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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】作業用車両の作動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20241021BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20241021BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20241021BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241021BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
F15B11/00 E
F15B11/08 A
F15B11/16 Z
F15B11/00 F
E02F9/20 Z
E02F9/22 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021157321
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023020801
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021124553
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0025139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
F15B 11/08
F15B 11/16
E02F 9/20
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧作動装置を備えた作業用車両において、
前記油圧作動装置を駆動するための複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータを選択的にもしくは複合的に作動させて前記油圧作動装置を駆動させるための操作装置と、前記複数の油圧アクチュエータの駆動のための作動油を送り出す作動油供給源と、前記作動油供給源から送り出す油量を制御する送出油量制御装置と、を備えて構成される作動制御装置であって、
前記作動油供給源が、電動モータと、前記電動モータにより駆動される油圧ポンプから構成され、
前記送出油量制御装置は、前記操作装置の操作に応じて前記電動モータの回転制御を行って前記油圧ポンプから送り出す油量を制御するように構成され、
前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータのいずれか一つを選択的に作動させる単独操作されたときには、前記操作装置の操作量に応じた操作対応モータ回転数を設定するとともに、前記操作対応モータ回転数が必要最低回転数以下のときに前記操作対応モータ回転数に代えて前記必要最低回転数を設定し、このように設定した回転数となるように前記電動モータの駆動制御を行い、
前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータの二つ以上を複合的に作動させる複合操作されたときには、前記複合操作のそれぞれの操作量に対応する操作対応モータ回転数を合計した合計モータ回転数を設定するとともに、前記合計モータ回転数が前記必要最低回転数以下のときには前記合計モータ回転数に代えて前記必要最低回転数を設定し、このように設定した回転数となるように前記電動モータの駆動制御を行うことを特徴とする作業用車両の作動制御装置。
【請求項2】
前記必要最低回転数は、前記油圧ポンプの駆動に際して求められる最低駆動回転数であることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項3】
前記操作装置が単独操作されたときに設定される前記操作対応モータ回転数は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対して設定されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項4】
前記操作装置が複合操作されたときに設定される前記操作対応モータ回転数は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対して設定されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項5】
前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータの二つ以上を複合的に作動させる複合操作されたときには、前記複合操作のそれぞれの操作量に対応する操作対応モータ回転数を合計した値に所定の係数K(K<1.0)を乗算して求めた値を前記合計モータ回転数として設定することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項6】
前記油圧供給源から前記複数の油圧アクチュエータに至る油路中に設けられ、
前記複数の油圧アクチュエータの選択的もしくは複合的な操作に応じて、前記複数の油圧アクチュエータのうちの対応する油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う複数の作動油供給制御バルブを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項7】
前記油圧ポンプは固定容量型の油圧ポンプであることを特徴とする請求項6に記載の作業用車両の作動制御装置。
【請求項8】
前記油圧ポンプは可変容量型の油圧ポンプであることを特徴とする請求項6に記載の作
業用車両の作動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両の作動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両として油圧ショベル(エクスカベータ)が知られている。油圧ショベルは、左右のクローラ機構を有した下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前部に設けられたショベル装置とを備えて構成されている。このような油圧ショベルとして、バッテリおよびインバータを有する電源ユニットと、電源ユニットからの電力を受けて駆動する電動モータと、電動モータにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油を受けて作動する複数の油圧アクチュエータ(油圧モータ、油圧シリンダ等)を備え、これらの油圧アクチュエータによってクローラ機構やショベル装置等を作動させ、走行や掘削作業等を行う構成の油圧ショベルが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような油圧アクチュエータには、クローラ機構を作動させる走行モータ、上部旋回体を旋回させる旋回モータ、ショベル装置を作動させるブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダおよびスイングシリンダ、ブレードを上下動させるブレードシリンダ等がある。油圧ポンプはこれら複数のアクチュエータに対して作動油供給を行うのであるが、作業者のレバー操作としては、複数の油圧アクチュエータの一つを選択時に作動させる単独操作だけでなく、複数の油圧アクチュエータの二つ以上を複合的に作動させる複合操作も行われる。このようなことを鑑みて、特許文献1には、操作装置の操作状態および操作内容に応じて電動モータの回転制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5371210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動モータによる油圧ポンプ駆動を行う場合、バッテリ容量との関係等からできる限り電動モータの消費電力を抑えることが求められる。このため、従来から、操作レバーの操作量に対応して電動モータの駆動回転を変化させて、駆動電力を抑える制御が行われている。ところがこのとき、油圧ポンプの性能上での要求から、油圧ポンプの駆動回転数は必要最低回転数(例えば、500~700r.p.m.程度)以上にすることが求められる。このため、電動モータの駆動制御としては、操作レバー操作量が小さい領域(微操作領域)において、油圧アクチュエータが必要とする供給油量が小さくて電動モータを必要回転数以下で駆動しても良い場合においても、油圧ポンプのために要求される必要最低回転数で電動モータを駆動する制御が行われる。
【0006】
このような電動モータの駆動制御は、操作レバーが単独操作および複合操作されるときのいずれにおいても同様に行われる。但し、複合操作されるときには、複数の油圧アクチュエータへの作動油供給が必要であり、それぞれの操作に対応する要求回転数を合計した合計モータ回転数により電動モータを駆動する制御が行われている。ところが、このような制御では、複合操作の操作量が小さいとき(微操作領域であるとき)には、必要最低回転数を合計したものが合計モータ回転数となるため、モータ回転数が必要以上の大きな回転となり、電動モータの消費電力が大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、複合操作で操作量が小さいときに、モータ駆動回転数を必要最小限に抑えて電動モータの消費電力を抑えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る作動制御装置は、油圧作動装置(例えば、実施形態におけるクローラ機構15、上部旋回体20、ショベル装置30)を備えた作業用車両(例えば、実施形態における油圧ショベル1)の作動制御装置であって、前記油圧作動装置を駆動するための複数の油圧アクチュエータ(例えば、実施形態における走行モータ16L,16R、スイングシリンダ34、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、ブレードシリンダ19)と、前記複数の油圧アクチュエータを選択的にもしくは複合的に作動させて前記油圧作動装置を駆動させるための操作装置と、前記複数の油圧アクチュエータの駆動のための作動油を送り出す作動油供給源と、前記作動油供給源から送り出す油量を制御する送出油量制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ150)と、を備えて構成される。さらに、前記作動油供給源が、電動モータ(例えば、実施形態における第1電動モータM1)と、前記電動モータにより駆動される油圧ポンプ(例えば、実施形態における第1油圧ポンプP1)から構成され、前記送出油量制御装置は、前記操作装置の操作に応じて前記電動モータの回転制御を行って前記油圧ポンプから送り出す油量を制御するように構成される。そして、前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータのいずれか一つを選択的に作動させる単独操作されたときには、前記操作装置の操作量に応じた操作対応モータ回転数を設定するとともに、前記操作対応モータ回転数が必要最低回転数以下のときに前記操作対応モータ回転数に代えて前記必要最低回転数を設定し、このように設定した回転数となるように前記電動モータの駆動制御を行う。一方、前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータの二つ以上を複合的に作動させる複合操作されたときには、前記複合操作のそれぞれの操作量に対応する操作対応モータ回転数を合計した合計モータ回転数を設定するとともに、前記合計モータ回転数が前記必要最低回転数以下のときには前記合計モータ回転数に代えて前記必要最低回転数を設定し、このように設定した回転数となるように前記電動モータの駆動制御を行う。
【0009】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記必要最低回転数は、前記油圧ポンプの駆動に際して求められる最低駆動回転数である。
【0010】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記操作装置が単独操作されたときに設定される前記操作対応モータ回転数は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対して設定される。
【0011】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記操作装置が複合操作されたときに設定される前記操作対応モータ回転数は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対して設定される。
【0012】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記操作装置が前記複数の油圧アクチュエータの二つ以上を複合的に作動させる複合操作されたときには、前記複合操作のそれぞれの操作量に対応する操作対応モータ回転数を合計した値に所定の係数K(K<1.0)を乗算して求めた値を前記合計モータ回転数として設定する。
【0013】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記油圧供給源から前記複数の油圧アクチュエータに至る油路中に設けられ、前記複数の油圧アクチュエータの選択的もしくは複合的な操作に応じて、前記複数の油圧アクチュエータのうちの対応する油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う複数の作動油供給制御バルブを備える。
【0014】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記油圧ポンプは固定容量型の油圧ポンプである。
【0015】
上記構成の作動制御装置において、好ましくは、前記油圧ポンプは可変容量型の油圧ポンプである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る作業用車両の作動制御装置によれば、操作装置が複合操作されたときには、複合操作のそれぞれの操作量に対応する操作対応モータ回転数を合計した合計モータ回転数を設定するとともに、合計モータ回転数が必要最低回転数以下のときには合計モータ回転数に代えて必要最低回転数を設定し、このように設定した回転数となるように前記電動モータの駆動制御を行うので、油圧ポンプの駆動を必要最低回転数以上としつつ、複合操作で操作量が小さいときに、モータ駆動回転数を必要最小限に抑えて電動モータの消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る作動制御装置を備えた油圧ショベルの斜視図である。
図2】本発明に係る作動制御装置を示す油圧回路図である。
図3】上記作動制御装置において、コントローラがブームシリンダおよびアームシリンダの作動制御を行う構成を取り出して示す油圧回路図である。
図4】ブームおよびアーム操作レバーの操作に応じた第1電動モータの駆動回転制御を示すフローチャートである。
図5】上記駆動回転制御を構成する単独操作制御を示すフローチャートである。
図6】上記駆動回転制御を構成する複合操作制御を示すフローチャートである。
図7】レバー操作量とモータ回転数との設定関係を示すグラフである。
図8】単独操作でのレバー操作量とモータ駆動回転数との関係を示すグラフである。
図9】作動ゲインに応じた操作量と作動速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る作動制御装置を備えた作業用車両の一例として、クローラ式の油圧ショベル(エクスカベータ)について説明する。まず、油圧ショベル1の全体構成について主に図1を参照して説明する。
【0019】
油圧ショベル1は、図1に示すように、走行可能に構成された下部走行体10と、下部走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた上部旋回体20と、上部旋回体20の前部に設けられたショベル装置30とを有して構成される。下部走行体10、上部旋回体20およびショベル装置30は油圧アクチュエータにより駆動される。
【0020】
下部走行体10は、駆動輪、複数の従動輪および、これらの車輪に掛け回された履帯13を有する左右一対のクローラ機構15を、走行体フレーム11の左右両側にそれぞれ備える。左右のクローラ機構15は、駆動輪を回転駆動する左右の走行モータ16L,16R(油圧アクチュエータ)を有する。下部走行体10は、左右の走行モータ16L,16Rの回転方向および回転速度を制御することにより任意の方向および速度で走行可能である。走行体フレーム11の前部には、上下揺動自在にブレード18が設けられている。ブレード18は、走行体フレーム11との間に跨設されたブレードシリンダ19(油圧アクチュエータ)を伸縮作動させることにより上下揺動可能である。
【0021】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構が設けられている。この旋回機構は、走行
体フレーム11に固定された内輪と、上部旋回体20に固定された外輪と、上部旋回体20に設けられた旋回モータ26(油圧アクチュエータ、図2を参照)と、上部旋回体20に設けられた油圧ポンプから下部走行体10に設けられた左右の走行モータ16L,16Rおよびブレードシリンダ19に作動油を供給するためのスイベルジョイントとを有する。上部旋回体20は、この旋回機構を介して走行体フレーム11に水平旋回自在に取り付けられ、旋回モータ26を正転または逆転作動させることにより、下部走行体10に対して左右方向に旋回可能である。上部旋回体20の前部には、前方に突出する本体側ブラケット22が設けられている。
【0022】
ショベル装置30は、本体側ブラケット22に上下軸を中心に左右方向に揺動自在に取り付けられたブームブラケット39と、ブームブラケット39に第1揺動ピン35aにより上下揺動自在(起伏動自在)に取り付けられたブーム31と、ブーム31の先端部に第2揺動ピン35bにより上下揺動自在(屈伸動自在)に取り付けられたアーム32と、アーム32の先端部に設けられたリンク機構33とにより構成されている。ショベル装置30は、さらに、上部旋回体20とブームブラケット39の間に跨設されたスイングシリンダ34(油圧アクチュエータ)と、ブームブラケット39とブーム31の間に跨設されたブームシリンダ36(油圧アクチュエータ)と、ブーム31とアーム32の間に跨設されたアームシリンダ37(油圧アクチュエータ)と、アーム32とリンク機構33の間に跨設されたバケットシリンダ38(油圧アクチュエータ)とにより構成されている。
【0023】
ブームブラケット39は、スイングシリンダ34を伸縮作動させることにより上部旋回体20(本体側ブラケット22)に対して左右方向に揺動可能である。ブーム31は、ブームシリンダ36を伸縮作動させることにより本体側ブラケット22(上部旋回体20)に対して上下方向に揺動可能(起伏動可能)である。アーム32は、アームシリンダ37を伸縮作動させることによりブーム31に対して上下方向に揺動可能(屈伸動可能)である。
【0024】
アーム32およびリンク機構33の先端部には、バケット、ブレーカ、圧砕機、カッター、オーガ装置等の油圧作動装置としての各種アタッチメントを上下方向に揺動自在に取り付けることが可能になっている。アーム32の先端部に取り付けられたアタッチメントは、バケットシリンダ38を伸縮作動させることによりリンク機構33を介してアーム32に対して上下揺動可能である。これらのアタッチメントの油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧ホースを接続可能な第1~第3アタッチメント接続ポート41~43が、アーム32の左右両側面に配設されている。
【0025】
上部旋回体20は、前部に本体側ブラケット22が設けられる旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられるオペレータキャビン23とにより構成される。オペレータキャビン23は、略矩形箱状に形成されて内部にオペレータ(作業者)が搭乗可能な操作室を形成し、左側部に横開き開閉可能なキャビンドア24が設けられている。オペレータキャビン23の内部には、オペレータが前方側を向いて着座するオペレータシートと、油圧ショベル1における各種の車両情報を表示するディスプレイ装置と、オペレータによって操作される各種の操作スイッチとが設けられている。また、オペレータキャビン23の内部には、油圧アクチュエータを操作するために操作される操作装置160(図2を参照)と、油圧アクチュエータの作動速度ゲインを設定するために操作される作動ゲイン設定指示器170(図2を参照)とが設けられている。操作装置160は、作業者により操作される際の操作部として、下部走行体10の走行操作を行う左右の走行操作レバーまたは走行操作ペダル(いずれも図示略)と、上部旋回体20およびショベル装置30の作動操作を行う左右の作業操作レバー161,162(図2を参照)と、ブレード18の作動操
作を行うブレード操作レバー(図示略)を有している。
【0026】
油圧ショベル1においては、オペレータがオペレータキャビン23内に搭乗し、左右の走行操作レバー(もしくは走行操作ペダル)を前後に傾動操作することにより、その操作方向および操作量に応じて左右のクローラ機構15(走行モータ16L,16R)を駆動させて油圧ショベル1を走行させることができる。また、左右の作業操作レバー161,
162を前後左右に傾動操作することにより、その操作方向および操作量に応じて上部旋回体20およびショベル装置30を駆動させて掘削等の作業を行うことができる。
【0027】
旋回フレーム21の前部には、ホーン装置28が設けられている。オペレータキャビン23内のホーンスイッチを押圧操作することにより、ホーン装置28から油圧ショベル1の周囲に注意を促す警告音を発生させることができるようになっている。旋回フレーム体20の後部には、オペレータキャビン23の後方の位置に、後述する作動制御装置100の主要部が搭載される搭載室が設けられている。この搭載室の後壁を形成するように曲面形状のカウンターウエイト29が設けられている。
【0028】
作動制御装置100は、図2に示すように、作動油タンクTと、左右の走行モータ16L,16R等を作動させるための作動油を吐出する第1油圧ポンプP1と、旋回モータ26を作動させるためだけの作動油を吐出する旋回用油圧ポンプP2と、第1油圧ポンプP1から吐出されて左右の走行モータ16L,16R等に供給する作動油の供給方向および流量を制御する制御バルブユニット110と、旋回用油圧ポンプP2から吐出されて旋回モータ26に供給する作動油の供給方向を制御する旋回制御バルブ121と、制御バルブユニット110および旋回制御バルブ121の作動をそれぞれ制御するためのパイロット圧を生成して供給するパイロット圧供給バルブユニット130を備えている。
【0029】
制御バルブユニット110は、左右の走行モータ16L,16R、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38、スイングシリンダ34、ブレードシリンダ19、および第1~第3アタッチメント接続ポート41~43にそれぞれ供給する作動油の給排及び供給方向並びに流量を制御する制御バルブ類を備える。これら制御バルブ類として、左右の走行制御バルブ111,112と、ブーム制御バルブ113と、アーム制御バルブ114と、バケット制御バルブ115と、スイング制御バルブ116と、ブレード制御バルブ117と、アタッチメント制御バルブ118とを有している。これらの制御バルブ111~118はそれぞれ、パイロット圧供給バルブユニット130から供給されるパイロット圧により内蔵されたスプールが移動され、そのスプールの移動により各油圧アクチュエータに供給する作動油の給排及び供給方向並びに流量を制御可能となっている。
【0030】
旋回制御バルブ121においては、制御バルブ111~118と同様に、パイロット圧供給バルブユニット130から供給されるパイロット圧により内蔵されたスプールが移動される。旋回制御バルブ121においては、そのスプールの移動により旋回モータ26に供給する作動油の給排及び供給方向のみを切替制御する。旋回モータ26に供給する作動油の流量制御(すなわち上部旋回体20の旋回速度制御)は、後述する第2電動モータM2の回転制御によって行われる。
【0031】
パイロット圧供給バルブユニット130は、第1油圧ポンプP1の吐出口から制御バルブユニット110に繋がるポンプ油路L1から分岐した分岐油路L2に設けられている。分岐油路L2には、パイロット圧供給バルブユニット130によってパイロット圧を生成するために必要な油圧を保つためのチェックバルブ135が設けられている。パイロット圧供給バルブユニット130は、第1油圧ポンプP1から吐出される作動油を用いて、オペレータキャビン23内に設けられた走行操作レバー(走行操作ペダル)、作業操作レバー161,162およびブレード操作レバーのそれぞれの操作方向および操作量に応じた
パイロット圧を生成し、対応する制御バルブに供給する。パイロット圧供給バルブユニッ
ト130は、対応する制御バルブにパイロット圧を供給するための電磁比例式の複数のパイロット圧供給バルブ(詳細後述)を有する。
【0032】
作動制御装置100は、さらに、第1油圧ポンプP1を駆動する第1電動モータM1と、旋回用油圧ポンプP2を駆動する第2電動モータM2と、外部電源等によって充電可能なバッテリ105(蓄電池)と、バッテリ105からの直流電力を交流電力に変換して周波数および電圧の大きさを変えるインバータ106と、第1油圧ポンプP1から吐出される作動油圧(ポンプ圧)を検出する第1圧力センサS1と、各種の制御(詳細後述)を行うコントローラ150と、上述の操作装置160と、作動ゲイン設定指示器170を備えている。
【0033】
第1および旋回用油圧ポンプP1,P2はそれぞれ、固定容量型の油圧ポンプであり、第1および第2電動モータM1,M2の出力に応じた流量の作動油を吐出する。なお、これらポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いても良い。
【0034】
次に、コントローラ150による制御内容について説明する。上述したように、オペレータキャビン23内に搭乗したオペレータが、操作装置160を構成する作業操作レバー161,162を前後左右に傾動操作することにより、その操作方向および操作量に応じ
て上部旋回体20およびショベル装置30を駆動させて掘削等の作業を行うことができるようになっている。以下においては、作業操作レバー161,162において、ブーム操
作レバー163およびアーム操作レバー164の操作を行った場合の作動制御を例にして、図3を参照して説明する。なお、図3は、コントローラ150がブームシリンダ36およびアームシリンダ37の作動制御を行う際の制御内容を説明するための油圧回路図である。図3では制御内容の説明に必要な構成要素を抜粋して示しており、操作装置160としてはブーム操作レバー163およびアーム操作レバー164のみを示している。
【0035】
なお、図3においては作動ゲイン設定指示器170も示している。作動ゲイン設定指示器170は、オペレータが指で摘みながら所定角度範囲内で回転操作することが可能な把持操作部171を有し、この把持操作部171の操作量(回転角度位置)に対応する作動ゲイン指示信号をコントローラ150に出力するように構成されている。作動ゲイン信号は、コントローラ150に後述の作動速度ゲインを設定させるための指示信号である。コントローラ150は、この作動速度ゲイン信号に応じて、作動速度ゲインを設定することができる。
【0036】
ブーム操作レバー163およびアーム操作レバー164は、ジョイスティックタイプの操作レバーであり、その操作に対応する操作出力信号をコントローラ150に出力する。具体的には、ブーム操作レバー163が操作された場合にはブームシリンダ36を作動させるための操作出力信号を出力し、アーム操作レバー164が操作された場合にはアームシリンダ37を作動させるための操作出力信号を出力する。これら操作レバー163,164は、その操作量(操作ストローク)に応じて操作量が大きいほど信号レベル(例えば電圧値や電流値)が高い操作出力信号を出力するように構成されている。
【0037】
このようにブームおよびアーム操作レバー163、164の操作に応じて出力される操作出力信号はコントローラ150に送られ、インバータ106を介して第1電動モータM1の駆動回転数制御が行われる。さらに、パイロット圧供給バルブユニット130を介してブーム制御バルブ113およびアーム制御バルブ114の作動制御が行われ、ブームシリンダ36およびアームシリンダ37の作動が制御される。
【0038】
まず、コントローラ150により行われる、ブームおよびアーム操作レバー163、164の操作に応じた第1電動モータM1の駆動回転制御について、図4図6のフローチ
ャートおよび図7図8のグラフを参照して説明する。この駆動回転制御では、図4に示すように、まずレバー操作に応じてブームおよびアーム操作レバー163、164から送られてくる操作出力信号を読み込み(ステップS1)、いずれか一つのレバー操作のみ行われる単独操作であるか、複数のレバー操作が同時に行われる複合操作であるかを判断する(ステップS2)。単独操作であるときには図5に示す単独操作制御が行われ(ステップS10)、複合操作であるときには図6に示す複合操作制御が行われる(ステップS20)。
【0039】
単独操作であるときには、図5に示すように、まず、操作対応回転数CMSを求める(ステップS11)。操作対応回転数CMSは、図7に示すように、レバー操作量に対応して予め設定記憶されている。ステップ1で読み込まれた操作出力信号から操作量(%)を求め、図7に示す関係からこの操作量に対応する対応回転数を求める。図7に示すように、操作対応回転数は、レバー操作毎に(レバー操作による作動対象となる油圧アクチュエータ毎に)設定されている。例えば、アーム32を掘削方向に作動させるときには、図7において実線で示すような特性が設定され、ブーム31を上げる方向に作動させるときには、図7において破線で示すような特性が設定される。このため、アーム32を掘削方向に作動させる単独レバー操作が行われたときには、図7の実線で示される特性からこのレバー操作に対応するアーム掘削操作対応回転数CMS(A)が求められ、ブーム上げ方向に
作動させる単独レバー操作が行われたときには、図7の破線で示される特性からこのレバー操作に対応するブーム上げ操作対応回転数CMS(B)が求められる。
【0040】
次に、ステップS12に進み、このようにして求めた操作対応回転数CMS(CMS(A)もしくはCMS(B))が、第1油圧ポンプP1の駆動に際して要求される必要最低回転数(例えば、500~700r.p.m.程度の値)未満であるか否かが判断される。操作対応回転数CMSが必要最低回転数以上であるときには、ステップS13に進み、求めた操作対応回転数CMSをモータ駆動回転数MDSとして設定する。一方、操作対応回転数CMSが必要最低回転数未満であるときには、ステップS14に進み、必要最低回転数をモータ駆動回転数MDSとして設定する。そして、このように設定したモータ駆動回転数MDSで第1電動モータM1を回転させる(ステップS15)。このようにして行われる単独レバー操作量に対応するモータ駆動回転数を図8に示している。
【0041】
次に、複合操作であるときに行われる複合操作制御(ステップS20)を、図6を参照して説明する。複合操作であるときには、まず、それぞれのレバー操作に対応する操作対応回転数CMS(CMS(A)、CMS(B))を求める(ステップS21)。操作対応回転数CMSは上述したとおり、図7に示すようにレバー操作量に対応して予め設定記憶されており、複合操作となる各レバー操作の操作量に対応する対応回転数を求める。ここでは、アームを掘削方向に作動させるレバー操作とブーム上げ方向に作動させるレバー操作との複合操作が行われた場合を例にして説明する。ステップS21においては、アームを掘削方向に作動させる単独レバー操作に対応するアーム掘削操作対応回転数CMS(A)と、ブ
ーム上げ方向に作動させるレバー操作に対応するブーム上げ操作対応回転数CMS(B)が
求められる。
【0042】
そして、ステップS22に進み、合計回転数TMS(=CMS(A)+CMS(B))を算出する。さらにステップS23に進み、算出した合計回転数TMSに修正係数K(<1.0)を乗じて修正合計回転数MTMSを算出する。なお、修正係数Kは、0.5~0.9程度の値に設定されている。これにより、複合操作のときで、操作量が大きいときに、合計回転数が大きくなりすぎ、油圧ポンプの許容回転数を超えるような事態となることを防止している。このようなことから、修正係数Kは各種条件などに応じて適宜設定される。
【0043】
次に、ステップS24に進み、このようにして求めた修正合計回転数MTMSが、第1
油圧ポンプP1の駆動に際して要求される必要最低回転数(例えば、500~700r.p.m.程度の値)未満であるか否かが判断される。操作対応回転数CMSが必要最低回転数以上であるときには、ステップS25に進み、求めた修正合計回転数MTMSをモータ駆動回転数MDSとして設定する。一方、修正合計回転数MTMSが必要最低回転数未満であるときには、ステップS26に進み、必要最低回転数をモータ駆動回転数MDSとして設定する。そして、このように設定したモータ駆動回転数MDSで第1電動モータM1を回転させる(ステップS27)。
【0044】
次に、ブームおよびアーム操作レバー163、164の操作に応じて出力される操作出力信号を受けたコントローラ150により行われるブームシリンダ36およびアームシリンダ37の作動制御について説明する。ブームおよびアーム操作レバー163、164の操作に応じて出力される操作出力信号を受けたコントローラ150は、パイロット圧供給バルブユニット130を介してブーム制御バルブ113およびアーム制御バルブ114の作動制御を行い、ブームシリンダ36およびアームシリンダ37の作動が制御される。
【0045】
図3に示すブーム制御バルブ113およびアーム制御バルブ114は、パイロット圧供給バルブユニット130内のパイロット圧供給バルブ131,132から供給されるパイ
ロット圧により、内蔵されたスプールの移動位置が制御されて、ブームシリンダ36およびアームシリンダ37に供給される作動油の供給方向および流量を制御する。パイロット圧供給バルブ131,132は、電磁比例式のパイロット圧制御弁であり、コントローラ
150からのパイロット圧制御信号により作動されて、ブーム制御バルブ113およびアーム制御バルブ114に供給するパイロット圧を制御し、これらバルブの作動を制御する。
【0046】
なお、本実施形態では、作動ゲイン設定指示器170により設定される作動速度ゲインを加味した制御が行われる。作動ゲイン設定指示器170の把持操作部171がオペレータによって回転操作されることにより、コントローラ150による作動速度ゲインの設定調整が行われる。作動速度ゲインは、操作装置160における操作レバーの操作量と、対応する油圧アクチュエータの作動速度(油圧アクチュエータに供給される作動油の供給流量)との対応関係を決めるパラメータ(例えば、係数)として設定される。この作動速度ゲインの設定を、把持操作部171の回転角度位置に応じて変えることにより、図9に示すように、同一操作量に対する油圧アクチュエータへの供給流量(作動速度)を調整することができる。なお、この図9では、操作量に対して油圧アクチュエータの供給流量が直線的に(比例的に)変化するように設定しているが、この設定については、種々の条件を鑑みて色々な特性設定が可能である。例えば、操作量が小さい領域では直線状に変化するが、これが大きくなると曲線状に変化するように設定をしても良い。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、パイロット圧供給バルブユニット130から供給されるパイロット圧により制御バルブ111~118の開度が制御される構成であるが、制御バルブ111~118を電磁比例式の制御バルブで構成し、制御バルブ111~118の開度を電磁的に制御するように構成してもよい。また、制御バルブ111~118の開度を、電動モータ等の駆動装置を用いて制御するようにしてもよい。上述の実施形態では、第1油圧ポンプP1からの作動油を用いてパイロット圧を生成する構成であるが、第1電動モータM1により第1油圧ポンプP1とともに駆動されるパイロット用油圧ポンプを設け、このパイロット用油圧ポンプからの作動油を用いてパイロット圧を生成するように構成してもよい。
【0048】
操作レバーの操作に対する油圧アクチュエータの作動特性の設定(初期設定)を、油圧アクチュエータごとに変更できるように構成してもよい。例えば、操作レバーの操作量と
、対応する油圧アクチュエータの作動速度(供給油量)との対応関係の設定を変更するために、必要吐出流量:操作量比率の設定を変更したり、作動速度ゲイン値の設定を変更することができるようにしてもよい。この設定の変更は、例えば、コントローラ150に電気的に接続される携行タイプのコンピュータ(設定変更のためのプログラムを搭載)等を介して行うようにすることができる。
【0049】
また、上部旋回体20の旋回作動と、クローラ機構15やショベル装置30とを同時に作動させるときには、第1油圧ポンプP1の吐出流量を旋回用油圧ポンプP2の吐出流量の分だけ減少させる(第1油圧ポンプP1の馬力を旋回用油圧ポンプP2の馬力分だけ抑える)ように制御する構成としてもよい。また、上述の実施形態では、本発明を油圧ショベルに適用した例を示しているが、本発明は、油圧ショベル以外の作業用車両に対しても同様に適用し同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 油圧ショベル 10 下部走行体
16L,16R 走行モータ 20 上部旋回体
26 旋回モータ 30 ショベル装置
36 ブームシリンダ 37 アームシリンダ
38 バケットシリンダ 100 作動制御装置
110 制御バルブユニット 130 パイロット圧供給バルブユニット
150 コントローラ 160 操作装置
170 作動ゲイン設定指示器 M1 第1電動モータ
M2 第2電動モータ P1 第1油圧ポンプ
P2 旋回用油圧ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9