(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】単一アッセイを使用した複数の分析物の分析
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20241021BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241021BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20241021BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C40B40/08 ZNA
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
(21)【出願番号】P 2021515465
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019062945
(87)【国際公開番号】W WO2020112604
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】スティーマーズ, フランク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ファン
(72)【発明者】
【氏名】ポコロック, ディミトリー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ノーバーグ, スティーブン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509140(JP,A)
【文献】国際公開第2018/064640(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218226(WO,A1)
【文献】NATURE METHODS,2016年11月,VOL:13, NR:11,PAGE(S):953-958(1-21),http://dx.doi.org/10.1038/nmeth.4028
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一コンパートメントにおいてRNA及びDNAから同時に生成される核酸ライブラリであって、
mRNA分子に由来し
、第1のタグを有する核酸を含む
第2の鎖相補的DNA(cDNA)ライブラリと、
ポリAトランスポゾンを有するトランスポソームを使用して第2のタグ及び3’ポリA尾部によりタグメント化されたゲノムDNAに由来する
、ゲノムDNA(gDNA)ライブラリと、
を含
み、
前記cDNA及びgDNAライブラリが共コンパートメント化され、同じ環境で調製される、核酸ライブラリ。
【請求項2】
前記gDNAライブラリが、タグメンテーション試薬を
用いて得られる、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項3】
前記タグメンテーション試薬が、
前記3’ポリA尾部を前記gDNAに結合させる、請求項2に記載の核酸ライブラリ。
【請求項4】
前記第1のタグが
前記mRNA分子の逆転写によって
前記第2の鎖cDNAに結合されることによって、第1の鎖cDNAを生成し、その後、タグメンテーションもしくは鋳型スイッチングが行われ、前記3’ポリA尾部がタグメンテーションによって前記gDNAに結合される、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項5】
前記核酸ライブラリが固体支持体に結合している、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項6】
前記固体支持体が、基質、エッチングされた表面、ウェル、被覆されたウェル、密封されたウェル、アレイ、フローセル装置、マイクロ流体チャネル、ビーズ、磁気ビーズ、カラム、液滴、又は微粒子である、請求項5に記載の核酸ライブラリ。
【請求項7】
前記第1及び第2のタグが基質認識配列を更に含む、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項8】
前記第1のタグの前記基質認識配列が、前記第2のタグの前記基質認識配列と同じである、請求項7に記載の核酸ライブラリ。
【請求項9】
前記第1及び第2のタグが同じである、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項10】
前記核酸ライブラリが、細胞の集団、単一の細胞、細胞核の集団、又は単一の細胞核から作製される、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項11】
前記第1のタグがポリAタグである、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項12】
前記
gDNAの前記3’ポリA尾部がトランスポザーゼ特異的要素を含む、請求項1に記載の核酸ライブラリ。
【請求項13】
試料からの
単一コンパートメントにおいてgDNA及びRNA
ライブラリを同時に
調製する方法であって、
gDNA及びRNAを含む試料を提供することであって、前記RNAは
3’ポリA尾部を含む、提供することと、
タグ付けされたgDNAを生成するように、ポリAトランスポゾンを有するトランスポソームを使用して3’ポリA尾部でgDNAをタグメント化することと、
単一コンパートメント中の前記試料を、前記RNAを捕捉するための
第1の共通配列(CS1)を含む第1の
ポリT捕捉プローブ及び前記タグ付けされた
gDNAを捕捉するための前記
CS1を含む第2の
ポリT捕捉プローブと接触させることであって、前記第1の
ポリT捕捉プローブは第1のバーコードを含み、前記第2の
ポリT捕捉プローブは第2のバーコードを含み、前記第1のバーコード及び前記第2のバーコードが、前記RNAと
gDNAの共通の供給源を識別する、接触させることと、
前記第1の
ポリT捕捉プローブを前記RNAに、及び前記第2の
ポリT捕捉プローブを前記
タグ付けされたgDNAにハイブリダイズし、それによって
前記タグ付けされたgDNAと
前記RNAを同時に捕捉することと、
前記RNAを、cDNAに変換させることと、
前記cDNA及び前記タグ付けされたgDNAをタグメント化して第2の共通配列(CS2)と分子インデックスを組み込むことと、
cDNAライブラリとgDNAライブラリとを同時に生成することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の
ポリT捕捉プローブが固体支持体上に固定化されている、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の
ポリT捕捉プローブが基質認識配列を更に含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の
ポリT捕捉プローブの前記基質認識配列が、前記第2の
ポリT捕捉プローブの前記基質認識配列と同じである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、細胞の集団、単一細胞、細胞核の集団、又
は細胞核である、請求項
13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の
ポリT捕捉プローブが、前記
3’ポリA尾部に特異的に結合する捕捉タグを含み、前記第2の
ポリT捕捉プローブが、前
記3’ポリA尾部に特異的に結合する捕捉タグを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記
タグ付けされたgDNAの前記3’ポリA尾部が、前記
RNAの前記3’ポリA尾部と同じであ
る、請求項
13に記載の方法。
【請求項20】
前記RNA及び
前記gDNAが、ライゲーション、逆転写(RT)、転位、又は他のインデックス化手段を使用して、前記
3’ポリA尾部で修飾される、請求項
13に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2のバーコードが同じであ
る、請求項
13に記載の方法。
【請求項22】
前記固体支持体が、基質、エッチングされた表面、ウェル、被覆されたウェル、密封されたウェル、アレイ、フローセル装置、マイクロ流体チャネル、ビーズ、磁気ビーズ、カラム、液滴、又は微粒子である、請求項
14に記載の方法。
【請求項23】
DNA分析、RNA分析、タンパク質分析、タグメンテーション、核酸増幅、核酸配列決定
、シーケンシングを使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイ(ATAC-seq)、連続性保存転位(CPT-seq)、単一細胞のコンビナトリアルインデクシングによる配列決定(SCI-seq)、又は単一細胞ゲノム増幅、又はこれらの任意の組合せを
さらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項24】
第3のタグでタグ付けされているタンパク質を前記単一コンパートメントにおいて同時に分析することを更に含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が細胞を含み、前記細胞が固定剤で固定されている、請求項
13に記載の方法。
【請求項26】
前記固定剤が、メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、又はパラホルムアルデヒドなどのアルデヒドを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
gDNA及びcDNAを含
む単一コンパートメントにおいて
RNA及びDNAライブラリを同時に作製する方法であって、
gDNA及びRNAを含む試料を提供することであって、前記RNAは
3’ポリA尾部を含む、提供することと、
ポリAトランスポゾンを有するタグ付けされたgDNAを生成するように、トランスポソームを使用して3’ポリA尾部でgDNAを
タグメント化することと、
単一コンパートメントにおいて前記試料を、前記RNAを捕捉するための
第1の共通配列(CS1)を含む第1の
ポリT捕捉プローブ及び前記タグ付けされた
gDNAを捕捉するための
前記CS1を含む第2の
ポリT捕捉プローブと接触させることであって、前記第1の
ポリT捕捉プローブは第1のバーコードを含み、前記第2の
ポリT捕捉プローブは第2のバーコードを含み、前記第1のバーコード及び前記第2のバーコードが、前記
gDNAとRNAの共通の供給源を識別する、接触させることと、
前記第1のポリT捕捉プローブを前記RNA
に、前記第2のポリT捕捉プローブを前記タグ付けされたgDNA
にハイブリダイズ
し、それによって、前記タグ付けされたgDNA及び前記RNAを同時に捕捉することと、
前記RNAをcDNAに変換させることと、
前記cDNA及び前記タグ付けされたgDNAをタグメント化して第2の共通配列(CS2)と分子インデックスを組み込むことと
を含む方法。
【請求項28】
前記第1及び第2の
ポリT捕捉プローブが固体支持体上に固定化されている、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1及び第2の
ポリT捕捉プローブが基質認識配列を更に含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の
ポリT捕捉プローブの前記基質認識配列が、前記第2の
ポリT捕捉プローブの前記基質認識配列と同じである、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が、細胞の集団、単一細胞、細胞核の集団、又
は細胞核である、請求項
27に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の
ポリT捕捉プローブが、前記
3’ポリA尾部に特異的に結合する捕捉タグを含み、前記第2の
ポリT捕捉プローブが、前記
3’ポリA尾部に特異的に結合する捕捉タグを含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項33】
前記タグ
付けされた
gDNAの3’ポリA尾部が、前記RNAの前記3’ポリA尾部と同じであ
る、請求項
27に記載の方法。
【請求項34】
前記RNA及び
前記gDNAが、ライゲーション、逆転写(RT)、転位、又は他のインデックス化手段を使用して、
前記3’ポリA尾部で修飾される、請求項
27に記載の方法。
【請求項35】
前記第1及び第2のバーコードが同じである
、請求項
27に記載の方法。
【請求項36】
前記固体支持体が、基質、エッチングされた表面、ウェル、被覆されたウェル、密封されたウェル、アレイ、フローセル装置、マイクロ流体チャネル、ビーズ、磁気ビーズ、カラム、液滴、又は微粒子である、請求項
28に記載の方法。
【請求項37】
前記試料が細胞を含み、前記細胞が固定剤で固定されている、請求項
27に記載の方法。
【請求項38】
前記固定剤が、メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、又はパラホルムアルデヒドなどのアルデヒドを含む、請求項
37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提供されるシステム、方法、及び組成物は、単一試料中の複数の分析物を同時に分析するためのアッセイに関する。具体的には、本明細書に開示される態様は、単一のアッセイにおいて単一の試料由来のDNA及びRNAを分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的試料中に存在する特定の核酸配列の検出は、例えば、微生物を同定及び分類する、感染症を診断する、遺伝子異常を検出及び特徴付ける、癌に関連する遺伝的変化を同定する、疾患に対する遺伝的感受性を調べる、並びに様々な種類の治療に対する応答を測定するための方法として使用されてきた。生物学的試料中の特定の核酸配列を検出するための一般的な技術は、核酸配列決定である。
【0003】
全ゲノムシーケンシング、遺伝子型決定、標的リシーケンシング、遺伝子発現、単一細胞ゲノミクス、エピゲノミクス、及び組織試料のタンパク質発現分析は、疾患のバイオマーカを識別し、疾患を正確に診断及び予後判定し、患者のための適切な治療を選択するために非常に重要であり得る。多くの場合、これは、DNA、RNA、又はタンパク質などの関心対象の特定の分析物を別々に分析するための複数のアッセイを必要とする。これらの分析物を別々に及び個々に分析するための様々なアッセイが確立されている。しかしながら、複数の分析物の包括的な分析は時間がかかり、且つ面倒である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、単一のアッセイを使用して試料中の複数の分析物を同時に分析するためのシステム、方法、及び組成物に関する。
【0005】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、核酸ライブラリに関する。いくつかの実施形態では、ライブラリは、相補的DNA(cDNA)ライブラリ及びゲノムDNA(gDNA)ライブラリを含む。いくつかの実施形態では、cDNAライブラリはmRNA分子に由来し、第1のバーコードを含む第1のタグを有する核酸を含む。いくつかの実施形態では、gDNAライブラリはゲノムDNAに由来し、第2のバーコードを含む第2のタグを有する核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1のバーコード及び第2のバーコードは同じであるか又は異なり、第1のバーコード及び第2のバーコードは、cDNAライブラリ及びgDNAライブラリの共通の供給源を識別する。いくつかの実施形態では、cDNA及びgDNAライブラリは、共コンパートメント化され、同じ環境で調製される。いくつかの実施形態では、DNA用のタグとRNA用のタグは同じである。
【0006】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、フローセル装置に関する。いくつかの実施形態では、フローセル装置は、第1のバーコードと第1の基質認識配列を含む、RNAを捕捉するための第1のプローブ、及び第2のバーコードと第2の基質認識配列を含む、DNAを捕捉するための第2のプローブを含む。いくつかの実施形態では、第1のバーコード及び第2のバーコードは同じであるか又は異なり、第1のバーコード及び第2のバーコードは、RNAとDNAの共通の供給源を識別する。いくつかの実施形態では、第1のプローブ及び第2のプローブは、試料由来のRNA及びDNAを単一コンパートメントにおいて同時に分析するように構成される。第1及び第2の捕捉プローブが固体支持体上に固定化されている、請求項19に記載の方法。
【0007】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、試料からのDNA及びRNAを単一コンパートメントにおいて同時に分析する方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAを含む試料を提供することであって、RNAは第1のタグを含み、DNAを第2のタグで差別的にタグ付けすることと、単一コンパートメント中の試料を、RNAを捕捉するための第1の捕捉プローブ及びタグ付けされたDNAを捕捉するための第2の捕捉プローブと接触させることと、第1の捕捉プローブをRNAに、及び第2の捕捉プローブをDNAにハイブリダイズし、それによってRNAとDNAを捕捉することと、及びDNA及びRNAを分析することと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の捕捉プローブは第1のバーコードを含み、第2の捕捉プローブは第2のバーコードを含み、第1のバーコードと第2のバーコードは、RNAとDNAの共通の供給源を識別する。
【0008】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、gDNA及びcDNAを含む核酸ライブラリを単一コンパートメントにおいて同時に作製する方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAを含む試料を提供することであって、RNAは第1のタグを含み、DNAを第2のタグで差別的にタグ付けすることと、単一コンパートメントにおいて試料を、RNAを捕捉するための第1の捕捉プローブ及びタグ付けされたDNAを捕捉するための第2の捕捉プローブと接触させることと、RNAとDNAをそれぞれ第1と第2のプローブにハイブリダイズすることと、並びにハイブリダイズしたRNAとDNAからcDNAライブラリ及びgDNAライブラリを同時に作製することと、を含む。いくつかの実施形態では、第1のプローブは第1のバーコードを含み、第2のプローブは第2のバーコードを含み、第1のバーコード及び第2のバーコードは、RNAとDNAの共通の供給源を識別する。
【0009】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、試料中のDNA及びRNAを単一コンパートメントにおいて同時に分析するためのキットに関する。いくつかの実施形態では、キットは、転位試薬並びに第1のタグに相補的な第1のプローブ及び第2のタグに相補的な第2のプローブを含み、第1のプローブ及び第2のプローブは固体支持体上に固定化されており、第1のプローブは第1のバーコードを含み、第2のプローブは第2のバーコードを含み、第1及び第2のバーコードは、DNAとRNAの共通の供給源を識別する。
【0010】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、単一細胞ATAC-seq解析を実施する方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞又は核の集団を含む試料を提供することと、標的核酸上で連続性保存転位を実施することと、細胞又は核の集団を個々の液滴に分配することであって、単一の細胞又は核は単一の液滴に分配される、標的核酸をインデックス化すること、及びインデックス付き核酸を分析する、分配することを含む。
【0011】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、コンビナトリアルインデクシング(CPT-seq)の方法に関する。いくつかの実施形態では、この方法は、細胞又は核の集団を含む試料を提供することであって、標的核酸上で個別にインデックス化された連続性保存転位を実施することと、細胞又は核の集団を個々の液滴に分配すること、複数の細胞又は核は単一の液滴に分配され、単一の液滴内の複数の細胞又は核は固有のインデックスを有する、分配することと、標的核酸をインデックス化することと、及びインデックス付き核酸を分析することと、を含む。
【0012】
本明細書に要約される実施形態のいずれにおいても、分析物は、細胞の集団、単一細胞、細胞核の集団、又は1つの細胞核から得られる。本明細書に要約される実施形態のいずれにおいても、分析物は、分析物が何であるかに依存して、様々な分析を使用して分析される。例えば、分析には、DNA分析、RNA分析、タンパク質分析、タグメンテーション、核酸増幅、核酸配列決定、核酸ライブラリの作製、シーケンシングを使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイ(ATAC-seq)、連続性保存転位(CPT-seq)、単一細胞のコンビナトリアルインデクシングによる配列決定(SCI-seq)、又は単一細胞ゲノム増幅、又はこれらの任意の組合せが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】試料中の関心対象の複数の分析物を分析するための従来の方法を示す概略図であり、関心対象の各分析物は、2つの異なる観察で別々に分析される。
図1Bは、同じコンパートメント内の関心対象の異なる分析物を同時に測定するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【
図1B】試料中の関心対象の複数の分析物を分析するための従来の方法を示す概略図であり、関心対象の各分析物は、2つの異なる観察で別々に分析される。
図1Bは、同じコンパートメント内の関心対象の異なる分析物を同時に測定するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【0014】
【
図2】DNA及びRNAに結合するための異なるタグを使用した共アッセイの一実施形態を表示する概略図である。異なるタグは、RNA又はDNAを有する単一の細胞又は核に導入されるものとして示されている。単一の細胞又は核は、液滴内に封入されるか、又はプレートのウェル上で分離される。バーコードは、表面上に固定化されるか、又は溶液中に添加され、タグを介してDNA及びRNAを捕捉する。
【0015】
【
図3】DNA及びRNAに結合するための同じタグを使用した共アッセイの一実施形態を表示する概略図である。DNAは、最初に、ポリA尾部を含むようにトランスポソームによって断片化される。DNA断片及びmRNAの両方は、表面上又は溶液中に固定化されたバーコードを有するポリTオリゴヌクレオチドを使用してインデックス化される。DNA上で行われる転位反応は、DNAが内部トランスポゾン特異的配列によってRNAと区別されることを可能にする。
【0016】
【
図4】転位によってポリAトランスポゾンをゲノムDNAに導入するためのプロセスの一実施形態を表示する概略図である。核/細胞は、ポリT尾部を有するインデックス付きオリゴヌクレオチドで封入される。インデックス付きオリゴヌクレオチドを転位したgDNA断片にハイブリダイズ及びライゲートし、次いでmRNAとハイブリダイズして第1のcDNAを作製する。第2のcDNAの合成後、二本鎖cDNA及びgDNAを再び転位させて、他方の末端にPCRアダプタを付加する。次いで、断片をPCRによって増幅する。
【0017】
【
図5A】シーケンシングを使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイ(ATAC-seq)を概略的に表示する。
図5Aは、ATAC-seqの一般原理を図式的に示し、
図5Bは、単一細胞ATAC-seqを実施するための工程の概略を示す。
【
図5B】シーケンシングを使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイ(ATAC-seq)を概略的に表示する。
図5Aは、ATAC-seqの一般原理を図式的に示し、
図5Bは、単一細胞ATAC-seqを実施するための工程の概略を示す。
【0018】
【
図6A】バルク共アッセイの一実施形態を表示する概略図を示す。
図6Aに示すように、細胞核を単離し、DNAをポリA尾部でタグメント化する。タグメント化されたDNA及びmRNAをプローブで捕捉し、更なる分析のために精製する。
図6Bは、
図6Aのプロセスで使用されるDNA断片の更なる詳細を示す。
【
図6B】バルク共アッセイの一実施形態を表示する概略図を示す。
図6Aに示すように、細胞核を単離し、DNAをポリA尾部でタグメント化する。タグメント化されたDNA及びmRNAをプローブで捕捉し、更なる分析のために精製する。
図6Bは、
図6Aのプロセスで使用されるDNA断片の更なる詳細を示す。
【0019】
【
図7A】ビーズ共アッセイの一実施形態を表示する概略図を示す。
図7Aに示すように、細胞核を単離し、DNAをポリA尾部でタグメント化する。タグメント化されたDNA及びmRNAを、ビオチン捕捉を使用して捕捉する。
図7Bは、
図7Aのプロセスで使用されるDNA断片の更なる詳細を示す。
【
図7B】ビーズ共アッセイの一実施形態を表示する概略図を示す。
図7Aに示すように、細胞核を単離し、DNAをポリA尾部でタグメント化する。タグメント化されたDNA及びmRNAを、ビオチン捕捉を使用して捕捉する。
図7Bは、
図7Aのプロセスで使用されるDNA断片の更なる詳細を示す。
【0020】
【
図8】
図6A~6Bの配列決定バルク共アッセイからのデータを表示する。ATACライブラリの断片は、
図8で強調されているシグネチャME配列を有する。
【0021】
【
図9】のパネルA及びBは、
図6A~6Bの配列決定バルク共アッセイからのデータを表示する。作製されたライブラリを配列決定した。ATAC断片は、プロモータ領域の周辺の典型的な濃縮を示し(パネルA)、3’計数のためのRNA断片は、遺伝子の末端周辺のリード蓄積を示す(パネルB)。
【0022】
【
図10】SCI-seqなどのコンビナトリアルインデクシングを使用して実施される共アッセイの一実施形態を例示する概略図である。
【0023】
【
図11】コンビナトリアル配列決定を使用して共アッセイを実施する方法の一実施形態を例示する概略図である。
【0024】
【
図12】配列決定ワークフローの例示的な実施形態を表示し、バーコードが挿入されたビーズプールを示し、例示的なプライマを表示する。
【0025】
【
図13】細胞当たりのリード数を表示するグラフを示し、トランスポザーゼの増加が細胞当たりのリード数の増加をもたらすことを示す。
【0026】
【
図14】細胞型の混合物に関するATAC-seqを使用した単一細胞の感受性を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明では、添付の図面を参照し、添付の図面は本明細書の一部をなす。図面において、同様の記号は、文脈上特に指示されない限り、典型的には同様の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載される例示的な実施形態は、限定することを意図するものではない。本明細書に提示される主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を加え得る。本開示の態様は、本明細書に一般的に記載され、図面に例示されるように、多種多様な異なる構成で配置され、置換され、組み合わされ、分離され、及び設計され得ることが容易に理解され、それらのすべてが本明細書で明示的に企図されている。
【0028】
本明細書で提供されるシステム、方法、及び組成物の実施形態は、単一試料中の複数の分析物の同時分析に関する。いくつかの実施形態では、複数の分析物は、DNA及びRNAを含む。
【0029】
単一の試料から複数の分析物を分析する従来の方法は、個別の試薬の使用、及び、例えば
図1Aに示すように、関心対象の各分析物を単離し、次いで関心対象の各分析物を分析する工程を含む、個別のアッセイを必要とする。したがって、分析物は、時間及び/又は空間ごとに、例えば、異なる時間に又は異なるコンパートメントで別々に分析され得る。例えば、単一の試料由来のDNA及びRNAの両方を分析することが望ましい場合がある。従来の方法は、別々に、1つのアッセイを使用してDNAを分析し、別のアッセイを使用してRNAを分析するため、時間、コスト、及び資源の消費が増加する。更に、同じ試料にタンパク質などの更なる関心対象の分析物も含まれる場合があり、タンパク質の分析にも別個のアッセイが必要である。
【0030】
核酸ライブラリは、遺伝子産物を決定するため、又は全ゲノム配列決定のために有用である。統合的エピゲノム解析の迅速で高感度な方法である、シーケンシング(ATAC-seq)を使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイなどによって、エピゲノミクスにおける使用を含む、様々な種類のライブラリ、例えば、逆転写されたRNA又はゲノムDNA(gDNA)ライブラリから作製される相補的DNA(cDNA)ライブラリが作製され得る。従来、これらのライブラリは個別に独立して作製される。cDNAライブラリは、例えば、新規遺伝子の発見を含む多くの用途のため、遺伝子機能を研究するため、mRNA発現を決定するため、又は選択的スプライシングを決定するために有用であり得る。gDNAライブラリは、例えば、生物の完全なゲノムを決定すること、調節配列の機能を研究すること、又は遺伝子突然変異を研究することを含む、多くの別個の用途に有用であり得る。本明細書に記載される方法、組成物、及びシステムは、cDNA及びgDNAライブラリの両方の同時作製を可能にする。
【0031】
本発明の一実施形態は、単一のアッセイを使用して単一の試料中の複数の分析物を分析するためのシステム及び方法であり、関心対象の各分析物は、例えば
図1Bに示すように、単一コンパートメントにおいて同時に分析される。
図1Bは、試料中の2つの分析物を表示するが、2つより多い関心対象の分析物が存在する可能性があり、関心対象の各分析物が同時に分析され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載されるシステム、方法、及び組成物は、単一の試料中の複数の分析物の同時分析に関する。システム、方法、及び組成物の実施形態は、アッセイの複雑さ、コスト、及び時間を減少させることによって分析効率を改善する。
【0032】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、核酸ライブラリに関する。いくつかの実施形態では、核酸ライブラリは、mRNA分子に由来し、基質及びバーコード配列に結合するように構成された第1のタグを有する核酸を含むcDNAライブラリ、並びにゲノムDNAに由来し、基質に結合するように構成された第1のタグとは異なる第2のタグを有する核酸を含むgDNAライブラリを含む。いくつかの実施形態では、核酸ライブラリは、細胞の集団、単一細胞、細胞核の集団、又は1つの細胞核から作製される。いくつかの実施形態では、第1のタグはポリAタグである。いくつかの実施形態では、第2のタグは、トランスポザーゼ特異的要素を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、関心対象の各分析物をタグでタグ付けして、関心対象の各分析物をインデックス化することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、関心対象の各分析物を、タグに相補的なプローブで捕捉することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、関心対象の各分析物を分析することを更に含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料からのDNA及びRNAを同時に分析することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAを含む試料を提供することを含む。いくつかの実施形態では、RNAは第1のタグを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、第2のタグでDNAを差別的にタグ付けすることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、固体支持体を試料と接触させることを含み、固体支持体は、RNAを捕捉するための第1の固定化プローブと、タグ付きDNAを捕捉するための第2の固定化プローブとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAを固体支持体上に同時に捕捉することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAを分析することを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、試料は、関心対象の分析物を有する任意の試料を含む。試料は、例えば、全血、血清、間質液、リンパ液、脳脊髄液、痰、尿、便、乳、汗、涙、臍帯、末梢血、骨髄、細胞又は固形組織を含む、関心対象の分析物を有する生物学的試料などの、生物学的試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、細胞の集団、単一細胞、細胞核の集団、又は1つの細胞核である。試料は、対象から得ることができ、対象からの1つ以上の関心対象の分析物を分析することが望ましい。本明細書で使用される場合、「対象」とは、治療、観察、又は実験の対象である動物を指す。「動物」は、魚、甲殻類、爬虫類、及び特に哺乳動物などの、冷血及び温血脊椎動物及び無脊椎動物を含む。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、チンパンジー及び類人猿などの霊長動物、並びに特にヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、関心対象の複数の分析物を同時に分析する方法に関し、関心対象の分析物は、DNA、RNA、タンパク質、又は他の任意の細胞生体分子、又は関心対象の他の標的分子のうちの1つ以上である。
【0037】
試料は、環境源から得られた流体又は標本であり得る。例えば、環境源から得られる流体又は標本は、食品、農産物、鶏肉、食肉、魚、飲料、乳製品、水(廃水を含む)、池、川、貯水池、水泳用プール、土壌、食品加工及び/又は包装工場、農業用地、水産養殖(水耕食品農場を含む)、医薬品製造工場、動物コロニー施設、又はこれらの任意の組合せから得られる又はそれに由来し得る。いくつかの実施形態では、試料は、細胞培養物又は微生物コロニーから収集される又はそれに由来する流体又は標本である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「分析物」、「標的分析物」、「関心対象の分析物」は、互換的に使用され、本明細書に開示される方法及びシステムで測定される分析物を指す。いくつかの実施形態では、分析物は生体分子であり得る。生体分子の非限定的な例には、ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)、タンパク質、脂質、及び炭水化物などの高分子が含まれる。特定の例では、分析物は、ホルモン、抗体、成長因子、サイトカイン、酵素、受容体(例えば、神経、ホルモン、栄養素、及び細胞表面受容体)又はそれらのリガンド、癌マーカ(例えば、PSA、TNF-α)、心筋梗塞のマーカ(例えば、トロポニン、クレアチンキナーゼなど)、毒素、薬物(例えば、中毒薬物)、代謝剤(例えば、ビタミンを含む)などであり得る。タンパク質分析物の非限定的な実施形態には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質断片、タンパク質複合体、融合タンパク質、組換えタンパク質、リンタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、オリゴヌクレオチドでタグ付けされたタンパク質などが含まれる。標的分析物は核酸であり得る。
【0039】
標的核酸は、試料中の核酸の平均サイズが、約2kb、1kb、500bp、400bp、200bp、100bp、50bp、それ未満若しくはそれ以上、又は前述のサイズのいずれか2つの間の範囲である試料を含むことができる。いくつかの実施形態では、試料中の核酸の平均サイズは、約2000ヌクレオチド、1000ヌクレオチド、500ヌクレオチド、400ヌクレオチド、200ヌクレオチド、100ヌクレオチド、50ヌクレオチド、それ未満若しくはそれ以上、又は上記のサイズのいずれか2つの間の範囲である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、互換的に使用され得、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指すことができる。したがって、これらの用語は、一本鎖、二本鎖、又は多重鎖DNA又はRNAを含む。ポリヌクレオチドの例には、遺伝子又は遺伝子断片、全ゲノムDNA、ゲノムDNA、エピゲノムDNA、ゲノムDNA断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、調節RNA、転写RNA、リボソームRNA、非コードRNA(ncRNA)、例えばPIWI相互作用RNA(piRNA)、小さな干渉RNA(siRNA)、及び長鎖非コードRNA(lncRNA)、小さなヘアピンRNA(shRNA)、小さな核RNA(snRNA)、マイクロRNA(miRNA)、小さな核RNA(snoRNA)及びウイルスRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、プライマ、又は前述のいずれかの増幅されたコピーが含まれる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチド、及び非天然塩基を有するヌクレオチド、アザプリン又はデアザプリンなどの修飾天然塩基を有するヌクレオチドを含むヌクレオチド類似体を含むことができる。ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);及びチミン(T)の特定の配列で構成することができる。ウラシル(U)はまた、例えば、ポリヌクレオチドがRNAである場合に、チミンの天然代替物として存在することができる。ウラシルは、DNAにも使用することができる。「核酸配列」という用語は、天然及び非天然塩基を含む、ポリヌクレオチド又は任意の核酸分子のアルファベット表示を指すことができる。
【0041】
核酸は、ホスホジエステル結合を含むことができ、例えば、ホスホルアミド、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、O-メチルホスホロアミダイト及びペプチド核酸の骨格及び結合を含む、他の種類の骨格を含むことができる。核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの任意の組合せ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンを含む塩基、及びニトロピロール(3-ニトロピロールを含む)及びニトロインドール(5-ニトロインドールを含む)などの塩基類似体の任意の組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも1つの無差別塩基を含むことができる。無差別塩基は、複数の異なる種類の塩基と塩基対合することができ、例えば、ゲノムDNA試料などの複雑な核酸試料でのランダムハイブリダイゼーションに使用されるオリゴヌクレオチドプライマ又はインサートに含まれる場合、有用であり得る。無差別塩基の例には、アデニン、チミン、又はシトシンと対合し得るイノシンが含まれる。他の例には、ヒポキサンチン、5-ニトロインドール、非環式5-ニトロインドール、4-ニトロピラゾール、4-ニトロイミダゾール及び3-ニトロピロールが含まれる。少なくとも2種、3種又は4種以上の塩基と塩基対合することができる無差別塩基を使用することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、同時という用語は、同時に又は実質的に同時に起こる作用を指す。したがって、複数の分析物の同時分析は、単一のアッセイにおいて同時に又は実質的に同時に複数の分析物を分析することを指す。同様に、配列決定可能な要素の同時収集又は導出は、同時に又は実質的に同時に配列決定可能な要素を収集又は導出することを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、タグという用語は、関心対象の分析物を後で単離、同定、追跡、又は分析することができるように、関心対象の1つ又は複数の分析物に対する修飾を指す。したがって、タグは、試料中の関心対象の分析物を識別することができる。タグは、例えば、ポリアデニル化(ポリA)タグを含み得る。いくつかの実施形態では、タグは、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも35ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも45ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、若しくは50ヌクレオチド以上の長さ、又は前述の長さのいずれか2つの範囲内の長さを有するヌクレオチド配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、タグ付けはタグメンテーションによって実施される。本明細書で使用される場合、「タグメンテーション」は、トランスポゾンが標的核酸を切断し、切断された標的核酸の末端にアダプタ配列を付加するように、標的核酸へのトランスポゾンの挿入を指すことができる。タグ付けの例示的方法は、米国特許第9,115,396号、同第9,080,211号、同第9,040,256号、米国特許出願公開第2014/0194324号に開示されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、タグは、関心対象の各分析物について同じであるか又は異なる。例えば、関心対象の各分析物は、同じタグでタグ付けされ得るか、又は異なるタグでタグ付けされ得る。示差的なタグ付けは、例えば、DNAなどの関心対象の1つの分析物を、タグ付けがRNAなどの関心対象の別の分析物のタグ付けとは異なる又は区別できるようにタグ付けすることを指す。いくつかの実施形態では、タグは各分析物について異なるが、タグの関係は予め知られている。
【0044】
トランスポゾンベースの技術は、例えば、NEXTERA(商標)XT及びFLEX DNA試料調製キット(Illumina,Inc.)のワークフローに例示されるように、DNAを断片化するために利用することができ、ゲノムDNAなどの標的核酸が、標的を同時に断片化及びタグ付け(タグメンテーション)するトランスポソーム複合体で処理され、それによって断片の末端に固有のアダプタ配列でタグ付けされた断片化された核酸分子の集団を作製する。
【0045】
転位反応は、1つ以上のトランスポゾンがランダムな部位又はほぼランダムな部位で標的核酸に挿入される反応である。転位反応の構成要素には、トランスポザーゼ(又はインテグラーゼなどの、本明細書に記載の核酸を断片化及びタグ付けすることができる他の酵素)、及びトランスポザーゼ(又は本明細書に記載の他の酵素)に結合する二本鎖トランスポゾン末端配列を含むトランスポゾン要素、及び2つのトランスポゾン末端配列のうちの1つに結合されたアダプタ配列が含まれる。二本鎖トランスポゾン末端配列の一方の鎖は、標的核酸の一方の鎖に転位され、相補的なトランスポゾン末端配列鎖は転位されない(非転位トランスポゾン配列)。アダプタ配列は、必要に応じて又は所望に応じて、1つ以上の機能的配列又は構成要素(例えば、プライマ配列、アンカー配列、ユニバーサル配列、スペーサ領域、又はインデックスタグ配列)を含むことができる。
【0046】
「トランスポソーム複合体」は、少なくとも1つのトランスポザーゼ(又は本明細書に記載の他の酵素)及びトランスポゾン認識配列から構成される。いくつかのそのようなシステムでは、トランスポザーゼは、トランスポゾン認識配列に結合して、転位反応を触媒することができる機能的複合体を形成する。いくつかの態様では、トランスポゾン認識配列は、二本鎖トランスポゾン末端配列である。トランスポザーゼは、標的核酸内のトランスポザーゼ認識部位に結合し、トランスポゾン認識配列を標的核酸に挿入する。いくつかのそのような挿入事象では、トランスポゾン認識配列(又は末端配列)の1つの鎖が標的核酸に転位され、切断事象をもたらす。本開示のトランスポザーゼと共に使用するために容易に適合させることができる例示的な転位手順及びシステムは、例えば、国際公開第10/048605号、米国特許出願公開第2012/0301925号、米国特許出願公開第2012/13470087号、又は米国特許出願公開第2013/0143774号に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書で提供される特定の実施形態と共に使用できる例示的なトランスザーゼには、以下のものが含まれる(又は以下のものによってコードされる):Tn5トランスポザーゼ(Reznikoff et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.1999,266,729-734参照)、スリーピングビューティ(SB)トランスポザーゼ、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)(Agilentによって特徴付けられ、SureSelect QXT製品で使用されるトランスポザーゼ)、R1及びR2末端配列を含むMuAトランスポザーゼ及びMuトランスポザーゼ認識部位(Mizuuchi,K.,Cell,35:785,1983;Savilahti,H,et al.,EMBO J.,14:4893,1995)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Tn552(Colegio,O.et al.,J.Bacteriol.,183:2384-8,2001;Kirby,C.et al.,Mol.Microbiol.,43:173-86,2002)、Ty1(Devine & Boeke,Nucleic Acids Res.,22:3765-72,1994及び国際公開第95/23875号)、トランスポゾンTn7(Craig,N.L.,Science,271:1512,1996;Craig,N.L.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:27-48,1996)、Tn/O及びIS10(Kleckner N.et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:49-82,1996)、マリナートランスポザーゼ(Lampe,D.J.et al.,EMBO J.,15:5470-9,1996)、Tc1(Plasterk,R.H.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:125-43,1996)、Pエレメント(Gloor,G.B.,Methods Mol.Biol.,260:97-114,2004)、Tn3(Ichikawa & Ohtsubo,J.Biol.Chem.,265:18829-32,1990)、細菌挿入配列(Ohtsubo & Sekine,Curr.Top.Microbiol.Immunol.204:1-26,1996)、レトロウイルス(Brown et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:2525-9,1989)、並びに酵母のレトロトランスポゾン(Boeke & Corce(s,Ann.Rev.Microbiol.43:403-34,1989)。更なる例には、IS5、Tn10、Tn903、IS911、及びトランスポゼスファミリー酵素の改変型(Zhang et al.,(2009)PLoS Genet.5:e1000689.Epub Oct.16;Wilson C.et al.(2007)J.Microbiol.Methods 71:332-5)が含まれ、トランスポザーゼに関して本明細書で引用される参考文献は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法はまた、単一のトランスポザーゼだけでなく、トランスポザーゼの組合せを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5、MuA,、又はビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)トランスポザーゼ、又はこれらの活性変異体である。他の実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼ又はその活性変異体である。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、高活性Tn5トランスポザーゼ(例えば、Reznikoff et al.,国際公開第2001/009363号、米国特許第5,925,545号、同第5,965,443号、同第7,083,980号、及び同第7,608,434,号、並びにGoryshin and Reznikoff,J.Biol.Chem.273:7367,1998参照)、又はその活性変異体である。いくつかの態様では、Tn5トランスポザーゼは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/160895号に記載されているTn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼ融合タンパク質は、融合した伸長因子Ts(Tsf)タグを含む。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、野生型配列と比較してアミノ酸54、56、及び372に突然変異を含む高活性Tn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、高活性Tn5トランスポザーゼは融合タンパク質であり、任意で、融合タンパク質は伸長因子Ts(Tsf)である。いくつかの実施形態では、認識部位は、Tn5型トランスポザーゼ認識部位である(Goryshin and Reznikoff,J.Biol.Chem.,273:7367,1998)。一実施形態では、高活性Tn5トランスポザーゼと複合体を形成するトランスポザーゼ認識部位が使用される(例えば、EZ-Tn5(商標)トランスポザーゼ、Epicentre Biotechnologies,Madison,Wis.)。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは野生型Tn5トランスポザーゼである。
【0049】
本明細書に記載される方法、組成物、又はシステムの実施形態のいずれにおいても、トランスポゾンは、トランスポゾン末端配列を含む。いくつかの実施形態では、トランスポゾン末端配列はモザイク末端(ME)配列である。いくつかの実施形態では、DNAはタグメンテーションを使用してタグ付けされ、DNAはタグでタグ付けされ、タグに含まれるのは、ME配列などのトランスポゾン特異的配列である。したがって、DNAは、トランスポゾン特異的配列に基づいて試料中のRNAから区別される。
【0050】
本明細書に記載される方法、組成物、又はシステムの実施形態のいずれにおいても、トランスポゾンはアダプタ配列を含む。アダプタ配列は、プライマ配列、アンカー配列、ユニバーサル配列、スペーサ領域、インデックス配列、捕捉配列、バーコード配列、切断配列、配列決定関連配列、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の機能的配列又は構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、アダプタ配列はプライマ配列を含む。他の実施形態では、アダプタ配列は、プライマ配列及びインデックス又はバーコード配列を含む。プライマ配列はまた、ユニバーサル配列であり得る。本開示は、使用することができるアダプタ配列の種類に限定されず、当業者は、ライブラリ作製及び次世代配列決定に使用し得る更なる配列を認識するであろう。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸断片に共通するヌクレオチド配列の領域である。任意で、2つ以上の核酸断片はまた、配列相違の領域を有する。複数の核酸断片の異なるメンバーに存在し得るユニバーサル配列は、ユニバーサル配列に相補的な単一のユニバーサルプライマを使用して、複数の異なる配列の複製又は増幅を可能にすることができる。
【0051】
アダプタには、一本鎖核酸などの核酸が含まれる。アダプタは、約5ヌクレオチド、10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド、100ヌクレオチド、それ未満若しくはそれ以上の長さ、又は前述のサイズのいずれか2つの間の範囲の長さを有する短い核酸を含み得る。
【0052】
実施形態のいずれにおいても、A14-ME、ME、B15-ME、ME’、A14,B15,及びMEを含むアダプタ配列又はトランスポゾン末端配列が以下に提供される:
A14-ME:5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号1)
B15-ME:5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号2)
ME’:5’-phoS-CTGTCTCTTATACACATCT-3’(配列番号3)
A14:5’-TCGTCGGCAGCGTC-3’(配列番号4)
B15:5’-GTCTCGTGGGCTCGG-3’(配列番号5)
ME:AGATGTGTATAAGAGACAG(配列番号6)
【0053】
いくつかの実施形態では、プライマ配列は、配列決定のためのライブラリを調製するために含まれる。いくつかの実施形態では、プライマ配列は、P5プライマ配列又はP7プライマ配列である。P5及びP7プライマは、様々なIlluminaプラットフォームでの配列決定のために、Illumina,Inc.によって販売されている市販のフローセルの表面で使用される。プライマ配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0059865(A1)号に記載されている。5’末端にアルキン末端が存在し得るP5及びP7プライマの例には、以下のもの及びこれらの誘導体又は類似体が含まれる:
P5:AATGATACGGCGACCACCGAG AUCTACAC(配列番号7)
P7:CAAGCAGAAGACGGCATACGAG*AT(配列番号8)。
いくつかの実施例では、P7配列は、G*位に修飾グアニン、例えば8-オキソグアニンを含む。他の例では、*は、G*と隣接する3’Aとの間の結合がホスホロチオエート結合であることを示す。いくつかの例では、P5及び/又はP7プライマは、非天然リンカーを含む。任意で、P5及びP7プライマの一方又は両方は、ポリT尾部を含むことができる。ポリT尾部は、一般に、上記に示す配列の5’末端、例えば、5’塩基と末端アルキン単位との間に位置するが、場合によっては3’末端に位置し得る。ポリT配列は、任意の数のTヌクレオチド、例えば2~20個を含むことができる。P5及びP7プライマが例として与えられているが、本明細書に提示される例では、任意の適切なプライマを使用できることが理解されるべきである。P5及びP7プライマ配列を含むプライマ配列を有するインデックス配列は、配列決定のためにライブラリを活性化するためにP5及びP7を付加するのに役立つ。
【0054】
本明細書で使用される場合、プローブという用語は、標的分析物、例えば、標的分析物上のタグに特異的に結合するのに十分な結合特性を有する捕捉分子を指す。例えば、プローブは、標的核酸に特異的にハイブリダイズするのに十分な相補性を有するポリヌクレオチドを含み得る。例えば、プローブは、ポリAタグに特異的に結合するためのポリT配列を含み得る。別の例では、プローブは、抗体又はタンパク質タグを含む。捕捉プローブは、混合物中の他の核酸及び/又は成分から標的核酸を単離するための親和性結合分子として機能することができる。標的核酸はまた、標的配列及び捕捉プローブの両方に特異的にハイブリダイズするのに十分な相補性を有するリンカー、アダプタ、及び他の架橋核酸などの介在分子を介して捕捉プローブによって特異的に結合され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、プローブは、バーコードを更に含む。バーコードは、標的を特定の試料由来であるものとして識別する。例えば、バーコードは、1つ以上の分析物を共通の供給源からのものとして識別するために使用される。1つの分析物を識別するバーコードは、異なる分析物を識別するバーコードと同じであっても異なっていてもよい。バーコード間の関係がわかっている限り、バーコードは、分析物を共通の供給源からのものとして識別するために使用され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、バーコードは、アレイ内のポリヌクレオチドを識別するために使用できる核酸配列を含むことができる。バーコードは、他のバーコードと区別できる固有のヌクレオチド配列を含むことができる。また、バーコードの配列によって、及びまたポリヌクレオチド内のバーコードの位置によって、例えばプライマ結合部位の5’位置によって、ポリヌクレオチド内及び標的核酸内の他のヌクレオチド配列と区別することができる。例えば、いくつかの実施形態では、バーコードの配列は、複数の核酸中に複数回存在してもよい;但し、プライマ結合部位の5’側に位置するバーコードは検出することができる。バーコードは、集団内の複数のバーコード内、並びに/又は分析若しくは検討される複数のポリヌクレオチド及び標的核酸内の固有のヌクレオチド配列であるのに十分な任意の所望配列長であり得る。いくつかの実施形態では、バーコードは、約1~30ヌクレオチド以上の範囲のポリヌクレオチド内の核酸又は領域である。例えば、バーコードは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド以上の長さを有することができる。いくつかの実施形態では、バーコードは、35、40、45又は50ヌクレオチド以上であり得る。いくつかの実施形態では、バーコードは、各バーコードが別のバーコードとは異なるように、あるポリヌクレオチドをアレイ内の別のポリヌクレオチドから区別することができる。いくつかの実施形態では、バーコードは、バーコードのセットがバーコードの別のセットとは異なるように、あるポリヌクレオチドの集団をアレイ内のポリヌクレオチドの別の集団から区別することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、バーコードは、転位を使用して直接挿入される。そのような実施形態では、固体支持体への結合事象は必要ではない。したがって、本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、関心対象の分析物は、固体支持体を用いて又は固体支持体なしで同時に分析される。
【0058】
いくつかの実施形態では、プローブは固体支持体上に固定化され得る。固体支持体には、例えば、エッチングされた表面、ウェル、被覆されたウェル、アレイ、フローセル装置、マイクロ流体チャネル、ビーズ、磁気ビーズ、カラム、液滴、又は微粒子が含まれ得る。そのような実施形態では、関心対象の分析物は、固定化されたプローブによって固体支持体に結合され、固体支持体上で更なる処理又は分析を受ける。いくつかの実施形態では、固定化されたプローブ及び固体支持体は溶液中で使用される。例えば、固定化された支持体はビーズであり得、ビーズに付着されたプローブは、溶液中のDNA及びRNAなどの関心対象の分析物を捕捉するために溶液に可溶性である。そのような実施形態では、関心対象のタグ付けされた分析物は、溶液中のプローブに結合し、溶液中でバーコード化される。関心対象のバーコード化された分析物は、溶液中で更なる処理若しくは分析を受けるか、又は磁気ビーズの使用を含むプルダウンアッセイを使用してプルダウンされ得る。
【0059】
本明細書で使用されるフローセルという用語は、1つ以上の流体試薬を流すことができる固体表面を含むチャンバを指す。本開示の方法において容易に使用できるフローセル及び関連する流体システム並びに検出プラットフォームの例には、例えば、マイクロ流体装置、微細構造体、マイクロウェル、マイクロタイタプレートなどが含まれ、例えば、Bentley et al.,Nature 456:53-59(2008)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、及び米国特許出願第2008/0108082号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アレイ」は、異なるマイクロフィーチャが相対位置に従って互いに区別され得るように表面に結合又は付着しているポリヌクレオチドを含むマイクロフィーチャなどの、異なるマイクロフィーチャの集団を指すことができる。アレイの個々のフィーチャは、マイクロフィーチャの単一のコピーを含むことができ、又はマイクロフィーチャの複数のコピーは、アレイの個々のフィーチャにおけるマイクロフィーチャの集団として存在することができる。各フィーチャにおけるマイクロフィーチャの集団は、典型的には均質であり、単一種のマイクロフィーチャを有する。したがって、単一の核酸配列の複数のコピーが1つのフィーチャに、例えば、同じ配列を有する複数の核酸分子上に存在し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、マイクロフィーチャの不均質な集団が1つのフィーチャに存在し得る。いくつかの実施形態では、フィーチャは、単一のマイクロフィーチャ種のみを含むことができる。いくつかの実施形態では、フィーチャは、異なる配列を有する核酸の混合物などの、複数の異なるマイクロフィーチャ種を含むことができる。アレイの隣接するフィーチャは、互いに個別であり得る。フィーチャは、互いに隣接し得るか、又はギャップによって分離することができる。フィーチャが離間している実施形態では、隣接する部位は、例えば、100μm、50μm、10μm、5μm、1μm、0.5μm、100nm、50nm、10nm、5nm、1nm、0.5nm未満の距離、又は前述の距離のいずれか2つの範囲内の任意の距離だけ分離することができる。アレイ上のフィーチャのレイアウトは、隣接するフィーチャ間の中心間距離の観点から理解することもできる。本発明において有用なアレイは、約100μm、50μm、10μm、5μm、1μm、0.5μm、100nm、50nm、10nm、5nm、1nm、0.5nm未満の中心間間隔、又は前述の距離のいずれか2つの範囲内の任意の距離の中心間間隔を有する隣接フィーチャを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される距離値は、アレイの隣接するフィーチャ間の平均距離を表すことができる。したがって、例えば、距離がアレイのすべての隣接するフィーチャ間の閾値距離を構成するという特定の記述によって特に指示されない限り、すべての隣接するフィーチャが指定された範囲にある必要はない。実施形態は、様々な密度のフィーチャを有するアレイを含むことができる。特定の実施形態の密度の例示的な範囲には、約10,000,000フィーチャ/cm2~約2,000,000,000フィーチャ/cm2;約100,000,000フィーチャ/cm2~約1,000,000,000フィーチャ/cm2;約100,000フィーチャ/cm2~約10,000,000フィーチャ/cm2、約1,000,000フィーチャ/cm2~約5,000,000フィーチャ/cm2;約10,000フィーチャ/cm2~約100,000フィーチャ/cm2;約20,000フィーチャ/cm2~約50,000フィーチャ/cm2;約1,000フィーチャ/cm2~約5,000フィーチャ/cm2、又は前述の密度のいずれか2つの範囲内の任意の密度が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「表面」は、試薬、ビーズ又は分析物と接触するためにアクセス可能な基質又は支持構造体の一部を指すことができる。表面は、実質的に平坦又は平面であり得る。あるいは、表面は丸みを帯びているか、又は輪郭付けられ得る。表面に含まれ得る例示的な輪郭は、ウェル、くぼみ、柱、隆起部、チャネルなどである。基質又は支持構造体として使用することができる例示的な材料には、改質若しくは官能化ガラスなどのガラス;アクリル、ポリスチレン若しくはスチレンと別の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン若しくはテフロン(登録商標)などのプラスチック;アガロース若しくはセファロースなどの多糖類若しくは架橋多糖類;ナイロン;ニトロセルロース;樹脂;シリコン及び変性シリコンを含むシリカ若しくはシリカベースの材料;カーボンファイバ;金属;無機ガラス;光ファイバ束、又は様々な他のポリマーが含まれる。単一の材料又はいくつかの異なる材料の混合物は、本発明において有用な表面を形成することができる。いくつかの実施形態では、表面はウェルを含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ビーズ」は、剛性又は半剛性材料で作られた小さな物体を指すことができる。物体は、例えば、球体、楕円形、微小球、又は規則的若しくは不規則な寸法を有するかどうかに関わらず他の認識された粒子形状として特徴付けられる形状を有することができる。ビーズに有用な例示的な材料には、改質若しくは官能化ガラスなどのガラス;アクリル、ポリスチレン若しくはスチレンと別の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン若しくはテフロン(登録商標)などのプラスチック;アガロース若しくはセファロースなどの多糖類若しくは架橋多糖類;ナイロン;ニトロセルロース;樹脂;シリコン及び変性シリコンを含むシリカ若しくはシリカベースの材料;カーボンファイバ;金属;無機ガラス;光ファイバ束、又は様々な他のポリマーが含まれる。例示的なビーズには、制御された細孔ガラスビーズ、常磁性ビーズ、トリアゾル(thoria sol)、セファロースビーズ、ナノ結晶、及び技術分野で公知の他のものが含まれる。ビーズは、生物学的又は非生物学的材料で作製され得る。磁気ビーズは、磁石を使用した磁気ビーズの操作が容易であるため、特に有用である。特定の実施形態で使用されるビーズは、0.1μm~100μmの直径、幅、又は長さを有することができる。ビーズのサイズは、フィーチャを分析するのに十分な信号を維持しながら、サイズを小さくし、したがって密度を高めるように選択することができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」、又はその文法的等価物は、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、少なくとも部分的にはヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって形成される複合体を形成する反応を指すことができる。水素結合は、ワトソン-クリック塩基対合、フーグスティーン結合、又は他の任意の配列特異的方法で生じ得る。複合体は、二本鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組合せを有することができる。鎖はまた、水素結合に加えて、力によって架橋又は結合され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「伸長する」、「伸長」、又はそれらの任意の文法的等価物は、ポリメラーゼなどの伸長酵素によるプライマ、ポリヌクレオチド又は他の核酸分子へのdNTPの付加を指すことができる。例えば、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、得られる伸長プライマは、核酸の配列情報を含む。いくつかの実施形態は、DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼ、又は逆転写酵素を使用して伸長を実施するものとして論じられているが、伸長は、技術分野において周知の任意の他の方法で実施することができる。例えば、伸長は、関心対象の鎖にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドを一緒にライゲートすることによって実施することができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ライゲーション」又は「ライゲートする」又はそれらの他の文法的等価物は、ホスホジエステル結合による2つのヌクレオチド鎖の結合を指すことができる。ライゲーションは、化学的ライゲーションを含み得る。そのような反応は、リガーゼによって触媒され得る。リガーゼは、ATP又は同様の三リン酸の加水分解でこの反応を触媒する酵素のクラスを指す。
【0067】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、単一のアッセイを使用して試料中の複数の分析物を同時に分析することに関し、複数の分析物は、DNA及びRNAを含む。いくつかの実施形態では、標的DNA及び標的RNAは、タグ付けによって修飾される。したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、試料中のDNAを第1のタグで修飾すること、及び試料中のRNAを第2のタグで修飾することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、修飾されたDNAを第1のタグに相補的な第1のプローブで捕捉すること、及び修飾されたRNAを第2のタグに相補的な第2のプローブで捕捉することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、捕捉されたDNA及びRNAを分析することを含む。本明細書で使用される場合、「第1のタグ」及び「第2のタグ」という用語は、タグ付け事象の特定のタイミング又は配列を指すものではない。むしろ、この用語は、単に、第1の分析物が、例えば第1のタグと呼ばれる1つのタグを含み、第2の分析物が、例えば第2のタグと呼ばれる別のタグを含むことを記述するために使用される。本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、第1及び第2のタグは、同じであっても異なっていてもよい。バーコードは、分析物を共通の供給源からのものとして識別するが、タグは、分析物を特定の種類、例えばDNA又はRNAとして識別する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、DNA及びRNAに加えて、関心対象の更なる分析物を同時に分析すること、例えば、タンパク質を分析することを更に含む。そのような実施形態では、タンパク質などの関心対象の更なる分析物は、更なるタグで修飾される。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のタグ(又は関連する場合は更なるタグ)は異なる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のタグ(又は関連する場合は更なるタグ)は同じである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のタグは、基質認識配列を更に含む。基質認識配列は、基質を認識し、それに結合し、それによってタグを固定化する配列である。いくつかの実施形態では、第1のタグの基質認識配列は、第2のタグの基質認識配列と同じである。
【0070】
いくつかの実施形態では、DNAは、
図2に示すように、タグメンテーションプロセスを介してタグ付けされる。
図2の実施形態では、単離された単一の細胞又は核15を有するウェルプレート10が示されている。核15は、核15内にDNA 20及びmRNA 25を含む。単一の細胞又は核15は、液滴内に封入され得るか、又は分析のために個々のウェルに分離され得る。DNA 20は、タグ1でタグ付けされていることが示されており、これは、タグメンテーション又は他のタグ付けプロセス、例えば逆転写、ライゲーション、又はDNAをタグ付けするための他の手段を介して誘導され得る。
図2の実施形態では、mRNA 25はタグ2でタグ付けされている。
図2はまた、ビーズ又は他の表面であり得る固体支持体40上に固定化されているプローブ30、35を示す。DNA 20に特異的なプローブ30は、DNA 20上のタグ1に特異的に結合する捕捉要素である、タグ1捕捉要素を含む。mRNA 25に特異的なプローブ35は、mRNA 25上のタグ2に特異的に結合する捕捉要素である、タグ2捕捉要素を含む。各プローブはバーコードも含み、それによって関心対象の分析物、この場合はDNA及びmRNAのインデックス化を可能にする。
【0071】
いくつかの実施形態では、ポリA尾部を含むmRNAはタグ付けされていない。例えば、
図3に示す実施形態では、ウェルプレート200は、ポリA尾部215を有するmRNA 210を含むが、そうでなければタグ付けされていない核205を有する。
図3の実施形態では、gDNA 220は、ポリA尾部215でタグ付けされている。gDNA 220のタグ付け後、gDNA 220及びmRNA 210の両方がポリA尾部215を含む。gDNA 220は、例えばタグメンテーションを使用して、ポリA尾部215でタグ付けされ得る。
図3に示すように、ポリA尾部215を有するgDNA 220及びポリA尾部215も有するmRNA 210は、ポリT捕捉要素230を含む同じプローブ225で捕捉され得る。プローブ225は、固体支持体240上に固定されている。したがって、gDNA 220及びmRNA 210は、同時に処理され、同じバーコード235が割り当てられる。gDNA 220は、タグメンテーションプロセス中に組み込まれたトランスポゾン特異的配列に基づいて、mRNA 210と区別され得る。この概念は、
図4を参照して更に詳細に説明される。
【0072】
図4は、単一試料中のgDNA及びmRNAの両方を同時に分析する例示的な方法を示す。この実施形態では、ポリAトランスポゾンは、転位によってゲノムDNAに導入される。核/細胞は、ポリT尾部を有するインデックス付きプローブで封入される。インデックス付きプローブをハイブリダイズさせ、次に転位されたgDNA断片にライゲートし、mRNAとハイブリダイズさせる。これは第1のcDNAを作製する。転位後、gDNAは、タグメンテーション特異的配列であるME配列を含む。第2のcDNAの合成後、二本鎖cDNA及びgDNAを再び転位させて、PCRアダプタを組み込む。次に、PCR増幅のために断片を調製する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「試薬」という用語は、試料と反応する、相互作用する、試料を希釈する、又は添加するのに有用な作用物質又は2つ以上の作用物質の混合物を表し、溶解、核酸分析、核酸増幅反応、タンパク質分析、タグメンテーション反応、ATAC-seq、CPT-seq、又はSCI-seq反応、又は他のアッセイのための作用物質を含む、本明細書に記載のアッセイで使用される作用物質を含み得る。したがって、試薬には、例えば、緩衝剤、化学物質、酵素、ポリメラーゼ、50塩基対未満のサイズを有するプライマ、鋳型核酸、ヌクレオチド、標識、色素、又はヌクレアーゼが含まれ得る。いくつかの実施形態では、試薬には、リゾチーム、プロテイナーゼK、ランダムヘキサマー、ポリメラーゼ(例えば、Φ29 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Bsuポリメラーゼ)、トランスポザーゼ(例えばTn5)、プライマ(例えば、P5及びP7アダプタ配列)、リガーゼ、触媒酵素、デオキシヌクレオチド三リン酸、緩衝剤、又は二価カチオンが含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、試料は単一の細胞を含み、単一の細胞は固定されている。いくつかの実施形態では、細胞は固定剤で固定され得る。本明細書で使用される場合、固定剤は、一般に、細胞を固定することができる作用物質を指す。例えば、固定された細胞は、細胞中のタンパク質複合体、核酸複合体、又はタンパク質-核酸複合体を安定化させることができる。適切な固定剤及び架橋剤には、アルコール又はアルデヒドベースの固定剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノールベースの固定剤、メタノールベースの固定剤、アセトン、酢酸、四酸化オスミウム、二クロム酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、水銀、ピクリン酸塩、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート(BS3)、3,3’-ジチオビス[スルホスクシンイミジルプロピオネート](DTSSP)、エチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート](スルホ-EGS)、ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート](DSP)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、エチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート](EGS)などのアミン反応性NHS-エステル架橋剤、NHS-ジアジリン、NHS-LC-ジアジリン、NHS-SS-ジアジリン、スルホ-NHS-ジアジリン、スルホ-NHS-LC-ジアジリン、及びスルホ-NHS-SS-ジアジリンなどのNHS-エステル/ジアジリン架橋剤が含まれ得る。いくつかの実施形態では、細胞を固定することは、細胞の内部状態を保持し、それによってその後の分析中又はアッセイの実施中に細胞の改変を防止する。
【0075】
いくつかの実施形態では、試料は、単一細胞、単一核、又は細胞集団若しくは核集団などの核酸源を含み、単一細胞、単一核、細胞集団、又は核集団は、液滴内に封入される。いくつかの実施形態では、細胞は、封入前に固定される。本明細書で使用される場合、液滴は、単一細胞を封入するためのビーズであり、ヒドロゲル組成物からなるヒドロゲルビーズを含み得る。いくつかの実施形態では、液滴は、ヒドロゲル材料の均質な液滴であるか、又はポリマーヒドロゲルシェルを有する中空の液滴である。均質又は中空であるかどうかに関わらず、液滴は、単一細胞を封入することが可能であり得る。本明細書で使用される場合、「ヒドロゲル」という用語は、有機ポリマー(天然又は合成)が共有結合、イオン結合、又は水素結合を介して架橋されて、水分子を捕捉してゲルを形成する三次元開放格子構造体を生成するときに形成される物質を指す。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、生体適合性ヒドロゲルであり得る。本明細書で使用される場合、「生体適合性ヒドロゲル」という用語は、生細胞に対して毒性ではなく、生存能力を維持するために捕捉された細胞への酸素及び栄養素の十分な拡散を可能にするゲルを形成するポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル材料には、アルギン酸塩、アクリルアミド、又はポリ-エチレングリコール(PEG)、PEG-アクリレート、PEG-アミン、PEG-カルボキシレート、PEG-ジチオール、PEG-エポキシド、PEG-イソシアネート、PEG-マレイミド、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、ポリビニルピロリドン(PVPON)、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ビニルスルホン酸)(PVSA)、ポリ(L-アスパラギン酸)、ポリ(L-グルタミン酸)、ポリリジン、寒天、アガロース、ヘパリン、アルギン酸塩硫酸塩、デキストラン硫酸塩、ヒアルロナン、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン、キトサン、セルロース、コラーゲン、ビスアクリルアミド、ジアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアクリレート、ポリメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールトリアクリレート、又はエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの組合せ若しくは混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、アルギネート、アクリルアミド、又はPEGベースの材料である。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、アクリレート-ジチオール、エポキシド-アミン反応化学を有するPEGベースの材料である。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、PEG-マレイミド/ジチオール油、PEG-エポキシド/アミン油、PEG-エポキシド/PEG-アミン、又はPEG-ジチオール/PEG-アクリレートを含むポリマーシェルを形成する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル材料は、細胞内生体分子を損傷する可能性があるフリーラジカルの生成を回避するために選択される。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルポリマーは、水などの60~90%の流体、及び10~30%のポリマーを含む。特定の実施形態では、ヒドロゲルの含水量は、約70~80%である。本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、数値を修飾する場合、数値に生じ得る変動を指す。例えば、変動は、特定の基質又は成分の製造における違いによって生じ得る。一実施形態では、「約」という用語は、列挙された数値の1%、5%、又は最大10%以内を意味する。
【0076】
ヒドロゲルは、親水性バイオポリマー又は合成ポリマーを架橋することによって調製され得る。したがって、いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは架橋剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「架橋剤」という用語は、適切なベースモノマーと反応したときに三次元ネットワークを形成することができる分子を指す。1つ以上の架橋剤を含み得るヒドロゲルポリマーの例には、ヒアルロナン、キトサン、寒天、ヘパリン、硫酸塩、セルロース、アルギネート(アルギン酸塩硫酸塩を含む)、コラーゲン、デキストラン(デキストラン硫酸塩を含む)、ペクチン、カラギーナン、ポリリジン、ゼラチン(Aタイプゼラチンを含む)、アガロース、(メタ)アクリレート-オリゴラクチド-PEO-オリゴラクチド-(メタ)アクリレート、PEO-PPO-PEOコポリマー(Pluronic)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、PL(G)A-PEO-PL(G)Aコポリマー、ポリ(エチレンイミン)、ポリエチレングリコール(PEG)-チオール、PEG-アクリレート、アクリルアミド、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、PEG、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアクリル酸、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ビニルスルホン酸)(PVSA)、ポリ(L-アスパラギン酸)、ポリ(L-グルタミン酸)、ビスアクリルアミド、ジアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアクリレート、ポリメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールトリアクリレート、又はエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。したがって、例えば、組合せは、ポリマー及び架橋剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-チオール/PEG-アクリレート、アクリルアミド/N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン(BACy)、又はPEG/ポリプロピレンオキシド(PPO)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーシェルは、4アームポリエチレングリコール(PEG)を含む。いくつかの実施形態では、4アームポリエチレングリコール(PEG)は、PEG-アクリレート、PEG-アミン、PEG-カルボキシレート、PEG-ジチオール、PEG-エポキシド、PEG-イソシアネート、及びPEG-マレイミドからなる群より選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、瞬時型架橋剤又は遅延型架橋剤である。即時型架橋剤は、ヒドロゲルポリマーを即座に架橋する架橋剤であり、本明細書ではクリックケミストリと称される。即時型架橋剤には、ジチオール油+PEG-マレイミド又はPEGエポキシド+アミン油が含まれ得る。遅延型架橋剤は、ヒドロゲルポリマーを緩やかに架橋する架橋剤であり、PEG-エポキシド+PEG-アミン又はPEG-ジチオール+PEG-アクリレートを含み得る。遅延型架橋剤は、架橋するのに数時間超かかる場合があり、例えば、架橋するのに2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12時間超を要し得る。本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、液滴は、即時型架橋剤によって製剤化され、それによって、遅延型架橋剤と比較して細胞の状態をより良好に維持する。理論に拘束されることを望むものではないが、細胞は、より長い架橋時間の間に細胞内シグナル伝達機構によって生理学的変化を受ける可能性がある。
【0078】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、ヒドロゲルポリマーにおいてジスルフィド結合を形成し、それによってヒドロゲルポリマーを連結する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルポリマーは、細孔(例えば、多孔性ヒドロゲルマトリックス)を有するヒドロゲルマトリックスを形成する。これらの細孔は、液滴内に単一の細胞又はそれから抽出された核酸などの十分に大きな粒子を保持することができるが、試薬などの他の材料が細孔を通過し、それによって液滴に出入りすることを可能にする。いくつかの実施形態では、液滴の細孔径は、ポリマー濃度と架橋剤の濃度との比を変えることによって微調整される。いくつかの実施形態では、ポリマー対架橋剤の比は、30:1、25:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、若しくは1:30であるか、又は前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態では、DNAプライマ、又は荷電化学基などの更なる機能をポリマーマトリックスに移植して、異なる用途の要件を満たすことができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「多孔度」という用語は、開放空間、例えば、細孔又は他の開口部から構成されるヒドロゲルの体積率(無次元)を意味する。したがって、多孔度は、材料中の空隙を測定し、0~100%(又は0から1)のパーセンテージとしての、総体積に対する空隙の体積率である。ヒドロゲルの多孔度は、0.5~0.99、約0.75~約0.99、又は約0.8~約0.95の範囲であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、液滴は、単一の細胞又はそれから抽出された核酸を保持すると同時に、試薬の十分な拡散を可能にする任意の細孔径を有することができる。本明細書で使用される場合、「細孔径」という用語は、細孔の断面の直径又は有効直径を指す。「細孔径」という用語はまた、複数の細孔の測定値に基づく、細孔の断面の平均直径又は平均有効直径を指すことができる。円形ではない断面の有効直径は、非円形断面と同じ断面積を有する円形断面の直径に等しい。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、ヒドロゲルが水和されたときに膨潤し得る。次いで、細孔径のサイズがヒドロゲルの含水量に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルの細孔は、ヒドロゲル内に封入された細胞を保持するのに十分なサイズの細孔を有することができるが、試薬が通過することを可能にする。いくつかの実施形態では、液滴の内部は水性環境である。いくつかの実施形態では、液滴内に配置された単一の細胞は、液滴のポリマーシェルとの相互作用がなく、及び/又はポリマーシェルと接触しない。いくつかの実施形態では、ポリマーシェルが細胞の周りに形成され、細胞は、受動吸着によって又は標的化された方法で、例えば抗体若しくは他の特異的結合分子に結合されることなどによって、ポリマーシェルが細胞表面にもたらされるためにポリマーシェルと接触する。
【0081】
いくつかの実施形態では、液滴は、単一の細胞を封入するのに十分なサイズである。いくつかの実施形態では、液滴は、約20μm~約200μm、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200μmの直径、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲内の直径を有する。液滴のサイズは、環境要因によって変化し得る。いくつかの実施形態では、液滴は、連続油相から分離され、水相に浸漬されると膨張する。いくつかの実施形態では、液滴の膨張は、封入された細胞内の遺伝物質に関するアッセイを実施する効率を高める。いくつかの実施形態では、液滴の膨張は、PCR中に増幅されるインデックス付きインサートのためのより大きな環境を作り出すが、そうでなければ、現在の細胞ベースアッセイでは制限され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、液滴は、ボルテックス支援エマルジョン、マイクロ流体液滴生成、又はバルブベースのマイクロ流体力学などの動的手段によって調製される。いくつかの実施形態では、液滴は均一なサイズ分布で製剤化される。いくつかの実施形態では、液滴のサイズは、マイクロ流体装置のサイズ、1つ以上のチャネルのサイズ、又はマイクロ流体チャネルを通る流速を調節することによって微調整される。いくつかの実施形態では、得られる液滴は、20~200μmの範囲の直径、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200μmの直径、又は前述の値のいずれか2つによって定義される範囲内の直径を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、1つ以上の分析物を分析することは、分析物が何であるかに依存して、様々な分析を含み得る。例えば、分析することには、DNA分析、RNA分析、タンパク質分析、タグメンテーション、核酸増幅、核酸配列決定、核酸ライブラリの作製、シーケンシングを使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイ(ATAC-seq)、連続性保存転位(CPT-seq)、単一細胞のコンビナトリアルインデクシングによる配列決定(SCI-seq)、又は単一細胞ゲノム増幅、又はこれらの任意の組合せが含まれる。
【0084】
DNA分析とは、DNAを増幅、配列決定、又は他の方法で分析するために使用される任意の技術を指す。DNA増幅は、PCR技術又はパイロシーケンシングを使用して達成することができる。DNA分析はまた、非標的化非PCRベースのDNA配列決定(例えば、メタゲノミクス)技術を含み得る。非限定的な例として、DNA分析は、16S rDNA(リボソームDNA)の超可変領域を配列決定すること、及びDNAを介した種の同定のための配列決定を使用することを含み得る。
【0085】
RNA分析は、RNAを増幅、配列決定、又は他の方法で分析するために使用される任意の技術を指す。DNAを分析するために使用されるのと同じ技術を使用して、RNAを増幅及び配列決定することができる。DNAよりも安定でないRNAは、刺激に応答したDNAの翻訳である。したがって、RNA分析は、コミュニティの代謝的に活性なメンバーのより正確な画像を提供することができ、試料中の生物のコミュニティ機能についての情報を提供するために使用され得る。更に、DNAとRNAの両方の同時分析は、DNAとRNAの両方に関連する調査を効率的に決定するのに有益であり得る。核酸配列決定は、DNA又はRNAなどの核酸分子の配列中のヌクレオチドの順序を決定するための配列決定の使用を指す。
【0086】
本明細書で使用される「配列決定」という用語は、ポリヌクレオチドの少なくとも10個の連続するヌクレオチドの同定(例えば、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、又は少なくとも200個以上の連続するヌクレオチドの同定)が得られる方法を指す。
【0087】
「次世代シーケンシング」又は「ハイスループットシーケンシング」又は「NGS」という用語は、一般に、大規模並列シグネチャシーケンシング、ハイスループットシーケンシング、ライゲーションによる配列決定(例えばSOLiD)、シーケンシング)、プロトンイオン半導体シーケンシング、DNAナノボールシーケンシング、単一分子シーケンシング、及びナノポアシーケンシングを含むがこれらに限定されないハイスループットシーケンシング技術を指し、Illumina、Life Technologies、又はRocheなどによって現在採用されている合成による並行シーケンシング又はライゲーションによるシーケンシングプラットフォームを指す場合もある。次世代シーケンシング方法は、ナノポアシーケンシング方法、又はLife Technologiesによって商業化されたIon Torrent技術若しくはPacific Biosciencesによって商業化された単一分子蛍光ベースの方法などの電子検出ベースの方法も含み得る。
【0088】
タンパク質分析は、タンパク質の研究を指し、プロテオーム分析、関心対象のタンパク質の翻訳後修飾の決定、タンパク質発現レベルの決定、又は他のタンパク質若しくは核酸を含む他の分子とのタンパク質相互作用の決定を含み得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「タグメンテーション」という用語は、トランスポゾン末端配列を含むアダプタと複合体化したトランスポザーゼ酵素を含むトランスポソーム複合体によるDNAの修飾を指す。タグメンテーションは、DNAの断片化及び二重鎖断片の両方の鎖の5’末端へのアダプタのライゲーションを同時にもたらす。トランスポザーゼ酵素を除去するための精製工程に続いて、更なる配列を、例えばPCR、ライゲーション、又は当業者に公知の他の任意の適切な方法によって、適合断片の末端に付加することができる。
【0090】
シーケンシング(ATAC-seq)を使用したトランスポザーゼアクセス可能なクロマチンのアッセイは、統合的エピゲノム分析の迅速で高感度な方法を指す。ATAC-seqは、オープンクロマチン部位を捕捉し、オープンクロマチンのゲノム位置、DNA結合タンパク質、個々のヌクレオソーム、及びヌクレオチド分解能を有する調節領域におけるより高次の圧縮の間の相互作用を明らかにする。ヌクレオソームを厳密に回避する、許容できる、又はヌクレオソームと重複する傾向があるDNA結合因子のクラスが発見されている。ATAC-seqを使用して、安静時のヒトT細胞の連続的な毎日のエピゲノムを測定し、標準的な採血を介してプロバンドから評価し、健康及び疾患を監視するための臨床的タイムスケールで個人のエピゲノムを読み取る実現可能性を実証した。より具体的には、ATAC-seqは、単一細胞からのクロマチンを挿入酵素複合体で処理して、ゲノムDNAのタグ付き断片を生成することによって実施され得る。この工程では、クロマチンは、クロマチンのオープン領域でゲノムDNAを切断し、断片の両端にアダプタを付加するTn5又はMuAなどの挿入酵素を使用してタグメント化される(例えば、同じ反応で断片化及びタグ付けされる)。ATAC-seqは、
図5Aに概略するように、開いたクロマチン状態でのみ転位を可能にし、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Buenrostro et al.(Nature Methods,2013,10,1213-1218)に一般的に記載されている。
【0091】
本明細書に記載される方法、組成物、又はシステムの実施形態のいずれにおいても、ATAC-seqは、単一の細胞又はバルクで実施され得る。単一細胞ATAC-seqは、単一細胞のエピジェネティック解析を可能にし、例えば、単一の細胞又は単一の核を液滴又はビーズ内に封入することによって、コンパートメント内で実施され得る。本明細書で使用される場合、コンパートメントという用語は、反応が起こり得る限られた空間の物理的又は仮想的な名称のいずれかを指す。例えば、コンパートメントは、ビーズ、液滴、ウェル、又は成分が保持され得る、例えば、単一の細胞が実験及び分析に供され得る領域を定義する他の物理的パラメータであり得る。共コンパートメント化という用語は、単一コンパートメント内にあることを指す。例えば、2つの分析物が共コンパートメント化されていると言われる場合、分析物は両方とも同じコンパートメント内にある。共コンパートメント化された反応生成物は、同じコンパートメント内に位置する、又は同じコンパートメント内で調製された(例えば、同じ反応条件下に単一の環境で調製された)生成物を指す。
【0092】
ビーズ又は液滴内への単一の細胞又は単一核の封入は、ビーズ内に単一の細胞又は核を分配することによって実施され得る。封入されると、
図5Bに概略するように、単一の細胞はATAC-seqに供される。単一細胞ATAC-seqでは、細胞(又は核)は、個別にコンパートメント化され、タグメント化され、分析され得る。これは、単一の細胞からのすべてのDNA又はライブラリが単一の液滴に封入されることを確実にするので、連続性保存転位(CPT-seq)を可能にする。通常、転位は、アダプタを挿入し、トランスポザーゼの除去後にDNAを断片化する。したがって、断片化は、それによって様々な細胞からのリードを液滴へとスクランブルするため、単一細胞解像度を取得することができなくなる。対照的に、本明細書で提供される方法は、トランスポザーゼがすべての個々のDNA/ライブラリ断片を一緒に保持することを可能にし、単一細胞からのすべての材料を単一の液滴に移動させることを可能にする。次に、単一液滴中の細胞からのすべての断片は、バーコード化されたプライマを使用したPCRによってインデックス化可能である(液滴にロードされたビーズから)。CPT-seqは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Amini et al.(Nat Genet,2014,46,1343-1349)に一般的に記載されている。更に、いくつかの実施形態では、単一細胞ATAC-seqをコンビナトリアルインデクシングのために使用することができる。コンビナトリアル又はスプリットアンドプールインデクシングを使用して、単一細胞/単一核解像度を維持しながら、同じウェル又は液滴に複数の細胞をロードすることができる。いくつかの実施形態では、インデックスは、試料の識別、実験条件、又は同じ細胞に使用することができる。コンビナトリアルインデクシングは、液滴の利用率及び細胞スループットを増加させるために使用でき、単一の細胞又は核で使用し得る。
【0093】
場合によっては、クロマチンへの望ましい挿入レベル(例えば、開いた領域で平均して50~200塩基対ごとに起こる挿入)が得られるように条件を調整し得る。この方法で使用されるクロマチンは、任意の適切な方法によって作製され得る。いくつかの実施形態では、核は、単離され、溶解され得、クロマチンは、例えば、核エンベロープから更に精製され得る。他の実施形態では、クロマチンは、単離された核を反応緩衝液と接触させることによって単離され得る。これらの実施形態では、単離された核は、反応緩衝液(挿入酵素複合体及び他の必要な試薬を含む)と接触したときに溶解することができ、これにより、挿入酵素複合体がクロマチンにアクセスすることが可能になる。これらの実施形態では、本方法は、細胞の集団から核を単離すること、並びに単離された核をトランスポザーゼ及びアダプタと組合せることを含み得、この組合せは、核が溶解して当該クロマチンを放出すること、及びゲノムDNAのアダプタでタグ付けされた断片の生成の両方をもたらす。クロマチンは、他の方法(例えば、ChIP-SEQ法)と同様に架橋を必要としない。
【0094】
クロマチンが断片化され、タグ付けされてゲノムDNAのタグ付き断片が生成された後、アダプタタグ付き断片の少なくとも一部を配列決定して、複数の配列リードを生成する。断片は、任意の適切な方法を使用して配列決定され得る。例えば、断片は、Illuminaの可逆的ターミネータ法、Rocheのパイロシーケンシング法(454)、Life Technologiesのライゲーションによるシーケンシング(SOLiDプラットフォーム)、又はLife TechnologiesのIon Torrentプラットフォームを使用して配列決定され得る。そのような方法の例は、以下の参考文献:Margulies et al.(Nature 2005 437: 376-80);Ronaghi et al.(Analytical Biochemistry 1996 242: 84-9);Shendure et al.(Science 2005 309:1728-32);Imelfort et al.(Brief Bioinform.2009 10:609-18);Fox et al.(Methods Mol Biol.2009;553:79-108);Appleby et al.(Methods Mol Biol.2009;513:19-39)及びMorozova et al.(Genomics.2008 92:255-64)に記載されており、これらは、すべての出発生成物、ライブラリ調製のための方法、試薬、及び各工程の最終生成物を含む、方法及び方法の特定の工程の一般的な説明のために、参照により本明細書に組み込まれる。明らかなように、選択された次世代シーケンシングプラットフォームと互換性のある順方向及び逆方向配列決定プライマ部位を、増幅工程中に断片の末端に付加することができる。特定の実施形態では、断片は、断片に付加されたタグにハイブリダイズするPCRプライマを使用して増幅され得、PCRに使用されるプライマは、特定のシーケンシングプラットフォームと互換性のある5’尾部を有する。ATAC-seqを実施する方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、PCT特許出願番号第PCT/US2014/038825号に記載されている。
【0095】
本明細書で使用される「クロマチン」という用語は、真核細胞の核に見られるような、タンパク質及びポリヌクレオチド(例えばDNA、RNA)を含む分子の複合体を指す。クロマチンは、一部は、ヌクレオソーム、ゲノムDNA、及び一般にゲノムDNAに結合する他のDNA結合タンパク質(例えば転写因子)を形成するヒストンタンパク質で構成される。
【0096】
連続性保存転位シーケンシング(CPT-seq)は、標的核酸に隣接する鋳型核酸断片の会合を維持するためにトランスポザーゼを使用することによって連続性情報を保存しながら配列決定する方法を指す。例えば、CPTは、DNA又はRNAなどの核酸に関して実施され得る。CPT核酸は、固有のインデックス又はバーコードを有する相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって捕捉され、固体支持体上に固定化され得る。いくつかの実施形態では、固体支持体上に固定化されたオリゴヌクレオチドは、バーコードに加えて、プライマ結合部位、固有の分子インデックスを更に含み得る。有利には、断片化された核酸の物理的近接性を維持するためのトランスポソームのそのような使用は、同じ元の分子、例えば染色体からの断片化された核酸が、固体支持体上に固定されたオリゴヌクレオチドから同じ固有のバーコード及びインデックス情報を受け取る可能性を高める。これは、固有のバーコードを有する連続的に連結された配列決定ライブラリをもたらす。連続的に連結された配列決定ライブラリを配列決定して、連続配列情報を導き出すことができる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「連続性情報」という用語は、共有情報に基づく2つ以上のDNA断片間の空間的関係を指す。情報の共有態様は、隣接、コンパートメント及び距離の空間的関係に関するものであり得る。これらの関係に関する情報は、DNA断片に由来する配列リードの階層的アセンブリ又はマッピングを容易にする。従来のショットガン配列決定に関連して使用される伝統的なアセンブリ又はマッピング方法は、個々の配列リードが由来する2つ以上のDNA断片間の空間的関係に関する、個々の配列リードの相対的なゲノム起源又は座標を考慮しないため、この連続性情報は、そのようなアセンブリ又はマッピングの効率及び精度を改善する。
【0098】
したがって、本明細書に記載の実施形態によれば、連続性情報を捕捉する方法は、隣接空間関係を決定するための短距離連続性方法、コンパートメントの空間関係を決定するための中距離連続性方法、又は距離の空間関係を決定するための長距離連続性方法によって達成され得る。これらの方法は、DNA配列のアセンブリ又はマッピングの精度及び品質を促進し、本明細書に記載されるような任意の配列決定法と共に使用し得る。
【0099】
連続性情報は、個々の配列リードが由来する2つ以上のDNA断片間の空間的関係に関する、個々の配列リードの相対的なゲノム起源又は座標を含む。いくつかの実施形態では、連続性情報は、非重複配列リードからの配列情報を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列の連続性情報は、ハプロタイプ情報を示す。いくつかの実施形態では、標的核酸配列の連続性情報は、ゲノム変異体を示す。
【0101】
単一細胞コンビナトリアルインデックス付きシーケンシング(SCI-seq)は、体細胞コピー数変異体検出のために数千のローパス単一細胞ライブラリを同時に作製するための配列決定法である。本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、SCI-seqなどによるコンビナトリアルインデクシングアプローチを使用して、試料中の複数の分析物を同時分析するための方法、組成物、及びシステムに関する。例えば、
図10に示すように、SCI-seqを使用してDNAとRNAを同時にインデックス化することができる。DNA及びRNAの特定のタグの導入後、細胞/核は物理的に複数の群に分けられる。各群について、DNAを第1のバーコード(
図10のバーコードI)で標識し、RNAを第2のバーコード(
図10のバーコードJ)で標識する。DNA及びRNAの標識化は、同時に又は連続的に行われ得る。次に、群を一緒にプールし、複数の群にランダムに分割し、それを第3のバーコード(
図10のバーコードK)で更に標識することができる。プールアンドスプリットプロセスは、インデックス化能力を高めるために複数のラウンドにわたって繰り返すことができる。インデックスの衝突率(異なる細胞/核に対して同じバーコード)は、ラウンド当たりのバーコードの数及び群当たりの細胞/核の数によって制御することができる。バーコードは、逆転写酵素によって、ライゲーションによって、タグメンテーションによって、又はバーコードを導入するための他の手段によって導入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンビナトリアルシーケンシング技術は、細胞から核を分離又は単離することを必要としない。
【0102】
図11は、ライゲーションと伸長によるインデックス化を用いた、SCI-seqなどによるコンビナトリアルシーケンシングの詳細を更に例示する。タグ1を有するトランスポゾンを、転位によってゲノムDNAに挿入する。バーコードI及びタグ2を有するオリゴヌクレオチドを、タグ1ハイブリダイゼーションを介してgDNAにライゲートする。最初のcDNA合成は、バーコードJとタグ2を有するポリTオリゴヌクレオチドによって開始され、続いて2番目のcDNA合成が行われる。プールアンドスプリットプロセスに続いて、バーコードKを有するオリゴヌクレオチドを、タグ2領域のgDNAとcDNAの両方にハイブリダイズさせ、ギャップ充填ライゲーションによってライゲートする。タグ3は、スプリットアンドプール後の次のラウンドのインデックス化のためのアンカーとして機能することができる。コンビナトリアルインデクシング後、他方の末端のPCR/ライブラリアダプタを2回目の転位によって付加することができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「単離された」、「単離する」、「精製された」、「精製する」、「精製」という用語、及び本明細書で使用されるそれらの文法的等価物は、特に明記されない限り、試料から、又は材料が単離された供給源(例えば細胞)からの少なくとも1つの汚染物質(タンパク質及び/又は核酸配列など)の量の減少を指す。したがって、精製は、「濃縮」、例えば、試料中の所望のタンパク質及び/又は核酸配列の量の増加をもたらす。
【0104】
核酸の溶解及び単離に続いて、特に単一細胞からの少量のDNAを増幅するために広く使用されている技術である多重置換増幅(MDA)などの増幅を実施し得る。いくつかの実施形態では、核酸は、増幅され、配列決定され、又は核酸ライブラリの調製のために使用される。本明細書で使用される場合、核酸又は核酸反応に関して使用される「増幅する」又は「増幅された」、「増幅すること」という用語は、例えば、本発明の実施形態によって、標的核酸などの特定の核酸のコピーを作製するインビトロ方法を指す。核酸を増幅する多くの方法が技術分野において公知であり、増幅反応には、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅反応、ローリングサークル増幅反応、多重アニーリング及びループ化による増幅サイクル(MALBAC)、NASBAなどの転写媒介増幅法、ループ媒介増幅法(例えば、ループ形成配列を使用した「LAMP」増幅)が含まれる。増幅される核酸は、DNA若しくはRNA、又は修飾されたDNA及び/若しくはRNAを含むDNAとRNAの混合物を含む、それらからなる、又はそれらに由来するDNAであり得る。1つ又は複数の核酸分子の増幅から得られる産物(例えば「増幅産物」)は、出発核酸がDNA、RNA、又はその両方であるかどうかに関わらず、DNA若しくはRNAのいずれか、又はDNA及びRNAヌクレオシド若しくはヌクレオチドの両方の混合物であり得るか、又は修飾されたDNA若しくはRNAヌクレオシド若しくはヌクレオチドを含むことができる。「コピー」は、必ずしも標的配列に対する完全な配列相補性又は同一性を意味するわけではない。例えば、コピーは、デオキシイノシン又はデオキシウリジンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(標的配列にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマを介して導入される配列改変など、及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含むことができる。
【0105】
捕捉された核酸は、技術分野で公知の任意の適切な増幅方法に従って増幅することができる。本明細書に記載されるか、又は技術分野で一般的に公知の増幅方法のいずれかを、ユニバーサル又は標的特異的プライマと共に利用して、核酸を増幅できることが理解されるであろう。増幅のための適切な方法には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,003,354,号に記載されているように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)及び核酸配列ベースの増幅(NASBA)が含まれるが、これらに限定されない。上記の増幅方法を使用して、関心対象の1つ以上の核酸を増幅することができる。例えば、マルチプレックスPCR、SDA、TMA、NASBAなどを含むPCRを利用して、核酸を増幅することができる。いくつかの実施形態では、関心対象の核酸に特異的に向けられるプライマは、増幅反応に含まれる。
【0106】
核酸の増幅のための他の適切な方法には、オリゴヌクレオチド伸長及びライゲーション、ローリングサークル増幅(RCA)(参照により本明細書に組み込まれる、Lizardi et al.,Nat.Genet.19:225-232(1998))並びにオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)技術(一般に、すべてが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,582,420号、同第5,185,243号、同第5,679,524号及び同第5,573,907号;欧州特許出願第EP 0 320 308 B1号、同第EP 0 336 731 B1号、同第EP 0 439 182 B1号;国際公開第90/01069号、同第89/12696号及び同第89/09835号参照)が含まれ得る。これらの増幅方法は、核酸を増幅するように設計され得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、増幅方法は、関心対象の核酸に特異的に向けられるプライマを含むライゲーションプローブ増幅又はオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)反応を含み得る。いくつかの実施形態では、増幅方法は、関心対象の核酸に特異的に向けられ、ヒドロゲル細孔を通過することができるプライマを含む、プライマ伸長ライゲーション反応を含み得る。関心対象の核酸を増幅するように特別に設計することができるプライマ伸長及びライゲーションプライマの非限定的な例として、増幅は、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,582,420号及び同第7,611,869号に例示されるようなGoldenGateアッセイ(Illumina,Inc.,San Diego,Calif.)に使用されるプライマを含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、核酸は、それぞれの内容が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号の開示によって例示されるように、クラスタ増幅法を使用して増幅される。米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号の組み込まれている資料は、固定化された核酸分子のクラスタ又は「コロニー」からなるアレイを形成するために、増幅産物を固体支持体上に固定化することを可能にする核酸増幅の方法を記載する。そのようなアレイ上の各クラスタ又はコロニーは、複数の同一の固定化されたポリヌクレオチド鎖及び複数の同一の固定化された相補的ポリヌクレオチド鎖から形成される。そのように形成されたアレイは、本明細書では一般に「クラスタ化アレイ」と称される。米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号に記載されているような固相増幅反応の生成物は、固定化されたポリポリヌクレオチド鎖と固定化された相補鎖の対をアニーリングすることによって形成されるいわゆる「架橋」構造体であり、両方の鎖は、好ましくは共有結合を介して、5’末端で固体支持体上に固定化されている。クラスタ増幅法は、固定化された核酸鋳型を使用して固定化されたアンプリコンを生成する方法の例である。他の適切な方法を使用して、本明細書で提供される方法に従って生成された固定化されたDNA断片から固定化されたアンプリコンを生成することもできる。例えば、1つ以上のクラスタ又はコロニーは、増幅プライマの各対の一方又は両方のプライマが固定化されているかどうかに関わらず、固相PCRによって形成することができる。
【0108】
更なる増幅方法には、等温増幅が含まれる。使用できる代表的な等温増幅法には、例えば、Dean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5261-66(2002)に例示されるような多重置換増幅(MDA)、又は米国特許第6,214,587号に例示される等温鎖置換核酸増幅が含まれ得るが、これらに限定されず、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本開示で使用できる他の非PCRベースの方法には、例えば、Walker et al.,Molecular Methods for Virus Detection,Academic Press,Inc.,1995、米国特許第5,455,166号及び同第5,130,238号並びにWalker et al.,Nucl.Acids.Res.20:1691-96(1992)に記載されている鎖置換増幅(SDA)、又は、例えば、Lage et al.,Genome Research 13:294-307(2003)に記載されている超分岐鎖置換増幅が含まれ、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。等温増幅法は、ゲノムDNAのランダムプライマ増幅のために、鎖置換Phi 29ポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大型断片、5’→3’エキソ-と共に使用することができる。これらのポリメラーゼの使用は、それらの高いプロセッシビティ及び鎖置換活性を利用する。高いプロセッシビティは、ポリメラーゼが10~20kbの長さの断片を生成することを可能にする。上記のように、クレノウポリメラーゼなどの低いプロセッシビティと鎖置換活性を有するポリメラーゼを使用して、等温条件下でより小さな断片を生成することができる。増幅反応、条件及び成分の更なる説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,670,810号の開示に詳細に記載されている。いくつかの実施形態では、ランダムヘキサマーを変性DNAにアニーリングし、続いて触媒酵素Phi 29の存在下に一定温度で鎖置換合成を行う。これは、MDA後の蛍光強度(SYTOXで染色されたDNA)の増加によって確認されるように、DNA増幅をもたらす。独立して、NEXTERA(登録商標)タグメンテーション及びPCR後の蛍光強度の実質的な増加によって示されるように、溶解及びクリーンアップ後のNEXTERA(登録商標)ベースのタグメンテーション並びにその後のPCRによるgDNA増幅も実施し得る。
【0109】
本開示において有用な別の核酸増幅法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Grothues,et al.Nucleic Acids Res.21(5):1321-2(1993)に記載されているように、定常5’領域の後にランダム3’領域が続く2ドメインプライマの集団を使用するタグ付きPCRである。増幅の最初のラウンドを実施して、ランダムに合成された3’領域からの個々のハイブリダイゼーションに基づいて、熱変性されたDNAでの多数の開始を可能にする。3’領域の性質により、開始部位はゲノム全体にわたってランダムであると考えられる。その後、結合していないプライマを除去し、定常5’領域に相補的なプライマを使用して、更なる複製を行うことができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、核酸は、完全に又は部分的に配列される。核酸は、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ナノポアシーケンシングなどを含む直接シーケンシングなどの任意の適切な配列決定法に従って配列決定することができる。
【0111】
1つのシーケンシング方法は、合成によるシーケンシング(SBS)である。SBSでは、核酸鋳型(例えば標的核酸又はそのアンプリコン)に沿った核酸プライマの伸長を監視して、鋳型中のヌクレオチドの配列を決定する。基礎となる化学プロセスは、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)であり得る。特定のポリマーベースのSBSの実施態様では、プライマに付加されるヌクレオチドの順序及び種類の検出を使用して鋳型の配列を決定することができるように、蛍光標識ヌクレオチドを鋳型依存的にプライマに付加する(それによってプライマを伸長させる)。
【0112】
1つ以上の増幅された核酸は、サイクル中に試薬を繰り返し送達することを含むSBS又は他の検出技術に供することができる。例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、1つ以上の増幅された核酸分子を収容する液滴に流入/通過させることができる。プライマ伸長によって標識ヌクレオチドが組み込まれる部位を検出することができる。任意で、ヌクレオチドは、ヌクレオチドがプライマに付加されると、更なるプライマ伸長を終結する可逆的終結特性を更に含むことができる。例えば、可逆的ターミネータ部分を有するヌクレオチド類似体をプライマに付加して、デブロッキング剤が送達されてその部分を除去するまで、その後の伸長が起こらないようにすることができる。したがって、可逆的終結を使用する実施形態の場合、デブロッキング試薬をフローセルに送達することができる(検出が行われる前又は後に)。洗浄は、様々な送達工程の間に実施することができる。次に、サイクルをn回繰り返してプライマをn個のヌクレオチドで伸長し、それによって長さnの配列を検出することができる。本開示の方法によって生成されるアンプリコンと共に使用するために容易に適合させることができる例示的なSBS手順、流体系及び検出プラットフォームは、例えば、Bentley et al.,Nature 456:53-59(2008)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、及び米国特許出願第2008/0108082号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
パイロシーケンシングなどの、サイクル反応を使用する他の配列決定手順を使用することができる。パイロシーケンシングは、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖に取り込まれる際の無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(Ronaghi,et al.,Analytical Biochemistry 242(1),84-9(1996);Ronaghi,Genome Res.11(1),3-11(2001);Ronaghi et al.Science 281(5375),363(1998);米国特許第6,210,891号;同第6,258,568号及び同第6,274,320号、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。パイロシーケンシングでは、放出されたPPiは、ATPスルフリラーゼによってアデノシン三リン酸(ATP)に即座に変換されることで検出でき、生成されたATPのレベルは、ルシフェラーゼ生成光子を介して検出することができる。したがって、配列決定反応は、発光検出システムを介して監視することができる。蛍光ベースの検出システムに使用される励起放射線源は、パイロシーケンシング手順には必要ない。本開示に従って生成されたアンプリコンへのパイロシーケンシングの適用に適合させることができる有用な流体系、検出器、及び手順は、例えばWIPO特許出願第PCT/US11/57111号、米国特許出願第2005/0191698(A1)号、米国特許第7,595,883号、及び米国特許第7,244,559号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
いくつかの実施形態は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを含む方法を利用することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用を介して、フルオロフォア担持ポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用を通して、又はゼロモード導波路(ZMW)を用いて検出することができる。FRETベースの配列決定のための技術及び試薬は、例えば、Levene et al.Science 299,682-686(2003);Lundquist et al.Opt.Lett.33,1026-1028(2008);Korlach et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105, 1176-1181(2008)に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
いくつかのSBSの実施形態は、ヌクレオチドが伸長産物に組み込まれると放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定は、市販されている電気検出器及び関連する技術を使用することができる。そのような配列決定システムの例は、パイロシーケンシング(例えば、Rocheの子会社である454 Life Sciencesの市販のプラットフォーム)、γ-リン酸標識ヌクレオチドを使用したシーケンシング(例えば、Pacific Biosciencesの市販のプラットフォーム)、プロトン検出を使用したシーケンシング(例えば、Life TechnologiesのIon Torrent子会社の市販のプラットフォーム)、又は米国特許出願第2009/0026082(A1)号;同第2009/0127589(A1)号;同第2010/0137143(A1)号;若しくは同第2010/0282617(A1)号に記載されている配列決定方法及びシステムであり、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。速度論的排除を使用して標的核酸を増幅するための本明細書に記載の方法は、プロトンを検出するために使用される基質に容易に適用することができる。より具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、プロトンを検出するために使用されるアンプリコンのクローン集団を生成することができる。
【0116】
別の配列決定技術は、ナノポアシーケンシングである(例えば、Deamer et al.Trends Biotechnol.18,147-151(2000);Deamer et al.Acc.Chem.Res.35:817-825(2002);Li et al.Nat.Mater.2:611-615(2003)参照、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかのナノポアの実施形態では、標的核酸又は標的核酸から除去された個々のヌクレオチドは、ナノポアを通過する。核酸又はヌクレオチドがナノポアを通過するとき、各ヌクレオチド種は、細孔の電気コンダクタンスの変動を測定することによって識別され得る。(米国特許第7,001,792号;Soni et al.Clin.Chem.53,1996-2001(2007);Healy, Nanomed.2,459-481(2007);Cockroft et al.J.Am.Chem.Soc.130,818-820(2008)参照、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0117】
本開示による検出に適用することができるアレイベースの発現及び遺伝子型解析のための例示的な方法は、米国特許第7,582,420号;同第6,890,741号;同第6,913,884号若しくは同第6,355,431号又は米国特許出願第2005/0053980(A1)号;同第2009/0186349(A1)号若しくは同第2005/0181440(A1)号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
本明細書に記載されるような核酸の単離、増幅、及び配列決定の方法では、様々な試薬が核酸の単離及び調製のために使用される。そのような試薬には、例えば、リゾチーム、プロテイナーゼK、ランダムヘキサマー、ポリメラーゼ(例えば、Φ29 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Bsuポリメラーゼ)、トランスポザーゼ(例えばTn5)、プライマ(例えば、P5及びP7アダプタ配列)、リガーゼ、触媒酵素、デオキシヌクレオチド三リン酸、緩衝剤、又は二価カチオンが含まれ得る。
【0119】
アダプタは、シーケンシングプライマ部位、増幅プライマ部位、及びインデックスを含むことができる。本明細書で使用される場合、「インデックス」は、核酸をタグ付けするため、及び/又は核酸の供給源を識別するための分子識別子及び/又はバーコードとして使用することができるヌクレオチドの配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、インデックスを使用して、単一の核酸、又は核酸の亜集団を識別することができる。いくつかの実施形態では、単一の細胞は、例えば、連続性保存転位(CPT-seq)アプローチを用いて、コンビナトリアルインデクシングのために使用され得る。
【0120】
インデックスは、核酸分子の供給源を識別するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、アダプタは、例えば、一方又は両方の末端でアダプタの伸長を妨げるブロッキング基を付加することによって、コンカテマーの形成を防ぐように改変することができる。3’ブロッキング基の例には、3’スペーサC3、ジデオキシヌクレオチド、及び基質への付着が含まれる。5’ブロッキング基の例には、脱リン酸化された5’ヌクレオチド、及び基質への付着が含まれる。
【0121】
例示的な方法は、標的核酸の5’末端を脱リン酸化して、その後のライゲーション工程でのコンカテマーの形成を防止すること;第1のアダプタの3’末端がブロックされているリガーゼを使用して、脱リン酸化された標的の3’末端に第1のアダプタを連結すること;ライゲートされた標的の5’末端を再リン酸化すること;第2のアダプタの5’末端が脱リン酸化されている一本鎖リガーゼを使用して、脱リン酸化された標的の5’末端に第2のアダプタをライゲートすることを含む。
【0122】
別の例には、5’エキソヌクレアーゼで核酸を部分消化して、一本鎖3’オーバーハングを有する二本鎖核酸を形成することが含まれる。3’ブロッキング基を含むアダプタを、3’オーバーハングを有する二本鎖核酸の3’末端にライゲートすることができる。ライゲートされたアダプタを有する3’オーバーハングを有する二本鎖核酸を脱ハイブリダイズして、一本鎖核酸を形成することができる。リン酸化されていない5’末端を含むアダプタを、一本鎖核酸の5’末端にライゲートすることができる。
【0123】
核酸の5’ヌクレオチドなどの核酸を脱リン酸化する方法には、核酸をホスファターゼと接触させることが含まれる。ホスファターゼの例には、子ウシ腸ホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ、南極ホスファターゼ、及びAPEXアルカリホスファターゼ(Epicentre)が含まれる。
【0124】
核酸をライゲートする方法には、核酸をリガーゼと接触させることが含まれる。リガーゼの例には、T4 RNAリガーゼ1、T4 RNAリガーゼ2、RtcBリガーゼ、メタノバクテリウム(Methanobacterium)RNAリガーゼ、及びTS2126 RNAリガーゼ(CIRCLIGASE)が含まれる。
【0125】
核酸の5’ヌクレオチドなどの核酸をリン酸化する方法には、核酸をキナーゼと接触させることが含まれる。キナーゼの例には、T4ポリヌクレオチドキナーゼが含まれる。
【0126】
本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態は、転位試薬並びに第1のタグに相補的な第1のプローブ及び第2のタグに相補的な第2のプローブを含むキットを含み、第1及び第2のプローブは固体支持体上に固定化されている。いくつかの実施形態では、第1のプローブ及び第2のプローブはバーコードを含む。いくつかの実施形態では、第1のプローブ及び第2のプローブは、ポリTプローブである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、エッチングされた表面、ウェル、アレイ、フローセル装置、マイクロ流体チャネル、ビーズ、磁気ビーズ、カラム、液滴、又は微粒子である。
【実施例】
【0127】
実施例1-バルク細胞由来のDNA及びRNAライブラリの同時調製
以下の実施例は、バルク細胞の試料中のDNA及びRNAを同時に分析する実施形態を示す。
【0128】
図6Aに示すように、細胞を入手し、溶解して、細胞核を単離した。全ゲノムDNA(gDNA)を、ポリAトランスポゾンとトランスポソームを使用してタグメント化した。トランスポソームは核に入り、オープンクロマチン(ヒストンに結合されていないgDNA)をタグメント化する。
【0129】
タグメンテーション後、gDNAとRNAの両方が3’ポリA尾部を含んでいた。gDNAとRNAの両方を、gDNA及びRNAの3’ポリA尾部にハイブリダイズするポリT捕捉プローブを使用して捕捉した。捕捉プローブは、試料、細胞の下流増幅と分子インデックス化のため、又は分子の逆多重化のための第1の共通配列(CS1)を含んでいた。RNAをDNAに変換するために、逆転写酵素によるcDNA合成のためのプライマとして捕捉プローブを使用した。
【0130】
図6Bに示すように、gDNA及び生成されたcDNAを、カラム精製(ZYMO)を使用して核から精製した。シーケンシングを使用したアクセス可能なクロマチン(ATAC)ライブラリの調製は伸長/ライゲーション反応で完了し、RNAライブラリの調製はcDNAの第2の鎖の合成で完了した。2回目のラウンドのタグメンテーションを使用して、第2の共通配列(CS2)及び分子インデックスを組み込んだ。Tn5を除去するために試料のクリーンアップを実施し、CS1及びCS2に相補的なプライマを使用したPCRによって最終的なシーケンシングライブラリを作製した。
【0131】
同様の方法を使用して、ビーズ上のDNA及びRNAを同時に分析した。
図7A及び7Bに示すように、分析は、試料の取り扱いを改善するため、及び/又は完全長RNAライブラリを可能にするために実施することができる。
図7A及び7Bの概略図に示すように、細胞を入手し、溶解して、核を単離した。gDNAを、ポリAトランスポゾン及び共通配列(CS2)を含む2つのトランスポソームでタグメント化した。トランスポソームは核に入り、オープンクロマチン(ヒストンに結合されていないgDNA)をタグメント化する。共通配列(CS1)を含むポリT尾部を有する捕捉プローブを、DNAライブラリとRNAライブラリの両方のポリA尾部にハイブリダイズさせた。RNAライブラリの調製を完了するために、ハイブリダイゼーションプローブを使用してcDNA合成をプライミングした。第2の共通配列(CS2)を、逆転写酵素の鋳型スイッチング活性及び完全長RNAの製造を可能にする鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)を使用してRNAライブラリに追加した。試料の取り扱いを改善するために、ビオチン化捕捉プローブを使用して、RNA及びDNAライブラリを磁性ストレプトアビジンビーズに結合させた。洗浄、緩衝液交換、及び取り扱いは、ビーズ結合分子に対して容易に実施された。
【0132】
図8は、ATAC及びRNAライブラリ調製の結果を示す。ATACライブラリの断片は、
図8でボックスに囲まれた、トランスポゾン特異的配列であるシグネチャME配列を有する。
図9に示すように、ATAC断片は、プロモータ領域の周辺の典型的な濃縮を示し(パネルA)、3’計数のためのRNA断片は、遺伝子の末端周辺のリード蓄積を示す(パネルB)。表1及び2は、DNAとRNAの同時分析のためのATAC-seq及びRNAメトリクスの結果を要約する。
【表1】
【表2】
実施例2-単一細胞ATAC-seq
【0133】
以下の実施例は、コンパートメント内で単一細胞ATAC-seqを行う実施形態を示す。
【0134】
図5Bに概略するように、クロマチンへの転位を実施した。転位後、単一細胞又は単一核をコンパートメントに、この場合は液滴に分配した。トランスポザーゼは、すべての個々のDNA/ライブラリ断片を一緒に保持し、それによって単一細胞からのすべての材料を単一の液滴内に封入することを可能にする。単一液滴内の細胞からのすべての断片を、バーコード化されたプライマを使用してPCRによってインデックス化した。
【0135】
単一の細胞が単一の液滴に適切に分配されることを確実にするために、混合したヒト及びマウス細胞をプロセスに供した。試料は、500,000個のヒト細胞及び500,000個のマウス細胞を含んだ。各アッセイは34,000の核を含み、それらをプールして約300,000の液滴を含む液滴PCRの1つのチップを生成した。アッセイは140,000ビーズ(チャネル当たり11μLの3200ビーズ)を含んだ。4サイクルの液滴PCRを実施し、続いてバルクで10サイクルを実施した。シーケンシングワークフローの例を
図12に概略しており、これは、バーコードが挿入された配列を提供する。
図13に示すように、Tn5トランスポザーゼの増加は、収率、感度、及び転写開始部位(TSS)の割合を増加させることが観察された。
【0136】
配列リードをマウス又はヒトからのいずれかとして識別するバーコードを読み取り、
図14に概略するように、結果は、リードがマウス又はヒトのいずれかに整列したことを示し、単一の細胞が単一の液滴内に封入されており、それによって単一細胞の分配を可能にし、単一細胞の分析を可能にすることを示す。予想されたように、ATACリードの出力は転写開始部位の周辺に分布していた。
【0137】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「包含する」、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非限定的であり、更なる列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0138】
上記の説明は、本発明のいくつかの方法及び材料を開示するこのである。本発明は、方法及び材料の修正、並びに製造方法及び設備の変更を受け入れる余地がある。そのような修正は、本開示又は本明細書に開示される本発明の実施を考慮することで当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、本発明の真の範囲及び精神に含まれるすべての修正及び代替をカバーすることを意図する。
【0139】
公開及び未公開の出願、特許、並びに文献の参照を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲で、本明細書は、そのような矛盾する資料に優先する及び/又はより上位にあることを意図する。
【配列表】