(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】モータ制御のための磁気センサーシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241021BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20241021BHJP
H02K 29/08 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01D5/245 110K
G01D5/245 M
H02K11/215
H02K29/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166088
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2023-01-20
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヒェン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】エンダ・ニコール
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-233069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0242764(US,A1)
【文献】特開2010-169664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0241544(US,A1)
【文献】特開昭63-163213(JP,A)
【文献】特開2006-226816(JP,A)
【文献】特開2007-187447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
H02K 11/215
H02K 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサーシステムであって、
磁界を生成するように構成された少なくとも1つのバイアス磁石と、
モータシャフトによって回転されるように構成された第1の磁気ターゲットによって誘起された前記磁界への変化を検出するように構成された第1の磁気センサーであって、前記第1の磁気ターゲットが前記磁界における変化を誘起するための第1の数の特徴
部を有している、第1の磁気センサーと、
前記モータシャフトによって回転されるように構成された第2の磁気ターゲットによって誘起された前記磁界への変化を検出するように構成された第2の磁気センサーであって、前記第2の磁気ターゲットが前記磁界における変化を誘起するための第2の数の特徴
部を有している、第2の磁気センサーと、
前記第1の磁気センサーおよび前記第2の磁気センサーと通信する処理回路であって、
前記第1の磁気センサーおよび前記第2の磁気センサーによって取得された測定値の間の差を検出し、
前記第1の磁気センサーおよび前記第2の磁気センサーから取得された測定値の間の前記検出された差に基づいて、前記モータシャフトの
回転開始位置に関連する第1のシャフト回転角度情報を生成し、
前記第1の磁気センサーによって測定された前記第1の磁気ターゲットの前記第1の数の特徴
部の計数または前記第2の磁気センサーによって測定された前記第2の磁気ターゲットの前記第2の数の特徴
部の計数に基づいて、
前記第1のシャフト回転角度情報に関連付けられた前記回転開始位置から、前記第1のシャフト回転角度情報に対する第2のシャフト回転角度情報を生成するように構成された処理回路と、を備え、
特徴
部の前記第1の数と特徴
部の前記第2の数との差が、モータの極対の数に基づいて決定される、磁気センサーシステム。
【請求項2】
特徴
部の前記第1の数と特徴
部の前記第2の数との前記差が、前記極対の前記数に等しい、請求項1に記載の磁気センサーシステム。
【請求項3】
前記処理回路が、前記第1のシャフト回転角度情報に基づいて、前記モータの固定子に対する前記モータの回転子の位置を決定するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項4】
前記処理回路が、前記モータシャフトの回転あたりの第3の数の電気周期を有する信号を出力し、電気周期の前記第3の数が、極対の前記数に等しい、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項5】
前記処理回路が、固定子に対する回転子の位置を、前記固定子への電気出力を制御するための電子制御ユニットに出力するように構成されている、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項6】
前記第1および第2の磁気センサーが、磁気抵抗角度センサーを備える、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項7】
前記第1の磁気ターゲットが、第1の数の歯を有する第1の歯状歯車であり、
前記第2の磁気ターゲットが、第2の数の歯を有する第2の歯状歯車である、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項8】
前記第1の歯状歯車と、前記第2の歯状歯車と、をさらに備える、請求項7に記載の磁気センサーシステム。
【請求項9】
前記第1および/または第2の磁気センサーが、複数の磁気抵抗素子を備え、前記複数の磁気抵抗素子が、対応する歯状歯車の歯のピッチに応じてセンサーダイ上に配列され、前記歯のピッチが、隣接する歯の間の距離である、請求項7に記載の磁気センサーシステム。
【請求項10】
前記第1および/または第2の磁気センサーが、
第1の磁気抵抗素子のセットを備える第1のホイートストンブリッジ回路と、
第2の磁気抵抗素子のセットを備える第2のホイートストンブリッジ回路と、を備え、
各ホイートストンブリッジ回路が、磁気抵抗素子の2つの領域を含み、各領域間の距離が、歯ピッチの半分である、請求項9に記載の磁気センサーシステム。
【請求項11】
前記第1の磁気ターゲットが、ディスクの表面上の第1の特徴
部のセットであり、
前記第2の磁気ターゲットが、ディスクの前記表面上の第2の特徴
部のセットであり、
前記第1および第2の特徴
部のセットが、同心リングとして配列されている、請求項1または2に記載の磁気センサーシステム。
【請求項12】
前記第1および第2の特徴
部のセットを備える前記ディスクをさらに備える、請求項11に記載の磁気センサーシステム。
【請求項13】
前記第1および第2の特徴
部のセットが、突起、穴、盲穴、またはくぼみのうちの1つである、請求項11または12に記載の磁気センサーシステム。
【請求項14】
電子的に整流されたモータにおけるシャフトの位置を監視する方法であって、
第1の磁気センサーから、前記シャフトの回転に関連する第1の磁界測定値を取得することであって、前記第1の磁界測定値が、少なくとも1つのバイアス磁石によって生成された少なくとも1つの磁界における第1の磁気ターゲットによって誘起された変化を表し、前記第1の磁気ターゲットが、前記磁界における変化を誘起するための第1の数の特徴
部を有している、取得することと、
第2の磁気センサーから、前記シャフトの回転に関連する第2の磁界測定値を取得することであって、前記第2の磁界測定値が、前記少なくとも1つのバイアス磁石によって生成された前記少なくとも1つの磁界における第2の磁気ターゲットによって誘起された変化を表し、前記第2の磁気ターゲットが、前記磁界における変化を誘起するための第2の数の特徴
部を有している、取得することと、
処理回路で、前記第1の磁界測定値および前記第2の磁界測定値に基づいて、第1のシャフト回転角度情報を生成
し、それによって前記シャフトの回転開始位置を決定することと、
前記第1の磁気センサーによって測定された前記第1の磁気ターゲットの前記第1の数の特徴
部の計数または前記第2の磁気センサーによって測定された前記第2の磁気ターゲットの前記第2の数の特徴
部の計数に基づいて、
前記回転開始位置から、前記第1のシャフト回転角度情報に対する第2のシャフト回転角度情報を生成することと、を含み、
特徴
部の前記第1の数と特徴
部の前記第2の数との差が、前記モータの極対の数に基づいて決定される、方法。
【請求項15】
前記第1のシャフト回転角度情報を電子制御システムに出力することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のシャフト回転角度情報が、前記モータシャフトの回転あたりの第3の数の電気周期を有し、電気周期の前記第3の数が、極対の前記数に等しい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のシャフト回転角度情報に基づいて、前記シャフトに結合された回転子の回転を制御することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御における使用のための磁界センサー、具体的には、電子モータ整流における使用のためのモータの回転位置を監視するためのバックバイアス磁石センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
同期モータの主な利点のうちの1つは、固定子における界磁回転が回転子の位置と整列されることである。概して、電子モータ駆動について、モータを同期させたまま保持するか、または所望の方向にそれを駆動するための電流方向および周波数を決定するために、固定子に対する回転子の位置を知ることが有益である。
【0003】
ブラシレスDC(BLDC)モータは、典型的には、同期アーキテクチャを有し、名前が示すように、ブラシ接点を有しない。したがって、位置センサーは、正しい固定子コイル通電シーケンスが使用されることを確実にするために、固定子と回転子との間の相対位置を測定するために使用される。これは、利用可能なバック電磁力(EMF)がなく、このように、相対的な回転子および固定子位置を決定するマイクロコントローラのためには不可能であるときに、起動時に特に有用である。
【0004】
伝統的に、3つのHallスイッチを備えるブロック整流は、同期モータ内の回転子位置を示すために使用されてきた。
【0005】
位置監視を必要とする別の種類の電子モータは、リラクタンスモータである。リラクタンスモータの回転子は、固定子内の磁界の回転と同期して走行し、よって、再び、固定子に対する回転子の位置を知ることが有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電子モータ整流における使用のために、固定子に対する回転子の位置を監視するための磁気センサーシステムを提供する。システムは、バックバイアス磁石を有する2つの磁気センサーを使用し、磁気センサーが、モータシャフトによって回転されている2つの可動ターゲットと相互作用する磁界によって引き起こされる磁界方向における変化を検出するように構成される。このように、各センサーで測定された信号間の固有の位相シフトは、固定子と回転子との間の相対位置を決定するために、使用されることができる。この点において、システムは、回転変位を測定するためにNoniusまたはVernier原理を使用するが、エンコーダのスケールは、モータ極対の数によって画定されている。
【0007】
本開示の第1の態様は、磁気センサーシステムであって、磁界を生成するように構成された少なくとも1つのバイアス磁石と、モータシャフトによって回転されるように構成された第1の磁気ターゲットによって誘起された磁界への変化を検出するように構成された第1の磁気センサーであって、第1の磁気ターゲットが磁界における変化を誘起するための第1の数の特徴を有している、第1の磁気センサーと、モータシャフトによって回転されるように構成された第2の磁気ターゲットによって誘起された磁界への変化を検出するように構成された第2の磁気センサーであって、第2の磁気ターゲットが磁界における変化を誘起するための第2の数の特徴を有している、第2の磁気センサーと、第1の磁気センサーおよび第2の磁気センサーと通信する処理回路であって、第1の磁気センサーおよび第2の磁気センサーによって取得された測定値の間の差を検出し、第1の磁気センサーおよび第2の磁気センサーから取得された測定値の間の検出された差に基づいて、モータシャフトの回転角度に関連するシャフト回転角度情報を生成するように構成された処理回路と、を備え、特徴の第1の数と特徴の第2の数との差が、モータの極対の数に基づいて決定されている、磁気センサーシステムを提供する。
【0008】
特徴の第1の数と特徴の第2の数との差は、極対の数に等しくあり得る。
【0009】
処理回路は、シャフト回転角度情報に基づいて、モータの固定子に対するモータの回転子の位置を決定するようにさらに構成され得る。
【0010】
処理回路は、モータシャフトの回転あたりの第1の数の電気周期を有する信号を出力し得、電気周期の第1の数は、極対の数に等しい。
【0011】
処理回路は、固定子に対する回転子の位置を、固定子への電気出力を制御するための電子制御ユニットに出力するように構成され得る。
【0012】
処理回路は、第1の磁気ターゲットの特徴の第1の数および第2の磁気ターゲットの特徴の第2の数のうちの少なくとも1つを計数することによってシャフト回転角度情報を生成するように構成され得る。
【0013】
いくつかの構成において、第1および第2の磁気センサーは、磁気抵抗角度センサーを備え得る。
【0014】
第1の磁気ターゲットは、第1の数の歯を有する第1の歯状歯車であり得、第2の磁気ターゲットは、第2の数の歯を有する第2の歯状歯車であり得る。
【0015】
システムは、第1の歯状歯車と、第2の歯状歯車と、をさらに備え得る。
【0016】
第1および/または第2の磁気センサーは、複数の磁気抵抗素子を備え得、複数の磁気抵抗素子は、対応する歯状歯車の歯のピッチに応じてセンサーダイ上に配列され、歯のピッチが、隣接する歯の間の距離である。
【0017】
第1および/または第2の磁気センサーは、第1の磁気抵抗素子のセットを備える第1のホイートストンブリッジ回路と、第2の磁気抵抗素子のセットを備える第2のホイートストンブリッジ回路と、をさらに備え得、各ホイートストンブリッジ回路が、磁気抵抗素子の2つの領域を含み、各領域間の距離が、歯ピッチの半分である。
【0018】
他の構成において、第1の磁気ターゲットは、ディスクの表面上の第1の特徴のセットであり得、第2の磁気ターゲットは、ディスクの表面上の第2の特徴のセットであり得、第1および第2の特徴のセットは、同心リングとして配列されている。例えば、第1および第2の特徴のセットは、突起、穴、盲穴またはくぼみのうちの1つである。
【0019】
いくつかの構成において、システムは、第1および第2の特徴のセットを備えるディスクをさらに備える。
【0020】
本開示の第2の態様は、電子的に整流されたモータにおけるシャフトの位置を監視する方法であって、第1の磁気センサーから、シャフトの回転に関連する第1の磁界測定値を取得することであって、第1の磁界測定値が、少なくとも1つのバイアス磁石によって生成された少なくとも1つの磁界における第1の磁気ターゲットによって誘起された変化を表し、第1の磁気ターゲットが、磁界における変化を誘起するための第1の数の特徴を有している、取得することと、第2の磁気センサーから、シャフトの回転に関連する第2の磁界測定値を取得することであって、第2の磁界測定値が、少なくとも1つのバイアス磁石によって生成された少なくとも1つの磁界における第2の磁気ターゲットによって誘起された変化を表し、第2の磁気ターゲットが、磁界における変化を誘起するための第2の数の特徴を有している、取得することと、処理回路で、第1の磁界測定値および第2の磁界測定値に基づいて、シャフト回転角度の測定を生成することと、を含み、特徴の第1の数と特徴の第2の数との差が、モータの極対の数に基づいて決定されている、方法を提供する。
【0021】
方法は、シャフト回転角度の測定を電子制御システムに出力することをさらに含み得る。シャフト回転角度の測定は、モータシャフトの回転あたりの第1の数の電気周期を有し得、電気周期の第1の数が、極対の数に等しい。
【0022】
方法は、シャフト回転角度の測定に基づいて、シャフトに結合された回転子の回転を制御することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示は、以下の添付の図面を参照する場合のみの例として、ここに記載される。
【
図1】
図1は、本開示の実施形態によるモータ制御システムの例である。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、本開示の実施形態によるモータ制御システムのさらなる例を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による磁気センサーシステムを図示する概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による角度センサーの例である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の実施形態による磁気センサー出力を図示する。
【
図5B】
図5Bは、本開示の実施形態による磁気センサー出力を図示する。
【
図5C】
図5Cは、本開示の実施形態による磁気センサー出力を図示する。
【
図5D】
図5Dは、本開示の実施形態による磁気センサー出力を図示する。
【
図6A】
図6Aは、本開示の実施形態による角度センサーのさらなる例を図示する。
【
図6B】
図6Bは、本開示の実施形態による角度センサーのさらなる例を図示する。
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態による角度センサーの例をさらに図示する。
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態による角度センサーの例をさらに図示する。
【
図8A】
図8Aは、本開示の実施形態による角度センサーの例をさらに図示する。
【
図8B】
図8Bは、本開示の実施形態による角度センサーの例をさらに図示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
BLDCモータ駆動(電動パワーステアリング(EPS)システムを含む)の性能を改善し、騒音、振動、および耳障り感(harshness)を低減し、運転効率を改善するための要求は、ブロック転流から正弦転流制御への移行という結果になる。Hallスイッチは、モータシャフトに装着された磁石の前に位置付けられた磁気抵抗(MR)角度センサーに置き換えられることができ、測定位置は、回転子の回転を制御するために電子制御ユニット(ECU)にフィードバックされる。
【0025】
本開示は、電子モータ整流における使用のために、固定子に対する回転子の位置を監視するための磁気センサーシステムを提供する。システムは、バックバイアス磁石を有する2つの磁気センサーを使用し、磁気センサーが、モータシャフトによって回転されている2つの可動ターゲットと相互作用する磁界によって引き起こされる磁界方向における変化を検出するように構成される。このように、各センサーで測定された信号間の固有の位相差は、固定子と回転子との間の相対位置を決定するために、使用されることができる。この点において、システムは、回転変位を測定するためにNoniusまたはVernier原理を使用するが、エンコーダのスケールは、モータ極対の数によって画定されている。
【0026】
図1および
図2A~
図2Bは、回転子位置が、磁気センサーシステムを使用してどのように測定され、電子的に整流されたモータ1を制御するECU10へのフィードバックとして使用され得るかを図示する。
【0027】
図1は、センサー5および6の背面に位置付けられたバックバイアス磁石7を有する、第1の磁気センサーおよび第2の磁気センサー6を備えるセンサーモジュール8を含む、磁気センサーシステム20を図示する。
図1に示されるように、システム20はまた、磁気センサー5および6から信号を受信し、回転角度を計算し、測定された回転角度をECU10または別の所望の構成要素に伝送する処理回路9を含み得る。センサー5および6などの磁界方向センサーは、異方向性磁気抵抗(AMR)センサー素子、巨大磁気抵抗(GMR)センサー素子、トンネル磁気抵抗センサー素子、任意の磁気抵抗感知素子(xMR)、または他の適切な磁気センサー技術に基づくことができるが、これらに限定されない。
【0028】
磁気センサー5および6は、それぞれ、2つの移動するターゲット3および4の表面に近接して位置付けられる。本実施形態において、ターゲット3および4は、モータ1のシャフト2に固定された歯状歯車である。いくつかの応用において、センサー5および6は、シャフト2の0°~360°の絶対回転位置を測定するように構成され得る。これを行うために、第1のターゲット歯車3は、第2のターゲット歯車4よりもより多くの、またはより少ない歯で提供されている。例として、ターゲット歯車3は、n個の歯を有し得、一方、ターゲット歯車4は、n-1個またはn+1個の歯を有し得る。そのような例において、Nonius原理は、適用され得、歯車3および4の両方の絶対回転角度は、センサー5および6の位置で、ターゲット4上の歯でターゲット3上の歯の相対変位を測定することによって推測されることができる。特に、ターゲット歯車3および4の歯の数が1つずつ異なっているとき、磁気センサー5および6の位置での隣接する歯車3と4との間の相対オフセットは、シャフト2の全回転に対して一意に変化する。このように、センサー5および6からの測定値を比較することによって、0°~360°の入力シャフト2の絶対回転角度は、測定されることができる。
【0029】
しかしながら、電子モータ整流について、絶対シャフト位置情報は、典型的には電源投入時に使用されない。正しい固定子コイル通電シーケンスを確保するために、使用される情報は、回転子と固定子との間の相対角度である。これは、第1のターゲット3に「n」個の歯を提供し、第2のターゲット4上の歯の数を、「p」がモータ極対の数(すなわち、回転子上の南北の永久磁極の数)である、n+pまたはn-pに変更することによって、上で記載の構成を改変することによって、代わりに達成されることができる。次いで、センサーモジュール8は、1シャフト回転あたり「p」の電気周期を提供し、そこから回転子コイルと固定子コイルとの間の相対角度が推測され、モータ1を整流させるためにECU10に入力することができる。代替的に、シャフト回転角度の測定は、ECU10に入力され得、ECU10は、次いで、回転子の相対角度を決定して、それによってモータ1を整流させ得る。
【0030】
この点において、
図5A~Dは、センサー5および6の出力が、回転子と固定子との間の相対角度を提供するように処理される方法を図示する。動作において、センサー5および6は、磁気ターゲット3および4が回転し、磁石7によって生成された磁界と相互作用する結果として、センサー5および6を通過する磁界方向の測定可能な変化を検出する。
図5Aは、第1の磁気ターゲット3に関連付けられた磁界が通過する場合に第1のセンサー5で測定された信号の正弦および余弦成分を示し、一方、
図5Bは、第2の磁気ターゲット4に関連付けられた磁界が通過する場合に第2のセンサー6で測定された信号の正弦および余弦成分を示す。次いで、
図5Cに示されるように、各センサー信号の「逆正接」(すなわち、正弦値を余弦値で割った)が、計算される。次いで、
図5Dに示されるように、各センサー5および6について決定される逆正接値の間の差が、決定される。
【0031】
したがって、ターゲット歯車3と4との間の歯の数(または磁界の変化を誘起する他の特徴)の差は、シャフトの回転あたり各「p」電気周期内の回転角度(例えば、p=2電気周期の場合、0°~180°)で固有の位相シフトという結果をもたらす。ということは、例えば、2つの極対を有するモータについて、2つのセンサー信号の間の固有の位相シフトは、180°回転内の各角度で取得される。別の例として、3つの極対を有するモータは、120°回転内の各角度での2つのセンサー信号の間の固有の位相シフトという結果をもたらす。
【0032】
このように、回転子と固定子との間の相対角度は、固定子コイル通電シーケンスが回転子の回転と整列および同期されることができるように、すなわち、回転子が、印加された電流によって通電されている固定子コイルによって生成された回転磁界と同期したままであることを確実にすることができるように、モータ1が整流されるのに十分な角度間隔(resolution)に決定されることができる。この点において、回転子内の極は、磁界の対向する回転磁極と同期するため、固定子巻線に供給される電流は、磁界の回転と回転子の回転を一致させるために定期的に逆転されるべきである。例えば、2極対モータにおいて、電流は、回転子の回転180度ごとに回転されるべきである。例えば、3極対モータにおいて、電流は、回転子の回転120度ごとに回転されるべきである。このように、磁気センサーシステム20の角度間隔(resolution)は、モータ内の極対の数に基づいて選択されることができる。
【0033】
この構成は、回転子と固定子との間の相対位置が起動時に自動的に決定されることができる点で、さらに有利である。1つの開始位置は、上で記載の方法を使用して決定され、回転子の絶対位置はまた、磁界を通過するときに第1および/または第2の歯状歯車3、4の歯を計数することによって決定され得る。
【0034】
図2A~
図2Bは、
図1を参照して記載されるように、センサー5および6の背面に位置付けられたバックバイアス磁石7を有する、第1の磁気センサー5および第2の磁気センサー6を備えるセンサーモジュール8を再び含む、代替のセンサーシステム30の構成を図示する。
【0035】
前述のように、磁気センサー5および6は、それぞれ、2つの移動するターゲット13および14の表面に近接して位置付けられる。しかしながら、本実施形態において、ターゲット13および14は、回転ディスク11の表面上の隆起突起またはモータ1のシャフト2に固定された歯車の2セットである。隆起突起13、14は、ディスク11の周囲に配列される。第1の突起13のセットは、ディスク11の縁近くの第1の半径方向位置に配列され、第2の突起14のセットは、ディスク11の中心に近い第2の半径方向位置に配列される。動作において、センサー5は、ディスク11が回転するにつれて磁界と相互作用する第1の突起13のセットの結果として、それを通過する磁界方向の測定可能な変化を検出し、一方、センサー6は、ディスク11が回転するにつれて磁界と相互作用する第1の第2の突起14のセットとして、それを通過する磁界方向の測定可能な変化を検出する。前述のように、第1の突起13のターゲットセットは、モータ極対の数によって画定される第2の突起14のセットとして、より多くの、またはより少ない突起が提供される。例として、第1の突起13のセットは、n個の突起を有し得、一方、第2の突起14のセットは、n-pまたはn+p個の突起を有し得る。次いで、Nonius原理は、再び適用され得、各電気周期にわたる2つのセンサー測定値の間の固有の位相シフトは、例えば、2つの極対の場合、0°~180°の入力シャフト2の回転の角度を決定するために、使用されることができる。
【0036】
上記の例は、回転ディスク11の表面上の隆起突起のセットを記載するが、これらが、ディスク11が回転するにつれて磁界における変化を誘起することができる穴、盲穴、くぼみ、または他の特徴で置き換えられ得ることが理解されるであろう。
【0037】
図3は、本開示の実施形態で使用される第1の角度センサー104および第2の角度センサー106を含む例示的な磁気センサー100の概略ブロック図を図示する。この点において、第1の角度センサー104は、上記
図1および2を参照して記載されるセンサー5として使用され得、一方、第2の角度センサー106は、
図1および2を参照して記載されるセンサー6として使用され得る。角度センサー104および106は、磁気角度センサー、例えば、異方向性磁気抵抗(AMR)、巨大磁気抵抗(GMR)もしくはトンネル磁気抵抗(TMR)ベースのセンサー、Hallセンサーまたは誘起センサーであり得る。
【0038】
センサー100はまた、処理回路108と、第1の角度センサー104、第2の角度センサー106、および処理回路108が配置されている集積回路102とを備える。処理回路108は、第1の角度センサー104から信号S1を受信し、第1の回転ターゲットの絶対位置を決定するために、受信信号を処理する。同様に、処理回路106は、第2の角度センサー106から信号S2を受信し、第2の回転ターゲットの角度位置を出力するために、受信信号を処理する。処理回路108は、上で記載されたように、回転子シャフト2の回転角度位置を示す出力信号SOUTを提供するために、これらの受信信号を処理する。
【0039】
図4は、本開示の実施形態による、インターフェース回路206を有する磁気角度センサー104(または106)の例を示す概略図である。インターフェース回路206は、処理回路108の一部であることができる。代替的に、インターフェース回路206は、処理回路108と角度センサー104の出力との間の別個の回路であることができる。
図4に示されるように、角度センサー104は、第1のホイートストンブリッジ202、および第2のホイートストンブリッジ204を含む。
【0040】
第1のホイートストンブリッジ202および第2のホイートストンブリッジ204は、それぞれ、回転磁界を感知し、0~2nラジアンの角度にも対応する0~360度の回転角度を提供するために、AMR素子などの磁気抵抗素子を含むことができる。追加的に、各AMR素子は、第1のホイートストンブリッジ202が第2のホイートストンブリッジ204に対して回転されるように、AMRプロセスを使用して集積回路上にパターン化されることができる。第1のホイートストンブリッジ202および第2のホイートストンブリッジ204を互いに対して回転させることによって、回転磁界の三角法の正弦および余弦は、0~360度の範囲にわたって決定されることができる。
【0041】
図4に示されるように、第1のホイートストンブリッジ202および第2のホイートストンブリッジ204の両方は、それぞれ、供給電圧VDDおよび接地GNDに電気的に接続されている。図示されるように、インターフェース回路206は、第1のホイートストンブリッジ202の感知ノードから電圧VSIN1およびVSIN2を受信し、第2のホイートストンブリッジ204の感知ノードから電圧VCOS1およびVCOS2を受信する。
図4の電圧VSIN1、VSIN2、VCOS1、およびVCOS2は、
図3の信号S1(またはS2)の成分を表すことができる。インターフェース回路206は、磁界に関連付けられた正弦および余弦信号を、それぞれ、決定するために、電圧VSIN1およびVSIN2ならびに電圧VCOS1およびVCOS2を処理することができる。正弦および余弦信号から、インターフェース回路206は、0~360度の磁界の角度を決定することができる。
図4の実施形態において、インターフェース回路206は、シングルターン角度出力データST_Outputを提供する。
【0042】
図6Aは、センサーダイ300上の磁気抵抗センサー素子302が歯状歯車3および4のピッチに一致するように配列される、磁気角度センサー104(または106)の別の例を図示する。この例において、磁気抵抗センサー素子302を含む2つのホイートストンブリッジ、正弦出力のための第1のホイートストンブリッジ(領域304Aによって示される)、および余弦出力のための第2のホイートストンブリッジ(領域304Bによって示される)がある。2つの正弦領域304Aの間の距離Dsinおよび2つの余弦領域304Bの間の距離Dcosは両方とも、歯のピッチが各歯の対応する点から測定されるように、隣接する歯の間の距離である、歯のピッチの半分に等しい。
【0043】
図6B中の矢印によって示されるように、磁束密度Bを有するバイアス磁界が適用されるとき、各磁気抵抗センサー素子302の磁化は、同じ方向に整列される。
【0044】
図7A~
図7Bは、磁気センサー104が、
図1を参照して記載されるような磁気センサーシステムの一部として使用されるときの磁気整列への影響を図示する。センサー104は、バックバイアス磁石400と、歯状歯車402が第1の位置にある、歯状歯車402(部分的に示される)との間に配列される。歯車402は、磁界と相互作用して、磁界線を曲げさせ、これにより、
図7Bの矢印によって図示されるように、磁気抵抗素子の磁化は、異なる正弦領域304Aおよび余弦領域304Bの方向を変化させる。
【0045】
歯状歯車402が回転するにつれて、磁界は、連続的に変化し、1つの回転ピッチあたりセンサー信号に正弦波変化を引き起こす。
図8Aにおいて、歯状歯車402は、4分の1のピッチで移動し、磁石界方向を変化させ、これにより、
図8Bの矢印によって再び図示されるように、磁気抵抗素子302の磁気整列を変化させ、それによって異なるセンサー読み取りを与える。
【0046】
応用
本明細書で論じられる原理および利点のうちのいずれかは、上で記載のシステムに限らず、他のシステムに適用されることができる。いくつかの実施形態は、本明細書に記載される特徴および/または利点のサブセットを含むことができる。上で記載の様々な実施形態の要素および動作は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされることができる。本明細書で論じられる方法の行為は、必要に応じて任意の順序で実施されることができる。さらに、本明細書で論じられる方法の行為は、必要に応じて、連続的にまたは並列的に実施されることができる。回路は、特定の構成において図示されるが、他の同等の構成が可能である。
【0047】
本明細書で論じられる原理および利点のいずれかは、本明細書の教示のいずれかから利益を得ることができる任意の他のシステム、装置、または方法と関連して実装されることができる。例えば、本明細書で論じられる原理および利点のいずれかは、回転磁界に由来する回転角度位置データを補正する任意のデバイスに関連して実装されることができる。追加的に、デバイスは、磁界を感知することが可能である任意の磁気抵抗またはHall効果デバイスを含むことができる。
【0048】
本開示の態様は、様々な電子デバイスまたはシステムに実装されることができる。例えば、本明細書で論じられる原理および利点のいずれかに従って実装される位相補正方法およびセンサーは、様々な電子デバイスおよび/または様々なアプリケーションに含まれることができる。電子デバイスおよびアプリケーションの例は、サーボ、ロボット、航空機、潜水艦、歯ブラシ、生物医学的感知デバイス、ならびに半導体ダイおよび/またはパッケージ化モジュール、電子試験機器などの消費者向け電子製品の部分などを含むが、これらに限定されない。さらに、電子デバイスは、産業用、自動車用、および/または医療用の製品を含む、未完成の製品を含むことができる。
【0049】
文脈が別途明確に要求しない限り、記載および特許請求の範囲を通して、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」などの語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「含んでいるが、これらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。本明細書で概して使用される「結合された」または「接続された」という語は、直接接続され得るか、または1つ以上の中間要素によって接続され得る2つ以上の要素を指す。このように、図に示される様々な概略図は、要素および構成要素の例示的な構成を描写するが、追加の介在要素、デバイス、特徴、または構成要素は、実際の実施形態において存在し得る(描写される回路の機能性が悪影響を受けないと仮定する)。本明細書で使用される「に基づく」という語は、概して、「にのみ基づく」こと、および「少なくとも部分的に基づく」ことを包含することが意図される。追加的に、単語「本明細書」、「上記」、「下記」、および同様の意味の語は、この出願において使用されるとき、この出願全体を指すべきであり、この出願の任意の特定の部分を指すべきではない。文脈が許容するとき、単数または複数の数値を使用する詳細な記載における単語はまた、それぞれ、複数または単数の数値を含み得る。2つ以上の項目のリストを参照する単語「または」は、単語の以下の解釈、リスト内の任意の項目、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組み合わせ、のすべてを網羅することが意図されている。本明細書で提供されるすべての数値または距離は、測定誤差内に類似の値を含むことが意図される。
【0050】
特定の実施形態が記載されている一方、これらの実施形態は、単に例として提示されており、本開示の範囲を限定することを意図しない。実際、本明細書に記載される新規の装置、システム、および方法は、様々な他の形態で具現化され得る。さらに、本明細書に記載される方法およびシステムの形態における様々な省略、置換および変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行われ得る。