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特許7574155ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置
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  • 特許-ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置 図1
  • 特許-ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20241021BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241021BHJP
   B60G 13/04 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F15/02 B
B60G13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021134847
(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公開番号】P2023028882
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-149367(JP,A)
【文献】特開平5-321973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
F16F 15/02
B60G 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に連結される上側ブッシュと、
ダンパーのロッドの上端部に連結される下側ブッシュと、が、上下方向に並べられ、
前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュは、
前記ロッドの上端部を径方向の外側から囲う内筒と、
前記内筒を径方向の外側から囲う外筒と、
前記内筒および前記外筒を互いに連結する弾性体と、を備え、
前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュそれぞれの前記内筒は、上下方向に離れ、
前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュそれぞれの前記外筒の外周面に当接したマスと、
前記マスを介して、前記上側ブッシュ、および前記下側ブッシュを上下方向に加振する加振機構と、を備えている、ダンパー用アッパーマウント。
【請求項2】
前記加振機構は、
前記マスに設けられた、永久磁石およびコイルのうちのいずれか一方と、
前記マスを径方向の外側から囲い、上下動可能に設けられた可動子と、
前記可動子に設けられた、前記永久磁石および前記コイルのうちのいずれか他方と、を備えている、請求項1に記載のダンパー用アッパーマウント。
【請求項3】
ロッドを有するダンパーと、
請求項1または2に記載のダンパー用アッパーマウントと、
車体側と前記上側ブッシュとを連結するアッパーベースと、
前記ロッドの上端部と前記下側ブッシュとを連結するロアベースと、を備えている、サスペンション装置。
【請求項4】
ロッドを有するダンパーと、
請求項2に記載のダンパー用アッパーマウントと、
車体側と前記上側ブッシュとを連結するアッパーベースと、
前記ロッドの上端部と前記下側ブッシュとを連結するロアベースと、を備え、
前記ダンパー用アッパーマウントを径方向の外側から囲い、かつ弾性変形可能に形成された筒状のカバー体を備え、
前記カバー体における上端部および下端部はそれぞれ、前記アッパーベースおよび前記ロアベースに各別に連結され、
前記カバー体は、前記可動子が嵌合された装着部を備えている、サスペンション装置。
【請求項5】
前記アッパーベースに、下方に向けて突出し、前記可動子に上下方向で当接可能な上側ストッパが設けられ、
前記ロアベースに、上方に向けて突出し、前記可動子に上下方向で当接可能な下側ストッパが設けられている、請求項4に記載のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダンパーロッドの上端部に、内筒、外筒、および弾性体を備えたブッシュと、ばね-マス系のダイナミックダンパーと、が設けられたサスペンション装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-120769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のサスペンション装置では、ダイナミックダンパーが有するマスの慣性力によって、特定の周波数のロードノイズを減衰することはできるものの、この周波数以上の所定の周波数範囲にわたるロードノイズを減衰することが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、所定の周波数範囲にわたってロードノイズを減衰することができるダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のダンパー用アッパーマウントは、車体側に連結される上側ブッシュと、ダンパーのロッドの上端部に連結される下側ブッシュと、が、上下方向に並べられ、前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュは、前記ロッドの上端部を径方向の外側から囲う内筒と、前記内筒を径方向の外側から囲う外筒と、前記内筒および前記外筒を互いに連結する弾性体と、を備え、前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュそれぞれの前記内筒は、上下方向に離れ、前記上側ブッシュおよび前記下側ブッシュそれぞれの前記外筒の外周面に当接したマスと、前記マスを介して、前記上側ブッシュ、および前記下側ブッシュを上下方向に加振する加振機構と、を備えている。
【0007】
本発明のサスペンション装置は、ロッドを有するダンパーと、本発明のダンパー用アッパーマウントと、車体側と前記上側ブッシュとを連結するアッパーベースと、前記ロッドの上端部と前記下側ブッシュとを連結するロアベースと、を備えている。
【0008】
本発明によれば、上側ブッシュおよび下側ブッシュそれぞれの外筒の外周面に当接したマスが設けられているので、ロッドに伝わったタイヤからの振動が、下側ブッシュ、マス、および上側ブッシュをこの順に通過して、車体側に伝達されることとなる。
これにより、ロッドから下側ブッシュを通して上側ブッシュに至る振動の伝達経路にマスを位置させることが可能になり、マスの慣性力に起因した特定の周波数だけでなく、この周波数以上の所定の周波数範囲にわたるロードノイズを減衰することができる。
さらに、マスを介して上側ブッシュ、および下側ブッシュを上下方向に加振する加振機構を備えているので、入力振動に対して、例えば逆の位相等で、上側ブッシュ、および下側ブッシュを加振することが可能になり、加速度の大きい入力振動であっても減衰することができるとともに、マスの慣性力に起因した特定の周波数以上に限らず、これより低い周波数を含む広い周波数範囲にわたるロードノイズを減衰することができる。
【0009】
前記加振機構は、前記マスに設けられた、永久磁石およびコイルのうちのいずれか一方と、前記マスを径方向の外側から囲い、上下動可能に設けられた可動子と、前記可動子に設けられた、前記永久磁石および前記コイルのうちのいずれか他方と、を備えてもよい。
【0010】
加振機構が、永久磁石およびコイルと、可動子と、を備えているので、コイルに制御電流を供給し、可動子を上下方向に振動させると、マスを介して上側ブッシュ、および下側ブッシュに、可動子と逆位相の振動を生じさせることが可能になり、加速度の大きい入力振動、および広い周波数範囲にわたるロードノイズを確実に減衰することができる。
【0011】
ロッドを有するダンパーと、本発明のダンパー用アッパーマウントと、車体側と前記上側ブッシュとを連結するアッパーベースと、前記ロッドの上端部と前記下側ブッシュとを連結するロアベースと、を備え、前記ダンパー用アッパーマウントを径方向の外側から囲い、かつ弾性変形可能に形成された筒状のカバー体を備え、前記カバー体における上端部および下端部はそれぞれ、前記アッパーベースおよび前記ロアベースに各別に連結され、前記カバー体は、前記可動子が嵌合された装着部を備えてもよい。
【0012】
ダンパー用アッパーマウントを径方向の外側から囲う筒状のカバー体を備え、カバー体における上端部および下端部がそれぞれ、アッパーベースおよびロアベースに各別に連結されているので、マスと可動子との間に、ゴミ等が進入するのを防ぐことが可能になり、可動子の円滑な上下動を確実に確保することができる。
カバー体が、可動子が嵌合された装着部を備えているので、コイルに制御電流を供給する前の待機時等に、可動子がマスに対してぐらつくのを抑制することができる。
【0013】
前記アッパーベースに、下方に向けて突出し、前記可動子に上下方向で当接可能な上側ストッパが設けられ、前記ロアベースに、上方に向けて突出し、前記可動子に上下方向で当接可能な下側ストッパが設けられてもよい。
【0014】
アッパーベースおよびロアベースに、上側ストッパおよび下側ストッパが各別に設けられているので、可動子の上下方向の過剰な変位を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、所定の周波数範囲にわたってロードノイズを減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態として示したダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置の縦断面図である。
図2】第2実施形態として示したダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ダンパー用アッパーマウント、およびサスペンション装置の第1実施形態を、図1を参照しながら説明する。
サスペンション装置1は、ダンパー11と、ダンパー用アッパーマウント10と、アッパーベース12と、ロアベース13と、を備えている。
【0018】
ダンパー11は、上下方向に延び、ロッド21および不図示のシリンダを備えている。ロッド21およびシリンダは、共通軸と同軸に配設されている。
以下、この共通軸をロッド軸Oといい、上下方向から見てロッド軸Oに交差する方向を径方向といい、上下方向から見てロッド軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
ロッド21は、シリンダから上方に突出している。ロッド21のうち、シリンダから上方に突出した部分は、バンプストッパ22により径方向の外側から囲まれている。ロッド21のうち、バンプストッパ22から上方に突出した上端部に雄ねじ部が形成されている。ロッド21の上端部は、カラー23により径方向の外側から囲まれている。ロッド21の上端部のうち、カラー23から上方に突出した部分にナットNが螺着されている。ロッド21の上端部のうち、カラー23より下方に位置する部分に、上方を向く段部21aが形成されている。ロッド21の上端部のうち、カラー23より下方に位置する部分は、固定リング29の内側に挿入されている。固定リング29は、段部21aに配置されている。
【0020】
ナットNがロッド21の上端部に締め込まれ、カラー23の下端開口縁と、固定リング29の上面と、が、ロアベース13の後述する頂壁13aを上下方向に挟むことによって、ロッド21がロアベース13に固定されている。ロッド21およびカラー23は、アッパーベース12に対して非接触に設けられている。
【0021】
ロアベース13は、有頂筒状に形成されている。ロアベース13は、ロッド軸Oと同軸に配設されている。ロアベース13の頂壁13aに、ロッド21が挿入された貫通孔が形成されている。頂壁13aにおける貫通孔の開口周縁部が、カラー23の下端開口縁と、固定リング29の上面と、により上下方向に挟まれている。ロアベース13の周壁は、頂壁13aの外周縁部から下方に向けて延びる上筒部13bと、上筒部13bの下端部から径方向の外側に向けて延びる上段部13cと、上段部13cにおける径方向の外端部から下方に向けて延びる下筒部13dと、下筒部13dの下端部から径方向の外側に向けて延びる下段部13eと、を備えている。ロアベース13の周壁の下筒部13d内に、バンプストッパ22の上端部が嵌合されている。
【0022】
アッパーベース12は、有底筒状に形成されている。アッパーベース12は、ロッド軸Oと同軸に配設されている。アッパーベース12の底壁12aに、カラー23が挿入された貫通孔が形成されている。アッパーベース12の底壁12aは、カラー23の上端部より下方に位置している。アッパーベース12の底壁12aの下面は、ロアベース13の頂壁13aの上面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。アッパーベース12の周壁は、底壁12aの外周縁部から上方に向けて延びる下筒部12bと、下筒部12bの上端部から径方向の外側に向けて延びる下段部12cと、下段部12cにおける径方向の外端部から上方に向けて延びる上筒部12dと、上筒部12dの上端部から径方向の外側に向けて延びる上段部12eと、を備えている。下筒部12bの内径および外径はそれぞれ、ロアベース13の周壁の上筒部13bにおける内径および外径と同じになっている。
【0023】
ダンパー用アッパーマウント10は、アッパーベース12を介して車体側に連結される上側ブッシュ24と、ロアベース13を介してロッド21の上端部に連結される下側ブッシュ25と、を備えている。上側ブッシュ24および下側ブッシュ25は、ロッド軸Oと同軸に配設され、上下方向に並べられている。
上側ブッシュ24および下側ブッシュ25は、ロッド21の上端部を径方向の外側から囲う内筒10aと、内筒10aを径方向の外側から囲う外筒10bと、内筒10aおよび外筒10bを互いに連結する弾性体10cと、を備えている。
【0024】
上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの内筒10aは、上下方向に離れている。上側ブッシュ24の内筒10aは、アッパーベース12の周壁の下筒部12bに外嵌されている。下側ブッシュ25の内筒10aは、ロアベース13の周壁の上筒部13bに外嵌されている。
上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの外筒10bは、上下方向に突き合わせられている。上側ブッシュ24の外筒10bは、アッパーベース12における下段部12cと上筒部12dとの接続部分に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。下側ブッシュ25の外筒10bは、ロアベース13の周壁の上段部13cの上面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。
上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの弾性体10cにおいて、上下方向で互いに対向する内端面は、径方向の外端部を除く全域にわたって上下方向に離れている。
【0025】
上側ブッシュ24および下側ブッシュ25は、互いに同じ形状で同じ大きさに形成されている。上側ブッシュ24および下側ブッシュ25は、互いが上下反対となる向きに設けられている。
【0026】
そして、本実施形態では、上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの外筒10bの外周面に当接したマス26が設けられている。
図示の例では、マス26は筒状に形成され、上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの外筒10bに一体に外嵌されている。マス26、および上側ブッシュ24の外筒10bそれぞれの上端部は、上下方向の同じ位置に位置している。マス26、および下側ブッシュ25の外筒10bそれぞれの下端部は、上下方向の同じ位置に位置している。
【0027】
上側ブッシュ24の弾性体10cに、上方に向けて突出し、アッパーベース12に上下方向で当接可能な第1ストッパ24aが形成されている。第1ストッパ24aは、アッパーベース12の下段部12cの下面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。第1ストッパ24aの上端部は、マス26、および上側ブッシュ24の外筒10bより上方に位置している。
【0028】
下側ブッシュ25の弾性体10cに、下方に向けて突出し、ロアベース13に上下方向で当接可能な第2ストッパ25aが形成されている。第2ストッパ25aは、ロアベース13の周壁の上段部13cの上面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。第2ストッパ25aの下端部は、マス26、および下側ブッシュ25の外筒10bより下方に位置している。
【0029】
第1ストッパ24aおよび第2ストッパ25aは、弾性体10cにおける径方向の外端部に形成されている。第1ストッパ24aおよび第2ストッパ25aは、周方向の全長にわたって連続して延びている。第1ストッパ24aは、上方に向けて突の曲面状に形成されている。第2ストッパ25aは、下方に向けて突の曲面状に形成されている。
【0030】
アッパーベース12およびロアベース13のうちの少なくとも一方には、ロッド21を上昇させる向きの大振幅の振動が入力されたときに、いずれか他方に当接する第3ストッパ27が設けられている。
第3ストッパ27は、ゴム材料等で環状に形成され、ロッド軸Oと同軸に配設されている。第3ストッパ27は、ロアベース13の頂壁13aの上面に設けられている。第3ストッパ27は、アッパーベース12の底壁12aの下面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。
【0031】
アッパーベース12およびロッド21のうちの少なくとも一方には、ロッド21を下降させる向きの大振幅の振動が入力されたときに、いずれか他方に当接する第4ストッパ28が設けられている。
ここで、カラー23の上端部に、径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びるフランジ部23aが形成されている。第4ストッパ28は、フランジ部23aの下面に設けられている。第4ストッパ28は、アッパーベース12の底壁12aの上面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。第4ストッパ28は、カラー23を介してロッド21に設けられている。
【0032】
第3ストッパ27および第4ストッパ28と、アッパーベース12の底壁12aと、の間の上下方向の各隙間は、第1ストッパ24aと、アッパーベース12の下段部12cの下面と、の間の上下方向の隙間、並びに、第2ストッパ25aと、ロアベース13の周壁の上段部13cの上面と、の間の上下方向の隙間より大きくなっている。第3ストッパ27および第4ストッパ28と、アッパーベース12の底壁12aと、の間の上下方向の各隙間は、上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの内筒10a同士の上下方向の隙間より小さくなっている。
なお、これらの隙間の大小関係は、適宜変更してもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、マス26を介して、上側ブッシュ24、および下側ブッシュ25を上下方向に加振する加振機構31が設けられている。
加振機構31は、マス26に設けられた、永久磁石32およびコイル33のうちのいずれか一方と、マス26を径方向の外側から囲い、上下動可能に設けられた可動子34と、可動子34に設けられた、永久磁石32およびコイル33のうちのいずれか他方と、を備えている。
【0034】
ここで、ダンパー用アッパーマウント10は、マス26に設けられた不図示の加速度センサと、不図示の制御部と、を備えている。
前記制御部は、前記加速度センサからのデータに基づいて、コイル33に制御電流を供給する。制御電流がコイル33に供給されると、可動子34が上下動し、このとき生じた可動子34の加速度の反力がマス26に加えられる。これにより、入力振動に伴ってマス26に生じた加速度が打ち消される。
【0035】
マス26の外周面には、上下方向に間隔をあけて設けられた2つの窪み部が形成されている。2つの窪み部は、周方向に間隔をあけて複数組設けられている。全ての窪み部内に、永久磁石32が各別に固定されている。上下方向で隣り合う各永久磁石32では、互いに逆の磁極が隣接している。複数組の永久磁石32は、ロッド軸Oを径方向に挟む各位置に設けられている。マス26、および可動子34それぞれの上下方向の大きさは、互いに同等になっている。
【0036】
可動子34は、磁性材料で形成されたコア体36と、コア体36およびコイル33を収容するホルダ37と、を備えている。可動子34およびコイル33は、マス26および永久磁石32から径方向の外側に離れている。コア体36、およびホルダ37それぞれの上下方向の位置、および上下方向の大きさは、互いに同等になっている。
【0037】
コア体36は、径方向に延びる巻芯38と、巻芯38を上方、下方、および径方向の外側から覆う外枠39と、を備えている。巻芯38に、コイル33が巻回されている。巻芯38の上下方向の大きさは、上下方向で隣り合う永久磁石32同士の間隔と同等になっている。コイル33における上端部および下端部はそれぞれ、上下方向で隣り合う永久磁石32と各別に径方向で対向している。コア体36は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
ホルダ37は、環状に形成され、ロッド軸Oと同軸に配設されている。ホルダ37の内周面に、コア体36およびコイル33が収容された収容凹部37aが、周方向に間隔をあけて複数形成されている。収容凹部37aは、ホルダ37を上下方向に貫いている。
【0038】
サスペンション装置1は、ダンパー用アッパーマウント10を径方向の外側から囲う筒状のカバー体41を備えている。カバー体41は、弾性変形可能に形成され、ロッド軸Oと同軸に配設されている。カバー体41は、例えばゴム材料等で形成されている。
カバー体41における上端部および下端部はそれぞれ、アッパーベース12およびロアベース13に各別に連結されている。カバー体41の上端部は、アッパーベース12の上段部12eに外嵌されている。カバー体41の下端部は、ロアベース13の下段部13eに外嵌されている。
【0039】
カバー体41は、可動子34が嵌合された装着部42を備えている。装着部42は、カバー体41における上端部と下端部との間に設けられている。装着部42内に、可動子34のホルダ37が嵌合されている。
カバー体41のうち、装着部42と上端部との間に位置する部分、並びに、装着部42と下端部との間に位置する部分にそれぞれ、上下方向に拡縮変形可能な蛇腹部43が形成されている。蛇腹部43は、径方向に屈曲しつつ上下方向に延びている。
【0040】
アッパーベース12に、下方に向けて突出し、可動子34に上下方向で当接可能な上側ストッパ44が設けられている。上側ストッパ44は、アッパーベース12の上段部12eに設けられている。上側ストッパ44は、カバー体41と一体に形成されている。上側ストッパ44は、周方向の全長にわたって連続して延びている。上側ストッパ44の下端面は、可動子34のホルダ37の上端面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。
【0041】
ロアベース13に、上方に向けて突出し、可動子34に上下方向で当接可能な下側ストッパ45が設けられている。下側ストッパ45は、ロアベース13の下段部13eの上面に設けられている。下側ストッパ45は、周方向の全長にわたって連続して延びている。下側ストッパ45の上端面は、可動子34のホルダ37の下端面に、上下方向に隙間を設けた状態で対向している。この隙間は、上側ストッパ44の下端面と、ホルダ37の上端面と、の間の上下方向の隙間と同等になっている。
【0042】
下側ストッパ45は、上側ストッパ44より径方向の内側に位置している。下側ストッパ45の体積は、上側ストッパ44の体積より大きくなっている。下側ストッパ45および上側ストッパ44それぞれの上下方向の大きさは、互いに同等になっている。下側ストッパ45の径方向の大きさは、上側ストッパ44の径方向の大きさより大きくなっている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によるダンパー用アッパーマウント10、およびサスペンション装置1によれば、上側ブッシュ24および下側ブッシュ25それぞれの外筒10bの外周面に当接したマス26が設けられているので、ロッド21に伝わったタイヤからの振動が、下側ブッシュ25、マス26、および上側ブッシュ24をこの順に通過して、車体側に伝達されることとなる。
これにより、ロッド21から下側ブッシュ25を通して上側ブッシュ24に至る振動の伝達経路にマス26を位置させることが可能になり、マス26の慣性力に起因した特定の周波数だけでなく、この周波数以上の所定の周波数範囲にわたるロードノイズを減衰することができる。
【0044】
さらに、マス26を介して上側ブッシュ24、および下側ブッシュ25を上下方向に加振する加振機構31を備えているので、入力振動に対して、例えば逆の位相等で、上側ブッシュ24、および下側ブッシュ25を加振することが可能になり、加速度の大きい入力振動であっても減衰することができるとともに、マス26の慣性力に起因した特定の周波数以上に限らず、これより低い周波数を含む広い周波数範囲にわたるロードノイズを減衰することができる。
【0045】
加振機構31が、永久磁石32およびコイル33と、可動子34と、を備えているので、コイル33に制御電流を供給し、可動子34を上下方向に振動させると、マス26を介して上側ブッシュ24、および下側ブッシュ25に、可動子34と逆位相の振動を生じさせることが可能になり、加速度の大きい入力振動、および広い周波数範囲にわたるロードノイズを確実に減衰することができる。
【0046】
ダンパー用アッパーマウント10を径方向の外側から囲う筒状のカバー体41を備え、カバー体41における上端部および下端部がそれぞれ、アッパーベース12およびロアベース13に各別に連結されているので、マス26と可動子34との間に、ゴミ等が進入するのを防ぐことが可能になり、可動子34の円滑な上下動を確実に確保することができる。
カバー体41が、可動子34が嵌合された装着部42を備えているので、コイル33に制御電流を供給する前の待機時等に、可動子34がマス26に対してぐらつくのを抑制することができる。
【0047】
アッパーベース12およびロアベース13に、上側ストッパ44および下側ストッパ45が各別に設けられているので、可動子34の上下方向の過剰な変位を抑えることができる。
【0048】
上側ブッシュ24の弾性体10cに、アッパーベース12に上下方向で当接可能な第1ストッパ24aが形成され、下側ブッシュ25の弾性体10cに、ロアベース13に上下方向で当接可能な第2ストッパ25aが形成されているので、振動の入力に伴い、例えばマス26が共振しようとしたときに、第1ストッパ24aをアッパーベース12に、第2ストッパ25aをロアベース13にそれぞれ当接させることが可能になり、マス26が他の部材に衝突するのを防ぐことができる。
【0049】
アッパーベース12およびロアベース13のうちの少なくとも一方に、第3ストッパ27が設けられ、アッパーベース12およびロッド21のうちの少なくとも一方に、第4ストッパ28が設けられているので、ロッド21を上昇させる向きの大振幅の振動が入力されたときに、第3ストッパ27を介してアッパーベース12およびロアベース13を互いに当接させ、ロッド21を下降させる向きの大振幅の振動が入力されたときに、第4ストッパ28を介してアッパーベース12およびロッド21を互いに当接させることが可能になり、ロッド21の上下方向の過剰な変位を抑えることができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係るダンパー用アッパーマウント20、およびサスペンション装置2を、図2を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0051】
本実施形態では、マス26にコイル33が設けられ、可動子34に永久磁石32が設けられている。
【0052】
コイル33は、周方向に巻回されている。マス26の外周面に、周方向の全長にわたって連続して延びる窪み部が形成されている。窪み部に、コイル33が収容されている。コイル33は、ロッド軸Oと同軸に配設されている。コイル33およびマス26それぞれの上下方向の中央部は一致している。マス26は、磁性材料で形成されている。
【0053】
永久磁石32は、筒状に形成され、ロッド軸Oと同軸に配設されている。
ここで、可動子34は、コア体36を有しておらず、ホルダ37の内周面には、永久磁石32が収容された収容凹部37aが形成されている。収容凹部37aは、周方向の全長にわたって連続して延びている。収容凹部37aは、上方に開口している。
永久磁石32の外周面は、収容凹部37aの内面のうち、径方向の外端に位置して径方向の内側を向く底面に当接している。永久磁石32および可動子34は、マス26およびコイル33から径方向の外側に離れている。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によるダンパー用アッパーマウント20、およびサスペンション装置2によれば、前記実施形態と同様の作用効果を有する。
【0055】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、カラー23、および固定リング29は、ロッド21と一体に形成されてもよい。
第1ストッパ24a、第2ストッパ25a、第3ストッパ27、第4ストッパ28、上側ストッパ44、および下側ストッパ45は設けなくてもよい。
加振機構31として、前記実施形態に限らず、他の構成のアクチュエータを採用してもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、2 サスペンション装置
10、20 ダンパー用アッパーマウント
10a 内筒
10b 外筒
10c 弾性体
11 ダンパー
12 アッパーベース
13 ロアベース
21 ロッド
24 上側ブッシュ
25 下側ブッシュ
26 マス
31 加振機構
32 永久磁石
33 コイル
34 可動子
41 カバー体
42 装着部
44 上側ストッパ
45 下側ストッパ
図1
図2