部位等については任意に設定できる。凹部15bは後面視で扇形とする場合の他、円形であってもよい。また、全周にわたる1つの円環形の溝部を凹部としてもよい。軽量化用の凹部の形状および配置の自由度は、成形により形成されることで例えば円形の凹部が選択されやすい機械加工に比してより高い。成形により形成される凹部15bは扇形等のより複雑な形状を容易に設定できる。高い自由度で凹部を配置することでピストン15の軽量化を一層効率よく図ることができる。
【0045】
軽量化のための凹部15bがピストン15の後面に設けられている。ピストン15の後面は圧縮エアの圧力を受ける受圧面であるが、前面側のようにダンパ14のような他部材が当接若しくは干渉されない。このため、例示するように凹部15bは、ピストン15の前面ではなく後面に設けられることがより望ましい。なお、前面であってもダンパ14の当接部位を避ける等して軽量化用の凹部を設けてもよい。軽量化のための凹部は、成形若しくは機械加工により設けることができる。凹部15bがピストン15の成形段階で形成されることにより、機械加工により形成する場合のような後加工を必要としない。なお、機械加工等の後加工によりピストンに軽量化のための凹部を設けてもよい。
【0046】
実施例のシリンダ11が本開示の1つの局面におけるシリンダの一例である。実施例のピストン12が本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。実施例のドライバ13が本開示の1つの局面におけるドライバの一例である。実施例の結合部13bが本開示の1つの局面における結合部の一例である。
【0047】
実施例の成形型20が本開示の1つの局面における成形型の一例である。実施例のキャビティ21aが本開示の1つの局面におけるキャビティの一例である。
【符号の説明】
【0048】
1…打ち込み工具
n…打ち込み具
2…工具本体部
3…ハンドル部
4…マガジン
5…打ち込みノーズ部
5a…打ち込み通路、5b…コンタクトレバー、5c…射出口
6…スイッチレバー
10…本体ハウジング
11…シリンダ
12…ピストン
12a…溝部、12b…円環部
12c…抜け止め部(第1肉厚t1)、12d…衝撃受け部(第2肉厚t2)
13…ドライバ
13a…軸部、13b…結合部、13c…基端部、13d…小径部、13e…後端部
14…ダンパ
15…ピストン
15a…溝部、15b…凹部
20…成形型
21…下型、21a…キャビティ
22…上型
23…射出成形機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7