(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
E06B7/14
(21)【出願番号】P 2021131680
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】西野 智
(72)【発明者】
【氏名】合歡垣 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 寿志
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-55189(JP,U)
【文献】特開平9-296664(JP,A)
【文献】特開2002-54364(JP,A)
【文献】実開平3-86912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/04
E06B 1/56-1/60
E06B 7/12-7/14
E06B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ枠とコーナー止水部品とを備え、コーナー止水部品は、サッシ枠の縦枠と下枠のコーナー部の外周側に設けてあり、縦枠と下枠との接合部から漏水した水を溜める部分を設けてあることを特徴とする開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、躯体開口部にサッシ枠を室外側から納めて構成される開口部建材が知られている。かかる開口部建材においては、施工性を向上したいという要望があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、開口部建材の施工性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による開口部建材は、サッシ枠とコーナー止水部品とを備え、コーナー止水部品は、サッシ枠の縦枠と下枠のコーナー部の外周側に設けてあり、縦枠と下枠との接合部から漏水した水を溜める部分を設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による開口部建材は、サッシ枠とコーナー止水部品とを備え、コーナー止水部品は、サッシ枠の縦枠と下枠のコーナー部の外周側に設けてあり、縦枠と下枠との接合部から漏水した水を溜める部分を設けてあるので、コーナー止水部品を取付けたサッシ枠を躯体開口部に室外側から納めるだけで、縦枠と下枠との接合部から漏水した水が躯体に浸入するのを防ぐことができるので、施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図2の一方の縦枠側を拡大して示す横断面図である。
【
図2】本発明の開口部建材の一実施形態を示す横断面図である。
【
図4】縦枠と下枠とのコーナー部を斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】縦枠と下枠とのコーナー部を斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】(a)はコーナー止水部品兼位置調整部品の平面図であり、(b)は同正面図、(c)は同側面図である。
【
図7】サッシ枠を躯体開口部に室外側から納めるときの様子を順に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~5は、本発明に係る開口部建材の一実施形態を示している。本開口部建材は、木造住宅の引違い窓に適用したものであって、
図2,3に示すように、躯体開口部7に取付けられるサッシ枠1と、サッシ枠1内に引違い状に開閉自在に設けた外障子8a及び内障子8bと、外障子8aよりも室外側に上下枠9,4に沿って摺動可能に設けた網戸10を備えている。
【0008】
サッシ枠1は、
図2,3に示すように、アルミ形材よりなる上枠9と下枠4と左右の縦枠3,3を四周枠組みして構成してある。より詳細には、サッシ枠1は、上枠9及び下枠4の長手方向の端面をゴム製のシーラー11(
図1参照)を介して縦枠3の上下端部の内周側面に突き当て、縦枠3の外周側から挿入したネジ12を上枠9及び下枠4のタッピングホール13(
図3参照)に捻じ込んで枠組みされている。サッシ枠1は、いわゆる半外付けの枠となっており、室内外方向の中間位置に躯体14への固定用のフィン15が外周側に突出して設けてある。
サッシ枠1は、上下方向及び左右方向の外寸が、躯体開口部4の上下寸法及び左右寸法より小さくなっており、サッシ枠1を躯体開口部4に納めると、
図1~3に示すように、左右の縦枠3,3と躯体開口部7の側縁7aとの間、上枠9と躯体開口部7の上縁7bとの間に隙間Sができるようになっている。
【0009】
サッシ枠1のフィン15よりも室内側の縦枠3と下枠4とのコーナー部外周側には、
図1,4,5に示すように、コーナー止水部品兼位置調整部品2が取付けてある。コーナー止水部品兼位置調整部品2は、吸水性のゴム又は樹脂で一体成形されており、サッシ枠1のフィン15の室内側面に当接する室外側壁16と、下枠4の外周側面に沿う底壁17と、縦枠3の外周側面に当接する側壁18と、下枠4の室内側面に当接する室内側壁19を有している。コーナー止水部品兼位置調整部品2の材質は、限定されるものではないが、ゴム系、PP、PE等とすることができる。
【0010】
底壁17は、
図3に示すように、水平な板状となっており、下枠4の下端4aが底壁17の上面に当接し、底壁17の下面は躯体開口部7の下縁7cに当接しており、底壁17の上面と下枠4の下面との間の空間が、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水を溜める部分5となっている。
側壁18の内周側面には、
図1に示すように、縦枠3の外周側面の突条20及びねじ頭21を逃がす溝22が形成してあるとともに、縦枠3の室内側端部に形成された突条23と嵌合する溝24が形成してある。室内側の溝24内には、弾性変形して縦枠3の突条23を室内側から押す突片25を有しており、これによりコーナー止水部品兼位置調整部品2は、縦枠3のフィン15と室内側端部の突条23との間で突っ張る形で固定されている。コーナー止水部品兼位置調整部品2は、縦枠3の下端の小口からスライドさせて縦枠3に嵌合取付けしてある。
側壁18の外周側面には、外周側に向けて突出する弾性片6a,6b,6cが室内外方向に間隔を開けて複数設けてある。各弾性片6a,6b,6cは、サッシ枠1を躯体開口部7に納める前の状態では、
図4,5,6に示すように、室外側に弓状に曲がった形で外周側に突出しており、室外側に位置するものほど外周側に大きく突出している。図示のものは、弾性片6a,6b,6cが3つ形成してあり、室内側の弾性片6aは外周側への突出高さが一番低く、室外側の弾性片6cは外周側への突出高さが一番高く、真ん中の弾性片6bはそれらの中間の高さとなっている。
【0011】
図7は、コーナー止水部品兼位置調整部品2を取付けたサッシ枠1を躯体開口部7に室外側から納めるときの様子を示している。
図7(a)に示すように、サッシ枠1を躯体開口部7の室外側から室内側に移動させると、
図7(b)に示すように、最初に室内側の弾性片6aが躯体開口部7の側縁7aに押されて室外側に倒れるような形で弾性変形する。次に、
図7(c)に示すように、真ん中の弾性片6bが躯体開口部7の側縁7aに押されて室外側に倒れるような形で弾性変形する。最後に、
図7(d)に示すように、室内側の弾性片6cが躯体開口部7の側縁7aに押されて室外側に倒れるような形で弾性変形する。
このように複数の弾性片6a,6b,6cが順次弾性変形することで、左右の縦枠3,3と躯体開口部7の側縁7aとの間の隙間Sが同じ大きさになるため、サッシ枠1が躯体開口部7の左右方向の中央位置に位置決めされる。室内側の弾性片6aは突出高さが低く、室外側のものほど突出高さを高くしてあることで、サッシ枠1を躯体開口部7に納める際の抵抗が最初は小さく、サッシ枠1を室内側に移動するにつれて段々大きくなるため、サッシ枠1を躯体開口部7にスムーズに且つ正確に納めることができる。
その後は、通常のサッシを施工する場合と同様に、サッシ枠1の対角寸法がほぼ同じになっているか、サッシ枠1にねじれや倒れ等がないか確認した上、サッシ枠1を躯体14に図示しないねじで固定する。
【0012】
本開口部建材は、先に述べたように、サッシ枠1の縦枠3と下枠4とのコーナー部外周側にコーナー止水部品兼位置調整部品2が取付けてあることで、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水が躯体14に浸入するのを防ぐことができる。すなわち、シーラー11の施工不良や経年劣化等により、縦枠3と下枠4との接合部から漏水すると、その水はコーナー止水部品兼位置調整部品2の底壁17の上面と下枠4の下面との間の空間5に溜まる。コーナー止水部品兼位置調整部品2は、全体が水を吸収し得る材質で形成されているため、その水は同部品2の底壁17等に吸収されるから、躯体14まで水が浸入しない。吸収された水は、そのうちに蒸発する。
なお、従来は、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水が躯体14に浸入するのを防ぐために、躯体開口部7の側縁7aと下縁7cとにまたがるようにコーナー部に防水シートを予め取付けている。本開口部建材は、サッシ枠1に上記のようにコーナー止水部品兼位置調整部品2が取付けてあることで、そのような防水シートを省いたとしても躯体14への水の浸入を防止できる。
【0013】
上述の実施形態では、コーナー止水部品兼位置調整部品2全体を水を吸収し得る材質で形成していたが、全体を水を吸収しない樹脂等で形成し、縦枠3と下枠4との接合部に面する部分にだけ吸水性のシートを貼るなどして、水を吸収する部分を部分的に設けることもできる。また、水を吸収する部分を設けるのではなく、縦枠3と下枠4との接合部に面する底壁17上に凹部を形成し、該凹部に縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水が溜まるようにしてもよい。
【0014】
以上に述べたように本開口部建材は、サッシ枠1とコーナー止水部品(コーナー止水部品兼位置調整部品)2とを備え、コーナー止水部品2は、サッシ枠1の縦枠3と下枠4のコーナー部の外周側に設けてあり、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水を溜める部分5を設けてあるので、コーナー止水部品2を取付けたサッシ枠1を躯体開口部7に室外側から納めるだけで、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水が躯体14に浸入するのを防ぐことができるので、施工性が向上する。
コーナー止水部品2は、縦枠3と下枠4との接合部に面して水を吸収する部分を設けてあることで、縦枠3と下枠4との接合部から漏水した水がこの部分で吸収されるので、躯体14側に水が浸入するのを確実に防ぐことができる。
【0015】
また本開口部建材は、サッシ枠1と位置調整部品(コーナー止水部品兼位置調整部品)2とを備え、位置調整部品2は、縦枠3の外周側面に取付けてあり、外周側に向けて突出する弾性片6a,6b,6cを室内外方向に間隔をあけて複数設けてあるので、サッシ枠1を躯体開口部7に室外側から納めると、位置調整部品2の弾性片6a,6b,6cが弾性変形して躯体開口部7の側縁7aを押すことで、サッシ枠1が躯体開口部7の左右方向の中央位置に位置決めされ、しかも室内側の弾性片6aよりも室外側の弾性片6cの方が外周側に大きく突出していることで、サッシ枠1を室外側から躯体開口部7に納めるのが容易であるため、施工性が向上する。
位置調整部品2は、縦枠3の外周側面に当接する部分(側壁)18と、横枠(下枠)4の外周側面に当接する部分(底壁)17を有し、縦枠3の小口からスライドさせて嵌合取付けしてあるので、工場でサッシ枠1を枠組みした後に位置調整部品2を簡単に取付けることができ、しかもサッシ枠1を縦にしても位置調整部品2が脱落しないので、サッシ枠1を運ぶ間に位置調整部品2が外れることがない。
【0016】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。サッシ枠の形状、材質は、適宜変更することができる。コーナー止水部品は、縦枠と下枠との接合部から漏水した水を溜める部分が設けてあればよく、具体的な形状、材質は、適宜変更することができる。コーナー止水部品は、必ずしも位置調整部品を兼ねるものでなくてもよい。本発明は、引違い窓に限らず、あらゆる窓種に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 サッシ枠
2 コーナー止水部品兼位置調整部品(コーナー止水部品)
3 縦枠
4 下枠
5 水を溜める部分
6a,6b,6c 弾性片