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特許7574149導電層の接続構造、導電線材、コイル、及び機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】導電層の接続構造、導電線材、コイル、及び機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/68 20060101AFI20241021BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H01R4/68
H01F6/06 500
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021125021
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023019936
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 靖
(72)【発明者】
【氏名】江口 朋子
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】アルベサール 恵子
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107149(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211699(WO,A1)
【文献】特開2012-195469(JP,A)
【文献】特開2018-170173(JP,A)
【文献】国際公開第2013/165001(WO,A1)
【文献】特開昭53-67659(JP,A)
【文献】特開昭54-28753(JP,A)
【文献】特開2012-84588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/58- 4/72
H01F 6/06
B23K 1/14
B23K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、前記第1の導電層を支持する第1の基板と、を含み、第1の方向に延び、前記第1の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第1の導電部材と、
第2の導電層と、前記第2の導電層を支持する第2の基板と、を含み、前記第1の方向に延び、前記第2の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第2の導電部材と、
前記第1の導電層の凸側及び前記第2の導電層の凸側に対向する第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の導電層と、前記第2の面と対向し前記第3の導電層を支持する第3の基板と、を含み、前記第1の方向に延びる第3の導電部材と、
前記第1の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、前記第1の導電層及び前記第3の導電層に接し、第1の位置の厚さが前記第1の位置よりも前記第2の導電層からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い第1の接続層と、
前記第2の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、前記第2の導電層及び前記第3の導電層に接し、第3の位置の厚さが前記第3の位置よりも前記第1の導電層からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い第2の接続層と、
を備え、
前記第1の導電層、前記第2の導電層、前記第3の導電層、前記第1の接続層、及び前記第2の接続層は、超電導層である導電層の接続構造。
【請求項2】
前記第1の位置及び前記第2の位置において、前記第1の接続層は前記第1の導電層及び前記第3の導電層に接し、
前記第3の位置及び前記第4の位置において、前記第2の接続層は前記第2の導電層及び前記第3の導電層に接する請求項1記載の導電層の接続構造。
【請求項3】
前記第1の導電層、前記第2の導電層、及び前記第3の導電層は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む酸化物超電導層である請求項1又は請求項2記載の導電層の接続構造。
【請求項4】
前記第1の接続層及び前記第2の接続層は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項5】
第1の導電層と、前記第1の導電層を支持する第1の基板と、を含み、第1の方向に延び、前記第1の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第1の導電部材と、
第2の導電層と、前記第2の導電層を支持する第2の基板と、を含み、前記第1の方向に延び、前記第2の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第2の導電部材と、
前記第1の導電層の凸側及び前記第2の導電層の凸側に対向する第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の導電層と、前記第2の面と対向し前記第3の導電層を支持する第3の基板と、を含み、前記第1の方向に延びる第3の導電部材と、
前記第1の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、第1の位置の厚さが前記第1の位置よりも前記第2の導電層からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い第1の接続層と、
前記第2の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、第3の位置の厚さが前記第3の位置よりも前記第1の導電層からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い第2の接続層と、
を備え、
前記第1の導電層、前記第2の導電層、及び前記第3の導電層は、超電導層であり、
前記第1の位置は前記第1の導電層の前記第2の導電層に対向する側の端部と前記第3の導電層との間の位置であり、前記第2の位置は前記第3の導電層の前記第1の導電層と対向する側の端部と前記第1の導電層との間の位置であり、
前記第3の位置は前記第2の導電層の前記第1の導電層に対向する側の端部と前記第3の導電層との間の位置であり、前記第4の位置は前記第3の導電層の前記第2の導電層と対向する側の端部と前記第2の導電層との間の位置である導電層の接続構造。
【請求項6】
前記第1の接続層の厚さは前記第1の位置から前記第2の位置に向けて単調増加し、
前記第2の接続層の厚さは前記第3の位置から前記第4の位置に向けて単調増加する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項7】
前記第3の導電部材は、前記第3の導電層の側が凹となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項8】
前記第3の導電部材の曲率半径は、前記第1の導電部材の曲率半径及び前記第2の導電部材の曲率半径よりも大きい請求項7記載の導電層の接続構造。
【請求項9】
前記第3の導電部材は、前記第3の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項10】
前記第2の位置の前記第1の接続層の厚さは、前記第1の位置の前記第1の接続層の厚さの2倍以上であり、
前記第4の位置の前記第2の接続層の厚さは、前記第3の位置の前記第2の接続層の厚さの2倍以上である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項11】
前記第1の接続層と前記第2の接続層は連続する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項12】
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材との間に存在する補強材を、更に備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の導電層の接続構造。
【請求項13】
前記補強材は、前記第1の導電部材、前記第2の導電部材、及び前記第3の導電部材を囲む請求項12記載の導電層の接続構造。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の導電層の接続構造を備える導電線材。
【請求項15】
請求項14記載の導電線材を備えるコイル。
【請求項16】
請求項15記載のコイルを備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、導電層の接続構造、導電線材、コイル、及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0003】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-168424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低い電気抵抗を実現できる導電層の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の導電層の接続構造は、第1の導電層と、前記第1の導電層を支持する第1の基板と、を含み、第1の方向に延び、前記第1の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第1の導電部材と、第2の導電層と、前記第2の導電層を支持する第2の基板と、を含み、前記第1の方向に延び、前記第2の導電層の側が凸となるように長手方向である前記第1の方向に沿って湾曲した第2の導電部材と、前記第1の導電層の凸側及び前記第2の導電層の凸側に対向する第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の導電層と、前記第2の面と対向し前記第3の導電層を支持する第3の基板と、を含み、前記第1の方向に延びる第3の導電部材と、前記第1の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、前記第1の導電層及び前記第3の導電層に接し、第1の位置の厚さが前記第1の位置よりも前記第2の導電層からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い第1の接続層と、前記第2の導電層の凸側と前記第3の導電層との間に存在し、前記第2の導電層及び前記第3の導電層に接し、第3の位置の厚さが前記第3の位置よりも前記第1の導電層からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い第2の接続層と、
を備え、前記第1の導電層、前記第2の導電層、前記第3の導電層、前記第1の接続層、及び前記第2の接続層は、超電導層である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の超電導線材の模式断面図。
図2】第1の実施形態の超電導線材の模式平面図。
図3】第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
図4】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導線材、第2の超電導線材、及び第3の超電導線材の準備の説明図。
図5】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の保護層、第2の保護層、及び第3の保護層の除去の説明図。
図6】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第2の超電導層の上へのスラリーの塗布の説明図。
図7】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を向き合わせた状態の説明図。
図8】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第3の超電導層、及び、第2の超電導層と第3の超電導層を重ね合わせた状態の説明図。
図9】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第3の超電導層、及び、第2の超電導層と第3の超電導層を加圧した状態の説明図。
図10】比較例の超電導線材の模式断面図。
図11】比較例の超電導層の接続構造の模式断面図。
図12】第1の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図。
図13】第2の実施形態の超電導線材の模式断面図。
図14】第3の実施形態の超電導線材の模式断面図。
図15】第4の実施形態の超電導線材の第1の方向に平行な模式断面図。
図16】第4の実施形態の超電導線材の第1の方向に垂直な模式断面図。
図17】第4の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図。
図18】第4の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図。
図19】第5の実施形態の超電導コイルの模式斜視図。
図20】第5の実施形態の超電導コイルの模式断面図。
図21】第6の実施形態の超電導機器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、結晶等に含まれる元素の検出及び元素の原子濃度の測定は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことが可能である。また、粒子等に含まれる物質の同定は、例えば、粉末X線回折法を用いて行うことが可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の導電層の接続構造は、第1の導電層と、第1の導電層を支持する第1の基板と、を含み、第1の方向に延び、第1の導電層の側が凸となるように第1の方向に湾曲した第1の導電部材と、第2の導電層と、第2の導電層を支持する第2の基板と、を含み、第1の方向に延び、第2の導電層の側が凸となるように第1の方向に湾曲した第2の導電部材と、第1の導電層の凸側及び第2の導電層の凸側に対向する第1の面と第1の面と対向する第2の面を有する第3の導電層と、第2の面と対向し第3の導電層を支持する第3の基板と、を含み、第1の方向に延びる第3の導電部材と、第1の導電層の凸側と第3の導電層との間に存在し、第1の位置の厚さが第1の位置よりも第2の導電層からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い第1の接続層と、第2の導電層の凸側と第3の導電層との間に存在し、第3の位置の厚さが第3の位置よりも第1の導電層からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い第2の接続層と、を備える。
【0011】
また、第1の実施形態の導電線材は、第1の実施形態の導電層の接続構造を備える。第1の実施形態の導電線材は、超電導線材100である。第1の実施形態の導電層の接続構造は、超電導層の接続構造50である。超電導線材100は、導電線材の一例である。超電導層の接続構造50は、導電層の接続構造の一例である。
【0012】
図1は、第1の実施形態の超電導線材の模式断面図である。図2は、第1の実施形態の超電導線材の模式平面図である。図2は、第1の実施形態の超電導線材を第3の導電部材側から見た平面図である。
【0013】
超電導線材100は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。超電導層の接続構造50は、第3の超電導線材30を用いて、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20を接続する。
【0014】
第1の超電導線材10は、第1の導電部材の一例である。第2の超電導線材20は、第2の導電部材の一例である。第3の超電導線材30は、第3の導電部材の一例である。
【0015】
第1の超電導線材10は、第1の方向に延びる。第2の超電導線材20は、第1の方向に延びる。第3の超電導線材30は、第1の方向に延びる。超電導線材100は、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20が、第3の超電導線材30を用いて接続されることで、第1の方向に長尺化されている。
【0016】
第3の超電導線材30の長手方向の長さは、例えば、第1の超電導線材10の長手方向の長さよりも短い。また、第3の超電導線材30の長手方向の長さは、例えば、第2の超電導線材20の長手方向の長さよりも短い。第3の超電導線材30は、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20を接続する接続部材として機能する。
【0017】
第1の超電導線材10の長手方向の長さは、例えば、10cm以上500m以下である。また、第1の超電導線材10の第2の方向の幅は、例えば、3mm以上20mm以下である。第2の方向は、第1の方向に直交する方向である。第2の方向は、第1の超電導線材10の長手方向に直交する方向である。
【0018】
第2の超電導線材20の長手方向の長さは、例えば、10cm以上500m以下である。また、第2の超電導線材20の第2の方向の幅は、例えば、3mm以上20mm以下である。第2の方向は、第2の超電導線材20の長手方向に直交する方向である。
【0019】
第3の超電導線材30の長手方向の長さは、例えば、1cm以上5cm以下である。また、第3の超電導線材30の第2の方向の幅は、例えば、3mm以上20mm以下である。第2の方向は、第3の超電導線材30の長手方向に直交する方向である。
【0020】
第1の実施形態の超電導線材100は、接続構造50を備える。接続構造50において、第1の超電導線材10と第3の超電導線材30が接続される。接続構造50において、第2の超電導線材20と第3の超電導線材30が接続される。
【0021】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23、第2の保護層24を備える。第3の超電導線材30は、第3の基板31、第3の中間層32、第3の超電導層33を備える。
【0022】
第1の超電導層13は、第1の導電層の一例である。第2の超電導層23は、第2の導電層の一例である。第3の超電導層33は、第3の導電層の一例である。
【0023】
第1の基板11は、例えば、金属である。第1の基板11は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板11は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0024】
第1の超電導層13は、第3の超電導層33に対向する。第1の超電導層13は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層13は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層13は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層13は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第1の超電導層13は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群から選ばれる少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0025】
第1の超電導層13は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0026】
第1の超電導層13は、例えば、第1の中間層12の上に、Metal Organic Decomposition法(MOD法)、Pulse Laser Depositopn法(PLD法)、又は、Metal Organic Chemical Vapor Deposition法(MOCVD法)を用いて形成される。
【0027】
第1の中間層12は、第1の基板11と第1の超電導層13との間に設けられる。第1の中間層12は、例えば、第1の超電導層13に接する。第1の中間層12は、第1の中間層12の上に形成される第1の超電導層13の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0028】
第1の中間層12は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層12は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層12は、例えば、第1の基板11側から、酸化イットリウム(Y)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)が積層された構造を有する。
【0029】
第1の保護層14は、第1の超電導層13の上に設けられる。第1の保護層14は、例えば、第1の超電導層13に接する。第1の保護層14は、第1の超電導層13を保護する機能を有する。
【0030】
第1の保護層14は、例えば、金属である、第1の保護層14は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0031】
第1の超電導線材10は、第1の方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、長手方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、第1の基板11に対して第1の超電導層13の側が凸となるように湾曲する。第1の超電導線材10は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0032】
第2の基板21は、例えば、金属である。第2の基板21は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板21は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0033】
第2の超電導層23は、第3の超電導層33に対向する。第2の超電導層23は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層23は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の超電導層23は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第2の超電導層23は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群から選ばれる少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0034】
第2の超電導層23は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0035】
第2の超電導層23は、例えば、第2の中間層22の上に、金属有機物堆積法MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0036】
第2の中間層22は、第2の基板21と第2の超電導層23との間に設けられる。第2の中間層22は、例えば、第2の超電導層23に接する。第2の中間層22は、第2の中間層22の上に形成される第2の超電導層23の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0037】
第2の中間層22は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層22は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層22は、例えば、第2の基板21側から、酸化イットリウム(Y)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)が積層された構造を有する。
【0038】
第2の保護層24は、第2の超電導層23の上に設けられる。第2の保護層24は、例えば、第2の超電導層23に接する。第2の保護層24は、第2の超電導層23を保護する機能を有する。
【0039】
第2の保護層24は、例えば、金属である、第2の保護層24は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0040】
第2の超電導線材20は、第1の方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、長手方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、第2の基板21に対して第2の超電導層23の側が凸となるように湾曲する。第2の超電導線材20は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0041】
第3の基板31は、例えば、金属である。第3の基板31は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第3の基板31は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0042】
第3の超電導層33は、第1の面及び第2の面を有する。第2の面は第1の面と対向する。
【0043】
第1の超電導層13の凸側及び第2の超電導層23の凸側は、第3の超電導層33の第1の面に対向する。第1の超電導層13の凸側及び第2の超電導層23の凸側は、第3の超電導層33の第1の面の側に位置する。図1において、第1の面は第3の超電導層33の下面、第2の面は第3の超電導層33の上面である。第2の面は、第3の基板31に対向する。第1の超電導層13及び第2の超電導層23は、第3の超電導層33の下面側に位置する。第3の超電導層33は、第1の超電導層13及び第2の超電導層23に対向する。
【0044】
第3の超電導層33は、例えば、酸化物超電導層である。第3の超電導層33は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第3の超電導層33は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第3の超電導層33は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群から選ばれる少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0045】
第3の超電導層33は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0046】
第3の超電導層33は、例えば、第3の中間層32の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0047】
第3の中間層32は、第3の基板31と第3の超電導層33との間に設けられる。第3の中間層32は、例えば、第3の超電導層33に接する。第3の中間層32は、第3の中間層32の上に形成される第3の超電導層33の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0048】
第3の中間層32は、例えば、希土類酸化物を含む。第3の中間層32は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第3の中間層32は、例えば、第3の基板31側から、酸化イットリウム(Y)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)が積層された構造を有する。
【0049】
第3の超電導線材30は、第1の方向に湾曲していない。第3の超電導線材30は、長手方向に湾曲していない。
【0050】
第1の接続層41は、第1の超電導層13の凸側と第3の超電導層33との間に存在する。第1の接続層41は、第1の超電導層13に接する。第1の接続層41は、第3の超電導層33に接する。
【0051】
第1の接続層41は、第1の超電導層13と第3の超電導層33を接続する。第1の接続層41は、第1の超電導層13と第3の超電導層33を電気的に接続する。
【0052】
第1の接続層41は、導電層である。第1の接続層41は、例えば、超電導層である。第1の接続層41は、例えば、酸化物超電導層である。第1の接続層41は、例えば、超電導体を含む。
【0053】
第1の接続層41は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の接続層41は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。結晶は、希土類酸化物である。結晶は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。結晶は、例えば、(RE)BaCuδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0054】
第1の接続層41は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群から選ばれる少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0055】
第2の接続層42は、第2の超電導層23の凸側と第3の超電導層33との間に存在する。第2の接続層42は、第2の超電導層23に接する。第2の接続層42は、第3の超電導層33に接する。
【0056】
第2の接続層42は、第2の超電導層23と第3の超電導層33を接続する。第2の接続層42は、第2の超電導層23と第3の超電導層33を電気的に接続する。
【0057】
第2の接続層42は、導電層である。第2の接続層42は、例えば、超電導層である。第2の接続層42は、例えば、酸化物超電導層である。第2の接続層42は、例えば、超電導体を含む。
【0058】
第2の接続層42は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の接続層42は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。結晶は、希土類酸化物である。結晶は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。結晶は、例えば、(RE)BaCuδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0059】
第2の接続層42は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0060】
図3は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。図3は、接続構造50の中の、第1の超電導層13、第2の超電導層23、第3の超電導層33、第1の接続層41、及び第2の接続層42のみを図示する。
【0061】
第1の接続層41の第1の位置の厚さは、第1の位置よりも第2の超電導層23からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い。また、第2の接続層42の第3の位置の厚さは、第3の位置よりも第1の超電導層13からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い。
【0062】
例えば、第1の超電導層13の第2の超電導層23に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図1図3中のP1)は、第1の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第1の超電導層13と対向する側の端部と第1の超電導層13との間の位置(図1図3中のP2)は、第2の位置の一例である。
【0063】
例えば、第2の超電導層23の第1の超電導層13に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図1図3中のP3)は、第3の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第2の超電導層23と対向する側の端部と第2の超電導層23との間の位置(図1図3中のP4)は、第4の位置の一例である。
【0064】
例えば、第1の接続層41の位置P1の厚さ(図3中のd1)は、第1の接続層41の位置P2の厚さ(図3中のd2)よりも薄い。また、例えば、第2の接続層42の位置P3の厚さ(図3中のd3)は、第2の接続層42の位置P4の厚さ(図3中のd4)よりも薄い。
【0065】
第1の接続層41の第2の位置の厚さは、例えば、第1の接続層41の第1の位置の厚さの2倍以上である。また、第2の接続層42の第4の位置の厚さは、例えば、第2の接続層42の第3の位置の厚さの2倍以上である。
【0066】
例えば、第1の接続層41の位置P2の厚さd2は、第1の接続層41の位置P1の厚さd1の2倍以上である。また、例えば、第2の接続層42の位置P4の厚さd4は、第2の接続層42の位置P3の厚さd3の2倍以上である。
【0067】
例えば、第1の接続層41の厚さは、第1の位置から第2の位置に向けて単調増加する。また、例えば、第2の接続層42の厚さは、第3の位置から第4の位置に向けて単調増加する。
【0068】
例えば、第1の接続層41の厚さは、位置P1から位置P2に向けて単調増加する。また、例えば、第2の接続層42の厚さは、位置P3から位置P4に向けて単調増加する。
【0069】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続方法の一例について説明する。
【0070】
図4図5図6図7図8、及び、図9は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の説明図である。図4は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導線材、第2の超電導線材、及び第3の超電導線材の準備の説明図である。図5は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の保護層、第2の保護層、及び第3の保護層の除去の説明図である。図6は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第3の超電導層の上へのスラリーの塗布の説明図である。図7は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第3の超電導層、及び、第2の超電導層と第3の超電導層を向き合わせた状態の説明図である。図8は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第3の超電導層、及び、第2の超電導層と第3の超電導層を重ね合わせた状態の説明図である。図9は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第3の超電導層、及び、第2の超電導層と第3の超電導層を加圧した状態の説明図である。
【0071】
最初に、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を準備する(図4)。
【0072】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、及び第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23、及び第2の保護層24を備える。第3の超電導線材30は、第3の基板31、第3の中間層32、第3の超電導層33、及び第3の保護層34を備える。
【0073】
第1の超電導線材10は、例えば、長手方向に湾曲している。また、第2の超電導線材20は、例えば、長手方向に湾曲している。第3の超電導線材30は、例えば、湾曲していない平板形状である。
【0074】
次に、第1の超電導層13の上の第1の保護層14を一部除去する。また、第2の超電導層23の上の第2の保護層24を一部除去する。さらに、第3の超電導層33の上の第3の保護層34を除去する(図5)。第1の保護層14、第2の保護層24、及び第3の保護層34は、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。
【0075】
次に、スラリー39を作製する。スラリー39は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。
【0076】
スラリー39は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む粒子を含む。また、スラリー39は、例えば、希土類元素(RE)と酸素(O)を含む第1の粒子、バリウム(Ba)と酸素(O)を含む第2の粒子、及び、銅(Cu)と酸素(O)を含む第3の粒子を含む。
【0077】
スラリー39は、例えば、焼結助剤及び増粘剤を含む。焼結助剤は、例えば、アルギン酸ナトリウムである。
【0078】
次に、第3の超電導層33の上に、スラリー39を塗布する(図6)。
【0079】
次に、例えば、第3の超電導線材30を反転し、スラリー39を間に挟んで、第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33を向き合わせる(図7)。そして、第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33を重ね合わせる(図8)。
【0080】
次に、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33を、加圧する(図9)。例えば、重ね合わせた部分に錘を乗せることで加圧する。例えば、プレス機を用いて加圧する。例えば、加圧のための冶具を作製し、挟み込むことで加圧することもできる。冶具を用いた場合には、接続の後に冶具を取り外しても良いし、冶具を取り付けたままでも良い。冶具を取り外すとコイルを巻回しやすくなるため、取り外すことが好ましい。
【0081】
第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33を、加圧する際、第3の超電導線材30が長手方向に湾曲しないようにする。
【0082】
次に、第1の温度で第1の熱処理を行う。第1の熱処理は、第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33が加圧された状態で行う。
【0083】
第1の温度は、例えば、500℃以上850℃以下である。第1の温度は、例えば、600℃以上800℃以下が好ましい。第1の熱処理は、例えば、大気圧で行う。第1の熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。
【0084】
第1の熱処理により、スラリー39中の粒子が反応又は焼結する。
【0085】
第1の熱処理により、例えば、スラリー39中に含まれていた有機物が脱離する。第1の熱処理により、例えば、スラリー39中に含まれていた炭素(C)が脱離する。
【0086】
次に、第2の温度で第2の熱処理を行う。第2の熱処理は酸素を含む雰囲気中で行われる。第2の熱処理は、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で行われる。第2の熱処理は酸素アニールである。
【0087】
第2の温度は、例えば、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、400℃以上600℃以下である。第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度よりも低い温度まで冷却してから、第2の温度に再加熱して行っても良い。また、第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度まで連続的に降温させて行っても良い。
【0088】
第2の熱処理は、例えば、大気圧中で行われる。第2の熱処理の雰囲気の酸素分圧は、例えば、30%以上である。
【0089】
第1の熱処理及び第2の熱処理により、第1の接続層41及び第2の接続層42が形成される。第1の接続層41及び第2の接続層42に酸化物超電導体の結晶が形成される。
【0090】
第1の接続層41及び第2の接続層42に形成される結晶は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。結晶は、希土類酸化物である。結晶は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。結晶は、例えば、(RE)BaCuδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0091】
以上の方法により、第1の超電導層13と第3の超電導層33とが接続される。また、第2の超電導層23と第3の超電導層33とが接続される。以上の方法により、第1の実施形態の接続構造50が製造される。
【0092】
なお、スラリー39に替えて、例えば、楔形状をした酸化物超電導層のバルク体を用いて第1の接続層41及び第2の接続層42を形成することも可能である。
【0093】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続構造50、及び、第1の実施形態の超電導線材100の作用及び効果について説明する。
【0094】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0095】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を、接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗が求められる。
【0096】
図10は、比較例の超電導線材の模式断面図である。図10は、図1に対応する図である。
【0097】
図11は、比較例の超電導層の接続構造の模式断面図である。図11は、図3に対応する図である。
【0098】
比較例の超電導線材900は、第1の実施形態の超電導線材100に対し、超電導層の接続構造59の構造が異なる。比較例の超電導層の接続構造59は、第1の実施形態の超電導層の接続構造50に対し、第1の接続層41及び第2の接続層42の厚さが一定である点で、異なる。
【0099】
比較例の接続構造59では、第1の接続層41の第1の位置の厚さは、第1の位置よりも第2の超電導層23からの距離が遠い第2の位置の厚さと等しい。また、第2の接続層42の第3の位置の厚さは、第3の位置よりも第1の超電導層13からの距離が遠い第4の位置の厚さと等しい。
【0100】
例えば、第1の接続層41の位置P1の厚さ(図11中のd1)は、第1の接続層41の位置P2の厚さ(図11中のd2)と等しい。また、例えば、第2の接続層42の位置P3の厚さ(図11中のd3)は、第2の接続層42の位置P4の厚さ(図11中のd4)と等しい。
【0101】
以下、比較例の超電導層の接続構造59の製造について説明する。
【0102】
比較例の超電導層の接続構造59を製造する際、例えば、準備する第3の超電導線材30の形状が、第1の実施形態の場合と同様、湾曲していない平板形状であると仮定する(図4参照)。
【0103】
第1の実施形態の接続構造50の製造方法で述べたように、接続構造59を製造する際、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33、及び、第2の超電導層23と第3の超電導層33を、加圧した状態で加熱する(図9参照)。比較例の接続構造59の製造方法では、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33の形状が、第1の超電導層13の湾曲形状に沿うように加圧する。同様に、重ね合わせた第2の超電導層23と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33の形状が、第2の超電導層23の湾曲形状に沿うように、加圧する。
【0104】
第3の超電導層33を湾曲させるように加圧し、その状態で加熱することで、第3の超電導層33に加わる曲げ応力が大きくなる。第3の超電導層33に加わる曲げ応力が大きくなることで、第3の超電導層33の中で結晶の歪や結晶欠陥が生じるおそれがある。第3の超電導層33に結晶の歪や結晶欠陥が生じると、第3の超電導層33の電気抵抗が増加するおそれがある。また、第3の超電導層33の臨界電流が低下するおそれがある。
【0105】
接続構造59の電気抵抗が増加したり、臨界電流が低下したりすると、例えば、超電導線材900に流せる電流量が低下するおそれがあり問題となる。また、超電導線材900を用いた超電導コイルのクエンチが生じたりするおそれがあり問題となる。
【0106】
第1の実施形態の接続構造50を製造する際は、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させない。同様に、重ね合わせた第2の超電導層23と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させない。
【0107】
したがって、第3の超電導層33に加わる曲げ応力は小さく、第3の超電導層33の中で結晶の歪や結晶欠陥が生じることが抑制される。したがって、第3の超電導層33の電気抵抗の増加が抑制される。また、第3の超電導層33の臨界電流の低下が抑制される。よって、低い電気抵抗を実現できる超電導層の接続構造50が実現できる。また、高い臨界電流を実現できる超電導層の接続構造50が実現できる。
【0108】
超電導層の接続構造50において、第3の超電導層33は、酸化物半導体層であることが好ましい。比較的、曲げ応力に対する耐性が弱い酸化物半導体層において、第1の実施形態の超電導層の接続構造50は特に効果がある。
【0109】
超電導層の接続構造50において、第1の接続層41の第2の位置の厚さは、第1の接続層41の第1の位置の厚さの2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。また、超電導層の接続構造50において、第2の接続層42の第4の位置の厚さは、第2の接続層42の第3の位置の厚さの2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。
【0110】
第2の位置の厚さを厚くすることで、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくすることができる。また、第4の位置の厚さを厚くすることで、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくすることができる。
【0111】
第1の位置の厚さ薄くすることで、第1の接続層41の電気抵抗を小さくすることができる。また、第3の位置の厚さを薄くすることで、第2の接続層42の電気抵抗を小さくすることができる。
【0112】
超電導層の接続構造50において、第1の接続層41の位置P2の厚さd2は、第1の接続層41の位置P1の厚さd1の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。また、超電導層の接続構造50において、第2の接続層42の位置P4の厚さd4は、第2の接続層42の位置P3の厚さd3の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。
【0113】
厚さd2を厚くすることで、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくすることができる。また、厚さd4を厚くすることで、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくすることができる。
【0114】
厚さd1を薄くすることで、第1の接続層41の電気抵抗を小さくすることができる。また、厚さd3を薄くすることで、第2の接続層42の電気抵抗を小さくすることができる。
【0115】
図12は、第1の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図である。図12は、図1に対応する図である。第1の実施形態の超電導線材の変形例は、超電導線材101である。第1の実施形態の超電導層の接続構造の変形例は、超電導層の接続構造51である。
【0116】
(変形例)
変形例の超電導線材101は、第1の接続層41と第2の接続層42は連続する点で、第1の実施形態の100と異なる。変形例の接続構造51は、第1の接続層41と第2の接続層42は連続する点で、第1の実施形態の接続構造50と異なる。
【0117】
以上、第1の実施形態の導電層の接続構造、及び導電線材、及びそれらの変形例によれば、低い電気抵抗を実現できる。
【0118】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の導電層の接続構造は、第3の導電部材は、第1の方向に第3の導電層の側が凹となるように湾曲する点で、第1の実施形態の導電層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0119】
第2の実施形態の導電線材は、超電導線材200である。第2の実施形態の導電層の接続構造は、超電導層の接続構造52である。超電導線材200は、導電線材の一例である。超電導層の接続構造52は、導電層の接続構造の一例である。
【0120】
図13は、第2の実施形態の超電導線材の模式断面図である。
【0121】
超電導線材200は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。超電導層の接続構造52は、第3の超電導線材30を用いて、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20を接続する。
【0122】
第1の接続層41の第1の位置の厚さは、第1の位置よりも第2の超電導層23からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い。また、第2の接続層42の第3の位置の厚さは、第3の位置よりも第1の超電導層13からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い。
【0123】
例えば、第1の超電導層13の第2の超電導層23に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図13中のP1)は、第1の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第1の超電導層13と対向する側の端部と第1の超電導層13との間の位置(図13中のP2)は、第2の位置の一例である。
【0124】
例えば、第2の超電導層23の第1の超電導層13に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図13中のP3)は、第3の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第2の超電導層23と対向する側の端部と第2の超電導層23との間の位置(図13中のP4)は、第4の位置の一例である。
【0125】
例えば、第1の接続層41の位置P1の厚さは、第1の接続層41の位置P2の厚さよりも薄い。また、例えば、第2の接続層42の位置P3の厚さは、第2の接続層42の位置P4の厚さよりも薄い。
【0126】
第1の超電導線材10は、第1の方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、長手方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、第1の基板11に対して第1の超電導層13の側が凸となるように湾曲する。第1の超電導線材10は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0127】
第2の超電導線材20は、第1の方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、長手方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、第2の基板21に対して第2の超電導層23の側が凸となるように湾曲する。第2の超電導線材20は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0128】
第3の超電導線材30は、第1の方向に湾曲する。第3の超電導線材30は、長手方向に湾曲する。第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凹となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第3の基板31の側が凸となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第1の超電導線材10に対向する側が凹となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第2の超電導線材20に対向する側が凹となるように湾曲する。
【0129】
第3の超電導線材30の曲率半径は、例えば、第1の超電導線材10の曲率半径よりも大きい。また、第3の超電導線材30の曲率半径は、例えば、第2の超電導線材20の曲率半径よりも大きい。
【0130】
第2の実施形態の接続構造51を製造する際、例えば、準備する第3の超電導線材30の形状が、第1の実施形態の場合と同様、湾曲していない平板形状であると仮定する(図4参照)。
【0131】
第2の実施形態の接続構造51を製造する際は、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させる程度を、比較例の接続構造59に比べ小さくできる。同様に、重ね合わせた第2の超電導層23と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させる程度を比較例の接続構造59に比べ小さくできる。
【0132】
したがって、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくでき、第3の超電導層33の中で結晶の歪や結晶欠陥が生じることが抑制される。したがって、第3の超電導層33の電気抵抗が抑制される。また、第3の超電導層33の臨界電流の低下が抑制される。よって、低い電気抵抗を実現できる超電導層の接続構造52が実現できる。また、高い臨界電流を実現できる超電導層の接続構造52が実現できる。
【0133】
以上、第2の実施形態の導電層の接続構造、及び導電線材によれば、低い電気抵抗を実現できる。
【0134】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の導電層の接続構造は、第3の導電部材は、第1の方向に第3の導電層の側が凸となるように湾曲する点で、第1の実施形態の導電層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0135】
第3の実施形態の導電線材は、超電導線材300である。第3の実施形態の導電層の接続構造は、超電導層の接続構造53である。超電導線材300は、導電線材の一例である。超電導層の接続構造53は、導電層の接続構造の一例である。
【0136】
図14は、第3の実施形態の超電導線材の模式断面図である。
【0137】
超電導線材300は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。超電導層の接続構造53は、第3の超電導線材30を用いて、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20を接続する。
【0138】
第1の接続層41の第1の位置の厚さは、第1の位置よりも第2の超電導層23からの距離が遠い第2の位置の厚さよりも薄い。また、第2の接続層42の第3の位置の厚さは、第3の位置よりも第1の超電導層13からの距離が遠い第4の位置の厚さよりも薄い。
【0139】
例えば、第1の超電導層13の第2の超電導層23に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図14中のP1)は、第1の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第1の超電導層13と対向する側の端部と第1の超電導層13との間の位置(図14中のP2)は、第2の位置の一例である。
【0140】
例えば、第2の超電導層23の第1の超電導層13に対向する側の端部と第3の超電導層33との間の位置(図14中のP3)は、第3の位置の一例である。また、第3の超電導層33の第2の超電導層23と対向する側の端部と第2の超電導層23との間の位置(図14中のP4)は、第4の位置の一例である。
【0141】
例えば、第1の接続層41の位置P1の厚さは、第1の接続層41の位置P2の厚さよりも薄い。また、例えば、第2の接続層42の位置P3の厚さは、第2の接続層42の位置P4の厚さよりも薄い。
【0142】
第1の超電導線材10は、第1の方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、長手方向に湾曲する。第1の超電導線材10は、第1の基板11に対して第1の超電導層13の側が凸となるように湾曲する。第1の超電導線材10は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0143】
第2の超電導線材20は、第1の方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、長手方向に湾曲する。第2の超電導線材20は、第2の基板21に対して第2の超電導層23の側が凸となるように湾曲する。第2の超電導線材20は、第3の超電導線材30に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0144】
第3の超電導線材30は、第1の方向に湾曲する。第3の超電導線材30は、長手方向に湾曲する。第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凸となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第3の基板31の側が凹となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第1の超電導線材10に対向する側が凸となるように湾曲する。第3の超電導線材30は、第2の超電導線材20に対向する側が凸となるように湾曲する。
【0145】
第3の実施形態の接続構造53を製造する際、例えば、準備する第3の超電導線材30の形状が、第1の超電導線材10及び第2の超電導線材20と同様に、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凸となるように湾曲した形状であると仮定する。すなわち、例えば、第3の超電導線材30が、第1の超電導線材10及び第2の超電導線材20と同様の湾曲方向となるような製造方法で製造された場合を仮定する。
【0146】
第3の実施形態の接続構造53を製造する際は、重ね合わせた第1の超電導層13と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させる程度を、比較例の接続構造59に比べ小さくできる。同様に、重ね合わせた第2の超電導層23と第3の超電導層33を加圧する際、第3の超電導層33を湾曲させる程度を比較例の接続構造59に比べ小さくできる。
【0147】
したがって、第3の超電導層33に加わる曲げ応力を小さくでき、第3の超電導層33の中で結晶の歪や結晶欠陥が生じることが抑制される。したがって、第3の超電導層33の電気抵抗が抑制される。また、第3の超電導層33の臨界電流の低下が抑制される。よって、低い電気抵抗を実現できる超電導層の接続構造53が実現できる。また、高い臨界電流を実現できる超電導層の接続構造53が実現できる。
【0148】
以上、第3の実施形態の導電層の接続構造、及び導電線材によれば、低い電気抵抗を実現できる。
【0149】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の導電層の接続構造は、第1の導電部材と第2の導電部材との間に存在する補強材を備える点で、第1の実施形態の導電層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0150】
第4の実施形態の導電線材は、超電導線材400である。第4の実施形態の導電層の接続構造は、超電導層の接続構造54である。超電導線材400は、導電線材の一例である。超電導層の接続構造54は、導電層の接続構造の一例である。
【0151】
図15は、第4の実施形態の超電導線材の第1の方向に平行な模式断面図である。図16は、第4の実施形態の超電導線材の第1の方向に垂直な模式断面図である。図16は、図15のAA’断面である。
【0152】
超電導線材400は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。超電導層の接続構造54は、第3の超電導線材30を用いて、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20を接続する。
【0153】
第3の超電導線材30は、第1の方向に湾曲していない。第3の超電導線材30は、長手方向に湾曲していない。
【0154】
接続構造54の外周部に、接続構造54を囲むように、補強材70が設けられる。補強材70は、接続構造54の機械的強度を向上する機能を有する。
【0155】
補強材70は、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20との間に設けられる。補強材70は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を囲む。
【0156】
補強材70は、例えば、金属又は樹脂である。補強材70は、例えば、はんだである。補強材70は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0157】
(第1の変形例)
第4の実施形態の超電導線材の第1の変形例は、超電導線材401である。第4の実施形態の超電導層の接続構造の第1の変形例は、超電導層の接続構造55である。
【0158】
図17は、第4の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図である。図17は、図15に対応する図である。
【0159】
第1の変形例の超電導線材401は、第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凹となるように湾曲する点で、第4の実施形態の超電導線材400と異なる。第1の変形例の接続構造55は、第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凹となるように湾曲する点で、第4の実施形態の接続構造54と異なる。
【0160】
(第2の変形例)
第4の実施形態の超電導線材の第2の変形例は、超電導線材402である。第4の実施形態の超電導層の接続構造の第2の変形例は、超電導層の接続構造56である。
【0161】
図18は、第4の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図である。図18は、図15に対応する図である。
【0162】
第2の変形例の超電導線材402は、第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凸となるように湾曲する点で、第4の実施形態の超電導線材400と異なる。第2の変形例の接続構造56は、第3の超電導線材30は、第3の基板31に対して第3の超電導層33の側が凸となるように湾曲する点で、第4の実施形態の接続構造54と異なる。
【0163】
以上、第4の実施形態の導電層の接続構造、及び導電線材、及びそれらの変形例によれば、低い電気抵抗を実現できる。
【0164】
(第5の実施形態)
第5の実施形態のコイルは、第1ないし第4の実施形態の導電線材を備える。以下、第1ないし第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0165】
第5の実施形態のコイルは、超電導コイル700である。超電導コイル700は、コイルの一例である。
【0166】
図19は、第5の実施形態の超電導コイルの模式斜視図である。図20は、第5の実施形態の超電導コイルの模式断面図である。
【0167】
超電導コイル700は、例えば、NMR、MRI、重粒子線治療器、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両などの超電導機器の磁場発生用のコイルとして用いられる。
【0168】
超電導コイル700は、巻枠110、第1の絶縁板111a、第2の絶縁板111b、及び巻線部112を備える。巻線部112は、超電導線材120と、線材間層130を有する。
【0169】
図19は、第1の絶縁板111a、及び第2の絶縁板111bを除いた状態を示す。
【0170】
巻枠110は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。超電導線材120は、例えば、テープ形状である。超電導線材120は、図19に示すように、巻回中心Cを中心に、同心円状のいわゆるパンケーキ形状に巻枠110に巻き回される。
【0171】
線材間層130は、超電導線材120を固定する機能を有する。線材間層130は、超電導線材120が、超電導機器の使用中の振動や、互いの摩擦により破壊されることを抑制する機能を有する。
【0172】
第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、巻線部112を外部に対して絶縁する機能を有する。巻線部112は、第1の絶縁板111aと第2の絶縁板111bとの間に位置する。
【0173】
超電導線材120には、第1ないし第4の実施形態の超電導線材が用いられる。
【0174】
以上、第5の実施形態によれば、低い電気抵抗を備える超電導線材を備えることで、特性の向上した超電導コイルが実現できる。
【0175】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の機器は、第5の実施形態のコイルを備えた機器である。以下、第6の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0176】
第6の実施形態の機器は、超電導機器である。第6の実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器800である。重粒子線治療器800は、機器の一例である。
【0177】
図21は、第6の実施形態の超電導機器のブロック図である。図21は、第6の実施形態の超電導機器のブロック図である。
【0178】
重粒子線治療器800は、入射系80、シンクロトロン加速器82、ビーム輸送系84、照射系86、制御系88を備える。
【0179】
入射系80は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器82に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系80は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
【0180】
シンクロトロン加速器82は、入射系80から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器82に、第5の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0181】
ビーム輸送系84は、シンクロトロン加速器82から入射された炭素イオンビームを照射系86まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系84は、例えば、偏向電磁石を有する。
【0182】
照射系86は、ビーム輸送系84から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系86は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第5の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0183】
制御系88は、入射系80、シンクロトロン加速器82、ビーム輸送系84、及び照射系86の制御を行う。制御系88は、例えば、コンピュータである。
【0184】
第6の実施形態の重粒子線治療器800は、シンクロトロン加速器82及び回転ガントリーに、第5の実施形態の超電導コイル700が用いられる。したがって、特性の優れた重粒子線治療器800が実現される。
【0185】
第6の実施形態では、超電導機器の一例として、重粒子線治療器800の場合を説明したが、超電導機器は、核磁気共鳴装置(NMR)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、超電導磁気浮上式鉄道車両、超電導航空機、又は、その他の超電導機器であっても構わない。
【実施例
【0186】
(実施例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBaCu7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を1.0cm、残りの2本を10cmとした。1.6cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0187】
粒径がサブミクロン程度のGdとBaCOとCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0188】
得られたスラリーを、上記1.0cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、1.0cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせた。
【0189】
1.0cmの超電導線材に接する面は平面で、10cmの超電導線材に接する面は長軸方向に250R(1/mm)の曲率を持つ治具で、重ね合わせた線材を上下から挟み込み、加圧した。
【0190】
治具に挟み込んだまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0191】
実施例1の接続構造は、図1に示す第1の実施形態の接続構造と同様の構造を備える。接続構造の接続層の位置P1と位置P2の厚さの差、及び、接続層の位置P3と位置P4の厚さの差は約50μmであった。
【0192】
接続後の超電導線材を250R(1/mm)の曲率のコイルに曲げて固定したのち、両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定した。93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。実施例1の接続構造の、超電導転移後の臨界電流値を基準値1.0として、以下、実施例、比較例において相対臨界電流値を示す。
【0193】
(実施例2)
ハステロイ基材上に中間層とGdBaCu7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を1.0cm、残りの2本を10cmとした。1.6cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0194】
粒径がサブミクロン程度のGdとBaCOとCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0195】
得られたスラリーを、上記1.0cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、1.0cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせた。
【0196】
1.0cmの超電導線材に接する面は平面で、10cmの超電導線材に接する面は長軸方向に500R(1/mm)の曲率を持つ治具で、重ね合わせた線材を上下から挟み込み、加圧した。
【0197】
治具に挟み込んだまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0198】
実施例2の接続構造は、図1に示す第1の実施形態の接続構造と同様の構造を備える。接続構造の接続層の位置P1と位置P2の厚さ、及び、接続層の位置P3と位置P4の厚さの差は約25μmであった。
【0199】
治具の曲率が異なる以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、接続後の超電導線材を径250R(1/mm)の曲率のコイルに曲げて固定したのち、測定をおこなった。実施例2の接続構造では、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0200】
(実施例3)
ハステロイ基材上に中間層とGdBaCu7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を1.0cm、残りの2本を10cmとした。1.6cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0201】
粒径がサブミクロン程度のGdとBaCOとCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0202】
得られたスラリーを、上記1.0cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、1.0cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせた。
【0203】
1.0cmの超電導線材に接する面、10cmの超電導線材に接する面ともに長軸方向に250R(1/mm)の曲率を持つ治具で、重ね合わせた線材を上下から挟み込み、加圧した。治具の湾曲する方向は、1.0cmの超電導線材に接する面と、10cmの超電導線材に接する面とで反対方向となるようにした。
【0204】
治具に挟み込んだまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0205】
実施例3の接続構造は、図14に示す第3の実施形態の接続構造と同様の構造を備える。接続構造の接続層の位置P1と位置P2の厚さの差は約100μmであった。
【0206】
治具の曲率が異なる以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、接続後の超電導線材を250R(1/mm)の曲率のコイルに曲げて固定したのち、測定をおこなった。実施例3の接続構造では、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0207】
(比較例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBaCu7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を1.6cm、残りの2本を10cmとした。1.6cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0208】
粒径がサブミクロン程度のGdとBaCOとCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0209】
得られたスラリーを、上記1.0cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、1.0cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0210】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0211】
接続後の超電導線材を、250R(1/mm)の曲率のコイルに曲げて固定したのち、両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定した。93K以下で超電導転移を確認した。実施例1よりも温度変化に対して電気抵抗の変化が緩やかになり転移幅は約3Kに広がった。相対臨界電流値は0.8に低下した。
【0212】
比較例の接続構造は、少なくともコイルに固定した状態では、図10に示す接続構造と同様の構造を備える。接続構造の接続層の位置P1と位置P2の厚さは等しく、接続層の位置P3と位置P4の厚さは等しかった。
【0213】
(実施例4)
実施例1の手順に従い接続構造を形成した後、接続後の超電導線材を250R(1/mm)の曲率のコイルに曲げた状態で、接続構造を含む長さ2.0cmをエポキシ樹脂に埋め込んだ。
【0214】
補強を施した超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定した。93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0215】
実施例4の接続構造は、図15に示す第4の実施形態の接続構造と同様の構造を備える。
【0216】
第1ないし第4の実施形態では、導電層が超電導層である場合を例に説明したが、導電層は、例えば、常電導層であっても構わない。例えば、酸化物の常電導層のように曲げ応力に対する耐性が低い導電層の場合に、第1ないし第4の実施形態と同様の接続構造は効果的である。
【0217】
第1ないし第4の実施形態では、第1の接続層41及び第2の接続層42が超電導層である場合を例に説明したが、導電層は、例えば、常電導層であっても構わない。第1の接続層41及び第2の接続層42は、例えば、はんだ等の金属層であっても構わない。
【0218】
第5の実施形態では、超電導コイルを例に説明したが、超電導コイルに替えて、超電導を用いないコイルとすることも可能である。
【0219】
第6の実施形態では、超電導機器を例に説明したが、超電導機器に替えて、超電導を用いない機器とすることも可能である。
【0220】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0221】
10 第1の超電導線材
11 第1の基板
13 第1の超電導層
20 第2の超電導線材
21 第2の基板
23 第2の超電導層
30 第3の超電導線材
31 第3の基板
33 第3の超電導層
41 第1の接続層
42 第2の接続層
50 接続構造
70 補強材
100 超電導線材
700 超電導コイル
800 重粒子線治療器
図1
図2
図3
図4
図5
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