(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】脱線防止装置
(51)【国際特許分類】
E01B 5/18 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
E01B5/18
(21)【出願番号】P 2021191805
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】飯田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】葛田 理仁
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭14-003990(JP,Y1)
【文献】実公第005347(大正12年)(JP,Y1T)
【文献】実公昭12-012644(JP,Y1)
【文献】実開平03-122101(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌間を隔てて配置された第1のレール及び第2のレールを有する鉄道用軌道に設けられる脱線防止装置であって、
前記第1のレールの軌道内側に配置され前記第1のレールに沿って伸びた第1のガード部材と、
前記第2のレールの軌道内側に配置され前記第2のレールに沿って伸びた第2のガード部材と、
まくらぎ方向に沿って前記第1のガード部材と前記第2のガード部材との間に設けられ、前記第1のガード部材又は前記第2のガード部材の一方から入力される軌道内側向きの荷重を、前記第1のガード部材と前記第2のガード部材の他方へ伝達する荷重伝達部材とを備え
、
前記荷重伝達部材は、前記第1のレール及び前記第2のレールが取り付けられるまくらぎ又は道床の上面部に載置されること
を特徴とする脱線防止装置。
【請求項2】
前記荷重伝達部材を前記まくらぎ又は前記道床に固定する固定手段を有すること
を特徴とする請求項
1に記載の脱線防止装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記荷重伝達部材と前記まくらぎ又は前記道床との間に軌道の長手方向に沿って所定以上の荷重が作用した場合に、前記荷重伝達部材と前記まくらぎ又は前記道床との固定を解除すること
を特徴とする請求項
2に記載の脱線防止装置。
【請求項4】
一方のガード部材へ入力された荷重を第1、第2のガード部材の双方を介し
て軌道を構成する部材へ伝達すること
を特徴とする請求項
1,2又は3記載の脱線防止装置。
【請求項5】
前記荷重伝達部材は、まくらぎ方向の長さを調節可能な調整機構を有すること
を特徴とする請求項1
~4いずれか1項に記載の脱線防止装置。
【請求項6】
前記荷重伝達部材が前記第1のガード部材と前記第2のガード部材との少なくとも一方と対向する端面部を、上方から見た平面視において軌道外側が凸となる凸曲面としたこと
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の脱線防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の軌道に設けられ車両の脱線を防止する脱線防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大規模地震の発生時に、鉄道車両に著大な動揺が発生し、車輪とレールとの左右相対変位が限界を超えて脱線に至る事象が発生している。
このような地震による脱線を防止するための技術として、例えば非特許文献1には、スラブ道床に固定され、輪軸が軌道に対して左右方向に動揺した場合に、フランジの軌道内側の面部と当接して、輪軸のさらなる左右動を規制し、脱線を防止する脱線防止ガードが記載されている。
また、非特許文献2には、新幹線用に対して簡素な構造である在来線用の脱線防止ガードによっても、地震時にある程度の脱線防止効果を得ることはできるが、脱線防止ガードの支持剛性が低く、車輪との接触時には数十mm程度のガード材の変位が生じていることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】関雅樹、小長井一男、村松浩成、渡邊康人、可知隆、古関潤一「地震時の脱線防止ガードに関する研究」土木学会論文集F6(安全問題),Vol.69, No.1, 1-18, 2013.
【文献】飯田浩平、葛田理仁「在来線車両の地震時走行安全性を向上する」RRR Vol.78 No.4 2021.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば新幹線においては、非特許文献1に記載されたように、地震対策として強固な脱線防止ガードが開発されている。
一方、在来線においては、軌間が狭いため新幹線相当の脱線防止装置を設けることが困難である。
また、設置に要するコストや工数の観点からも、構造が簡単な地震時脱線防止策が求められている。
例えば、非特許文献1に記載された技術の場合、脱線防止ガードはPCまくらぎ等に多数のボルトで強固に締結する必要があるため、既設の線区に対して適用する場合、まくらぎの交換などが必要となって施工作業が煩雑となり、コストも増大してしまう。
一方、在来線用の脱線防止ガードでは、車輪が衝突した際の変位量が大きく、脱線防止効果をより向上するため、簡単な構成によりガード部材の支持剛性を向上することが求められている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡素な構造により高い脱線防止効果が得られる脱線防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の脱線防止装置は、所定の軌間を隔てて配置された第1のレール及び第2のレールを有する鉄道用軌道に設けられる脱線防止装置であって、前記第1のレールの軌道内側に配置され前記第1のレールに沿って伸びた第1のガード部材と、前記第2のレールの軌道内側に配置され前記第2のレールに沿って伸びた第2のガード部材と、まくらぎ方向に沿って前記第1のガード部材と前記第2のガード部材との間に設けられ、前記第1のガード部材又は前記第2のガード部材の一方から入力される軌道内側向きの荷重を、前記第1のガード部材と前記第2のガード部材の他方へ伝達する荷重伝達部材とを備えることを特徴とする。
これによれば、鉄道車両の脱線時に、第1のガード部材、第2のガード部材の一方に車輪が衝突した際に、車輪からガード部材に入力される軌道内側への荷重を、荷重伝達部材の長手方向に沿った軸力として他方のガード部材に伝達することができる。
これにより、一方のガード部材へ入力された荷重を第1、第2のガード部材の双方を介してレール等の軌道を構成する部材へ伝達することができる。
このため、第1、第2のガード部材の実質的な支持剛性を概ね2倍とし、脱線防止効果を向上することができる。
【0006】
本発明において、前記荷重伝達部材は、まくらぎ方向の長さを調節可能な調整機構を有する構成とすることができる。
これによれば、荷重伝達部材の両端部が第1のガード部材、第2のガード部材に当接し、あるいは、所望の間隔を隔てて対向するよう荷重伝達部材の長さを調整することにより、第1のガード部材、第2のガード部材の間隔のばらつきに関わらず確実に上述した効果を得ることができる。
また、保線作業などで荷重伝達部材を着脱する場合には、荷重伝達部材の長さを短縮することにより、作業を容易に行うことができる。
【0007】
本発明において、前記荷重伝達部材は、前記第1のレール及び前記第2のレールが取り付けられるまくらぎ又は道床の上面部に載置される構成とすることができる。
これによれば、荷重伝達部材の自重を支えるために専用の構造物を設ける必要がなく、既設の軌道に容易に本発明を適用することができる。
この場合、前記荷重伝達部材を前記まくらぎ又は前記道床に固定する固定手段を有する構成とすることができる。
これによれば、荷重伝達部材の両端部を第1、第2のガード部材に当接させない場合であっても、荷重伝達部材が車両の通常走行時の振動などによって移動し、ずれが生じることを防止できる。
さらにこの場合、前記固定手段は、前記荷重伝達部材と前記まくらぎ又は前記道床との間に軌道の長手方向に沿って所定以上の荷重が作用した場合に、前記荷重伝達部材と前記まくらぎ又は前記道床との固定を解除する構成とすることができる。
これによれば、脱線が生じて第1、第2のガード部材の間を車輪が走行した場合に、車輪と荷重伝達部材との衝突に応じて荷重伝達部材がまくらぎ等から脱落し、あるいは軌道内で押し退けられることで、車両及び軌道の被害が拡大することを防止できる。
【0008】
本発明において、前記荷重伝達部材が前記第1のガード部材と前記第2のガード部材との少なくとも一方と対向する端面部を、上方から見た平面視において軌道外側が凸となる凸曲面とした構成とすることができる。
これによれば、保線作業などで荷重伝達部材を取り外す際に、荷重伝達部材を軌道に対して鉛直軸回りに回動させることにより、第1、第2のガード部材を取り外したりずらしたりすることなく容易に荷重伝達部材を取り外すことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、簡素な構造により高い脱線防止効果が得られる脱線防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した脱線防止装置の第1実施形態を有する軌道を上方から見た模式的平面図である。
【
図3】本発明を適用した脱線防止装置の第2実施形態を有する軌道をレール長手方向から見た模式的立面図である。
【
図4】本発明を適用した脱線防止装置の第3実施形態を有する軌道をレール長手方向から見た模式的立面図である。
【
図5】本発明を適用した脱線防止装置の第4実施形態を有する軌道を上方から見た模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した脱線防止装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の脱線防止装置は、鉄道用の軌道に設けられ、例えば地震などにより発生する車両の左右方向(まくらぎ方向)の動揺により、車両が脱線することを防止あるいは抑制するものである。
なお、第1実施形態の脱線防止装置は、一例として軌間1067mm等の狭軌の軌道において効果的に脱線を防止可能なものであるが、適用対象となる軌道の軌間は特に限定されず、標準軌(期間1435mm)や、これよりも軌間が広い広軌であってもよい。
【0012】
図1は、第1実施形態の脱線防止装置を有する鉄道用軌道を上方から見た模式的平面図である。
図2は、
図1のII-II部矢視図である。
軌道1は、レール10、まくらぎ20、レール締結装置30、脱線防止ガード40等を有して構成されている。
【0013】
レール10は、まくらぎ20に、レール締結装置30により締結されている。
レール10は、例えば、平底の普通レールであって、左右一対が所定の軌間離間した状態で平行に配置されている。
レール10は、頭部11、腹部12、底部13等を有して構成されている。
頭部11は、レール10の上部に設けられ、図示しない車輪と接するとともに、車輪の転動を案内する部分である。
腹部12は、頭部11の下部における幅方向中央部から、下方へ張り出して形成された平板状の部分である。
腹部13は、レール10をまくらぎ20に取り付けるための基部となる部分である。
底部13は、腹部12の下端部から左右へ張り出して形成されている。
【0014】
まくらぎ20は、一例として、コンクリートの内部に鋼棒などの芯材が埋設されたプレストレストコンクリート(PC)まくらぎである。
まくらぎ20は、軌道を上方から見た平面視においてレール10の延在方向(列車進行方向)と直交する長手方向を有する柱状の部材である。
まくらぎ20には、レール締結装置30のボルトが締結される図示しない埋込栓が設けられている。
まくらぎ20は、例えば砕石等からなるバラストを突き固めて構成されたバラスト道床などの道床に載置されている。
【0015】
レール締結装置30は、レール10をまくらぎ20に固定して軌間を保持し、温度変化や列車の制動で生ずるレールふく進に抵抗するとともに、列車の車輪からレール10に入力される衝撃を緩和してまくらぎ20に伝達する機能を有する。
レール締結装置30は、レール10の底部13をばねで上方から抑えるとともに、ばねをボルトによりまくらぎ20に設けられたばね受け台に締結する。
【0016】
脱線防止ガード40は、左右のレール10の軌道内側(他方のレール側)にそれぞれ設けられ、レール10に沿って延在する長尺部材(第1のガード部材、第2のガード部材)である。
脱線防止ガード40は、長手方向と直交する平面で切って見た断面形状において、側面部41、上面部42を有する上下反転したL字状に形成されている。
側面部41は、上下方向に沿った幅方向を有する帯板状の部分であって、レール10の軌道内側の側面部と所定の間隔を隔てて対向して配置されている。
上面部42は、側面部41の上端部から、水平方向にほぼ沿って軌道内側へ張り出したフランジ状の部分である。
【0017】
脱線防止ガード40は、長手方向における複数箇所(典型的にはまくらぎ数本程度の間隔)において、図示しない締結具によって、レール10に取り付けられている。
このような脱線防止ガード40として、例えば車両の通常走行時(非地震発生時)の脱線抑制対策として設置されている既設の脱線防止ガードを利用することができる。
【0018】
第1実施形態において、軌道1には、さらに荷重伝達部材50が設けられる。
荷重伝達部材50は、脱線防止ガード40と協働して、第1実施形態の脱線防止装置を構成する。
荷重伝達部材50は、まくらぎ20に沿って延在する柱状の部材である。
荷重伝達部材50は、まくらぎ20の上面部に載置され、自重によって所定の設置位置に保持される。なお、第1実施形態においては、荷重伝達部材50は、まくらぎ20には固定していない。
荷重伝達部材50は、左右の脱線防止ガード40にわたして設けられる。
荷重伝達部材50の長手方向(まくらぎ方向)における端部51は、脱線防止ガード40の上面部42の下側に配置されている。
端部51の端面は、脱線防止ガード40の側面部41の軌道内側の面部に当接し、あるいは、微小な間隔を隔てて対向して配置される。
荷重伝達部材50は、例えば、レール10の長手方向に沿って所定の間隔で複数本が繰り返し配置される構成とすることができる。
なお、荷重伝達部材50の端部51が、レール締結装置30と干渉することを防止するため、端部51に例えば切り欠き部、凹部などの干渉防止部を設けることができる。
【0019】
荷重伝達部材50は、信号装置等の各種電気機器、電子機器類への影響がない場合には、例えば、鋼、アルミニウム系合金などの金属材料からなる構成とすることができる。
また、信号装置等への影響が懸念される場合には、例えば、ガラス長繊維の補強材と硬質発泡ウレタン等の樹脂材料の複合材(例えば合成まくらぎの材料と同様の材料)など、非導電性材料を用いてもよい。
【0020】
第1実施形態において、例えば大規模地震の発生により、鉄道車両の輪軸(車軸の両端部に左右一対の車輪を固定した部材)がまくらぎ方向に著大な動揺を示した場合、左右一方の車輪の内面は、一方の脱線防止ガード40の側面部に衝突する場合がある。
このとき、車輪から一方の脱線防止ガード40に入力されたまくらぎ方向の荷重の一部は、荷重伝達部材50の長手方向に沿った圧縮軸力として他方の脱線防止ガード40に伝達される。
【0021】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)鉄道車両の脱線時に、左右の脱線防止ガード40の一方に車輪が衝突した際に、車輪から脱線防止ガード40に入力される軌道内側への荷重を、荷重伝達部材50の長手方向(まくらぎ方向)に沿った軸力として他方の脱線防止ガード40に伝達することができる。
これにより、一方の脱線防止ガード40へ入力された荷重を、左右の脱線防止ガード40を介してレール10等の軌道1を構成する部材へ伝達することができる。
このため、各脱線防止ガード40の実質的な支持剛性を概ね2倍とし、地震時の脱線防止効果を向上することができる。
(2)荷重伝達部材50をまくらぎ20の上面に載置したことにより、荷重伝達部材50の自重を支えるために専用の構造物を設ける必要がなく、既設の軌道に容易に本発明を適用することができる。
また、万一脱線を阻止できず、左右車輪の一方が左右の脱線防止ガード40の間隔を走行(転動)する状態となった場合に、荷重伝達部材50がまくらぎ20から脱落し、あるいはまくらぎ20と隣接するバラスト道床の上部にずれるよう、軌道内で押し退けられることで、車両及び軌道1の被害が拡大することを防止できる。
【0022】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した脱線防止装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と同様の箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、第2実施形態の脱線防止装置を有する軌道をレール長手方向から見た模式的立面図である。
【0023】
第2実施形態においては、荷重伝達部材50を、長手方向における中間部において第1部材52、第2部材53に二分割している。
第1部材52と第2部材53との間には、第1部材52と第2部材53との間隔を調整して荷重伝達部材50の全長を調整する調整機構60が設けられている。
【0024】
調整機構60は、ネジ部61,62、及び、被係合部63等を有する。
ネジ部61,62は、円柱状の部材の両端部にそれぞれ形成された同心のボルト部である。
ネジ部61,62の一方は一般的な右ネジであり、他方は逆ネジ(左ネジ)となっている。
ネジ部61,62は、荷重伝達部材50の第1部材52、第2部材53にそれぞれ設けられた図示しない埋込ナット(埋込栓)に締結される。
被係合部63は、作業者がネジ部61,62を回転させるための工具が係合される部分である。
被係合部63は、ネジ部61,62の中間部に設けられ、これらの軸心方向から見た形状が例えば正六角形となっている。
作業者は、例えば片口スパナ(片口レンチ)などの工具を用いて、被係合部63を回転させることにより、第1部材52と第2部材53との間隔を変化させ、荷重伝達部材50の全長を調節可能となっている。
【0025】
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、荷重伝達部材50の両側の端部51が左右の脱線防止ガード40にそれぞれ当接し、あるいは、所望の間隔を隔てて対向するよう荷重伝達部材50の長さを調整することにより、左右の脱線防止ガード40の間隔のばらつきに関わらず確実に上述した効果を得ることができる。
また、保線作業などで荷重伝達部材50を着脱する場合には、荷重伝達部材50の長さを短縮することにより、作業を容易に行うことができる。
【0026】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した脱線防止装置の第3実施形態について説明する。
図4は、第3実施形態の脱線防止装置を有する軌道をレール長手方向から見た模式的立面図である。
第3実施形態においては、荷重伝達部材50を、まくらぎ20に、例えばボルト等の固定治具(固定手段)70によって締結している。
固定治具70は、例えば、荷重伝達部材50の中間部に、まくらぎ方向に間隔を有して複数箇所(例えば2箇所)に設けることができる。
固定治具70が例えばボルトである場合には、まくらぎ20に図示しない埋込ナットを埋設し、荷重伝達部材50に形成された開口を介して、上方からボルトを挿入し、締結する構成とすることができる。
【0027】
固定治具70は、まくらぎ20と荷重伝達部材50との間に、レール長手方向(車両の進行方向)に沿って所定以上の荷重が負荷された場合に、荷重伝達部材50をまくらぎ20から脱落(固定を解除)させる構成とすることが好ましい。
例えば、固定治具70がボルトである場合には、せん断強度を適宜設定することにより、所定の荷重が負荷された場合にボルトがせん断破壊する構成とすることができる。
【0028】
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)荷重伝達部材50の両側の端部51を、左右の脱線防止ガード40に当接させない場合であっても、荷重伝達部材50が車両の通常走行時の振動などによって移動し、ずれが生じることを防止できる。
(2)締結治具70が、所定の荷重の入力に応じて、荷重伝達部材50とまくらぎ20との固定を解除することにより、脱線が生じて左右の脱線防止ガード40の間を車輪が走行した場合に、車輪と荷重伝達部材50との衝突に応じて荷重伝達部材50がまくらぎ20から脱落し、あるいはまくらぎ20と隣接するバラスト道床の上部にずれるよう、軌道内で押し退けられることで、車両及び軌道1の被害が拡大することを防止できる。
【0029】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した脱線防止装置の第4実施形態について説明する。
図5は、第4実施形態の脱線防止装置を有する鉄道用軌道を上方から見た模式的平面図である。
第4実施形態においては、軌道1の上方から見たときの荷重伝達部材50の端部51の端面(脱線防止ガード40の側面部41と対向する面)の形状を、軌道外側が凸となるよう円弧状に湾曲した凸曲面としている。
以上説明した第4実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、例えば保線作業などのために軌道1から荷重伝達部材50を取り外す必要がある場合に、左右の脱線防止ガード40を取り外したり、間隔を広げたりする等の作業を行うことなく、荷重伝達部材50を鉛直軸回りに回動させて容易に取り外すことができる。
なお、第4実施形態の構成において、第3実施形態と同様の固定治具を設けてもよい。
【0030】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
(1)軌道及び脱線防止装置の構成は、上述した各実施形態の構成に限定されることなく、適宜変更することができる。
例えば、各実施形態における軌道は、バラスト道床にまくらぎを載置して構成されているが、本発明はこれに限らず、例えばスラブ道床などの他の道床を有する軌道にも適用することができる。
この場合、荷重伝達部材はスラブ道床等の上面部に載置される構成とすることができる。
また、固定治具は、荷重伝達部材をスラブ道床等に固定する構成とすることができる。
また、バラスト道床を有する軌道においては、バラスト道床の上面に荷重伝達部材を設置する構成としてもよい。この場合、荷重伝達部材をまくらぎの上面に載置する構成に対して、レール締結装置との干渉が生じにくい効果がある。
(2)荷重伝達部材、ガード部材の形状、構造、材質、製法、配置や、ガード部材の軌道への取り付け手法は、各実施形態の構成に限らず適宜変更することができる。
例えば、各実施形態において、ガード部材(脱線防止ガード)は一例としてレールに取り付けられているが、まくらぎやスラブ道床に取り付けられる構成としてもよい。
(3)各実施形態の特徴構成は、他の実施形態の特徴構成と組み合わせて適用することが可能である。
例えば、第2実施形態の調整機構60、第3実施形態の固定治具70や、第4実施形態の荷重伝達部材50の凸面状の端部51の形状を、同一の荷重伝達部材に設ける構成とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 軌道 10 レール
11 頭部 12 腹部
13 底部 20 まくらぎ
30 レール締結装置 40 脱線防止ガード
41 側面部 42 上面部
50 荷重伝達部材 51 端部
52 第1部材 53 第2部材
60 調整機構 61 ネジ部
62 ネジ部 63 被係合部
70 固定治具