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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】悪性腫瘍の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5365 20060101AFI20241021BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61K31/5365
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P15/00
A61P13/12
A61P21/00
A61P35/02
A61P25/00
A61P1/04
A61P13/02
A61P13/08
A61P1/18
A61P1/16
A61P17/00
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021526910
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024113
(87)【国際公開番号】W WO2020256096
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019115496
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 2019年7月18日 ウェブサイトのアドレス https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?japicId=JapicCTI-194864
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木場 一雄
(72)【発明者】
【氏名】下村 俊泰
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007217(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150725(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203959(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137870(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136928(WO,A1)
【文献】BROWN, Jessica S. et al.,Maximising the potential of AKT inhibitors as anti-cancer treatments,Pharmacology & Therapeutics,2017年,Vol.172,pp.101-115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍の治療剤であって、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、該投与スケジュールは前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール)の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、治療剤。
【請求項2】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール)の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、医薬組成物。
【請求項3】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍を治療するためのキットであって、前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール)の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、キット。
【請求項4】
投与日において、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩が1日1回で投与される、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物又は請求項3に記載のキット
【請求項5】
前記投与スケジュールにおいて1コースあたり7日間として、3コース21日間に、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間それぞれを連続してトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬する、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項6】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が4mg/body/日~44mg/body/日である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4もしくは5に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項7】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が16mg/body/日~32mg/body/日である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~6のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項8】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が24mg/body/日である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~7のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項9】
前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、又は胆道癌である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~8のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項10】
前記悪性腫瘍が肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、卵巣癌、又は多発性骨髄腫である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~9のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項11】
前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、又は肛門癌である、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~10のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項12】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用が軽減される、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~11のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項13】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用である斑状丘疹状皮疹が軽減される、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~12のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項14】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用である高血糖が軽減される、請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~13のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキット
【請求項15】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩と、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩とを併用するための請求項1に記載の治療剤、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載のキット又は請求項4~14のいずれか1項に記載の治療剤、医薬組成物もしくはキットであって、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、治療剤、医薬組成物又はキット
【請求項16】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンの量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、請求項15に記載の治療剤、医薬組成物又はキット
【請求項17】
ヒト患者の悪性腫瘍の治療剤を製造するための、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の使用であって、前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール)の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、使用。
【請求項18】
投与日において、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩が1日1回で投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記投与スケジュールにおいて1コースあたり7日間として、3コース21日間に、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間それぞれを連続してトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬する、上記請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が4mg/body/日~44mg/body/日である、請求項17~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が16mg/body/日~32mg/body/日である、請求項17~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の用量が24mg/body/日である、請求項17~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、又は胆道癌である、請求項17~22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記悪性腫瘍が肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、卵巣癌、又は多発性骨髄腫である、請求項17~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、又は肛門癌である、請求項17~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用が軽減される、請求項17~25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用である斑状丘疹状皮疹が軽減される、請求項17~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩の副作用である高血糖が軽減される、請求項17~27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール又はその塩と、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩とを併用するための請求項17~28のいずれか1項に記載の使用であって、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、使用。
【請求項30】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンの量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、請求項29に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年6月21日に出願された、日本国特許出願第2019-115496号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
本発明は、AKT阻害活性を有し、抗腫瘍活性を示すイミダゾオキサジン化合物による悪性腫瘍の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
AKTは受容体型チロシンキナーゼシグナルを受けて活性化するホスファチジルイノシトール3リン酸キナーゼ(PI3キナーゼ)の下流で働くセリンスレオニンキナーゼである。AKTの機能は、AKTは細胞増殖、アポトーシス抵抗性、血管新生、転移及び浸潤、さらには糖代謝、脂質代謝等、腫瘍形成にとって重要な役割を担っていることが報告されている(非特許文献1)。AKTは多くの癌(腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肝細胞癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、頭頸部癌、メラノーマ等)において高頻度で活性化、もしくは高発現しており、一部の癌においては遺伝子の増幅又は活性型変異も報告されている(非特許文献2)。
【0003】
イミダゾオキサジン化合物である、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(以下、「化合物1」ともいう。)又はその塩は極めて強力かつ選択性の高い経口アロステリック型AKT阻害剤として知られている(特許文献1)。
【0004】
いくつものAKT阻害剤の医薬品開発が行われてきたが、医薬品として承認に至った化合物は現時点ではない。その理由として、これまでの臨床試験において皮疹、そう痒、高血糖及び口内炎のグレード3以上の副作用が認められており、その他の主な副作用は、下痢、悪心、嘔吐、疲労、食欲減退及び皮膚乾燥が発生したからである。また、潜在的リスクとして胃腸障害、代謝障害及び皮膚障害がある(非特許文献3、4)。
【0005】
AKT阻害剤の副作用軽減を目的とした投与スケジュールの検討としては、AZD5363についての規定休薬期間を含む投与方法が報告されている。この報告では、AZD5363は、1コースあたり7日間として1日2回、7日間連続、従って、合計14回投与されるスケジュール、1コースあたり7日間として1日2回、2日間連続、従って、合計4回投与した後に5日間の規定休薬期間を設けるスケジュール、1コースあたり7日間として1日2回、4日間連続、従って、合計8回投与した後に3日間の規定休薬期間を設けるスケジュールのそれぞれについて、推奨用量(Recommend dose(RD))を決定している(非特許文献5)。
【0006】
競合阻害型で作用するAZD5363のヒトにおける半減期はおよそ6時間である。一方、異なる阻害様式であるアロステリック型の化合物1のマウスにおける半減期は約2.3時間であるが、ヒトにおける薬物動態は明らかになっていない(非特許文献6)。化合物1のヒトにおける至適投与スケジュールを検討するにあたり、非臨床の特性がヒトにおいて必ずしも適用できるとは限らず、標的酵素が同じであったとしても、その薬物動態的特性は大きく異なる可能性がある。そのため、例えば、AZD5363のような同じAKT阻害剤であっても、そのまま参考にすることができるとは限らない。
【0007】
以上から、悪性腫瘍の治療のため、優れた抗腫瘍効果を示しながらも副作用発現を抑制できるAKT阻害剤を用いた治療法が強く望まれている。
【0008】
化合物1又はその塩の7日間連続投与と化合物2又はその塩を併用投与することについては知られている(特許文献3)。しかし、化合物1又はその塩の4日間投与した後に3日間の規定休薬での投与と化合物2又はその塩の21日間連続投与とを併用することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2012/137870号
【文献】国際公開第2013/108809号
【文献】米国公開20190350932号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Cell 2007;129,p1261-1274
【文献】Ann Oncol 2010;21:p683-691
【文献】J Clin Oncol. 2011;29:4688-4695.
【文献】Cancer Res.2013;73(Suppl 8):Abstract LB-197.
【文献】Clin Cancer Res 2018,May1,24(9):2050-2059, (doi: 10.1158/1078-0432.CCR-17-2260)
【文献】学会「EORTC-NCI-AACR 2017」のポスター発表資料 "Characterization of TAS-117, a novel, highly potent and selective inhibitor of AKT"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、副作用を低減させた、AKT阻害作用を有するイミダゾオキサジン化合物による悪性腫瘍の治療法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、極めて強力かつ選択性の高いAKT阻害作用を有する化合物1又はその塩を、特定の投与方法で投与した場合に、副作用を軽減しながら、有効性の高い悪性腫瘍の治療を行えることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明〔1〕~〔58〕を提供するものである:
〔1〕ヒト患者の悪性腫瘍を治療するための方法であって、その治療を必要とする患者に対して、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール)(化合物1)又はその塩を投与スケジュールに従って投与することを含み、
投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、方法。
【0014】
〔2〕化合物1又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍の治療剤であって、
前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、治療剤。
【0015】
〔3〕化合物1又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、
前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、医薬組成物。
【0016】
〔4〕ヒト患者の悪性腫瘍の治療剤を製造するための、化合物1又はその塩の使用であって、前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、使用。
【0017】
〔5〕ヒト患者の悪性腫瘍の治療における使用のための化合物1又はその塩であって、前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、化合物又はその塩。
【0018】
〔6〕ヒト患者の悪性腫瘍を治療するための化合物1又はその塩の使用であって、前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、使用。
【0019】
〔7〕化合物1又はその塩を含む、ヒト患者の悪性腫瘍を治療するためのキットであって、
前記化合物1又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、
該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む、キット。
【0020】
〔8〕化合物1又はその塩が単独投与される、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0021】
〔9〕投与日において、化合物1又はその塩が1日1回で投与される、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0022】
〔10〕前記投与スケジュールにおいて1コースあたり7日間として、3コース21日間に、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間それぞれを連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬する、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0023】
〔11〕前記化合物1又はその塩の用量が4mg/body/日~44mg/body/日である、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0024】
〔12〕前記化合物1又はその塩の用量が16mg/body/日~32mg/body/日である、〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0025】
〔13〕前記化合物1又はその塩の用量が24mg/body/日である、〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0026】
〔14〕前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、又は胆道癌である、〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0027】
〔15〕前記悪性腫瘍が肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、卵巣癌、又は多発性骨髄腫である、〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0028】
〔16〕前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、又は肛門癌である、〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0029】
〔17〕化合物1又はその塩の副作用が軽減される、〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0030】
〔18〕軽減される副作用が斑状丘疹状皮疹である、〔17〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0031】
〔19〕軽減される副作用が高血糖である、〔17〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩又はキット。
【0032】
〔20〕〔1〕に記載の方法であって、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物2)又はその塩を投与スケジュールに従って投与することをさらに含み、投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、方法。
【0033】
〔21〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔20〕に記載の方法。
【0034】
〔22〕化合物1又はその塩と、化合物2又はその塩とを併用するための〔2〕に記載の治療剤であって、化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、治療剤。
【0035】
〔23〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔22〕に記載の治療剤。
【0036】
〔24〕化合物2又はその塩を含む、〔22〕又は〔23〕に記載の治療剤。
【0037】
〔25〕化合物1又はその塩と、化合物2又はその塩とを併用するための〔3〕に記載の医薬組成物であって、化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、医薬組成物。
【0038】
〔26〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔25〕に記載の医薬組成物。
【0039】
〔27〕化合物2又はその塩を含む、〔25〕又は〔26〕に記載の医薬組成物。
【0040】
〔28〕〔4〕に記載の使用であって、前記治療剤が化合物1又はその塩と、化合物2又はその塩とを併用するために用いられ、化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、使用。
【0041】
〔29〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔28〕に記載の使用。
【0042】
〔30〕〔5〕に記載の化合物又はその塩であって、前記化合物1又はその塩は、化合物2又はその塩と併用され、化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、化合物又はその塩。
【0043】
〔31〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔30〕に記載の化合物又はその塩。
【0044】
〔32〕〔6〕に記載の使用であって、前記化合物1又はその塩は、化合物2又はその塩と併用され、化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、使用。
【0045】
〔33〕投与スケジュールが化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔32〕に記載の使用。
【0046】
〔34〕化合物1又はその塩と、化合物2又はその塩とを併用するための〔7〕に記載のキットであって、
化合物2又はその塩が投与スケジュールに従って投与され、
投与スケジュールが化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、キット。
【0047】
〔35〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔34〕に記載のキット。
【0048】
〔36〕化合物2又はその塩を含む、〔34〕又は〔35〕に記載のキット。
【0049】
〔37〕ヒト患者の悪性腫瘍の治療における使用のための化合物1又はその塩と化合物2又はその塩との組合せであって、前記化合物1又はその塩及び前記化合物又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けること、及び
化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、組合せ。
【0050】
〔38〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔37〕に記載の組合せ。
【0051】
〔39〕ヒト患者の悪性腫瘍の治療剤を製造するための、化合物1又はその塩及び化合物2又はその塩の使用であって、前記化合物1又はその塩及び前記化合物又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けること、及び
化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、使用。
【0052】
〔40〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔39〕に記載の使用。
【0053】
〔41〕ヒト患者の悪性腫瘍を治療するための化合物1又はその塩及び化合物2又はその塩の使用であって、前記化合物1又はその塩及び前記化合物又はその塩が、その治療を必要とする患者に対して投与スケジュールに従って投与されるように用いられ、該投与スケジュールは前記化合物1又はその塩を、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日の用量で、1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けること、及び
化合物2又はその塩を7日間連続投与により併用投与することを含む、使用。
【0054】
〔42〕化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日を7日間連続投与により併用投与することを含む、〔41〕に記載の使用。
【0055】
〔43〕投与日において、化合物1又はその塩が1日1回で投与される、〔20〕~〔42〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0056】
〔44〕前記投与スケジュールにおいて1コースあたり7日間として、3コース21日間に、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間それぞれを連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬する、〔20〕~〔43〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0057】
〔45〕前記化合物1又はその塩の用量が4mg/body/日~44mg/body/日である、〔20〕~〔44〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0058】
〔46〕前記化合物1又はその塩の用量が16mg/body/日~32mg/body/日である、〔20〕~〔45〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0059】
〔47〕前記化合物1又はその塩の用量が24mg/body/日である、〔20〕~〔46〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0060】
〔48〕前記悪性腫瘍が固形癌である、〔20〕~〔47〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0061】
〔49〕前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、又は胆道癌である、〔20〕~〔48〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0062】
〔50〕前記悪性腫瘍が肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、又は卵巣癌である、〔20〕~〔49〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0063】
〔51〕前記悪性腫瘍が肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、又は肛門癌である、〔20〕~〔50〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0064】
〔52〕化合物1又はその塩の副作用が軽減される、〔20〕~〔51〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0065】
〔53〕軽減される副作用が斑状丘疹状皮疹である、〔52〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0066】
〔54〕軽減される副作用が高血糖である、〔52〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0067】
〔55〕悪性腫瘍が、標準治療の選択肢のない線維芽細胞増殖因子(FGF)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、PTEN、PIK3CA又はAKT遺伝子異常陽性が確認されている固形癌である、〔20〕~〔54〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0068】
〔56〕悪性腫瘍が、FGFR遺伝子異常陽性が確認されている固形癌である、請求項〔55〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0069】
〔57〕悪性腫瘍が、FGFR1遺伝子増幅陽性が確認されている非小細胞肺癌である、請求項〔55〕又は〔56〕に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【0070】
〔58〕悪性腫瘍が、FGFR1遺伝子増幅陽性が確認されている肺扁平上皮癌である、請求項〔55〕~〔57〕のいずれか1項に記載の方法、治療剤、医薬組成物、使用、化合物若しくはその塩、組合せ又はキット。
【発明の効果】
【0071】
本発明の方法によれば、副作用を低減させつつ、優れた抗腫瘍効果を奏する悪性腫瘍の治療を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】実施例1の試験結果を示す。
図2】実施例2の試験結果を示す。
図3】実施例4における、化合物1の薬物動態を示す。
図4】実施例5における、各患者に対する抗腫瘍効果をベースラインからの変化率で示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明において、有効成分として用いる、イミダゾオキサジン化合物(化学名:トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1、2-c]ピリド[3、4-e][1、3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(化合物1)は、下記構造式(I)で表される。
【0074】
【化1】
【0075】
化合物1又はその塩は、公知の化合物であり、例えば、特許文献1(国際公開第2012/137870号)に記載の方法に準じて合成することができる。
【0076】
本発明において、化合物1の塩とは、薬学的に許容される塩を意味する。
【0077】
本発明において、化合物1又はその塩は、悪性腫瘍の治療を必要とする患者に対してその投与スケジュールに従って投与される。
【0078】
本発明において「投与スケジュール」とは、薬物治療における薬剤の種類、量、期間、手順等を時系列で示した計画のことであり、各薬剤の投与量、投与方法、投与順、投与日等を示すものである。投与することが規定された日、投与しないことが規定された日が薬剤投与開始前に決定される。また、投与スケジュールの1セットを「コース」として、コースを繰り返すことで投与を継続する。薬剤投与と規定休薬を1コースとして繰り返す投与スケジュールを2コース(1コースを2回繰り返す投与スケジュール)、3コース(1コースを3回繰り返す投与スケジュール)等と示す。
【0079】
本発明において「投与」とはその薬剤を投薬することを示すものであり、「休薬」とは、薬剤を投与しないことを示すものである。「投与日」とは投与する日であり、「休薬日」とは投与しない日のことである。
【0080】
本発明で使用される「規定休薬」又は「規定休薬期間」とは、あらかじめ規定された投与スケジュールにおいて薬剤を投与しないこと又はその期間を示すものである。
【0081】
本発明において「規定外休薬」又は「規定外休薬期間」とは、あらかじめ規定された薬剤を投与する日であるが、それまでの薬剤投与の副作用等によって、薬剤を投与しない若しくはこれが出来なかったこと又はこれらの期間を示すものである。
【0082】
本発明の投与スケジュールについて、「連続」とは、前後する連日に投与することをいう。「A日間連続投与」とは、化合物を連続してA日間投与することをいう。
【0083】
本発明において、「N日間投与した後にX日間の規定休薬期間」を設けるとは、Day1からDay(N)まで投与まで薬剤を投与し、Day(N+1)~Day(N+X)まで規定休薬することを意味する。このような投与方法を「N投X休投与」と称すこともある。例えば、1コースあたり7日間とした場合の「4日間連続投与した後に3日間の規定休薬」するときとは、第1日目から第4日目に連続投与し、第5日目から第7日目の間、規定休薬し、次のコースとして第8日目から投与を再開することである。このときは、「4投3休投与」となる。例えば、「4日間連続投与した後に3日間の規定休薬」することを3コース行った場合、21日間に第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間のそれぞれにおいて連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬することを意味する。
【0084】
本発明で使用される「有害事象」とは、薬剤を投与された患者に生じたすべての好ましくない又は意図しない疾病又はその徴候をいう。薬剤との因果関係の有無は問わない。本発明で使用される「副作用」とは、投与量にかかわらず、投与された薬剤に対するあらゆる有害な反応(臨床検査値の異常を含む)。すなわち、当該薬剤と有害事象との間の因果関係について、薬剤と有害事象との間に、合理的な可能性があり、因果関係を否定できない反応を指す。
【0085】
本発明で使用される「副作用のコントロール」とは、発現した副作用がグレード1以下又はベースラインへ回復すること、あるいは、適切な処置によって、薬剤を投与継続してもそれ以上の増悪を認めないことである。また、高血糖の場合にはグレード1又はグレード0へ回復することを示す。
【0086】
本発明において「推奨用量」(Recommend Dose(RD)ともいう)とは、ヒトの臨床試験において決定される、許容できない副作用を引き起こすことなく投与でき、安全性、有効性、薬物動態、薬力学的検討を踏まえ、最も好ましいと考えられる投与量である。具体的には、日本独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)、米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration)、欧州医薬品庁(EMA;European Medicines Agency)等の公的機関又は団体により承認・推奨・勧告され、添付文書・インタビューフォーム・治療ガイドライン等に記載された投与量が挙げられ、PMDA、FDA及びEMAのいずれかの公的機関により承認された投与量が好ましい。
【0087】
本発明を検討するにあたり、化合物1又はその塩は、マウスに投与したときの血中半減期は約2.3時間であったが、後述する実施例において、ヒトに投与したときのそれは約49時間と、極めて長く体内に残留することが新たに判明した。このことは、医薬品の特性が化合物毎に、ヒトとマウスとで種差があり、かつ異なる薬物動態の特徴があることを示している。また、本発明では、化合物1又はその塩は、4日間ないし7日間連続で投与したとき、血中から化合物又はその塩は十分に代謝、排泄等がなされず、蓄積性を持つことが判明した。従って、このように半減期が長く蓄積性を持つ医薬品の場合、連続して投与することで、どのような薬物動態を描くか、どのような副作用がどのように発現するかを予期することが難しいため、連日に投与することをためらうべきであろう。
【0088】
それにもかかわらず、本発明において、発明者らは、連日の投与を基本とする投与法にて、7日間連続で又は4日間投与した後に3日間の規定休薬で投与を行ったところ、特定の投与量による4投3休投与は、抗腫瘍効果が優れることを示しながら、同時に、副作用を軽減させることができることを見いだした。本発明において、副作用の軽減とは、そうでないことが明示されない限り、7日間連続投与と比較して副作用が軽減することを意味する。
【0089】
即ち、本発明において、化合物1又はその塩は、2から4コースを繰り返して投与することができる。2コースの場合には、1コースあたり7日間として2コース14日間、第1日目から第4日目まで、及び第8日目から第11日目までの各4日間連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、及び第12日目から第14日目まで規定休薬する、投与スケジュールに従って投与される。3コースの場合には、投与スケジュールを1コースあたり7日間として3コース21日間、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、及び第15日目から第18日目までの各4日間連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、及び第19日目から第21日目まで規定休薬する、投与スケジュールに従って投与される。投与スケジュールが4コースの場合には、1コースあたり7日間として4コース28日間、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで。第15日目から第18日目、及び第22日目から第25日目の各4日間連続して化合物1又はその塩を投与し、且つ、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、第19日目から第21日目、及び第26日目から第28日目まで規定休薬する、投与スケジュールに従って投与される。好ましくは3コースを繰り返して投与されることがより好ましい。
【0090】
本発明において、化合物1又はその塩の投与日における1日あたりのヒトにおける用量は、化合物1の初回投与量として4mg/body/日~160mg/body/日であるが、かかる用量は、4mg/body/日~44mg/body/日がより好ましく、16mg/body/日~32mg/body/日がさらに好ましく、16mg/body/日又は24mg/body/日がさらに好ましく、24mg/body/日が最も好ましい。1日の用量を分割して投与してもよいが、好ましくは、1日1回の投与(例えば、7日間のうち4日間連続投与する場合、7日間で連日の4回の投与)で、上記用量の投与をすることが好ましい。
【0091】
本発明において、化合物1又はその塩は、4mg~160mgを1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設ける投与スケジュールに従って投与されることが好ましく、4mg~44mgを1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設ける投与スケジュールに従って投与されることがより好ましく、16mg~32mgを1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設ける投与スケジュールに従って投与されることが更に好ましく、16mg又は24mgを1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設ける投与スケジュールに従って投与されることが更に好ましい。化合物1又はその塩の投与日における1日あたりのヒト一人における用量を24mg/body/日を1コースあたり7日間として4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む投与スケジュールに従って投与されるのが特に好ましい。化合物1又はその塩の投与日における1日あたりのヒト一人における用量を24mg/body/日を、3コース21日間として、1コースあたり4日間連続投与した後に3日間の規定休薬期間を3回繰り返し投与することが最も好ましい。
【0092】
化合物1又はその塩を4投3休投与する際、他の抗腫瘍剤と併用せず、化合物1又はその塩単独で投与することもできる。本明細書において、化合物1又はその塩を、他の抗腫瘍剤等の有効成分と併用することなく、投与することを単独投与と示す。他の有効成分と併用しない限りにおいて、化合物1又はその塩を賦形剤等のその他成分と組合せた製剤として投与する実施形態等も、「単独投与」に包含される。本発明の別の実施形態において、化合物1又はその塩を4投3休投与する際、他の薬剤と併用することもできる。他の併用薬剤として、例えば、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3、5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンが挙げられる。本発明において、上記化合物を簡便のために「化合物2」と記載する。化合物2は、下記の構造を有する二置換ベンゼンアルキニル化合物である。化合物2は、特許文献2(国際公開2013/108809号)において実施例化合物2として記載されている。化合物2又はその塩は、優れたFGFR阻害作用を有し、FGFR1、FGFR3、FGFR4のそれぞれの受容体タンパク質チロシンキナーゼの基質ペプチド配列中チロシンへのリン酸化能を阻害することが報告されている(特許文献2)。
【0093】
線維芽細胞増殖因子(FGF;fibroblast growth factor)は幅広い組織で発現が見られ、細胞の増殖分化を司る増殖因子の一つである。FGFの生理学的活性は、特異的な細胞表面受容体である線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR;fibroblast growth factor receptor)によって媒介される。FGFRは、受容体型のタンパク質チロシンキナーゼファミリーに属し、細胞外リガンド結合ドメイン、1回膜貫通ドメイン及び細胞内チロシンキナーゼドメインから構成されており、これまでに4種類のFGFRが同定されている(FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4)。FGFRは、FGFの結合によって二量体を形成し、リン酸化により活性化される。受容体の活性化は、下流の特定のシグナル伝達分子の動員及び活性化を誘導し、生理機能を発現する。FGF/FGFRシグナル伝達の異常は、ヒトの各種腫瘍との関連性について報告がある。ヒトの腫瘍におけるFGF/FGFRシグナルの異常な活性化は、FGFRの過剰発現及び/又は遺伝子増幅、遺伝子変異、染色体転座・挿入・逆位、遺伝子融合又はリガンドであるFGFの過剰産生によるオートクリン又はパラクリン機構に起因するとされている。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明は、FGFR、PTEN、PIK3CA又はAKT遺伝子の異常を有している腫瘍に対して用いることができる。遺伝子の異常には、遺伝子増幅、遺伝子変異、染色体転座・挿入・逆位、遺伝子融合、遺伝子の再構成等が含まれる。腫瘍における遺伝子の異常は、既にいくつかが当業者にとって利用可能な文献に報告されている。遺伝子の異常は、当業者にとって既知の方法、例えばパイロシークエンス、NGS(次世代シーケンシング)を含むDNAシーケンシング、アレル特異的PCR連鎖反応を含むPCRに基づく方法、マイクロアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)、蛍光in situ hybridization法 (FISH)、発色in situ hybridization法(CISH)等によって検出しうる。
【0095】
【化2】
【0096】
上記の本発明における化合物2又はその塩の製法は、特に限定するものではないが、例えば特許文献2に記載の製造方法に基づき合成することができる。
【0097】
本発明において、化合物2の塩とは、薬学的に許容される塩を意味する。
【0098】
本発明の好ましい実施形態においては、化合物1又はその塩と、化合物2又はその塩とを併用してもよい。
【0099】
本発明で使用される場合、「併用」という用語は、2つ以上の化合物/薬剤の組合せの使用を含む療法を定義することを意図している。従って、本発明における「併用」、「組合せ」及び「組み合わせて」の化合物/薬剤の使用は、同じ全体的な投与スケジュールの一部として投与される化合物/薬剤を意味し得る。2つ以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量は異なり得る:それぞれは、同時に、又は異なる時間に投与され得る。したがって、組合せの化合物/薬剤は、同一の医薬製剤(すなわち一緒に)又は異なる医薬製剤(すなわち別々に)のいずれかにおいて、連続して(例えば、前又は後に)又は同時に投与され得ることが理解される。同じ製剤では同時に、単一の製剤としてであるが、同時に異なる医薬製剤では非一体的である。
【0100】
本開示における化合物1又はその塩の投与日における1日あたりの投与量、ならびに化合物2の1日あたりの投与量の組合せとしては、以下のものが挙げられる:
本開示における化合物1又はその塩を4mg/body/日~160mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~44mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg~32mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg又は24mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を4mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を8mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を12mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を20mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を24mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を32mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を44mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を60mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を80mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を100mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を120mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を160mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日~20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を4mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を8mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を12mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を20mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を24mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を32mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を44mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を60mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を80mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を100mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を120mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を160mg/body/日及び化合物2を12mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を4mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を8mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を12mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を20mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を24mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を32mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を44mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を60mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を80mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を100mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を120mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を160mg/body/日及び化合物2を16mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を4mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を8mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を12mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を16mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を20mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を24mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を32mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を44mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を60mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を80mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を100mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を120mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
本開示における化合物1又はその塩を160mg/body/日及び化合物2を20mg/body/日。
【0101】
当該実施形態においては、化合物1又はその塩を前述した投与スケジュールで投与しつつ、並行して、化合物2又はその塩を下記投与スケジュールに従って投与することができる。投与スケジュールとしては、特に限定されないが、例えば、化合物2又はその塩を化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日、好ましくは20mg/body/日で7日間連続投与により併用投与することができる。
【0102】
典型的な実施形態においては、化合物1又はその塩について、投与スケジュールを1コースあたり7日間として3コース21日間、第1日目から第4日目まで、第8日目から第11日目まで、第15日目から第18日目までの各4日間連続して化合物1又はその塩を、1日1回の投与で、化合物1の量として4mg/body/日~160mg/body/日(好ましくは、4mg/body/日~44mg/body/日、より好ましくは16mg/body/日~32mg/body/日、より好ましくは16mg/body/日又は24mg/body/日、更に好ましくは24mg/body/日)の用量となるよう投与し、第5日目から第7日目まで、第12日目から第14日目まで、第19日目から第21日目まで規定休薬し、それと並行して、例えば、化合物2又はその塩を、化合物2の量として12mg/body/日~20mg/body/日、好ましくは20mg/body/日で21日間連続投与により併用投与することである。
【0103】
本開示の抗腫瘍剤の投与スケジュールは、癌種、病期等に応じて適宜選択しうる。
【0104】
別の実施形態では、同時に、逐次的に、又は間隔をあけて使用するための組合せ製剤としての、化合物1又はその塩と化合物2又はその塩とを含む製品(治療剤、医薬組成物、キット等)が提供される。
【0105】
本発明の化合物1又はその塩及び化合物2又はその塩は、各有効成分の投与形態及び/又は投与スケジュールに基づき、各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化してもよく、一つの剤形にまとめて製剤化してもよい。また、各製剤を併用投与に適した1個のパッケージにまとめて製造販売してもよく、また各製剤を別個のパッケージに分けて製造販売してもよい。従って、本発明の治療剤、医薬組成物、キット等において、「化合物1又はその塩及び化合物2又はその塩を含む」には、これらの化合物又はその塩を一つの剤形にまとめて製剤化したものだけでなく、複数の剤形に分けて含むものも包含される。
【0106】
本発明において、「癌」ないし「腫瘍」とは、細胞の遺伝子変異によって正常なコントロールを受け付けなくなり、無秩序に細胞増殖することを特徴とする哺乳動物の生理状態を表す。「癌」及び「腫瘍」は本発明において同意味であり、互換的に使用される。
【0107】
本発明の対象となる腫瘍は特に制限はされないが、例えば、上皮性癌(呼吸器癌、消化器癌、泌尿生殖器癌、分泌系癌、皮膚癌、扁平上皮癌等)、中皮腫、乳癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍等が挙げられる。固形癌とは造血器腫瘍を除いたあらゆる臓器・組織から発生する悪性腫瘍である。具体的には上皮性癌、中皮腫、乳癌、肉腫、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍等が挙げられる。
具体的な呼吸器癌としては肺癌(非小細胞肺癌(腺癌、大細胞癌、肺扁平上皮癌)、小細胞肺癌等)等が挙げられる。具体的な消化器癌としては食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢癌、胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌、肛門癌等)等が挙げられる。具体的な泌尿生殖器癌としては卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌、子宮内膜癌等)、尿路癌(腎盂癌、膀胱癌、尿道癌等)、前立腺癌、腎癌(腎細胞癌)、精巣腫瘍、外陰部癌等が挙げられる。具体的な分泌系癌としては神経内分泌腫瘍、甲状腺癌等が挙げられる。具体的な中皮腫としては、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣中皮腫等が挙げられる。具体的な肉腫としては骨・軟部腫瘍、横紋筋肉腫等が挙げられる。具体的な造血器腫瘍としては白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等が挙げられる。具体的な中枢神経系腫瘍としては脳腫瘍等が挙げられる。具体的な末梢神経系腫瘍としては悪性神経鞘腫等が挙げられる。
これらのうち好ましくは上皮性癌、乳癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍であり、より好ましくは呼吸器癌、消化器癌、泌尿生殖器癌、分泌系癌、皮膚癌、乳癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍であり、より好ましくは肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、胆道癌等であり、より好ましくは肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、卵巣癌、多発性骨髄腫等であり、更に好ましくは肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、肛門癌等である。更に好ましくは肺癌である。特に更に好ましくは非小細胞肺癌である。最も好ましくは、肺扁平上皮癌である。
【0108】
本発明において、化合物1又は塩と化合物2又はその塩を併用する場合において適用される腫瘍は、固形癌であり、好ましくは遺伝子の変異を有する固形癌であり、さらに好ましくは線維芽細胞増殖因子(FGF)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、PTEN、PIK3CA又はAKT遺伝子異常陽性が確認されている固形癌である。
具体的な固形癌としては、前述したもの等が挙げられ、例えば、上皮性癌(呼吸器癌、消化器癌、泌尿生殖器癌、分泌系癌、皮膚癌、扁平上皮癌等)、乳癌、肉腫、中枢神経系腫瘍等が挙げられる。具体的な呼吸器癌としては肺癌等が挙げられる。具体的な消化器癌としては食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌、結腸直腸癌等が挙げられる。具体的な泌尿生殖器癌としては卵巣癌、子宮癌、尿路癌、前立腺癌、腎癌、外陰部癌等が挙げられる。具体的な分泌系癌としては神経内分泌腫瘍、甲状腺癌等が挙げられる。具体的な肉腫としては骨・軟部腫瘍、横紋筋肉腫等が挙げられる。具体的な中枢神経系腫瘍としては脳腫瘍等が挙げられる。
これらのうち好ましくは上皮性癌、乳癌、肉腫、中枢神経系腫瘍であり、より好ましくは呼吸器癌、消化器癌、泌尿生殖器癌、分泌系癌、皮膚癌、乳癌、肉腫、中枢神経系腫瘍であり、より好ましくは、肺癌、乳癌、腎癌、肉腫、中枢神経系腫瘍、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、横紋筋肉腫、子宮内膜癌、尿路癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、皮膚癌、胆道癌等であり、より好ましくは肺癌、子宮内膜癌、尿路癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、卵巣癌等であり、更に好ましくは肺癌、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、胆嚢癌、肛門癌等である。更に好ましくは肺癌である。特に更に好ましくは非小細胞肺癌である。最も好ましくは、肺扁平上皮癌である。
【0109】
本発明の悪性腫瘍の「治療」には、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のために行われる術後補助化学療法、腫瘍を外科的に摘出するために事前行われる術前補助化学療法が包含される。
【0110】
本発明における治療とは、疾患の治癒もしくは寛解を目的として、又は病勢の進行もしくは再燃の抑制もしくは症状の緩和を目的として行う処置を含む。治療には、外科的処置の前又は後に行う薬剤の投与、又は放射線治療の間又は前後に行う薬剤の投与が含まれる。
【0111】
化合物1又はその塩を医薬として用いるにあたっては、治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能である。当該形態としては、経口剤(錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤等)、注射剤、坐剤、貼付剤、軟膏剤等が例示できる。化合物1又はその塩の場合は経口剤が好ましい。これらの製剤は、薬学的に許容される担体等を用い、この分野で通常知られた慣用的な製剤化方法により製剤化することができる。
【0112】
薬学的に許容される担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
【0113】
化合物1又はその塩を含む本発明の製剤は、化合物1又はその塩が、4mg/body/日~160mg/body/日の用量で4日間連続投与された後に3日間の規定休薬期間を設けることを含む投与スケジュールに従って投与されることを示す使用説明書を含むキット製剤であってもよい。「使用説明書」は、具体的には、添付文書、パンフレット等が例示される。また、使用説明書を含むキット製剤は、キット製剤のパッケージに使用説明書が印刷・添付されているものであっても、キット製剤のパッケージに化合物1又はその塩とともに使用説明書が同封されているものであってもよい。
【0114】
本発明における有害事象の重症度の分類、NCI(National Cancer Institute)有害事象共通用語規準(CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverce Events))Version 4.03又は5.0の基準を用いて評価することができる。
【0115】
本発明における腫瘍に対する抗腫瘍効果の判定は、RECISTガイドラインVersion 1.1(European Journal of Cancer 45 (2009) 228-247)に従い、標的病変(登録時に計測した診断方法(MRI、CT、X線等)でスライス幅に応じた測定可能なサイズ以上の病変)と非標的病変(標的病変以外の全ての病変)との総合的な評価で腫瘍への縮小評価を判定することができる。
【0116】
本開示の抗腫瘍剤は、癌の治療に用いることができる。本明細書に記載される併用療法等の治療レジメンによる治療を受ける癌患者に言及する場合の「抗腫瘍効果」は、例えば、PFS(無増悪生存期間)、DCR(病勢コントロール率)、DOR(奏効期間)、OS(全生存期間)、ORR(客観的奏効率)、DCR(病勢コントロール率)、TTR(初回奏効に至るまでの期間)、PROs(Patient-Reported Outcomes)等の、少なくとも1つの評価を意味する。一実施形態において、固形癌を対象とした場合には本明細書に記載される併用療法に対する腫瘍評価が、RECIST1.1基準(固形癌効果判定基準)で評価され、抗腫瘍効果はSD(安定)、PR(部分奏効)、CR(完全奏効)、PD(進行)で示される。
【実施例
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0118】
(実施例1)OVCAR―3皮下移植ヌードマウスモデルを用いた化合物1の投与スケジュールの検討
マウス皮下で継代されたヒト卵巣癌株OVCAR―3(American Type Culture Collection(ATCC))を約2mm角に細切し、5週齢の雄マウスBALB/cAJcl-nu/nu(日本クレア株式会社)の皮下に移植針で移植した。
【0119】
腫瘍が増殖し、腫瘍体積が凡そ100~200mm3程度となったとき、各群の腫瘍体積が均一になるよう、その動物の群分けを行った。群分け日をDay1とした。
腫瘍体積(TV)は以下の式により算出した。
【0120】
TV=(長径×短径×短径) ×1/2
投与群は、次の表の通りを設定した。必要量の化合物1を秤量し、0.5%(w/v)Hydroxypropyl methylcellulose(HPMC)水溶液に懸濁し、適宜の濃度の投与液を調製した。コントロール群は0.5%(w/v)HPMC水溶液を投与液とした。
【0121】
投与量は10mL/kg体重とし、経口ゾンデ針にてマウス胃内へ投与液を注入した。
【0122】
【表1】
【0123】
<抗腫瘍効果>
週に2回、電子ノギスにて皮膚の上より腫瘍の長径及び短径を測定し、更に以下の項目を算出し、抗腫瘍効果の有無を確認する指標とした。
【0124】
腫瘍体積(TVn)=(長径×短径×短径) ×1/2
相対腫瘍体積(RTVn) = TVn/TV1
T/C(%)=(投与群の平均RTVn)/(コントロール群の平均RTVn)×100
(nは各測定日を示す。)
<体重変化>
腫瘍体積測定と同日に、電子天秤で測定したマウスの体重(BW)を測定し、更に体重変化率(BWC)を算出した。
【0125】
BWCn(%)=(BWn-BW1)/BW1×100
(nは各測定日を示す。)
結果を図1に示す。図1から明らかなように、in vivoの試験においては、それぞれに重篤な体重減少がなく、優れた抗腫瘍効果があり、化合物1の7日間連続投与と4投3休投与とで抗腫瘍効果及び副作用に有意な差は見られなかった。
【0126】
(実施例2)ヒトAN3CA腫瘍皮下移植ヌードマウスモデルを用いた、化合物2と併用した化合物1の投与スケジュールの検討
マウス皮下で継代されたヒト子宮内膜癌由来細胞株AN3CA(American Type Culture Collection(ATCC))を、約2mm角に細切し、6週齢の雌マウスBALB/cAJcl-nu/nu(日本クレア株式会社)の右最後位肋骨付近に移植針で移植した。
【0127】
腫瘍が増殖し、腫瘍体積が凡そ50~200mm3程度となったとき、各群の腫瘍体積が均一となるよう、その動物の群分けを行った。群分け日をDay0とした。
腫瘍体積(TV)は以下の式により算出した。
【0128】
TV=(長径×短径×短径) ×1/2
投与群は、次の表の通りを設定した。必要量の化合物1及び化合物2を秤量し、0.5%(w/v)Hydroxypropyl methylcellulose(HPMC)水溶液に懸濁し、適宜の濃度の投与液を調製した。コントロール群は0.5%(w/v)HPMC水溶液を投与液とした。
【0129】
【表2】
【0130】
週に2回、電子ノギスにて皮膚の上より腫瘍の長径及び短径を測定し、更に以下の項目を算出し、抗腫瘍効果の有無を確認する指標とした。
【0131】
腫瘍体積(TVn)=(長径×短径×短径) ×1/2
相対腫瘍体積(RTVn) = TVn/TV0
T/C(%)=(投与群の平均RTVn)/(コントロール群の平均RTVn)×100
(nは各測定日を示す。)
<体重変化>
腫瘍体積測定と同日に、電子天秤で測定したマウスの体重(BW)を測定し、更に体重変化率(BWC)を算出した。
【0132】
BWCn(%)=(BWn-BW1)/BW1×100
(nは各測定日を示す。)
結果を図2に示す。図2から明らかなように、in vivo試験においては、それぞれに重篤な体重減少がなく、優れた抗腫瘍効果があり、化合物1の7日間連続投与と4投3休投与とで抗腫瘍効果及び副作用に有意な差は見られなかった。
【0133】
(実施例3)ヒトにおける化合物1の投与スケジュールの検討
標準治療の選択肢がない進行固形がん患者を対象に、化合物1の推奨用量・投与スケジュールを決定し、化合物1の安全性プロファイルを検討することを目的として実施した。
【0134】
本実施例において、まず、7日間連続投与のスケジュールと、4投3休投与のスケジュールの、推奨用量を求めた。7日間連続投与では、化合物1の投与スケジュールは、1コースを7日間として3コース21日間、経口での1日1回連続投与する。4投3休投与は、1コースを7日間として3コース21日間、経口で1日1回1日目から4日目まで、8日目から11日目まで、15日目から18日目まで投与した。
【0135】
7日間連続投与のスケジュールでは、投与量は1回4mg/body/日から開始した。4投3休投与の投与スケジュールでは、投与量は1回32mg/body/日から開始した。試験は3+3デザインを用いた。それぞれ投与レベルは、レベル1は4mg/body/日、レベル2は8mg/body/日、レベル3は16mg/body/日、レベル4は24mg/body/日、レベル5は32mg/body/日、レベル6は44mg/body/日、レベル7は60mg/body/日、レベル8は80mg/body/日、レベル9は100mg/body/日、レベル10は120mg/body/日、レベル11は160mg/body/日で実施した。
【0136】
本発明において「3+3デザイン」とは、以下のように実施した。
投与レベルごとに3症例以上の患者に投与し、各投与レベルの最初の3症例に3コース21日間でDLTが認められなかった場合、次の高い1レベル上の用量の投与レベルに移行する。最初の3症例のうち1症例にDLTが認められた場合、当該投与レベルに3症例を追加する。追加した3症例全員が3コース21日間を完了した時点でいずれの患者にもDLTが認められなかった場合は1レベル上の用量の投与レベルに移行する。追加した3症例のうち1症例以上にDLTが認められた場合は、1レベル下の用量の投与レベルにDLT評価対象例として少なくとも6症例を登録して推奨用量を決定する。最初の3症例のうち2症例以上にDLTが認められた場合、レベル移行せず、DLT評価対象例として少なくとも6症例を1レベル下の投与レベルに登録して推奨用量を決定する。レベル移行の可否は、DLTに関する情報だけでなく、DLTか否かを問わず関連するすべての毒性及び併用薬・併用療法を、担当医師及び治験依頼者が臨床的観点から総合的に判断して決定する。
【0137】
本実施例において、有害事象の重症度のグレード判定は、CTCAE Ver. 4.03の基準を用いて評価した。
【0138】
用量制限毒性(DLT(Dose Limited Toxity))の定義
DLTとは、新規抗癌剤を患者に投与する際に、これ以上の増量ができない理由となる毒性である。
DLTの評価では、各投与方法の最初の3コース21日間に発現した副作用のみを対象とした。
DLTの具体的な定義は以下のとおりとした。
【0139】
血液毒性
a)7日間を超えて持続するグレード4の好中球減少症
b)グレード4の血小板減少症又は出血を伴い輸血を要するグレード3の血小板減少症c)発熱性好中球減少症[好中球絶対数(ANC)1000/mm3未満であり、かつ1回でも38.3°C(101°F)を超える、又は1時間を超えて持続する38°C(100.4°F)以上の発熱]
非血液毒性
a)症候性のグレード4の高血糖(空腹時血糖500mg/dL超)
b)7日間を超えて持続し、インスリン、経口糖尿病薬等による集中的な糖尿病治療で対処できないグレード3の高血糖(空腹時血糖250mg/dL超)又は無症候性のグレード4の高血糖
c)局所ステロイド、経口副腎皮質ステロイド等による積極的な皮膚治療で対処できないグレード3以上の皮膚毒性
d)48時間を超えて持続し、セロトニン5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬(例:オンダンセトロン)等による積極的な制吐療法で対処できないグレード3以上の悪心/嘔吐
e)48時間を超えて持続し、止瀉薬で効果が得られないグレード3以上の下痢
f)その他のグレード3以上の非血液毒性
その他
a)3コース21日間中、投与予定期間のうち20%以上の規定休薬期間を要するグレード2以上の副作用
b)グレード2を超える副作用により4コース目の投与開始予定日から2週間以内に投与を開始できない場合
c)臨床検査値異常(上述した血液毒性及び非血液毒性を除く)及び一過性の徴候・症状については、担当医師及び治験依頼者がDLTに該当するか否かを判断する。
【0140】
推奨用量の決定は、それぞれのスケジュールのDLTの発現割合、安全性プロファイル、有効性プロファイル、治験依頼者及び担当医師から独立した専門家である医師からなる委員会の意見に基づき、推奨用量を決定した。
【0141】
本試験には乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵神経内分泌腫瘍、胆嚢癌、肛門癌等の患者が登録された。
【0142】
その結果、7日間連続投与及び4投3休投与における忍容可能な最大投与量はそれぞれ16mg/body/日及び24mg/body/日であり、これを推奨用量と決定した。
【0143】
(実施例4)ヒトにおける化合物1の薬物動態の検討
標準治療の選択肢がない進行固形がん患者における、7日間連続投与と4投3休投与それぞれで化合物1を推奨用量投与したときの薬物動態を測定した。
7日間連続投与においては1コースあたり7日間として3コース21日間、化合物1の16mg/body/日の経口での1日1回を行った。薬物動態測定のための採血として、1日目と3コースの最終投与日である21日目に経時的に採血を行った。
4投3休投与においては1コースあたり7日間として3コース21日間、化合物1の24mg/body/日の経口での1日1回を行った。薬物動態測定のための採血として、1日目と3コースの最終投与日である18日目に経時的に採血を行った。また、3日目、4日目、8日目の投与直前に採血を行った。
図3に、それぞれの1日目(図3上)と3コースの最終投与日である21日目又は18日目(図3下)における化合物1の血中濃度を示した。
【0144】
化合物1の血中半減期は約49時間であった。また、7日間連続投与又は4投3休投与スケジュールで投与することのいずれも、7日間連続投与の1日目と21日目、4投3休投与の1日目と18日目の血中薬物濃度の推移をそれぞれ比較すると、それぞれの21日目、18日目は1日目より明らかにその血中薬物濃度が高いことが判明した。化合物1を4投3休投与した時の3日目の投与前、4日目の投与前の残存する血中薬物濃度はそれぞれ25.7ng/mL、35.7ng/mLであった。また、7日間連続投与の21日目と4投3休投与の18日目の血中薬物濃度の推移をみると、化合物1に蓄積性があることが判明した。
【0145】
(実施例5)ヒトにおける化合物1の至適用法の検討
実施例3について、化合物1の至適用法を検討した。標準治療の選択肢がない進行固形がん患者における、7日間連続投与の投与スケジュールと、4投3休投与の投与スケジュールにおいて、推奨用量を投与したときの安全性プロファイルと有効性プロファイルを比較した。
【0146】
安全性プロファイルについては、規定外休薬期間の比較を行った。規定外休薬期間は安全性プロファイルの総合的な指標となる。
本実施例において、薬剤との因果関係を否定できない毒性が発現した場合の投与変更基準を示した。非血液毒性に関する投与変更基準、血液毒性に関する投与変更基準、その他の毒性に関する投与変更基準を設定し、いずれかに合致するときは、あらかじめ規定された薬剤を投与する日を、薬剤を投与しない日、即ち規定外休薬期間に変更した。
【0147】
非血液毒性に関する投与変更基準
薬剤との因果関係を否定できない非血液毒性に関する投与変更基準としては以下の通り設定した。
空腹時血糖について、症候性のグレード4の高血糖、7日間を超えるグレード3以上の高血糖が発現した場合、投与を中止する(規定外休薬)。グレード1又はグレード0に回復した場合には投与を再開することができる。再開する場合の投与量は元の投与量から1レベル減量する。ただし、重篤化又は生命を脅かす事象へと悪化する可能性が低いと判断される有害事象(疲労、皮膚乾燥等)については、当該事象のグレードを問わず、減量又は投与中断することなく同一投与量で薬剤の投与を継続することができる。
【0148】
その他の毒性としてDLT又はグレード3以上の非血液毒性については投与を中止し(規定外休薬)、グレード1以下又はベースラインに回復した場合には投与を再開することができる。グレード3以上の非血液毒性として、集中的な制吐療法で対処できたグレード3の悪心及び/又は嘔吐、止瀉薬で効果が得られたグレード3の下痢、若しくは局所ステロイド及び/又は経口副腎皮質ステロイド等による集中的な皮膚治療で対処できたグレード3の皮膚毒性は除く。再開する場合の投与量は元の投与量から1レベル減量する。ただし、重篤化又は生命を脅かす事象へと悪化する可能性が低いと判断される有害事象(疲労、皮膚乾燥等)については、当該事象のグレードを問わず、減量又は投与中断することなく同一投与量で薬剤の投与を継続することができる。
【0149】
血液毒性に関する投与変更基準
薬剤との因果関係を否定できない血液毒性に関する投与変更基準としては以下の通り設定した。
好中球数500/mm3未満については投与を中止し(規定外休薬)、1500/mm3以上に回復した場合、投与を再開することができる。再開する場合の投与量は、症状のない好中球減少症が7日間以下であった場合には、変更を要しない。7日を超えて継続する症状のない症状のない好中球減少症もしくは症状のある好中球減少症(感染症又は発熱を伴う好中球減少症)の場合には、元の投与量から1レベル減量する。
血小板数25000/mm3未満については投与を中止し(規定外休薬)、75000/mm3以上に回復した場合、投与を再開することができる。再開する場合の投与量は元の投与量から1レベル減量する。
【0150】
その他の毒性に関する投与変更基準
薬剤との因果関係を否定できない、上記に該当しないその他の毒性に関する投与変更基準としては以下の通り設定した。
担当医師により投与中断が必要であると判断されたその他の毒性については投与を中止し(規定外休薬)、グレード1以下又はベースラインに回復した場合には投与を再開することができる。再開する場合の投与量は変更を要しない。
【0151】
安全性プロファイルについての結果を表3に示す。推奨用量である2投与群を比較すると、7日間連続投与では、副作用により規定外休薬を必要となった患者は6例中3例であり、その平均規定外休薬期間は3.7日間であったが、4投3休投与は6例中1例であり、その規定外休薬期間は2日間であった。従って、化合物1は、4投3休投与が、7日間連続投与に比較し、副作用のコントロールの点で優れていることが明らかとなった。
【0152】
【表3】
【0153】
それぞれのスケジュールの推奨用量における有効性プロファイルは、患者毎の抗腫瘍効果をwaterfall plotに描き比較した(図4)。更にRECIST評価により抗腫瘍効果の判定結果を比較した。
その結果、図4のwaterfall plotにて示されるとおり、4投3休投与のほうが、7日間連続投与より腫瘍縮小効果が優れていることが認められた。また、RECISTの判定結果では、4投3休投与では6例中2例に「安定」(SD)が認められたが7日間連続投与ではすべて「進行」(PD)であった。これらから、化合物1は、4投3休投与が、7日間連続投与と比較し、抗腫瘍効果が優れていることが明らかとなった。
【0154】
以上より、ヒトの腫瘍患者の優れた抗腫瘍効果を得るとともに副作用をコントロールするためには、化合物1を4投3休投与で投与することが、優れていることが明らかとなった。この結果は、マウスにおける動物実験及び他の化合物の知見からは予想できない驚くべき結果である。
【0155】
(実施例6)化合物1の4投3休投与と化合物2の7日間連続投与の併用臨床第I/II相試験
ヒト固形がん患者を対象に、化合物1の4投3休投与と化合物2の7日間連続投与の併用投与時の安全性と忍容性を検討し、推奨用量を決定することを目的として実施する。標準治療の選択肢がない、進行又は転移性の固形癌患者を対象に化合物1と化合物2併用時の安全性、忍容性、有効性、PK、薬力学、効果予測バイオマーカーを評価することを目的とした第I/II相、非盲検、非ランダム化、用量漸増、多施設共同試験である。化合物2の用法用量を固定し、化合物1の用量を3+3デザインを用いて漸増し、推奨用法・用量を決定する。その後、決定した用法用量を用いて、有効性及び安全性を検討する。
【0156】
本試験は1コースあたり7日間として3コース21日間、化合物1は8mg/body/日から開始し、上記3+3デザインに従い、4mgから160mg/body/日までの範囲で経口で1日1回21日間連続投与する。化合物2は20mg/body/日から開始し、12mgから20mgの範囲で1日1回21日間連続投与することから開始する。患者が設定された中止の基準に抵触するまでコースを繰り返す。安全性、忍容性、有効性、薬物動態、薬力学的バイオマーカー等のプロファイルから、化合物1の用法が4投3休又は1週間1回投与が望ましいと考えられる場合には、化合物1の用法を変更することができる。
【0157】
化合物1の投与方法を7日間連続投与から4投3休投与に変更した場合、1コースあたり7日間として3コース21日間、化合物1は、3+3デザインに従い、4mgから160mg/body/日の範囲で経口で1日1回4投3休投与する。化合物2は12mgから20mg/body/日の範囲で1日1回21日間連続投与する。
【0158】
7日間連続投与のスケジュールでは、投与量は1回8mg/body/日から開始する。4投3休投与の投与スケジュールでは、7日間投与の結果により好ましいと判断した投与量から開始する。試験は3+3デザインを用いる。それぞれ投与レベルは、レベル-1は4mg/body/日、レベル1は8mg/body/日、レベル2は12mg/body/日、レベル3は16mg/body/日、レベル4は20mg/body/日、レベル5は24mg/body/日、レベル6は32mg/body/日、レベル7は44mg/body/日で実施する。安全性、忍容性、有効性、薬物動態、薬力学的バイオマーカー等のプロファイルから、さらに投与量を増やすことができる。その場合には例えば、60mg/body/日、80mg/body/日、100mg/body/日、12mg/body/日、160mg/body/日で実施する。
【0159】
化合物2又はその塩は20mg/body/日を1日1回21日間連続投与するから開始する。有害事象の発現状況により化合物2又はその塩の投与量を減量することができる。化合物2又はその塩は16mg/body/日、12mg/body/日まで、減量することができる。
【0160】
本発明において「3+3デザイン」とは、以下のように実施する。
投与レベルごとに3症例以上の患者に投与し、各投与レベルの最初の3症例に3コース21日間でDLTが認められなかった場合、次の高い1レベル上の用量の投与レベルに移行する。最初の3症例のうち1症例にDLTが認められた場合、当該投与レベルに3症例を追加する。追加した3症例全員が3コース21日間を完了した時点でいずれの患者にもDLTが認められなかった場合は1レベル上の用量の投与レベルに移行する。追加した3症例のうち1症例以上にDLTが認められた場合は、1レベル下の用量の投与レベルにDLT評価対象例として少なくとも6症例を登録して推奨用量を決定する。最初の3症例のうち2症例以上にDLTが認められた場合、レベル移行せず、DLT評価対象例として少なくとも6症例を1レベル下の投与レベルに登録して推奨用量を決定する。レベル移行の可否は、DLTに関する情報だけでなく、DLTか否かを問わず関連するすべての毒性及び併用薬・併用療法を、担当医師及び治験依頼者が臨床的観点から総合的に判断して決定する。
【0161】
用量制限毒性(DLT(Dose Limited Toxity))の定義
DLTとは、新規抗癌剤を患者に投与する際に、これ以上の増量ができない理由となる毒性である。
DLTの評価では、各投与方法の最初の3コース21日間に発現した副作用のみを対象とする。
DLTの具体的な定義は以下のとおりとする。
【0162】
血液毒性
1)7日間を超えて持続するグレード4の好中球減少症
2)グレード4の血小板減少症又は出血を伴い輸血を要するグレード3の血小板減少症
3)発熱性好中球減少症[好中球絶対数(ANC)1000/mm3未満であり、かつ1回でも38.3°C(101°F)を超える、又は1時間を超えて持続する38°C(100.4°F)以上の発熱]
非血液毒性
1)グレード4の高血糖
2)7日間を超えて持続し、インスリン等による集中的な糖尿病治療で対処できないグレード3の高血糖
3)局所ステロイド、経口副腎皮質ステロイド等による積極的な皮膚治療で対処できないグレード3以上の皮膚毒性
4)無機リン酸(Pi)値>10mg/dL及び/又はPi値を下げる治療法が7日施行したがPi値が7日以上>7mg/dLの高リン酸血症
5)石灰化に関連するグレード1以上の角膜障害
6)クレアチニン、Pi、カルシウムの増加
クレアチニン> 1.5 × 基準値上限(ULN)が7日間以上継続し、Piを下げる治療法を7日間施行したがPi>5.5mg/dL及び/又はPiを下げる治療法を7日間施行したが補正カルシウム×Pi>55mg/dL
7)グレード2の高カルシウム血症が7日間を超えて持続する場合又はグレード3以上の高カルシウム血症
8)担当医師により判断された軟部組織における新規の異所性石灰化
9)48時間を超えて持続し、セロトニン5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬(例:オンダンセトロン)等による積極的な制吐療法で対処できないグレード3以上の悪心/嘔吐
e)48時間を超えて持続し、止瀉薬で効果が得られないグレード3以上の下痢
f)その他のグレード3以上の非血液毒性
その他
a)3コース21日間の完了を妨げるグレード2以上の副作用
b)グレード2を超える副作用により4コース目の投与開始予定日から2週間以内に投与を開始できない場合
【0163】
推奨用量の決定は、それぞれのスケジュールのDLTの発現割合、安全性プロファイル、有効性プロファイル、治験依頼者及び担当医師から独立した専門家である医師からなる委員会の意見に基づき、推奨用量を決定する。
【0164】
本試験において、有害事象の重症度のグレード判定は、CTCAE Version 5.0の基準を用いて評価する。
【0165】
化合物1又はその塩の4投3休投与と化合物2又はその塩の21日間連続投与との併用は、これらの単独療法から予想し得ない抗腫瘍効果をもたらし得る。例えば、本発明のある実施形態においては、当該併用は、どちらか単独による治療の測定結果のうち少なくとも1つと比べ、効果が高いことが見いだされ得る。また、例えば、本発明のある実施形態においては、化合物1又はその塩の4投3休投与と化合物2又はその塩の21日間連続投与とを併用することにより、相乗効果が得られ得る。
【0166】
抗腫瘍効果の判定は、RECISTガイドラインVersion 1.1に従って実施する。以下の測定結果のうちの少なくとも1つに従えば、化合物1又はその塩の4投3休投与と化合物2又はその塩の7日間連続投与との併用が、いずれかの一方のみよりも効果的であり得る:奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)。
図1
図2
図3
図4