(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】移動体制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/617 20240101AFI20241021BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241021BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241021BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20241021BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241021BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241021BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20241021BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20241021BHJP
【FI】
G05D1/617
G08G1/16 A
G08G1/00 X
B60W30/10
B60W60/00
G16Y10/40
G16Y40/30
G05D1/00
(21)【出願番号】P 2021121200
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】タン チュンキム
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 夏美
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015489(JP,A)
【文献】特開2016-051465(JP,A)
【文献】特開2020-046773(JP,A)
【文献】特開2021-003971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
G05D 1/617
G08G 1/16
G08G 1/00
B60W 30/10
B60W 60/00
G16Y 10/40
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を制御する制御装置と、
前記移動体の周辺の他者の位置を検出する他者位置検出装置と、
を有する移動体制御システムであって、
前記制御装置は、
前記移動体の複数の計画軌道候補を演算する自己計画軌道候補演算部と、
前記他者の位置と前記計画軌道候補に基づいて、前記計画軌道候補の各軌道に対する前記他者の反応を、複数の予測軌道候補として演算する他者予測軌道候補演算部と、
前記他者の位置に基づいて、前記他者の予測行動目標を演算する他者予測行動目標演算部と、
前記予測軌道候補と前記予測行動目標に基づいて、前記移動体の計画行動目標と前記他者の予測行動目標を両立するように、前記複数の計画軌道候補から自己計画軌道を選択する自己計画軌道選択部と、
を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体制御システムにおいて、
前記他者の実軌道が、選択した自己計画軌道に対応した予測軌道と相反すると判定された場合に、前記移動体を減速または停止させるように修正計画軌道を演算する、自己計画軌道検証部を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移動体制御システムにおいて、
前記予測行動目標は、前記他者の予測目標軌道、または、前記他者の予測目標地点であることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載の移動体制御システムにおいて、
前記相反するとは、
前記移動体と前記他者が対向しており、かつ、前記他者が進行方向と直角な向きに対して前記予測軌道と逆方向に所定以上移動する場合、
または、前記他者が前記予測軌道と逆方向に所定以上速度変化する場合であることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載の移動体制御システムにおいて、
前記他者位置検出装置は、前記移動体の移動経路に設置した路側センサであることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項6】
請求項2に記載の移動体制御システムにおいて、
前記他者位置検出装置は、前記移動体に設置した車載センサであることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の移動体制御システムにおいて、
前記修正計画軌道と、前記車載センサから取得した前記他者の位置と、から補正自己計画軌道を演算する、自己計画軌道補正部を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項8】
請求項2に記載の移動体制御システムにおいて、
前記移動体の計画軌道を前記他者に提示する軌道表示装置を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載の移動体制御システムにおいて、
前記軌道表示装置は、前記他者の予測軌道を提示することを特徴とする移動体制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の移動体制御システムにおいて、
前記軌道表示装置は、前記他者が複数存在する環境では、各他者の予測軌道を、当人のみに提示することを特徴とする移動体制御システム。
【請求項11】
請求項8に記載の移動体制御システムにおいて、
前記軌道表示装置が有効であるか否かを判定する表示有効性判定部を備え、
前記表示有効性判定部が、前記軌道表示装置が有効であると判定した場合に、前記相反と判定する判定閾値を大きくすることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の移動体制御システムにおいて、
前記他者位置検出装置は、前記他者の属性を演算し、
前記他者予測軌道候補演算部は、前記属性に基づいて他者軌道予測モデルを切り替え、
前記他者予測行動目標演算部は、前記属性に基づいて他者目標予測モデルを切り替えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載の移動体制御システムにおいて、
前記属性は、人と自転車と車両の種別、または、前記他者の固有識別子であることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項14】
請求項5に記載の移動体制御システムにおいて、
前記自己計画軌道候補演算部と前記自己計画軌道選択部は、前記移動体に搭載された車載制御装置に配置され、
前記他者予測軌道候補演算部と前記他者予測行動目標演算部は、前記移動体の外部の遠隔制御装置に配置されることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項15】
請求項6に記載の移動体制御システムにおいて、
前記自己計画軌道候補演算部と前記自己計画軌道選択部と前記他者予測軌道候補演算部と前記他者予測行動目標演算部は、前記移動体に搭載された車載制御装置に配置されることを特徴とする移動体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の移動体(歩行者など)との衝突を回避するように、自動運転中の移動体(車両など)を移動させる移動体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経路脇に設置したカメラやLiDAR(light detection and ranging)などの路側センサを利用して歩行者を検出し、その検出結果に基づいて移動体(自動運転車両など)の移動を制御する移動体制御システムが開発されている。
【0003】
路側センサを利用して歩行者経路を予測する従来技術の一例に特許文献1がある。例えば、特許文献1の要約書には、「経路予測装置102は、車載センサ及び路側センサ104の少なくともいずれか一方により取得されたセンサデータを、無線通信又は有線通信を介して収集する収集部としてのパケット受信部180と、収集部により収集されたセンサデータから移動物体を検出し、当該移動物体の位置及び兆候を特定する解析部としての解析処理部184と、解析部により特定された移動物体の位置及び兆候を用いて、移動物体の未来の位置を含む経路を予測する予測部188と、解析部により特定された位置及び兆候を、移動物体毎に対応させて記憶する記憶部と、記憶部に記憶された位置及び兆候を用いて、予測部を学習させる学習部186とを含む。」と記載されており、自車両外の経路予測装置が、路側センサの取得データから検出した移動物体(歩行者)の位置と兆候に基づいて、移動物体(歩行者)の経路を予測している。
【0004】
また、同文献の段落0058や段落0059では、予測部が予測に用いる「兆候」が、歩行者の「体の向き及び顔の向き」であると説明されている。さらに、同文献の段落0065には、「歩行者の体の向きは、歩行者が進行方向を変更するタイミングにならないと変化しないので、体の向きだけで予測された経路の精度はそれ程高くはない。一方、通常、屋外の歩行者は進行方向を変更する場合、他の移動物体(車両、歩行者等)との衝突を回避するために、新たな進行方向を含む周囲に顔を向けて目視により確認を行う。したがって、進路変更の兆候として顔の向きを使用することにより、精度よく予測経路を決定できる。特に、体の向き及び顔の向きを使用することにより、より精度よく予測経路を決定できる。」と記載されており、歩行者の体の向きと顔の向きの双方を考慮することで、歩行者の経路を精度よく予測できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の段落0054には、「パケット送信部182は、予測部188から入力される予測経路を含むパケットデータを生成して、車載装置に対して配信(例えば、ブロードキャスト)する。予測経路を受信した車載装置は、予測経路を運転支援情報として使用できる。」と記載されている。仮に、同段落の車載装置が自動運転車両のものであれば、歩行者の予測経路を考慮し、歩行者との衝突を回避しながら自動運転車両の移動を制御することも可能と考えられる。
【0007】
しかしながら、歩行者の予測経路に対して衝突しない様に自動運転車両の経路を演算すると、自車の挙動に呼応した歩行者の反応(自車に合わせて歩行者が脇に寄ってくれる、といった社会的振る舞い)を考慮できず、自車の運航継続性が低下する可能性があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、自車の動きに対する歩行者の反応を予測しながら動作計画することで、自車に社会的な動きを実現させ、歩行者と適切な譲り合いを実現する、移動体制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の移動体制御システムは、移動体を制御する制御装置と、前記移動体の周辺の他者の位置を検出する他者位置検出装置と、を有する移動体制御システムであって、前記制御装置は、前記移動体の複数の計画軌道候補を演算する自己計画軌道候補演算部と、前記他者の位置と前記計画軌道候補に基づいて、前記計画軌道候補の各軌道に対する前記他者の反応を、複数の予測軌道候補として演算する他者予測軌道候補演算部と、前記他者の位置に基づいて、前記他者の予測行動目標を演算する他者予測行動目標演算部と、前記予測軌道候補と前記予測行動目標に基づいて、前記移動体の計画行動目標と前記他者の予測行動目標を両立するように、前記複数の計画軌道候補から自己計画軌道を選択する自己計画軌道選択部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の移動体制御システムによれば、自車の動きに対する歩行者の反応を予測しながら動作計画することで、自車に社会的な動きを実現させ、歩行者と適切な譲り合いを実現することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の移動体制御システムの概略構成図。
【
図3】実施例1の移動体制御システムのブロック図。
【
図4】実施例1の車載制御装置の動作を示すフローチャート。
【
図5】実施例1の遠隔制御装置の動作を示すフローチャート。
【
図8】実施例3の移動体制御システムのブロック図。
【
図11】実施例4の移動体制御システムのブロック図。
【
図12】実施例5の移動体制御システムの概略構成図。
【
図13】実施例5の移動体制御システムのブロック図。
【
図14】実施例6の移動体制御システムの概略構成図。
【
図15】実施例6の移動体制御システムのブロック図。
【
図16】実施例7の移動体制御システムの概略構成図。
【
図17】実施例7の移動体制御システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して、本発明の移動体制御システムの実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、
図1から
図6を用いて、本発明の実施例1に係る移動体制御システムを説明する。なお、本実施例では、倉庫内を走行する搬送車両(以下、「車両V」と称する)の誘導に適用した場合を例に挙げて本発明を説明するが、本発明は、一般道や駐車場を走行する自動車、建設現場を走行する建設車両などの自動運転装置にも適用することができる。
【0014】
図1は、実施例1の移動体制御システムの概略構成を示す図である。ここに示すように、本実施例の移動体制御システムは、車両Vに搭載された車載制御装置1と、倉庫内の各所に設置された他者位置検出装置2と、車両Vの外部に設置された遠隔制御装置3を備えている。なお、図中の破線矢印は信号の流れを示しており、車載制御装置1と遠隔制御装置3は無線通信で接続され、他者位置検出装置2と遠隔制御装置3は有線通信または無線通信で接続されている。まず、車両V、車載制御装置1、他者位置検出装置2、遠隔制御装置3を概説する。
【0015】
車両Vは、作業者Wとの混在環境下(例えば、倉庫内)で物品を搬送する自動運転車両であり、作業者Wを回避しながら自動走行するために、車載制御装置1を有している。この車載制御装置1は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、および、通信装置などを備えたコンピュータユニットであり、演算装置が主記憶装置にロードされたプログラムを実行することで、後述する各機能を実現するものである。なお、以下では、車載制御装置1のCPUがプログラムを実行する際の、コンピュータ分野における周知動作を適宜省略しながら説明する。
【0016】
他者位置検出装置2は、作業者Wの位置(以下、「他者位置」と称する。)を検出するためのセンサであり、
図1ではその一種として路側センサ2aを例示している。この路側センサ2aは、具体的には、カメラやLiDARなどであるが、以下では、路側センサ2aがカメラであるものとして説明する。この路側センサ2aは、撮影した動画像から抽出した作業者Wの位置を他者位置として検出し、遠隔制御装置3へ送信する。
【0017】
遠隔制御装置3は、車載制御装置1や他者位置検出装置2の出力に基づいて求めた、他者の予測軌道候補や予測行動目標を、車載制御装置1へ送信するサーバーである。この遠隔制御装置3は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置、および、通信装置などを備えたコンピュータユニットであり、演算装置が主記憶装置にロードされたプログラムを実行することで、後述する各機能を実現するものである。なお、以下では、遠隔制御装置3のCPUがプログラムを実行する際の、コンピュータ分野における周知動作を適宜省略しながら説明する。
【0018】
<車両V>
図2は、本実施例の車両Vの概略構成を示す図であり、図示のように車両Vの前後左右を定義する。なお、
図2の破線矢印も信号の流れを示している。ここに示すように、本実施例の車両Vは、左右の駆動輪11と、車両Vを駆動するモータ12と、車両Vを制動させるブレーキ13と、モータ12が発生した駆動力を減速する減速機14と、モータ12のモータ回転数を検出するエンコーダ15と、周辺環境の特徴点である周辺特徴点を検出する車載センサ16と、遠隔制御装置3と無線通信する通信装置17と、モータ12等を指令する車載制御装置1と、を備えている。
【0019】
モータ12が電気エネルギーを変換することにより発生させた動力は、減速機14に伝えられ、この減速機13内部の歯車式減速機構により減速された後に、左右の駆動輪11に伝えられ、車両Vを駆動する駆動力となる。左右の駆動輪11を独立に回転させることで車両Vを旋回させることができる。
【0020】
モータ12の近傍には車両Vの制動力を発生させるブレーキ13が設けられている。ブレーキ13には無励磁作動形の機構が備えられており、モータ12へ通電を切ることによりブレーキ13内部のロータをスプリングで静止部分に押し付けて摩擦力を発生させる。これにより運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、車両Vを制動させることができる。
【0021】
車載センサ16は、カメラやLiDARなどのセンサであるが、以下では、車載センサ16がカメラであるものとして説明する。この車載センサ16は、車両前方を撮影した動画像から周辺特徴点を検出し、車載制御装置1へ送信することができる。
【0022】
車載制御装置1は、CPUやメモリなどから構成され車載制御プログラムを実行して、モータ12への指令値を演算するコンピュータユニットである。これにより車両Vの加減速や旋回を制御することができる。
【0023】
<移動体制御システムの機能ブロック図>
次に、
図3から
図5を用いて、実施例1の移動体制御システムの詳細を説明する。
【0024】
車載制御装置1のCPUが所定の制御プログラムを実行することで、
図3の機能ブロック図に示す、自己位置演算部1aと、自己計画軌道候補演算部1bと、自己計画軌道選択部1cと、自己計画軌道追従部1dを構成し、これらが、車両Vの電源(不図示)がオンしている間、
図4のフローチャートに示す動作(車載制御プログラム)を繰り返し実行する。
【0025】
同様に、遠隔制御装置3のCPUが所定の制御プログラムを実行することで、
図3の機能ブロック図に示す、他者予測軌道候補演算部3aと、他者予測行動目標演算部3bを構成し、これらが、車両Vが送信した計画軌道候補のパケットデータの受信をトリガーとして、
図5のフローチャートに示す動作(遠隔制御プログラム)を実行する。
【0026】
以下、
図4と
図5を併用して、車両Vの電源オン後に並列処理される、各部の動作を順次説明する。
【0027】
まず、
図4のステップS1では、車載制御装置1の自己位置演算部1aは、車載センサ16から入力される車両Vの周辺の特徴点と、エンコーダ15から入力されるモータ回転数に基づいて、車両Vの自己位置(位置座標)を演算する。ここでは、例えば、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて、モータ回転数から車両Vの移動量を推定しつつ周辺特徴量を予め備えられたデータベースと照合することで、車両Vの位置座標を推定する。
【0028】
次に、
図4のステップS2で、車載制御装置1の自己計画軌道候補演算部1bは、自己位置演算部1aから入力される自己位置に基づいて、車両Vが追従し得る軌道の候補である、計画軌道候補Pを演算する。ここでは、例えば、車両V前方の複数地点をサンプリングし、当該地点へ到達できる軌道を時系列データとして演算する。さらに得られた時系列データから、実際に走行可能な場所、速度、曲率の範囲内に収まっている軌道を計画軌道候補Pとする。演算された計画軌道候補Pは、通信装置17を介して無線通信で遠隔制御装置3へ送信される。
【0029】
遠隔制御装置3が、車載制御装置1から計画軌道候補Pを受信すると、それをトリガーとして、
図5のフローチャートを開始する。
【0030】
まず、
図5のステップS11では、遠隔制御装置3の他者予測軌道候補演算部3aは、路側センサ2aから入力される他者位置と、自己計画軌道候補演算部1bから入力される計画軌道候補Pに基づいて、計画軌道候補Pの各軌道に対して予測される作業者Wの反応の時系列データである、予測軌道候補Rを演算する。ここでは、予測軌道候補Rは、他者位置の履歴を他者軌道予測モデルに入力することで演算する。他者軌道予測モデルとしては、作業者Wの歩行位置に対する歩行向きの統計モデルを用いることが考えられる。また、作業者W-車両V間および作業者W-壁面間での相互作用を考慮したSocial force modelを用いても良い。さらに、作業者Wの歩行軌道データを用いて学習させたニューラルネットワークモデルを用いても良い。演算された予測軌道候補Rは通信装置17を介して無線通信で車載制御装置1へ送信される。
【0031】
次に、
図5のステップS12では、遠隔制御装置3の他者予測行動目標演算部3bは、路側センサ2aから入力される他者位置に基づいて、車両Vが存在しない場合に予測される作業者Wの軌道の時系列データである、予測行動目標Tを演算する。予測行動目標Tは、他者位置の履歴を他者目標予測モデルに入力することで演算する。他者目標予測モデルとしては、作業者Wの歩行位置に対する歩行向きの統計モデルを用いることが考えられる。また、作業者W-車両V間および作業者W-壁面間での相互作用を考慮したSocial force modelを用いても良い。さらに、作業者Wの歩行軌道データを用いて学習させたニューラルネットワークモデルを用いても良い。演算された予測行動目標Tは通信装置17を介して無線通信で車載制御装置1へ送信される。
【0032】
車載制御装置1が、遠隔制御装置3から予測行動目標Tを受信すると、それをトリガーとして、
図4のフローチャートを再開する。そのため、
図4のステップS3では、遠隔制御装置3からの他者軌道候補と予測行動目標Tを受信したかを判定する。受信した判定された場合にはステップS4に進む。一方、受信しない場合は、RETURNに進む(すなわち、ステップS1を再度実行する)。
【0033】
図4のステップS4では、車載制御装置1の自己計画軌道選択部1cは、自己計画軌道候補演算部1bから入力される計画軌道候補Pと、他者予測軌道候補演算部3aから入力される予測軌道候補Rと、他者予測行動目標演算部3bから入力される予測行動目標Tに基づいて、車両Vが追従する軌道である、自己計画軌道を演算する。自己計画軌道は、選択した自己計画軌道と自己目標軌道との偏差、および他者予測軌道と他者予測目標軌道との偏差、の重み付き和が最小となる軌道として選択する。自己目標軌道とは、作業者Wが存在しない場合に、車両Vが最も効率よく目的地へ接近できる軌道である。他者予測軌道とは、予測軌道候補Rに含まれる軌道のうち、選択した自己計画軌道に対応した軌道である。これにより、車両Vの計画行動目標と、作業者Wの予測行動目標Tと、を最も両立する軌道を選択することができる。
【0034】
図4のステップS5では、車載制御装置1の自己計画軌道追従部1dは、自己計画軌道選択部1cから入力される自己計画軌道と、自己位置演算部1aから入力される自己位置と、からモータ指令を演算する。自己位置が自己計画軌道より遅れすぎた場合には、駆動輪11の回転速度を上げるようにモータ12を制御する。自己位置が自己計画軌道より進みすぎた場合は、駆動輪11の回転速度を下げるようにモータ12を制御する。進行方向に対して自己位置が自己計画軌道から右側へずれた場合は、駆動輪11の右側の回転速度が左側よりも速くなるようにモータ12を制御する。進行方向に対して自己位置が自己計画軌道から左側へずれた場合は、駆動輪11の左側の回転速度が右側よりも速くなるようにモータ12を制御する。これにより、車両Vの自己位置を自己計画軌道に追従させることができる。
【0035】
<移動体制御システムの動作例>
図6は、実施例1における移動体制御システムの動作例を説明する図であり、車両Vと作業者Wが狭路ですれ違う場合を示している。なお、
図6では省略しているが、作業者Wを検出できる位置に他者位置検出装置2が設置されており、車載制御装置1や他者位置検出装置2と通信可能に遠隔制御装置3が設置されている。
【0036】
このような環境下では、車載制御装置1の自己計画軌道候補演算部1bは、計画軌道候補Pとして、狭路の左端(自身から見た方向、以下同じ)を進む軌道P1、狭路を直進する軌道P2、狭路の右端を進む軌道P3を演算し、これらの計画軌道候補Pを遠隔制御装置3へ送信する。なお、各々の計画軌道候補Pは、車両Vが所定時間(例えば5秒間)に移動すると予測される経路の単位である。
【0037】
計画軌道候補Pを受信すると、遠隔制御装置3の他者予測軌道候補演算部3aは、予測軌道候補Rとして、軌道P1を妨げない軌道R1(狭路の左端を進む軌道)と、軌道P2を妨げない軌道R2(狭路の左端で停止する軌道)と、軌道P3を妨げない軌道R3(狭路の右端を進む軌道)を演算する。なお、各々の予測軌道候補Rは、作業者Wが所定時間(例えば5秒間)に移動すると予測される経路の単位である。
【0038】
また、他者予測軌道候補演算部3aは、計画軌道候補Pと予測軌道候補Rの組み合わせを演算する。具体的には、車両Vが軌道P1を選択すれば作業者Wは軌道R1を選ぶと予測し、車両Vが軌道P2を選択すれば作業者Wは軌道R2を選ぶと予測し、車両Vが軌道P3を選択すれば作業者Wは軌道R3を選ぶと予測する。
【0039】
さらに、遠隔制御装置3の他者予測行動目標演算部3bは、車両Vが存在しないと仮定した場合の予測行動目標Tとして、軌道T1を演算する。
図6では、作業者Wは狭路を図中の左方向に進もうとしているため、図中の左方向へ直進する軌道T1が他者予測目標軌道として予測される。
【0040】
図6の環境下では、車両Vは狭路を図中の右方向に進もうとしているため、直進する軌道P2が、最も効率よく目的地へ接近できる軌道である。一方で、軌道P2に対応した作業者Wの軌道R2は、作業者Wにとっての最適な軌道T1からの偏差(各軌道の先端間の距離)が最も大きい軌道である。また、狭路中央を走行中の車両Vにとって、狭路の左端を進む軌道P1と、狭路の右端を進む軌道P3の効率は等価であるが、狭路のやや左寄りを進む作業者Wにとっては、狭路の右端を進む軌道R3よりも狭路の左端を進む軌道R1の方が、軌道T1との偏差が小さく都合の良い軌道である。そのため、自己計画軌道選択部1cは、車両Vと作業者Wの双方にとって効率の良い軌道として、作業者Wの軌道R1に対応した車両Vの軌道P1を、自己計画軌道として選択する。これにより、車両Vの計画行動目標と作業者Wの予測行動目標Tを両立しつつ、車両Vの輸送効率を向上することができる。
【0041】
この際、作業者Wの軌道変更に先んじて車両Vが軌道P1へ軌道を変更することで、作業者Wが軌道を軌道R1以外に変更することを防ぎ、作業者Wが軌道を軌道R1へ変更するように促すことができる。これにより、車両Vの計画行動目標と、作業者Wの予測行動目標Tと、を両立し、車両Vの輸送効率を向上することができる。
【0042】
車両Vが軌道P1を選択したことを作業者Wに知らせるため、車両Vが軌道P1へ軌道を変更する際に、あえて大きな横加速度を発生させて、作業者Wにとって車両Vの軌道変更が視覚的に判別しやすいように移動してもよい。これにより、より確実に作業者Wが軌道を軌道R1へ変更するように促すことができる。また、車両Vが軌道P1へ軌道を変更する際に、あえて大げさに車両側面を作業者Wに向け、作業者Wにとって車両Vの軌道変更が視覚的に判別しやすいように移動してもよい。これにより、より確実に作業者Wが軌道を軌道R1へ変更するように促すことができる。
【0043】
なお、人はすれ違い行動をとる際に、概ね2m以上手前から回避行動をとり始めるため、車両Vの軌道P1への軌道変更は作業者Wの2m以上手前から開始されることが望ましい。
これにより、より確実に作業者Wの軌道変更に先んじて車両Vが軌道P1へ軌道を変更し、作業者Wが軌道を軌道R1以外に変更することを防ぎ、作業者Wが軌道を軌道R1へ変更するように促すことができる。
【0044】
また、人がすれ違い行動をとり始めるタイミングは、すれ違い相手の速度が速いほど早くなる傾向があるため、車両Vの軌道P1への軌道変更は、車両Vの速度が高いほど、より早いタイミングで開始されることが望ましい。これにより、より確実に作業者Wの軌道変更に先んじて車両Vが軌道P1へ軌道を変更し、作業者Wが軌道を軌道R1以外に変更することを防ぎ、作業者Wが軌道を軌道R1へ変更するように促すことができる。
【0045】
さらに、路側センサ2aで作業者Wの属性(作業者WのIDや名前などの固有識別子)を検出し、他者予測軌道候補演算部3aで予測軌道候補Rを演算する際に用いる他者軌道予測モデルを、検出された属性に応じて切り替えても良い。これにより、予測軌道候補Rをより高精度に予測することができる。同様に、路側センサ2aで作業者Wの属性(作業者WのIDや名前などの固有識別子)を検出し、他者予測行動目標演算部3bで予測行動目標Tを演算する際に用いる他者目標予測モデルを、検出された属性に応じて切り替えても良い。これにより、予測行動目標Tをより高精度に予測することができる。
【0046】
以上で説明した、本実施例の移動体制御システムによれば、自車の動きに対する歩行者の反応を予測しながら動作計画することで、自車に社会的な動きを実現させ、歩行者と適切な譲り合いを実現することができる。
【実施例2】
【0047】
次に、
図7を用いて、本発明の実施例2に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0048】
実施例1では、予測軌道候補Rと予測行動目標Tの偏差に基づいて、作業者Wにとって都合の良い軌道を予測したが、作業者Wにとっての目標地点が明らかな場合は、目標地点と予測軌道候補Rの偏差に基づいて、作業者Wにとって都合の良い軌道を予測しても良い。
【0049】
そのため、本実施例における他者予測行動目標演算部3bは、予測行動目標Tとして、作業者Wが最終的に到達したい地点である他者予測目標地点を設定する。これは、一例を挙げれば、倉庫の出入口ドアである。予測行動目標Tは、他者位置の履歴を他者目標予測モデルに入力することで演算する。他者目標予測モデルとしては、作業者Wの歩行位置に対する目的地の統計モデルを用いることが考えられる。作業者Wの歩行軌道データを用いて学習させたニューラルネットワークモデルを用いても良い。演算された予測行動目標Tは通信装置17を介して無線通信で車載制御装置1へ送信される。
【0050】
実施例2における自己計画軌道選択部1cは、自己計画軌道候補演算部1bから入力される計画軌道候補Pと、他者予測軌道候補演算部3aから入力される予測軌道候補Rと、他者予測行動目標演算部3bから入力される予測行動目標T(目標地点)と、から自己計画軌道を演算する。自己計画軌道は車両Vが追従する軌道である。自己計画軌道は、選択した自己計画軌道と自己目標軌道との偏差、および他者予測軌道の終端と他者予測目標地点との偏差、の重み付き和が最小となる軌道として選択する。これにより、車両Vの計画行動目標と、作業者Wの予測行動目標Tと、を最も両立する軌道を選択することができる。
【0051】
図7は、実施例2における移動体制御システムの動作例を説明する図であり、車両Vと作業者Wが狭路ですれ違う場合を示している。
【0052】
このような環境下では、車載制御装置1の自己計画軌道候補演算部1bは、
図6の環境下と同様に、計画軌道候補Pとして、軌道P1、軌道P2、軌道P3を演算し、これらの計画軌道候補Pを遠隔制御装置3へ送信する。
【0053】
計画軌道候補Pを受信すると、遠隔制御装置3の他者予測軌道候補演算部3aは、予測軌道候補Rとして、
図6の環境下と同様に、軌道P1、軌道P2、軌道P3に対応した軌道R1、軌道R2、軌道R3を演算する。
【0054】
また、他者予測軌道候補演算部3aは、車両Vが軌道P1を選択した場合には作業者Wは軌道R1を選ぶと予測し、車両Vが軌道P2を選択した場合には作業者Wは軌道R2を選ぶと予測し、車両Vが軌道P3を選択した場合には作業者Wは軌道R3を選ぶと予測する。
【0055】
さらに、遠隔制御装置3の他者予測行動目標演算部3bは、車両Vが存在しないと仮定した場合の予測行動目標Tとして、軌道T1を演算する。
図7では、作業者Wは狭路を図中の左方向に進もうとしているため、狭路の図中の左側出口が他者予測目標地点として予測される。
【0056】
以上のような環境下では、車両Vは狭路を図中の右方向に進もうとしているため、直進する軌道P2が、最も効率よく目的地へ接近できる軌道である。一方で、軌道P2に対応した作業者Wの軌道R2は、図中の星印で示した他者予測目標地点からの偏差(各軌道の先端までの距離)が最も大きい軌道である。
図7の車両Vにとって、左端を進む軌道P1と、右端を進む軌道P3の効率は等価であるが、作業者Wにとっては、右端を進む軌道R3よりも左端を進む軌道R1の方が、他者予測目標地点との偏差が小さく都合の良い軌道である。そのため、自己計画軌道選択部1cは、作業者Wの軌道R1に対応した車両Vの軌道P1を、自己計画軌道として選択する。これにより、車両Vの計画行動目標と作業者Wの他者予測目標地点を両立しつつ、車両Vの輸送効率を向上することができる。
【実施例3】
【0057】
次に、
図8から
図10を用いて、本発明の実施例3に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0058】
図8は、実施例3における移動体制御装置のブロック図である。実施例1の車載制御装置1は、自己計画軌道選択部1cの出力(自己計画軌道)をそのまま自己計画軌道追従部1dに入力したが、実施例3における車載制御装置1は、
図8のように、自己計画軌道選択部1cと自己計画軌道追従部1dの間に自己計画軌道検証部1eを備えている。この自己計画軌道検証部1eは、自己計画軌道選択部1cから入力される自己計画軌道と、路側センサ2aから入力される他者位置と、に基づいて修正計画軌道を演算するものである。この修正計画軌道は、作業者Wの実軌道が予測軌道(自己計画軌道に対応する他者予測軌道)と相違し、車両Vと作業者Wのニアミスが発生すると判定された場合に、車両Vを停止するように演算される軌道である。
【0059】
従って、本実施例における自己計画軌道追従部1dは、自己計画軌道検証部1eから入力される修正計画軌道と、自己位置演算部1aから入力される自己位置と、からモータ指令を演算する。これにより、車両Vの自己位置を修正計画軌道に追従させることができる。
【0060】
図9は、作業者Wが予測に反した軌道を選択した場合に、本実施例の自己計画軌道検証部1eを持たない、例えば、実施例1の車両Vが採りうる動作を説明する平面図である。自己計画軌道選択部1cが自己計画軌道として軌道P1を選択した後、車両Vが軌道Paを通り移動を開始する場合、作業者Wの他者予測軌道としては、軌道P1に対応した軌道R1が予測されている。ところが、作業者Wは予測に反し、経路Raを移動すると、車両Vは、作業者Wとの衝突を回避するため軌道Paから軌道Pbへと変更するが、作業者Wも同じように車両Vとの衝突を回避しようとして軌道Raから軌道Rbへと変更する可能性がある。このように、車両Vと作業者Wが繰り返し同じ方向に避け合うことでニアミス(異常接近)が発生すると、双方が前進できなくなる可能性がある。
【0061】
一方、
図10は、自己計画軌道検証部1eを備えた、本実施例の車両Vの動作を説明する図である。この場合、車両Vと作業者Wが対向しており、かつ、作業者Wが進行方向と直角な向き(左右何れかの方向)に対して、他者予測軌道と逆方向に所定以上移動すると、自己計画軌道検証部1eは作業者Wの実軌道(軌道Ra)と他者予測軌道(軌道R1)が相反していると判断し、車両Vを停止するように修正計画軌道を演算する。この結果、停止した車両Vの横を作業者Wが通過できるようになるため、車両Vと作業者Wがニアミス(異常接近)して両者が停止するという、双方の移動効率が低下する事態を避けることができる。
【0062】
また、作業者Wが他者予測軌道と逆方向に所定以上速度変化する場合に、作業者Wの実軌道(軌道Ra)と他者予測軌道(軌道R1)が相反していると判定しても良い。これにより、車両Vと作業者Wがすれ違うことができずに輸送効率が低下することを避けることができる。
【0063】
なお、自己計画軌道検証部1eが相反と判定した場合、車両Vを停止させるのではなく、車両Vを減速しても良いし、車両Vを後退しても良いし、作業者Wへ音声などで警告しても良い。
【実施例4】
【0064】
次に、
図11を用いて、本発明の実施例4に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0065】
図11は、実施例4における移動体制御装置のブロック図である。実施例1では、他者位置検出装置2に路側センサ2aを利用した。この場合、遠隔制御装置3が作業者Wを検出できるのは路側センサ2aの監視範囲に限定され、車両Vの近傍にいても路側センサ2aの死角にいる作業者Wを考慮した車両制御を実現することができなかった。また、実施例1の車両Vが作業者Wを検知できるのは遠隔制御装置3での処理終了後に限定されるため、作業者Wの現在位置をリアルタイムで把握できなかった。そこで、本実施例では、他者位置検出装置2に車載センサ16を加えることで、路側センサ2aの死角にいる作業者Wを車載センサ16で検出しながら、遠隔制御装置3での処理を実行できるようにするとともに、車両V側でも他者位置を検出できるようにしている。
【0066】
そのため、実施例4における車載センサ16は、自己位置演算部1aから入力される自己位置から他者位置を演算する。具体的には、路側センサ2aは、撮影した動画像から抽出した作業者Wの位置を相対座標系で算出し、自己位置を用いて絶対座標系へ変換した後、通信装置17を介して無線通信で遠隔制御装置3へ送信することができる。これにより、より確実に遠隔制御装置3で作業者Wを検出することができる。
【0067】
また、実施例4の車載制御装置1は、自己計画軌道選択部1cと自己計画軌道追従部1dの間に自己計画軌道補正部1fを備えている。この自己計画軌道補正部1fは、自己計画軌道選択部1cから入力される自己計画軌道と、車載センサ16から入力される他者位置と、から補正自己計画軌道を演算する。補正自己計画軌道は、車載センサ16が車両Vの近傍に作業員を検出した場合に、車両Vを停止するように演算される。これにより、予測軌道候補Rが無線通信で遅延した場合でも、作業員への衝突を回避し、安全性を向上することができる。
【0068】
なお、車載センサ16から入力される他者位置を用いて、他者予測軌道候補演算部3aから入力される予測軌道候補Rの遅延を補正しても良い。
【0069】
実施例4における自己計画軌道追従部1dは、自己計画軌道補正部1fから入力される補正自己計画軌道と、自己位置演算部1aから入力される自己位置と、からモータ指令を演算する。これにより、車両Vの自己位置を修正計画軌道に追従させることができる。
【実施例5】
【0070】
次に、
図12と
図13を用いて、本発明の実施例5に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0071】
図12は、実施例5における移動体制御システムの概略構成である。実施例3では、作業者Wは車両Vの挙動から車両Vの進路を推測する必要があったが(
図10参照)、実施例5における移動体制御システムでは、各々の作業者Wに、自己計画軌道と他者予測軌道を表示する軌道表示装置5を装着させ、システムによる作業者Wの予測軌道や車両Vの計画軌道を、各々の作業者Wが視覚的に把握できるようにしている。
【0072】
このような軌道表示装置5を利用するため、
図13に示す実施例5の車載制御装置1には、
図8に示す実施例3の車載制御装置1に対し、さらに、表示有効性判定部1gを追加している。
【0073】
軌道表示装置5は、例えば、AR(Augmented Reality)グラスと通信アンテナを備えており、自己計画軌道検証部1eから入力される修正計画軌道と、自己計画軌道選択部1cから入力される他者予測軌道と、を作業者全体に表示する。これにより、車両Vが想定している作業者Wの軌道や、車両Vの走行方向に関する意図を作業者Wに伝達し、作業者Wの振る舞いを誘導することができる。なお、軌道表示装置5は、作業者Wが装着する者に限定されず、例えば、プロジェクタを用いて修正計画軌道および他者予測軌道を床面上に直接描画しても良し、床面にディスプレイを組み込み、修正計画軌道および他者予測軌道を床面ディスプレイ上に直接描画しても良い。さらに、軌道表示装置5は、修正計画軌道の向きを音声で作業者Wに通知しても良い。
【0074】
また、表示有効性判定部1gは、軌道表示装置5から入力される全体表示部疎通確認から、表示部状態を演算する。表示部状態は軌道表示装置5が有効であるかを示す。そして、自己計画軌道検証部1eは、表示部状態が有効である場合に、相反と判定する閾値を大きくする。これにより、軌道表示装置5に修正計画軌道および他者予測軌道を表示し、相反が発生する可能性が低いにも関わらず、誤って相違と判定し、車両Vの輸送効率を低下させることを防止できる。
【実施例6】
【0075】
次に、
図14と
図15を用いて、本発明の実施例6に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0076】
図14は、実施例6における移動体制御システムの移動体制御システムの概略構成である。また、
図15は、実施例6における移動体制御システムのブロック図である。
【0077】
上記実施例では、車両Vの外部に遠隔制御装置3を配置したが、本実施例では、遠隔制御装置3が有していた他者予測軌道候補演算部3aと他者予測行動目標演算部3bを、車載制御装置1の内部に取り込んでおり、また、他者位置検出装置2としては、車載センサ16のみを使用している。
【0078】
実施例4における車載センサ16は、自己位置演算部1aから入力される自己位置から他者位置を演算する。路側センサ2aは撮影した動画像から抽出した作業者Wの位置を相対座標系で算出し、自己位置を用いて絶対座標系へ変換して他者位置を演算する。
【0079】
本実施例における他者予測軌道候補演算部3aは、車載センサ16から入力される他者位置と、自己計画軌道候補演算部1bから入力される計画軌道候補Pと、から予測軌道候補Rを演算する。
【0080】
また、本実施例における他者予測行動目標演算部3bは、車載センサ16から入力される他者位置から予測行動目標Tを演算する。これにより、車両V単独で、車両Vの計画行動目標と、作業者Wの予測行動目標Tと、を両立し、車両Vの輸送効率を向上することができる。
【実施例7】
【0081】
次に、
図16と
図17を用いて、本発明の実施例7に係る移動体制御システムを説明する。なお、上記実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0082】
図16は、駐車場に設置された、実施例7の移動体制御システムの概略構成である。この移動体制御システムは、歩行者や他車両V1との混在環境下で走行する車両Vに搭載された車載制御装置1と、歩行者の位置である他者位置を検出する他者位置検出装置2と、予測軌道候補Rおよび予測行動目標Tを車両Vへ送信する遠隔制御装置3と、歩行者に個別に計画軌道および予測軌道を表示する軌道表示装置6(6a、6b)と、を備えている。
【0083】
図17は、実施例7における移動体制御システムのブロック図である。本実施例の軌道表示装置6は、実施例5の軌道表示装置5と同様に、ARグラスおよび通信アンテナを備えているが、下記の点で軌道表示装置5と相違する。すなわち、実施例5では、各々の軌道表示装置5に、車両Vの計画軌道に加え、全作業者の予測軌道を表示しており、各作業者は他作業者の予測軌道も把握できたが、本実施例の軌道表示装置6では、歩行者ごとに表示内容を変更する。
【0084】
つまり、
図16の環境下では、軌道表示装置6aを装着した歩行者には、車両Vの計画軌道と、自身に関する予測軌道を提示するが、軌道表示装置6bを装着した他の歩行者に関する予測軌道を提示しない。同様に、軌道表示装置6bを装着した歩行者には、車両Vの計画軌道と、自身に関する予測軌道を提示するが、軌道表示装置6aを装着した他の歩行者に関する予測軌道を提示しない。これにより、歩行者個々人の移動方向に関するプライバシーを守りつつ、車両Vが想定している歩行者の軌道や、車両Vの走行方向に関する意図を歩行者に伝達し、歩行者の振る舞いを誘導することができる。
【0085】
なお、
図16の環境下では、車両V以外にも様々な移動体が存在しうるため、本実施例の路側センサ2aには、画像認識処理を利用して他移動体の属性(歩行者、自転車、車など)を検出する機能を持たせている。
【0086】
その結果、実施例7の他者予測軌道候補演算部3aは、検出された属性に応じて他者軌道予測モデルを切り替え、属性に応じた挙動の予測軌道候補Rを演算することができる。同様に、実施例7の他者予測行動目標演算部3bは、検出された属性に応じて他者目標予測モデルを切り替え、属性に応じた挙動の予測行動目標Tを演算することができる。
【0087】
本実施例により、予測軌道候補Rや予測行動目標Tをより高精度に予測することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 車載制御装置
1a 自己位置演算部
1b 自己計画軌道候補演算部
1c 自己計画軌道選択部
1d 自己計画軌道追従部
1e 自己計画軌道検証部
1f 自己計画軌道補正部
1g 表示有効性判定部
2 他者位置検出装置
2a 路側センサ
3 遠隔制御装置
3a 他者予測軌道候補演算部
3b 他者予測行動目標演算部
5、6 軌道表示装置
V 車両
11 駆動輪
12 モータ
13 ブレーキ
14 減速機
15 エンコーダ
16 車載センサ
17 通信装置
W 作業者