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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20241021BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20241021BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20241021BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20241021BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F3/14
F24F6/00 E
F24F11/72
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021101851
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000818
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】紺野 康彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 法孝
(72)【発明者】
【氏名】菰田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】太田 恭平
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-101732(JP,A)
【文献】特開2008-089290(JP,A)
【文献】特開2014-122740(JP,A)
【文献】特開2020-165632(JP,A)
【文献】実開平02-131135(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00-3/167
F24F 6/00
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象室の前室と、前記空調対象室と前記前室との間に設けられ、前記前室の空気を浄化して前記空調対象室に給気する第1の浄化給気手段と、第1のエアコンディショナーと、湿度調整装置と、を有し、前記第1のエアコンディショナーは、第1の室内機と第1の室外機とを有し、
前記第1の室内機と前記湿度調整装置は前記前室に収容され、前記第1の室外機は前記前室及び前記空調対象室の外部に設置され
前記湿度調整装置は、第2のエアコンディショナーと加湿器とを有し、
前記第2のエアコンディショナーは、第2の室内機と第2の室外機とを有し、
前記第2の室内機と前記第2の室外機と前記加湿器は前記前室に収容され、
第1の冷房運転時に、
前記第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気の比エンタルピーの増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記第2のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記加湿器は停止する、
空調システム。
【請求項2】
第2の冷房運転時に、
前記第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記第2のエアコンディショナーは所定の設定温度で常時運転され、
前記加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
暖房運転時に、
前記第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記第2のエアコンディショナーは停止し、
前記加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される、
請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
空調対象室の前室と、前記空調対象室と前記前室との間に設けられ、前記前室の空気を浄化して前記空調対象室に給気する第1の浄化給気手段と、第1のエアコンディショナーと、湿度調整装置と、を有し、前記第1のエアコンディショナーは、第1の室内機と第1の室外機とを有し、
前記第1の室内機と前記湿度調整装置は前記前室に収容され、前記第1の室外機は前記前室及び前記空調対象室の外部に設置され、
前記湿度調整装置は、第2のエアコンディショナーと加湿器とを有し、
前記第2のエアコンディショナーは、第2の室内機と第2の室外機とを有し、
前記第2の室内機と前記第2の室外機と前記加湿器は前記前室に収容され、
第2の冷房運転時に、
前記第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記第2のエアコンディショナーは所定の設定温度で常時運転され、
前記加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される、
調システム。
【請求項5】
空調対象室の前室と、前記空調対象室と前記前室との間に設けられ、前記前室の空気を浄化して前記空調対象室に給気する第1の浄化給気手段と、第1のエアコンディショナーと、湿度調整装置と、を有し、前記第1のエアコンディショナーは、第1の室内機と第1の室外機とを有し、
前記第1の室内機と前記湿度調整装置は前記前室に収容され、前記第1の室外機は前記前室及び前記空調対象室の外部に設置され、
前記湿度調整装置は、第2のエアコンディショナーと加湿器とを有し、
前記第2のエアコンディショナーは、第2の室内機と第2の室外機とを有し、
前記第2の室内機と前記第2の室外機と前記加湿器は前記前室に収容され、
暖房運転時に、
前記第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転され、
前記第2のエアコンディショナーは停止し、
前記加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される、
調システム。
【請求項6】
前記前室と、前記第1の浄化給気手段と、前記第1のエアコンディショナーと、前記湿度調整装置は前室空調モジュールとしてモジュール化されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
2つの前記前室空調モジュールが前記空調対象室の両側に配置されている、請求項に記載の空調システム。
【請求項8】
前記空調対象室から排出される空気の一部を外部に排気するとともに、前記空気の残りを前記前室に戻す排気循環手段を有し、前記排気循環手段は排気循環モジュールとしてモジュール化されている、請求項またはに記載の空調システム。
【請求項9】
2つの前記排気循環モジュールが前記空調対象室の両側に配置されている、請求項に記載の空調システム。
【請求項10】
前記前室から空気の一部が流入する空気供給室と、前記空調対象室と前記空気供給室との間に設けられ、前記空気を浄化して前記空調対象室に給気する第2の浄化給気手段と、を有し、前記空気供給室と前記第2の浄化給気手段は浄化給気モジュールとしてモジュール化されている、請求項またはに記載の空調システム。
【請求項11】
前記前室空調モジュールと前記排気循環モジュールと前記浄化給気モジュールは、前記空調対象室の天井、床下、または側方に取り付けられる、請求項10に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調システムに関し、特にモジュール化された空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製薬工場や半導体製造工場には、空気の温度、湿度、清浄度が厳密に管理されたクリーンルームが設置されている。特許文献1,2には、このような用途に使用されるモジュールが開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、空調システムはクリーンルームの組み立て後に施工される。特許文献2に開示された技術によれば、空調システムは床下モジュールとして構成され、メインモジュールと一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-56227号公報
【文献】国際公開第2019/142548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された空調システムはダクト上に空調機や送風機が直列に配置された構成であるため、空調システムの施工後にエアバランス調整などの多くの現場作業が発生する。本発明は、現場作業を削減することが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の空調システムは、空調対象室の前室と、空調対象室と前室との間に設けられ、前室の空気を浄化して空調対象室に給気する第1の浄化給気手段と、第1のエアコンディショナーと、湿度調整装置と、を有している。第1のエアコンディショナーは、第1の室内機と第1の室外機とを有している。第1の室内機と湿度調整装置は前室に収容され、第1の室外機は前室及び空調対象室の外部に設置されている。湿度調整装置は、第2のエアコンディショナーと加湿器とを有し、第2のエアコンディショナーは、第2の室内機と第2の室外機とを有し、第2の室内機と第2の室外機と加湿器は前室に収容されている。
一態様では、第1の冷房運転時に、第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気の比エンタルピーの増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、第2のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、加湿器は停止する。
他の態様では、第2の冷房運転時に、第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の増加の比がほぼ正の一定値となるように運転され、第2のエアコンディショナーは所定の設定温度で常時運転され、加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される。
さらに他の態様では、暖房運転時に、第1のエアコンディショナーは所定の設定温度で、外気温度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転され、第2のエアコンディショナーは停止し、加湿器は外気の絶対湿度の増加に対する稼働率の減少の比がほぼ正の一定値となるように運転される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、現場作業を削減することが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
図2】第1の冷房運転時の各装置の稼働率を示すグラフである。
図3】第2の冷房運転時の各装置の稼働率を示すグラフである。
図4】暖房運転時の各装置の稼働率を示すグラフである。
図5】空調システムのモジュール化概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の空調システムは適用対象が限定されるものではないが、空気の温度、湿度、清浄度が厳密に管理される部屋、例えば製薬工場や半導体製造工場などのクリーンルームに好適に適用することができる。
【0009】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る空調システム1の概略構成図(側面図)を示している。クリーンルームなどの空調対象室2は、空気の清浄度(微粒子の粒径や数)が厳密に管理されるだけでなく、温度、湿度が所定の範囲に保持されることが要求される。黒矢印は温度、湿度、清浄度の少なくともいずれかが要求範囲を満たしていない可能性のある空気の流れを示し、白矢印は温度、湿度、清浄度のすべてが要求範囲を満たしている空気の流れを示す。空調システム1は、空調対象室2の前室3を有している。また空調システム1は、第1のエアコンディショナーAC1と、第2のエアコンディショナーAC2と、加湿器8と、第1の浄化給気手段9と、を有している。第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2は市販のパッケージエアコンを用いることができ、空調対象室2の空間容積、換気回数などに応じて、容量や台数を適宜選定することができる。ここでは、説明の便宜上、第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2はそれぞれ1台だけ設けられているとする。
【0010】
第1のエアコンディショナーAC1は、第1の室内機4と第1の室外機5とを有している。第1の室内機4は前室3に収容され、第1の室外機5は前室3及び空調対象室2の外部に設置されている。第1のエアコンディショナーAC1は後述する運転モードに応じて冷房運転または暖房運転を行う。冷房運転では水蒸気が露点を下回る際に凝結するため、除湿も同時に行われる。暖房運転では水蒸気の発生も凝結も生じないため、絶対湿度は一定であり、温度だけが変化する。
【0011】
第2のエアコンディショナーAC2は、第2の室内機6と第2の室外機7とを有している。第2の室内機6と第2の室外機7は前室3に収容されている。このため、第2のエアコンディショナーAC2を冷房機として作動させても冷房機能は実行されないが、除湿は行われる。従って、第2のエアコンディショナーAC2は実質的に除湿機として作動する。第2のエアコンディショナーAC2はパッケージエアコンであるため、多くの選択肢から適切な性能のものを入手しやすいが、除湿機として作動する他の装置で第2のエアコンディショナーAC2を代替することも可能である。第2のエアコンディショナーAC2はコンプレッサの仕事に相当する熱量を発生するため、厳密には加温除湿機として作動することになるが、空調対象室2の換気回数が非常に多いため、第2のエアコンディショナーAC2から発生する熱量は第1のエアコンディショナーAC1の大きな負荷とはならない。加湿器8は前室3に収容されている。加湿器8は温度調整機能を持たず、室温の空気を吸い込み、加湿した空気を室温で吐き出す。第2のエアコンディショナーAC2と加湿器8は全体として、湿度調整装置10として作動し、湿度調整装置10は前室3に収容されている。
【0012】
第1の浄化給気手段9は前室3の空気を浄化して空調対象室2に給気する。第1の浄化給気手段9は空調対象室2と前室3との間に設けられている。第1の浄化給気手段9はファン9Aとフィルタ9Bを一体化したもの(ファン・フィルタユニット)である。ファン9Aは温度と湿度が調整された前室3の空気を、フィルタ9Bを通して空調対象室2に給気する。フィルタ9Bはファン9Aから送風された空気を浄化する。フィルタ9Bは空調対象室2で必要とされる空気清浄度に応じて選定され、例えばHEPAフィルタが用いられる。必要に応じて複数のフィルタ9Bを直列配置することもできる。
【0013】
空調システム1は、空調対象室2から排出される空気の一部を外部に排気するとともに、空気の残りを前室3に戻す排気循環手段22を有している。排気循環手段22は、空調対象室2に接続された排気チャンバ15と、排気チャンバ15に収容された排気ファン17と、排気ファン17の上流に設けられたフィルタ16と、を有している。フィルタ16は排気ファン17の汚染を防止する。また、排気循環手段22は、排気ファン17に接続された排気ダクト18と再循環ダクト20とを有している。排気ダクト18と再循環ダクト20にはそれぞれ流量調整用のダンパ19,21が配置されている。排気ファン17からの排気の一部は排気ダクト18を通って外部に排気され、残りの空気は再循環ダクト20を通って前室3に戻される。なお、空調対象室2がクリーンルームである場合、空調対象室2は一般に陽圧とされるため、空調対象室2の壁や天井から空気が漏れる可能性がある。しかし、空調対象室2の気密性を確保することで、このような漏洩空気を制限することができる。
【0014】
空調システム1は、空調対象室2に供給される空気を外部から取り込むための給気ユニット14を有している。給気ユニット14は、前室3に接続された給気チャンバ11と、給気チャンバ11に収容された給気ファン13と、給気ファン13の上流に設けられたフィルタ12と、を有している。フィルタ12は給気ファン13の汚染を防止する。
【0015】
図1(b)には空調システム1の運転方法を示している。空調システム1の運転モードは、第1の冷房運転と第2の冷房運転と暖房運転の3つの運転モードから選択される。第1の冷房運転は外気が高温高湿度時の運転モードで、空気の冷却と除湿が行われる。暖房運転は外気が低温低湿度時の運転モードで空気の加温と加湿が行われる。第2の冷房運転は、第1の冷房運転と暖房運転の中間の運転モードで、空気の冷却が行われるとともに湿度の調整(加湿または除湿)が行われる。3つの運転モードの切り替えタイミングは目標温度と目標湿度に依存する。以下、目標温度を25℃、目標湿度を50%として、これらの運転モードについて説明する。なお、特記ない場合、湿度は相対湿度を意味する。
【0016】
第1の冷房運転時には、第1のエアコンディショナーAC1は所定の設定温度(ここでは25℃)に設定される。加湿は不要であるため、加湿器8は停止する。図2は第1の冷房運転時における第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2の稼働率を示す。具体的には、温度と湿度を様々に変化させ、目標温度と目標湿度を実現するための第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2の稼働率を求めた。稼働率1は常時作動(フル稼働)を、稼働率1未満は間欠運転を示す。稼働率1超は設定した冷房能力を上回る冷房能力が必要なことを示す。稼働率1超は冷房能力の増加で対応できるため、第1の冷房運転が不可能であることを意味するわけではない。図2(a)は横軸に外気温度を、図2(b)は横軸に外気絶対湿度を、図2(c)は横軸に外気の比エンタルピーをとったときの第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2の稼働率を示している。図2(a)を参照すると、ある外気温度に対して複数の稼働率がプロットされているが、これは外気温度が一定でも湿度に応じて稼働率が変動することを示している。すなわち、外気温度は第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2の制御パラメータとしては適していないことを意味している。
【0017】
これに対し、図2(b)を参照すると、外気絶対湿度と第1のエアコンディショナーAC1及び第2のエアコンディショナーAC2の稼働率との間には正の良好な相関関係がみられ、外気温度や湿度の影響は小さい。また、図2(c)を参照すると、外気の比エンタルピーと第1のエアコンディショナーAC1の稼働率との間には正の良好な相関関係がみられ、外気温度や湿度の影響は小さい。特に、外気の比エンタルピーと第1のエアコンディショナーAC1の稼働率との間の相関度は極めて高い。以上より、第1のエアコンディショナーAC1は外気の比エンタルピーに基づき制御することが好ましく、第2のエアコンディショナーAC2は外気絶対湿度に基づき制御することが好ましい。具体的には、第1のエアコンディショナーAC1は外気の比エンタルピーの増加Δhに対する稼働率の増加Δwの比Δw/Δhがほぼ正の一定値となるように運転する。第2のエアコンディショナーAC2は所定の設定温度(ここでは25℃)で、外気の絶対湿度の増加Δmに対する稼働率の増加Δwの比Δw/Δmがほぼ正の一定値となるように運転する。
【0018】
第2の冷房運転時には、第1のエアコンディショナーAC1と第2のエアコンディショナーAC2と加湿器8はすべて作動する。図3は第2の冷房運転時のこれらの装置の稼働率を示す、図2と同様の図である。第2のエアコンディショナーAC2の稼働率は外気条件によらず約1となっている。図3(a)を参照すると、外気温度と第1のエアコンディショナーAC1との稼働率との間には、正の良好な相関関係がみられる。図3(c)を参照すると、外気絶対湿度と加湿器8の稼働率との間には、負の良好な相関関係がみられる。これに対し図3(b)を参照すると、外気の比エンタルピーが一定でも湿度に応じて稼働率が変動することを示している。すなわち、外気の比エンタルピーは第1のエアコンディショナーAC1と加湿器8の制御パラメータとしては適していないことを意味している。以上より、第1のエアコンディショナーAC1は外気温度に基づき制御することが好ましく、加湿器8は外気絶対湿度に基づき制御することが好ましい。具体的には、第1のエアコンディショナーAC1は所定の設定温度(ここでは25℃)で、外気温度の増加ΔTに対する稼働率Δwの増加の比Δw/ΔTがほぼ正の一定値となるように運転する。加湿器8は外気の絶対湿度の増加Δmに対する稼働率の減少Δwの比Δw/Δmがほぼ正の一定値となるように運転する。また、第2のエアコンディショナーAC2は所定の設定温度で常時運転すればよく、制御としては極めて単純である。
【0019】
暖房運転時には、第1のエアコンディショナーAC1は所定の設定温度(ここでは25℃)に設定される。除湿は不要であるため、第2のエアコンディショナーAC2は停止する。図4は暖房運転時のこれらの稼働率を示す、図2と同様の図である。図4(a)を参照すると、外気温度と第1のエアコンディショナーAC1との稼働率との間には、負の良好な相関関係がみられる。図4(b)を参照すると、外気絶対湿度と加湿器8の稼働率との間には、負の良好な相関関係がみられる。これに対し図4(c)を参照すると、外気の比エンタルピーが一定でも湿度に応じて稼働率が変動することを示している。すなわち、外気の比エンタルピーは第1のエアコンディショナーAC1と加湿器8の制御パラメータとしては適していないことを意味している。以上より、第1のエアコンディショナーAC1は外気温度に基づき制御することが好ましく、加湿器8は外気絶対湿度に基づき制御することが好ましい。具体的には、第1のエアコンディショナーAC1は所定の設定温度(ここでは25℃)で、外気温度の増加ΔTに対する稼働率の減少Δwの比Δw/ΔTがほぼ正の一定値となるように運転する。第2のエアコンディショナーAC2は停止する。加湿器8は外気の絶対湿度の増加Δmに対する稼働率の減少Δwの比Δw/Δmがほぼ正の一定値となるように運転される。
【0020】
このように、第1のエアコンディショナーAC1は前室3の温度管理を担い、第2のエアコンディショナーAC2及び/または加湿器8は前室3の湿度管理を担う。第1の冷房運転時には温度とともに湿度も変化するが、加湿器8を外気絶対湿度に基づき制御することで、前室3の湿度を目標湿度に維持することができる。同様に第2の冷房運転時には温度とともに湿度も変化し、さらに湿度制御のために除湿と加湿が必要となる。このため、第2のエアコンディショナーAC2を常時運転させることで湿度の上昇を防ぎ、湿度が減少した場合は加湿器8を外気絶対湿度に基づき制御することで、前室3の湿度を目標湿度に維持することができる。このように、本実施形態では空調対象室2に求められる温度と湿度が前室3で予め調整される。前室3の空気は第1の浄化給気手段9で空調対象室2に吐き出されるだけなので、面倒なエアバランス調整が不要である。第1のエアコンディショナーAC1、第2のエアコンディショナーAC2及び加湿器8の調整や作動確認は予め工場等で実施できるため、現場作業量を大きく低減することが可能となる。また、前室3で温度と湿度が調整された空気は第1の浄化給気手段9のフィルタで浄化されるため、空気清浄度は温度や湿度の調整とは独立して管理される。
【0021】
外気温度と外気絶対湿度はそれぞれ温度計と湿度計で測定される。温度計と湿度計は給気チャンバ11に設置することが好ましい。比エンタルピーは専用の計器で測定することができ、この計器も給気チャンバ11に設置することが好ましい。しかし、比エンタルピーは温度と湿度から空気線図に基づき計算できるため、計器を設ける代わりに演算手段を設けることで代替可能である。
【0022】
図5は本発明の空調システム1の様々なモジュール化概念を示す側方図である。図中の黒矢印と白矢印の意味は図1と同様である。図5(a)を参照すると、前室3と、第1の浄化給気手段9と、第1のエアコンディショナーAC1と、湿度調整装置10は、前室空調モジュール23としてモジュール化されている。排気循環手段22は前室空調モジュール23と異なる排気循環モジュール24としてモジュール化されている。前室空調モジュール23は空調対象室2の天井に取り付けられ、排気循環モジュール24は空調対象室2の側方に取り付けられる。これらのモジュールは空調対象室2の形状に合わせて作成され、通常は直方体形状で製作することが好ましい。詳細な説明は省略するが、空調対象室2も複数のモジュールで構成することができる。
【0023】
図5(b)を参照すると、2つの排気循環モジュール24が空調対象室2の両側に配置されている。前室空調モジュール23は空調対象室2の天井に取り付けられ、排気循環モジュール24は空調対象室2の側方に取り付けられる。前室空調モジュール23は一体型でもよいし、図5(a)に示す前室空調モジュール23を2つ設置してもよい、この場合、2つの前室空調モジュール23を連通させることで、給気ユニット14を一つに統合することができる。2つの排気循環モジュール24は同じ構成であるが、鏡対称となっている。
【0024】
図5(c)を参照すると、前室3から空気の一部が流入する空気供給室26と、空気を浄化して空調対象室2に給気する第2の浄化給気手段27とが設けられている。第2の浄化給気手段27は空調対象室2と空気供給室26との間に設けられている。第2の浄化給気手段27は第1の浄化給気手段9と同様の構成を有している。空気供給室26と第2の浄化給気手段27は、前室空調モジュール23及び排気循環モジュール24と異なる浄化給気モジュール25としてモジュール化されている。前室空調モジュール23は空調対象室2の側方に取り付けられ、排気循環モジュール24は空調対象室2の床下に取り付けられ、浄化給気モジュール25は空調対象室2の天井に取り付けられる。図中、灰色矢印は温度と湿度が要求範囲を満足しているが、清浄度は要求範囲を満足していない可能性のある空気の流れを意味する。
【0025】
図5(d)を参照すると、2つの前室空調モジュール23が空調対象室2の両側側方に取り付けられ、浄化給気モジュール25が空調対象室2の天井に取り付けられ、排気循環モジュール24が空調対象室2の床下に取り付けられている。図5(a)に示す空調システム1は空調対象室2が比較的に小さい場合に適しており、図5(d)に示す空調システム1は空調対象室2が比較的に大きい場合に適しており、図5(b)、5(c)に示す空調システム1はこれらの中間の用途に適している。前室空調モジュール23と排気循環モジュール24と浄化給気モジュール25が取り付けられる位置は上述の例に限定されず、空調対象室2の大きさ、空調方式(気流の向きを含む)などによって、空調対象室2の天井、床下、または側方に取り付けられる。
【符号の説明】
【0026】
1 空調システム
2 空調対象室
3 前室
4 第1の室内機
5 第1の室外機
6 第2の室内機
7 第2の室外機
8 加湿器
9 第1の浄化給気手段
10 湿度調整装置
22 排気循環手段
23 前室空調モジュール
24 排気循環モジュール
25 浄化給気モジュール
26 空気供給室
27 第2の浄化給気手段
AC1 第1のエアコンディショナー
AC2 第2のエアコンディショナー
図1
図2
図3
図4
図5