(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241021BHJP
G03B 35/10 20210101ALI20241021BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241021BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241021BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20241021BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20241021BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G03B35/10
G03B15/00 W
G02B7/02 A
G02B7/02 D
G02B7/04 D
G03B37/00 A
G03B19/07
(21)【出願番号】P 2021158477
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021143660
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】深井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】日塔 潔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 豊人
(72)【発明者】
【氏名】上原 匠
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-214371(JP,A)
【文献】実開昭49-041531(JP,U)
【文献】特開昭62-092906(JP,A)
【文献】特開2017-083527(JP,A)
【文献】特開2017-090648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G02B 23/00 - 23/22
G03B 19/00 - 19/16
G03B 35/00 - 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体に着脱自在なレンズ装置であって、
第1の光学系と、
前記第1の光学系と並列に配置された第2の光学系と、
被写体像が前記第1の光学系および前記第2の光学系によりそれぞれ結像される単一の撮像素子を備えた前記カメラ本体に着脱するためのレンズマウントと、
前記第1の光学系と前記第2の光学系のフォーカス調整を同時に行う第1のフォーカス調整部と、
前記第1の光学系と前記第2の光学系の相対的な焦点位置のズレを調整する第2のフォーカス調整部と、を有し、
前記第1のフォーカス調整部は、前記第1の光学系と前記第2の光学系の両方と連結されており、
前記第2のフォーカス調整部は、前記第1の光学系または前記第2の光学系の一方
のみと連結されていることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第1の光学系と前記第2の光学系は、同一の光学系で構成された結像光学系であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第1のフォーカス調整部と前記第2のフォーカス調整部の一方は、フォーカス調整に伴ってフォーカス合焦方向に移動しないことを特徴とする請求項1
または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第1の光学系または前記第2の光学系の一方を回転させて撮像面と直交する方向に駆動する偏心回転部材を更に有し、
前記偏心回転部材は、前記第2のフォーカス調整部と連結されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第2のフォーカス調整部と前記偏心回転部材とを連結する連結部材を更に有し、
前記第2のフォーカス調整部は、第1の案内部を有し、
前記連結部材は、前記第1の案内部に係合する第2の案内部と、前記偏心回転部材に係合する第3の案内部とを有し、
前記偏心回転部材は、前記第3の案内部に係合する第4の案内部を有することを特徴とする請求項
4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第2の案内部と前記第3の案内部は、互いに交差する方向に配置されていることを特徴とする請求項
5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第2のフォーカス調整部と前記偏心回転部材との間に設けられた弾性部材を更に有することを特徴とする請求項
4乃至
6のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ装置として立体撮影用の交換レンズが知られている。例えば特許文献1および特許文献2には、二つの光学系が並列に配置され、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するレンズ装置が開示されている。視差のある映像を撮影するには、二つの光学系のそれぞれに対してフォーカス調整を行う必要がある。そこで、例えば特許文献3には、双眼鏡において、左右の視度調整で片方の光学系を動かすことで行い、フォーカス調整で両目を動かす機構を1つの操作部材で切り替えて行う双眼鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-3022号公報
【文献】特開2012-113281号公報
【文献】特開2009-175498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に開示された双眼鏡では、左右の光学系の同時のフォーカス調整と左右の光学系の相対的なフォーカス調整とを同じ操作部材を切り替えて調整を行う必要がある。このため、操作が煩雑となり、誤操作により適切なフォーカス調整が困難である。
【0005】
そこで本発明は、簡単な操作で複数の光学系のフォーカス調整を適切に行うことが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、カメラ本体に着脱自在なレンズ装置であって、第1の光学系と、前記第1の光学系と並列に配置された第2の光学系と、被写体像が前記第1の光学系および前記第2の光学系によりそれぞれ結像される単一の撮像素子を備えた前記カメラ本体に着脱するためのレンズマウントと、前記第1の光学系と前記第2の光学系のフォーカス調整を同時に行う第1のフォーカス調整部と、前記第1の光学系と前記第2の光学系の相対的な焦点位置のズレを調整する第2のフォーカス調整部とを有し、前記第1のフォーカス調整部は、前記第1の光学系と前記第2の光学系の両方と連結されており、前記第2のフォーカス調整部は、前記第1の光学系または前記第2の光学系の一方のみと連結されている。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な操作で複数の光学系のフォーカス調整を適切に行うことが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態におけるレンズ装置の断面図である。
【
図2】第1の実施形態におけるレンズ装置の分解斜視図である。
【
図3】第1の実施形態におけるレンズ装置の分解斜視図である。
【
図4】第1の実施形態におけるレンズ装置の正面図である。
【
図8】第1の実施形態における各光軸と撮像素子上のイメージサークルとの関係を示す図である。
【
図9】第1の実施形態における第1の光学系で撮像した場合の第2の光学系の映り込みを示す図である。
【
図10】第1の実施形態における撮像装置の概略構成図である。
【
図11】第2の実施形態における撮像装置の概略構成図である。
【
図12】第2の実施形態における撮像装置の概略構成図である。
【
図13】第2の実施形態におけるレンズ装置の分解斜視図である。
【
図14】第2の実施形態における第1のフォーカス調整部の模式図である。
【
図15】第2の実施形態におけるレンズトップベース近傍の上面図である。
【
図16】第2の実施形態におけるレンズトップベース近傍の側面図である。
【
図17】第2の実施形態における位置調整機構の展開斜視図である。
【
図18】第2の実施形態における位置調整機構の側面図である。
【
図19】第2の実施形態における位置調整部とガイド部の拡大図である。
【
図20】第2の実施形態における荷重バランスの関係を示す模式図である。
【
図21】第2の実施形態における第2のフォーカス調整部の分解斜視図である。
【
図22】第2の実施形態における第2のフォーカス調整部と右眼光学系との連結部の断面図である。
【
図23】第2の実施形態における偏芯回転部材と連結部材とが連結された状態を示す斜視図である。
【
図24】第2の実施形態における偏芯回転部材と連結部材との位置関係を示す模式図である。
【
図25】第3の実施形態における光学系の位置調整機構の構成を示す側面図である。
【
図26】第3の実施形態における光学系の位置調整部とガイド部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
各実施形態のレンズ装置(交換レンズ)は、互いに並列に(対称に)配列された二つの光学系(第1の光学系および第2の光学系)を有し、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するように構成されている。二組の光学系は、所定の距離(基線長)だけ離間して水平方向に並べられる。像側から見て、右の光学系(第1の光学系)で結像する像を右眼用の動画または静止画として記録し、左の光学系(第2の光学系)で結像する像を左眼用の動画または静止画として記録する。動画または静止画(映像)の再生の際には、既知の3DディスプレイやいわゆるVRゴーグルなどを用いて鑑賞することで、鑑賞者の右眼には右眼用の映像が映り、左眼には左眼用の映像が映る。このとき、レンズ装置の基線長によって、右眼と左眼には視差のある映像が投影されるため、鑑賞者は立体感を得ることができる。このように各実施形態のレンズ装置は、第1の光学系および第2の光学系により視差のある二つの像を結像可能な立体撮影用のレンズ装置(立体撮影レンズ)である。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、
図1乃至
図3を参照して、第1の実施形態におけるレンズ装置(交換レンズ)200について説明する。
図1は、レンズ装置200の断面図であり、右眼光学系(第1の光学系)201Rおよび左眼光学系(第2の光学系)201Lの概略構成を示す。
図2および
図3は、レンズ装置200の分解斜視図である。なお以降の説明では、右眼光学系についての記述には符号の末尾にRを付け、左眼光学系についての記述には符号の末尾にLを付ける。右眼光学系と左眼光学系の両方に共通する記述には符号の末尾にRもLも付けない。
【0013】
レンズ装置200は、右眼光学系(第1の光学系)201Rおよび左眼光学系(第2の光学系)201Lを有する。右眼光学系201Rおよび左眼光学系201Lはそれぞれ、画角180度以上で撮影することが可能である。各光学系は屈曲光学系であり、各光学系において、被写体側(物体側)から像側へ順に、第1の光軸OA1、第1の光軸OA1と略直交する第2の光軸OA2、第1の光軸OA1と平行な第3の光軸OA3が設定されている。また各光学系において、各光軸に沿って、第1の光軸OA1には被写体側が凸形状の表面211Aを有する第1レンズ群211、第2の光軸OA2には第2のレンズ群221、および第3の光軸OA3には第3のレンズ群231、231-2が配置されている。なおレンズ群は、一つまたは複数のレンズからなる。また各光学系において、第1の光軸OA1の光束を折り曲げて第2の光軸OA2に導く第1のプリズム(第1の反射面)220、および、第2の光軸OA2の光束を折り曲げて第3の光軸OA3に導く第2のプリズム(第2の反射面)230が配置されている。なお、以降の説明において、光軸方向とは、被写体側と撮像面側(像側)に延びる方向である、第1の光軸OA1の方向である。
【0014】
右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの各光学系は、レンズトップベース(保持部材)300にビス締めなどで固定される。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301にビス締めなどで固定される。レンズボトムベース301は、不図示の直進構造で回転方向の移動は規制されたまま、光軸方向に進退できるように保持される。これにより、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの各光学系は一体的に光軸方向に進退可能であり、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは同時にフォーカス位置を調整することができる。
【0015】
次に、
図4乃至
図7を参照して、第1のレンズ群211とその周辺の構造について説明する。
図4は、レンズ装置200の正面図である。
図5および
図6は、レンズ装置200の第1のレンズ群211とその周辺の構造を示す、
図4中のA-A断面図である。
図7は、レンズ装置200の第1のレンズ群211とその周辺の構造を示す、
図4中のB-B断面図である。
【0016】
レンズ装置200は、右眼光学系201Rおよび左眼光学系201Lを収納する外装カバー部材203を備え、前面外装部材204でレンズ装置200の前側を、蓋をするように収納することができる。前面外装部材204は、外装カバー部材203にビス締め固定される。前面外装部材204は、右眼光学系201Rの第1のレンズ群211Rと左眼光学系201Lの第1のレンズ群211Lそれぞれが入り込む開口部204Fを有する。
【0017】
前面外装部材204は、右眼光学系201Rおよび左眼光学系201Lの有効画角180度以上の有効光束を遮らない形状を有する。第1のレンズ群211R、211Lは、被写体側に有効光束の入射面にもなっているレンズ表面211Aを有する。第1のレンズ群211のレンズ表面211Aのうち、有効入射面外径211Cよりも内側を有効入射面211Bとするとき、180度の光束は第1のレンズ群211の有効入射面211Bと光軸と略直交方向に水平に伸びる。そして、180度を超える光束は、第1のレンズ群211の有効入射面211Bよりも撮像面側にあり、第1のレンズ群211から遠ざかるほど撮像面側に延びていく。従って、180度を超える光束を遮らないため、前面外装部材204の表面形状は、第1のレンズ群211の有効入射面211Bよりも撮像面側に配置されている。カバー部材213も同様に、有効入射面Bよりも撮像面側に配置される。
【0018】
図4および
図7を参照して、詳細に説明する。
図4に示されるように、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの間の中心点Oよりも右眼光学系201R側を右眼領域20R、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの中心よりも左眼光学系201L側を左眼領域20Lとする。このとき、
図7中の画角FOVのように、前面外装部材204の右眼領域20Rには、左眼光学系201Lの最外有効光束(
図7中の太点線部)を遮らないように、第1のレンズ群211Lから離れるほど撮像面側に凹となる表面形状204Aが形成されている。同様に、前面外装部材204の左眼領域20Lには右眼光学系201Rの有効光束を遮らないように、右眼光学系201Rの第1のレンズ群211Rから離れるほど撮像面側に凹となるような表面形状204Bを有する。ただし、右眼光学系201Rから見た左眼光学系201Lの第1のレンズ群211Lおよびその周辺や、左眼光学系201Lから見た右眼光学系201Rの第1のレンズ群211Rおよびその周辺はお互いの有効光束の一部を遮る領域も有する。
【0019】
前面外装部材204の開口部204Fを形成するために、表面形状204Aおよび表面形状204Bよりも凸となる壁形状204C、204Dが設けられている。壁形状204Cは、右眼光学系201Rの第1のレンズ群211Rと略同軸の円弧形状であり、右眼光学系201Rの有効光束は遮らないが、左眼光学系201Lの有効光束の一部を遮る形状となっている。同様に、壁形状204Dは、左眼光学系201Lの第1のレンズ群211Lと略同軸の円弧形状であり、左眼光学系201Lの有効光束は遮らないが、右眼光学系201Rの有効光束の一部を遮る形状となっている。
【0020】
次に、前面外装部材204の開口部204Fに入り込む第1のレンズ群211R、211Lと、その周辺の構成について説明する。
図5に示されるように、第1のレンズ群211R、211Lを保持する保持部材212が設けられている。また、第1のレンズ群211R、211Lの被写体側レンズ表面211Aの外周部を覆うように、第1のレンズ群211R、211Lが入り込む開口部213Aを備えるカバー部材213が配置される。
【0021】
第1のレンズ群211の有効入射面外径211Cよりも外周側には、レンズ表面211Aとの境界211Dが存在する。境界211Dは、第1のレンズ群211R、211Lの側面211Eとレンズ表面211Aとの境界である。または、
図6に示されるように、第1のレンズ群211R、211Lをカシメ固定しているカシメ爪形状の内径先端部であってもよい。境界211Dとは、レンズ表面211Aとそれ以外の表面、または部材との境界である。カバー部材213は、境界211Dを覆っている。すなわち、カバー部材213の開口部213Aの内径は、境界211Dの径よりも小さい。カバー部材213の開口部213Aの内径をΦA、境界211Dの径をΦBとするとき、片側のオーバーラップ量Xは、以下の式(1)で表される。
【0022】
X=(ΦB-ΦA)/2 ・・・(1)
このように、境界211Dを覆い隠すことで外観品位の向上が見込まれる。カバー部材213は、レンズ保持部材212と光軸方向に位置決めされ、光軸と直交する方向には所定のガタYが設けられている。所定のガタYは、カバー部材213のオーバーラップ量Xよりも小さいため、ガタ分寄ってしまっても境界211Cがカバー部材213の開口部213Aよりも内側にくることはない。
【0023】
図5および
図6に示されるように、カバー部材213には溝部213Bが内周の一部に形成されており、レンズ保持部材212の外周の一部には外周側に延びる羽形状212Aが形成されている。ある位相で溝部213Bと羽形状212Aは、光軸方向から見て重ならない位置にあるときに組付け、カバー部材213を回転させることで、溝部213Bに羽形状212Aが入り込む。このようにバヨネット構成とすることで、カバー部材213とレンズ保持部材212とを光軸方向に位置決めすることができる。このとき、カバー部材213の内周とレンズ保持部材212の外周には、所定のガタYが設けられる。ただし、光軸方向の位置規制構造は、これに限定されるものではない。例えば、レンズ保持部材212に溝形状があり、カバー部材213に羽形状があってもよい。
【0024】
このように、カバー部材213はレンズ保持部材212と光軸方向に位置決めされているため、レンズ保持部材212と一体で光軸方向に進退可能である。そして、カバー部材213の外径は、前面外装部材204の開口部204Fの内径が径篏合している。このとき、径篏合でのガタは微小で、所定のガタYよりも小さい。
【0025】
また、カバー部材213には回転規制キー213Cが設けられており、前面外装部材204には回転規制キー213Cに対応する回転規制溝204Eが設けられている。これにより、前面外装部材204が組み込まれると、前面外装部材204の回転規制溝204Eにカバー部材213の回転規制キー213Cが入り込み、カバー部材213は回転規制される。このため、前述のバヨネット構成でカバー部材213が回転してレンズ保持部材212から外れることを防止することができる。ここで、回転規制構造の関係は逆でもよく、カバー部材213に回転規制溝、前面外装部材204に回転規制キーの関係でもよい。
【0026】
カバー部材213は、像面側に向いている面213Dを有し、レンズ保持部材212は、面213Dに対向する被写体側に向いている面212Bを有する。面213Dと面212Bとの間には、防滴防塵のための光軸方向シール部材214が挟み込まれるように配置される。面213Dおよび面212Bは全周であることが望ましいが、一部でもよい。光軸方向シール部材214が光軸方向で挟み込まれることにより、カバー部材213とレンズ保持部材212は光軸方向に付勢され、光軸方向のガタを減らすことができる。
【0027】
また、所定のガタYが保たれるように、光軸方向シール部材214は光軸方向と直交する方向には挟み込まれないようにガタYより大きい所定のクリアランスを持って配置される。光軸方向シール部材214は、例えばゴムやスポンジなどの弾性変形できる材質でできており、カバー部材213のレンズ保持部材212に対する光軸方向と直交する方向のガタYを吸収することができる。
【0028】
カバー部材213と開口部204Fとの間には、防滴防塵のための径方向シール部材215が光軸と直交方向に挟み込まれるように配置される。右眼光学系201R側の径方向シール部材215は、左眼光学系201Lの有効光束を遮る位置に配置される。左眼光学系201L側の径方向シール部材215は、右眼光学系201Rの有効光束を遮る位置に配置される。
【0029】
以上の構成により、画角180度以上の立体映像を撮影可能で、外観品位や防塵防滴性能を保つことができる。レンズ保持部材212を直接前面外装部材204の開口部204Fで篏合させない構造とすることで、レンズ保持部材212が製造誤差などの影響で位置ずれた場合でも、その位置を矯正されることがない。このため、光学性能や右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの相対誤差が前面外装部材204を組み込むことによっては変化しない。
【0030】
図8は、レンズ装置200の各光軸の位置およびマウントと、カメラ本体110側の撮像素子111上のイメージサークルの位置との関係を示す図である。カメラ本体110の撮像素子111上には、右眼光学系201Rによって結像する有効画角の右眼イメージサークルICRと、左眼光学系201Lによって結像する有効画角の左眼イメージサークルICLが並列に像を結ぶ。イメージサークル同士ができるだけ重ならないように、イメージサークルのサイズΦD2とイメージサークル同士の離間距離を設定することが好ましい。例えば、撮像素子111の受光範囲を中央で左右に半分に分けた領域を考え、受光範囲の右領域の略中央に右眼イメージサークルICRの中心が来るように設定し、受光範囲の左領域の略中央に左眼イメージサークルICLの中心が来るように設定することが好ましい。
【0031】
また本実施形態の光学系は全周魚眼レンズであり、撮像面に結像される像は180度を超える画角の範囲を写した円像になり、
図8に示されるように、左右にそれぞれ2つの円像が結像される。右眼光学系201Rの第1の光軸OA1Rと左眼光学系201Lの第1の光軸OA1L同士が成す距離を基線長L1と称する。基線長L1が長いほど、鑑賞時の立体感が増す。
【0032】
例えば、センサーサイズを縦24mm×横36mm、イメージサークルの直径をΦ17mm、第3の光軸OA3R、OA3Lの成す離間距離L2を18mm、第2の光軸OA2の長さを21mmとする。第2の光軸OA2が水平方向に延びるように各光学系を配置すると、
図1に示される基線長L1は60mmとなり、成人の眼幅と略等しくなる。またレンズマウント部202の直径ΦDは基線長L1よりも短くてよい。また、第3の光軸OA3R、OA3L間の距離L2は、レンズマウント部202の直径ΦDよりも短くすることにより、第3のレンズ群231、231-2はマウントの内側に配置することが可能となる。すなわち本実施形態において、以下の式(2)の関係を満足する。
【0033】
L1>ΦD>L2 ・・・(2)
VRとして視聴するとき、立体感を得られる画角は120度程度と言われているが、視野が120度では違和感が残るため、180度まで画角を広げることが多い。本実施形態では有効画角が180度を超えるため、180度の範囲のイメージサークルのサイズΦD3は、以下の式(3)の関係を満足する。
【0034】
ΦD2>ΦD3 ・・・(3)
図9は、第1の光学系で撮像した場合の、第2の光学系の映り込みを示している。前述の前面外装部材204の壁形状204C(D)は有効画角であるΦD2よりも内側に撮像されるが、180度画角には撮像されず、ΦD3よりも外側に撮像される。従って、VRとして視聴する場合、180度画角で視聴する際には影響を与えない。例えば、右眼光学系201Rの有効画角内には、左眼領域20Lにある左眼光学系201Lの第1のレンズ群211Lや、カバー部材213、前面外装部材204の壁部204Dがあり、それらが
図9に示されるように実際の有効撮像範囲に映り込んでいる。第1のレンズ群211Lのみ180度画角のイメージサークル内(ΦD3よりも内側)に映り込んでいるが、その他のカバー部材213や壁部204Dは180度画角のイメージサークルの外側にある。また、壁部204Dの映り込みは、第1のレンズ群211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側(
図9で示す左側)に撮像されている。魚眼の円像において、第1のレンズ群211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側に撮像されていることにより、画像処理や画像編集の際に、隣のレンズの映り込みをトリミングなどしてカットする場合に利点がある。すなわち、この場合、仕様上必ず映り込む第1のレンズ群211Lの頂点部まで水平方向でカット、例えば
図9中の直線Zで直線Zよりも水平方向で外側をカットしさえすれば、壁部204Dの映り込みは影響を与えることはない。このため、必要最小限のカットで済むという利点がある。以上の点は、第2の光学系で撮像した場合の、第1の光学系の映り込みに関しても同様である。
【0035】
以上のように、壁部204Dは有効画角内ではあるが、実際のVR用途としての撮像に関してはほとんど影響を与えないように配置されている。
【0036】
図10は、立体映像を撮影可能な撮像装置100の概略構成の一例を示す図である。
図10において、撮像装置100は、カメラ本体110とレンズ装置200とを有する。レンズ装置200は、カメラ本体110に対して着脱可能である。本実施形態において、撮像装置100は、カメラ本体(撮像装置本体)110と、カメラ本体110に対して着脱可能なレンズ装置(交換レンズ)200とを有する撮像システムである。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
【0037】
レンズ装置200は、右眼光学系201R、左眼光学系201L、およびレンズシステム制御部209を有する。カメラ本体110は、撮像素子111、A/D変換器112、画像処理部113、表示部114、操作部115、記憶部116、本体システム制御部117、およびカメラマウント122を有する。レンズ装置200のレンズマウント202を介してカメラ本体110のカメラマウント122に装着すると、本体システム制御部117とレンズシステム制御部209とが電気的に接続される。
【0038】
被写体の像は、右眼光学系201Rを介して結像される右眼像と左眼光学系201Lを介して結像される左眼像が並んで撮像素子111に結像される。撮像素子111は、結像された被写体の像(光信号)をアナログの電気信号に変換する。A/D変換器112は、撮像素子111から出力されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号(画像信号)に変換する。画像処理部113は、A/D変換器112から出力されたデジタルの電気信号(画像信号)に対して種々の画像処理を行う。
【0039】
表示部114は、各種の情報を表示する。表示部114は、例えば、電子ビューファインダや液晶パネルを用いることにより実現される。操作部115は、撮像装置100に対する指示をユーザが行うためのユーザインタフェースとしての機能を有する。尚、表示部114がタッチパネルを有する場合には、当該タッチパネルも操作部115の一つになる。記憶部116は、画像処理部113で画像処理が行われた画像データ等、各種のデータを記憶する。また、記憶部116は、プログラムも記憶する。記憶部116は、例えば、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現される。本体システム制御部117は、撮像装置100全体を統括制御する。本体システム制御部117は、例えば、CPUを用いることにより実現される。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図11は、本実施形態における撮像装置100の概略構成図である。撮像装置100は、カメラ本体(撮像装置本体)110と、カメラ本体100に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)200とを備えて構成される。第1の実施形態と同様に、交換レンズ(レンズ装置)200は、撮像装置110に取り付けられて使用される。
【0041】
撮像装置100は、所謂、交換レンズマウントを備えた撮像装置であり、単一の撮像素子111を有する。一方、レンズ装置200は、前述のように、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lを備えたレンズ装置である。本実施形態におけるレンズ装置200は、レンズトップベース(保持部材)300に左右眼光学系が取り付けられて構成される。
【0042】
左眼光学系201Lは、レンズトップベース300に固定される。一方、右眼光学系201Rは、レンズトップベース300に対して撮像素子111と直交する方向に移動可能に支持される。これにより、左眼光学系201Lと右眼光学系201Rは、撮像素子111と直交する方向に相対的に移動することが可能となる。本実施形態における右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは、同一の光学系であり、結像光学系(撮像光学系)が一体となったレンズ群として構成され、所謂、光学系全体繰り出しによるフォーカス調整が可能に構成されている。レンズ装置200は、前述のように視差画像の作成を目的としている。このため、左右光学系が異なることや、光学系全体の中の一部のレンズをフォーカスレンズとして構成することで、左右画像の光学特性に差が生じ、結果として左右画像が視差画像として違和感を生じてしまうことがある。
【0043】
本実施形態では、前述のように、左右光学系を全体繰り出しとすることで、左右レンズの光学系の特性差を小さくすることが可能となる。ここで、本実施形態においては左眼光学系201Lを第1の光学系とし、右眼光学系201Rを第2の光学系とする。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、第1の光学系と第2の光学系をそれぞれ左右逆の光学系とすることや、左右に配置された光学系ではなく上下に配置された光学系であっても良い。
【0044】
撮像装置100は、マウント部202を備え、マウント部202を介してレンズ装置200が取り付けられる。このため、撮像装置100における撮像素子111は、マウント部202に対して、平行に設置される。一方で、製造誤差により、この平行具合は完全に0とすることは困難であり、マウント部202に対して撮像素子111は微小な傾きをもって固定される。
【0045】
図12は、撮像装置100の概略構成図であり、マウント部202に対して撮像素子111は微小な傾きをもって固定された状態を模式的に示す。レンズ装置200は、製造工程において、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの結像位置のそれぞれのマウント部からの距離、所謂、フランジバックの距離を調整することができる。しかし、それらの差をそれぞれ0に近づけても、撮像装置100内における撮像素子111の倒れにより、左右光学系が必ずしもベストな合焦位置となるとは限らない。そこで、本実施形態では、前述のように、右眼光学系201Rを撮像面と垂直な軸方向に移動させることが可能なように構成することで、左右眼の相対的なフォーカス位置を調整することが可能となる。
【0046】
一方、左右光学系のフランジバックをそれぞれ毎回撮影の度に調整することは、調整作業による時間のロスにより撮影機会を逃すことや、操作が煩雑となる。これを避けるため、簡易な方法で素早く的確に合焦作動を可能とする必要がある。そこで本実施形態では、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lを保持するレンズトップベース300と、それを撮像面と垂直な軸方向に駆動する第1のフォーカス調整部(フォーカスリング)400とが設けられている。第1のフォーカス調整部400により、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは同時に撮像素子110と垂直な軸方向に移動することが可能となり、左右光学系を一体に保持したまま、同時にフォーカス調整が可能となる。第1のフォーカス調整部は外装カバー部材203に取りつくことで、ユーザによる操作が可能となる。
【0047】
一方、右眼光学系201Rと連結して、右眼光学系201Rを撮像素子110と垂直な軸方向に移動可能な第2のフォーカス調整部500も同様に、外装カバー部材203に取りつくことで、ユーザによる操作が可能となる。第2のフォーカス調整部500は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの相対的な焦点位置のズレを調整する。
【0048】
これらをそれぞれ独立させて操作することにより、ユーザは、自分で所有している撮像装置100の撮像素子111の傾きに合わせて、レンズ装置200の左右眼光学系のフランジバックを、第2のフォーカス調整部500を用いて調整することが可能である。撮影時においては、予め左右眼光学系のフランジバック位置の相対ずれを調整しておくことで、第1のフォーカス調整部400のみを調整することで、素早い合焦操作を両眼光学系同時に行うことが可能となる。第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500はいずれも、外装カバー部材203に回転可能に保持され、いずれも、フォーカス合焦方向に移動しないように固定されている。本実施形態における合焦方向とは撮像素子と直交する軸方向である。
【0049】
次に、
図13を参照して、前述の合焦機構を実現するための構成について詳述する。
図13は、本実施形態におけるレンズ装置200の分解斜視図である。
【0050】
右眼光学系201Rは、レンズトップベース300に対して撮像素子110と垂直な方向に移動可能に保持される。一方、左眼光学系201Lは、レンズトップベース300に対して固定される。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301にビス等により固定される。レンズボトムベース301にはカムフォロア部301aが3か所に設けられている。カムフォロア部301aが後述のカム部材302に当接することで、撮像素子110と直交する方向に駆動することが可能となる。カム部材302は、外装ベース部材303に係合して保持されている。またカム部材302は、第1のフォーカス調整部(フォーカスリング)400と、キー部302aで係合することで、ユーザが第1のフォーカス調整部400を回転作動させると、レンズ装置200の内部に連結されたカム部材302を回転させることができる。また、第1のフォーカス調整部400は、外装部材303とカバー部材304とにより挟持されることで、径方向には外装部材によって保持され、軸方向には2部材で挟持されることで回転可能に保持される。カム部材302が回転することで、カム部材302に設けられた斜面部302bに沿ってレンズボトムベース300が移動することで、左右眼光学系が撮像素子110と垂直な軸方向に移動可能となり、左右眼光学系のフォーカス調整が可能となる。
【0051】
図14は、撮像装置100の第1のフォーカス調整部400の模式図である。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301とねじ等で締結されて一体に構成される。レンズボトムベース301に形成されたカムフォロア部301aは、カム部材302に構成された斜面部302bに当接されるように、バネ等で付勢支持される。カム部材302は、前述のとおり、外装部材303に、バネ等で付勢支持され、また、外径部を外装部材303に、所謂、径嵌合状態で保持されることで回転可能に保持される。これにより、第1のフォーカス調整部400の回転操作により、左右眼光学系が固定されたレンズトップベース300を駆動することが可能となる。
【0052】
また、右眼光学系201Rは、後述の第2のフォーカス調整部500と連結して、撮像素子110と垂直な軸方向に駆動される。左右光学系はそれぞれレンズベーストップ300に固定されている。しかし、右眼光学系201Rは撮像素子110と垂直な軸方向に駆動することが可能であり、第2のフォーカス調整部500により左右眼光学系の相対的なフォーカス、第1のフォーカス調整部400により、左右眼一体のフォーカスの調整することが可能である。
【0053】
次に、
図15および
図16を参照して、右(左)眼光学系201R(L)をレンズトップベース300に対して取り付ける機構について詳述する。
図15は、レンズトップベース300近傍の上面図である。
図16は、レンズトップベース300近傍の側面図である。
【0054】
図3および
図13と同様に、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lはそれぞれ、レンズトップベース300を挟むように配置されている。左(右)眼光学系201L(R)を構成するベースプリズムボトム311L(R)は、レンズトップベース300に対して、紙面左右方向から取付け、取外し可能な構成となっている。レンズトップベース300は、第1の光軸OA1L(R)の間に配置され、第2の光軸OA2L(R)が貫くように配置されている。第3の光軸OA3L(R)間に、レンズトップベース300を配置すると、第3の光軸OA3L(R)間の間隔が広くなり、マウント内に入ることが出来なくなる程、大型化するためである。
【0055】
レンズトップベース300とベースプリズムボトム311Rの2つの部材が合わさる面(すなわち右眼光学系201Rがレンズトップベース300と結合する面)を、結合面(第1の結合面)312Rとする。同様に、レンズトップベース300とベースプリズムボトム311Lの2つの部材が合わさる面(すなわち左眼光学系201Lがレンズトップベース300と結合する面)を、結合面(第2の結合面)312Lとする。結合面312L(R)は、第1の光軸OA1L(R)に垂直な方向に沿って2つの第1の光軸OA1L(R)を結ぶ線OA1と垂直な方向に配置されている。また結合面312L(R)は、第1の光軸OA1L(R)および第3の光軸OA3L(R)に平行に配置され、第1の光軸OA1L(R)と第3の光軸OA3L(R)との間に配置されている。このように配置することで、スペース効率を高めることができ、2つの結合面312L(R)の間に回路基板310を配置することが可能となる。また結合面312L(R)は、第2の光軸OA2L(R)に対して垂直に配置されている。
【0056】
次に、
図17乃至
図19を参照して、右眼光学系201Rをレンズベーストップ300に対して移動させるフォーカス位置調整機構について詳述する。
図17は、レンズベーストップ300に対して右眼光学系201Rを位置調整するための位置調整機構の展開斜視図である。
図18は、位置調整機構の側面図である。
図19は、右眼光学系201Rの調整部とガイド部の拡大図である。
【0057】
図17、
図18に示されるように、右眼光学系201Rは、3つのネジ501a、501b、501cと3つの圧縮バネ(第1の付勢部材)502a、502b、502cによりレンズベーストップ300に対して所定の方向(取り付け方向)に常に付勢されている。この状態で、右眼光学系201Rは、レンズベーストップ300の取り付け部である結合面(第1の結合面)312Rに当接して取り付けられている。偏芯回転部材(位置調整部)503が段付きネジ504によってレンズベーストップ300に回転可能に取り付けられると同時に、偏芯回転部材の外周は右眼光学系201Rの穴部251に嵌る構成となる。
【0058】
図19に示されるように、偏芯回転部材503は、回転中心OZ1に対して外形中心OZ2が偏芯している。そして、偏芯回転部材503が回転することで、回転中心OZ1に対する外形中心OZ2の偏芯量の分だけ右眼光学系201Rがレンズベーストップ300に対して摺動しながら光軸方向へ調整可能となる。右眼光学系201Rとレンズベーストップ300との間には、第1の引っ張りバネ(第3の付勢部材)507が掛けられ、互いに光軸方向に付勢する構成となっている。このため、偏芯回転部材503が回転すると、穴部251のDカット部251aに当接することで右眼光学系201Rがレンズベーストップ300に対して光軸方向に移動される。また、偏芯回転部材503の回転によって右眼光学系201Rが光軸方向と平行に移動できるように構成されている。具体的には、2つの転がり軸受け(案内部)505a、505bは、光軸方向と平行に配置され、段付きネジ506a、506bによりレンズベーストップ300に対して回転可能に取り付けられている。2つの転がり軸受け505a、505bは、右眼光学系201Rのガイド穴部252、253の直進ガイド部252a、252b、253a、253bと嵌合し、右眼光学系201Rが光軸と平行な方向(調整方向)に移動するための直進ガイド部として機能する。
【0059】
また、
図18に示されるように、右眼光学系201Rとレンズベーストップの300との間には、第2の引っ張りバネ(第2の付勢部材)508が掛けられている。第2の引っ張りバネ508は、偏芯回転部材503に対して、右眼光学系201Rの光軸を挟んで配置され、右眼光学系201Rを調整方向と、調整方向と同じ平面内で直交する方向とを同時に付勢する。このような構成により、右眼光学系201Rに対して光軸方向へ付勢すると同時に、偏芯回転部材503と右眼光学系201Rの穴部251aの当接部を起点として回転モーメントを発生させる。第2の引っ張りバネ508の力により、右眼光学系201Rはガタつくことが無く、2つの転がり軸受け505a、505bにガイドされながら移動可能となる。
【0060】
次に、
図20(a)、(b)を参照して、レンズベーストップ300と右眼光学系201Rとの間に発生する重量、摩擦力、およびバネの関係(荷重バランスの関係)について説明する。
図20(a)、(b)は、荷重バランスの関係を示す模式図である。右眼光学系201Rの質量をm、重力加速度をg、レンズベーストップ300と右眼光学系201Rとの間に発生する静止摩擦係数をμとする。また、右眼光学系201Rまたは左眼光学系201Lとレンズベーストップ300との間に発生する垂直抗力をNとする。また、3つの圧縮バネ502a~502cのバネ定数をk1、変位量(伸び量)をx1、第1の引っ張りバネ508のバネ定数をk2、変位量をx2、第2の引っ張りバネ507のバネ定数をk3、変位量をx3とする。このとき、右眼光学系201Rが重力方向を向いている場合において、以下の条件式(4)、(5)を満足することが好ましい。
【0061】
μN+mg<k2x2+k3x3 ・・・(4)
N=3×(k1x1) ・・・(5)
なお、第2の引っ張りバネ507がない場合、以下の条件式(4a)、(5a)を満足することが好ましい。なお条件式(5a)において、Nは3つの圧縮バネ502a~502cのバネ定数の和である。
【0062】
μN+mg<k2x2 ・・・(4a)
N=k1x1 ・・・(5a)
また、第2の引っ張りバネ507がある場合、以下の条件式(4b)、(5b)を満足することが好ましい。なお条件式(5b)において、Nは3つの圧縮バネ502a~502cのバネ定数の和である。
【0063】
μN+mg<k2x2+k3x3 ・・・(4b)
N=k1x1 ・・・(5b)
このような荷重バランスにすることで、レンズ装置200がどのような向きに姿勢が変わったとしても、常に偏芯回転部材503と右眼光学系201Rはガタつくことなく当接する。このため、偏芯回転部材の調整に対して右眼光学系201Rのレンズ部が追従しないなどの問題は無くなる。これまで説明してきた構成により、光軸と離れた位置に調整部があったとしても、右眼光学系201Rを狙い通り、ガタつきなく移動させることが可能となる。また、左眼光学系201Lも同様に、レンズベーストップ300の取り付け面311Lに当接して取り付けられ、右眼光学系201Rと同様の調整機構を備え、前述した調整操作によりレンズベーストップ300に対して光軸に平行な方向に摺動可能となる。
【0064】
後述する第2のフォーカス調整部は、右眼光学系201Rと連結することで、ユーザが外部から調整可能であるが、レンズ装置200の組み立て工程において左眼光学系201Lも調整可能に構成することで、組み立て時の位置調整自由度を上げることが可能である。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは、レンズベーストップ300に摺動可能に取り付けられており、他の部品を介さないことで、フォーカス調整時に左右の相対的な傾きや偏芯が抑制される構成となっている。本実施形態では、光学系のフォーカス位置を調整する調整部材として偏芯回転部材を例に説明したが、偏芯回転部材でなくても良い。また、直進ガイド部材として転がり軸受けを例に説明したが、これに限定されるものではなく、直進ガイドするバー部材であっても良い。
【0065】
次に、
図21を参照して、第2のフォーカス調整部500について詳述する。
図21は、第2のフォーカス調整部500の分解斜視図である。小ベース521は、前述のカバー部材304に、ねじ525によって取り付けられる。調整ピン526は、小ベース521に挿入して固定される。小ベース521に挿入された調整ピン526は、付勢バネ522によって挿入方向に付勢されて保持される。付勢バネ(弾性部材)522は、調整ピン526の先端に取り付けられた止め輪523と小ベース521とにより挟持され、調整ピン526を小ベース521に対して付勢保持する。調整ピン526の先端には、連結部材524が係合される。調整ピン526の先端には、連結部材526と係合する第1の案内部526aが設けられている。第1の案内部526aは、連結部材524に設けられた第2の案内部524aと係合することで、調整ピン526の軸と直交する方向に移動自在に保持される。
【0066】
次に、
図22を参照して、第2のフォーカス調整部500と右眼光学系201Rとの連結部に関して詳述する。
図22は、第2のフォーカス調整部500と右眼光学系201Rとの連結部の断面図である。
【0067】
前述のとおり、調整ピン526の先端部である第1の案内部526aと、連結部材524に設けられた第2の案内部524aは、係合した状態で保持される。一方、連結部材524には、第2の案内部524aと対向する側に第3の案内部524bが設けられている。本実施形態において、第2の案内部524aは縦溝状の穴で構成され、一方、第3の案内部524bはキー形状の突起で構成される。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではなく、溝と突起の形状を逆に構成してもよい。また、第3の案内部524bは、偏心回転部材503に設けられた第4の案内部503aと係合する。
【0068】
ここで、連結部材524における第2の案内部524aと第3の案内部524bはそれぞれ、互いに交差する方向に配置されている。本実施形態において、第2の案内部524aと第3の案内部524bは、互いに直交する方向に設けられている。このため、調整ピン526に対して、連結部材524が係合して動ける方向は、調整ピン526の軸に対して直交する方向であり、偏心回転部材503に対して連結部材524が動ける方向はそれと直交する方向である。これにより、仮に、カバー部材203と右眼光学系201Rとの位置関係が、第1のフォーカス調整部400の操作により変化したとしても、調整ピン526を回転させることで、独立して右眼光学系201Rを撮像素子111と直交する方向に移動可能となる。
【0069】
第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500がそれぞれ操作されたときの連結形態については後述するが、前述の構成により、調整ピン526をユーザが回転させることで、回転(回転駆動力)を、偏芯回転部材503に伝達することができる。偏芯回転部材503は、前述の通り、回転することで、偏心した右眼光学系201Rとの当接部が撮像素子111と直交する軸方向に移動することで、右眼光学系201Rを移動させることができる。これにより、レンズトップベース300に固定された左眼光学系201Lとの相対的な位置関係を変更することが可能となる。
【0070】
偏芯回転部材503は、付勢バネ527とストッパーピン528とにより、ベースレンズトップ300に対して付勢されることで、摩擦保持力を与えられる。これにより、右眼光学系201Rが、意図しない衝撃等によって容易に移動することを防止することができる。本実施形態では右眼光学系201Rと連結する第2のフォーカス調整部500を例に説明したが、左眼光学系201Lについてもフォーカス調整機構が備えられており、左眼光学系201Lと第2のフォーカス調整部500とを連結させる構成にしても良い。また、左右光学系について、それぞれをユーザが調整ピン526で外部から回転調整できる機構を備えていても良い。
【0071】
次に、
図23を参照して、偏芯回転部材503と連結部材524との関係を詳述する。
図23は、偏芯回転部材503と連結部材524とが連結された状態の斜視図である。偏芯回転部材524は、前述の通り、第2のフォーカス調整部500の調整ピン526に設けられた第1の案内部526aと係合する溝である第2の案内部524aを備える。この溝は、第1の案内部526aと係合した際に、
図23中のX方向に移動可能に支持されるため、X方向に延伸した縦溝として構成されている。一方、第3の案内部524bは、第2の案内部524aと調整ピン526の軸方向において対向する側に配置され、略直交方向であり、互いに公差する方向である
図23中のY方向に延伸した状態にキー部が構成される。これにより、連結部材524は、偏心回転部材503に対してはY方向に、調整ピン526に対してはX方向に自在に移動が可能に保持される。
【0072】
次に、
図24を参照して、第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500とがそれぞれ回転させられたときの動きについて詳述する。
図24は、偏芯回転部材503と連結部材524とが、第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500がそれぞれ操作された際に、各状態における2部材の位置関係を示す図である。
図24中の太線で示す円は、偏芯回転部材503を模式的に示す。細線で示される円は、連結部材524であり、連結部材524に設けられた第2の案内部524aを細線、第3の案内部524bを細線の点線でそれぞれ模式的に示している。
【0073】
偏芯回転部材503は、前述の通り、レンズトップベース300に保持される。このため、第1のフォーカス調整部400が操作されることで、レンズトップベース300が撮像素子111と直交軸方向に移動させられ、レンズトップベース300に取り付けられた偏芯回転部材503も一体で移動させられる。ここで、撮像素子111と直交軸方向を
図24中の矢印AXの方向とする。このとき、状態(1)や状態(2)のように、偏芯回転部材503が第1のフォーカス調整部400によって矢印AXの方向にレンズトップベース300が駆動させられると、それに伴って偏芯回転部材503も矢印AXの方向に移動する。
【0074】
偏芯回転部材503と連結部材524は、第3の案内部524bと第4の案内部503aによってキーと長溝の関係で係合することにより、前述のX方向の動きが規制される。このため、偏芯回転部材503が、前述の通り、第1のフォーカス調整部400により矢印AXの方向に駆動させられると、連結部材524もそれに伴い矢印AXの方向に移動する。また、偏芯回転部材503の回転中心点を点A、連結部材524と係合した調整ピン526の回転中心をBとすると、中立位置においては点Aと点Bは一致した位置に存在する。
【0075】
一方、状態(1)や状態(2)においては、点Bは調整ピン526の回転中心であるため、常に同じ位置に存在する一方、点Aは、第1のフォーカス調整部400による駆動に伴い、矢印AXの方向に移動する。連結部材524は、第2の案内部524aが、前述のX方向に延伸した溝であり、それと係合する調整ピン526に備えた第1の案内部526aは、第2の案内部524aと係合するキー形状によって構成される。このため、カバー部材203に回転可能に固定された調整ピン526に対して、連結部材524は、
図24中のX方向に自由度を持つが、Y方向には移動が規制される。よって、点Aと点BはXの方向の軸上に存在する。
【0076】
一方、状態(3)のように、調整ピン526が、中立位置から回転され、さらに、第1のフォーカス調整部400が駆動された状態を考えると、第1のフォーカス調整部400の駆動により偏芯回転部材503がX方向に連結部材524は駆動させられる。一方、調整ピン526の回転中心である点Bは常に同じ位置にあり、調整ピン526に設けられた第1の案内部526aは連結部材524の第2の案内溝524bと係合する。このため、点Bは、第2の案内溝の中心線であるXの軸上に存在する必要がある。連結部材524がX方向とY方向の移動自由度を持つことにより、第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500をそれぞれ操作しても、連結部材524により、調整ピン526と偏芯回転部材503は常に連結状態を保つことができる。このため、第1のフォーカス調整部400と第2のフォーカス調整部500は、互いに独立して操作を行うことが可能となる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態は、
図17乃至
図19を参照して説明した第2の実施形態のレンズベーストップ300に対する右眼(左眼)調整機構(位置調整機構)の変形例である。
図25および
図26を参照して、光学系の位置調整機構について説明する。なお本実施形態の基本的な構成は、第2の実施形態と共通である。このため本実施形態において、第2の実施形態2と同一の構成については同一の符号を用い、重複した説明は省略し、異なる構成については詳細を追記して説明する。
図25は、本実施形態における光学系の位置調整機構の構成を示す側面図である。
図26は、光学系の位置調整部とガイド部の拡大図である。
【0078】
偏芯回転部材603が段付きネジ604によってレンズベーストップ300に回転可能に取り付けられると同時に、偏芯回転部材603の外周は右眼光学系201Rの穴部751に嵌る構成となる。偏芯回転部材603は、第2の実施形態と同様に、回転中心に対して外形中心が偏芯している。このため、偏芯回転部材603が回転することで、回転中心に対する外形中心の偏芯量の分だけ右眼光学系201Rがレンズベーストップ300に対して摺動しながら光軸方向へ調整可能となる。偏芯回転部材603が回転すると、穴部751のDカット部751aに当接することで、右眼光学系201Rがレンズベーストップ300に対して光軸方向に移動される。また偏芯回転部材603の回転で右眼光学系201Rが光軸方向と平行に移動できるように、2つの転がり軸受け605a、605bは光軸方向と平行に配置され、段付きネジ606a、606bによりレンズベーストップ300に対して回転可能に取り付けられる。
【0079】
2つの転がり軸受け605a、605bは、同時に右眼光学系201Rのガイド穴部752、753の直進ガイド部752a、752b、753a、753bと嵌合しており、右眼光学系201Rが光軸と平行な方向に移動するための直進ガイド部として機能する。
図25および
図26に示されるように、偏芯回転部材603は、2つの転がり軸受605a、605bの中心を結ぶ光軸OA1と平行な線上に配置される。すなわち、偏芯回転部材603が直進ガイド機能をもつ転がり軸受605a、605bによるガイド線上に配置されることで、偏芯回転部材603の調整による作用線と2つの転がり軸受605a、605bの中心線が一致する。その結果、右眼光学系201Rのレンズ部の追従性が良くなる。これまで説明してきた構成により、光軸と離れた位置に調整部が配置されている場合でも、右眼光学系201Rを狙い通り、ガタつきなく移動させることが可能となる。なお本実施形態では、偏芯回転部材603が2つの転がり軸受605a、605bの中心を結ぶ線上に配置されていたが、2つの転がり軸受605a、605bの中心を結ぶ線の延長線上に配置されていてもよい。
【0080】
各実施形態によれば、簡単な操作で複数の光学系のフォーカス調整を適切に行うことが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
200 レンズ装置
201R 右眼光学系(第1の光学系)
201L 左眼光学系(第2の光学系)
400 第1のフォーカス調整部
500 第2のフォーカス調整部